(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5700342
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】液晶画面用保護シート材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20150326BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
B32B27/00 101
G02F1/1333
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-28340(P2013-28340)
(22)【出願日】2013年1月29日
(65)【公開番号】特開2014-144632(P2014-144632A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2014年5月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593002654
【氏名又は名称】ナニワ化工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 豊樹
【審査官】
横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3183062(JP,U)
【文献】
特開2000−056694(JP,A)
【文献】
特開2005−075959(JP,A)
【文献】
特開2006−175808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
G02F 1/1333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶画面に加圧貼着して用いる保護シート材であって、
透明なシート状の合成樹脂製の基材(2)と、該基材(2)の一側面(2A)に、その一側面(3A)が担持されたシリコーン層(3)と、から成り、
前記シリコーン層(3)は、シリコーンに、少なくともシリコーンゲルを混入し、練成した復元遅効性のシリコーンから成り、且つ、
前記シリコーン層が200ミクロンから500ミクロンの厚みに構成されている、
ことを特徴とする液晶画面用保護シート材。
【請求項2】
前記シリコーン層(3)の他側面には、剥離用フィルム(1)が貼着されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶画面用保護シート材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話、パソコンなど、液晶画面を備えた機器の画面保護を図る液晶画面用保護シート材の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、パソコンなど、液晶画面は外部に露出されているものであるから、爪或いは他物との接当によって傷つき易く、そのために保護皮膜が求められている。
こうした保護皮膜としては、一般に、透明な粘着シート乃至フィルムが用いられており、携帯電話等の個人ユーザーが別途購入し、自ら貼着しているか、場合によっては、先にメーカー側が剥離用フィルム(搬送、取り扱い上の保護の目的)を剥離して、貼着していることもある。
【0003】
また、保護用のシート乃至フィルムを用いることで、光の反射等によって液晶画面が見難くなることもあり、防眩性を配慮したシート材も提案されている。
特に、液晶画面の損傷を防ぐ為に、保護シートに衝撃緩衝層を設ける方法が採られており、その衝撃緩衝層の形成には、一般に、弾性に優れたウレタン系樹脂層が用いられている。
【0004】
かかる保護シート材は、液晶画面に貼着された状態で示すと、
図3に示すように、一般に、最上層に200ミクロン乃至250ミクロンのウレタン系樹脂層11が位置され、その下層に25ミクロン程度の粘着層12が位置され、その下層にPET等の25ミクロン乃至50ミクロン程度の合成樹脂製の基材13が位置され、その下層に、30ミクロン乃至50ミクロン程度のシリコーン層14が位置されており、この下層には、液晶画面貼着に際して剥離する剥離用フィルム材15が貼着されて構成さている。
【0005】
このような液晶画面用保護シート材としては、例えば、次の技術が知られている。
【特許文献1】実用新案登録3155738号公報
【特許文献2】特開2009−209203
【特許文献3】特開2009−288681
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したウレタン系樹脂は、優れた弾性を有するので、液晶画面への外力に対して大きな緩衝効果をもたらすが、その製造工程は、各層を形成するために、複雑となり、非常なコスト高を招いていた。即ち、ウレタン系樹脂は、直接に異質のPET等の基材に貼着させることができず、粘着剤層を介在させなければならなかった。
