【実施例】
【0069】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、芳香族ビニル共重合体の数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(昭和電工(株)製「Shodex GPC101」)を用いて以下の条件で測定した。
<芳香族ビニル共重合体の測定条件>
・カラム:Shodex GPC K−805LおよびShodex GPC K−800RL(ともに、昭和電工(株)製)
・溶離液:クロロホルム
・測定温度:25℃
・サンプル濃度:0.1mg/ml
・検出手段:RI
なお、芳香族ビニル共重合体の数平均分子量(Mn)は、標準ポリスチレンで換算した値を示した。
【0070】
(実施例1)
スチレン(ST)0.67g、N,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)1.23g、アゾビスイソブチロニトリル10mgおよびトルエン5mlを混合し、窒素雰囲気下、60℃で6時間重合反応を行なった。放冷後、クロロホルム−エーテルを用いて再沈殿により精製し、1.0gのST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体を得た。このST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の数平均分子量(Mn)は、78000であった。
【0071】
黒鉛粒子(日本黒鉛工業(株)製「EXP−P」、粒子径100〜600μm)20mg、ウレア−過酸化水素包接錯体80mg、前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体20mgおよびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)2mlを混合し、室温で5時間超音波処理(出力:250W)を施して黒鉛粒子分散液を得た。
【0072】
(実施例2)
スチレン(ST)の量を1g、N,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)の量を1gに変更した以外は実施例1と同様にして1.0gのST−DMMAA(50:50)ランダム共重合体(Mn=55000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST−DMMAA(50:50)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0073】
(実施例3)
スチレン(ST)の量を1.23g、N,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)の量を0.67gに変更した以外は実施例1と同様にして1.0gのST−DMMAA(65:35)ランダム共重合体(Mn=67000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST−DMMAA(65:35)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0074】
(実施例4)
スチレン(ST)の量を1.6g、N,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)の量を0.4gに変更した以外は実施例1と同様にして1.2gのST−DMMAA(80:20)ランダム共重合体(Mn=92000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST−DMMAA(80:20)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0075】
(実施例5)
スチレンの代わりに1−ビニルナフタレン(VN)0.6gを用い、N,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)の量を1.4gに変更した以外は実施例1と同様にして0.27gのVN−DMMAA(30:70)ランダム共重合体(Mn=17000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このVN−DMMAA(30:70)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0076】
(実施例6)
スチレンの代わりに4−ビニルアニソール(VA)0.6gを用い、N,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)の量を1.4gに変更した以外は実施例1と同様にして0.39gのVA−DMMAA(30:70)ランダム共重合体(Mn=28000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このVA−DMMAA(30:70)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0077】
(比較例1)
スチレン(ST)2g、アゾビスイソブチロニトリル10mgおよびトルエン5mlを混合した以外は実施例1と同様にして1.5gのST(100)単独重合体(Mn=95000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST(100)単独重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0078】
(比較例2)
スチレンの代わりにメチルメタクリレート(MMA)0.67gを用いた以外は実施例1と同様にして1.23gのMMA−DMMAA(35:65)ランダム共重合体(Mn=62000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このMMA−DMMAA(35:65)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0079】
(比較例3)
スチレンの代わりにメチルメタクリレート(MMA)1gを用いた以外は実施例2と同様にして0.6gのMMA−DMMAA(50:50)ランダム共重合体(Mn=53000)を得た。前記ST−DMMAA(50:50)ランダム共重合体の代わりに、このMMA−DMMAA(50:50)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例2と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0080】
(比較例4)
