(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、一対の分割形式の金型の型締により形成される一対の分割形式の金型内の密閉空間を加圧することにより、あるいは型締された一対の分割形式の金型を通じて密閉空間内を吸引することにより、密閉空間内の熱可塑性樹脂製シートを賦形する段階を有する、請求項1に記載の車両用樹脂製衝撃エネルギー吸収体の成形方法。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用衝撃エネルギー吸収体は、車両の衝突による外部からの衝撃荷重に伴う衝撃エネルギーを吸収することにより、車両内部の乗員を保護するのに用いられ、たとえばドアパネルあるいは天井パネルの内部に設置される。
車両の不意の衝突による衝撃荷重が、車両用衝撃エネルギー吸収体のどこに、どの方向から負荷されるのか予測困難であるところ、それに対処すべく車両用衝撃エネルギー吸収体において、衝撃荷重の受け面を大きくするとすれば、車両の軽量化に反する。
【0003】
従来採用されている車両用衝撃エネルギー吸収体は、衝撃荷重を受ける構造として、格子状リブタイプ、円錐台状リブタイプおよび長溝状リブタイプに大別される。
【0004】
特許文献1は、格子状リブタイプを開示する。このタイプは、合成樹脂材料からなり、平板状の天板の一方の面上に、所定高さを有する板状のリブを格子状に立設することにより構成され、リブが互いに格子状に互いに連結し、衝撃荷重を受けると一体で変形するので、車両用衝撃エネルギー吸収体の局所的な吸収特性のばらつきが生じにくいが、衝撃荷重に対する反発力が上昇し、衝撃荷重に対する車両用衝撃エネルギー吸収体の十分な変形が得られず、所望の衝撃エネルギー吸収特性を得るのが困難である。
さらに、このタイプは、射出成形により成形されていることから、格子状リブは天板に対して直立させる必要があり、このため衝撃荷重が車両用衝撃エネルギー吸収体の荷重受け面に対して斜めから作用する場合には、格子状リブの倒れ込みを生じやすく、十分な変形代を確保するのが困難であるとともに、格子状リブの肉厚の薄肉化に制限があり、それにより反発力が上昇し、衝撃荷重に対する車両用衝撃エネルギー吸収体の十分な変形を確保するのが余計に困難となる。
【0005】
特許文献2は、特許文献1と同様に、格子状リブタイプを開示する。このタイプは、一定方向へ向けられて、格子状に配設された複数のリブと、リブの一端が連結された状態でリブと一体に形成され、それぞれのリブが衝撃荷重方向に沿うように取り付けられる基板部とを有し、射出成形による抜き勾配を設ける関係から、リブの根元部が厚肉化し、変形しにくくなることから、リブに切り欠き部を形成することにより、断面積縮小部を設け、衝撃荷重を受けたリブの変形がリブの基板部へ向けて進行する際、荷重を受ける断面積が減少することにより変形荷重の増大を抑制し、リブの変形を積極的に進行させるようにしている。
しかしながら、特許文献1と同様に、射出成形により成形されていることから、格子状リブは基板部に対して直立させる必要があり、このため衝撃荷重が車両用衝撃エネルギー吸収体の荷重受け面に対して斜めから作用する場合には、格子状リブの倒れ込みを生じやすく、十分な変形代を確保するのが依然として困難である
【0006】
特許文献3は、円錐台状リブタイプを開示する。このタイプは、合成樹脂からなり、相互に所要間隔をおいて配列された複数の円錐台状リブと、円錐台状リブの非存在部分に位置し、これらの円錐台状リブの裾部分を連結支持する面状連結部とを有し、円錐台状リブが圧潰変形した際、円錐台状リブの外周側面が外方へ変形するのを許容する複数のスリットを円錐台状リブのまわりに設けている。このような構成によれば、円錐台状リブは互いに独立であるので、反発力が上昇し、衝撃荷重に対する車両用衝撃エネルギー吸収体の十分な変形が得られない事態は生じにくいが、車両用衝撃エネルギー吸収体の局所的な吸収特性のばらつきを生じやすい。
【0007】
より詳細には、円錐台状リブのまわりに複数のスリットを設けることに起因して、衝撃荷重が車両用衝撃エネルギー吸収体の荷重受け面に対して正面から作用する場合には、円錐台状リブの円形頂面が底付きを生じやすく、十分な変形代を確保するのが困難であり、衝撃荷重が車両用衝撃エネルギー吸収体の荷重受け面に対して斜めから作用する場合には、円錐台状リブの倒れ込みを生じやすく、同様に十分な変形代を確保するのが困難である。
【0008】