【0007】
また、ウレタン系樹層脂は、衝撃に対して反発力が高いために、衝撃吸収時における減衰率が小さく(減衰周期が長い)、従って、例えば、鋼球の自然落下による衝撃テストでは、液晶画面への衝突時に高く跳ね返って、複数回繰り返されることとなり、こうした反復衝撃(液晶画面側も衝撃で振動している)が加えられることで破損を招き易くなるということも一考される。
【0008】
本発明は、液晶画面に貼着して画面を保護するための保護シートの製造コストを大幅に低減でき、且つ、従来のウレタン系樹脂層を有する保護シートと同等又はそれ以上の衝撃吸収力を発揮できるところの液晶画面用保護シート材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる液晶画面用保護シート材は、上記目的達成のために、液晶画面に加圧貼着して用いる保護シート材であって、
透明なシート状の合成樹脂製の基材(2)と、該基材(2)の一側面(2A)に、その一側面(3A)が担持されたシリコーン層(3)と、から成り、
前記シリコーン層(3)は、シリコーンに、少なくともシリコーンゲルを混入し、練成した復元遅効性のシリコーンから成り、且つ、
前記シリコーン層が200ミクロンから500ミクロンの厚みに構成されている、ことを特徴とする。
【0010】
本発明において、液晶画面とは、携帯電話、パソコン等の電子機器に用いられている液晶画面を言うものであり、既に汎用されているものを全て対象とする。
また、本発明のフィルム基材は透明のものを用いているが、液晶画面が見やすい程度の着色フィルムを用いても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、透明なシート状の合成樹脂製の基材は用いるが、従来のウレタン系樹脂層を表面に用いるのではなく、液晶画面に貼着するシリコーン層を、
シリコーンに、少なくともシリコーンゲルを混入し、練成した復元遅効性のシリコーンから構成し、且つ、従来の粘着目的として用いる30乃至50ミクロン程度ではなく、大幅に厚く、即ち、200ミクロン乃至500ミクロンとしたことで、本来のシリコーンの画面への貼着機能を果たしながら、衝撃力を大きく吸収できて、現実に、液晶画面に対する衝撃緩和作用が従来のウレタン系樹脂層に劣らないことを見出したものである。
【0012】
この厚みのシリコーン層を備えた保護シート材に対して鋼球を衝突させると(鋼球落下テスト)、表面的には凹部が一時的に形成されるが、暫時復元する。このことは、ウレタン系保護シート材のような弾性反発による緩衝ではなく、衝撃を一気に吸収していることを示す。
このように、シリコーン層を、単に粘着性による貼着機能だけの目的で利用するのではなく、その厚みを、従来に比べて少なくとも4倍以上の厚みに改良するという極めて簡単な解決手段、即ち、従来に於いては全く気づかれず、或いは想定されていなかった方法によって、十分な衝撃緩和効果を得ることを見出したものであり、ウレタン系樹脂を用いた従来の4層(剥離用フィルム材を除く)から構成されていた保護シートを、実質的に2層で構成することができ、製造コストを大幅に低減できるに至ったものである。
本発明のその他の具体的な利点は、以下の説明から明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施に際しては、前記シリコーン層(3)の他側面には、剥離用フィルム材(1)が貼着されていることが好ましい。
このように、剥離用フィルム材(1)を貼着しておくことで、個人使用の場合に、搬送、販売において前記シリコーン層(3)に埃が付着する虞もなく、液晶画面に貼着する時に剥離して用いることができる。
【0014】
更に、前記シリコーン層(3)は、シリコーンに、少なくともシリコーンゲルを混入し、練成した復元遅効性のシリコーンから成ることが好ましい。このように、一般のシリコーンよりも圧縮変形に対する復元、即ち弾性復帰に時間を要することで、衝撃を弾性的に緩衝するのではなく、衝撃を吸収してしまうことができる。
そして、シリコーンゲルの添加量を増加させれば、それだけ復元遅効性が高まるので、適宜、添加量を調節できる。
【0015】
更に、前記基材(2)が、反射防止処理、低反射光沢処理、ブルーライトカット処理、ハードコート処理、抗菌処理の何れか一つの表面処理又は少なくとも二つを組み合わせて表面処理がなされたPET樹脂からなるのが好ましい。
このような表面処理によって、低コストで衝撃を吸収して破損を防止出来ながら液晶用画面保護シートとして必要な光学的機能や抗菌機能を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明にかかる液晶画面用保護シート材の拡大縦断面図。
【
