特許第5700216号(P5700216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サントリーホールディングス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5700216-飲料充填設備とその洗浄殺菌方法 図000002
  • 特許5700216-飲料充填設備とその洗浄殺菌方法 図000003
  • 特許5700216-飲料充填設備とその洗浄殺菌方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5700216
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】飲料充填設備とその洗浄殺菌方法
(51)【国際特許分類】
   B67C 3/00 20060101AFI20150326BHJP
【FI】
   B67C3/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-140884(P2011-140884)
(22)【出願日】2011年6月24日
(65)【公開番号】特開2013-6617(P2013-6617A)
(43)【公開日】2013年1月10日
【審査請求日】2013年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100114959
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 徹也
(74)【代理人】
【識別番号】100126930
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】保仙 裕
(72)【発明者】
【氏名】津守 研二
(72)【発明者】
【氏名】青木 亮爾
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−182407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67C 3/00
B65B 55/04
B65B 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料を容器に充填可能な充填ヘッドを外周部に備えた回転体と、
前記回転体を上下方向に沿う回転軸芯周りで駆動回転させる駆動ユニットと、
前記回転体が設置されたクリーンルームと、
前記クリーンルーム内に通気する通気装置とを有し、
前記クリーンルーム内の上部空間が、前記回転軸芯周りで環状に配置された区画壁で当該区画壁の内側空間と外側空間とに区画され、
前記駆動ユニットが前記内側空間内の上部に配置され、
前記通気装置が、前記内側空間を経由して当該内側空間の下方から前記外側空間に通気するように設けられている飲料充填設備。
【請求項2】
飲料を容器に充填可能な充填ヘッドを外周部に備えた回転体と、
前記回転体を上下方向に沿う回転軸芯周りで駆動回転させる駆動ユニットと、
前記回転体が設置されたクリーンルームと、
前記クリーンルーム内に通気する通気装置とを有し、
前記クリーンルーム内の上部空間が、前記回転軸芯周りで環状に配置された区画壁で当該区画壁の内側空間と外側空間とに区画され、
前記駆動ユニットが前記内側空間外の上方において、前記クリーンルームの天井壁の上に配置され、
前記通気装置が、前記内側空間を経由して当該内側空間の下方から前記外側空間に通気するように設けられている飲料充填設備。
【請求項3】
前記区画壁が前記回転体と一体に回転自在に設けられている請求項1又は2に記載の飲料充填設備。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の飲料充填設備の洗浄殺菌方法であって、
前記通気装置で、前記内側空間を経由して当該内側空間の下方から前記外側空間に通気しながら、前記クリーンルーム内を洗浄する飲料充填設備の洗浄殺菌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料を容器に充填可能な充填ヘッドを外周部に備えた回転体と、前記回転体を上下方向に沿う回転軸芯周りで駆動回転させる駆動ユニットと、前記回転体が設置されたクリーンルームと、前記クリーンルーム内に通気する通気装置とを有する飲料充填設備とその洗浄殺菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記飲料充填設備では、従来、回転体とその駆動ユニットとがクリーンルーム内に設置されている。
クリーンルームは、通気装置の天井側に設けた吹き出し口から清浄空気を供給することにより、クリーンルーム内の全体がクリーンルームの外側よりも気圧が高い陽圧空間に一様に維持される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−40396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
飲料充填設備において、飲料を容器に充填する際にミスト状の飲料が充填ヘッドから飛散し、充填ヘッドや回転体に付着して汚れが発生する。この付着汚れを放置しておくと飲料充填設備自体が衛生的でなくなるため、消費者に対してより衛生的かつ安全な飲料を提供するためにも、充填ヘッド等のクリーンルーム内にある機器を定期的に、洗浄液で洗浄し高温の熱水や高温蒸気で殺菌する。