特許文献4は、長溝状リブタイプを開示する。このタイプは、衝撃を受ける側に配置される第1壁と、これと中空部を介して間隔を隔てて対向する第2壁とを有し、第1壁および第2壁それぞれを長溝状に窪ませて、その互いの先端面を一体に接合して溶着面とした深溝部と、その互いの先端面を間隔を隔てて対向させた浅溝部とからなる複数の衝撃吸収リブを有し、特許文献3と異なり、2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートそれぞれの一方の面から対応する金型に向かって吸引あるいは、他方の面から金型に向かって加圧することにより、長溝を成形し、分割金型を型締めすることにより、長溝の先端面を一体に溶着するとともに、環状のパーティングラインの形成を通じて中空部を構成している。
このような構成によれば、特許文献3のような円錐台状リブが互いに独立に設けられる場合に比べ、長溝状の複数の衝撃吸収リブを設けることにより、局所的な吸収特性のばらつきを抑制することが可能であるが、複数の衝撃吸収リブと交差する向きにリブが設けられていないことから、依然として、衝撃荷重が車両用衝撃エネルギー吸収体の荷重受け面に対して斜めから作用する場合には、衝撃吸収リブの倒れ込みを生じやすく、同様に十分な変形代を確保するのが困難である。
【0009】
さらに、衝撃荷重が車両用衝撃エネルギー吸収体の荷重受け面に対して正面から作用する場合、密閉中空部内の空気圧が上昇し、それに伴い反発力が上昇し、衝撃荷重に対する車両用衝撃エネルギー吸収体の十分な変形が得られず、所望の衝撃エネルギー吸収特性を得るのが困難であり、これに対処するとすれば、荷重受け面に開口を設ける等余分な工程が必要となる。
【特許文献1】特許第2775146号公報
【特許文献2】特許第31876563号公報
【特許文献3】特許第4597832号公報
【特許文献4】再公表特許 WO2008/105517
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、エネルギー吸収体全体に対して一様な衝撃荷重が負荷される場合だけでなく、斜め方向の衝撃荷重に対しても十分な変形代を確保可能であるとともに、局所的なエネルギー吸収特性のバラツキを防止することが可能な樹脂製エネルギー吸収体を提供することにある。
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、安価かつ軽量な簡易構造で良好なエネルギー吸収特性を呈する樹脂製エネルギー吸収体を良好な成形性により成形可能な樹脂製エネルギー吸収体の成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る衝撃エネルギー吸収体は、
樹脂製の単壁中実板状構造の衝撃エネルギー吸収体であって、
周壁により取り囲まれた平面部と、
該平面部内で、互いに平行に所定の間隔を隔てる複数の長溝を形成することにより構成される複数の第1突起体と、
前記複数の第1突起体と交差する向きに延び、該平面部内に設けられる長溝を形成することにより構成される第2突起体とを有し、
前記複数の第1突起体の各々は、それぞれ前記平面部から立ち上がる、互いに対向する一対の傾斜立ち壁と、該一対の傾斜立ち壁の頂部同士を前記周壁と略同じ高さで連結する頂壁とを有し、
前記一対の傾斜立ち壁は、前記平面部から前記頂壁に向かって互いに近づくように所定傾斜角度で傾斜し、
前記第2突起体は、前記周壁と前記周壁に最も隣接する前記第1突起体の前記傾斜立ち壁とを連結するとともに、隣接する前記第1突起体の前記傾斜立ち壁同士を連結し、前記第2突起体の突起高さは、前記複数の第1突起体の突起高さより低く、前記複数の第1突起体それぞれの根元部で連結し、
前記平面部の一方の板面または他方の板面が、衝撃荷重の受け面を構成する、構成としている。
【0012】
以上の構成を有する車両用樹脂製衝撃エネルギー吸収体によれば、平面部における一方の板面または他方の板面に対して衝撃荷重が作用する際、複数の第1突起体が互いに独立に変形することにより、衝撃荷重に対する反発力が上昇することを抑制することが可能であるとともに、複数の第1突起体それぞれは、一方の板面から他方の板面に向かって長溝を形成することにより、互いに対向する一対の傾斜立ち壁と、一対の立ち壁の頂部同士を周壁と略同じ高さで連結する頂壁とから構成し、傾斜立ち壁を平面部から頂壁に向かって互いに近づくように所定傾斜角度で傾斜させることで、平面部に対してほぼ直交する向きに衝撃荷重が作用する場合に、頂壁および複数の第1突起体それぞれの傾斜立ち壁が、衝撃荷重を受けるとともに、頂壁が平面部に対して底付きすることを抑制し、衝撃エネルギーに対する十分な吸収代を確保することが可能であり、また隣接する第1突起体の傾斜立ち壁同士、および周壁と傾斜立ち壁とが第2突起体により連結されることにより、衝撃荷重が斜めに作用する場合でも、傾斜立ち壁の倒れ込みを抑制することが可能であり、それにより、同様に、衝撃エネルギーに対する十分な吸収代を確保することが可能であり、総じてエネルギー吸収体全体に対して一様な衝撃荷重が負荷される場合だけでなく、斜め方向の衝撃荷重に対しても十分な変形代を確保可能であるとともに、局所的なエネルギー吸収特性のバラツキを防止することが可能である。
