【実施例】
【0138】
本発明について、実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0139】
〔実施例1:α−グルコース固定化蛍光性ナノ粒子の調製〕
非特許文献5および6に記載の方法を改変して、塩化カドミウムを含む水溶液に3−MPAを添加し、次いでNaHTeの溶液を加え、混合溶液を1時間還流した後にチオアセトアミドを加えることによって、金属ナノ粒子を含む溶液を調製した。
【0140】
5mMのカドミウムを含む金属ナノ粒子を含む溶液1mLを分注し、マイクロコン(Millipore、Microcon、10000NMWL)を用いて遠心濾過(3500rpm、5分間)し、続いて、ナノ粒子を500μLの水に懸濁した。別途で、250μLの、α−グルコースが結合した糖鎖リガンド複合体(Glcα1−4Glc−mono;式(46)にて表される化合物)の水溶液(10mM)、および250μLの、水素化ホウ素ナトリウム水溶液(100mM)を混合した。その後、この混合溶液500μLとナノ粒子500μLを遮光下にて混和および撹拌して糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子の粗コロイド溶液を調製した。
図1に、調製したナノ粒子の透過型電子顕微鏡画像を示す。
【0141】
次に、上記粗コロイド溶液を再び遠心濾過によって精製し、α−グルコースが固定化した蛍光性ナノ粒子のコロイド溶液を得た。
【0142】
〔実施例2:糖鎖−タンパク質相互作用の測定〕
ConAまたはBSAのPBS溶液(各2mg/mL)を調製し、96ウェルプレートに1レーンずつConAおよびBSAの溶液を2倍段階希釈して50μLずつ添加した(
図2、右側から1〜11:左が高濃度で右が低濃度、最左:ブランク)。すべてのウェルに実施例1で調製したα−グルコースを固定化した蛍光性ナノ粒子のコロイド溶液を50μL添加して混合した。約2時間放置した後、目視による相互作用の確認を行った。
【0143】
図2の写真は、目視下での糖鎖−タンパク質相互作用の解析の結果を示す。結合性タンパク質が添加されているレーンにおいて特異的な凝集反応が見られた。
【0144】
〔実施例3:糖鎖結合性を利用して細胞を蛍光標識する方法〕
5mMのカドミウムを含む金属ナノ粒子を含む溶液1mLを分注し、マイクロコン(Millipore、Microcon、10000NMWL)を用いて遠心濾過(3500rpm、5分間)し、続いて、ナノ粒子を500μLの水に懸濁した。別途で、250μLの、β−ガラクトースが結合した糖鎖リガンド複合体(Galβ1−4Glc−mono;式(39)にて表される化合物)の水溶液(10mM)、および250μLの、水素化ホウ素ナトリウム水溶液(100mM)を混合した。その後、この混合溶液500μLとナノ粒子500μLを遮光下にて混和および撹拌して糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子の粗コロイド溶液を調製した。
【0145】
次に、上記粗コロイド溶液を再び遠心濾過によって精製し、β−ガラクトース固定化した蛍光性ナノ粒子のコロイド溶液を得た。
【0146】
引き続いて、調製した蛍光性ナノ粒子の細胞結合性をフローサイトメトリー(FACS)を用いて解析した。細胞にはマウスのマクロファージ系の細胞であるJ774を用いた。細胞数を1×10
6個/mLに調整した後、調製したナノ粒子を加え、1時間インキュベートした。その後、遠心分離、および細胞の洗浄を行い、細胞をホルマリンで固定化した。細胞を再び洗浄した後、FACS解析を行った。
【0147】
図3は解析結果のグラフを示す。横軸は蛍光強度、縦軸は細胞数を示す。また黒色線は細胞のみ(コントロール)を、黒色破線はα−グルコースを固定化した蛍光性ナノ粒子を加えたもの、灰色線はβ−ガラクトースを固定化した蛍光性ナノ粒子を加えたものをそれぞれ示す。細胞に対して蛍光性ナノ粒子が結合した場合、ピークはコントロールよりも右側にシフトする。測定の結果、α−グルコースまたはβ−ガラクトースを固定化した蛍光性ナノ粒子のどちらも、右側にピークがシフトしている。このことから、これらナノ粒子による細胞標識が可能であることが分かった。
【0148】
〔実施例4:蛍光性ナノ粒子の調製1〕
非特許文献5および6に記載の方法は、いわゆるワンポットでの合成法であり、この方法に従えば、CdTeをコアとしかつCdSをシェルとする構造の蛍光性ナノ粒子(CdTe/CdS)が得られ、この構造に基づいて安定性や蛍光強度が高くなることが報告されている。
【0149】
しかし、このような方法では、得られた蛍光性ナノ粒子の蛍光スペクトル幅が広く、固定化する糖鎖に応じて蛍光波長(すなわち、蛍光の色)を変えることは困難であることがわかった。