このクリーンルーム内の洗浄殺菌作業時に、クリーンルーム内を陽圧空間に維持していても、飛散した洗浄液や蒸気が駆動ユニットに付着して回転体を正常に駆動させることができなくなるおそれがある。
したがって、洗浄液や蒸気が駆動ユニットに付着しないように養生する必要があり、クリーンルーム内の洗浄殺菌作業が煩雑化するおそれがある。本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、飲料充填設備への汚れの付着を防ぎ、クリーンルーム内の洗浄殺菌作業の簡略化を図ることができる飲料充填設備および飲料充填設備の洗浄殺菌方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による飲料充填設備の第1特徴構成は、飲料を容器に充填可能な充填ヘッドを外周部に備えた回転体と、前記回転体を上下方向に沿う回転軸芯周りで駆動回転させる駆動ユニットと、前記回転体が設置されたクリーンルームと、前記クリーンルーム内に通気する通気装置とを有し、前記クリーンルーム内の上部空間が、前記回転軸芯周りで環状に配置された区画壁で当該区画壁の内側空間と外側空間とに区画され、前記駆動ユニットが前記内側空間内の上部に配置され、前記通気装置が、前記内側空間を経由して当該内側空間の下方から前記外側空間に通気するように設けられている点にある。
【0006】
本構成の飲料充填設備は、クリーンルーム内の上部空間が、回転体の回転軸芯周りで環状に配置された区画壁で当該区画壁の内側空間と外側空間とに区画され、駆動ユニットが内側空間内の上部に配置されている。
このため、クリーンルーム内の洗浄殺菌作業時に洗浄液や蒸気が飛散しても、その洗浄液や蒸気の駆動ユニットへの付着を区画壁で阻止することができる。
【0007】
また、本構成の飲料充填設備は、通気装置が、内側空間を経由して当該内側空間の下方から外側空間に通気するように設けられている。
このため、クリーンルーム内の洗浄作業時に通気装置で通気することにより、内側空間を外側空間よりも気圧が高い陽圧空間に維持して、外側空間から内側空間への空気の流入を防止することができ、飛散した洗浄液や蒸気の内側空間への侵入及び駆動ユニットへの付着を防止することができるとともに、容器への飲料充填時において充填ヘッドから飛散したミストが内部空間への流入を防止し外部空間へと押し出すので、内部空間にある充填ヘッド等のミスト付着及び汚れを防止することができる。
【0008】
したがって、本構成の飲料充填設備であれば、クリーンルーム内の洗浄殺菌作業時に、駆動ユニットを養生することなく、通気装置で通気することにより洗浄液や蒸気の駆動ユニットへの付着を防止することができ、クリーンルーム内の洗浄作業の簡略化を図ることができる。さらに、内部空間にある充填ヘッド等の機器が汚れにくくなり、機器の洗浄殺菌頻度が減少するので、洗浄殺菌を実施していた時間を生産に振り分けることができきるとともに、洗浄殺菌のための労力をより軽減することが可能となる。
【0009】
本発明の第2特徴構成は、飲料を容器に充填可能な充填ヘッドを外周部に備えた回転体と、前記回転体を上下方向に沿う回転軸芯周りで駆動回転させる駆動ユニットと、前記回転体が設置されたクリーンルームと、前記クリーンルーム内に通気する通気装置とを有し、前記クリーンルーム内の上部空間が、前記回転軸芯周りで環状に配置された区画壁で当該区画壁の内側空間と外側空間とに区画され、前記駆動ユニットが前記内側空間外の上方において、前記クリーンルームの天井壁の上に配置され、前記通気装置が、前記内側空間を経由して当該内側空間の下方から前記外側空間に通気するように設けられている点にある。
【0010】
本構成であれば、飛散した洗浄液や蒸気が内側空間に万一侵入したとしても、その洗浄液や蒸気の駆動ユニットへの付着を天井壁で阻止することができ、さらに駆動ユニットを考慮しなくてもよいのでクリーンルーム内の全ての範囲を徹底的に洗浄殺菌ができるのでクリーンルーム内の衛生状態をより高い状態で維持することができる。
【0011】
本発明の第3特徴構成は、前記区画壁が前記回転体と一体に回転自在に設けられている点にある。
【0012】
本構成であれば、区画壁を回転体に設けることで、回転体が回転しながらも、クリーンルーム内の上部空間を区画壁の内側空間と外側空間とに区画することができる。
【0013】
本発明の第4特徴構成は、前記第1〜第3特徴構成のいずれかの飲料充填設備の洗浄殺菌方法であって、前記通気装置で、前記内側空間を経由して当該内側空間の下方から前記外側空間に通気しながら、前記クリーンルーム内を洗浄する点にある。
【0014】
本構成の飲料充填設備の洗浄殺菌方法であれば、内側空間を外側空間よりも気圧が高い陽圧空間に維持して、外側空間から内側空間への空気の流入を防止しながら、クリーンルーム内を洗浄及び殺菌することができる。
したがって、駆動ユニットを養生することなく、飛散した洗浄液や蒸気の内側空間への侵入及び駆動ユニットへの付着を防止して、クリーンルーム内の洗浄殺菌作業の簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】飲料充填設備を示す側面図である。
図2】飲料充填設備を示す平面図である。
図3】第2実施形態の飲料充填設備を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1図2は、本発明による飲料充填設備を示す。
