(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1周期内において、まず、ダミー用送信アンテナから信号が送信され、それに続けて、複数の基地局から異なるタイミングで、順次、信号が送信されることを特徴とする請求項1に記載の位置検知システム。
有効受信エリアが3つ以上であり、それらの間の境界エリアに前記ダミー用送信アンテナが設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の位置検知システム。
前記ダミー用送信アンテナは、ダミー用送信アンテナの共振回路を構成するコイルに対向して電磁誘導結合するコイルに接続された導電性部材を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の位置検知システム。
前記複数の基地局の送信アンテナおよび前記ダミー用送信アンテナからLF帯の信号が送信され、前記携帯機からはUHF帯の応答信号が送信されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の位置検知システム。
前記複数の基地局の送信アンテナおよび前記ダミー用送信アンテナからはUHF帯の信号が送信され、前記携帯機からUHF帯の応答信号が送信されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の位置検知システム。
【背景技術】
【0002】
基地局と携帯機を備え、基地局から送信される電磁波の有効受信エリア内に携帯機が存在するとき、その存在を検知して携帯機、つまり携帯機を伴う人や物品の位置を検知する位置検知システムが知られている。
【0003】
図16は、従来のLF帯やUHF帯の電磁波を用いて携帯機の存在を管理する位置検知システムを示すブロック図である。この位置管理システムは、基地局Aと携帯機Bを備える。
【0004】
基地局Aは、LF帯やUHF帯の電磁波を周期的に送信する。携帯機Bが基地局Aから送信される電磁波を受信し、その電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流で動作あるいはトリガ起動されて動作できるエリアが、基地局Aに対する携帯機Bの有効受信エリアZone Aである。有効受信エリアZone Aは、基地局Aの送信アンテナから一定距離範囲内のエリアとなる。以下では、送信アンテナを含めて基地局と称し、同様に、受信アンテナを含めて携帯機と称する。
【0005】
携帯機Bは、有効受信エリアZone A内に存在するとき、基地局Aから送信される電磁波を受信し、該電磁波の電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流で動作あるいはトリガ起動されて動作し、応答信号を送信する。
【0006】
基地局Aは、携帯機Bから送信される応答信号を受信することにより、有効受信エリアZone A内に携帯機Bが存在することを検知できる。つまり、基地局Aは、有効受信エリアZone Aを管理エリアとして携帯機Bから送信される応答信号を受信することで携帯機Bが有効受信エリアZone A内に存在することを検知できる。
【0007】
携帯機には、パッシブ型携帯機とアクティブ型携帯機とがある。パッシブ型携帯機は、電池を内蔵せず、基地局から送信される電磁波の電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流により生成される電力を動作エネルギとして動作し、応答信号を送信する。一方、アクティブ型携帯機は、電池を内蔵し、通常はスリープ状態であるが、基地局から送信される電磁波の電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流でトリガ起動されて通常動作状態となり、内蔵する電池の電力を動作エネルギとして動作し、応答信号を送信する。
【0008】
電磁誘導現象による誘導起電力や誘導電流の発生には、基地局から送信される電磁波の特に放射磁界が寄与する。すなわち、携帯機の有効受信エリアは、基地局から送信される電磁波が持つ放射磁界が有効なエリアであり、送信される電磁波の周波数(波長)と送信電力に応じた広さを有する。基地局(送信アンテナ)からの距離が電磁波の4分の1波長(λ/4)の範囲では電界より磁界が優勢であるが、電磁誘導現象による誘導起電力や誘導電流の発生には、電波法上における送信電力の制限を考慮すると、λ/1000程度の距離範囲内が有効となる。この距離範囲内が放射磁界の有効なエリア、つまり、基地局に対する携帯機の有効受信エリアとなる。例えば、100kHzのLF(Low Frequency)帯の電磁波を使用する場合、基地局(送信アンテナ)から3m程度までの距離範囲内ならば基地局からの放射磁界を使用して携帯機を動作あるいはトリガ起動して動作させることができる。
【0009】
基地局が送信する電磁波にLF帯を使用する場合とUHF(Ultra-High Frequency)帯を使用する場合の有効受信エリアを比べると、LF帯は、UHF帯に比べて波長が100倍〜1000倍長いので、基地局が同一の送信電力を持つ場合、LF帯の有効受信エリアは、UHF帯の有効受信エリアよりはるかに広くなり、携帯機を動作あるいはトリガ起動して動作させることができるエリアが広い。したがって、有効受信エリアの面ではLF帯の利用が有利である。また、電波法上における送信電力の制限の点からも、LF帯の方がUHF帯よりも大きな送信電力を出力できるので有利である。しかし、携帯機の有効受信エリアが基地局(送信アンテナ)からλ/1000程度の距離範囲内に制限されることに変わりはない。
