【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら上記従来の技術においては、以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献1)に記載のリチウム吸着剤は繰り返し使用すると構造が崩れてしまい長期間の実用に耐えないという課題を有していた。
(2)(特許文献2)に記載のリチウム濃縮方法は、リチウム吸着剤の性能が低いために、電気透析を用いてさらにリチウム濃縮をする必要があり、設備が複雑になるという課題を有していた。
(3)(非特許文献1)乃至(非特許文献4)に記載のリチウムマンガン複合酸化物は、リチウムの吸着能が低い上に、繰り返し使用すると構造が崩れてしまい長期間の実用に耐えないという課題を有していた。
(4)(特許文献3)は、酸化還元反応が優勢で正極活物質として有用なスピネルマンガンを与えるが、Mnの不均化が生じ易く、かつ、イオン交換時にMnの溶出が生じ易く、吸着剤として使用し難いという課題を有している。これは一回の高温焼成のため原料のMn
3O
4が系内に残存し純粋な結晶相が得られ難いことに起因することが判った。本発明者はこの課題を解決するため鋭意研究した結果、低い温度で一旦仮焼成し、それを再び粉砕混合した後、再び低い温度で本焼成することにより単一相の合成が可能であることを見出した。
(5)(特許文献4)に記載の技術は、マンガンとリチウムのモル比を1.5〜2.5において高いリチウム吸着量を持つリチウム吸着剤を得られるが、さらにリチウムイオンの吸着量を上げるためにマンガンのモル比を下げてMn
3O
4に対するLiOHの配合比を上げるとスピネル構造が生成しないか、あるいは、アモルファス等の他の構造との混合物として得られ、酸処理した場合に、吸着剤が溶解したり、スピネル構造が崩れたりしてしまい、(特許文献4)に記載されたより高いリチウム吸着量をもつ吸着剤を得られないという課題があった。
(6)また、(特許文献4)に記載の技術では、記載された比率以上にLiOHの配合比を上げた場合、出来上がったリチウムマンガン複合酸化物はマンガンとリチウムの結合が不完全となり、リチウムの選択性が低くなるのでリチウムの濃縮率が上がらず、(特許文献4)に記載された以上の性能をもつリチウム吸着剤を得られないという課題があった。
(7)またリチウムマンガン酸化物をリチウム吸着剤として用いる場合に、原料水の硫酸イオン濃度が高いと吸着効果が減少すること、およびリチウム吸着剤の構造が崩れたり、溶解したりするという課題があった。
【0013】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、
(1)低い温度での本焼成によりリチウムイオンのインターカレートと脱インターカレートに伴うMnの不均化を阻止し、Mnの溶出を防止できるので、吸着・溶離を繰り返してもスピネル構造が崩れず、通液が容易で目詰まりしにくい形状に造粒されているので工業的に利用しやすく、繰り返し使用可能なリチウム吸着剤の製造方法を提供することを目的とする。
(2)海水中あるいは地熱熱水中に含まれるリチウムを工業的に吸着・採取するための、リチウムイオンに対する選択吸着性に優れるとともに吸着速度が高くかつ重量当たりの吸着量が大きく、入手しやすい原料で工業的に生産でき、化学的に安定であり、吸着・溶離の繰り返しが可能なリチウム吸着剤の製造方法を提供することを目的とする。
(3)耐塩性や耐高温性に優れ、Li
+の吸着容量が大きいリチウム吸着剤を製造できるリチウム吸着剤用原料の提供を目的とする。
(4)海水中や地熱熱水中のLi
+を吸着したリチウム吸着剤から高効率でLi
+を溶離し濃縮するとともに、リチウム吸着剤を再生することができるリチウム濃縮装置の提供を目的とする。
(5)海水中あるいは地熱熱水中に含まれるリチウムを効率よく選択的に高濃縮でき、長期の繰り返し使用ができるリチウム濃縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記従来の課題を解決するために本発明のリチウム吸着剤の製造方法とそのリチウム吸着剤を用いたリチウム濃縮方法及びリチウム濃縮装置は、以下の構成を有している。