図2】本発明にかかる液晶画面用保護シート材の一使用状態を示す拡大縦断面図。
【
図3】従来技術を示す液晶画面用保護シート材の拡大縦断面図。
【実施例】
【0017】
本発明にかかる液晶画面用保護シート材の好適実施例を図面に基づいて以下詳述する。
図1及び
図2に示すように、この液晶画面用保護シート材は、液晶画面、この実施例では、一例として携帯電話の液晶画面Pに加圧貼着して保護するための保護シート材である。
【0018】
この保護シート材は、透明なシート状の合成樹脂製の基材2と、該基材2の一側面2Aに、その一側面3Aが担持されたシリコーン層3と、該シリコーン層3の他側面に貼着された剥離用フィルム材1から成り、前記シリコーン層3が、ここでは300ミクロンの厚みに構成されている。
【0019】
前記剥離用フィルム材1として、ここでは、PET(ポリエチレンテレフタレート)で構成されたフィルム(厚みが約25ミクロン:50ミクロン程度まで可)を用いる。製造に際しては、所定幅の長尺ものが準備され、最終的には対象の液晶画面Pの大きさにカットされる。
この剥離用フィルム材1としては、他にOPP(ポリプロピレン)、PVC(ポリ塩化ビニール)などの既存の樹脂フィルムを用いてよい。
【0020】
前記液晶画面Pに貼着保持されるフィルム基材2として、ここでは、同様に、PETのフィルム(厚みが約50ミクロン:これよりも薄い25ミクロンでも可)が用いられる。同様に、このフィルム基材2として、他にOPP(ポリプロピレン)、PVC(ポリ塩化ビニール)などの既存の樹脂フィルムを用いてよい。そして、前記剥離用フィルム材1とは対を成すものであるので、そのサイズは、同じものが使用され、同様にカットされる。
【0021】
そして、前記シリコーン層3は、シリコーンに、少なくともシリコーンゲルを混入し、練成した復元遅効性のシリコーンから成る。この復元遅効性のシリコーン層3が担持される。このシリコーン層3は、ここでは、300ミクロンの厚みである。この厚み十分な緩衝力と、液晶画面への貼着によって段差などの違和感が生じないものとして決定したが、液晶画面の種類によっては、1mmであっても実施可能であり、より一層衝撃緩和効果が得られる。
【0022】
このシリコーン層3の300ミクロンの厚みの保護シート材について、液晶画面に対する衝撃試験(120gの鋼球の1mからの自然落下による衝突)の結果、200ミクロン乃至500ミクロンが有効であることが分かった。
これに対し、同様の基材に50ミクロンのシリコーン層を施したもので同じ条件の下に衝撃テストを行ったところ、液晶画面が破損した。
【0023】
このシリコーン層3の担持方法は、シリコーンのロール押し出しによる離型フィルムに対するシリコーンの担持方法であって、適宜のプライヤーを用いて行う従来技術に属するので、詳細な説明は省略する。
そして、この復元遅効性のシリコーン層3は、シリコーンに、少なくともシリコーンゲルを混入し、練成したものであり、この素材を混合することで、圧縮変形に対する復元時間が遅延する。即ち、シリコーンゲルの添加量を増加させれば、それだけ復元遅効性が高まるのである。
【0024】
前記シリコーンゲルを、シリコーンに対して重量比で10部混入した場合、20部混入した場合、30部混入した場合で実施したが、復元時間は、約30秒乃至180分となり、従来のシリコーン層では、3秒乃至6秒程度であるのと比較して、大幅に遅延させることができる。このことは、ウレタン系樹脂のような迅速な弾性復元ではなく、衝撃を吸収して変形することを意味しており、それだけ衝撃の吸収が大きいことを示すものである。
【0025】
前記基材2が、反射防止処理されたもので構成されている。この反射防止処理は、光拡散をする特殊なポリマーを用いるものであるが、既に公知の技術であるので、ここでは詳細説明を省く。こうした表面処理としては、他に、低反射光沢処理、ブルーライトカット処理、ハードコート処理、抗菌処理などがある。低反射光沢処理は偏光フィルター機能をもつシートであり、やはり、公知の技術である。同様に、ブルーライトカットは、青の波長の光に焦点を当ててカットするように開発されたフィルム、シートであり、既に公知のものである。また、ハードコートは、PETの表面に硬質塗料を塗布して表面硬化を図ったもので、やはり、市販流通されている。そして、抗菌処理は、既に、種々の分野で実施されている通り、有機系、無機系のものが多数存在するが、それらの何れのものを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明にかかる液晶画面用保護シート材は、従来のウレタン系とは異なり、非常に低コストで製造できるので、携帯電話、パソコンなどの電子機器のみならず、各種用途の液晶画面への適用が容易に行い得て、その応用範囲は広い。
【符号の説明】
【0027】
1:剥離用フィルム材
2:基材
2A:基材の一側面
3:シリコーン層
3A:シリコーン層の一側面