特許第5700380号(P5700380)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5700380
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】スラスト軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/08 20060101AFI20150326BHJP
   F16C 17/04 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
   F16C17/08
   F16C17/04 Z
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-105801(P2014-105801)
(22)【出願日】2014年5月22日
【審査請求日】2014年8月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509004033
【氏名又は名称】株式会社センリョウ
(74)【代理人】
【識別番号】100095359
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100143834
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 修二
(72)【発明者】
【氏名】安ヵ川 誠
【審査官】 堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−163213(JP,A)
【文献】 実開昭63−177322(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00−17/26、33/00−33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に向かって開口し、下部に軸受面を有する円筒形状を成し、内部に潤滑流体を保持した軸受部材と、
鉛直方向の回転軸を中心として回転する回転体と、
前記回転体を回転可能に支持するよう、前記回転軸に沿って前記回転体から突出して設けられ、前記軸受部材の内部に前記開口から挿入された軸部とを有し、
前記軸部は上方および下方に向かって開口した円筒形状を成し、前記回転体と共に回転し、前記潤滑流体が前記回転によって下方に向かう流れを生じるよう、外側面にネジ山が形成されており、前記ネジ山と前記軸受部材の内側面との間に隙間をあけて設けられており、
前記軸受部材は、前記軸受面から上方に突出し、前記軸部の内部に挿入された挿入部を有し、前記挿入部の外側面と前記軸部の内側面との間に隙間をあけて設けられており、
前記軸部から前記軸受部材を通る流路を形成するよう、前記挿入部が上方および下方に向かって開口した円筒形状を成していることを
特徴とするスラスト軸受。
【請求項2】
前記潤滑流体の流れにより、前記軸受面と前記軸部の下面との間に隙間が生じるよう構成されていることを特徴とする請求項1記載のスラスト軸受。
【請求項3】
前記軸受部材は、前記開口の内周縁に沿って、前記ネジ山の外径よりも小さく、前記軸部の外径よりも大きい内径を有するフランジ部を有することを特徴とする請求項1または2記載のスラスト軸受。
【請求項4】
前記軸部は、前記潤滑流体が前記回転によって下方に向かう流れを生じるよう、内側面にネジ山が形成されており、その内側面のネジ山と前記挿入部の外側面との間に隙間をあけて設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスラスト軸受。
【請求項5】
循環路と発電手段とを有し、
前記軸受部材は、下部に前記潤滑流体を排出可能に設けられた排出口を有し、
前記循環路は、前記排出口から排出された前記潤滑流体を、前記軸受部材の上部から前記軸受部材と前記軸材との間に戻すよう設けられており、
前記発電手段は、前記循環路に設けられ、前記排出口から排出された前記潤滑流体により発電を行うよう設けられていることを
特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のスラスト軸受。
【請求項6】
鉛直方向の回転軸を中心として回転する回転体と、