【0150】
本発明者らによる創意工夫の結果、上記問題点を解消した方法を完成するに至った。このような蛍光性ナノ粒子の調製方法は以下の通りであり、別々に調製した2種類の溶液を混合し、反応によって形成した粒子を一旦精製し、再度反応させる、ツーポットでの合成法である。
<溶液1の調製>:Te(粉末、0.125mmol(シグマ・アルドリッチより購入)および水素化ホウ素ナトリウム(0.0500mmol)を、アルゴン雰囲気下にてアルゴンガスをバブリングした水(2mL)に溶解し90分間撹拌してテルル化水素ナトリウム水溶液を調製した。
<溶液2の調製>:塩化カドミウム(0.0500mmol)とチオグリコール酸(TGA;0.0265mmol)を、アルゴン雰囲気下にて、アルゴンガスをバブリングした水(10mL)に溶解し、得られた溶液を水酸化ナトリウム水溶液(1M)でpHを9に調整した後、アルゴンガスでさらにバブリングした。
<ナノ粒子の調製>:溶液2を105℃に加熱し、空気雰囲気下にて、激しく撹拌しながら溶液1を加えた。混合溶液を遮光下にて1時間撹拌した後に室温に戻して反応を停止させた。その後、混合溶液に2−プロパノール(蛍光性ナノ粒子溶液量に対して3倍量)を加え、遠心分離(9500rpm、5分間)を行った。上清を除去した後、沈殿を2−プロパノールに懸濁し、さらに遠心分離を行った後に、上清を除去した。この操作を再度行ってナノ粒子を洗浄した後、沈殿を水(10mL)に溶解した。得られた溶液を4℃で10時間保存した後、チオアセトアミド(0.27μL)を加え、105℃で再加熱を行った。遮光下にて適度な時間にわたって加熱撹拌を行った後、室温に冷却して反応を停止させた。蛍光性ナノ粒子濃度は吸光度から見積り7μMであることがわかった。
【0151】
本発明における、ツーポットでの合成法で得られた蛍光性ナノ粒子と、従来法のワンポット得られた蛍光性ナノ粒子の半値幅を比較したグラフ(
図4(a))、および蛍光波長(
図4(b))を示す。半値幅(半値全幅)とは最大蛍光強度の1/2の値を示す波長の幅である。示されるように、ワンポット合成法よりもツーポット合成法を用いる方が、蛍光性ナノ粒子の半値幅が狭い。また、チオール安定化剤として従来用いられる3−MPAよりもTGAを用いる方が、蛍光性ナノ粒子の半値幅が狭いことがわかった。このように、表面配位子としてTGAを用い、CdTeコアへのCdSシェルの付加にツーポット合成法を用いることによって、スペクトル幅が狭く、かつ多色同時蛍光発光が可能な蛍光性ナノ粒子を得られることがわかった。
【0152】
〔実施例5:糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子の調製1〕
上述したツーポット合成法によって得られた蛍光性ナノ粒子(CdTe/CdS)を用いて、糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子(SFNP)を製造した。
【0153】
α−グルコースが結合した糖鎖リガンド複合体(Glcα1−4Glc−mono)(125μL、10mM)と水素化ホウ素ナトリウム(125μL、100mM)を混合し、2時間静置して、糖鎖リガンド複合体溶液(複合体の最終濃度2.5mM)を調製した。蛍光性ナノ粒子溶液(500μL、7μM)を、マイクロコン(Millipore、Microcon、10000NMWL)を用いて遠心濾過(3500rpm、5分間)した後、濾過物を再度250μLの水に懸濁した。この蛍光性ナノ粒子の懸濁液と上記糖鎖リガンド複合体溶液(250μL)を混合し、遮光下にて24時間反応させた。過剰の糖鎖リガンド溶液を遠心濾過によって除去し、沈査をPBSに分散させることによって水中での分散性が良好なSFNP(αGlc−FNP)を得た。
【0154】
糖鎖の固定化について、上記αGlc−FNPを、MALDI−TOF/MSによって糖鎖リガンド複合体の分子質量に相当するピークが測定されたことから確認した(
図5(a))。また、透過型電子顕微鏡によって、αGlc−FNPの粒径を測定したところ、粒径が約5nmであり、比較的均一度の高い粒子であることがわかった(
図5(b))。さらに、アントロン−硫酸法によって糖の定量を行った。換算すると、最終濃度2.5mMの糖鎖リガンド複合体を蛍光性ナノ粒子と反応させた際に、ナノ粒子1つに約130個の糖鎖が固定化されていることがわかった。
【0155】
〔実施例6:糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子のタンパク質との相互作用1〕