【0010】
位置検知システムにパッシブ型携帯機を用いるにしてもアクティブ型携帯機を用いるにしても、携帯機の有効受信エリアは、基地局から送信される電磁波、特に、放射磁界による電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流で携帯機を動作あるいはトリガ起動して動作させることができる範囲であり、基地局から一定距離範囲内のエリアに限られる。すなわち、有効受信エリアは、基地局近くの狭いエリア(LF帯の放射磁界の有効受信エリアは数m程度)に限定される。
【0011】
図17は、LF送信アンテナからの距離と磁界強度の関係を示し、
図18は、基地局(LF送信アンテナ)に対する携帯機の有効受信通信エリアを示す。
図17および
図18に示すように、基地局Aから送信される電磁波の磁界強度は、基地局Aからの距離の3乗に従って低下する。携帯機の受信感度閾値以上の磁界強度が得られる範囲が有効受信エリアZone Aとなる。LF帯の電磁波の場合、携帯機の受信感度を考慮すると、実際の有効受信エリアZone Aは、基地局Aの送信アンテナ近くの半径数m程度の範囲に限定される。
【0012】
非特許文献1には、基地局から送信される電磁波を携帯機で直接受信し、電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流で携帯機をトリガ起動して動作させる入退室管理システムが記載されている。
【0013】
特許文献1には、位置情報提供システムに関し、例えばホテル内の各客室付近などに設けたセンサで、非接触タグから発せられる微弱な電波を受信してICタグ番号を検出し、センサの設置位置情報と検出されたICタグ番号から施設利用者の位置に関する情報を求めることが記載されている。
【0014】
特許文献2には、アクティブ型のRFIDタグと電磁波の送受信によりタグ位置と通過方向の検知を同時に行う動態管理システムに関し、異なる位置信号の電磁波(または電波)を発信エリアA,Bにエリア境界C(A,Bの一部が重なるエリア)が形成されるように発信し、発信エリアA,Bへの位置信号の搬送波を互いに逆位相にしてエリア境界C内では互いの位置信号の同一部分が打ち消されて急激に減衰するようにし、あるいは発信エリアA,Bへの位置信号の搬送波を同相にしてエリア境界C内では互いの位置信号が重畳されるようにし、タグが受信した位置信号に応じたRF信号の変化からタグ位置と通過方向を検知すること、が記載されている。
【0015】
特許文献3には、IDタグの移動を検出する動態管理システムに関し、メイントリガー領域に侵入した人(IDタグ)を検出するためのメイントリガー線をメイントリガー領域に設け、メイントリガー領域に近接したキャンセルトリガー領域にキャンセルトリガー線を設け、メイントリガー線による磁界をトリガとしてIDタグから出力される固有ID番号を受信してIDタグの移動を検出し、メイントリガー線およびキャンセルトリガー線による磁界をトリガとしてIDタグから出力される固有ID番号を受信したときの受信時間差によってIDタグの移動方向を検出すること、が記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明を説明する。本発明は、特に、基地局から送信される電磁波(主に磁界)により携帯機をトリガ起動して動作させることができるアクティブタグ方式により携帯機の位置を検知する位置検知システムに関するので、以下では、携帯機がアクティブ型携帯機であり、基地局から送信される電磁波がLF帯の信号(LF信号)であり、携帯機からUHF帯の信号(UHF応答信号)が送信されるとして説明する。
【0031】
図1は、本発明に係る位置検知システムの第1の実施形態を示すブロック図(a)およびその動作説明図(b)である。
【0032】
第1の実施形態の位置検知システムは、基地局A1,A2を備える。各基地局A1,A2はそれぞれLF送信アンテナおよびUHF受信アンテナを備える。LF送信アンテナは、LF信号(LF帯の電磁波)を送信し、UHF受信アンテナは、携帯機から送信されるUHF応答信号(UHF帯の電磁波)を受信する。
【0033】
携帯機は、基地局A1,A2から送信されるLF信号を受信する。基地局A1,A2が単独に存在すると考えれば、基地局A1,A2から送信されるLF信号の電磁波磁界強度が一定レベル(携帯機の受信感度閾値)以上のエリアが携帯機を動作させるのに有効なエリア、すなわち、有効受信エリアとなる。
図1では、基地局A1,A2に対する携帯機の有効受信エリアはそれぞれ、Zone A1,Zone A2であり、各基地局A1,A2を中心とする円状のエリアとなる。しかし、基地局A1,A2が互いに近づけて設けられると、有効受信エリアZone A1,Zone A2はその一部が重なり合って境界エリアZone Cを形成する。
【0034】
境界エリアZone Cでは、基地局A1,A2から送信されるLF信号の電磁波磁界強度に大きな差異がないので、電波環境によって携帯機が基地局A1の有効受信エリアZone A1に所在すると検知されたり、基地局A2の有効受信エリアZone A2に所在すると検知されたり、あるいは基地局A1,A2から送信されるLF信号を分離して受信できなくなったりし、携帯機が所在するエリアの位置検知動作が曖昧になるという問題がある。
【0035】
この問題を解決するため、本発明では、境界エリアZone Cに基地局(LF送信アンテナ)Dを設けている。基地局Dは、境界エリアZone Cを含むエリアにLF信号を送信する。基地局DがLF信号を送信するエリアは、ループ状アンテナを構成するケーブルを張り巡らす形状や送信電力を調整
