(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ALCパネルの内部には、管状体と該管状体の内部空間に配置されその両端が前記管状体の周面に支持された筒状体とを備えたアンカー金具が、前記ALCパネル内に埋設されている主筋に前記管状体がかかる位置で埋設されており、前記棒状体は、さらに前記アンカー金具の筒状体の孔内に遊挿されていることを特徴とする請求項5に記載のALCパネルの取付構造。
前記棒状体の前記ALCパネル内への挿入長さは、前記ALCパネルの上端小口面から前記ALCパネル内に埋設されている補強鉄筋までの距離よりも長いことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のALCパネルの取付構造。
前記ALCパネルの下端は、前記ALCパネルの下端小口面の領域内に収まる大きさで、前記下端小口面における幅方向および厚さ方向の中央に取り付けられた下端取付金具を介して床スラブに固定されていることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のALCパネルの取付構造。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0027】
図1に示すように、本発明の第一実施形態に係るALCパネル(軽量気泡コンクリートパネル)の取付構造10は、2本の棒状体16を用いてALCパネル12の上端を建物躯体14に取り付けたものからなる。
【0028】
棒状体16は、
図2に示すように、四角盤状をした台座部18と、この台座部18の中央から立設された棒状部20とを備えている。建物躯体14には金属製のフラットバー22が固定されており、このフラットバー22に棒状体16の台座部18が固定されている。その固定方法としては特に限定されるものではないが、例えば溶接やボルト締め等を挙げることができる。
【0029】
ALCパネル12は、
図3に示すように、板壁状に成形された軽量気泡コンクリート24と、軽量気泡コンクリート24の内部に埋設されてコンクリートを補強する補強鉄筋26とを備えている。ALCパネル12の長さ方向はX方向であり、その幅方向はY方向であり、その厚さ方向はZ方向である。
【0030】
補強鉄筋26は、ALCパネル12の長さ方向に沿って配置される主筋26aと、ALCパネル12の幅方向に沿って配置される副筋26bよりなる。複数本の主筋26aと複数本の副筋26bとが格子状に組み合わされることにより、鉄筋マット28a,28bが形成されている。鉄筋マット28a,28bは、ALCパネル12の壁面12cに沿ってALCパネル12内に2枚埋設されており、これら一対の鉄筋マット28a,28bは所定距離をおいてALCパネル12内に平行に配置されている。鉄筋マット28a,28bの側縁の主筋26aには、鉄筋マット28a,28b間を架け渡す鉄筋製のスペーサ30が溶接されており、補強鉄筋26はかご状にされている。鉄筋マット28a,28bにおいては、補強鉄筋26のうちの副筋26bが主筋26aよりもALCパネル12内における内側に配置されている。
【0031】
このALCパネル12の長さとしては、1500〜3500mmの範囲内であることが好ましい。ALCパネル12の幅としては、300〜610mmの範囲内であることが好ましい。ALCパネル12の厚さとしては、75〜150mmの範囲内であることが好ましい。
【0032】
ALCパネル12の上端小口面12aには、棒状体16の棒状部20の外径よりも大きい内径で棒状体16の棒状部20の長さを超える深さの挿入孔32が設けられており、棒状部20はその挿入孔32に遊挿されている。これにより、棒状部20は挿入孔32内で上下方向にスライドできる。
【0033】
ここで、挿入孔32の内径と棒状部20の外径との差が大きすぎると、ALCパネルの建込時に挿入孔32と棒状部20との間でがたつきが生じやすい。したがって、ALCパネルの建込時における挿入孔32と棒状部20との間でのがたつきを抑えるとともに地震発生時には挿入孔32内で棒状部20がスムーズにスライドできるなどの観点から、挿入孔32の内径と棒状部20の外径との差は0.1〜1.0mmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.1〜0.7mmの範囲内である。なお、棒状体16の棒状部20の外径の大きさは、ALCパネル12の大きさとの関係から、8〜16mmの範囲内であることが好ましい。
【0034】
棒状体16の台座部18は、ALCパネル12の上端小口面12aの領域から外部にはみ出さない(その領域内に収まる)大きさであることが好ましい。したがって、四角盤状の台座部18の一辺の長さがALCパネル12の厚さを超えない長さであることが好ましい。具体的には、建物躯体に固定されるフラットバーの幅が通常65〜75mm程度であることから、四角盤状の台座部18の一辺の長さは30〜60mmであることが好ましい。
【0035】
ALCパネル12の挿入孔32は、ALCパネル12の幅方向においてALCパネル12内に埋設されている補強鉄筋26よりも内側に設けられていることが好ましい。より具体的には、
図4に示すように、ALCパネル12の挿入孔32の位置Aは、ALCパネル12の幅方向の最端に配置された主筋26aの位置Bよりも幅方向の内側にあることが好ましい。幅方向において補強鉄筋26よりも内側の部分は、補強鉄筋26により補強されているため、補強鉄筋26よりも外側の部分よりパネル強度が高い。すなわち、ALCパネル12の強度が高い部分に棒状体16が遊挿されるため、棒状体16のせん断引抜荷重を大きくできる。これにより、ALCパネル12の上端の取付強度を向上できる。
【0036】
また、ALCパネル12の挿入孔32の位置を補強鉄筋26よりも内側にすることにより、必然的に棒状体16を挿入孔32に遊挿する位置はALCパネル12の幅方向の端よりも内側に寄ることとなる。そうすると、これらが幅方向の端付近にある場合と比べて、ALCパネル12のロッキング時に棒状体16が挿入孔32内で上下方向にスライドする距離を短くできる。挿入孔32内で棒状体16のスライドする距離が短いほど棒状体16は挿入孔32の内壁面に摩擦接触されにくい。そのため、棒状体16が挿入孔32の内壁面をこじるのを抑えることができ、挿入孔32に対して棒状体16はスムーズに摺動できる。
【0037】
補強鉄筋26は、ALCパネル12の幅方向において、通常、端から50mmの位置まで埋設されている。したがって、ALCパネル12の挿入孔32は、具体的には、ALCパネル12の幅方向の端から内側へ75mm以上離れた位置にあることが好ましい。
【0038】
一方、ALCパネル12の挿入孔32の位置がALCパネル12の幅方向の中央に寄るにつれて、ALCパネル12が水平方向(壁面外方向)に回転しやすくなる。また、棒状体16の台座部18は所定の大きさを有しているため、複数本の棒状体16をALCパネル12の幅方向の中央付近に寄せて配置するにも限界がある。この観点から、ALCパネル12の挿入孔32は、ALCパネル12の幅方向の中央から外側へ50mm以上離れた位置にあることが好ましい。
【0039】
また、棒状体16は、ALCパネル12内の補強鉄筋26により補強されている位置まで挿入されていることが好ましい。より具体的には、