上述したように調製したSFNP(2.5mM)と、糖鎖と特異的に結合するタンパク質との相互作用を調べた。5μMのタンパク質溶液を、96ウェルのマイクロプレートにそれぞれ100μL加え、次いで各ウェルにα−グルコースを固定化したαGlc−FNPを100μL加えた。プレートを遮光下にて18時間放置した後、各ウェルにおける上清の蛍光スペクトルを測定した。タンパク質には、コンカナバリンA(ConA)、ヒママメレクチン(RCA120)、ウシ血清アルブミン(BSA)を用いた。α−グルコースと特異的に結合することが知られているConAを加えた時にのみ、蛍光強度の減少が観察された(
図6)。UV−VISよりも感度が高い蛍光において変化が観測されたことは、用いる糖鎖の量が微量であっても、タンパク質との特異的結合を測定することができることを示し、本発明の方法によって得られたSFNPが従来の方法によって得られる糖鎖固定化金ナノ粒子よりもかなり優れた性質を有していることがわかった。
【0156】
〔実施例7:糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子の結合特異性1〕
実施例4の手順に従ってβ−ガラクトースが結合した糖鎖リガンド複合体(Galβ1−4Glc−mono)調製し、これを用いて、実施例5の手順に従って水中での分散性が良好なSFNP(βGal−FNP)を得た。2種類のSFNP(αGlc−FNPおよびβGal−FNP)を用いて、タンパク質との選択的結合活性を調べた。
【0157】
ConAと特異的に結合するα−グルコースを固定化したαGlc−FNPは、橙色の蛍光(Ex=620nm)を示す(
図7(a)中、R−αGlc−FNPと示す。)。と特異的に結合するβ−ガラクトースを固定化したβGal−FNPは、橙色の蛍光(Ex=530nm)を示す(
図7(a)中、G−βGal−FNPと示す。)。
【0158】
これらのFSNPを1μMに希釈し、各50μLずつを混合した。混合溶液を入れたチューブに5μMのタンパク溶液(ConA、RCA120またはBSA)をそれぞれ100μL加え、撹拌した後に一晩放置した。ConAを加えたチューブには、ConAとαGlc−FNPとの相互作用による橙色の蛍光を示す凝集体が生成し、上清は、ConAと相互作用しないβGal−FNPが残ることによって緑色になった(
図7(b))。一方、RCA120を加えたチューブには、RCA120とβGal−FNPとの相互作用による緑の蛍光を示す凝集体が生じ、上清は、RCA120と相互作用しない結合しないα−グルコースを固定化したαGlc−FNPが残ることによって橙色になった(
図7(b))。なお、BSAを加えたチューブでは、凝集は生成せず、チューブ内の溶液は2つのSFNPの混合溶液の色であった(
図7(b))。このように、複数のタンパク質との相互作用を目視にて観察することができた。
【0159】
〔実施例8:糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子による細胞認識1〕
SFNPの細胞結合活性をフローサイトメトリー(FACS)により解析した。SFNPとして、αGlc−FNPおよびβGal−FNPを用い、コントロールとしてテトラエチレングリコール(TEG)を固定化したナノ粒子(TEG−FNP)を用いた。細胞には、肝癌由来の細胞であるHepG2細胞を用いた。
【0160】
細胞を1×10
6個/mLに希釈した後、SFNPまたはTEG−FNPを加えて12時間培養した。SFNPまたはTEG−FNPを含む培地を除去した後、PBSで2回洗浄し、セルスクレイパーで細胞をプレートから剥がし、細胞を含むPBS溶液を調製した。この溶液を、FACS解析に供した。
【0161】
SFNPでは、右側への大きなピークシフトが観察された(
図8)。特に、βGal−FNPにおいてピークシフトは顕著であった。HepG2細胞は、β−ガラクトース親和性があることが知られており、この結果は、HepG2細胞のβ−ガラクトース親和性が明確に示されたことになる。また、αGlc−FNPにおいてもピークシフトが観察された。このことは、HepG2細胞が、β−ガラクトースほどではないがα−グルコースに対しても高い親和性があることを示す。コントロールとして用いたTEG−FNPでは、右側へのピークシフトがほとんど見られなかった。これは、TEG−FNPに糖鎖が結合していないことに起因するといえる。
【0162】
さらに、プレートから剥がす前の細胞を蛍光顕微鏡(HSオールインワン蛍光顕微鏡BZ−9000、BIOREVO, KEYENCE)で観察した。コントロールとして用いたTEG−FNPでは、細胞にて蛍光がほとんど見られなかったが、αGlc−FNPおよびβGal−FNPでは、細胞にて蛍光が観察された(
図9)。
【0163】
〔実施例9:蛍光性ナノ粒子の調製2〕
