特許第5700318号(P5700318)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5700318-封止装置及び封止・冷却方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5700318
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】封止装置及び封止・冷却方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/02 20060101AFI20150326BHJP
【FI】
   H01L23/02 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-149599(P2014-149599)
(22)【出願日】2014年7月23日
【審査請求日】2014年8月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514011066
【氏名又は名称】CROSS大阪株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120019
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 敏安
(72)【発明者】
【氏名】岡本 隆史
【審査官】 木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−055193(JP,A)
【文献】 特開2006−073679(JP,A)
【文献】 特開2013−258401(JP,A)
【文献】 特開昭59−207642(JP,A)
【文献】 特開2007−335749(JP,A)
【文献】 特開2014−038970(JP,A)
【文献】 特開2011−146491(JP,A)
【文献】 特開平01−165146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/02−23/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を収納する容器と封止蓋とを気密封止する電子部品の封止装置であって、
封止ラインとそれに続く50℃以下の温度に冷却する冷却ラインとを有し、
封止蓋と容器との間に溶着材を介在させ、封止ラインにおいて減圧状態で溶着材を溶融させて封止蓋と容器とを封止する封止装置であり、
冷却ラインは、直接容器に接触する冷却荷重ピンによって容器と封止蓋との間を加圧しながら冷却を行うものであり、
冷却ラインは、窒素導入口を備えたものである
ことを特徴とする封止装置。
【請求項2】
容器及び封止蓋は、封止治具及び治具蓋の間に設けられた空間中に設置されるものである請求項1記載の封止装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の封止装置を使用して容器と封止蓋とを封止することを特徴とする封止・冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止装置及び封止・冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子、水晶発振器、弾性表面波フィルタ、LED等の電子部品の分野において、減圧下で容器の開口部に封止蓋を接合することで、該容器を気密封止することが行われている。
【0003】
特許文献1においては、パレットを使用して、このパレットに封止蓋と容器とを載置し、封止装置中において加熱封止する封止装置が開示されている。このような封止は、溶着材の融点以上の温度に加熱して行われるから、その後、冷却工程を設け、封止を行った後の電子部品を冷却することが必要となる。
【0004】
このような冷却は、通常、図2に示したような方法で行われる。図2の2aは封止ラインを示し、2bが冷却ラインを示す模式図である。図2の2aの封止ラインにおいては、上下から加熱板によって挟み込む際に荷重ピン16によって直接容器11を加圧・加熱することが行われているが、図2の2bの冷却ラインにおいては、このような荷重ピンは使用されていない。
【0005】
すなわち、封止工程においては、溶融した溶着材13にとって隙間なく強力な接着強度で容器11と封止蓋12を圧着するため、荷重ピン16が使用されるものである。しかし、冷却工程は、封止工程で接着したものを冷却するだけであるから、荷重ピンは不要であると考えられていた。
【0006】
このような従来の冷却工程においては、上下から冷却板を封止治具15や治具蓋14に接触させ、熱伝導によって冷却を行う。その際に、真空を解放するために窒素を系内に導入し、系を常圧に戻すとともに、その窒素によって冷却を図ることも行われている。この場合、窒素が流入する際の圧力によって、気密効果を更に高めるものであった。
【0007】
しかし、近年、スマートホンの軽量薄型多機能化に伴い、内蔵される水晶振動子や水晶発振子、弾性表面波フィルタ等も、小型薄型の気密封止が要求されている。このため、小型化のために封止における溶着面積が小さくなる。更に、容器の重量が軽いものとなる。これらの要因によって、真空加熱封止時には容器11と封止蓋12との間で隙間なく溶着していた溶着材13中に隙間ができてしまうトラブルが発生するようになった。
【0008】