【0013】
また、前記複数の第1突起体それぞれは、その延び方向に直交する断面の外形が台形であり、前記頂壁は、矩形状であるのがよい。
さらに、前記所定の傾斜角度に応じて、隣接する前記第1突起体同士の前記所定間隔(a)および前記第1突起体の突起高さ(b)を、a≧bに設定するのがよい。
さらにまた、前記所定の傾斜角度に応じて、前記複数の第1突起体それぞれの前記頂壁の幅(c)を8ミリ≦c≦25ミリ、一方前記突起高さ(d)を10ミリ≦d≦90ミリに設定するのがよい。
加えて、前記平面部は、矩形状であり、前記複数の第1突起体それぞれは、前記平面部の一方の対向辺に平行に延び、前記第2突起体は、前記平面部の一方の対向辺同士を連結するように直線状に前記平面部の他方の対向辺に平行に延びるのがよい。
さらに、前記複数の第1突起体はそれぞれ、前記矩形平面部の一方の対向辺全体に亘って延びるのがよい。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明に係る衝撃エネルギー吸収体は、
樹脂製の単壁中実板状構造の衝撃エネルギー吸収体であって、
周壁により取り囲まれた平面部と、
該平面部内で、互いに平行に所定の間隔を隔てる複数の第1突起体であって、それぞれ溶融状態の熱可塑性樹脂製シートの一方の面を吸引あるいは他方の面から加圧することを通じて、一方の面から他方の面に向かって長溝を金型キャビティに沿って成形することにより構成される第1突起体を複数有し、
前記複数の第1突起体の各々は、それぞれ前記平面部から立ち上がる、互いに対向する一対の傾斜立ち壁と、該一対の立ち壁の頂部同士を前記周壁と略同じ高さで連結する頂壁とを有し、
前記一対の傾斜立ち壁は、前記平面部から前記頂壁に向かって互いに近づくように所定傾斜角度で傾斜し、互いに対向する一対の傾斜立ち壁を連結する頂壁の幅が8mmないし25mmであり、
前記一方の板面または前記他方の板面が、衝撃荷重の受け面を構成する、構成としている。
【0015】
さらに、前記所定の傾斜角度は、3°ないし10°であるのがよい。
さらにまた、前記周壁は、その外周縁に、前記平面部から外方に張り出すように張り出しフランジを有し、該張り出しフランジは、車両への取り付け部を有するのがよい。
【0016】
上記目的を達成するために、本発明に係る衝撃エネルギー吸収体の成形方法は、
車両用樹脂製衝撃エネルギー吸収体の成形方法であって、
キャビティ表面に車両用樹脂製衝撃エネルギー吸収体の突起体を形成するための長溝が設けられた金型を用い、金型のキャビティのまわりにはみ出す形態で、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートをキャビティに対向して配置する段階と、
熱可塑性樹脂製シートのキャビティに対向する面とキャビティとの間に密閉空間を形成する段階と、
該密閉空間を通じて熱可塑性樹脂製シートを吸引することにより、熱可塑性樹脂製シートを金型のキャビティに押し当てて、賦形する段階とを有し、
それにより、熱可塑性樹脂製シートのキャビティに対向する面から反対側の面に向かって突出するように、前記突起体と相補形状の突起体を成形する、構成としている。
【0017】
以上の構成の車両用樹脂製衝撃エネルギー吸収体の成形方法によれば、射出成形方法により成形した格子状リブを通じて衝撃エネルギーを吸収していた従来の場合に比べ、平面部に設けた長溝状の簡易な突起体により衝撃荷重を受けるようにすることで、衝撃荷重が斜めに負荷される場合でも、突起体自体の厚肉化を制限しつつ、突起体の倒れ込みを抑制することで、変形代を確保することが可能であるとともに、衝撃荷重が局所的に負荷される場合でも、従来の格子状リブにおいて、格子状幅を小さくすることで、逆にリブの底付きが引き起こされていたところ、このような底付きの危険性なく、同様に変形代を確保することが可能であり、総じて、安価かつ軽量な簡易構造で良好なエネルギー吸収特性を呈する樹脂製エネルギー吸収体を良好な成形性により成形可能である。
【0018】
また、前記キャビティの平面部には、互いに所定間隔を隔てた複数の第1細長突起体と、それぞれ、複数の第1細長突起体と直交する向きに複数の第1細長突起体と交差するように延び、互いに所定間隔を隔てた複数の第2細長突起体とが設けられ、前記複数の第1細長突起体の平面部からの突起高さは、前記複数の第2細長突起体の平面部からの突起高さより低いのがよい。
【0019】
上記目的を達成するために、本発明に係る衝撃エネルギー吸収体の成形方法は、
車両用樹脂製衝撃エネルギー吸収体の成形方法であって、
表面に突起体が設けられたキャビティと、キャビティのまわりに環状に形成されるピンチオフ部とが設けられた一対の分割形式の金型の上方に鉛直方向に配置された押出ダイから溶融状態の熱可塑性樹脂製シートを垂直下方に供給して、金型のキャビティのまわりにはみ出す形態で、一対の分割形式の金型の間に位置決めする段階と、