することにより任意の形状に設定できる。なお、後述するように、基地局A1,A2,Dからは互いにコードが異なるLF信号が異なるタイミングで周期的に送信される。携帯機は、ある1周期内において基地局Dから送信されるLF信号を受信した場合、該1周期内において基地局A1,A2から送信されるトリガ起動信号を受信しても応答信号を送信しないように予め設定しておく。
【0036】
基地局A1,A2,Dは、互いにコードが異なるLF信号(トリガ起動信号)を異なるタイミングで周期的に送信する。基地局A1,A2,Dが送信するLF信号は、同じあるいは近い周波数であっても構わない。携帯機は、ある周期内において基地局Dから送信されるLF信号を受信した場合、上記設定により、該周期内において基地局A1,A2から送信されるLF信号を受信しても応答しない。すなわち、携帯機は、基地局Dから送信されるLF信号の受信を優先させて応答しない仕組みを備えている。携帯機が基地局Dから送信されるLF信号を受信するのは、基地局Dから送信されるLF信号の電磁波磁界強度が携帯機の受信感度閾値以上となるエリア、すなわち、基地局Dに対する携帯機の有効受信エリア内に携帯機が所在する場合である。
図1では、このエリアをZone Dで示している。
【0037】
これにより、基地局Dは、有効受信エリアZone A1とZone A2の間に境界エリアZone Cを含む非応答エリアZone Dを形成する。基地局DのLF送信アンテナは、携帯機の位置検知用のものでなく、非応答エリアZone Dを形成するためのダミー用送信アンテナである。
【0038】
なお、電波環境が変化しても「非応答エリアZone D≧境界エリアZone C」が保たれるようにしておく。また、携帯機が非応答のエリアをできるだけ狭くするため、非応答エリアZone Dは、境界エリアZone Cの形状に近いことが好ましい。
【0039】
上記設定により、携帯機は、非応答エリアZone Dでは基地局A1,A2に対して応答せず、非応答エリアZone Dを除く有効受信エリア(以下、実効受信エリアと称す) Zone A1',Zone A2'に所在する場合のみ基地局A1,A2に対して応答する。このように、通信ゾーンは、実効受信エリアZone A1',Zone A2'および非応答エリアZone Dの3つのエリアに明確に区分されるので、有効受信エリアZone A1,Zone A2が近接あるいは重複するように基地局A1,A2を設けても、携帯機の位置検知動作に曖昧さが生じることがなく、その位置を明確に区分して知ることができる。すなわち、有効受信エリアZone A1, Zone A2の境界部分には、基地局(ダミー用送信アンテナ)Dにより非応答エリアZone Dが形成されていて、独立の実効受信エリアZone A1'A, Zone A2'が形成されているので、検出される携帯機の位置が曖昧になることはなく、明確に判別できる。
【0040】
なお、
図1では、有効受信エリアZone A1,Zone A2の境界部分だけに基地局(ダミー用送信アンテナ)Cを設けているが、それに加えて、有効受信エリアZone A1,Zone A2の上下や左右の部分など、適宜の部分に基地局(ダミー用送信アンテナ)を設けて実効受信エリアZone A1',Zone A2'を規定することもできる。
【0041】
本発明の手法は、携帯機がエリア内に位置するか否かで判別するものであり、各エリアは互いに明確に区分されるので、従来の電波強度による位置判別方式や複数の基地局を利用した3点測量による位置判定システムに比べ、簡単かつ明確に携帯機の位置を判別できる。
【0042】
以上のように、基地局(ダミー用送信アンテナ)によって通信ゾーンを区分する方法を利用すれば、例えば、
図2に示すように、ドアの前方、後方をそれぞれ実効受信エリアZone A1' Zone A2'とし、ドアの真下を非応答エリアZone Dとすることで、簡単かつ確実にドアの入退出を判定できる。
【0043】
携帯機を携えた人がドアを通って入室すると、携帯機がまず実効受信Zone A1'で判別され、一旦非応答エリアZone Dで応答しなくなり、次に実効受信エリアZone A2'で判別される。これにより携帯機を携えた人が入室したことを判定できる。同様に、携帯機を携えた人がドアを通って退室すると、携帯機がまず実効受信エリアZone A2'で判別され、一旦非応答エリアZone Dで応答しなくなり、次に実効受信エリアZone A1'で判別される。これにより携帯機を携えた人が退室したことを判定できる。また、携帯機を携えた人がドアを通過せずに戻った場合、実効受信エリアZone A1'のみ、あるいは実効受信エリアZone A2'のみが判別されるので、ドアを通過しなかったことを判定できる。
【0044】
図2は、本発明に係る位置検知システムの第2の実施形態を示すブロック図(a)およびその動作説明図(b)である。
【0045】
図1に示す第1の実施形態では、基地局A1,A2に対する携帯機の有効受信エリアZone A1,Zone A2が円状であるが、
図2に示す第2の実施形態では、それが略方形状である点が異なる。略方形状の有効受信エリアZone A1,Zone A2は、ケーブル状アンテナ線をループ状に張り巡らすことにより容易に形成できる。有効受信エリアZone A1,Zone A2が互いに重なる境界エリアZone Cに基地局(ダミー用送信アンテナ)Dを設けることで、略方形状の実効受信エリアZone A1',Zone A2'を形成することができる。略方形状の実効受信エリアZone A1',Zone A2'は、通路や部屋内に所在する携帯機の位置を検知するのに好ましい。その他は第1の実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0046】