図4に示すように、棒状体16の棒状部20の先端位置Cは、ALCパネルの長さ方向の最端に配置された副筋26bの位置DよりもALCパネルの長さ方向の内側にあることが好ましい。これにより、ALCパネル12の上端の取付強度を向上できる。また、いいかえると、棒状体16のALCパネル12内への挿入長さは、ALCパネル12の上端小口面12aからALCパネル12内に埋設されている補強鉄筋26までの距離よりも長いことが好ましい。ALCパネル12内に埋設される補強鉄筋26からパネル上端小口面12aまでの長さ(かぶり寸法)としては、8〜28mm程度である。
【0040】
建物躯体14にALCパネル12を取り付ける際、建物躯体14とALCパネル12の上端小口面12aとの隙間は、通常、20mm程度に設定される。そうすると、棒状体16がALCパネル12の内部に40mm以上挿入されていれば、ALCパネル12のロッキング時に棒状体16が上下方向にスライドしても、棒状体16が挿入孔32から抜けるおそれはない。また、かぶり寸法は8〜28mm程度であることから、棒状体16がALCパネル12の内部に40mm以上挿入されていれば、確実にALCパネル12の上端の取付強度を向上できる。
【0041】
したがって、棒状体16のALCパネル12内への挿入長さとしては40mm以上であることが好ましい。より好ましくは50mm以上である。また、棒状体16の棒状部20の長さとしては60mm以上であることが好ましい。より好ましくは70mm以上である。一方、棒状部20の長さの上限としては150mm以下であることが好ましい。棒状部20が長いほど、ALCパネル12のロッキング時に棒状部20が挿入孔32の内壁面をこじりやすくなるからである。
【0042】
ALCパネルの取付構造10においては、挿入孔32は、ALCパネル12の幅方向において、中央位置を挟んだ両側に1つずつ配置されていることが好ましい。これにより、ALCパネル12のロッキング時に棒状体16がスムーズに摺動しやすい。さらに、挿入孔32は、ALCパネル12の幅方向において、中央位置を挟んだ両側の均等位置に配置されていることが好ましい。これにより、ALCパネル12のロッキング時にバランスが良くなる。
【0043】
ALCパネル12の建物躯体14への取付は、例えば次のように行うことができる。まず、ALCパネル12の上端小口面12aの所定位置に、所定の大きさ、所定の深さで挿入孔32を形成する。次いで、挿入孔32内に棒状体16の棒状部20を挿入する。次いで、建物躯体14に固定されたフラットバー22にALCパネル12の上端小口面12aを所定の間隔をあけて向かい合わせる。次いで、棒状体16の棒状部20を上方にスライドさせて棒状体16の台座部18をフラットバー22に当接させる。次いで、台座部18の端縁をフラットバー22に溶接する。
【0044】
この際、ALCパネル12の上端小口面12aと建物躯体14との間の隙間において溶接を行うことから、棒状体16が台座部18を有することで、棒状部20の基部などの奥まった位置ではなくこれより表側に配置される台座部18の端縁の位置で溶接できるため、棒状体16の建物躯体14への溶接作業が容易となる。さらに、この台座部18の形状は四角盤状であるため、溶接を行う一辺をALCパネル12の上端小口面12aの幅方向に平行に合わせれば、より一層、溶接作業が容易となる。
【0045】
棒状体16の台座部18をフラットバー22に溶接した後は、必要に応じて、防水等の目的で、ALCパネル12の上端と建物躯体14との間の隙間にシール材を充填することができる。シール材の材料としては、例えば、ポリウレタン系材料、変性シリコーン系材料等が挙げられる。
【0046】
以上の構成よりなるALCパネルの取付構造10によれば、棒状体16は、建物躯体14に固定されるとともにALCパネル12の上端小口面12aに穿設された挿入孔32内に遊挿されていることから、ALCパネル12の上端小口面12aの領域内に配置されている。このように、ALCパネル12の上端を建物躯体14に取り付けるための棒状体16はALCパネル12の壁面12cよりも外側に露出しないものである。したがって、ALCパネル12の上端を建物躯体14に取り付けるための金具により、取り付けられたALCパネル12の美観が損なわれるおそれはない。また、ALCパネル12の上端を建物躯体14に取り付けるための金具がALCパネル12の壁面12cよりも外側に露出しないので、ALCパネル12を屋外に取り付けた場合にも、この金具は風雨などの影響を受けにくい。そのため、この金具には錆が発生しにくい。これにより、屋外使用される場合においても取り付けられたALCパネル12の外観品質を良好に維持できる。
【0047】
また、棒状体16は、ALCパネル12の上端小口面12aからALCパネル内に向かって穿設された複数の挿入孔32内に遊挿されているため、地震により建物躯体14が層間変形したときには、棒状体16が挿入孔32内で上下方向にスライドする。これにより、ALCパネル12はスムーズにロッキングできるため、ALCパネル12の層間変形に対する追従性能にも優れる。
【0048】
次に、本発明の第二実施形態に係るALCパネルの取付構造について説明する。
【0049】
図5に示すように、第二実施形態に係るALCパネルの取付構造110は、2本の棒状体116と2つの取付金具134とを用いてALCパネル12の上端を建物躯体14に取り付けたものからなる。ALCパネル12の構成は、第一実施形態のものと同じ構成であるため、説明を省略する。
【0050】
棒状体116は、
図6に示すように、円盤状をした台座部118と、この台座部118の中央から立設された棒状部120とを備えている。
【0051】
取付金具134は、
図7に示すように、棒状体116の台座部118が係合される板状の係合面部136と、この係合面部136の両端に延設されるとともにこの両端から折曲形成された一対の脚部138とを備えている。この係合面部136の中央には、棒状体116の棒状部120が挿通可能な大きさの内径を有する貫通孔140が形成されている。また、脚部138の先端138aは、係合面部136に平行な方向で外側に開くように曲げ加工されている。そして、この係合面部136と一対の脚部138とにより凹部142が形成されている。このように、取付金具134は、全体としてハット型に構成されている。
【0052】
取付金具134は、ALCパネル12の上端小口面12aの領域から外部にはみ出さない(その領域内に収まる)大きさに構成されている。例えば
図5に示すように、取付金具134がALCパネル12の幅方向に沿って配置される場合には、取付金具134の幅がALCパネル12の厚さを超えない大きさである。また、取付金具134がALCパネル12の厚さ方向に沿って配置される場合には、取付金具134の長さがALCパネル12の厚さを超えない大きさである。
【0053】
図5に示すように、棒状体116の棒状部120は、その基端まで係合面部136の内側から貫通孔140に挿通されており、棒状体116の台座部118は、凹部142内に収容されるとともに係合面部136に係合されている。そして、係合面部136に平行な脚部138の先端138aは、建物躯体14に固定された金属製のフラットバー22に溶接等により固定されている。したがって、棒状体116は、取付金具134を介してフラットバー22に固定されている。
【0054】