前記回転体を回転可能に支持するよう、前記回転軸に沿って前記回転体から上方に突出して設けられ、上方に向かって開口し、下部に軸受面を有する円筒形状を成し、内部に潤滑流体を保持した軸受部と、
上方および下方に向かって開口した円筒形状を成し、前記軸受部の内部に前記開口から挿入された支持軸とを有し、
前記軸受部は、前記回転体と共に回転し、前記潤滑流体が前記回転によって下方に向かう流れを生じるよう、内側面にネジ山が形成されており、前記ネジ山と前記支持軸の外側面との間に隙間をあけて設けられており、前記軸受面から上方に突出し、前記支持軸の内部に挿入された挿入部を有し、前記挿入部の外側面と前記支持軸の内側面との間に隙間をあけて設けられており、
前記支持軸から前記軸受部を通る流路を形成するよう、前記挿入部が上方および下方に向かって開口した円筒形状を成していることを
特徴とするスラスト軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラスト軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、重量のある回転体の軸方向の荷重を受け止めるためのスラスト軸受として、回転体の軸と軸受との間に高圧流体(気体)を供給することにより軸を支持するものがある(例えば、特許文献1乃至3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4454699号公報
【特許文献2】特開2007−78037号公報
【特許文献3】特開平8−4767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1乃至3に記載のスラスト軸受では、高圧ポンプにより高圧流体を常に供給し続ける必要があり、その運転コストや設置コストなどの費用が嵩むという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、高圧流体を供給し続ける必要がなく、それに係る費用を低減することができるスラスト軸受を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1の本発明に係るスラスト軸受は、上方に向かって開口し、下部に軸受面を有する円筒形状を成し、内部に潤滑流体を保持した軸受部材と、鉛直方向の回転軸を中心として回転する回転体と、前記回転体を回転可能に支持するよう、前記回転軸に沿って前記回転体から突出して設けられ、前記軸受部材の内部に前記開口から挿入された軸部とを有し、前記軸部は上方および下方に向かって開口した円筒形状を成し、前記回転体と共に回転し、前記潤滑流体が前記回転によって下方に向かう流れを生じるよう、外側面にネジ山が形成されており、前記ネジ山と前記軸受部材の内側面との間に隙間をあけて設けられており、前記軸受部材は、前記軸受面から上方に突出し、前記軸部の内部に挿入された挿入部を有し、前記挿入部の外側面と前記軸部の内側面との間に隙間をあけて設けられており、前記軸部から前記軸受部材を通る流路を形成するよう、前記挿入部が上方および下方に向かって開口した円筒形状を成していることを特徴とする。第1の本発明に係るスラスト軸受は、前記潤滑流体の流れにより、前記軸受面と前記軸部の下面との間に隙間が生じるよう構成されていることが好ましい。
【0007】
第1の本発明に係るスラスト軸受は、回転体が回転すると、回転体と共に軸部も回転し、軸受部材の内部に保持された潤滑流体がその回転によって下方に向かう流れを生じるため、軸受部材の下部で潤滑流体が高圧となる。この高圧の潤滑流体が軸受面と軸部の下面との間に入り込むことにより、軸受面と軸部の下面との間に隙間が生じ、回転体を軸受面から浮かせることができる。このように、第1の本発明に係るスラスト軸受は、高圧の潤滑流体で回転体を支持することができ、低摩擦で回転体を回転させることができる。第1の本発明に係るスラスト軸受は、高圧流体を供給し続ける必要がないため、高圧ポンプの運転コストや設置コストなどの費用を低減することができる。
また、第1の本発明に係るスラスト軸受は、軸部の外側および内側で、潤滑流体により軸部を横方向に支持することができ、回転中に軸部が横方向にぶれるのを抑制することができる。また、軸部から軸受部材を通る流路を形成するため、その流路から回転体の内部に流体等を供給したり、回転体の内部の流体等を排出したりすることができる。