熱可塑性樹脂製シートのキャビティに対向する面とキャビティとの間に密閉空間を形成する段階と、
該密閉空間を通じて熱可塑性樹脂製シートを吸引することにより、熱可塑性樹脂製シートを金型のキャビティに押し当てて、賦形する段階と、
それにより、熱可塑性樹脂製シートのキャビティに対向する面から反対側の面に向かって突出するように、前記突起体と相補形状の突起体を成形し、
一対の分割形式の金型のピンチオフ部を当接させることにより、一対の分割形式の金型を型締して、熱可塑性樹脂製シートを型取りする段階と、を有する構成としている。
さらに、一対の分割形式の金型の型締により形成される一対の分割形式の金型内の密閉空間を加圧することにより、あるいは型締された一対の分割形式の金型を通じて密閉空間内を吸引することにより、密閉空間内の熱可塑性樹脂製シートを賦形する段階を有するのがよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に係る車両用衝撃エネルギー吸収体10の実施形態を図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
図1および
図2に示すように、車両用衝撃エネルギー吸収体10は、樹脂製の矩形薄板状の単壁構造であり、後に説明する成形方法により一体成形され、周壁12と、周壁12により取り囲まれた内部に矩形状平面部14とを有する。周壁12の高さおよび矩形状平面部14の大きさは、車両用衝撃エネルギー吸収体10を車両のどこに設置するか、想定される衝撃荷重に応じて決定すればよい。
周壁12の外周縁には、矩形平面部14から外方に張り出すように張り出しフランジ16が設けられ、張り出しフランジ16には、取り付け部18が設けられ、取り付け部18を介して車両に取り付けられるようにしている。
車両用衝撃エネルギー吸収体10の材質は、熱可塑性樹脂であり、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、または非晶性樹脂などで、より具体的にはエチレン、プロピレン、ブテン、イソプレンペンテン、メチルペンテン等のオレフィン類の単独重合体あるいは共重合体であるポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン)である。
【0021】
図1に示すように、矩形平面部14内には、2条の第1突起体20と2条の第2突起体22とが設けられている。
第1突起体20はそれぞれ、矩形平面部14の一方の対向辺15に平行に所定間隔を隔て、一方の対向辺15のほぼ全体に亘って延びる。
図2および
図3に示すように、第1突起体20はそれぞれ、一方の板面17から矩形平面部14の側の他方の板面19に向かって長深溝24を形成することにより構成され、一対の対向する傾斜立ち壁26と、傾斜立ち壁26の頂部同士を周壁12と略同じ高さで連結する頂壁28とからなる。
【0022】
一対の対向する傾斜立ち壁26は、矩形平面部14から頂壁28に向かって互いに近づくように所定傾斜角度α(
図14)で傾斜し、第1突起体20それぞれの延び方向に直交する断面の外形は、台形状であり、頂壁28は、矩形状をなす。
単一矩形薄板の肉厚は、後に説明するように、所望のエネルギー吸収特性を得るとともに、軽量化を達成可能なように、第1突起体20の突起高さH,第1突起体20の頂壁28の幅W、傾斜立ち壁の傾斜角度α、および隣接する第1突起体20同士の間隔D(
図14参照)との関係において、定めればよい。
特に、所定傾斜角度αは、後に説明するように、衝撃荷重が矩形平面部14に対して斜めに負荷される場合における傾斜立ち壁26の倒れ込みの防止、および衝撃荷重が矩形平面部14に対して直交する向き(正面から)に負荷される場合における頂壁28の矩形平面部14への落ち込み(底付き)の防止の観点から定めればよく、3°ないし10°が好ましい。3°より小さいと、頂壁28の底付き防止には有効であるが、傾斜立ち壁26の倒れ込みが引き起こされ、逆に10°より大きいと、傾斜立ち壁26の倒れ込み防止には有効であるが、頂壁28の底付きが引き起こされる。
【0023】
頂壁28の上面レベルは、張り出しフランジ16の上面と同じレベルであり、これにより、衝撃荷重が車両用衝撃エネルギー吸収体10に負荷される場合に、第1突起体20のみならず、周壁12も衝撃荷重を受け、変形代を確保することにより、弾性あるいは塑性変形することにより、衝撃エネルギーを吸収するようにしている。
この点、所望のエネルギー吸収特性を得るのに、頂壁28の幅Wは、8ミリないし25ミリが好ましく、第1突起体20の突起高さHは、10ミリないし90ミリが好ましく、第1突起体20同士の間隔Dは、第1突起体20の突起高さH以上であるのがよい。
【0024】
