(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5700402
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】樹脂製インテークマニホールド
(51)【国際特許分類】
F02M 35/104 20060101AFI20150326BHJP
F02M 35/10 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
F02M35/104 Q
F02M35/104 A
F02M35/10 301P
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-243146(P2010-243146)
(22)【出願日】2010年10月29日
(65)【公開番号】特開2012-97567(P2012-97567A)
(43)【公開日】2012年5月24日
【審査請求日】2013年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】大石 尚己
(72)【発明者】
【氏名】木下 登士哉
【審査官】
佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−062742(JP,A)
【文献】
米国特許第04794885(US,A)
【文献】
米国特許第04945865(US,A)
【文献】
特開2002−138913(JP,A)
【文献】
特開平11−093786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/104
F02M 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン側部に配置されるスロットルボディが接続される入り口から吸気が供給されるサージタンクと、このサージタンクの底部からエンジン側に延び出し上向き湾曲部を経てサージタンクと対向するように立ち上がった複数の出口管とを備えた、エンジン側部に配置されるインテークマニホールドであって、
入り口域の出口管側となる内側内壁に、スロットルバルブの開閉側からの吸気を受け入れ、反出口管側となる外側内壁側に誘導する吸気誘導面を形成し、前記出口管の延び出し口は前記サージタンクの前記吸気誘導面側に設けられたことを特徴とするインテークマニホールド。
【請求項2】
スロットルバルブの開き側が、前記吸気誘導面側に位置することを特徴とする請求項1に記載のインテークマニホールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットルボディが接続される入り口から吸気が供給されるサージタンクと、このサージタンクの底部からエンジン側に延び出した複数の出口管とを備えたインテークマニホールドに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなインテークマニホールドは、例えば下記の特許文献1〜3等に開示されている。
【0003】
特許文献1は、偏平なサージタンクを備え、このサージタンクの上部にある入口管に対し片寄った底部や側部から出口管がエンジン側に延び出したインテークマニホールドを開示している。また、延び出し口と出口との間でU字状に湾曲した出口管を開示しており、両口間距離を大きくしないで出口管長を長くして、吸気特性を高めるのに有利になっている。
【0004】
特許文献2は、横長なサージタンク対応のコレクタを備え、このコレクタの長手方向中央の上部に入口を設け、長手方向一側面から左右に2つずつ分岐しエンジン側に延びた出口管が、偏平な略Z型に屈曲して延び出すように設けられたインテークマニホールドを開示している。
【0005】
また、特許文献3は、長手方向一端の入口にスロットルが接続されたコレクタを備え、このコレクタの長手方向一側面から長手方向に分岐してエンジン側に延びた出口管を形成したインテークマニホールドを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−138913号公報
【特許文献2】特開平11−093786号公報
【特許文献3】特開平7−091329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1が開示するインテークマニホールドにおいては、上部の入口管からサージタンクに導入された吸気は、一旦サージタンクの下部に衝突し、その後少なくとも、向きをほぼ直角に変えて出口管に流れ込む。そのため、吸気抵抗が高く流速も落ちるので、出口管に対して吸気が入り込みにくい。
【0008】
特許文献2が開示するインテークマニホールドにおいては、上部の入口からコレクタに導入された吸気は、一旦コレクタの下部に衝突した後、長手方向へ直角に広がりながら、側方へ向きをほぼ直角に変えて各出口管に流れ込む。このため、吸気抵抗が高く流速も落ちるので、出口管に対して吸気が入り込みにくい。また、コレクタと出口管間の直交する部分で吸気流れが阻害されて速度がより低下し、吸気効率が一層低下する。
【0009】
特許文献3が開示するインテークマニホールドでは、吸気は入口からコレクタ内に長手方向にスムーズに導入されるが、各出口管へは向きをほぼ直角に変えて流れ込むため吸気抵抗が高く流速が落ちる上、コレクタとエンジンとの間で吸気の流れがほぼ180°変化することによる吸気抵抗も併せ、吸気効率が低下する。また、入口から各出口管の延び出し口までの距離が異なるので、吸気率を同等にするのは難しい。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑み、コンパクト化に有利な屈曲形態を採用しながら、構造を複雑化させることなく、吸気効率の向上が図れるインテークマニホールドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のインテークマニホールドは、
エンジン側部に配置されるスロットルボディが接続される入り口から吸気が供給されるサージタンクと、このサージタンクの底部からエンジン側に延び出し上向き湾曲部を経てサージタンクと対向するように立ち上がった複数の出口管とを備えた
、エンジン側部に配置されるインテークマニホールド
であって、入り口域の出口管側となる内側内壁に、スロットルバルブの開閉側からの吸気を受け入れ、反出口管側となる外側内壁側に誘導する吸気誘導面を形成し
、前記出口管の延び出し口は前記サージタンクの前記吸気誘導面側に設けられたことを特徴としている。
【0012】