αGlc−FNPおよびβGal−FNPは、蛍光性ナノ粒子(CdTe/CdS)を用いて製造されたものであり、毒性のCdを含むものである。毒性を低減させることができれば、応用範囲をより広げることができる。そこで、特許文献2に記載の手順を改変して、Cdよりも毒性が低いZAIS(ZnS−AgInS
2)を合成し、ZAISの親水化と糖鎖の固定化を行いSFNPを調製した。
<溶液1’>:N,N−ジエチルカルバミド酸ナトリウム(2.5mmol)を水(50mL)に溶解した。
<溶液2’>:AgNO
3(11.25mM)、In(NO
3)
3・3H
2O(11.25mM)、Zn(NO
3)
2・6H
2O(2.5mM)になるように水(50mL)に溶解した。
<ナノ粒子の調製>:遮光下にて室温で撹拌した溶液1’に、溶液2’を穏やかに加えた。5分間攪拌した後に、遠心分離(3000rpm、10分間)を行った。沈殿に超純水を加えて再度遠心分離(3000rpm、5分間)を行い、上清を廃棄して沈殿を回収した。この操作を4回行った。次に、沈殿にメタノールを加えて遠心分離(3000rpm、5分間)を行い、上清を廃棄して沈殿を回収した。この操作を2回行い、得られた沈殿を減圧下にて乾燥させることによってN,N−ジエチルカルバミド酸錯体を得た。得られた錯体(50mg)を試験管に移し、アルゴン置換した後に、オイルバスにて180℃で30分間加熱攪拌した。放冷後に、アルゴン雰囲気下にて、オレイルアミン(3mL)を加え、オイルバスにて105℃で5分間加熱撹拌した。遠心分離(3500rpm、10分間)した後、上清をメンブレン(0.45μm、PTFE)で濾過し、得られた濾液にメタノール(3mL)を加え、沈殿を生じさせた。濾液全体の遠心分離(3500rpm、10分間)を行った後に、上清を廃棄して沈殿を回収した。得られた沈殿にオレイルアミン(2mL)を加えて溶解させ、メンブレン濾過した後に、濾液にメタノール(2mL)を加えて再度沈殿を生じさせた。濾液全体の遠心分離(3500rpm、10分間)を行った後に、上清を廃棄して沈殿を回収した。得られた沈殿に再度オレイルアミン2mLを加え、アルゴン置換した後に、オイルバスにて180℃で30分間加熱攪拌した。放冷後に、メタノール(2mL)を加えて沈殿を生じさせた。さらに、遠心分離(3500rpm、10分間)を行った後に、上清を廃棄して沈殿を回収した。得られた沈殿をクロロホルム(2mL)に再度溶解してZAIS溶液を得た。
【0164】
ZAISの製造の際に、各試薬の濃度を
図10(a)のように変更することによって、組成比が異なりかつ蛍光スペクトルが異なるナノ粒子を製造することができた(
図10(b)および(c))。以下の実験には、組成比0.4の用いた例を説明する。
【0165】
ZAISのオレイルアミン溶液(2mL)に酢酸亜鉛無水和物(0.562μmol)、チオアセトアミド(0.562μmol)を加え、アルゴン置換した後に、遮光下にて、オイルバスにて180℃で30分間加熱撹拌した。放冷後に、メタノールを加えて遠心分離(3500 rpm、5分間)を行い、上清を廃棄して沈殿を回収した。得られた沈殿をクロロホルム(1mL)に溶解して、ZAISをコアとしかつZnSをシェルとする構造の蛍光性ナノ粒子(ZAIS/ZnS)のクロロホルム溶液を得た。
【0166】
ZAIS/ZnSのクロロホルム溶液(1mL)にクロロホルム(1mL)を加え、0℃に冷却し、攪拌下、3−MPAのエタノール溶液(0.2M、1mL)を加えた。続いて、水酸化カリウムのエタノール溶液(0.3M、1mL)を加え、遮光下にて12時間攪拌した。遠心分離(3500rpm、5分間)を行い、上清を廃棄して沈殿を回収した。得られた沈殿を水(1mL)に溶解し、遠心分離(3500rpm、5分間)を行い、得られた上清をメンブラン濾過(0.45μm)を行って、3−MPA被覆された親水性ZAIS/ZnS(水溶液)を得た。
【0167】
親水性ZAIS/ZnSに以下の処理を行って、より強い蛍光を発する親水化量子ドットを調製した。酢酸亜鉛無水和物(0.1124mmol)を水(2mL)に溶解し、チオアセアミド(0.1124mmol)、TGAまたは3−MPA(0.2248mmol)を加えた。水酸化ナトリウム水溶液(1M)を用いてpHを9に調整した後に、3−MPA−ZAIS/ZnS水溶液(2mL)を加え、遮光下にて、オイルバスにて80℃で加熱撹拌した。放冷後に、メタノールを加え、遠心分離(3500rpm、5分間)を行い、上清を廃棄して沈殿を回収した。得られた沈殿を水(1mL)に溶解し、メンブラン濾過(0.22μm)を行い、不溶部分を除去して、親水化ZAIS/ZnS水溶液を得た。チオール安定化剤としてTGAを用いて製造したZAIS/ZnSの方が、3−MPAを用いて製造したものよりも強い蛍光を発した(
図11)。
【0168】