ALCパネル12の上端小口面12aには、棒状体116の棒状部120の外径よりも大きい内径で棒状体116の棒状部120の長さを超える深さの挿入孔32が設けられており、棒状体116の棒状部120はその挿入孔32に遊挿されている。挿入孔32の内径と棒状部120の外径との差は、第一実施形態のALCパネルの取付構造110と同様、0.1〜1.0mmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.1〜0.7mmの範囲内である。
【0055】
棒状体116の台座部118は、ALCパネル12の上端小口面12aの領域から外部にはみ出さない大きさであることが好ましい。したがって、円盤状の台座部118の直径は、ALCパネル12の厚さを超えない大きさであることが好ましい。具体的には、円盤状の台座部118の直径は30〜60mmであることが好ましい。
【0056】
なお、棒状体116の棒状部120の直径の大きさ、棒状体116の棒状部120の長さ、棒状体116のALCパネル12内への挿入長さ、挿入孔32の内径の大きさ、挿入孔32の深さ、ALCパネル12の幅方向における挿入孔32の位置などは、第一実施形態のALCパネルの取付構造110と同様に設定すれば良い。
【0057】
ALCパネル12の建物躯体14への取付は、例えば次のように行うことができる。まず、ALCパネル12の上端小口面12aの所定位置に、所定の大きさ、所定の深さで挿入孔32を形成する。次いで、取付金具134の係合面部136の内側から係合面部136の貫通孔140に棒状体116の棒状部120を挿通する。次いで、ALCパネル12の挿入孔32内に棒状体116の棒状部120を挿入する。次いで、建物躯体14に固定されたフラットバー22にALCパネル12の上端小口面12aを所定の間隔をあけて向かい合わせる。次いで、取付金具134の脚部138の先端138aをフラットバー22に当接させる。次いで、取付金具134の脚部138の先端138aをフラットバー22に溶接する。その後は、必要に応じて、防水等の目的で、ALCパネル12の上端と建物躯体14との間に生じている隙間にシール材を充填しても良い。
【0058】
以上の構成よりなるALCパネルの取付構造110においては、棒状体116は、取付金具134を介して建物躯体14に固定されるとともにALCパネル12の上端小口面12aに穿設された挿入孔32内に遊挿されているため、ALCパネル12の上端小口面12aの領域内に配置されている。このように、ALCパネル12の上端を建物躯体14に取り付けるための棒状体116はALCパネル12の壁面12cよりも外側に露出しないものである。また、棒状体116とともに用いられる取付金具134は、ALCパネル12の上端小口面12aの領域から外部にはみ出さない(その領域内に収まる)大きさに構成されている。したがって、ALCパネル12の上端を建物躯体14に取り付けるための金具により、取り付けられたALCパネル12の美観が損なわれるおそれはない。また、ALCパネル12の上端を建物躯体14に取り付けるための金具がALCパネル12の壁面12cよりも外側に露出しないので、ALCパネル12を屋外に取り付けた場合にも、この金具は風雨などの影響を受けにくい。そのため、この金具には錆が発生しにくい。これにより、屋外使用される場合においても取り付けられたALCパネル12の外観品質を良好に維持できる。
【0059】
また、棒状体116は、ALCパネル12の上端小口面12aからALCパネル12内に向かって穿設された挿入孔32内に遊挿されているため、地震により建物躯体14が層間変形したときには、棒状体116が挿入孔32内で上下方向にスライドする。これにより、ALCパネル12はスムーズにロッキングできるため、ALCパネル12の層間変形に対する追従性能にも優れる。
【0060】
そして、第二実施形態のALCパネルの取付構造110においては、第一実施形態のALCパネルの取付構造110とは異なり、棒状体116の台座部118は、建物躯体14に固定された金属製のフラットバー22には直接固定されず、取付金具134を介して建物躯体14に固定されている。棒状体116の台座部118と取付金具134とは係合しているだけで溶接等により一体化されているわけではないので、棒状体116の台座部118は、凹部142内において、取付金具134の係合面部136に拘束されずに自由に動くことができる。
【0061】
したがって、建物躯体14が層間変形したときに、棒状体116が挿入孔32内で上下方向にスライドするとともに水平方向に揺動しても、棒状体116の台座部118と取付金具134の係合面部136との間で水平方向にスムーズに摺動できる。これにより、ALCパネル12の層間変形に対する追従性がさらに向上する。また、このようにALCパネル12の層間変形に対する追従性が向上すれば、棒状体116が挿入孔32の内壁面を欠損させるおそれも低減する。
【0062】
また、棒状体116の台座部118は取付金具134の係合面部136に拘束されずに自由に動くことができるため、ALCパネル12を取り付けた状態において台座部118が水平面内で回転される場合がある。ここで、この台座部118は円盤状であることから、その直径がALCパネル12の厚さを超えていなければ、仮に棒状体116の台座部118が水平面内で回転されたとしても、台座部118はALCパネル12の上端小口面12aの領域外に露出されるおそれはない。
【0063】
次に、第三実施形態に係るALCパネルの取付構造について説明する。
【0064】
図8に示すように、第三実施形態に係るALCパネルの取付構造210は、2本の棒状体16と2つのアンカー金具244とを用いてALCパネル212の上端を建物躯体14に取り付けたものからなる。棒状体16は第一実施形態のものと同様の構成であるため、説明を省略する。
【0065】
ALCパネル212は、板壁状に成形された軽量気泡コンクリート24と、軽量気泡コンクリート24の内部に埋設されコンクリートを補強する補強鉄筋26と、軽量気泡コンクリート24の内部に埋設されたアンカー金具244とを備えている。ALCパネル212における軽量気泡コンクリート24および補強鉄筋26は第一実施形態のものと同様の構成であるため、説明を省略する。
【0066】
アンカー金具244は、
図9に示すように、四角管状に形成された管状体246と円筒状に形成された筒状体248とにより構成されている。
【0067】
管状体246は、ALCパネル212内に埋設された補強鉄筋26に溶接される一対の溶接面部250a,250bと、これら一対の溶接面部250a,250b間を連結している一対の連結面部252a,252bとを備えている。一対の溶接面部250a,250bおよび一対の連結面部252a,252bにより管状体246の周面が形成されており、管状体246は中空状になっている。溶接面部250a,250bおよび連結面部252a,252bは、それぞれ平面状に形成されており、一対の溶接面部250a,250bは互いに平行に配置されており、また、一対の連結面部252a,252bは互いに平行に配置されている。管状体246の連結面部252a,252bの中央位置には、それぞれ円形の貫通孔254a,254bが形成されている。
【0068】
中空状の管状体246の内部空間には筒状体248が配置されている。筒状体248の一方の端部248aは、一方の連結面部252aの貫通孔254aに挿通されており、その一方の端部248aの周縁は一方の連結面部252aに溶接されている。また、筒状体248の他方の端部248bは、他方の連結面部252bの貫通孔254bに挿通されており、他方の端部248bの周縁は他方の連結面部252bに溶接されている。これにより、筒状体248の両端は、管状体246の連結面部252a,252bに支持されている。
