(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
回路遮断器は、送配電線や変電所母線・機器等の短絡故障時にその回路を自動遮断するための開閉器であるが、平常時は回路の開閉にも用いられている。
【0003】
従来の回路遮断器の構造図を
図5に示す。
回路遮断器は、主回路と、開閉引外し機構部8´と、引外し装置9´等とを具備している。
【0004】
主回路は、電源側固定接点台1´、固定接点2´、それに対向する可動接点3´、可動接点台4´、負荷側固定接点台5´等を有している。
【0005】
可動接点台4´は、接点軸6´に接点ばね7´を介して保持されており、接点軸6´は、開閉引外し機構部8´と連結し回転することにより、主回路の接点を開閉する構造になっている。
【0006】
引外し装置9´は開閉引外し機構部8´と連動しており、引外し装置9´が動作した場合、主回路を引外すようになっている。そして、引外し装置9´が動作すると、その機械的出力は開閉引外し機構部8´のラッチを引外して開閉引外し機構部8´を動作させ、可動接点台4´を動かし、主回路を直ちに開路させる。
【0007】
主回路要素及び主回路開閉要素は、本体ケース10´、本体カバー11´に収納されており、回路遮断器を構成している。
【0008】
開閉引外し機構部8´の内部構成等について、
図6を用いて説明する。
開閉引外し機構部8´は、固定フレーム13´、ハンドルリンク14´、フック15´、フックピン16´、リンク上下ピン17´、上リンク18´、下リンク19´、トリップ金具20´、トリップ金具ピン21、トリップバネ22、トリップリンク23´、トリップリンク軸24´、トリップリンクピン25´により構成されている。
【0009】
操作ハンドル12´は、ハンドルリンク14´と結合されており、ハンドルリンク14´は固定フレーム13´の一点を中心に回転する。
【0010】
下リンク19´は可動接点台4と連結され、そして、下リンク19´と上リンク18´はリンク上下ピン17´で連結され、更に、リンク上下ピン17´とハンドルリンク14´が駆動バネ25´により連結されているので、このリンク上下ピン17´を介して上リンク18´、下リンク19´、駆動バネ25´が連動する。
【0011】
フック15´は、フックピン16´により固定フレーム13´に連結されており、このフックピン16´を中心に回転する。
【0012】
また、上リンク18´は、フック上部打出し部27´と連結されており、このフック上部打出し部27を中心に回転する。
【0013】
トリップ金具20´は、トリップバネ22´と共にトリップ金具ピン21´で固定フレーム13´に連結されているので、トリップ金具20´はトリップ金具ピン21´を中心に回転する。そして、トリップ金具20はトリップバネ22´により負荷側に回転する力が働く。
【0014】
トリップリンク23´は、トリップリンクピン25´により固定フレーム13´に連結されているので、トリップリンクピン25´を中心に回転する。
【0015】
フック15´は、上リンク18´を介して駆動バネ25´により上に持ち上げられる力が働き、フックピン16´を中心に電源側方向に回転しようとするが、フック15´先端がトリップ金具20´と係合されているので、フック15´の回転は止められている。また、トリップ金具20´はトリップバネ22´によりフック15´との係合を外そうとするが、トリップリンク23´により回転を止められている。
【0016】
この機構において、引外し装置9´によりトリップリンク23´を回転させることにより、トリップリンク23´とトリップ金具20´のラッチが外れてトリップ金具20´が回転し、そして、トリップ金具20´とフック15´のラッチが外れてフック15´が回転し、それに伴い可動接点台4´を動かし、主回路を開路させるものであった。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明の回路遮断器の一実施例を、
図1〜
図4により説明する。
図1は本発明の回路遮断器の一実施例の斜視図、
図2は本発明の回路遮断器の一実施例の説明図、