スチレンの代わりにメチルメタクリレート(MMA)1.23gを用いた以外は実施例3と同様にして0.8gのMMA−DMMAA(65:35)ランダム共重合体(Mn=43000)を得た。前記ST−DMMAA(65:35)ランダム共重合体の代わりに、このMMA−DMMAA(65:35)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例3と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0081】
(比較例5)
スチレンの代わりにメチルメタクリレート(MMA)1.6gを用いた以外は実施例4と同様にして0.8gのMMA−DMMAA(80:20)ランダム共重合体(Mn=63000)を得た。前記ST−DMMAA(80:20)ランダム共重合体の代わりに、このMMA−DMMAA(80:20)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例4と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0082】
(比較例6)
前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体を用いなかった以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0083】
(比較例7)
スチレンの代わりにN,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)2gを用いた以外は比較例1と同様にして0.93gのDMMAA(100)単独重合体(Mn=72000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このDMMAA(100)単独重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0084】
(比較例8)
スチレンの代わりにフェニルマレイミド(PM)0.6gを用い、N,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)の量を1.4gに変更した以外は実施例1と同様にして1.1gのPM−DMMAA(30:70)ランダム共重合体(Mn=55000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このPM−DMMAA(30:70)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0085】
<黒鉛粒子分散液の目視による観察>
実施例および比較例で得られた黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、目視により観察した。
図1中の(A)〜(C)は、それぞれ実施例1、比較例2および比較例6で得られた黒鉛粒子分散液の写真である。
図1に示した結果から明らかなように、黒鉛粒子と本発明にかかる芳香族ビニル共重合体とを混合した場合(実施例1)には、24時間静置しても黒鉛粒子は沈降せず、得られた分散液は分散安定性に優れたものであった(
図1中の(A))。また、実施例2〜6で得られた分散液においても、24時間静置しても黒鉛粒子は沈降せず、分散安定性に優れたものであった。一方、本発明にかかる芳香族ビニル共重合体の代わりにビニル芳香族モノマー単位を含まないビニル共重合体を用いた場合(比較例2)および本発明にかかる芳香族ビニル共重合体を用いなかった場合(比較例6)には、24時間の静置により黒鉛粒子は沈降し、得られた分散液は透明な上澄み液と黒鉛粒子とに分離し、分散安定性に劣ったものであった(それぞれ(
図1中の(B)、(C)))。
【0086】
<黒鉛粒子の光学顕微鏡による観察>
実施例および比較例で得られた黒鉛粒子分散液を光学顕微鏡(400倍)により観察した。
図2A〜2Gには、それぞれ実施例4〜6および比較例5〜8で得られた黒鉛粒子分散液の光学顕微鏡写真を示す。
【0087】
図2A〜2Cに示した結果から明らかなように、黒鉛粒子と本発明にかかる芳香族ビニル共重合体とを混合した場合(実施例4〜6)には、黒鉛粒子が微細化されていることが確認された。また、このような黒鉛粒子の微細化は、実施例1〜3で得られた分散液においても観察された。
【0088】
一方、
図2D〜2Gに示した結果から明らかなように、本発明にかかる芳香族ビニル共重合体の代わりにビニル芳香族モノマー単位を含まないビニル共重合体を用いた場合(比較例5)、本発明にかかる芳香族ビニル共重合体を用いなかった場合(比較例6)、本発明にかかる芳香族ビニル共重合体の代わりにN,N−ジメチルメタクリルアミド単独重合体を用いた場合(比較例7)および本発明にかかるビニル芳香族モノマー単位の代わりにフェニルマレイミド単位を共重合体に導入した場合(比較例8)には、粉砕が不十分な塊状の黒鉛粒子が形成していることがわかった。また、このような塊状の黒鉛粒子は、比較例1〜4で得られた分散液においても観察された。
【0089】
<黒鉛粒子の走査型電子顕微鏡による観察>
実施例および比較例で得られた黒鉛粒子分散液から黒鉛粒子を採取し、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。
図3A〜3Cには、それぞれ実施例4〜6で得られた黒鉛粒子分散液から採取した黒鉛粒子のSEM写真を示す。また、
図3Dには、原料である黒鉛粒子のSEM写真を示す。
【0090】
図3A〜3Dに示した結果から明らかなように、原料の塊状の黒鉛粒子を本発明にかかる芳香族ビニル共重合体と混合した場合(実施例4〜6)には、黒鉛粒子は板状に微細化されることがわかった。また、実施例1〜3で得られた分散液においても黒鉛粒子は板状に微細化されることが確認された。このような板状の黒鉛粒子の長さ、幅および厚さを測定した結果を表1に示す。一方、比較例1〜8で得られた黒鉛粒子分散液から採取した黒鉛粒子の形状は不定形の塊状であった。
【0091】
【表1】
【0092】
(実施例7)
スチレン(ST)の量を1.82g、N,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)の量を0.18gに変更した以外は実施例1と同様にして0.82gのST−DMMAA(91:9)ランダム共重合体(Mn=58000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST−DMMAA(91:9)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0093】
(実施例8)