【0069】
このような構成のアンカー金具244は、
図10(a)に示すように、ALCパネル212の幅方向に沿って2個配置されている。また、アンカー金具244は、
図10(b)に示すように、ALCパネル212内に埋設された一対の鉄筋マット28a,28b間に配置されている。そして、アンカー金具244の管状体246の溶接面部250a,250bは、ALCパネル212の壁面212cに平行に配置されている。また、管状体246の連結面部252a,252bは、ALCパネル212の上端小口面212aに平行に配置されている。そして、管状体246の両開口端は、ALCパネル212の幅方向に開口されている。
【0070】
アンカー金具244の厚さは、ALCパネル212の厚さ方向における長さであり、管状体246の溶接面部250a,250b間の距離に相当するものであるが、溶接面部250a,250bは、副筋26bに接するか、あるいは溶接可能な程度に副筋26bに近接されるように、鉄筋マット28a,28b間の距離に合わせた長さにされている。
【0071】
図10(a)に示すように、管状体246の溶接面部250a,250bには、それぞれ1本の主筋26aがかかっている。すなわち、溶接面部250a,250bの厚さ方向外側にはそれぞれ1本の主筋26aが配置されている。管状体246は、ALCパネル212内において、溶接面部250a,250bにそれぞれ1本の主筋26aがかかる幅方向位置に配置され、厚さ方向には合計2本の主筋26aにより両側から拘束されている。これにより、ALCパネル212の上端の取付強度が向上するため、雨風に耐えうる取付強度が要求される屋外使用のALCパネルにも適用できる。ここで、溶接面部250a,250bに主筋26aがかかるとは、溶接面部250a,250bの面の幅方向の領域内に主筋26aがあることをいう。
【0072】
また、管状体246の溶接面部250a,250bは、それぞれ鉄筋マット28a,28bの副筋26b間距離以上の長さを有しており、溶接面部250a,250bには、それぞれ2本の副筋26bがかかっている。すなわち、溶接面部250a,250bの厚さ方向外側にはそれぞれ2本の副筋26bが配置されている。管状体246は、ALCパネル212内において、溶接面部250a,250bにそれぞれ2本の副筋26bがかかる長さ方向位置に配置され、厚さ方向には合計4本の副筋26bにより両側から拘束されている。ここで、溶接面部250a,250bに副筋26bがかかるとは、溶接面部250a,250bの面の長さ方向の領域内に副筋26bがあることをいう。
【0073】
管状体246の一方の溶接面部250aは、一方の鉄筋マット28aの2本の副筋26bに溶接され、管状体246の他方の溶接面部250bは、他方の鉄筋マット28bの2本の副筋26bに溶接されている。したがって、管状体246は、鉄筋マット28aの副筋26bに溶接されているとともに、鉄筋マット28bの副筋26bにも溶接されている。
【0074】
アンカー金具244の筒状体248は、管状体246の連結面部252a,252b間を橋渡しするようにその両端が連結面部252a,252bに溶接されており、筒状体248はその軸方向がALCパネル212の長さ方向に平行になるように配置されている。
図8に示すように、この筒状体248は、ALCパネル212の上端小口面212aからALCパネル212内に向かって設けられた挿入孔232に連通されており、棒状体16の棒状部20は、挿入孔232を通ってさらにアンカー金具244の筒状体248の孔256に遊挿されている。これにより、棒状部20は挿入孔232内および筒状体248の孔256内で上下方向にスライドできる。
【0075】
ここで、挿入孔232内および筒状体248の孔256内で棒状部20がスムーズにスライドできるとともに挿入孔232と棒状部20との間でのがたつきを抑えるなどの観点から、挿入孔232の内径と棒状部20の外径との差は0.1〜1.0mmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.1〜0.7mmの範囲内である。また、筒状体248の内径の大きさは、挿入孔232の内径の大きさと同程度であれば良い。
【0076】
ALCパネル212内に埋設されるアンカー金具244の管状体246の大きさは、ALCパネル212の大きさを考慮して適宜決定することができる。管状体246の長さ・幅・厚さは、それぞれALCパネル212の長さ方向の寸法・幅方向の寸法・厚さ方向の寸法である。管状体246の長さとしては、50〜180mmの範囲内であることが好ましい。管状体246の幅としては、80〜200mmの範囲内であることが好ましい。管状体246の厚さとしては、30〜110mmの範囲内であることが好ましい。管状体246の板厚としては、1.5〜3.5mmの範囲内であることが好ましい。
【0077】
棒状体16のALCパネル212内への挿入長さ、挿入孔232の内径の大きさ、ALCパネル212の幅方向における挿入孔232の位置などは、第一実施形態のALCパネルの取付構造10と同様に設定すれば良い。
【0078】
ALCパネル212は、例えば次のようにして製造できる。まず、補強鉄筋26をかご状に組み、補強鉄筋26の所定の位置にアンカー金具244を溶接する。次いで、アンカー金具244が溶接された補強鉄筋26を型枠内に配置する。次いで、軽量気泡コンクリート24の主原料となる珪酸質原料および石灰質原料と、発泡剤と、水と、必要に応じて各種添加剤とをミキサーで混練りする。次いで、混練りして得られたスラリーを、補強鉄筋26を配置した型枠内に注入する。次いで、スラリーが所定の硬さとなって得られた半硬化体を脱型し、これを所定の寸法に切断する。次いで、所定寸法とされた半硬化体を高温高圧蒸気で養生する。これにより、ALCパネル212が得られる。ALCパネル212は、養生された後、各種加工処理が施されても良い。
【0079】
通常、型枠は、ALCパネル212の長さ方向が水平方向となり、ALCパネル212の幅方向が垂直方向となるように配置される。このように型枠を配置した場合、スラリーは、型枠内で発泡し、ALCパネル212の幅方向に膨らむ(発泡上昇する)。補強鉄筋26に溶接されたアンカー金具244の管状体246の開口された両端部はALCパネル212の幅方向に沿って開口されているので、発泡上昇するスラリーは管状体246の中空内を通過できる。これにより、スラリーの発泡上昇は妨げられない。また、スラリーの発泡上昇が妨げられないことから、ALCパネル212内で空洞が生じるおそれも低減できる。また、これによるALCパネル212の強度低下が抑えられる。
【0080】
軽量気泡コンクリート24の主原料となる珪酸質原料としては、珪石または珪砂が一般的であり、石灰質原料としては、生石灰とセメントが一般的であり、発泡剤としては、金属アルミニウムが一般的である。
【0081】
ALCパネル212の建物躯体14への取付は、例えば次のように行うことができる。まず、埋設されたアンカー金具244の筒状体248の孔256に連通される位置において、ALCパネル212の上端小口面212aに、所定の大きさ、所定の深さで挿入孔232を形成する。次いで、挿入孔232内および筒状体248の孔256内に棒状体16の棒状部20を挿入する。次いで、建物躯体14に固定されたフラットバー22にALCパネル212の上端小口面212aを所定の間隔をあけて向かい合わせる。次いで、棒状体16の棒状部20を上方にスライドさせてその台座部18をフラットバー22に当接させる。次いで、台座部18をフラットバー22に溶接する。その後は、必要に応じて、防水等の目的で、ALCパネル212の上端と建物躯体14との間の隙間にシール材を充填すれば良い。