それに対して、第2突起体22はそれぞれ、
図1に示すように、第1突起体20と同様に、他方の対向辺21に平行に所定間隔を隔て、他方の対向辺21の全体に亘って、第1突起体20それぞれと交差して直線状に延びる。より詳細には、第2突起体22はそれぞれ、周壁12と周壁12に最も隣接する第1突起体20の傾斜立ち壁26とを連結するとともに、隣接する第1突起体20の傾斜立ち壁同士26を連結する。
第2突起体22はそれぞれ、第1突起体20と同様に、
図2に示すように、一方の板面17から矩形平面部14の側の他方の板面19に向かって長浅溝23を形成することにより構成され、
図4に示すように、一対の対向する傾斜立ち壁25と、傾斜立ち壁25の頂部同士を連結する頂壁27とからなる。
一対の対向する傾斜立ち壁25は、矩形平面部14から頂壁27に向かって互いに近づくように所定傾斜角度で傾斜し、第2突起体22それぞれの延び方向に直交する断面の外形は、台形状であり、頂壁27は、矩形状をなす。
【0025】
頂壁27の上面レベルは、張り出しフランジ16の上面より低く、第1突起体20の根元部で連結しており、それにより、特に衝撃荷重が矩形平面部14に対して斜めに負荷される場合に、第1突起体20の傾斜立ち壁26の倒れ込みを抑制することにより、傾斜立ち壁26の十分な変形代を確保するようにしている。
【0026】
図5に示すように、車両用衝撃エネルギー吸収体10は、ドアパネル30に取り付けられる。より詳細には、車両用衝撃エネルギー吸収体10は、インナーパネル32とドアトリム34との間の中空部に、ドアトリム34に張り出しフランジ16の取り付け部18を介してクリップ固定される。これにより、車両が側突する場合、乗員の肩部又は腰部がドアトリム34を介して他方の板面側(裏面側)から当たり、衝撃エネルギー吸収体10を圧潰して乗員へ加わる応力を低減するようにしている。
変形例として、
図6に示すように、車両用衝撃エネルギー吸収体10は、天井パネル38に取り付けられる。車両用衝撃エネルギー吸収体10は、インナーパネル40とルーフトリム42との間の中空部に、ルーフトリム42の内面44に頂壁28の上面46をホットメルト接着剤により固定される。これにより、車両が側突する場合、乗員の頭部がルーフトリム42を通じて一方の板面側(表面側)から当たり、頭部を保護するようにしている。
【0027】
次に、
図8ないし
図12を参照して、車両用衝撃エネルギー吸収体10の成形方法を説明する。
図8に示すように、車両用衝撃エネルギー吸収体10の成形装置100は、溶融樹脂の押出装置102と、押出装置102の下方に配置された、金型116の型締装置104とを有し、押出装置102から押出された溶融状態の熱可塑性樹脂を型締装置104に送り、型締装置104により溶融状態の熱可塑性樹脂を成形するようにしている。
【0028】
押出装置102は、従来既知のタイプであり、その詳しい説明は省略するが、ホッパー106が付設されたシリンダー108と、シリンダー108内に設けられたスクリュー(図示せず)と、スクリューに連結された油圧モーター110と、シリンダー108と内部が連通したアキュムレータ112と、アキュムレータ112内に設けられたプランジャー114とを有し、ホッパー106から投入された樹脂ペレットが、シリンダー108内で油圧モーター110によるスクリューの回転により溶融、混練され、溶融状態の樹脂がアキュムレータ室に移送されて一定量貯留され、プランジャー114の駆動によりTダイ113に向けて溶融樹脂を送り、ダイスリット(図示せず)を通じて連続的な熱可塑性樹脂製シートPが押し出され、間隔を隔てて配置された一対のローラ115によって挟圧されながら下方へ向かって送り出されて分割金型116の間に垂下される。これにより、熱可塑性樹脂製シートPはしわまたは弛みがなく張った状態で分割金型116の間に配置される。
【0029】
押出スリットは、鉛直下向きに配置され、押出スリットから押し出された熱可塑性樹脂製シートPは、そのまま押出スリットから垂下する形態で、鉛直下向きに送られるようにしている。押出スリットは、その間隔を可変とすることにより、熱可塑性樹脂製シートPの厚みを所望に設定することが可能であり、これにより、熱可塑性樹脂製シートPが、所望の厚みで分割金型116の間に配置される。
【0030】
一方、型締装置104も、押出装置102と同様に、従来既知のタイプであり、その詳しい説明は省略するが、2つの分割形式の金型116と、金型116を溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPの供給方向に対して略直交する方向に、開位置と閉位置との間で移動させ金型駆動装置とを有する。