また、上述したように冷却時に窒素を導入する場合、容器と封止蓋が小型化すると、外周圧による気密封止の効果も薄れてしまい、気密封止ができないというトラブルが発生するようになった。特許文献1においては、このような問題に対応するための具体的な方法が開示されていない。更に容器と封止蓋が小型化が進む中で、冷却時間が従来方法と同じであると、冷却中に容器と蓋の内部に揮発成分が生まれるトラブルも発生するようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−14810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記に鑑み、効率よく高気密性の封止を行うことができる封止装置及びそれを用いた封止方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、電子部品を収納する容器と封止蓋とを気密封止する電子部品の封止装置であって、封止ラインとそれに続く50℃以下の温度に冷却する冷却ラインとを有し、封止蓋と容器との間に溶着材を介在させ、封止ラインにおいて減圧状態で溶着材を溶融させて封止蓋と容器とを封止する封止装置であり、冷却ラインは、直接容器に接触する冷却荷重ピンによって容器と封止蓋との間を加圧しながら冷却を行うものであり、冷却ラインは、窒素導入口を備えたものであることを特徴とする封止装置である。
【0012】
上記容器及上記封止蓋は、封止治具及び治具蓋の間に設けられた空間中に設置されるものであることが好ましい。
本発明は、上述した封止装置を使用して容器と封止蓋とを封止することを特徴とする封止・冷却方法でもある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の封止装置及び封止・冷却方法は、簡便な装置によって、冷却工程において、容器と封止蓋との間に隙間が生じることを防止することができ、これによって、冷却工程に由来する気密封止不良のトラブルの発生を大幅に低減することができるものである。これによって安価に高気密性の部品を得ることができるため、電子部品の小型化、高性能化を図ることができる。更に、本発明の封止装置及び封止・冷却方法は、急速冷却を行うことが可能であることから、これによって、揮発成分の発生を抑制でき、高気密性の封止を効率よく行うことができる、という利点も有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の封止装置の一例を示す模式図である。
図2】従来の封止装置の一例を示す模式図である。
図3】本発明の封止装置の概要を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の封止装置は、加熱封止を行った後の冷却ラインが荷重ピンを備えており、これによって容器と封止蓋との間を加圧しながら急速冷却を行うことに特徴を有するものである。
容器が封止蓋に押圧された状態で冷却が行われるため、容器と封止蓋との間に隙間が生じることによるトラブルが発生しにくくなる。また、荷重ピンは容器に直接接触することから、熱伝導による急速冷却の効果が大きく、これによって、冷却効率が向上するという利点も得られる。
【0016】
本発明の封止装置における封止ラインは特に限定されるものではなく、任意の公知のものを使用することができる。例えば、特許文献1に記載されたもののように、パレット上に複数の凹部を形成した封止治具を使用し、封止治具の凹部内に封止蓋と容器と溶着材とを収納し、ここに治具蓋を設置した状態で処理を行うことができる。これらを減圧下で加熱し、その後封止工程において減圧下で荷重ピンによって加熱・加圧して封止を行うことができる。また、特許文献1に記載されたもののように、加熱ラインと封止ラインとを別個のものとし、加熱ラインによって加熱した後、封止ラインによって封止を行うものであってもよい。
【0017】
本発明の具体的な態様の一例を図1において模式図として示した。なお、本発明は図1に記載されたものに限定されるものではない。図1においては、1aが封止工程を示し、1bが冷却工程を示している。
図1の態様において、封止される容器11及び封止蓋12は、封止治具15と治具蓋14中に形成された空間に設置され、この状態で封止治具15・治具蓋14ごとライン中を移動し、ライン中の封止ライン、冷却ラインにおいて所定の封止処理が行われる。
治具蓋14は、荷重ピンを通過させるための貫通孔が形成されたものであることが好ましい。
【0018】
図1の態様の封止工程においては、減圧真空下においてそれぞれ所定温度に加熱した上加熱板17、下加熱板18によって治具蓋14と封止治具15を挟み込む。上加熱板17、下加熱板18はいずれも加熱されたものであり、治具蓋14と封止治具15と直接接触させ、熱伝導によって容器11、封止蓋12、溶着材13が加熱される。このように加熱されると同時に、荷重ピン16によって容器11、封止蓋12の間に押圧が付与される。これによって溶融した溶着材によって容器11、封止蓋12が接着され、封止が行われる。更に、このような封止の工程において、封止ライン内は高真空状態に保たれている。これによって、容器内部が高真空に保たれた状態での封止が行われる。
【0019】
荷重ピン16の設置方法は特に限定されるものではないが、例えば、図1に示したもののように、加熱上板17上に設けた突起物の形態で荷重ピン16を設けるものとすることができる。
【0020】
図1の1aのような封止ラインによって、封止処理を行われた被処理物は、治具蓋14・封止治具15とともに、装置内を冷却ラインへと搬送される。冷却ラインにおける処理の方法の一例の模式図を図1の1bにおいて示した。
【0021】
図1の1bにおいて、所定温度の上冷却板19と下冷却板20によって治具蓋14と封止治具15を挟み込む。これによって、上述した封止ラインと同様に、低温の上冷却板19と下冷却板20を、治具蓋14と封止治具15と直接接触させ、熱伝導によって容器11、封止蓋12、溶着材13が冷却される。
【0022】
本発明の封止装置においては、図1の1bに示したように、冷却ラインにおいて荷重ピン22を備えたものである。すなわち、図2に示したように、封止ラインにおいて荷重ピン16を備えた装置は公知であるが、冷却ラインにおいて荷重ピン16を設置することは、従来知られていなかった新規な事項である。
このように荷重ピン22を備えた装置によって加圧しながら冷却工程を行うことによって、冷却工程において溶着材のなかに隙間が発生することを防ぐことができ、封止工程における不具合の発生を抑制することができる点で好ましいものである。