スチレン(ST)の量を1.88g、N,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)の量を0.12gに変更した以外は実施例1と同様にして0.53gのST−DMMAA(94:6)ランダム共重合体(Mn=70000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST−DMMAA(94:6)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0094】
(実施例9)
N,N−ジメチルメタクリルアミドの代わりにN−フェニルマレイミド(PM)0.66gを用い、スチレン(ST)の量を1.34gに変更した以外は実施例1と同様にして0.77gのST−PM(67:33)ランダム共重合体(Mn=62000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST−PM(67:33)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0095】
(実施例10)
スチレン(ST)の量を1.66g、N−フェニルマレイミド(PM)の量を0.34gに変更した以外は実施例9と同様にして0.92gのST−PM(83:17)ランダム共重合体(Mn=48000)を得た。前記ST−PM(67:33)ランダム共重合体の代わりに、このST−PM(83:17)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例9と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0096】
(実施例11)
スチレン(ST)の量を1.82g、N−フェニルマレイミド(PM)の量を0.18gに変更した以外は実施例9と同様にして0.66gのST−PM(91:9)ランダム共重合体(Mn=58000)を得た。前記ST−PM(67:33)ランダム共重合体の代わりに、このST−PM(91:9)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例9と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0097】
(実施例12)
スチレン(ST)の量を1.88g、N−フェニルマレイミド(PM)の量を0.12gに変更した以外は実施例9と同様にして0.77gのST−PM(94:6)ランダム共重合体(Mn=52000)を得た。前記ST−PM(67:33)ランダム共重合体の代わりに、このST−PM(94:6)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例9と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0098】
<分散液中の黒鉛粒子の分散安定性>
実施例11で得られた黒鉛粒子分散液を静置し、一定時間ごとに分散液100μlを採取し、3.5mlのDMFを添加して希釈し、光路長1cmのセルを用いて波長500nmにおける吸光度を測定した。その結果、24時間静置しても吸光度はほぼ一定であり、得られた分散液は分散安定性に優れたものであることが確認された。
【0099】
また、実施例2〜4および実施例7〜12で得られた黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、この分散液100μlに対して4mlのDMFを添加して希釈し、光路長1cmのセルを用いて波長500nmにおける吸光度を測定した。その結果を
図4に示す。
【0100】
図4に示した結果から明らかなように、スチレンモノマー単位の含有量が多くなるにつれて吸光度が高くなり、分散安定性が向上することがわかった。これは、スチレンモノマー単位の含有量が多くなるにつれて黒鉛粒子が微細化されやすくなるためと推察される。
【0101】
(実施例13)
N−フェニルマレイミドの代わりに1−ビニルイミダゾール(VI)0.18gを用いた以外は実施例11と同様にして0.37gのST−VI(91:9)ランダム共重合体(Mn=18000)を得た。前記ST−PM(91:9)ランダム共重合体の代わりに、このST−VI(91:9)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例11と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0102】
(実施例14)
N−フェニルマレイミドの代わりに4−ビニルピリジン(4VP)0.18gを用いた以外は実施例11と同様にして0.82gのST−4VP(91:9)ランダム共重合体(Mn=48000)を得た。前記ST−PM(91:9)ランダム共重合体の代わりに、このST−4VP(91:9)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例11と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0103】
(実施例15)
N−フェニルマレイミドの代わりにN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)0.18gを用いた以外は実施例11と同様にして0.88gのST−DMAEMA(91:9)ランダム共重合体(Mn=52000)を得た。前記ST−PM(91:9)ランダム共重合体の代わりに、このST−DMAEMA(91:9)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例11と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0104】
(実施例16)
N−フェニルマレイミドの代わりにメチルメタクリレート(MMA)0.18gを用いた以外は実施例11と同様にして0.79gのST−MMA(91:9)ランダム共重合体(Mn=54000)を得た。前記ST−PM(91:9)ランダム共重合体の代わりに、このST−MMA(91:9)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例11と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0105】
(実施例17)
N−フェニルマレイミドの代わりにヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)0.18gを用いた以外は実施例11と同様にして0.83gのST−HEMA(91:9)ランダム共重合体(Mn=77000)を得た。前記ST−PM(91:9)ランダム共重合体の代わりに、このST−HEMA(91:9)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例11と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0106】