〔実施例10:糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子の調製2〕
チオール安定化剤としてTGAまたは3−MPAを用いて製造した蛍光性ナノ粒子(ZAIS/ZnS)を用いて、糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子(SFNP)を製造した。
【0169】
Glcα1−4Glc−mono(125μL、10mM)と水素化ホウ素ナトリウム(125μL、100mM)を混合し、2時間静置して、糖鎖リガンド複合体溶液(複合体の最終濃度2.5mM)を調製した。親水化したZAIS/ZnS水溶液(500μL、濃度7μM)を、マイクロコンを用いて遠心濾過(3500rpm、5分間)した後、濾過物を再度250μLの水に懸濁した。この蛍光性ナノ粒子の懸濁液と上記糖鎖リガンド複合体溶液(250μL)を混合し、遮光下にて24時間反応させた。過剰の糖鎖リガンド溶液を遠心濾過によって除去し、沈査をPBSに分散させることによって水中での分散性が良好なSFNP(αGlc−ZAIS/ZnS)を得た。
【0170】
チオール安定化剤としてTGAを用いて、還流を5時間行って得たZAIS/ZnSに固定化したαGlc−ZAIS/ZnSの蛍光は、3−MPAを用いて製造したαGlc−ZAIS/ZnSの蛍光よりも強く、しかも、室温で数週間安定であった(
図12(a)および(b))。
【0171】
〔実施例11:糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子による細胞認識2〕
還流を5時間行って得たZAIS/ZnSに固定化したαGlc−ZAIS/ZnSによる細胞結合活性を検討した。細胞には、肝癌由来の細胞であるHepG2細胞を用いた。比較対照として、CdTe/CdSに固定化したαGlc−FNP(αGlc−CdTe/CdS)を用いた。
【0172】
細胞を1×10
6個/mLに希釈した後、αGlc−ZAIS/ZnSまたはαGlc−CdTe/CdSを加えて12時間培養した。αGlc−ZAIS/ZnSまたはαGlc−CdTe/CdSを含む培地を除去した後、PBSで2回洗浄し、細胞を蛍光顕微鏡(HSオールインワン蛍光顕微鏡BZ−9000、BIOREVO, KEYENCE)で観察した。αGlc−ZAIS/ZnSおよびαGlc−CdTe/CdSのいずれを用いた場合も、細胞にて蛍光が観察されたが、αGlc−ZAIS/ZnSを用いた場合は、細胞の形態が良好に維持されていた(
図13)。このことは、ZAISの低毒性効果がSFNPにおいても維持されており、その効果が反映されたことを示す。
【0173】
〔実施例12:糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子のタンパク質との相互作用および結合特異性2〕
ZAIS/ZnSにGalβ1−4Glc−monoを用いて、上記手順に従って水中での分散性が良好なSFNP(βGal−ZAIS/ZnS)を得た。βGal−ZAIS/ZnSを用いて、糖鎖と特異的に結合するタンパク質との相互作用を調べた。
【0174】
5μMのタンパク質溶液を、96ウェルのマイクロプレートにそれぞれ100μL加え、次いで各ウェルにβ−ガラクトースを固定化したβGal−FNP(βGal−ZAIS/ZnS)を100μL加えた。プレートを遮光下にて18時間放置した後、各ウェルにおける上清の蛍光スペクトルを測定した。タンパク質には、コンカナバリンA(ConA)、ヒママメレクチン(RCA120)、ウシ血清アルブミン(BSA)を用いた。β−ガラクトースと特異的に結合することが知られているRCA120を加えた時にのみ、βGal−ZAIS/ZnSの柿色の沈殿物が生じたことが目視で観測され(
図14(a))、蛍光強度の減少が観察された(
図14(b))。RCA120以外のタンパク質を加えた時には、凝集も蛍光強度の変化もなく、また糖鎖を固定化していないTEG−ZAIS/ZnSおよびTGA−ZAIS/ZnSの場合にも、何ら変化が観測されなかった(
図14(a)、(c)および(d))。UV−VISよりも感度が高い蛍光において変化が観測されたことは、用いる糖鎖の量が微量であっても、タンパク質との特異的結合を測定することができることを示し、本発明の方法によって得られたSFNPが従来の方法によって得られる糖鎖固定化金ナノ粒子よりもかなり優れた性質を有していることがわかった。
【0175】
〔実施例13:抗体を固定化した糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子〕