【0023】
上記荷重ピン22は、封止ラインにおける荷重ピン16と同様に、上冷却板中に設けた突起として設置したものとすることができる。これによって、荷重ピン22が直接容器に接触して、加圧することができ、冷却時の隙間の生成を抑制することができ、更に、荷重ピン22が直接容器11に接触することから、荷重ピン16からの熱伝導によって、容器11が効率よく急速冷却されるという利点も有する。
【0024】
更に、冷却ラインにおいては、窒素導入口21を設置したものであってもよい。このような窒素導入口21から窒素を導入して、減圧を解除するとともに、窒素による冷却効果を得ることもできる。更に、小型の軽量な部品においては、従来の方法では窒素の導入によって、隙間ができたりする場合などがあったが、本発明の封止装置においては荷重ピンによって固定されていることから、このような問題も生じることがない。
【0025】
このような観点から図2の2bとして示した従来技術の封止装置における冷却ラインを参照する。2bに示したような冷却ラインにおいては、荷重ピンが存在しない点で本願発明の封止装置とは相違している。この場合、容器11、封止蓋12、溶着材13は、荷重ピンによる固定が行われていない状態であることから、図1の1bに示したものに比べて、空隙などを生じやすいことは明らかである。
【0026】
本発明の封止装置の概要を図3に示した。当該図3は、本発明の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。
本発明の封止装置は封止ライン及び冷却ラインを備えたものである。図1に示したように、パレット状の封止治具15の凹部中に封止蓋12、溶着材13、容器11をこの順に設置する。そして、治具蓋14を封止治具15上に載置し、この状態で搬送手段(図示せず)によって、装置内を移動させ、封止ライン102→冷却ライン104の順に通過させ、それぞれのライン中で必要な処理を行うことによって封止処理を行うものである。
【0027】
なお、図3に示した封止装置においては、封止ライン前に常圧減圧切替室(入側)103及び加熱ライン101を備えている。すなわち、封止ライン101に被処理物を導入する前に、減圧及び加熱を行うものである。常圧減圧切替室(入側)103及び加熱ライン101の構成は特に限定されるものではなく、封止装置の通常のラインを使用することができる。
【0028】
加熱ライン101は、加熱手段及び減圧手段を有するものであることが好ましい。すなわち、加熱ライン101中では減圧状態で加熱を行い揮発性能を高める構造とする。その際、上記溶着材の融点付近の温度で加熱を行い、加熱ライン中で揮発成分を十分に揮発させることが好ましい。
【0029】
加熱ライン101における減圧手段は特に限定されず、5パスカル(5Pa)以下の減圧状態にまで減圧できるものであれば減圧ポンプ等の周知の任意のものを使用することができる。
【0030】
封止ライン102は、加熱手段、減圧手段及び押圧手段を備えたものである。すなわち、加熱ラインを経て、溶着材が溶融した状態の封止蓋及び容器を気密状態で融着させるものである。
【0031】
封止ライン102における加熱温度は特に限定されるものではなく、使用する溶着材によって適宜設定することができる。原則的には、使用する溶着材の融点以上で加熱することが好ましい。もっとも一般的な溶着材である金錫合金(AuSn合金)の場合は、280℃以上であることが好ましい。
【0032】
封止ライン102における減圧手段としても、上記加熱ライン101と同一のものを使用することができる。また、上記封止ライン102中の空間を上記加熱ライン101中の空間と連続したものとして、これらの両方を同時に減圧するものであってもよい。
【0033】
このような加圧条件は特に限定されるものではないが、容器の大きさによって加圧条件を変更出来ることが好ましい。例えば、□2mm程度の容器であれば100g/cmという加圧条件で封止を行うことができる。
【0034】
上記冷却ラインにおいて、押圧ピン22による加圧は、例えば、□2mm程度の容器であれば100g/cmという加圧条件で行うことができる。冷却効率については70℃/分以上の冷却効率を有する事が望ましく、同冷却効率以上且つ出来るだけ短い時間内で50℃以下の温度まで冷却する事が望ましい。
【0035】
本発明の封止装置においては、加熱ライン、封止ライン、冷却ラインの各々の温度誤差を少なくする事が求められる。本装置においては温度誤差を±2.5℃以下の制御を有するものとする。
【0036】
本発明は、上述した封止装置を使用して封止蓋と容器とを封止することを特徴とする封止方法でもある。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、上述したようなものであり、水晶振動子、水晶発振器、弾性表面波フィルタ、LED等の電子部品の容器と封止蓋とを封止する目的で利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
11 容器
12 封止蓋
13 溶着材
14 治具蓋
15 封止治具
16 荷重ピン(封止ライン)
17 上加熱板
18 下加熱板
19 上冷却板
20 下冷却板
21 窒素導入口
22 荷重ピン(冷却ライン)
101 加熱ライン
102 封止ライン
103 常圧減圧切替室(入側)
104 冷却ライン
105 106.減圧ポンプ


【要約】      (修正有)
【課題】効率よく高気密性の封止を行うことができる封止装置及びそれを用いた封止・冷却方法を提供する。
【解決手段】電子部品を収納する容器11と封止蓋12とを気密封止する電子部品の封止装置であって、封止ラインとそれに続く冷却ラインとを有し、封止蓋12と容器11との間に溶着材を介在させ、封止ラインにおいて溶着材を溶融させて封止蓋12と容器11とを封止する。冷却ラインは、荷重ピン22によって容器11と封止蓋12との間を加圧しながら急速冷却を行う。
【選択図】図1
図1
図2
図3