【0082】
以上の構成よりなるALCパネルの取付構造210によれば、棒状体16は、建物躯体14に固定されるとともにALCパネル212の上端小口面212aに穿設された挿入孔232内およびこの挿入孔232に連通されたアンカー金具244の筒状体248内に遊挿されていることから、ALCパネル212の上端小口面212aの領域内に配置されている。このように、ALCパネル212の上端を建物躯体14に取り付けるための棒状体16はALCパネル212の壁面212cよりも外側に露出しないものである。したがって、ALCパネル212の上端を建物躯体14に取り付けるための金具により、取り付けられたALCパネル212の美観が損なわれるおそれはない。また、ALCパネル212の上端を建物躯体14に取り付けるための金具がALCパネル212の壁面212cよりも外側に露出しないので、ALCパネル212を屋外に取り付けた場合にも、この金具は風雨などの影響を受けにくい。そのため、この金具には錆が発生しにくい。これにより、屋外使用される場合においても取り付けられたALCパネル212の外観品質を良好に維持できる。
【0083】
また、棒状体16は、挿入孔232内およびこれに連通された筒状体248内に遊挿されているため、地震により建物躯体14が層間変形したときには、棒状体16が挿入孔232内および筒状体248内で上下方向にスライドする。これにより、ALCパネル212はスムーズにロッキングできるため、ALCパネル212の層間変形に対する追従性能にも優れる。
【0084】
そして、第三実施形態のALCパネルの取付構造210においては、第一実施形態のALCパネルの取付構造10とは異なり、ALCパネル212内にはアンカー金具244が埋設されており、棒状体16は、挿入孔232を通ってアンカー金具244の筒状体248の孔256内まで遊挿されている。そのため、ALCパネル212の上端の取付強度にも優れる。これにより、雨風に耐えうる取付強度が要求される屋外使用のALCパネル212にも適用できる。また、第三実施形態のALCパネルの取付構造210においては、アンカー金具244の管状体246の溶接面部250a,250bには主筋26aがかかっている。これにより、ALCパネル212の上端の取付強度をさらに向上できる。例えば、ALCパネルの取付構造210においては、1本の主筋26aにかかるアンカー金具244が2つで6000N以上のせん断引抜強度が得られる。
【0085】
次に、第四実施形態に係るALCパネルの取付構造について説明する。
【0086】
図11に示すように、第四実施形態に係るALCパネルの取付構造310は、2本の棒状体116と2つの取付金具134と2つのアンカー金具244とを用いてALCパネル212の上端を建物躯体14に取り付けたものからなる。
【0087】
ALCパネル212は、第三実施形態のものと同様の構成であるため、説明を省略する。また、棒状体116は、第二実施形態のものと同様の構成であるため、説明を省略する。さらに、取付金具134は、第二実施形態のものと同様の構成であるため、説明を省略する。
【0088】
第四実施形態に係るALCパネルの取付構造310においては、第二実施形態に係るALCパネルの取付構造110と同様、棒状体116の棒状部120は、その基端まで取付金具134の係合面部136の内側から貫通孔140に挿通されており、棒状体116の台座部118は、取付金具134の凹部142内に収容されるとともに係合面部136に係合されている。そして、取付金具134の脚部138の先端138aは、建物躯体14に固定された金属製のフラットバー22に溶接等により固定されている。すなわち、棒状体116は、取付金具134を介してフラットバー22に固定されている。
【0089】
また、第四実施形態に係るALCパネルの取付構造310においては、第三実施形態に係るALCパネルの取付構造210と同様、ALCパネル212内にはアンカー金具244が埋設されており、アンカー金具244の筒状体248は、ALCパネル212の上端小口面212aからALCパネル212内に向かって設けられた挿入孔232に連通されている。そして、棒状体116の棒状部120は、挿入孔232内に遊挿されるとともにこの挿入孔232に連通された筒状体248内にも遊挿されている。
【0090】
棒状体116のALCパネル212内への挿入長さ、挿入孔232の内径の大きさ、ALCパネル212の幅方向における挿入孔232の位置などは、第一実施形態のALCパネルの取付構造10と同様に設定すれば良い。また、ALCパネル212内におけるアンカー金具244の配置などは、第三実施形態のALCパネルの取付構造210と同様に設定すれば良い。
【0091】
ALCパネル212の建物躯体14への取付は、例えば次のように行うことができる。まず、埋設されたアンカー金具244の筒状体248の孔256に連通される位置において、ALCパネル212の上端小口面212aに、所定の大きさ、所定の深さで挿入孔232を形成する。次いで、取付金具134の係合面部136の内側から係合面部136の貫通孔140に棒状体116の棒状部120を挿通する。次いで、挿入孔232内およびこれに連通された筒状体248の孔256内に棒状体116の棒状部120を挿入する。次いで、建物躯体14に固定されたフラットバー22にALCパネル212の上端小口面212aを所定の間隔をあけて向かい合わせる。次いで、取付金具134の脚部138の先端138aをフラットバー22に当接させる。次いで、取付金具134の脚部138の先端138aをフラットバー22に溶接する。その後は、必要に応じて、防水等の目的で、ALCパネル212の上端と建物躯体14との間の隙間にシール材を充填することができる。
【0092】
以上の構成よりなるALCパネルの取付構造310においては、棒状体116は、取付金具134を介して建物躯体14に固定されるとともにALCパネル212の上端小口面212aに穿設された挿入孔232内およびこれに連通されたアンカー金具244の筒状体248内に遊挿されていることから、ALCパネル212の上端小口面212aの領域内に配置されている。このように、ALCパネル212の上端を建物躯体14に取り付けるための棒状体116はALCパネル212の壁面212cよりも外側に露出しないものである。また、棒状体116とともに用いられる取付金具134は、ALCパネル212の上端小口面212aの領域から外部にはみ出さない(その領域内に収まる)大きさに構成されている。したがって、ALCパネル212の上端を建物躯体14に取り付けるための金具により、取り付けられたALCパネル212の美観が損なわれるおそれはない。また、ALCパネル212の上端を建物躯体14に取り付けるための金具がALCパネル212の壁面212cよりも外側に露出しないので、ALCパネル212を屋外に取り付けた場合にも、この金具は風雨などの影響を受けにくい。そのため、この金具には錆が発生しにくい。これにより、屋外使用される場合においても取り付けられたALCパネル212の外観品質を良好に維持できる。
【0093】