図3は、第1および第2の実施形形態における動作を示すタイムチャートである。
図3に示すように、基地局A1,A2,Dは、互いに異なるタイミングで周期的(周期T秒)にLF信号を送信する。このLF信号の送信は、常に周期的に送信させる自発トリガ方式や所定エリア内に人が入ったことを人感センサで検知してから送信させる外部トリガ方式で行わせることができる。また、基地局A1,A2,D間で同期用信号を送受信することで、LF信号の送信を異なるタイミングに設定できる。
【0047】
基地局A1から送信されるトリガ起動用LF信号は、例えば、Wake-up code=1のトリガ起動信号を含み、基地局A2から送信されるトリガ起動用LF信号は、例えば、Wake-up code=2のトリガ起動信号を含み、基地局Dから送信されるトリガ起動用LF信号は、例えば、Wake-up code=3の信号を含む。これらのトリガ起動用LF信号は、例えば、マンチェスタ符号化により符号化される。マンチェスタ符号化は、高電位から低電位への遷移で「1」が表現され、低電位から高電位への遷移で「0」が表現されるものであり、比較的簡単な回路構成で実現可能であるので、基地局A1,A2,DでのLF信号の符号化に好ましい。
【0048】
実効受信エリアZone A1',Zone A2'に所在する携帯機は、基地局A1,A2から送信される、Wake-up code=1,Wake-up code=2のLF信号によりトリガ起動され、UHF応答信号を送信する。なお、基地局A1,A2から送信されるLF信号に、携帯機が応答すべきタイミング指示を含ませれば、携帯機が基地局A1,A2に応答するタイミングを定めることができる。これによれば、基地局A1,A2では所定タイミングの窓を通して自局に対するUHF応答信号のみを受信するようにできる。
【0049】
一方、非応答エリアZone Dに所在する携帯機は、基地局Dから送信されるWake-up code=3のLF信号を受信する。このWake-up code=3は、基地局A1,A2から送信されるLF信号のWake-up code=1,Wake-up code=2とは異なるので、上記設定によりUHF応答信号を送信しない。
【0050】
なお、
図3は、基地局D、基地局A1、基地局A2が順にトリガ起動用LF信号を送信し、携帯機が基地局Dからのトリガ起動用LF信号を受信したことにより、それと同時に受信される基地局A1からのトリガ起動用LF信号、およびその後に受信される基地局A2からのトリガ起動用LF信号に対して応答しない場合を示しているが、1周期内において基地局A1,A2,Dからトリガ起動用LF信号を送信する順序は、これに限られない。したがって、非応答エリアZone Dにおいて携帯機が基地局A1,A2,Dからトリガ起動信号を受信する順序も一例に過ぎない。要するに、携帯機は、どのような順序であろうが、ある1周期内において基地局Dからのトリガ起動用LF信号を受信したことにより、該1周期内において基地局A1,A2からのトリガ起動用LF信号を受信しても応答しないようにすればよい。
【0051】
以上のように、本発明では、基地局A1,A2に対する携帯機の有効受信エリアZone A1,Zone A2が重なる境界エリアに基地局(ダミー用のアンテナ)を設けて非応答エリアZone Dを形成し、非応答エリアZone Dでは携帯機が応答しないように制御するという仕組みを用いる。携帯機は、実効受信エリアZone A1',Zone A2'では基地局A1,A2から有効なwake-upコードまたは親IDを含む信号を受信し、基地局Dから有効なwake-upコードまたは親IDを含む信号を受信しないので、基地局に対して応答し、非応答エリアZone Dでは基地局Dから有効なwake-upコードまたは親IDを含む信号を受信するので、基地局A1,A2から有効なwake-upコードまたは親IDを含む信号を受信しても基地局に対して応答しない。このような、簡単なエリア構成の仕組みにより、実効受信エリアを構築することができ、この実効エリア内でのみ基地局と携帯機が通信できることを利用して位置検知システム等を構成できる。
【0052】
図4は、本発明に係る位置検知システムの第3の実施形態を示し、
図5は、これにより形成される実効受信エリアと非応答エリアを示す。
【0053】
第3の実施形態の位置検知システムは、10個の基地局A1〜A9,Dを備える。基地局A1〜A9,Dは、互いに区別可能な異なる信号(コードが異なる信号)を互いに異なるタイミングで送信する。これは、基地局Dから基地局A1〜A9に同期用信号を送ることで実現できる。同期用信号は、例えば、図示するように、基地局Dから基地局A1〜A9に送出される。
【0054】
基地局A1〜A9に対する携帯機の有効受信エリアは、円形であり、その一部が重なり合って境界エリアを形成する。基地局D(LF送信アンテナ)は、境界エリアに設けられ、境界エリアを含む非応答エリアZone Dを形成する。非応答エリアZone Dでは、携帯機は、基地局Dから送信されるLF信号を受信するので、基地局A1〜A9から送信されるLF信号を受信しても応答しない。
【0055】