【0008】
第1の本発明に係るスラスト軸受で、潤滑流体は液体から成ることが好ましく、例えば油や水、油に水を混合したものなどから成る。潤滑流体として水や水が混合されたものを使用した場合、回転体の回転により摩擦熱が発生したとき、その熱により水が沸騰して気化するため、摩擦熱を逃がすことができる。沸騰して減少した分は、適宜、軸受部材の内部に水を供給することにより回復することができる。
【0009】
第1の本発明に係るスラスト軸受で、軸部の外側面のネジ山は、頂部が平らで幅広に形成されていることが好ましい。この場合、回転中にネジ山と軸受部材の内側面とが接触しても、ネジ山の頂部が尖っているものと比べて、その接触面積が大きくなるため、ネジ山や軸受部材の内側面を破損しにくくすることができる。
【0010】
第1の本発明に係るスラスト軸受で、前記軸受部材は、前記開口の内周縁に沿って、前記ネジ山の外径よりも小さく、前記軸部の外径よりも大きい内径を有するフランジ部を有することが好ましい。この場合、高圧の潤滑流体により軸部が持ち上げられても、ネジ山がフランジ部で引っ掛かるため、軸部が軸受部材から抜けるのを防ぐことができる。フランジ部は、別体の部材を軸受部材の開口に取り付けて設けられていてもよく、軸受部材と一体的に設けられていてもよい。また、軸部がネジ山より上方に、円周に沿って抜け止め用の突条を有し、フランジ部がその突条の外径よりも小さい内径を有していてもよい。
【0012】
第1の本発明に係るスラスト軸受で、前記軸部は、前記潤滑流体が前記回転によって下方に向かう流れを生じるよう、内側面にネジ山が形成されており、その内側面のネジ山と前記挿入部の外側面との間に隙間をあけて設けられていてもよい。この場合、軸部の外側面のネジ山と内側面のネジ山とで、効率良く潤滑流体の圧力を高めることができる。
【0014】
第1の本発明に係るスラスト軸受は、循環路と発電手段とを有し、前記軸受部材は、下部に前記潤滑流体を排出可能に設けられた排出口を有し、前記循環路は、前記排出口から排出された前記潤滑流体を、前記軸受部材の上部から前記軸受部材と前記軸材との間に戻すよう設けられており、前記発電手段は、前記循環路に設けられ、前記排出口から排出された前記潤滑流体により発電を行うよう設けられていてもよい。この場合、高圧の潤滑流体が排出口から排出されるため、その圧力を利用してタービンなどを回すことにより、発電手段で発電を行うことができる。排出される潤滑流体が高圧であるため、増速器を介する必要がなく、増速器による摩擦損失を減らして効率良く発電を行うことができる。
【0015】
第2の本発明に係るスラスト軸受は、鉛直方向の回転軸を中心として回転する回転体と、前記回転体を回転可能に支持するよう、前記回転軸に沿って前記回転体から上方に突出して設けられ、上方に向かって開口し、下部に軸受面を有する円筒形状を成し、内部に潤滑流体を保持した軸受部と、上方および下方に向かって開口した円筒形状を成し、前記軸受部の内部に前記開口から挿入された支持軸とを有し、前記軸受部は、前記回転体と共に回転し、前記潤滑流体が前記回転によって下方に向かう流れを生じるよう、内側面にネジ山が形成されており、前記ネジ山と前記支持軸の外側面との間に隙間をあけて設けられており、前記軸受面から上方に突出し、前記支持軸の内部に挿入された挿入部を有し、前記挿入部の外側面と前記支持軸の内側面との間に隙間をあけて設けられており、前記支持軸から前記軸受部を通る流路を形成するよう、前記挿入部が上方および下方に向かって開口した円筒形状を成していることを特徴とする。
【0016】
第2の本発明に係るスラスト軸受は、例えば第1の本発明に係るスラスト軸受などにより回転体を下部で回転可能に支持し、回転体が上方に向かって付勢されているときに、回転体を上部で回転可能に支持するものである。第2の本発明に係るスラスト軸受は、第1の本発明に係るスラスト軸受の軸受部材が回転体の軸受部になり、軸部が支持軸になり、軸部の代わりに軸受部が回転するよう構成されたものであり、第1の本発明に係るスラスト軸受と同様の作用効果を有している。
【0017】