【0015】
本発明の請求項1に記載のリチウム吸着剤の製造方法は、4酸化3マンガン(Mn
3O
4)及び水酸化リチウム(LiOH)を、マンガンとリチウムのモル比がMn:Li=1〜1.2:1となるように混合し、メカノケミカル的粉砕処理を行うメカノケミカル工程と、次いで空気あるいは酸素雰囲気下にて375℃〜450℃の温度域で仮焼成する仮焼成工程と、次いで冷却し混合粉砕した後、空気あるいは酸素雰囲気下にて475℃〜550℃の温度域で本焼成を行いスピネル型酸素過剰マンガン酸リチウムを得る本焼成工程と、該スピネル型酸素過剰マンガン酸リチウムのリチウム(a)に対する酸(b)のモル比がa:b=1:20超となる過剰の酸で、前記スピネル型酸素過剰マンガン酸リチウムからリチウムイオンを溶離
して一般式HaMn2Ob(式中、1.8≦a≦2、4<b≦4.2である。)で表わされるリチウム吸着剤を得る溶離工程と、を有し、前記メカノケミカル工程が
、メカノケミカル的粉砕処理を45分以上行って、前記仮焼成工程で得られる仮焼成物のXRDにおけるMn3O4のピークを減少させるものである構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)メカノケミカル効果によりMn
3O
4とLiOHの相互作用が高まり、従来よりもLiの配合比が高くても酸素過剰マンガン酸リチウムがスピネル構造を保つようになった。そのため、リチウムイオンに対する選択吸着性に優れるとともに吸着速度が速くかつ吸着量が大きく、化学的に安定なリチウム吸着剤を製造できる。非量論的化合物であるMn
3O
4を用いたので反応性が高い。また、Mn
3O
4とLiOHの混合物の相転移点がMn:Li=2:1〜1.5の混合物で425〜430℃、と500〜510℃にあることを見出したので、2段焼成することで安定したスピネル構造のリチウム吸着剤を得ることができる。
(2)低い温度で仮焼成し、次いで低い温度で本焼成を行うので系内に原料のMn
3O
4が残らず純粋な単一の結晶相が得られ、結晶構造が強固となり、化学的に安定な上、繰り返しの使用にも溶解しないリチウム吸着剤を製造できる。
(3)低い温度での本焼成により、リチウムイオンのインターカレートと脱インターカレートに伴うMnの不均化を阻止し、Mnの溶出を防止するので、大過剰の酸でリチウムを溶離することでマンガンの酸化還元反応を抑えて水素イオンとリチウムイオンの交換反応のみを起こさせることができ、結晶構造を壊さない。これにより化学的に安定な上、繰り返しの使用にも溶解しないリチウム吸着剤を製造できる。
(4)リチウムの吸着量が多く、結晶構造が安定なので高能率で繰り返しリチウムイオンを吸着、溶離できるリチウム吸着剤を製造できる。
(5)製造工程が煩雑でなく、入手しやすい原料から工業的に生産可能なリチウム吸着剤が製造できる。
(6)スピネル結晶構造を保ちながらLi含有量を多くすることができる。
(7)結晶構造が安定なので、吸着・脱着作業の繰り返し耐性を高めることができる。
(8)酸素を過剰に有しているため、Mn4+の含有量を増加させ、Li+とのイオン交換反応量を増やすことができる。また、スピネル結晶構造を電子的により安定化させることができる。
(9)プロトンサイト(イオン交換型サイト)にリチウム溶液中からLi+を取り込むことができる。
(10)マンガン酸化物にはトンネル構造、層状構造、網目状構造などさまざまな構造を持つ化合物があるが、スピネル型と呼ばれる構造を持つマンガン酸化物は(1×3)網目状構造になっている。金属イオンに対する吸着選択性はマンガン酸化物の結晶構造に依存するが、非量論型のスピネル型マンガン酸化物としたので、Li+に対して高い選択性を示すと共に多量のLi+とイオン交換をすることができる。また、鹹水はLi+よりイオン半径の大きいNa+やK+、Ca2+等の陽イオンを含むがこれらの陽イオンは網目状構造に入ることができない。その理由は、鋳型であるLi+を取り込むことで調製された吸着剤の前躯体からLi+を取り除くことにより、Li+の大きさの鋳型を有する多孔結晶型の吸着剤を得ることができるためである。