上述したように、抗体を固定化したナノ粒子は、抗原抗体反応による免疫染色や、抗原の検出、分離/精製に有用である。しかし、蛍光性ナノ粒子はサイズが小さく、抗体のサイズはナノ粒子と同程度に大きいので、抗体を固定化したナノ粒子では、抗体の疎水性ドメインの影響によって水中で分散性が良好であるというナノ粒子の効果が損なわれてしまう。本発明の方法によって得られたSFNPを用いて抗体を固定化すれば、糖が存在していることに起因して良好な分散性を維持することができる。
【0176】
黄色ブドウ球菌(SA)の表面タンパク質であるProtein Aに強く結合することが知られているヒトIgGを固定化した蛍光性ナノ粒子を用いて、水中での分散性が良好な抗体/糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子(Ab−SFNP)を作製した。また、このAb−SFNPを用いてSAを標識化し、共焦点レーザー顕微鏡下にてリアルタイムでの観察を行った。
【0177】
Te粉末(40.04mg)およびNaBH
4(46.54mg)をアルゴンガスで置換し、脱気水を2mL添加した後に1時間撹拌してNaHTe溶液を調製した。50mLの脱気水にCdCl
2(45.83mg)および3−MPA(43.6mL)を加え、1M NaOHでpHを9.0に調整し、脱気した後に溶液を105℃に加温し、さらに。NaHTe溶液を0.5mL加え、遮光下にて1時間還流してCdTeを生成させた。別途、0.4mMチオアセトアミド水溶液を作製し、脱気した後にその1.5mLを上記CdTe溶液に加え、遮光下にて、105℃で18時間還流してCdTe/CdSを調製した。Amicon 10,000MWCOを用いて、CdTe/CdS溶液を限外濾過した(9500rpm×10分間)。沈殿に超純水を加え、9500rpm×10分間遠心分離して沈殿を洗浄した。この操作をさらに2回繰り返して、蛍光性ナノ粒子CdTe/CdSを回収した。得られた蛍光性ナノ粒子を4℃で保存した。
【0178】
10mM NaBH
4 125μLに、Glcα1−4Glc−monoまたはGalβ1−4Glc−monoの混合液125μLを加え、遮光下にて室温で10分間撹拌し、さらに、CdTe/CdSの水溶液250μLを加え、遮光下にて室温で24時間撹拌した。Amicon 10,000MWCOを用いて、25℃で限外濾過した(14,000×gにて5分間)。沈殿に超純水500μLを加え、25℃での限外濾過(14,000×gにて5分間)によって沈殿を洗浄した。この操作をさらに2回繰り返して、SFNP(それぞれ、Glcα1−4Glc−mono−FNP、およびGalβ1−4Glc−mono−FNP)を回収した。500μLになるように超純水を添加したSFNPを遮光下にて4℃で保存した。
【0179】
得られたSFNPの懸濁液200μLに10mM ホウ酸緩衝液(pH7.4)300μLを加え、撹拌した後に、0.2mg/mLの濃度に調製したヒトIgG 50μLを加えた。混合溶液を撹拌した後に、さらに水溶性カルボジイミドWSCD・HCl(10mg/mL)を30μL加え、2時間撹拌した。撹拌後の溶液を、4℃で、50000rpm、30分間超遠心分離した。上清を廃棄した後に、得られた沈殿にPBS(pH8)に溶解したエタノールアミン(50mM)を500μL加えた。混合溶液を、10秒間の超音波処理の後に、遮光下にて1時間撹拌した。撹拌後の溶液を、4℃で、50000rpm、30分間超遠心分離した。上清を廃棄した後に、得られた沈殿に50mM ホウ酸緩衝液(pH8.3)200μLを加え、混和した溶液を4℃で、50000rpm、30分間超遠心分離することによって、沈殿を洗浄した。この操作をさらに2回繰り返した後に、0.2%スキンミルク、0.05% Tween−20、0.1% アジ化ナトリウムを含むPBS 200μLに沈殿物を溶解して、Ab−SFNP溶液を得た。この溶液の保存を4℃で行った。
【0180】
調製したAb−SFNPを2−メルカプトエタノールで還元し、SDS−PAGEおよび銀染色を行った。その結果、2種類のAb−SFNP(ヒトIgGを固定化したGlcα1−4Glc−mono−FNPおよびGalβ1−4Glc−mono−FNP)のいずれにおいても、ヒトIgGのH鎖に相当するバンドが検出された(
図15)。このことは、ヒトIgGがSFNPに固定化していることを示す。また、UV−Vis測定の結果、ヒトIgGを固定化したことによって吸光度が全体的に下がるものの、スペクトルの形に変化はなかった(
図16)。ヒトIgGの固定化前と比較して固定化後では、350nmで励起したときの蛍光強度が約1/3に低減し、ピークトップが610nmから625nmへと長波長側へシフトした。なお、これらの結果について、固定化している糖鎖に起因する差異は認められなかった。
【0181】