(実施例18)
N−フェニルマレイミドの代わりに2−ビニルピリジン(2VP)0.18gを用いた以外は実施例11と同様にして0.95gのST−2VP(91:9)ランダム共重合体(Mn=89000)を得た。前記ST−PM(91:9)ランダム共重合体の代わりに、このST−2VP(91:9)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例11と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0107】
<分散液中の黒鉛粒子の分散安定性>
実施例7、実施例11および実施例13〜18で得られた黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、この分散液100μlに対して3.5mlのDMFを添加して希釈し、光路長1cmのセルを用いて波長500nmにおける吸光度を測定した。その結果を
図5に示す。
【0108】
図5に示した結果から明らかなように、いずれのランダム共重合体を用いた場合においても、分散液は高い吸光度を示し、黒鉛粒子が微細化されて高度に分散していることが確認された。
【0109】
(実施例19)
ST−PM(91:9)ランダム共重合体の添加量を1mg、2mg、5mg、10mgに変更した以外は実施例11と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0110】
<分散液中の黒鉛粒子の分散安定性>
実施例11、実施例19および比較例6で得られた黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、この分散液100μlに対して3.5mlのDMFを添加して希釈し、光路長1cmのセルを用いて波長500nmにおける吸光度を測定した。その結果を
図6に示す。
【0111】
図6に示した結果から明らかなように、ST−PM(91:9)ランダム共重合体を添加することによって吸光度が高くなり、黒鉛粒子が微細化されて分散安定性が向上することがわかった。また、ST−PM(91:9)ランダム共重合体の添加量が増大するにつれて吸光度が高くなる傾向にあった。
【0112】
(実施例20)
ウレア−過酸化水素包接錯体の添加量を1mg、2mg、10mg、20mg、40mgに変更した以外は実施例11と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0113】
(比較例9)
ウレア−過酸化水素包接錯体の添加量を添加しなかった以外は実施例11と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0114】
<分散液中の黒鉛粒子の分散安定性>
実施例11、実施例20および比較例9で得られた黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、この分散液100μlに対して3.5mlのDMFを添加して希釈し、光路長1cmのセルを用いて波長500nmにおける吸光度を測定した。その結果を
図7に示す。
【0115】
図7に示した結果から明らかなように、ウレア−過酸化水素包接錯体を添加することによって吸光度が高くなり、黒鉛粒子が微細化されて分散安定性が向上することがわかった。
【0116】
(実施例21)
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)の代わりに、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンまたはN−メチルピロリドン(NMP)を2ml混合した以外は実施例4と同様にして黒鉛粒子分散液(ST−DMMAA(80:20)ランダム共重合体添加)を得た。
【0117】
<分散液中の黒鉛粒子の分散安定性>
実施例4および実施例21で得られた黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、この分散液100μlに対して、それぞれ使用した溶媒を3.5ml添加して希釈し、光路長1cmのセルを用いて波長500nmにおける吸光度を測定した。その結果を表2に示す。
【0118】
【表2】
【0119】
表2に示した結果から明らかなように、溶媒としてクロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンまたはNMPを用いた場合にも、DMFを用いた場合と同程度の吸光度を示し、優れた分散安定性を有する黒鉛粒子分散液が得られた。
【0120】
(実施例22)
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)の代わりに、ジクロロメタン、トルエン、ジオキサン、プロパノール、γ−ピコリン、アセトニトリルまたはジメチルスルホキシド(DMSO)を2ml混合した以外は実施例11と同様にして黒鉛粒子分散液(ST−PM(91:9)ランダム共重合体添加)を得た。
【0121】
<分散液中の黒鉛粒子の分散安定性>
実施例11および実施例22で得られた黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、この分散液100μlに対して、それぞれ使用した溶媒を3.5ml添加して希釈し、光路長1cmのセルを用いて波長500nmにおける吸光度を測定した。その結果を表3に示す。
【0122】
【表3】
【0123】
表3に示した結果から明らかなように、溶媒としてジクロロメタン、トルエン、ジオキサン、プロパノールまたはアセトニトリルを用いた場合には、DMFを用いた場合に比べて吸光度は若干低下したが、黒鉛粒子の分散安定性は十分なものであった。また、γ−ピコリンまたはDMSOを用いた場合には、DMFを用いた場合と同程度の吸光度を示し、優れた分散安定性を有する黒鉛粒子分散液が得られた。
【0124】
(実施例23)
前記ST−2VP(91:9)ランダム共重合体の代わりに、スチレン−2−ビニルピリジンブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=48000、2−ビニルピリジン(2VP)ブロックのMn=46000、以下、「ST−2VP(48K/46K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例18と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0125】
(実施例24)