【0016】
ここで、メカノケミカル的粉砕処理とは機械的に粉砕する過程において、物質粒子に機械による圧縮力、剪断力、衝撃力等をかけることによって粒子表面に新しいへき開面を多数生成するとともに表面積を増大し、粒子表面での化学反応性を変化させる処理である。粉砕処理装置としてはアトライター、サンドミル、ボールミル、メディアミル、コロイドミル、ストーンミル、ケディーミル、フロージェットミキサ、スラッシャーミル、メカノヒュージョンシステム(ホソカワミクロン(株)製)、ミラーロ((株)奈良機械製作所製)などが用いられる。
処理時間、処理条件は使用する機器によって異なるが、仮焼成後にXRD測定によってMn
3O
4のピークの減少・消失度合いを確認することでメカノケミカル的処理条件を決めることができる。
【0017】
仮焼成の温度が375℃より低いと均一な組成の結晶が得られないので好ましくない。また発明者らの知見によると450℃を超えると、本焼成を行っても不純物が多く残り結晶構造が脆弱になるので好ましくない。
【0018】
本焼成の温度が475℃より低いと仮焼成物の不純物が本焼成後も残り結晶構造が脆弱になるので好ましくない。550℃を超えると、スピネル型の結晶構造が崩れるため好ましくない。
【0019】
リチウムを溶離するには、大過剰の酸、例えば塩酸、過塩素酸、硝酸等をリチウム(a)と酸(b)のモル比が、a:b=1:20
超となる過剰の酸でリチウムを溶離する必要がある。このときの酸の濃度は、0.1〜2Mである。2Mを超える濃度の酸を適用すると、Mnを溶解させて好ましくない。また、リチウム:酸=1:20以下でリチウムを溶離するとスピネル型結晶構造が崩れて好ましくない。
【0021】
本発明の請求項2に記載のリチウム吸着剤の製造方法は、請求項1に記載のリチウム吸着剤の製造方法であって、前記本焼成工程で得られた前記スピネル型酸素過剰マンガン酸リチウム100重量部に対して
、無機系バインダ2重量部〜40重量部と水を混練したあと、径0.5mm〜6m
mの紐状又は粒状の成形体に加工する成形工程と、次いで前記成形体を450℃〜550℃の温度域で0.5〜3時間焼結し、成形体とする焼結工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1の作用に加えて、以下のような作用が得られる。
(1)粒状に成形されているので、カラムに詰めて使用する場合に通液が容易である。
(2)焼結により硬度が上がり粉化し難く長寿命化できる。
尚、紐状に成形した場合は、焼結後に、1〜3mmにカッターで粒状に切断される。
【0022】
本発
明に記載のリチウム吸着剤の製造方法は、請求項1に記載のリチウム吸着剤の製造方法であって、前記本焼成工程で得られた前記スピネル型酸素過剰マンガン酸リチウム100重量部に対して、キチンやPVCの有機系バインダ0.5重量部〜20重量部と水を混練したあと、径0.5mm〜6mm好ましくは1mm〜3mmの粒状の成形体に加工する成形工程と、次いで前記成形体を50℃〜100℃の温度域で0.5〜4時間乾燥し、成形体とする乾燥工程と、を備えた構成
にすることにより、請求項2と同様の作用が得られる。
また、強固に成形されるので機械的強度に優れ、吸着溶離を繰り返しても、形状が崩れないリチウム吸着剤の製造方法を提供することができる。
【0023】
ここで成形には押し出し造粒機(エクストルーダー)、圧縮造粒機、射出造粒機(ニーダールーダー)など各種造粒機を用いることができる。
ストランド状に成形した場合は成形後、長さ1mm〜6mm好ましくは1〜3mmに切断する。
造粒を終えたスピネル型酸素過剰マンガン酸リチウムは篩にかけ微粉を除いた後で、溶離工程に掛けることが好ましい。
【0024】
リチウム吸着剤は、一般式H
aMn
2O
b(式中、1.8≦a≦2、4<b≦4.2である。)の構成を有している。
この構成により、以下の作用が得られる。
(1)酸素を過剰に有しているため、Mn
4+の含有量を増加させ、Li