すなわち、第2の本発明に係るスラスト軸受は、回転体が回転すると、回転体と共に軸受部も回転し、軸受部の内部に保持された潤滑流体がその回転によって下方に向かう流れを生じるため、軸受部の下部で潤滑流体が高圧となる。この高圧の潤滑流体が軸受面と支持軸の下面との間に入り込むことにより、軸受面と支持軸の下面との間に隙間が生じ、回転体を軸受面から浮かせることができる。このように、第2の本発明に係るスラスト軸受は、高圧の潤滑流体で回転体を支持することができ、低摩擦で回転体を回転させることができる。なお、第2の本発明に係るスラスト軸受は、第1の本発明に係るスラスト軸受と同様の変形や限定の構成が可能であり、潤滑流体には同様のものを使用することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高圧流体を供給し続ける必要がなく、それに係る費用を低減することができるスラスト軸受を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施の形態に関するスラスト軸受を示す斜視図である。
図2図1に示すスラスト軸受の縦断面図である。
図3】本発明の第1の実施の形態のスラスト軸受を示す縦断面図である。
図4図3に示すスラスト軸受の、高圧ガス用の回転継手としての使用状態を示す(a)流れるガスが比較的低圧のとき、(b)流れるガスが高圧のときの縦断面図である。
図5】本発明の第1の実施の形態に関するスラスト軸受の第1の変形例を示す縦断面図である。
図6】本発明の第1の実施の形態に関するスラスト軸受の第2の変形例を示す縦断面図である。
図7】本発明の第2の実施の形態に関するスラスト軸受を示す斜視図である。
図8本発明の第2の実施の形態のスラスト軸受を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図3および図4は、本発明の第1の実施の形態のスラスト軸受を示している。また、図1図2図5図6は、本発明の第1の実施の形態に関するスラスト軸受を示している。
図1乃至図4に示すように、本発明の第1の実施の形態のスラスト軸受10は、軸受部材11と回転体12と軸部13とを有している。
【0021】
軸受部材11は、上方に向かって開口し、下部に軸受面11aを有する円筒形状を成している。軸受部材11は、設置面に載置されており、内部に潤滑油から成る潤滑流体14を保持している。
回転体12は、鉛直方向の回転軸を中心として回転するよう、軸受部材11の上方に配置されている。
【0022】
軸部13は、回転体12の回転軸に沿って、回転体12から下方に突出して設けられている。軸部13は、円柱形状を成し、回転体12と共に回転するよう設けられている。軸部13は、外側面に、頂部が平らで幅広に形成されたネジ山13aを有している。軸部13は、ネジ山13aでの外径が、軸受部材11の内径よりも若干小さくなるよう形成されている。軸部13は、回転体12を回転可能に支持するよう、軸受部材11の上部の開口11bから、軸受部材11の内部に挿入されている。軸部13は、ネジ山13aと軸受部材11の内側面11cとの間に隙間をあけて配置されている。軸部13は、回転体12の回転と共に回転し、軸受部材11の内部の潤滑流体14が、ネジ山13aの回転によって下方に向かう流れを生じるよう設けられている。
【0023】
次に、作用について説明する。
スラスト軸受10は、回転体12が回転すると、回転体12と共に軸部13も回転し、軸受部材11の内部に保持された潤滑流体14がその回転によって下方に向かう流れを生じるため、軸受部材11の下部で潤滑流体14が高圧となる。この高圧の潤滑流体14が軸受面11aと軸部13の下面13bとの間に入り込むことにより、軸受面11aと軸部13の下面13bとの間に隙間が生じ、回転体12を軸受面11aから浮かせることができる。このように、スラスト軸受10は、高圧の潤滑流体14で回転体12を支持することができ、低摩擦で回転体12を回転させることができる。スラスト軸受10は、高圧流体を供給し続ける必要がないため、高圧ポンプの運転コストや設置コストなどの費用を低減することができる。
【0024】
スラスト軸受10は、軸部13のネジ山13aの頂部が平らで幅広に形成されているため、回転中にネジ山13aと軸受部材11の内側面11cとが接触しても、ネジ山13aの頂部が尖っているものと比べて、その接触面積が大きくなり、ネジ山13aや軸受部材11の内側面11cを破損しにくい。
【0025】