以上のように、非応答エリアZone Dにより境界エリアを含まない独立な実効受信エリアZone A1'〜ZoneA9'が形成される。なお、非応答エリアZone Dを幾つかに分割し、分割された各非応答エリアを1連のループ状アンテナ線で形成することにより、全体の非応答エリアZone Dを形成できる。例えば、各1連ずつのループ状アンテナ線で行間および列間の非応答エリアを構成し、これらを組み合わせることで非応答エリアZone Dを簡単に形成できる。また、非応答エリアZone Dの全体を1連のアンテナ線をループ状に張り巡らして形成してもよい。
【0056】
図4に示すように、基地局A1〜A9は、携帯機から返されるUHF応答信号を受信するUHF受信アンテナを備える。各UHF受信アンテナにより受信されたUHF応答信号に基づく、各基地局A1〜A9からのログデータ(各基地局A1〜A9から導出されている矢印で示す)は、図示を一部省略しているが、基地局A1〜A9からログサーバLに送られる。ログサーバLは、基地局A1〜A9から転送されるログデータから、実効受信エリアZone A1'〜ZoneA9'のうちのどの実効受信エリアに携帯機が所在するかを継続的に知ることができる。
【0057】
以上のように、
図4および
図5に示す構成では、通信ゾーンが独立な実効受信エリアZone A1'〜Zone A9'と非応答エリアZone Dに明確に区分されるので、基地局A1〜A9に対する携帯機の有効受信エリアが近接あるいは重複するように形成されても、携帯機の位置検知動作に曖昧さが生じることがなく、その位置を明確に知ることができる。
【0058】
具体的には、携帯機を所持した人が1つの基地局A1の実効受信エリアZone A1'に入れば、実効受信エリアZone A1'の基地局A1が携帯機の応答IDを受信するので、基地局A1から判定信号が得られ、また、携帯機を持つ人が、他方の基地局A2の実効受信エリアZone A2'に入れば、実効受信エリアZone A2'の基地局A2が携帯機2の応答IDを受信するので、基地局A2から判定信号が得られる。これらの判定信号はログデータとしてログサーバLで収集される。ここでは、9個の有効受信エリアZone A1〜Zone A9を形成し、それらの境界部分に非応答エリアZone Dを形成して独立な実効受信エリアZone A1'〜Zone A9'を形成しているので、ログサーバLが収集したログデータにより、携帯機を所持した人の複雑な移動まで確実に判定できる。一般的には、3つ以上の独立な実効受信エリアを形成することにより、携帯機を所持した人の出入りなどエリア内外の移動を判定できる。
【0059】
図6は、本発明に係る位置検知システムの第4の実施形態を示すブロック図であり、
図7は、第4の実施形態により形成される有効受信エリアと非応答エリアを示す。
【0060】
第4の実施形態は、有効受信エリアが略方形状である点が第3の実施形態(
図4,
図5)と異なる。略方形状の有効受信エリアZone A1〜Zone A9は、ループ状アンテナ線を略方形状に張り巡らすことで形成できる。有効受信エリアZone A1〜Zone A9および実効受信エリアZone A1'〜Zone A9'を方形状とすることは、非応答エリアZone Dを狭くでき、独立な実効受信エリアZone A1'〜Zone A9'を部屋などの形状に合わせることができるので好ましい。その他は、第3の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0061】
基地局に対する携帯機の有効受信エリアは、基地局のLF送信アンテナと電磁誘導結合する導電性部材を用いても形成できる。これは、非応答エリアを形成するための基地局(上記実施形態の基地局D)だけでなく、実効受信エリアを形成するための基地局(上記実施形態の基地局A,A1〜A9)にも適用できる。これにより、各基地局の有効受信エリアおよび独立な実効受信エリアを任意の形状に形成できる。
【0062】
図8は、基地局のLF送信アンテナと電磁誘導結合する導電性部材のLF送信磁界アンテナを用いて有効受信エリアを形成する場合の構成を示す回路図である。
【0063】
基地局AのLF送信アンテナ(共振回路)のコイル2にそれと同じコイル3を、例えば1cm以内に近づけ、磁気回路が形成されるように対向配置する。コイル3を含めて導電性部材による経路を形成する。
【0064】
基地局AがLF信号を送信すると、電磁誘導現象により誘導起電力または誘導電流が導電性部材内に生じる。これにより、導電性部材全体が基地局AのLF送信用磁界アンテナ1として機能する。導電性部材は、基地局AのLF送信アンテナから送信されるLF信号の電磁波が持つ放射磁界内で電磁誘導による電磁結合を生じてLF送信用磁界アンテナ1として機能すればよいので、表面部分が塗装されていても、絶縁体でコーテングされていても構わない。コイル2,3間の距離、対向面積、巻き数比により電磁誘導の結合効率を変化させることができる。
【0065】
なお、導電性部材による経路の途中にアッテネータ(ATT)4を設ければ、誘導電流を制御して有効受信エリアを調整できる。このLF有効受信エリアの調節方法は、アッテネータ4で誘導電流を絞るだけであるので、基地局AのLF送信回路のアンテナ部分にアッテネータを設ける場合に生じるようなLF周波数の変動やQ値の変化が発生しない。したがって、設置時に導電性部材の長さを変えたり、その形状を円形から方形に変えるなどの方法で、LF有効受信エリアの調整を行ったりしても、基地局Aの送信回路でのインピーダンスの再マッチングが不要であるという点で優れている。
【0066】
図9は、
図8のLF送信用磁界アンテナテナ1により形成される有効受信エリアの具体例を示す図である。