前記ST−2VP(91:9)ランダム共重合体の代わりに、スチレン−2−ビニルピリジンブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=57000、2−ビニルピリジン(2VP)ブロックのMn=57000、以下、「ST−2VP(57K/57K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例18と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0126】
(実施例25)
前記ST−2VP(91:9)ランダム共重合体の代わりに、スチレン−2−ビニルピリジンブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=102000、2−ビニルピリジン(2VP)ブロックのMn=97000、以下、「ST−2VP(102K/97K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例18と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0127】
(実施例26)
前記ST−MMA(91:9)ランダム共重合体の代わりに、スチレン−メチルメタクリレートブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=5000、メチルメタクリレート(MMA)ブロックのMn=5000、以下、「ST−MMA(5K/5K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例16と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0128】
(実施例27)
前記ST−MMA(91:9)ランダム共重合体の代わりに、スチレン−メチルメタクリレートブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=48000、メチルメタクリレート(MMA)ブロックのMn=46000、以下、「ST−MMA(48K/46K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例16と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0129】
(実施例28)
前記ST−MMA(91:9)ランダム共重合体の代わりに、スチレン−メチルメタクリレートブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=85000、メチルメタクリレート(MMA)ブロックのMn=91000、以下、「ST−MMA(85K/91K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例16と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0130】
(実施例29)
前記ST−MMA(91:9)ランダム共重合体の代わりに、スチレン−メチルメタクリレートブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=170000、メチルメタクリレート(MMA)ブロックのMn=168000、以下、「ST−MMA(170K/168K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例16と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0131】
(実施例30)
前記ST−MMA(91:9)ランダム共重合体の代わりに、スチレン−ポリエチレンオキシドブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=9500、ポリエチレンオキシド(PEO)ブロックのMn=9500、以下、「ST−PEO(9.5K/9.5K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例16と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0132】
(実施例31)
前記ST−PEO(9.5K/9.5K)ブロック共重合体の代わりに、スチレン−ポリエチレンオキシドブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=37000、ポリエチレンオキシド(PEO)ブロックのMn=6500、以下、「ST−PEO(37K/6.5K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例30と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0133】
(実施例32)
前記ST−PEO(9.5K/9.5K)ブロック共重合体の代わりに、スチレン−ポリエチレンオキシドブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=40000、ポリエチレンオキシド(PEO)ブロックのMn=42000、以下、「ST−PEO(40K/42K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例30と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0134】
(実施例33)
前記ST−PEO(9.5K/9.5K)ブロック共重合体の代わりに、スチレン−ポリエチレンオキシドブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=58600、ポリエチレンオキシド(PEO)ブロックのMn=71000、以下、「ST−PEO(58.6K/71K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例30と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0135】
<分散液中の黒鉛粒子の分散安定性>
実施例16、実施例18および実施例23〜33で得られた黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、この分散液100μlに対して3.5mlのDMFを添加して希釈し、光路長1cmのセルを用いて波長500nmにおける吸光度を測定した。その結果を表4に示す。
【0136】
【表4】
【0137】
表4に示した結果から明らかなように、いずれのブロック共重合体を用いた場合においても、分散液は高い吸光度を示し、黒鉛粒子が微細化されて高度に分散していることが確認された。特に、ビニル芳香族モノマー以外のビニルモノマーとしてメチルメタクリレートを用いた場合には、実施例16のランダム共重合体に比べて実施例26〜29のブロック共重合体を添加することによって、吸光度はより高い値を示し、黒鉛粒子がより微細化されて更に高度に分散していることがわかった。