図3に示すように、スラスト軸受10で、軸部13は上方および下方に向かって開口11bした円筒形状を成し、軸受部材11は、軸受面11aから上方に突出し、軸部13の内部に挿入された円筒形状の挿入部21を有し、挿入部21の外側面と軸部13の内側面との間に隙間をあけて設けられている。この場合、軸部13の外側および内側で、潤滑流体14により軸部13を横方向に支持することができ、回転中に軸部13が横方向にぶれるのを抑制することができる。また、軸部13から軸受部材11を通る流路22を形成することができ、その流路22から回転体12の内部に流体等を供給したり、回転体12の内部の流体等を排出したりすることができる。
【0026】
この図3に示すスラスト軸受10は、高圧ガス用の回転継手として使用することができる。すなわち、図4に示すように、軸部13から軸受部材11に向かって流路22をガスが流れる場合、ガスが比較的低圧のときには、図4(a)に示すように、軸部13の外側のネジ山13aで生じる圧力により潤滑流体14の水位が軸部13の内側で高く、軸部13の外側で低くなっていく。それに伴ってネジ山13aで生じる圧力が徐々に小さくなり、その圧力とガス圧とが平衡する位置で潤滑流体14が保持される。ガスが高圧のときには、図4(b)に示すように、ガス圧により潤滑流体14の水位が軸部13の内側で低く、軸部13の外側で高くなっていく。それに伴ってネジ山13aで生じる圧力が徐々に大きくなり、その圧力とガス圧とが平衡する位置で潤滑流体14が保持される。このように、流路22を流れるガスが高圧になっても、それに対向した潤滑流体14の圧力を生み出すことができ、ガスが漏れるのを防ぐことができる。
【0027】
また、図3および図4に示すように、スラスト軸受10は、軸部13がネジ山13aより上方に、円周に沿って抜け止め用の突条23を有し、軸受部材11が開口11bの内周縁に沿って、突条23の外径よりも小さく、軸部13の外径よりも大きい内径を有するフランジ部材24を有していてもよい。この場合、高圧の潤滑流体14により軸部13が持ち上げられても、突条23がフランジ部材24で引っ掛かるため、軸部13が軸受部材11から抜けるのを防ぐことができる。
【0028】
また、図5に示すように、スラスト軸受10で、回転体12は、軸受部材11の下方に配置され、軸部13は、内部上面から下方に突出し、挿入部21の内部を貫通して伸びるよう設けられ、下端に回転体12が取り付けられた貫通軸25を有し、回転体12は、貫通軸25により回転可能に支持されていてもよい。この場合、軸部13から吊り下げられた回転体12を、軸受部材11により支持することができる。この場合、船底等から水車等を吊り下げるタイプの発電装置に利用することができる。
【0029】
また、図5に示すように、スラスト軸受10で、軸部13は、潤滑流体14が軸部13の回転によって下方に向かう流れを生じるよう、内側面にもネジ山26が形成されており、その内側面のネジ山26と挿入部21の外側面との間に隙間をあけて設けられていてもよい。この場合、軸部13の外側面のネジ山13aと内側面のネジ山26とで、効率良く潤滑流体14の圧力を高めることができる。
【0030】
さらに、図6に示すように、スラスト軸受10は、循環路27と発電手段28とを有し、軸受部材11は、下部に潤滑流体14を排出可能に設けられた排出口29を有し、循環路27は、排出口29から排出された潤滑流体14を、軸受部材11の上部から軸受部材11と軸材との間に戻すよう設けられており、発電手段28は、循環路27に設けられた油圧モータ28aと、油圧モータ28aに接続された発電機28bとを有し、排出口29から排出された潤滑流体14により発電を行うよう設けられていてもよい。この場合、高圧の潤滑流体14が排出口29から排出されるため、その圧力を利用して油圧モータ28aを回すことにより、発電機28bで発電を行うことができる。排出される潤滑流体14が高圧であるため、回転体12が低速で回転する風車や水車から成っていても、増速器を介する必要がなく、増速器による摩擦損失を減らして効率良く発電を行うことができる。また、軸受部材11で発生する摩擦熱を潤滑流体14と共に外部に運び出し、潤滑流体14を冷却して戻すことにより、過熱を防止することもできる。
【0031】
図8は、本発明の第2の実施の形態のスラスト軸受を示している。また、図7は、本発明の第2の実施の形態に関するスラスト軸受を示している。