2つの分割形式の金型116は、キャビティ118を対向させた状態で配置され、それぞれキャビティ118が略鉛直方向を向くように配置される。それぞれのキャビティ118の表面には、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPに基づいて成形される車両用衝撃エネルギー吸収体10の外形、および表面形状に応じて凹凸部が設けられる。
【0031】
分割形式の一方の金型116Bにおいて、キャビティ118Bのまわりには、ピンチオフ部122が形成され、このピンチオフ部122は、キャビティ118Bのまわりに環状に形成され、対向する金型116Aに向かって突出する。これにより、2つの分割形式の金型116A,Bを型締する際、金型116Bのピンチオフ部122の先端部が金型116Aに当接するようにしている。
【0032】
金型駆動装置については、従来と同様のものであり、その説明は省略するが、2つの分割形式の金型116はそれぞれ、金型駆動装置により駆動され、開位置において、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPが、2つの分割金型116の間に配置可能なようにされ、一方閉位置において、分割金型116Bの環状のピンチオフ部122が金型116Aに当接することにより、2つの分割金型116A,B内に密閉空間が形成されるようにしている。
【0033】
分割金型116Aの外周部には、型枠120が摺動可能に外嵌し、図示しない型枠移動装置により、型枠120が、金型116Aに対して相対的に移動可能としている。より詳細には、型枠120は、金型116Aに対して金型116Bに向かって突出することにより、金型116間に配置された熱可塑性樹脂製シートPの一方の側面に当接可能である。
分割金型116Aの内部には、真空吸引室(図示せず)が設けられ、真空吸引室は吸引穴(図示せず)を介してキャビティ118Aに連通し、真空吸引室から吸引穴を介して吸引することにより、キャビティ118Aに向かって熱可塑性樹脂製シートPを吸着させて、キャビティ118Aの外表面に沿った形状に賦形するようにしている。
図13に示すように、キャビティ118Aの外表面には、それぞれ上下方向に延び、互いに所定間隔を隔てた複数の第1細長突起体130と、それぞれ、複数の第1細長突起体130と直交する向きに複数の第1細長突起体130と交差するように延び、互いに所定間隔を隔てた複数の第2細長突起体132とが設けられ、複数の第1細長突起体130のキャビティ118Aの外表面からの突起高さは、複数の第2細長突起体132のキャビティ118Aの外表面からの突起高さより高くなるように設定される。
分割金型116には、金型116を型締したときに両金型116A,Bにより形成される密閉空間内にブロー圧をかけることが可能なように、従来既知のブローピン(図示せず)が設置されている。
【0034】
以上の構成を有する車両用衝撃エネルギー吸収体10の成形装置100を利用した衝撃エネルギー吸収体10の成形方法について以下に説明する。
まず、
図8に示すように、押出スリットから、貯留された熱可塑性樹脂を単位時間当たり所定押出量で間欠的に押し出すことにより、熱可塑性樹脂はスウェルし、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPが下方に垂下するように所定の厚みにて所定押出速度で押し出され、分割金型116の間に熱可塑性樹脂製シートPを配置する。この場合、熱可塑性樹脂製シートPは、たとえば、押し出し後成形前に、一対のローラー115の間を通過させることにより、筒状パリソンを押しつぶしてシート状にしてもよい。
この場合、熱可塑性樹脂製シートPの厚みは、押出スリットのスリット開口の間隔を調整することにより、あるいは一対のローラー115により、所望の厚みに互いに独立に設定すればよい。
【0035】
次いで、
図9に示すように、分割金型116Aの型枠120を分割金型116Aに対して、熱可塑性樹脂製シートPに向かって移動させて、熱可塑性樹脂製シートPの側面に当接させる。これにより、熱可塑性樹脂製シートPの側面、型枠120の内周面およびキャビティ118Aにより、密閉空間140が形成される。
【0036】
次いで、
図10に示すように、密閉空間140内の空気を真空吸引室から吸引孔を介して吸引することにより、熱可塑性樹脂製シートPは、キャビティ118Aに対して吸着し、それにより熱可塑性樹脂製シートPは、キャビティ118Aの表面に沿った形状に賦形される。より詳細には、キャビティ118Aの第1突起体130および第2突起体132により、熱可塑性樹脂製シートPのキャビティ118Aに対向する面から反対側の面に向かって、これらの突起体と相補形状の長溝が形成され、それにより、反対側の面には、第1突起体20および第2突起体22(
図1参照)が成形されるとともに、周壁12が形成される。
次いで、
図11に示すように、分割金型116A,Bの型締を行い、分割金型116Bのピンチオフ部122により熱可塑性樹脂製シートPの周縁部を枠取りする。