調製したAb−SFNPの菌体への結合特性を、2種類の黄色ブドウ球菌(SA)(野生型およびProtein A欠損株)を用いて調べた。2種類の菌を一晩培養し、100μL(1×10
8 cell/mL)の培養液を遠心分離してSAを回収した。ヒトIgG固定化SFNPを5%スキムミルク/PBSのブロッキング液で10倍希釈し、その100μLを、回収したSAに加え、37℃で30分間インキュベートした。次いで、菌体をPBSで3回洗浄した後に、SAの沈殿にUV光を照射して生じた蛍光を観測した。
【0182】
野生株では、Ab−SFNPによる濃いピンク色の蛍光が呈されたが、Protein A欠損株では蛍光が呈されず、抗体を固定化していないSFNPを用いた場合の結果と同じであった(
図17)。これらの結果は、Ab−SFNPのヒトIgGがProtein Aと結合したことを示している。
【0183】
〔実施例14:抗体を固定化した糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子2〕
一端をチオクト酸に、他端をカルボン酸にしたテトラエチレングリコール(TEG)誘導体と、実施例4に記載したツーポット法で合成した蛍光性ナノ粒子QD(CdTe/CdS)との付加を行い、さらに、上記TEG誘導体のカルボン酸末端にNα,Nα−ビス(カルボキシメチル)−L−リジン水和物を導入し、さらに、ニッケルを結合させた化合物を生成し、ニッケルに親和性を有するヒスチジンタグが付加されたM13ファージ由来の一本鎖抗体scFvを、上記ニッケルを介して上記化合物に固定化した。このような、一本鎖抗体scFv結合化合物を用いて、この一本鎖抗体scFvとの親和性が高い培養細胞S1T細胞への結合活性を調べた。具体的な手順を以下に示す。
【0184】
テトラエチレングリコール(TEG)の一端にチオクト酸を付加し、他端をOHで修飾したTEG−OH
【0185】
【化38】
【0186】
およびCOOHで修飾したTEG−COOH
【0187】
【化39】
【0188】
を調製した。これらを、両者の合計の最終濃度が20mMになるように、各混合比(TEG−OH/COOH=10/0、9/1、8/2、7/3)にて混合した。得られた各溶液125μLに10mM水素化ホウ素ナトリウム 125μLを入れ、遮光下にて室温で10分間攪拌した。撹拌後の各混合液にCdTe/CdS溶液 250μLを入れ、遮光下にて室温で24時間攪拌した。その後、各サンプルを10Kカット Amicon限外濾過チューブに入れて、14000×gにて15℃で5分間遠心分離した。さらに、得られた濃縮画分に超純水400μLを入れて、14000×gにて15℃で5分間遠心分離する工程を3回繰り返した。得られた濃縮画分を超純水で250μLにフィルアップし、それぞれを、QD−TEG−OH/COOH=10/0、QD−TEG−OH/COOH=9/1、QD−TEG−OH/COOH=8/2、QD−TEG−OH/COOH=7/3とした。
【0189】
上記のように作製した4種類の蛍光性ナノ粒子(QD−TEG−OH/COOH=10/0、QD−TEG−OH/COOH=9/1、QD−TEG−OH/COOH=8/2、QD−TEG−OH/COOH=7/3)各100μLを、それぞれ10Kカット Amicon限外濾過チューブに入れて、400μLの20mM 炭酸水素ナトリウム水溶液(pH8.0)を加え、14000×gにて15℃で5分間遠心分離する工程を3回繰り返した。得られた各サンプル(50μL)に50μLの20mM 炭酸水素ナトリウム溶液(pH8.0)を加えた。さらに、50μLの水溶性の塩酸カルボジイミド(EDC−HCl,最終濃度161mM)と50μLのN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS,最終濃度21.6mM)を混合し、遮光下にて室温で30分間攪拌した。これをA液とした。
【0190】
Nα,Nα−ビス(カルボキシメチル)−L−リジン水和物(NTA)と塩化ニッケルを、それぞれの最終濃度が20mMおよび38mMになるように、20mM 炭酸緩衝液(pH8.0)に溶かし、室温下で1時間攪拌した。これをB液とした。
【0191】
上記A液およびB液を、等量ずつ(200μL/サンプル)混合し、遮光下にて室温で2時間攪拌した後、各サンプルを10Kカット Amicon限外濾過チューブに入れて14000×gにて15℃で5分間遠心分離した。得られた濃縮画分に、400μLの20mM炭酸緩衝液(pH8.0)を加え、14000×gにて15℃で5分間遠心分離する工程を3回繰り返した。その後、400μLのDulbeccoリン酸緩衝化生理食塩水を加えて14000×gにて15℃で5分間遠心分離を行い、得られた濃縮画分をQD−TEG−OH/COOH−NTA−Niとした。TEG−COOH−NTA−Niの構造は以下のとおりである。