また、棒状体116は、挿入孔232内および筒状体248内に遊挿されているため、地震により建物躯体14が層間変形したときには、棒状体116が挿入孔232内およびこれに連通された筒状体248内で上下方向にスライドする。これにより、ALCパネル212はスムーズにロッキングできるため、ALCパネル212の層間変形に対する追従性能にも優れる。
【0094】
また、第四実施形態のALCパネルの取付構造310においては、第二実施形態のALCパネルの取付構造110と同様、棒状体116の台座部118は、建物躯体14に固定された金属製のフラットバー22には直接固定されず、取付金具134を介して建物躯体14に固定されている。したがって、建物躯体14が層間変形したときに、棒状体116が挿入孔232内およびこれに連通されたアンカー金具244の筒状体248内で上下方向にスライドするとともに水平方向に揺動しても、凹部142内において、棒状体116の台座部118と取付金具134の係合面部136との間で水平方向にスムーズに摺動できる。これにより、ALCパネル212の層間変形に対する追従性がさらに向上する。
【0095】
さらに、第四実施形態のALCパネルの取付構造310においては、第三実施形態のALCパネルの取付構造210と同様、ALCパネル212内にはアンカー金具244が埋設されており、棒状体116は、挿入孔232を経由してアンカー金具244の筒状体248の孔256内まで遊挿されている。そのため、ALCパネル212の上端の取付強度に優れる。これにより、雨風に耐えうる取付強度が要求される屋外使用のALCパネル212にも適用できる。また、第四実施形態のALCパネルの取付構造310においても、アンカー金具244の管状体の溶接面部250a,250bには主筋26aがかかっている。これにより、ALCパネル212の上端の取付強度をさらに向上できる。
【0096】
次に、ALCパネルの下端の取付構造について説明する。
【0097】
図12に示すように、ALCパネルの下端の取付構造510は、1つの下端アンカー金具544と1つの下端取付金具534と1つの雄ネジ部材(ボルト)558とを用いて1箇所でALCパネル512の下端を床スラブ514に取り付けたものからなる。
【0098】
下端アンカー金具544は、第三実施形態のALCパネルの取付構造210において説明した、
図9に示すアンカー金具244の構造に類似する構造をしている。すなわち、この下端アンカー金具544は、四角管状に形成された管状体546と、円筒状に形成された筒状体548とにより構成されている。
図9に示すアンカー金具244と比べて、
図9に示すアンカー金具244の筒状体248の内周面には雌ネジが形成されていないのに対し、この下端アンカー金具544の筒状体548の内周面には雌ネジ(孔)556が形成されており、この下端アンカー金具544の筒状体548は雌ネジ孔556を有する点が異なるのみである。この下端アンカー金具544におけるその他の構成は
図9に示すアンカー金具244と同様であるため、説明を省略する。
【0099】
図12(b)に示すように、下端アンカー金具544は、ALCパネル512内に埋設された一対の鉄筋マット28a,28b間に配置されている。また、
図12(a)(b)に示すように、ALCパネル512の幅方向中央および厚さ方向中央で、ALCパネル512の下端小口面512bに近い、ALCパネル512の長さ方向の端部(下端)に、1パネルにつき1個配置されている。
【0100】
下端アンカー金具544の管状体546の溶接面部550a,550bは、ALCパネル512の壁面512cに平行に配置されている。また、管状体546の連結面部552a,552bは、ALCパネル512の下端小口面512bに平行に配置されている。そして、管状体546の両開口端は、ALCパネル512の幅方向に開口されている。
【0101】
下端アンカー金具544の厚さは、ALCパネル512の厚さ方向における長さであり、管状体546の溶接面部550a,550b間の距離に相当するものであるが、溶接面部550a,550bが副筋26bに接するか、あるいは溶接可能な程度に副筋26bに近接されるように、鉄筋マット間の距離に合わせた長さにされている。
【0102】
図12(a)に示すように、管状体546の溶接面部550a,550bは、鉄筋マット28a,28bの主筋26a間距離以上の幅を有しており、溶接面部550a,550bには、それぞれ2本の主筋26aがかかっている。また、管状体546の溶接面部550a,550bは、鉄筋マット28a,28bの副筋26b間距離以上の長さを有しており、溶接面部550a,550bには、それぞれ2本の副筋26bがかかっている。管状体546の一方の溶接面部550aは、一方の鉄筋マット28aの2本の副筋26bに溶接され、管状体546の他方の溶接面部550bは、他方の鉄筋マット28bの2本の副筋26bに溶接されている。したがって、管状体546は、鉄筋マット28aの副筋26bに溶接されているとともに、鉄筋マット28bの副筋26bにも溶接されている。
【0103】
下端アンカー金具544の筒状体548は、管状体546の連結面部552a,552b間を橋渡しするようにその両端が連結面部552a,552bに溶接されている。そして、筒状体548は、その軸方向がALCパネル512の長さ方向に平行になるように配置されている。
【0104】
ALCパネル512の下端小口面512bからALCパネル512内に向かって連通孔532が穿設されており、この連通孔532はALCパネル512の下端に埋設されている下端アンカー金具544の筒状体548に連通されている。これにより、雄ネジ部材558は連通孔532を通って筒状体548の雌ネジと螺合できる。
【0105】
下端取付金具534は、第二実施形態のALCパネルの取付構造110において説明した、
図7に示す取付金具134の構造に類似する構造をしている。具体的には、下端取付金具534は、ALCパネル512が載置される載置面を有する載置部536と、この載置部536の両端に延設されるとともにこの両端から折曲形成された一対の脚部538とを有している。この載置部536の中央には、雄ネジ部材558の雄ネジ部560が挿通可能な大きさの内径を有する貫通孔540が形成されている。また、脚部538の先端538aは、載置部536に平行な方向で外側に開くように曲げ加工されている。この下端取付金具534は、例えば、金属製の板材の両端を曲げ加工し、さらにこの板材の中央に穴あけ加工することにより製造することができる。
【0106】
下端取付金具534は、ALCパネル512の下端小口面512bの領域から外部にはみ出さない(その領域内に収まる)大きさに構成されている。例えば
図12(a)に示すように、下端取付金具534がALCパネル512の幅方向に沿って配置される場合には、下端取付金具534の幅がALCパネル512の厚さを超えない大きさである。また、下端取付金具534がALCパネル512の厚さ方向に沿って配置される場合には、下端取付金具534の長さがALCパネル512の厚さを超えない大きさである。
【0107】
雄ネジ部材558の雄ネジ部560は、その基端まで下端取付金具534の載置部536の内側から貫通孔540に挿通され、さらに、下端アンカー金具544の筒状体548内の雌ネジと螺合されている。また、下端取付金具534の脚部538の先端538aは、床スラブ514に予め埋設された金属プレート522に溶接等により固定されている。
【0108】