飲料充填設備は、飲料をペットボトルや金属缶などの容器に充填可能な複数の充填ヘッド1を外周部に所定間隔で備えた回転体としてのスターホイール2と、スターホイール2を鉛直方向(上下方向)に沿う回転軸芯X周りで駆動回転させる電動モータや制御装置などを備えた駆動ユニット3と、スターホイール2が回転自在に設置されたクリーンルーム4と、クリーンルーム4内に清浄空気を通気するファンなどの通気装置5とを有している。
【0017】
スターホイール2は、図2に示すように回転軸芯X周りでリング状に形成されている。
充填ヘッド1は、液チャンバ6と、電磁流量計7と、充填バルブ8と、空の容器を取り込む容器取込み部9とを備えている。
空の容器は、図示しない洗浄装置で洗浄殺菌された後、スターホイール2に搬送されて容器取込み部9に取り込まれる。
【0018】
液チャンバ6には、液配管10からスイベルジョイント11を介して供給された充填液(飲料)が貯留され、液チャンバ6に貯留された充填液が電磁流量計7で計量されて、容器取込み部9に取り込まれている容器に充填バルブ8で充填される。
充填液が充填された容器は、図示しない密封装置に搬送されてキャップなどで密封される。
【0019】
クリーンルーム4は、天井壁12と外周壁13と床面14とで囲まれており、クリーンルーム4内の上部空間が、スターホイール2の回転軸芯X周りで環状に配置されたステンレス鋼製の円筒状区画壁15で、当該区画壁15の内側空間16と内側空間16よりも容積が大きい外側空間17とに区画されている。
【0020】
区画壁15は、上端側が天井壁12に接触しない状態で、下端側がスターホイール2に固定されて、スターホイール2と一体に回転自在に設けられており、液チャンバ6などが内側空間16に入り込んでいる。
駆動ユニット3は、内側空間外16の上方において、天井壁12の上に配置され、スターホイール2に回転動力を伝達する駆動回転軸18が区画壁15と同芯状に設けられている。
このため、クリーンルーム4内の洗浄殺菌作業時に区画壁15をスターホイール2と一体回転させることにより、内側空間16の空気を旋回流動させて遠心力で外側空間17に向けて勢い良く噴出させ易くなり、外側空間17から内側空間16への空気の流入を効果的に防止することができる。
【0021】
通気装置5は天井壁12の上側に固定され、清浄空気の吹き出し口19が天井壁12の内側空間16に臨む部分に形成されている。
通気装置5は、充填作業時やクリーンルーム4内の洗浄殺菌作業時に、加圧された清浄空気を吹き出し口19から内側空間16に常時吹き出す。
【0022】
吹き出し口19から内側空間16に吹き出された清浄空気は、内側空間16を経由して当該内側空間16の下方から、スターホイール2の中心開口20や充填バルブ8近くの隙間を通して外側空間17に通気され、さらに、外周壁13の下端と床面14との間に形成された隙間21を通して室外に排気されて、クリーンルーム4内が清浄に維持される。
【0023】
スターホイール2の中心開口20や充填バルブ8近くの隙間は、清浄空気の通過に抵抗を与えて、内側空間16を外側空間17よりも気圧が高い陽圧空間に維持できるように設けてある。
【0024】
上記飲料充填設備では、クリーンルーム4内の洗浄時に、通気装置5で、内側空間16を経由して当該内側空間16の下方から外側空間17に清浄空気を常時通気しながら洗浄及び殺菌する。
【0025】
したがって、駆動ユニット3を養生することなく、飛散した洗浄液や蒸気の内側空間16への侵入及び駆動ユニット3への付着を防止して、クリーンルーム4内の洗浄殺菌作業の簡略化を図ることができると共に、区画壁15の内側(内側空間16)の洗浄殺菌を省略することができるので洗浄殺菌時間を短縮して洗浄コストの減少を図ることができる。
【0026】
また、クリーンルーム4の全体を一様な陽圧空間に維持するのではなく、クリーンルーム4のうちの内側空間16を外側空間17よりも気圧が高い陽圧空間に維持するので、充填作業時やクリーンルーム4内の洗浄殺菌作業時に、通気装置5による通気量を少なくして、通気装置5の駆動コストの減少を図ることもできる。
【0027】
さらに、液チャンバ6などの附属設備が内側空間16に入り込んだ状態で回転するので、区画壁15がスターホイール2と一体に回転するに伴って、内側空間16内の清浄空気を旋回流動させることができ、清浄空気を充填バルブ8近くの隙間から遠心力で勢い良く噴出させて、充填バルブ8近くの隙間を通した洗浄液や蒸気の内側空間16内への流入を効果的に防止することができる。
【0028】
〔第2実施形態〕
図3は、本発明の別実施形態を示す。
本実施形態では、駆動ユニット3を天井壁12の下方位置において内側空間16内の上部に配置してある。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0029】
〔その他の実施形態〕
1.本発明による飲料充填設備は、区画壁が、回転体との相対回転を許容する状態で、クリーンルームの天井壁に固定されていてもよい。
2.本発明による飲料充填設備は、区画壁が、充填ヘッドに干渉しない範囲で、回転体の側面を覆うように設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 充填ヘッド
2 回転体
3 駆動ユニット
4 クリーンルーム
5 通気装置
12 天井壁
15 区画壁
16 内側空間
17 外側空間
X 回転軸芯
図1
図2
図3