【0037】
次いで、
図12に示すように、分割金型116A,Bの型開きを行い、成形された樹脂成形品を取り出し、外周部のバリを除去し、衝撃エネルギー吸収体10が完成する。
以上のように、溶融状態の熱可塑性樹脂を間欠的に押し出すたびに、以上のような工程を繰り返すことにより、衝撃エネルギー吸収体10を次々に効率的に成形することが可能であり、押出成形により間欠的に溶融状態の熱可塑性樹脂製シートとして押し出し、押し出された熱可塑性樹脂製シートを金型116を用いて所定の形状に賦形することが可能である。
以上の構成の車両用樹脂製衝撃エネルギー吸収体の成形方法によれば、射出成形方法により成形した格子状リブを通じて衝撃エネルギーを吸収していた従来の場合に比べ、平面部に設けた長溝状の簡易な突起体により衝撃荷重を受けるようにすることで、衝撃荷重が斜めに負荷される場合でも、突起体自体の厚肉化を制限しつつ、突起体の倒れ込みを抑制することで、変形代を確保することが可能であるとともに、衝撃荷重が局所的に負荷される場合でも、従来の格子状リブにおいて、格子状幅を小さくすることで、逆にリブの底付きが引き起こされていたところ、このような底付きの危険性なく、同様に変形代を確保することが可能であり、総じて、安価かつ軽量な簡易構造で良好なエネルギー吸収特性を呈する樹脂製エネルギー吸収体を良好な成形性により成形可能である。
また、ブロー成形により二重壁構造とすると全体として、立ち壁(衝撃吸収リブ)の肉厚が薄くなり、圧潰による衝撃吸収量を確保しつつ衝撃吸収体を軽量にすることが困難であるところ、単壁構造の衝撃吸収体とすることで、立ち壁の肉厚を確保することができ、全体の樹脂量を減らした場合であっても全面圧縮時の衝撃吸収量を得ることができる。
【0038】
成形手順として、上述のように、分割金型116を型締する前にキャビティ118Aと樹脂材料との間に密閉空間を形成し、キャビティ118A側から樹脂材料を吸引することにより、樹脂材料を賦形するだけでなく、さらに、分割金型116A,Bを型締することにより、分割金型116A,B内に密閉空間を形成し、この密閉空間からブロー圧をかけることにより、樹脂材料を賦形してもよい。この方法によれば、吸引による賦形と、ブロー圧による賦形とを行うことにより、複雑な形状の成形であっても良好な成形性を確保することができる。さらに、分割金型116A,Bを型締する際、キャビティ118A側から樹脂材料を吸引しつつ密閉空間からブロー圧をかけることにより、樹脂材料を賦形するのでもよい。この方法によれば、吸引によりキャビティ118Aの凹部に溜まった空気を除去しつつブロー圧をかけることにより、同様に良好な成形性を確保することが可能である。
【0039】
本発明者は、本衝撃エネルギー吸収体の衝撃エネルギー吸収特性を確認する試験を以下の要領で行った。
(1)試験方法
(i)保土ヶ谷技研株式会社製の衝突試験機を用いて、先端に直径60ミリの荷重作用面を有し、重量20kgの衝突子を20km/時の速度で、衝撃エネルギー吸収体に衝突させて、圧縮歪70%時の衝撃エネルギーを算定した。
(ii)試験パラメータ
第1に、衝撃エネルギー吸収体の構造、より詳細には、単壁構造であるか、対向壁による中空構造であるか、第2に、衝撃荷重を受けるリブの形態、より詳細には、円錐台状リブあるいはスリット状リブ(第1突起体により構成される長深溝)、第3に、スリット状リブ(第1突起体により構成される長深溝)における頂壁の幅、第4に、スリット状リブ(第1突起体により構成される長深溝)における長浅溝(第2突起体により構成される長浅溝)の有無、以上により、
図15に示すように、ケース1ないしケース5を設定した。
なお、ケース5が本衝撃エネルギー吸収体に相当する。
(iii)
図15に示すように、ケース1ないしケース5それぞれについて、衝突子による衝撃荷重の負荷方法として、全体的に一様な衝撃荷重の負荷、局所的な衝撃荷重の負荷および斜めの衝撃荷重の負荷について、試験を行なった。なお、斜めの衝撃荷重の負荷において、周壁の内側の略全体に30°傾斜方向から衝撃荷重を負荷した。
【0040】
(2)試験条件
1.衝撃エネルギー吸収体の諸元(ケース3〜5:頂壁の幅、第2突起体以外については共通)
(イ)材質:ポリプロピレン
(ロ)肉厚:1.9mm
(ハ)寸法:縦310mm× 横210mm
第1突起体:設置数:2
突起高さ:40mm
隣接する突起体間の間隔:60mm
頂壁の幅:5mm(ケース3)又は10mm(ケース4)
頂壁の長さ:290mm
立ち壁の傾斜角度:3°
第2突起体:設置数:2(ケース5)
突起高さ:10mm
隣接する突起体間の間隔:85mm
頂壁の幅:3mm
頂壁の長さ:全体で210mm、周壁と第1突起体の傾斜立ち壁間70mm、複数の第1突起体の傾斜立ち壁間50mm
立ち壁の傾斜角度:3°
2.衝撃荷重の負荷方法