【0138】
<黒鉛粒子の表面分析>
実施例11で得られた黒鉛粒子分散液(ST−PM(91:9)ランダム共重合体添加)および比較例6で得られた黒鉛粒子分散液(共重合体無添加)をそれぞれインジウム箔上に塗布して乾燥させ、黒鉛粒子塗膜を作製した。これらの黒鉛粒子塗膜について飛行時間型二次イオン質量分析(TOF−SIMS、正イオン:m/z 0−250)を行い、黒鉛粒子塗膜の表面に存在する分子を分析した。
図8の下段にはST−PM(91:9)ランダム共重合体添加した場合、中段には共重合体無添加の場合の分析結果を示す。なお、
図8の上段は、キャスト法により形成したST−PM(91:9)ランダム共重合体の塗膜のTOF−SIMS測定結果を示す。
【0139】
また、得られた黒鉛粒子塗膜についてX線光電子分光(XPS)測定を行なったところ、塗膜表面近傍(表面から深さ10nmの領域)の炭素原子に水酸基が結合していることが確認された。さらに、前記塗膜表面近傍の炭素量および酸素量を測定し、炭素と酸素との原子比を求めた。その結果を表5に示す。
【0140】
【表5】
【0141】
図8に示した結果から明らかなように、比較例6で得られた黒鉛粒子分散液から形成した黒鉛粒子塗膜の表面には共重合体は観察されなかった。一方、実施例11で得られた黒鉛粒子分散液から形成した黒鉛粒子塗膜の表面にはST−PM(91:9)ランダム共重合体が吸着していることがわかった。
【0142】
また、
図8の下段に示したST−PM(91:9)ランダム共重合体のフラグメントパターンから明らかなように、前記共重合体成分のうち、ビニル芳香族モノマー単位を多く含有する共重合体成分が微細化黒鉛粒子の表面に吸着しやすいことがわかった。
【0143】
表5に示した結果から明らかなように、黒鉛粒子の表面に存在する炭素と酸素の原子比は、原料である黒鉛粒子においては炭素原子100に対して酸素原子が約2であるのに対して、ウレア−過酸化水素包接錯体で処理した黒鉛粒子(比較例6)においては炭素原子100に対して酸素原子が約3であり、前記過酸化水素化物での処理によって黒鉛粒子表面に水酸基が導入されたことがわかった。一方、本発明にかかる芳香族ビニル共重合体の存在下で、ウレア−過酸化水素包接錯体で処理した微細化黒鉛粒子(実施例11)においては炭素原子100に対して酸素原子が約1に低下した。このことから、本発明にかかる芳香族ビニル共重合体は板状黒鉛粒子表面の水酸基に吸着して被覆していることが確認された。
【0144】
以上の結果から、本発明にかかる芳香族ビニル共重合体が板状黒鉛粒子に吸着して表面を被覆することによって、黒鉛粒子が微細化され、各種溶媒に高度に分散させることが可能になったと推察される。
【0145】
<導電性>
実施例1で得られた黒鉛粒子分散液(ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体添加)をガラス板上に塗布して乾燥させ、黒鉛粒子塗膜を作製した。この塗膜の表面の任意の2点間(距離:1cm)の電気抵抗をテスターを用いて室温で測定したところ、10Ωであった。
【0146】
また、特開2009−242209号公報に記載の方法により、表面酸化グラファイト材料をカチオン性有機化合物で処理して有機化グラファイト材料を調製し、これをクロロホルムに分散させた。この分散液を用いて上記と同様にして有機化グラファイト塗膜を作製した。この有機化グラファイト塗膜の表面を必要に応じてヒドラジンで処理した後、所定の温度で加熱処理した。このようにして作製した加熱処理を施したヒドラジン未処理の有機化グラファイト塗膜およびヒドラジン処理と加熱処理を施した有機化グラファイト塗膜のそれぞれについて、上記と同様にして塗膜表面の電気抵抗を測定した。
図9には加熱処理温度と電気抵抗との関係を示す。
【0147】
前記黒鉛粒子塗膜の電気抵抗値(10Ω)と
図9に示した結果から明らかなように、本発明の微細化黒鉛粒子(実施例1)からなる塗膜の電気抵抗は、表面酸化グラファイト材料を有機化した材料からなる塗膜にヒドラジン処理や加熱処理を施して電気抵抗を低下させた場合と比較しても著しく小さく、本発明の微細化黒鉛粒子は導電性に非常に優れたものであることが確認された。
【0148】
<吸収スペクトル>
実施例1で得られた黒鉛粒子分散液(ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体添加)を石英ガラス板上に塗布して乾燥させ、厚さ0.1μmの黒鉛粒子塗膜を作製した。この塗膜の吸収スペクトルを波長300〜800nmの範囲について測定した。その結果を
図10に示す。
【0149】
また、特開2009−242209号公報に記載の方法により、表面酸化グラファイト材料をカチオン性有機化合物で処理して有機化グラファイト材料を調製し、これをクロロホルムに分散させた。この分散液を用いて上記と同様にして厚さ1μmの有機化グラファイト塗膜を作製した。この有機化グラファイト塗膜の吸収スペクトルを上記と同様にして測定した。その結果を
図10に示す。
【0150】
図10に示した結果から明らかなように、有機化グラファイト塗膜は500nm以上の長波長領域において吸光度が著しく低下した。このことから、有機化グラファイト塗膜中のグラファイト層には多くの欠陥が存在していると推察される。一方、本発明の微細化黒鉛粒子からなる塗膜(実施例1)は500nm以上の長波長領域においても吸光度の低下が小さく、黒鉛粒子塗膜中の欠陥は比較的少ないと考えられる。
【0151】
<ラマンスペクトル>
実施例1で得られた黒鉛粒子分散液(ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体添加)を石英ガラス板上にキャストして乾燥させ、厚さ0.1μmの黒鉛粒子塗膜を作製した。この塗膜のラマンスペクトルを測定した。その結果を
図11の中段に示す。なお、
図11の上段には、原料黒鉛粒子のラマンスペクトルを示す。
【0152】
また、特開2009−242209号公報に記載の方法により、表面酸化グラファイト材料をカチオン性有機化合物で処理して有機化グラファイト材料を調製し、これをクロロホルムに分散させた。この分散液を用いて上記と同様にして厚さ1μmの有機化グラファイト塗膜を作製した。この有機化グラファイト塗膜のラマンスペクトルを測定した。その結果を
図11の下段に示す。
【0153】
図11に示した結果から明らかなように、有機化グラファイト材料においては、原料黒鉛粒子ではほとんど観測されないDバンドのピークが観測され、グラファイトシート構造が破壊されていることがわかった。一方、本発明の微細化黒鉛粒子においては、Dバンドのピークがほとんど観測されず、欠陥がほとんど存在していないと考えられる。