図3は本実施例の回路遮断器における開閉引外し機構部の説明図、
図4は本実施例の回路遮断器における固定フレーム等の配置例の説明図である。
本発明は、電源側固定接点台、対向する接点、可動接点台、過電流リレー部、及び、負荷側固定接点台から構成される主回路と、固定フレーム、フック及びフックに連結された上リンクを有し、可動接点台を回転させることにより回路接点を開閉引外しを行う開閉引外し機構部と、開閉引外し機構部を動作させる引外し装置とを具備する回路遮断器において、フックは、固定フレームと上リンクの間に配置される回路遮断器である。
そして、本発明は、固定フレームはフックのストッパを有する回路遮断器である。
また、本発明は、下リンクを有し、そして、下リンクは、固定フレームと上リンクの間に配置される回路遮断器である。
更に、本発明は、固定フレームは、打出し加工により形成された下リンクのストッパを有する回路遮断器である。
【0027】
本実施例の回路遮断器は3極の回路遮断器で、各極は、電源側端子に電気的に接続された電源側固定接点台1と負荷側端子に電気的に接続された負荷側固定導体としての負荷側固定接点台5が、回動自在に保持された可動導体としての可動接点台4の回転中心に対して実質的に点対称位置に設けられ、これらの電源側固定接点台1、負荷側固定接点台5および可動接点台4で主回路を形成している。
【0028】
電源側固定接点台1は、電源側可動接点3と対向する位置に電源側固定接点2を有し、負荷側固定接点台5は負荷側可動接点3と対向する位置に負荷側固定接点2を有している。
【0029】
可動接点台4は、その回転中心に対して点対称位置にそれぞれ電源側可動接点、負荷側可動接点3を有し、接点軸6に接点ばね7を介して保持されており、接点軸6は、開閉引外し機構部8と連結し回転することにより、主回路の接点を開閉する構造になっている。
【0030】
可動接点台4は、開閉引外し機構としての開閉引外し機構部8に機械的に接続され、開閉引外し機構部8がON操作されると電源側固定接点台1と負荷側固定接点台5とを電気的に接続する位置まで回転する。
【0031】
この主回路は、絶縁物により形成された主回路ケースに収納される。主回路が主回路ケースに収納された状態では電源側固定接点台1の電源側端子部分と負荷側固定接点台5の負荷側端子部分とが主回路ケースから突出するが、他の部分は主回路ケース内に位置して外部と電気的に絶縁される。主回路ケース内で可動接点台4を回動自在に保持する保持部材も絶縁材で形成される。
【0032】
主回路ケース中の電源側固定接点台1、負荷側固定接点台5および可動接点台4の接点近傍には遮断時に発生するアークを吸引して冷却するアークシュート(消弧装置)が設けられる。さらに本実施例では冷却されたアークガスを排出するアーク排出口が主回路ケースに設けられている。
【0033】
主回路ケースは、3極分並行して配置され、各極の可動接点台4が実質的に同時に開閉できるよう、保持部材が連結される。
【0034】
開閉引外し機構部8は、本実施例では中央極の主回路ケースの外側上部に載置され、保持部材の回転軸に同軸に接続された絶縁物の回動アームに接続される。これにより、開閉引外し機構部8は主回路ケースの外側に設けられて可動接点台4に絶縁物を介して接続されるので、主回路に電圧が印加されていても開閉引外し機構部8には電圧は印加されない。
【0035】
開閉引外し機構部8は、操作ハンドル12により手動で主回路のON・OFF操作が行われるとともに、主回路の電流が所定値を超えたときに引外し装置9により主回路の遮断動作が行われる。
【0036】
引外し装置9は、負荷側固定接点台5の近傍に配設された固定コアと、一端が回動自在に保持されて、固定コアと対向する位置で固定コアとともに実質的に閉じた磁気回路を形成できるよう配置された可動コアと、可動コアの動作を開閉引外し機構部8に伝達する伝達レバーを有している。
【0037】
主回路の電流が増大して設定された所定値(定格電流の約10倍〜約20倍)を超えると負荷側固定接点台5の導体の周囲に発生する磁束が増大し、可動コアは固定コアに吸引されて移動し、伝達レバーがトリップリンク軸24に当接してトリップリンク23を回転させ、開閉引外し機構部8の引外し動作により主回路を開路する。これにより回路は遮断されて負荷側に大きな過電流が流れるのを防止できる。