+とのイオン交換反応量を増やすことができる。また、スピネル結晶構造を電子的により安定化させることができる。
(2)プロトンサイト(イオン交換型サイト)にリチウム溶液中からLi
+を取り込むことができる。
(3)マンガン酸化物にはトンネル構造、層状構造、網目状構造などさまざまな構造を持つ化合物があるが、スピネル型と呼ばれる構造を持つマンガン酸化物は(1×3)網目状構造になっている。
スピネル型マンガン酸化物の結晶構造を模式的に表したものを図1に示す。金属イオンに対する吸着選択性はマンガン酸化物の結晶構造に依存するが、非量論型のスピネル型マンガン酸化物としたので、Li
+に対して高い選択性を示すと共に多量のLi
+とイオン交換をすることができる。また、鹹水はLi
+よりイオン半径の大きいNa
+やK
+、Ca
2+等の陽イオンを含むがこれらの陽イオンは網目状構造に入ることができない。その理由は、鋳型であるLi
+を取り込むことで調製された吸着剤の前躯体からLi
+を取り除くことにより、Li
+の大きさの鋳型を有する多孔結晶型の吸着剤を得ることができるためである。
【0025】
リチウム吸着剤用原料は、一般式Li
xMn
2O
y(式中、1.8≦x≦2、4<y≦4.2である。)からなる構成を有している。
この構成により、以下の作用が得られる。
(1)酸洗時(溶離時)に定量的にLi
+を溶離させ、かつ、吸着時の繰り返し耐性に優れる。
【0026】
本発明の
請求項3に記載のリチウム濃縮方法は、原水から
請求項1又は2に記載の製法で作製されたリチウム吸着剤を用いて選択的にリチウムイオンを吸着する吸着工程と
、0.1M〜2.0Mの塩酸
、過塩素酸
又は硝酸の内いずれか1
を用いてリチウム(a)に対する酸(b)のモル比がa:b=1:20超となる過剰の酸で前記リチウム吸着剤からリチウムイオンを溶離するリチウムイオン溶離工程を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)リチウムイオンの選択性に優れ、リチウムイオンの吸着速度が速く、リチウムイオンの吸着量が多いリチウム吸着体を、安定して繰り返し使用できるので、工業的にリチウムを高濃縮できる。
(2)溶離工程で用いる酸がリチウム吸着剤を溶かさず、またリチウム吸着剤の結晶構造を崩さないので、リチウム吸着剤が劣化しないので、効率のよいリチウム濃縮を工業的に継続できる。
【0027】
ここで、リチウム吸着剤からリチウムイオンを溶離させる酸の濃度が0.1M未満の場合、溶離の初期において酸の濃度が薄い状態がリチウム吸着剤において部分的に発生し、マンガンの酸化還元反応が起こり、結晶構造が崩れてMnが溶出する恐れがあり好ましくない。またリチウム吸着剤からリチウムイオンを溶離させる酸の濃度が2.0M超であると、長期の反復使用で少しずつ吸着剤が溶解して劣化する恐れがあり好ましくない。
より好ましくは0.5M〜1.5Mの酸が採用される。カラム内の残液による希釈や、溶離液の混合ムラによる吸着剤の損傷を防ぐためである。
【0028】
本発明の
請求項4に記載のリチウム濃縮装置は
請求項1又は2に記載の製法で作製されたリチウム吸着剤が充填されたリチウム吸着カラムを持つ構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)繰り返し使用でき、選択性の高く吸着速度が高く吸着量の多いリチウム吸着剤を充填したカラムを利用するので高能率でリチウムを濃縮できる装置となる。
【0029】
ここで、リチウム吸着剤を充填したカラムをパッケージとして脱着を容易にすることで、リチウムイオンを吸着する工程と溶離工程を分離することができ、装置の設計・配置の自由度を増すことができる。
【発明の効果】
【0030】
以上のように本発明のリチウム吸着剤の製造方法及びリチウム吸着剤、リチウム吸着剤用原料、リチウム濃縮方法、リチウム濃縮装置によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)メカノケミカル効果によりMn
3O