図9(a)〜(c)はそれぞれ、斜視図、上面図、側面図を示し、導電性部材を円形に張り巡らすことにより、導電性部材の経路から半径rの放射磁界により円形状の有効受信エリアを形成できる。
【0067】
図10は、
図7のLF送信用磁界アンテナテナ1により形成される有効受信エリアの他の具体例を示す図である。
図10(a)〜(c)はそれぞれ、斜視図、上面図、側面図を示し、導電性部材を略方形状に張り巡らすことにより、導電性部材の経路から半径rの放射磁界により略方形状の有効受信エリアを形成できる。例えば、直径0.9mm、長さ16m、電気抵抗5Ωの被覆鉄線により一辺4mの正方形を形成し、これをLF送信用磁界アンテナ1の経路の一部として用いることにより、略方形状のLF有効受信エリアを形成できる。
【0068】
実際上では、導電性部材は分布定数回路を形成するので、導電性部材を用いてLF送信用磁界アンテナ1を形成する際には、導電性部材による経路と接地間の容量性結合を考慮する必要がある。
【0069】
図11は、導電性部材により形成される分布定数回路の影響の説明図である。
図11(a)に示すように、導電性部材が形成する分布定数回路は、レジスタンス成分(R)とキャパシタンス成分(C)とインダクタンス成分(L)を有する。
【0070】
基地局のLF送信アンテナからの電磁誘導でLF送信用磁界アンテナに誘起された電磁界エネルギは、導電性部材の経路を経由する際に、分布定数回路により高周波成分が接地面に流れる。導電性部材から放射される磁界の半径rは、導電性部材が形成する分布定数回路により減衰し、経路に沿って徐々に小さくなる。例えば、導電性部材の経路が
図11(b)に示すように方形である場合、被覆鉄線からの放射される磁界の半径rは、
図11(c)に示すように、経路に沿ってA>B,D>Cの関係になる。実用的で十分なLF有効受信エリアを得るには、使用する導電性部材の抵抗値と長さを例えば、20mと抵抗5Ωなどというように、適当に制約すればよい。導電性部材の周回抵抗が10KΩ程度以下ならば、導電性部材全体を送信アンテナとして機能させることができる。
【0071】
図12は、本発明に係る位置検知システムで使用できる基地局の実施形態を示すブロック図である。
【0072】
この実施形態の基地局は、LF送信アンテナ11、出力調整ボリューム12、パワーアンプ13、LF送信回路14、基地局制御回路15、UHF受信回路16、UHF受信アンテナ17および電源18を備える。パワーアンプ13、LF送信回路14、基地局制御回路15およびUHF受信回路16は、電源18からの電力により動作する。出力調整ボリューム12は、出力調整減衰器であってもよい。
【0073】
ここでは、導電性部材によるLF送信用磁界アンテナを図示していないが、LF送信アンテナ11のコイルに導電性部材を電磁誘導結合させれば、有効受信エリアを拡張するLF送信磁界アンテナを簡単に構成できる。
【0074】
LF送信回路14は、基地局制御回路15から送出される信号をデジタル化し、さらに変調してLF信号として送出する。基地局が実効受信エリアを形成するためのものである場合、LF信号は、携帯機をトリガ起動させるための起動パターンを含む。LF信号に、さらに認証用信号などの通信用LF信号を含ませることもできる。LF送信回路14にLF信号を暗号化する機能を持たせてもよい。LF送信回路14から送出されるLF信号は、パワーアンプ13で増幅され、さらに出力調整ボリューム12でレベル調整された後、LF送信アンテナ11から送信される。出力ボリューム12は、LF送信アンテナ11から送信される出力レベルを調整するものであるが、省略してもよい。
【0075】
UHF受信アンテナ17とUHF受信回路16は、携帯機から送信されるUHF応答信号を受信するUHF受信手段として機能する。UHF受信回路16は、携帯機から送信されるUHF応答信号が暗号化されていれば、UHF応答信号を復号する機能も有する。UHF受信アンテナ17とUHF受信回路16で受信されたUHF応答信号は、基地局制御回路15へ送出される。
【0076】
基地局制御回路15は、UHF受信アンテナ17とUHF受信回路16で受信されたUHF応答信号に従って必要な制御、例えば、入退室管理装置の場合には、室入口ドアのロック開閉の制御を行う。このために、基地局制御回路25は、外部機器との間でデータをやり取りするインタフェースを備えている。位置管理や通過管理を行うシステムでは、携帯機のID認証結果に基づくイベント情報(携帯機の入退出などの情報)を、このインタフェースからロギングデータとしてログサーバへ送出すればよい。
【0077】
また、基地局制御回路15は、LF送信回路14とUHF受信回路16が動作するタイミングを制御する。このタイミングの制御については、後で詳細に説明するが、基地局がLF信号を送信するタイミングとUHF応答信号を受信するタイミングとが重ならないようにする。この際、LF信号の回り込みの空間的伝播遅延分も考慮する。
【0078】
図13は、本発明の位置検知システムで使用できる携帯機の実施形態を示すブロック図である。
【0079】
この実施形態の携帯機は、LF受信アンテナ21、LF受信回路22、携帯機制御回路23、UHF送信回路24およびUHF送信アンテナ25を備える。ここではアクティブ型携帯機を想定しているので、携帯機は、さらに電池を内蔵するが、図示を省略している。
【0080】
LF受信回路22、携帯機制御回路23およびUHF送信回路24は、基地局から送信される電磁波の電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流でトリガ起動され、内蔵する電池の電力で応答動作する。ただし、上記したように、非応答エリア内に位置する場合、携帯機は、ダミー用送信アンテナから送信されるLF信号を一定レベル以上で受信するので、基地局から送信されるLF信号を受信しても応答しない。