ALCパネル512の下端の床スラブ514への取付は、例えば次のように行うことができる。まず、ALCパネル512内に埋設された下端アンカー金具544の筒状体548の雌ネジ孔556に連通される位置において、ALCパネル512の下端小口面512bに、所定の大きさ、所定の深さで連通孔532を形成する。次いで、下端取付金具534の載置部536の内側から載置部536の貫通孔540に雄ネジ部材558の雄ネジ部560を挿通する。次いで、下端アンカー金具544の筒状体548の雌ネジ孔556に雄ネジ部材558の雄ネジ部560を螺合させて、ALCパネル512の下端小口面512bに下端取付金具534を取り付ける。次いで、下端取付金具534を介して床スラブ514上にALCパネル512を立設配置する。次いで、下端取付金具534の脚部538の先端538aを床スラブ514に予め埋設された金属プレート522に当接させる。次いで、下端取付金具534の脚部538の先端538aを金属プレート522に溶接する。その後は、必要に応じて、防水等の目的で、ALCパネル512の下端と床スラブ514との間の隙間にシール材を充填することができる。
【0109】
以上のように、ALCパネル512の下端は、ALCパネル512の幅方向中央の1箇所で床スラブ514に取り付けられている。また、ALCパネル512の下端と床スラブ514との間には下端取付金具534の大きさ程度の隙間が生じている。そのため、取り付けられたALCパネル512は、地震等による建物の揺れに対してスムーズにロッキングすることとなるため、層間変形に対して優れた追従性能を有する。これにより、地震等による建物の揺れを吸収できるため、地震等によるALCパネル512の破壊・脱落を防止できる。
【0110】
また、ALCパネル512の床スラブ514への取付はALCパネル512の下端小口面512bで行なわれている。そして、下端取付金具534はALCパネル512の下端小口面512bの領域から外部にはみ出さない(その領域内に収まる)大きさに構成されている。そのため、ALCパネル512の下端の取付部分は外部から見えにくい。したがって、ALCパネル512の下端を床スラブ514に取り付けるための金具により、取り付けられたALCパネル512の美観が損なわれるおそれはない。また、ALCパネル512の下端を床スラブ514に取り付けるための金具がALCパネル512の壁面512cよりも外側に露出しないので、ALCパネル512を屋外に取り付けた場合にも、この金具は風雨などの影響を受けにくい。そのため、この金具には錆が発生しにくい。これにより、屋外使用される場合においても取り付けられたALCパネル512の外観品質を良好に維持できる。
【0111】
さらに、ALCパネル512の下端は、ALCパネル512内に埋設された下端アンカー金具544に取り付けられた下端取付金具534を介して、床スラブ514に取り付けられているため、床スラブ514との間のせん断引抜強度にも優れる。具体的には、下端アンカー金具544は2本の主筋26aにかかっており、6000N以上のせん断引抜強度が得られる。また、この下端アンカー金具544はALCパネル512内の主筋26aにかかっていることから、さらにせん断引抜強度に優れる。
【0112】
ここで、ALCパネル512の下端は、ALCパネル512の幅方向中央の1箇所で、ALCパネル512内に埋設された下端アンカー金具544と床スラブ514に固定された下端取付金具534とを雄ネジ部材558で繋ぐことにより床スラブ514に取り付けられていることから、下端の取付構造だけをみれば、取り付けられたALCパネル512は水平方向(壁面外方向)に回転しやすくなっている。このALCパネルの下端の取付構造510に対し、ALCパネル512の上端は、
図12に示すように、2つの棒状体16を用いて2箇所で建物躯体514に取り付けられているため、このようなALCパネルの下端の取付構造510において、ALCパネル512が回転するのを抑えることができる。
【0113】
なお、
図12においては、ALCパネル512の上端の取付構造としては、第一実施形態のものを示しているが、これに限定されるものではなく、上記第二実施形態から第四実施形態のいずれかの取付構造に対しても、この下端の取付構造を適用できる。
【0114】
本発明に係るALCパネルは、外壁・間仕切壁・隔て壁・袖壁等の建築物の壁材として好適に用いられる。特に、共同住宅等の高層建築におけるベランダでの隣戸との隔て壁や玄関周り通路での袖壁などの屋外使用されるALCパネルに好適である。
【0115】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0116】
例えば上記第一実施形態から第四実施形態のいずれにおいても2本の棒状体を用いているが、これらにおいて3本以上の棒状体を用いることもできる。3本以上の棒状体を用いる場合には、棒状体の本数と同数の挿入孔がALCパネルの上端小口面からALCパネル内に向かって穿設されていると良い。また、上記第三実施形態および第四実施形態において3本以上の棒状体を用いる場合には、棒状体の本数と同数のアンカー金具を用いることができる。さらに、上記第二実施形態および第四実施形態において3本以上の棒状体を用いる場合には、棒状体の本数と同数の取付金具を用いることができる。
【0117】
また、例えば上記第一実施形態から第四実施形態のいずれにおいても、建物躯体としては梁などを挙げることができる。そして、棒状体の台座部を固定する部材としては、建物躯体に固定されたフラットバーに代えて、建物躯体自体でも良いし、水平方向に配置される水平板とこの水平板より起立形成された垂直板とを備え、この垂直板が鉛直方向に沿って建物躯体内に埋設され、この水平板が建物躯体に沿って配置されたL型アングルであっても良い。
【0118】
また、上記第一実施形態から第四実施形態のいずれにおいても、ALCパネルの下端小口面に取り付けられた下端取付金具を用いてALCパネルの下端を床スラブ等に取り付ける方法に代えて、例えば、床スラブに固定されたL型アングルの水平板上に平板状のロッキングスペーサを挟んでALCパネルを立設配置するとともにそのL型アングルの水平板より起立形成された垂直板に稲妻プレートの一端を溶接しさらにその他端をALCパネル壁面の下端にボルト等で固定することによってALCパネルの下端を床スラブ等に取り付ける方法を採用することもできる。この場合には、床スラブに固定されたL型アングルとALCパネルとを連結する稲妻プレートがALCパネルの下端小口面に取り付けられているわけではないため、ALCパネルのロッキングは可能であるが、ALCパネルの水平方向における回転は生じにくくなる。
【0119】
また、上記第一実施形態から第四実施形態のいずれにおいても、挿入孔は、ALCパネルの製造時に形成することができるし、ALCパネルを製造した後、ALCパネルを取り付ける際に形成することもできる。また、上記ALCパネルの下端の取付構造510においても、連通孔532は、ALCパネルの製造時に形成することができるし、ALCパネルを製造した後、ALCパネルを床スラブ514に取り付ける際に形成することもできる。
【0120】
さらに、上記第一実施形態および第二実施形態においては、棒状体の台座部の形状は四角盤状に代えて円盤状であっても良いし、四角盤状以外の多角盤状であっても良い。また、上記第三実施形態および第四実施形態においては、棒状体の台座部の形状は円盤状に代えて四角盤状等の多角盤状であっても良い。
【0121】
そして、取付金具を用いた上記第二実施形態および第四実施形態においては、