【0192】
【化40】
【0193】
MALDI−TOF−MSによる質量分析でTEG−COOH−NTA−Niに相当する分子質量が観測されたことから、TEG−COOH−NTA−NiがQDに固定化されていることを確認した(
図18)。
【0194】
QD−TEG−COOH−NTA−Niに固定化させる一本鎖抗体scFvを、以下のようにして作製した。文献(The Journal of Biochemistry. 2009; 145 (6): 799-810, Muraoka S et al.)に従い、成人T細胞白血病(ATL)患者由来のS1T細胞に特異的に結合するscFv(S1TA3)を発現する大腸菌株からscFv(S1TA3)タンパク質を抽出しかつ精製した。scFv(S1TA3)を発現する大腸菌HB2151株を、0.1mg/mLアンピシリン、1mM イソプロピル−β−チオガラクトピラノシドを含む2YT培地(100mL)中で24時間培養し、S1TA3の発現を誘導した。大腸菌を含む培地を3000×gにて4℃で20分間遠心分離し、得られた沈殿を2mLのトリス−EDTA緩衝液に溶かした。その後、超音波破砕を行い、15000×gにて4℃で5分間遠心分離して得た上清を、0.45μmミリポアフィルターに通し、粗タンパク抽出とした。得られた粗抽出物をニッケルカラムに通し、ヒスチジンタグの付いたscFv(S1TA3)タンパク質を精製し、蛍光性ナノ粒子に固定化するscFvサンプルとした。
【0195】
scFv(S1TA3)の蛍光性ナノ粒子への固定化を、以下のようにして行った。QD−TEG−OH/COOH−NTA−Ni 各20μLに、上述のようにして得られたS1TA3精製タンパク質溶液 10μLを混合し、遮光下にて4℃で2時間静置した。得られた抗体サンプルscFv(S1TA3)を固定化した蛍光性ナノ粒子(QD−S1TA3)を、SDS−PAGEおよびフローサイトメトリー解析に供した。
【0196】
SDS−PAGEによるscFv固定化QDの確認を、以下のようにして行った。上述のようにして得られたQD−S1TA3(50μL)を、60000rpm,4℃で30分間超遠心分離し、沈殿と上清画分a(sup 1)に分けた。沈殿に20mM 炭酸水素ナトリウム溶液(pH8.0)を加えて容量を50μLとし、同様の操作を繰り返し、上清画分b(sup 2)と沈殿画分(ppt)を得た。上記操作で得られたサンプル画分各10μLと、2−メルカプトエタノールを含むサンプルローディングバッファー 10μLとを混合し、100℃で10分間加熱した。得られたサンプルを12.5%のポリアクリルアミドゲル上に乗せ、40mAで80分間電気泳動した。電気泳動後のゲルを銀染色によって染色した。
図19にはそれぞれの画分の分析結果を示す。
【0197】
QD−S1TA3 OH/COOH=10/0では、TEG−COOH−NTA−Niが存在しないため、scFv(S1TA3)タンパク質は固定化されない。そのため、QD−S1TA3 OH/COOH=10/0ではsup 1,sup 2,ppt全てにおいて、scFv(S1TA3)タンパク質の分子質量である27kDaの位置にはバンドは検出されないが、QD−S1TA3 OH/COOH=9/1、QD−S1TA3 OH/COOH=8/2、QD−S1TA3 OH/COOH=7/3では、いずれのpptにも27kDaの位置にバンドが検出された。このことにより、蛍光性ナノ粒子に、TEG−COOH−NTA−Niを介して一本鎖抗体が固定化されていることが確認された。
【0198】
scFv(S1TA3)タンパク質を固定化した蛍光性ナノ粒子の細胞への結合のフローサイトメトリーによる解析を以下のように行った。細胞には、ATL由来のS1T細胞、及び非ATLの白血病細胞であるMOLT4細胞を用いた。各細胞を1サンプルあたり10
6個に調整後、1サンプルあたり15μLのQD−S1TA3を加え、攪拌した後、遮光下にて4℃で1時間静置した。その後1mLのDulbeccoリン酸緩衝化生理食塩水で1回洗浄し、2000rpm,4℃で5分間遠心分離した。細胞沈殿後に上清を破棄し、1mLのDulbeccoリン酸緩衝化生理食塩水で細胞を攪拌し、フローサイトメトリーに用いるサンプルとした。
【0199】
フローサイトメトリーにはベックマンコールター社製FC500を使用し、解析にはCXP 解析ソフトウェアを使用した。QDの蛍光励起にはアルゴンレーザー(488nm)を使用し、検出にはFL3フィルタ(620nm)を用いた。
図20に結果を示すが、特にQD−S1TA3 OH/COOH=8/2、QD−S1TA3 OH/COOH=9/1、QD−S1TA3 OH/COOH=7/3では、MOLT4細胞と比較して、S1T細胞に対して右側への大きなピークシフトが観察された。