【0038】
本実施例では主回路の負荷側固定接点台5の主回路ケースから負荷側端子に至る部分には主回路を流れる電流を検出する変流器が設けられ、この変流器の出力は変流器上方に設けられた過電流検出回路に供給される。
【0039】
過電流検出回路は、定格電流の約1.1倍〜約20倍の範囲で所定の限時特性に基づいて出力を発生する。過電流検出回路の出力は、永久磁石に吸引された可動コアを逆励磁により釈放する磁気引外し装置(図示せず)に供給される。このような磁気引外し装置として例えば特許文献1に記載されたようなものを用いることができる。
【0040】
磁気引外し装置の可動コアは、釈放されるとトリップリンク軸24に当接してトリップリンク23を回転させ、開閉引外し機構部8の引外し動作により主回路を開路する。これにより回路は遮断されて負荷側に過電流が流れるのを防止できる。
【0041】
これらの主回路ケース、開閉引外し機構部8、引外し装置9、変流器、過電流検出回路、磁気引外し装置は本体ケース10、本体カバー11を有する筺体内に収納され、開閉引外し機構部8に装着された操作ハンドル12のつまみ部分と電源側端子と負荷側端子とが筺体外に露出する。
【0042】
また、本実施例では電源側固定接点台1、負荷側固定接点台5および可動接点台4で主回路を形成しているが、従来技術で用いられたような電源側固定接点台と、負荷側に接続された可動接点台で形成された主回路を開閉引外し機構部で開閉引外し操作するものであってもよい。
【0043】
開閉引外し機構部8の構造等の一例について、
図3を用いて説明する。
開閉引外し機構部8は、折り曲げ加工により形成されたフックストッパ13Aと、打ち出し加工により形成された下リンクストッパ13B及び突部28を設けた固定フレーム13、ハンドルリンク14、フック15、フックピン16、リンク上下ピン17、上リンク18、下リンク19、トリップ金具20、トリップ金具ピン21、トリップバネ22、トリップリンク23、トリップリンク軸24、トリップリンクピン25により構成されている。
【0044】
操作ハンドル12は、ハンドルリンク14と結合されており、ハンドルリンク14は固定フレーム13の一点を中心に回転する。
【0045】
固定フレーム13は、コ字状に形成された部分と平板状に形成された部分とを有し、コ字状の両先端部が平板状の部品にかしめられることにより略矩形状の断面の枠体に形成される。
【0046】
固定フレーム13の枠体内には、フック15、上リンク18及び下リンク19がそれぞれ装着される。
【0047】
フック15はコ字状に形成され、コ字の両辺の先端部がそれぞれ固定フレーム13の枠体に回動自在に支持され、コ字の両辺を結ぶ部分がトリップ金具20に係合する。コ字の両辺の略中央部の内側には上リンク18を回動自在に係止する突起が形成される。
【0048】
フック15は、突部28により固定フレーム13に回転自在に連結されており、そして、突部28はフック回転の中心になる。
【0049】
上リンク18は、フック上部打出し部27に回転自在に連結されており、このフック上部打出し部27を中心に回転する。
【0050】
下リンク19は可動接点台4と連結され、そして、下リンク19と上リンク18はリンク上下ピン17で連結され、更に、リンク上下ピン17とハンドルリンク14が駆動バネ25により連結されているので、このリンク上下ピン17を介して上リンク18、下リンク19、駆動バネ25が連動する。
【0051】
上リンク18及び下リンク19はそれぞれ略U字状に形成され、U字の底辺部近傍が略90度折り曲げられてコ字状断面を有するよう形成されている。
【0052】
上リンク18と下リンク19はU字の底辺部近傍で折り曲げ部分が互いに逆方向を向くようにして回転自在に連結される。本実施例の上リンク18と下リンク19は特許文献2に記載されたプレス工程中で上リンク18と下リンク19を組み合わせる方法により製造されてもよい。
【0053】