衝撃エネルギー吸収体の第1突起体、および第2突起体の長溝による開口を有する表面側(一方の板面側)から衝撃荷重を負荷した。
【0041】
(3)試験結果
図7および
図15に試験結果を示す。尚、
図15における吸収エネルギーは、圧縮歪み70%まで各衝撃エネルギー吸収体を圧潰した際に荷重が6kNを超えない範囲での吸収エネルギーを示す。
(i)
図7に示すように、ケース4およびケース5の場合には、ケース3とは異なり、変位率が70%に達するまで、衝撃荷重の急激な上昇は抑制され、一方、ケース2とは異なり、変位率が70%に達するまで、衝撃荷重の急激な低下も抑制されている。
(ii)ケース2ないしケース5において、重量/肉厚が略一定である場合、全面圧縮の場合の衝撃エネルギー吸収特性に有意な差がなく、ケース1の中空構造の場合と、ケース2ないしケース5の単壁構造それぞれとを比較すれば、全面圧縮の場合の衝撃エネルギー吸収特性に有意な差がない。
(iii)ケース2ないしケース5において、局所的な衝撃荷重の負荷に対する衝撃エネルギー吸収特性は、ケース5が最も優れ、ケース2が最も劣り、ケース4とケース5とは、有意な差がない。これは、円錐台状リブに比べ、長深溝状のスリットリブの場合の方が、リブの一体性が高いため、局所的な衝撃エネルギーの吸収特性のばらつきが小さく、ケース3とケース4との比較より、頂壁の幅が局所的な衝撃荷重の負荷に対する衝撃エネルギー吸収特性に影響を及ぼすことを確認した。
(iv)ケース4とケース5との比較より、斜めの衝撃荷重の負荷に対する衝撃エネルギー吸収特性は、ケース5が優れる。これは、長浅溝状の第2突起体の存在により、隣接する第1突起体の傾斜立ち壁同士が連結されることにより、斜めの衝撃荷重に対して、傾斜立ち壁の倒れ込みが抑制され、それにより、衝撃エネルギーを吸収する変形代が確保されるものと推察される。
(v)ケース1とケース5との比較より、全体的に一様な衝撃荷重の負荷、局所的な衝撃荷重の負荷および斜めの衝撃荷重の負荷それぞれにおいて、衝撃エネルギー吸収特性に有意な差は生じておらず、単壁構造の方が、中空構造より衝撃エネルギー吸収体の軽量化を達成可能である点で有利である。
【0042】
図14(局所負荷の場合)に示すように、以上の構成を有する車両用樹脂製衝撃エネルギー吸収体10によれば、平面部14における一方の板面または他方の板面に対して衝撃荷重が作用する際、複数の第1突起体20が互いに独立に変形することにより、衝撃荷重に対する反発力が上昇することを抑制することが可能であるとともに、複数の第1突起体20それぞれは、一方の板面から他方の板面に向かって長深溝24を形成することにより、互いに対向する一対の傾斜立ち壁26と、一対の立ち壁26の頂部同士を周壁12と略同じ高さで連結する頂壁28とから構成し、傾斜立ち壁26を平面部14から頂壁28に向かって互いに近づくように所定傾斜角度αで傾斜させることで、平面部14に対してほぼ直交する向きに衝撃荷重が作用する場合に、頂壁28および複数の第1突起体20それぞれの傾斜立ち壁26が、衝撃荷重を受けるとともに、頂壁28が平面部14に対して底付きすることを抑制し、衝撃エネルギーに対する十分な吸収代を確保することが可能であり、また隣接する第1突起体20の傾斜立ち壁26同士、および周壁12と傾斜立ち壁26とが第2突起体22により連結されることにより、衝撃荷重が斜めに作用する場合でも、傾斜立ち壁26の倒れ込みを抑制することが可能であり、それにより、同様に、衝撃エネルギーに対する十分な吸収代を確保することが可能であり、総じてエネルギー吸収体全体に対して一様な衝撃荷重が負荷される場合だけでなく、斜め方向の衝撃荷重に対しても十分な変形代を確保可能であるとともに、局所的なエネルギー吸収特性のバラツキを防止することが可能である。
【0043】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば、種々の修正あるいは変更が可能である。
たとえば、本実施形態において、隣接する第1突起体20の傾斜立ち壁26を連結する第2突起体22は、専ら成形上の便宜から、第1突起体20の延び方向に対して直交する向きにすべての第1突起体20と交差するように直線状に設けるものとして説明したが、それに限定されることなく、傾斜立ち壁26の根元部で連結し、斜めの衝撃荷重に対して傾斜立ち壁26の倒れ込みを抑制することが可能である限り、たとえば、隣接する第1突起体20の傾斜立ち壁26を連結する第2突起体22と、次に隣接する第1突起体20の傾斜立ち壁26を連結する第2突起体22とを第1突起体20の延び方向にオフセット配置してもよい。
また、本実施形態において、熱可塑性樹脂製シートは、溶融状態で下方に押し出して、一対の分割金型116の間に配置したが、それに限定されることなく、予め予備成形した熱可塑性樹脂製シートを、再加熱して溶融状態として一対の分割金型116の間に配置するのでもよい。