図13(a)に示す形状の取付金具134に代えて、
図13(b)に示す取付金具634や
図13(c)に示す取付金具734などを用いることもできる。
【0122】
図13(b)に示す取付金具634は、棒状体616の一端側にある台座部618が係合される板状の係合面部636と、この係合面部636の両端に延設されるとともにこの両端から折曲形成された一対の脚部638とを備えている。この係合面部636の中央には、棒状体616の棒状部620が挿通可能な大きさの内径を有する貫通孔640が形成されている。また、脚部638の先端638aは、係合面部636に平行な方向で内側に閉じるように曲げ加工されている。これら脚部638の先端638aは、突き合わされて接合されている。これにより、取付金具634は、全体として断面ロ字状に構成されている。そして、この係合面部636と脚部638とにより凹部642が形成されている。
【0123】
棒状体616を取付金具634に係合させるには、例えば、棒状体616の棒状部620と棒状体616の台座部618とを別部材とし、棒状部620の基端に雄ネジを形成するとともに台座部618の中央に雌ネジ孔を形成し、雄ネジと雌ネジとを螺合させることによりこれらが一体化されるように構成すると良い。そして、棒状体616の台座部618を凹部642内に配置し、係合面部636の外側から棒状体616の棒状部620の基端を係合面部636の貫通孔640に挿通して、凹部642内で棒状部620の雄ネジと台座部618の雌ネジとを螺合させることにより、棒状体616を取付金具634に係合させることができる。
【0124】
図13(c)に示す取付金具734は、棒状体116の台座部118が係合される板状の係合面部736と、この係合面部736の両端に延設されるとともにこの両端から折曲形成された一対の脚部738とを備えている。この係合面部736の中央には、棒状体116の棒状部120が挿通可能な大きさの内径を有する貫通孔740が形成されている。
図13(a)に示す形状の取付金具134とは異なり、脚部738の先端は外側に曲げ加工されておらず、取付金具734は、全体として断面コ字状に構成されている。そして、この係合面部736と一対の脚部738とにより凹部742が形成されている。
【0125】
また、アンカー金具を用いた上記第三実施形態および第四実施形態においては、アンカー金具の溶接面部はそれぞれ1本の主筋にかかっているが、溶接面部がそれぞれ2本の主筋にかかっていても良い。この場合には、ALCパネル上端の取付強度をさらに高めることができる。また、溶接面部は、それぞれ3本以上の主筋にかかっていても良い。
【0126】
また、アンカー金具を用いた上記第三実施形態および第四実施形態においては、管状体246の内部空間に筒状体248を1つ備えたアンカー金具244に代えて、
図14に示すように、管状体646の内部空間に筒状体648を2つ備えたアンカー金具644を用いても良い。さらに、管状体の内部空間に筒状体を3つ以上備えたアンカー金具を用いても良い。
【0127】
図14に示すアンカー金具644を用いる場合には、一のアンカー金具644につき筒状体648を2つ備えているため、2本の棒状体に対して1つのアンカー金具644を用いれば良い。この際、ALCパネル612の上端の建物躯体に対するせん断引抜耐力を向上できるなどの観点から、
図14に示すようにアンカー金具644の溶接面部650は少なくとも2本の主筋26aにかかるように配置されることが好ましい。
【0128】
また、アンカー金具を用いた上記第三実施形態および第四実施形態においては、棒状体の棒状部の形状およびアンカー金具の筒状体の形状に改良を加えて、棒状体の棒状部のアンカー金具からの抜け止めを講じても良い。
【0129】
例えば
図15に示すように、棒状体816には、棒状部820の外周面の所定位置に突起862を設け、この棒状部820が挿入されるアンカー金具844の筒状体848には、棒状体816の棒状部820の突起862が軸方向に沿って通過できる大きさの切欠部864を軸方向に沿って設けるとともにこの切欠部864を軸の途中で周方向にずらしてなる切欠段差部866を設けるなどしても良い。
【0130】
この場合、棒状体816の棒状部820をアンカー金具844の筒状体848内に挿入するには、まず、棒状部820の突起862を筒状体848の切欠部864に合わせる。次いで、筒状体848の軸方向に設けられた切欠部864に沿って棒状部820の突起862をスライドさせながら、棒状部820を筒状体848内の奥に挿入する。棒状部820の突起862が周方向にずらされた切欠段差部866に当接したら、棒状体816を周方向に回転させて、周方向に設けられた切欠部864に沿って棒状部820の突起862をスライドさせる。再び軸方向に設けられた切欠部864に沿って棒状部820の突起862をスライドさせる。これにより、棒状体816の棒状部820はアンカー金具844の筒状体848内に遊挿される。棒状体816の棒状部820がアンカー金具844の筒状体848内に遊挿された状態において、仮に棒状体816に引張力が生じたときには、切欠段差部866に棒状部820の突起862が引っ掛かるため、棒状体816がアンカー金具844から抜けるのを防止できる。
【0131】
また、例えば
図16に示すように、棒状体816には、棒状部820の外周面の所定位置に突起862を設け、この棒状部820が挿入されるアンカー金具944の筒状体948には、軸方向の奥に向かって途中部分で拡径する拡径段差部966を設けるとともに棒状部820が挿入される挿入口からこの拡径段差部966まで軸方向に沿って棒状部820の突起862が通過できる大きさの切欠部964を設けても良い。
【0132】
この場合、棒状体816の棒状部820をアンカー金具944の筒状体948内に挿入するには、まず、棒状部820の突起862を筒状体948の切欠部964に合わせる。次いで、筒状体948の軸方向に設けられた切欠部964に沿って棒状部820の突起862をスライドさせながら、棒状部820を筒状体948内の奥に挿入する。棒状部820の突起862が拡径段差部966までくると、棒状部820の突起862は切欠部964を通って拡径段差部966の内側に入り込み、切欠部964による規制が解除される。このとき棒状体816を周方向に回転させると、周方向において切欠部964の位置と突起862の位置とがずれるため、再びこれらの位置が合わない限り、棒状部820の突起862は拡径段差部966に引っ掛かり、棒状体816がアンカー金具944から抜けるのを防止できる。
【0133】
図15および
図16に示す棒状体とアンカー金具の組み合わせであれば、棒状体の棒状部はアンカー金具の筒状体から抜け止めされる。そうすると、仮に地震等によりALCパネルの壁面に圧力が加わってALCパネルが長さ方向の途中部分で折れ曲がるようなことがあったとしても、ALCパネルの上端は建物躯体に引っ掛かり、依然、ALCパネルはその上端と下端とで支えられるため、ALCパネルがさらに崩壊するのを防止することができる。これにより、地震等による二次災害を防止することができる。
【0134】
また、アンカー金具を用いた上記第三実施形態および第四実施形態においては、管状体は四角管状をしているが、これに限定されるものではなく、その周面で筒状体の両端を支持できる管状であれば、丸管状であっても良いし、楕円管状、四角管状以外の角管状であっても良い。また、筒状体の端部は、管状体の連結面部あるいは溶接面部よりも外側に突出されていても良い。