【0154】
<微細化黒鉛粒子の厚さ測定>
実施例1で得られた黒鉛粒子分散液(ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体添加)を1000rpmで遠心分離して粗大粒子を沈降させた後、上澄み液をマイカ基板上にキャストして乾燥させ、黒鉛粒子塗膜を作製した。この黒鉛粒子塗膜を、Super Sharp Tipを装着した走査型プローブ顕微鏡(デジタルインスツルメンツ社製「NanoScope V D3100」)を用いてタッピングモードで観察した。黒鉛粒子塗膜の表面SPM像を
図12Aに示す。また、
図12A中の直線で示した部分の断面形状を
図12Bに示す。
【0155】
図12Bのグラフ中の凸部分は、微細化黒鉛粒子を構成する板状黒鉛粒子を表しており、その高さは、板状黒鉛粒子の厚さに相当する。
図12Bに示した結果から明らかなように、板状黒鉛粒子の厚さは約0.34nmであり、これは、単層グラフェンの厚さに相当する。すなわち、実施例1で得られた黒鉛粒子分散液に含まれる微細化黒鉛粒子は、グラファイトシート1層分まで剥離された板状黒鉛粒子により構成されていることがわかった。
【0156】
(実施例34)
<微細化黒鉛粒子の調製>
スチレン(ST)18g、2−ビニルピリジン(2VP)2g、アゾビスイソブチロニトリル50mgおよびトルエン100mlを混合し、窒素雰囲気下、85℃で6時間重合反応を行なった。放冷後、クロロホルム−ヘキサンを用いて再沈殿により精製し、真空乾燥して3.3gのST−2VP(9:1)ランダム共重合体(Mn=25000)を得た。
【0157】
前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST−2VP(9:1)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。この黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、目視により観察したところ、黒鉛粒子は沈降せず、得られた分散液は分散安定性に優れたものであった。また、得られた黒鉛粒子分散液をろ過し、ろ滓をDMFで洗浄した後、真空乾燥して微細化黒鉛粒子を回収した。この微細化黒鉛粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、長さが1〜20μm、幅が1〜20μm、厚さが10〜50nmの板状に微細化されたものであることが確認された。
【0158】
<微細化黒鉛粒子のアルキル化>
末端水酸基含有ポリオレフィン(出光興産(株)製「エポール(R)」)4.59g、トリフェニルホスフィン1.1gおよび四塩化炭素40mlを混合し、窒素雰囲気下、80℃で攪拌しながら12時間加熱還流し、末端塩素化ポリオレフィンを合成した。加熱還流後の溶液にエバポレーションを施した後、ヘキサンを用いて末端塩素化ポリオレフィンを抽出した。その後、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン溶媒)で精製して1.5gの末端塩素化ポリオレフィン(Mn=2000(カタログ値))を得た。
【0159】
次に、この末端塩素化ポリオレフィン20mg、前記微細化黒鉛粒子10mgおよびトルエン1mlを混合し、窒素雰囲気下、100℃で6時間攪拌した。得られた分散液をろ過し、ろ滓をトルエンで洗浄して末端塩素化ポリオレフィンで処理された微細化黒鉛粒子を得た。この微細化黒鉛粒子2mgをトルエンまたはヘキサン1mlに分散させ、調製直後および1日間放置した後の分散状態を目視により観察した。その結果を表6に示す。
【0160】
(実施例35)
2−ビニルピリジンの代わりに2−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAMA)0.2gを用い、スチレン(ST)の量を1.8g、アゾビスイソブチロニトリルの量を8mg、トルエンの量を10mlに変更した以外は実施例34と同様にして0.61gのST−DMAMA(9:1)ランダム共重合体(Mn=32000)を得た。
【0161】
前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST−DMAMA(9:1)ランダム共重合体0.1gを用い、黒鉛粒子の量を1g、ウレア−過酸化水素包接錯体の量を1g、DMFの量を50mlに変更した以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。この黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、目視により観察したところ、黒鉛粒子は沈降せず、得られた分散液は分散安定性に優れたものであった。
【0162】
得られた黒鉛粒子分散液をろ過し、ろ滓をDMFで洗浄した後、真空乾燥して微細化黒鉛粒子を回収した。この微細化黒鉛粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、長さが1〜20μm、幅が1〜20μm、厚さが10〜50nmの板状に微細化されたものであることが確認された。
【0163】
この微細化黒鉛粒子10mgを用いた以外は実施例34と同様にして末端塩素化ポリオレフィンで処理された微細化黒鉛粒子を得た。この微細化黒鉛粒子2mgをトルエンまたはヘキサン1mlに分散させ、調製直後および1日間放置した後の分散状態を目視により観察した。その結果を表6に示す。
【0164】
(実施例36)
2−ジメチルアミノエチルメタクリレートの代わりに4−ビニルピリジン(4VP)0.2gを用い、トルエンの量を7.5mlに変更した以外は実施例35と同様にして0.73gのST−4VP(9:1)ランダム共重合体(Mn=18000)を得た。
【0165】
前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST−4VP(9:1)ランダム共重合体0.1gを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。この黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、目視により観察したところ、黒鉛粒子は沈降せず、得られた分散液は分散安定性に優れたものであった。
【0166】
得られた黒鉛粒子分散液をろ過し、ろ滓をDMFで洗浄した後、真空乾燥して微細化黒鉛粒子を回収した。この微細化黒鉛粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、長さが1〜20μm、幅が1〜20μm、厚さが10〜50nmの板状に微細化されたものであることが確認された。
【0167】