【0081】
LF受信アンテナ21およびLF受信回路22は、基地局から送信されるLF信号を受信し、受信したLF信号を復調する機能を有する。また、LF受信回路22は、基地局から送信されるLF信号が暗号化されていれば、その信号を復号する機能を有する。
【0082】
携帯機制御回路23は、LF受信回路22とUHF送信回路24が動作するタイミングを制御し、また、LF受信アンテナ21およびLF受信回路22を介して受信されたLF信号に従って携帯機内部の回路の起動や表示部の表示などの処理を行う。また、UHF送信回路24およびUHF送信アンテナ25を介して基地局に所定のコマンドやIDデータなどを含むUHF応答信号の送信を指示する。UHF送信回路24およびUHF送信アンテナ25は、この指示に従ってUHF応答信号を送信する。
【0083】
LF受信回路22とUHF送信回路24が動作するタイミング制御では、基地局と同様に、UHF応答信号を送信するタイミングとLF信号を受信するタイミングとが重ならないようにする。この際、UHF応答信号の回り込みの空間的伝播遅延分も考慮する。具体的には、携帯機制御回路23によるタイミング制御を、基地局制御回路15でのタイミング制御に対応して行う。このタイミング制御は、基地局から送信される信号が携帯機で受信されるタイミングに基づいて、例えば、カウンタを用いて制御することで実現できる。
【0084】
図14は、本発明に係る位置検知システムにおける基地局と携帯機間の送信および受信のタイミングの一例を示すタイムチャートである。本発明に係る位置検知システムは、複数の基地局を備えるが、ここでは、1つの基地局(実効受信エリアを形成するための基地局)の実効受信エリア内に携帯機が位置した場合の動作を示している。
【0085】
基地局は、LF送信タイミング(TSL)と休止を繰り返す。また、休止の期間内の予め設定された期間にUHF応答受信タイミング(TRU)を設定する。LF送信タイミングでは、携帯機へ起動パターンを含むLF信号を送信し、UHF応答受信タイミングでは、携帯機からのUHF応答信号を待つ。休止は、1つの周波数を継続して占有しないようにするために設けるものである(電波法の規定に従う)。
【0086】
携帯機は、LF受信タイミング(TRL)と休止を繰り返す。また、休止の期間内の予め設定された期間にUHF応答送信タイミング(TSU)を設定する。LF受信タイミング、休止、UHF応答送信タイミングはそれぞれ、基地局でのLF送信タイミング、休止、UHF応答受信タイミングに対応する。ただし、携帯機でのLF受信タイミング、休止の期間は、基地局のLF送信タイミング、休止の期間に対し遅延補正量τ1だけ遅らせ、基地局でのUHF応答受信タイミングは、携帯機のUHF応答送信タイミングに対し遅延補正量τ3だけ遅らせる。τ1、τ3は、LF信号、UHF応答信号の回り込みの空間的伝播遅延分に相当する時間以上に設定する。
【0087】
また、UHF応答送信タイミングの開始時点を、LF受信タイミングの終了時点より遅延補正量τ2だけ遅らせる。遅延補正量τ2は、携帯機側でUHF応答信号がLF信号の受信から影響されるのを確実に回避するために、例えば、LF信号(データ)の1ビット相当分などの値に設定する。さらに、基地局側は、LF送信とUHF受信を連続して動作させる際にも、携帯機からのUHF応答信号がLF送信回路側に回り込んで次のLF送信が妨害されないように、基地局側のLF送信タイミングの開始時点より前に間隔(例えば、数msec〜数十msec)をあけてUHF受信タイミングを終了できるように、携帯機側のUHF送信タイミングを設定する。このことにより、基地局においては、LF送信タイミングとUHF応答受信タイミングとの間に間隔を持つので、LF信号がUHF受信回路側に回り込むことによる妨害も生じない。
【0088】
携帯機は、LF受信タイミングで、基地局からLF送信タイミングで送信されるLF信号を受信してトリガ起動され、必要に応じて、UHF応答送信タイミング内にUHF応答信号を送信する。ただし、上記したように、非応答エリア内に位置する場合、携帯機は、ダミー用送信アンテナから送信されるLF信号を一定レベル以上で受信するので、基地局から送信されるLF信号を受信しても応答しない。基地局は、携帯機から送信されるUHF応答信号をUHF応答受信タイミングで待つ。
【0089】
図14は、基地局からLF信号を2回繰り返して送信をする場合のタイムチャートを示しているが、実際には、基地局から携帯機にLF信号を送信し、該LF信号を受信してトリガ起動される携帯機からUHF応答信号を送信し、該UHF応答信号を基地局で受信するという動作を1回で終了させてもよいし、3回以上繰り返してもよい。
【0090】
図14に示すタイムチャートに示すように、基地局と携帯機間でのLF信号やUHF信号の送受信に際し、送受信タイミングに遅延補正量τ1、τ2、τ3を持たせることにより、基地局においては、LF送信アンテナから送信されるLF信号の電磁波が持つ放射磁界がUHF受信回路側へ回り込むことによる雑音、LF送信アンテナのアンテナループとUHF受信アンテナのアンテナループ相互間での導体パターン上に誘起する互いの電磁界によるアンテナ効果による雑音を抑制できる。また、携帯機においては、UHF送信アンテナから送信されるUHF応答信号がLF受信回路側へ回り込むことによる雑音、LF受信アンテナのアンテナループとUHF送信アンテナのアンテナループ相互間での導体パターン上に誘起する互いの電磁界によるアンテナ効果による雑音を抑制できる。