上リンク18と下リンク19は上リンク18が内側で下リンク19が外側となるよう組み合わされ、上リンク18のU字の両辺はフック15の内側でフック15に形成された突起に回動自在に係合する。
【0054】
下リンク19のU字の両辺は主回路の可動接点台の保持部材に接続された絶縁物の回動アームに回動自在に係止される。これにより、上リンク18と下リンク19とフック15の固定フレーム13に対する位置関係は、上リンク18が最内側で、その外側に下リンク19とフック15が位置し、固定フレーム13が最外側となる。
【0055】
トリップ金具20は、トリップバネ22と共にトリップ金具ピン21で固定フレーム13に連結されているので、トリップ金具20はトリップ金具ピン21を中心に回転する。そして、トリップ金具20にはトリップバネ22により負荷側に回転する力が働く。
【0056】
トリップリンク23は、トリップリンクピン25により固定フレーム13に回動自在に連結されているので、トリップリンクピン25を中心に回転する。
【0057】
フック15は、上リンク18を介して駆動バネ25により上に持ち上げられる力が働き、突部28を中心に電源側方向に回転しようとするが、フック15先端がトリップ金具20と係合されており、フック15の回転を止めている。また、トリップ金具20は、トリップバネ22によりフック15との係合を外そうとするが、トリップリンク23により回転を止められている。
【0058】
引外し装置9によりトリップリンク23を回転させることにより、トリップリンク23とトリップ金具20のラッチが外れてトリップ金具20が回転し、そして、トリップ金具20とフック15のラッチが外れてフック15が回転し、それに伴い可動接点台4を動かし、主回路を開路させる。
【0059】
固定フレーム13は、枠体の内側に、折り曲げ加工により形成されたフックストッパ13Aと、打ち出し加工により形成された下リンクストッパ13Bおよびフック15の回転中心となる突部28を有している。フックストッパ13Aと下リンクストッパ13Bは突部28に関して反対側にあり、フックストッパ13Aの枠体内への突出寸法は下リンクストッパ13Bの枠体内への突出寸法より大なるように形成される。
【0060】
本実施例の回路遮断器における、固定フレーム13、フック15、上リンク18及び下リンク19の配置の一例について、
図4a及び
図4bを用いて説明する。
【0061】
フック15は、固定フレーム13と上リンク18の間に配置され、連結されている。フック15の下には隙間が生じているので、そこに下リンク19を配置する。
【0062】
フック15を固定フレーム13と上リンク18との間に配置しているので、固定フレーム13に折り曲げ部を形成するとフックストッパ13Aとして使用することが可能となり、またフック15の下の隙間に下リンク19を配置することができるので、スペースの有効利用になる。そして、打ち出し加工を利用すると簡単に固定フレーム13に突起を形成することができ、その突起を下リンク19のストッパ13Bとして使用することが可能となり、別な部品を用意する必要がなく、フック15や下リンク19を所定の位置で停止させることができる。
【0063】
また、フック15のストッパ13Aは折り曲げにより形成されるのでフック15当接時に力を受ける方向の厚さの設定が容易にでき、フック15のストッパとして充分な強度を得られる。
【0064】
フック15および下リンク19は、固定フレーム13に隣接してフレーム13から近い距離に設けられるので、フック15および下リンク19のストッパ13A、13Bを片持ち梁として見たとき、当接位置が支点から近い位置になるので当接時の変形量(たわみ量)が少なくて済み、金属疲労が減少して長寿命化を図れる。
【0065】
このように、本実施例は、部品点数の削減、コスト減、組立性の向上、信頼性の向上となる。
【0066】
なお、突起の形成方法は本実施例では打ち出し加工であったが、これに限ることはなく、突起となる部材を別に形成して、かしめ等の塑性変形、ネジまたはリベット止め、抵抗溶接等の溶接、接着、あるいはこれらの組合せにより固定フレームに固着したものであってもよい。