この微細化黒鉛粒子10mgを用いた以外は実施例34と同様にして末端塩素化ポリオレフィンで処理された微細化黒鉛粒子を得た。この微細化黒鉛粒子2mgをトルエンまたはヘキサン1mlに分散させ、調製直後および1日間放置した後の分散状態を目視により観察した。その結果を表6に示す。
【0168】
(実施例37)
末端塩素化ポリオレフィンの代わりに塩素化ポリプロピレン(アルドリッチ社製、Mn=100000)20mgを用いた以外は実施例34と同様にして塩素化ポリプロピレンで処理された微細化黒鉛粒子を得た。この微細化黒鉛粒子2mgをトルエンまたはヘキサン1mlに分散させ、調製直後および1日間放置した後の分散状態を目視により観察した。その結果を表6に示す。
【0169】
(実施例38)
末端塩素化ポリオレフィンの代わりに無水マレイン酸変性ポリプロピレン(Clariant社製「LICOCENE MA(R)」、粘度(140℃)=300mPa・s)20mgを用いた以外は実施例34と同様にして無水マレイン酸変性ポリプロピレンで処理された微細化黒鉛粒子を得た。この微細化黒鉛粒子2mgをトルエンまたはヘキサン1mlに分散させ、調製直後および1日間放置した後の分散状態を目視により観察した。その結果を表6に示す。
【0170】
(実施例39)
黒鉛粒子(日本黒鉛工業(株)製「EXP−P」、粒子径100〜600μm)12.5g、ウレア−過酸化水素包接錯体12.5g、実施例34と同様にして調製したST−2VP(9:1)ランダム共重合体1.25g、DMF500mlを混合し、湿式微粒化装置((株)スギノマシン製「スターバーストラボ」)を用いて、室温、シリンダー圧力200MPaの条件で10回湿式粉砕処理を行い、黒鉛粒子分散液を得た。この黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、目視により観察したところ、黒鉛粒子は沈降せず、得られた分散液は分散安定性に優れたものであった。
【0171】
得られた黒鉛粒子分散液をろ過し、ろ滓をDMFで洗浄した後、真空乾燥して微細化黒鉛粒子を回収した。この微細化黒鉛粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、長さが1〜20μm、幅が1〜20μm、厚さが10〜50nmの板状に微細化されたものであることが確認された。
【0172】
この微細化黒鉛粒子10mgを用いた以外は実施例34と同様にして末端塩素化ポリオレフィンで処理された微細化黒鉛粒子を得た。この微細化黒鉛粒子2mgをトルエンまたはヘキサン1mlに分散させ、調製直後および1日間放置した後の分散状態を目視により観察した。その結果を表6に示す。
【0173】
(参考例1)
2−ビニルピリジンの代わりにN−フェニルマレイミド(PM)4gを用い、スチレン(ST)の量を36g、アゾビスイソブチロニトリルの量を100mg、トルエンの量を50mlに変更した以外は実施例34と同様にして25.6gのST−PM(9:1)ランダム共重合体(Mn=37000)を得た。
【0174】
前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST−PM(9:1)ランダム共重合体0.7gを用い、黒鉛粒子の量を7g、ウレア−過酸化水素包接錯体の量を7g、DMFの量を300mlに変更した以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。この黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、目視により観察したところ、黒鉛粒子は沈降せず、得られた分散液は分散安定性に優れたものであった。
【0175】
得られた黒鉛粒子分散液をろ過し、ろ滓をDMFで洗浄した後、真空乾燥して微細化黒鉛粒子を回収した。この微細化黒鉛粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、長さが1〜20μm、幅が1〜20μm、厚さが10〜50nmの板状に微細化されたものであることが確認された。
【0176】
この微細化黒鉛粒子10mgを用いた以外は実施例34と同様にして末端塩素化ポリオレフィンで処理された微細化黒鉛粒子を得た。この微細化黒鉛粒子2mgをトルエンまたはヘキサン1mlに分散させ、調製直後および1日間放置した後の分散状態を目視により観察した。その結果を表6に示す。
【0177】
【表6】
【0178】
表6に示した結果から明らかなように、アミノ基を有する芳香族ビニル共重合体を備える微細化黒鉛粒子を反応性部位を有するポリオレフィンで処理した場合(実施例34〜39)、得られた微細化黒鉛粒子はトルエン分散安定性に優れたものであった。このことから、微細化黒鉛粒子中の芳香族ビニル共重合体にはポリオレフィン鎖が導入されていることが確認された。一方、アミノ基を有しない芳香族ビニル共重合体を備える微細化黒鉛粒子を反応性部位を有するポリオレフィンで処理した場合(参考例1)には、トルエン分散性やヘキサン分散性が認められなかった。これは、参考例1においては、微細化黒鉛粒子中の芳香族ビニル共重合体にアミノ基などの官能基が存在しないため、反応性部位を有するポリオレフィンとの反応が進行せず、前記芳香族ビニル共重合体にポリオレフィン鎖が導入されなかったためと推察される。
【0179】
また、2VP単位を含有する芳香族ビニル共重合体を備える微細化黒鉛粒子を末端塩素化ポリオレフィンで処理した場合(実施例34および実施例39)、得られた微細化黒鉛粒子はヘキサン分散安定性に優れたものであった。一方、DMAMA単位または4VP単位を含有する芳香族ビニル共重合体を備える微細化黒鉛粒子を末端塩素化ポリオレフィンで処理した場合(実施例35〜36)には、調製直後の微細化黒鉛粒子は調製直後のヘキサン分散性には優れるものの、ヘキサン分散安定性は低下することがわかった。これは、2VP単位に比べて、DMAMA単位や4VP単位には末端塩素化ポリオレフィンが反応しにくく、ポリオレフィン鎖の導入量が低下し、且つ、末端塩素化ポリオレフィンが結合しても立体的な極性基を遮蔽する効果が少なかったためと推察される。また、2VP単位を含有する芳香族ビニル共重合体を備える微細化黒鉛粒子を塩素化ポリプロピレンまたは無水マレイン酸変性ポリプロピレンで処理した場合(実施例37〜38)にも、調製直後の微細化黒鉛粒子は調製直後のヘキサン分散性には優れるものの、ヘキサン分散安定性は低下することがわかった。これは、前記塩素化ポリプロピレンや前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンは、分子内部に官能基を有するものであり、分子末端に官能基を有する末端塩素化ポリオレフィンに比べて、2VP単位に対する反応性が低く、ポリオレフィン鎖の導入量が低下し、また、ポリプロピレン部位のタクティシティーが高く、溶解性が乏しいためと推察される。