【0091】
基地局と携帯機間の通信に際してのセキュリティ性を確保するために、基地局および携帯機にその機能を持たせるのが好ましい。セキュリティ性の確保には、例えば、基地局と携帯機を個別に識別する方法とLF信号を暗号化する方法のいずれか一方あるいは両方を利用できる。
【0092】
基地局と携帯機を個別に識別する方法では、予め基地局と携帯機それぞれに個別のIDを付与しておき、そのIDを基にグループ内での通信を可能にする。通信が可能なグループに属する基地局と複数の携帯機を識別するために、グループとなる基地局IDと複数の携帯機IDの組み合わせテーブルを基地局のメモリと携帯機のメモリにそれぞれ登録しておき、それらのIDを使用して基地局と携帯機を個別に識別する。
【0093】
具体的には、基地局から基地局IDを含むLF信号を送信する。携帯機は、受信したLF信号に含まれる基地局IDが自携帯機を含む通信可能なグループ内の基地局IDであれば、正常に起動して自携帯機IDを含むUHF応答信号を送信する。該当する基地局IDでない場合には、携帯機は応答しないので、不要なUHF電波を出力しない。また、上記したように、非応答エリア内に位置する場合、携帯機は、ダミー用送信アンテナから送信されるLF信号を一定レベル以上で受信するので、基地局から送信されるLF信号を受信しても応答しない。基地局は、携帯機から送信されるUHF応答信号を受信し、それに含まれる携帯機IDが自基地局を含む通信可能なグループ内の携帯機IDであれば、正しいUHF応答信号と認識する。
【0094】
LF信号を暗号化する方法では、一般的なM系列カウンタを用いたローリングコード方式を採用できる。送信するLF信号のデータ配列や有効データの配置・抽出において、グループに属する基地局と携帯機でユニークな対応関係と初期値を用い、単純なローリングコード方式とは異なる方法でLF信号の暗号化、復合化を行うようにしてもよい。
【0095】
図15は、本発明に係る位置検知システムにおける基本的な動作を示すフローチャートである。ここでは、基地局と携帯機を個別に識別する方法を採用して、セキュリティ性を確保するようにしている。
【0096】
まず、基地局においてトリガが与えられたか否かを判定する(S11)。トリガは、基地局の電源がオンであれば、LF送信タイミング(TSL)が開始する各タイミングで与えられる。トリガが与えられなければ、トリガが与えられるまで待つ。トリガが与えられれば、LF送信タイミング(TSL)となり、基地局は、自基地局IDを含むLF信号を送信する(S12)。LF信号の送信は、LF送信タイミングの期間(TSL)中で継続して行われ、LF送信タイミングの期間(TSL)が経過すれば終了する。携帯機は、基地局から送信されたLF信号を受信してトリガ起動され、これによりLF受信回路、携帯機制御回路およびUHF送信回路が起動する(S13〜S15)。ただし、上記したように、通信無効エリア内に位置する場合、携帯機は、ダミー用送信アンテナから送信されるLF信号を一定レベル以上で受信するので、基地局から送信されるLF信号を受信してもトリガ起動されない。
【0097】
次に、携帯機は、基地局から送信される
LF信号に基づいて正当性認証を行う(S16)。ここで正当性が認証されれば、携帯機は、UHF応答信号を送信する(S17)。正当性認証は、具体的には、上述したように、グループを構成する基地局IDに基づいて行い、受信したLF信号に含まれる基地局IDが自携帯機を含む通信可能なグループ内の基地局IDであれば、正常に起動して自携帯機のIDを含むUHF応答信号を送信する。しかし、正当性が認証されなければ、ステップに戻る。
【0098】
携帯機は、UHF応答送信タイミングの期間(TSU)内においてUHF応答信号を送信する(S17)。このUHF応答信号は、自携帯機IDを含む。基地局は、UHF応答受信タイミングの期間(TRU)内においてUHF応答信号を受信する(S18)。ここでは、UHF応答信号に含まれる基地局IDにより携帯機の正当性認証も行う。その後、必要に応じてステップを繰り返す。
【0099】
以上実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、基地局から携帯機へ送信される信号がLF信号であり、携帯機から基地局へ送信される信号がUHF信号であるとしたが、基地局と携帯機間で送受信される信号の周波数帯は、それに限定されない。
【0100】
また、例えば、UHF帯のなかでも10MHzクラスと1GHzクラスとでは周波数が100倍異なり、電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流には、使用する周波数により差が生じる。一般に低周波側である10MHzクラスの周波数を選択すれば、1GHzクラスの周波数の場合より有効受信エリアの面で有利になる。
【0101】
また、本発明での携帯機の利用方法には、応答信号を基地局に送信せずとも、有効受信エリア内に携帯機があることを、LEDの点灯、液晶での文字表示、ブザー音の鳴動などで利用者に知らせる手法も有効である。このように、携帯機から基地局に応答信号を送信することは必ずしも必要でない。
【0102】
また、本発明は、人の入退出などの通過だけでなく、物品に携帯機を添えておけば、物品の位置や通過の管理にも適用できる。さらに、赤外線センサなどの他のセンサを併用し、他のセンサの検知信号と携帯機から応答信号の両者が得られた場合にだけ通過を許可するといった通過管理システムも構成できる。