4とLiOHの相互作用が高まり、従来よりもLiの配合比が高くても酸素過剰マンガン酸リチウムがスピネル構造を保つようになったため、リチウムに対する選択吸着性に優れるとともに吸着速度が速くかつ吸着量が大きく、化学的に安定なリチウム吸着剤の製造方法を提供できる。
(2)非量論的化合物であるMn
3O
4を用いたので反応性が高い。また、Mn
3O
4とLiOHの混合物の相転移点が
Mn:Li=1〜1.2:1の混合物で425〜430℃、と500〜510℃にあることを見出したので、2段焼成することで安定したスピネル構造のリチウム吸着剤を得ることができる。仮焼成工程と本焼成工程を有するので、結晶構造が強固となり、化学的に安定な上、繰り返しの使用にも溶解しないリチウム吸着剤の製造方法を提供できる。
(3)大過剰の酸でリチウムイオンを溶離することでマンガンの酸化還元反応を抑えて水素イオンとリチウムイオンの交換反応のみを起こさせることができ、結晶構造を壊さないので、化学的に安定な上、繰り返しの使用にも溶解しないリチウム吸着剤の製造方法を提供できる。
(4)リチウムイオンの吸着量が多く、結晶構造が安定なので高能率で繰り返しリチウムイオンを吸着、溶離できるリチウム吸着剤の製造方法を提供できる。
(5)製造工程が煩雑でなく、入手しやすい原料から工業的に生産可能なので、低原価で量産性に優れたリチウム吸着剤の製造方法を提供できる。
(6)安定なスピネル結晶構造を保ち、Li含有量が多く、吸着・脱着作業の繰り返し耐久性の高いリチウム吸着剤を低原価で量産できるリチウム吸着剤の製造方法を
提供できる。
【0032】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、
(1)径0.5mm〜6mm好ましくは1〜3mmの粒状に成形されているので、カラム等に充填しても通液性がよく使用しやすいリチウム吸着剤の製造方法を提供することができる。
(2)焼結により硬度が上がり粉化し難く耐久性に優れたリチウム吸着剤の製造方法を提供することができる。
【0034】
請求項1
又は2の製造方法により、次の有利な効果を実現できるリチウム吸着剤を提供できる。
(1)酸素を過剰に有しているため、Mn
4+の含有量を増加させ、Li
+とのイオン交換反応量を増やすことができる。
(2)プロトンサイト(イオン交換型サイト)にリチウム溶液中からLi
+を取り込むことができる。
(3)マンガン酸化物にはトンネル構造、層状構造、網目状構造などさまざまな構造を持つ化合物があるが、スピネル型と呼ばれる構造を持つマンガン酸化物は(1×3)網目状構造になっている
。金属イオンに対する吸着選択性はマンガン酸化物の結晶構造に依存するが、非量論型のスピネル型マンガン酸化物としたので、Li
+に対して高い選択性を示すと共に多量のLi
+とイオン交換をすることができる。また、鹹水はLi
+よりイオン半径の大きいNa
+やK
+、Ca
2+等の陽イオンを含むがこれらの陽イオンは網目状構造に入ることができない。その理由は、鋳型であるLi
+を取り込むことで調製された吸着剤の前躯体からLi
+を取り除くことにより、Li
+の大きさの鋳型を有する多孔結晶型の吸着剤を得ることができるためである。
【0035】
請求項1
又は2の製造方法により、次の有利な効果を実現できるリチウム吸着剤用原料を提供できる。
(1)酸洗時(溶離時)に定量的にLi
+を溶離させ、かつ、吸着時の繰り返し耐久性に優れるリチウム吸着剤を与えるリチウム吸着剤用原料を提供できる。
【0036】
請求項3に記載の発明によれば、
(1)リチウムイオンの選択性に優れ、リチウムイオンの吸着速度が高く、リチウムイオンの吸着量が高いリチウム吸着体を、安定して繰り返し使用できるので、工業的にリチウムを高濃縮できるリチウム濃縮方法を提供できる。
(2)溶離工程で用いる酸がリチウム吸着剤を溶かさず、またリチウム吸着剤の結晶構造を崩さないので、リチウム吸着剤が劣化しないので、効率のよいリチウム濃縮を工業的に継続できるリチウム濃縮方法を提供できる。
【0037】
請求項4に記載の発明によれば、
(1)高性能で化学的に安定なリチウム吸着体を有しているので安定で効率的運転が可能なリチウム濃縮装置を提供できる。