なお、以下の説明では、本発明の第1の実施の形態のスラスト軸受10と同一の構成には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0032】
図7および図8に示すように、本発明の第2の実施の形態のスラスト軸受30は、回転体12と軸受部31と支持軸32とを有している。
回転体12は、鉛直方向の回転軸を中心として回転するよう、支持軸32の下方に配置されている。
【0033】
軸受部31は、回転体12を回転可能に支持するよう、回転体12の回転軸に沿って、回転体12から上方に突出して設けられている。軸受部31は、上方に向かって開口し、下部に軸受面31aを有する円筒形状を成している。軸受部31は、内部に潤滑油から成る潤滑流体14を保持している。軸受部31は、内側面に、頂部が平らで幅広に形成されたネジ山31bを有している。軸受部31は、回転体12と共に回転し、内部の潤滑流体14がネジ山31bの回転によって下方に向かう流れを生じるよう設けられている。
【0034】
支持軸32は、円柱状を成し、回転体12の支持部材から下方に突出して設けられている。支持軸32は、外径が、軸受部31のネジ山31bでの内径よりも若干小さくなるよう形成されている。支持軸32は、軸受部31の開口31cから、軸受部31の内部に挿入されており、外側面32aと軸受部31のネジ山31bとの間に隙間をあけて配置されている。
【0035】
次に、作用について説明する。
スラスト軸受30は、例えばスラスト軸受10などにより回転体12を下部で回転可能に支持し、回転体12が上方に向かって付勢されているときに、回転体12を上部で回転可能に支持するものである。スラスト軸受30は、スラスト軸受10の軸受部材11が回転体12の軸受部31になり、軸部13が支持軸32になり、軸部13の代わりに軸受部31が回転するよう構成されたものであり、スラスト軸受10と同様の作用効果を有している。
【0036】
すなわち、スラスト軸受30は、回転体12が回転すると、回転体12と共に軸受部31も回転し、軸受部31の内部に保持された潤滑流体14がその回転によって下方に向かう流れを生じるため、軸受部31の下部で潤滑流体14が高圧となる。この高圧の潤滑流体14が軸受面31aと支持軸32の下面との間に入り込むことにより、軸受面31aと支持軸32の下面との間に隙間が生じ、回転体12を軸受面31aから浮かせることができる。このように、スラスト軸受30は、高圧の潤滑流体14で回転体12を支持することができ、低摩擦で回転体12を回転させることができる図8に示すように、スラスト軸受10は、軸受部31から支持軸32を通る流路22を有している。また、スラスト軸受10は、突条23とフランジ部材24とを有する変形など、スラスト軸受10と同様の変形が可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 スラスト軸受
11 軸受部材
11a 軸受面
11b 開口
11c 内側面
12 回転体
13 軸部
13a ネジ山
13b 下面
14 潤滑流体

21 挿入部
22 流路
23 突条
24 フランジ部材
25 貫通軸
26 ネジ山
27 循環路
28 発電手段
28a 油圧モータ
28b 発電機
29 排出口

30 スラスト軸受
31 軸受部
31a 軸受面
31b ネジ山
31c 開口
32 支持軸
32a 外側面
【要約】
【課題】高圧流体を供給し続ける必要がなく、それに係る費用を低減することができるスラスト軸受を提供する。
【解決手段】軸受部材11が、上方に向かって開口し、下部に軸受面11aを有する円筒形状を成し、内部に潤滑流体14を保持している。軸部13が、鉛直方向の回転軸を中心として回転する回転体12を回転可能に支持するよう、回転軸に沿って回転体12から突出して設けられている。軸部13は、円柱状を成し、軸受部材11の内部に開口11bから挿入されている。軸部13は、回転体12と共に回転し、潤滑流体14が回転によって下方に向かう流れを生じるよう、外側面にネジ山13aが形成されている。軸部13は、ネジ山13aと軸受部材11の内側面11cとの間に隙間をあけて設けられている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8