このような構成では、スロットルバルブの開閉度合いに関わらず、スロットルバルブの開閉側の吸気は、サージタンクの入り口域の出口管側となる内側内壁側に導入され、吸気誘導面に沿って反出口管側となる外側内壁側へ斜め下向きの方向成分を有するように誘導される。この流れは、広いサージタンク内で膨張するため、外側内壁、および底部壁に対して斜め方向に広がりながら、内側内壁の底部から延び出る出口管にスムーズに流入させられる。そのため、出口管の湾曲立ち上がりが急であっても流れを損なわず出口に向かわせられる。
【0013】
上記において、さらに、スロットルバルブの開き側が、吸気誘導面側に位置しているものとすることができる。
【0014】
このような構成では、上記に加え、さらに、スロットルバルブが閉じられるアイドリング時には、スロットルバルブの吸気誘導面の側から吸気が流入し、吸気誘導面に沿ってサージタンクの底部に向けて流れ込む。これによって、アイドリング時の吸気効率が向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のインテークマニホールドによれば、スロットルバルブから流入した吸気が、流れを阻害されることなく出口管にスムーズに流れ込み、吸気の量、流速が低下することがないので、吸気効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係るインテークマニホールドの1つの例をアッパー部材とロア部材に分離して示す斜視図。
【
図2】同インテークマニホールドをサージタンクと出口管の方向で断面して見た断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施の形態に係るインテークマニホールドの具体例について、
図1〜
図2を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
【0018】
図1、
図2に示す例での本実施の形態のインテークマニホールド100は、
図2に示すようにスロットルボディ20が接続される入り口1から吸気が供給されるサージタンク2と、このサージタンク2からエンジン側に延び出した複数の出口管3とを備えている。各出口管3は上向き湾曲部3cを経て、サージタンク2と対向するように立ち上がる。インテークマニホールド100は全体として、ほぼV字状ないしはU字状の屈曲形態をなしている。
【0019】
複数の出口管3は、
図1に示すように、サージタンク2の底部から上向き湾曲部3cを経てエンジン側にやや放射状に広がり、かつエンジンに向かって左右方向に均等に分岐して延び出し、サージタンク2と対向するように立ち上がっている。各出口管3は、その立ち上がり端に、エンジン側へ開口して各気筒の吸気口に接続される出口3bを有している。これにより、インテークマニホールド100はエンジンを車両走行方向に対して横置きにした際に、車体の前後方向にコンパクトな形態をなし、車体の特に前後方向に狭いスペースに搭載するのによく適合する。なお、エンジンを車両走行方向に対して横置きとは、クランク軸を走行方向に対して略直角に載置する方向をいう。
【0020】
入り口1からサージタンク2内に供給される吸気を制御するために、スロットルボディ20内にはスロットルバルブ20aが設けられ、図示の場合
図2に矢印で示す範囲で開閉される。因みにアイドリング時にスロットルバルブ20aは閉じられ最小限の吸気が図られる。
【0021】
ここで、スロットルボディ20からサージタンク2へ向かう方向にスロットルバルブ20aが開く側を「スロットルバルブの開閉側」と呼ぶ。吸気はスロットルバルブ20aの開閉側からサージタンク2内にスムーズに流れ込む。しかし、その反対側は吸気が流れてくる方向にスロットルバルブ20aが開くので、吸気の流れは乱される。特に、スロットルバルブ20aの開度が狭い場合は、吸気はスロットルバルブ20aの開閉側を主として流れる。
【0022】
サージタンク2の入り口域の、出口管3側となる内側内壁2gには、スロットルバルブ20aの開閉側からの吸気を受け入れ、反出口管側となる外側内壁2a側に誘導する湾曲面を有する吸気誘導面2hが形成されている。本実施の形態において、スロットルバルブ20aの開閉側が、吸気誘導面2h側に位置している。
【0023】
吸気誘導面2hは、サージタンク2内の内側内壁2gが、外側内壁2a側に向かって迫ることで形成される。すなわち、サージタンク2の外側内壁2aは略平坦でよい。したがって、吸気誘導面2hが形成されている区間は、サージタンク2の内側内壁2gと、外側内壁2aとの間の距離が、サージタンク2の入り口1から底部に向かって短くなる。なお、吸気誘導面2hは、サージタンク2の入り口1から出口管3の延び出し口3aまでの間に形成されていればよく、サージタンク2の内側内壁2gの全面に形成されていなくてもよい。
【0024】
また、吸気誘導面2hの傾斜角度は、特に限定されず、スロットルボディ20の容積やエンジン排気量、またサージタンク2に連結されている出口管3の本数で変化し、適宜設計によって決められる。また、吸気誘導面2hは単独の傾斜面で形成される必要はなく、複数の傾斜面や曲面で形成されていてもよい。
【0025】
サージタンク2内に供給された吸気は、
図2に矢印で示すように、サージタンク2の底部に向かって流れ込む。スロットルバルブ20aの開閉度合いに関わらず、スロットルバルブ20aの開閉側から流れ込んだ吸気は、破線の矢印で示すように、入り口域の出口管3側となる内側内壁2g側に導入され、吸気誘導面2hに沿って反出口管側となる外側内壁2a側へ斜め下向きの方向成分を有して流れる。
【0026】
スロットルバルブ20aの開閉側から流れ込んだ吸気は、スロットルバルブ20aの開度がアイドリング時状態に近いほど、つまり開度が小さいほど主流となる。スロットルバルブ20aの開閉側の反対側は、吸気の流れの上流に向かってスロットルバルブ20aが開くので、吸気の流れが乱れ、流量は少なくなるからである。この主流は、広いサージタンク2内で膨張しながら流れるため、外側内壁2a、底部壁2fに対して斜め成分を有し、広がりながら流れる。そのため、出口管3にスムーズに流入させられ、出口管3の湾曲立ち上がりが急であっても流れを損なわず出口3bに向かわせられる。
【0027】
吸気をこのように流すために、サージタンク2の底部壁2fは、サージタンク2の外側内壁2aから連続的に曲線を描き、出口管3の延び出し口3aに連結するように形成されるのが好ましい。外側内壁2aに当たった吸気が緩やかに流れの方向を出口管3に向けることができるようにするためである。
【0028】
スロットルバルブ20aの開度が大きくなり、また全開となって実線の矢印で示すように、多くの吸気が合流しても、スロットルバルブ20aの開閉側からの吸気は、吸気誘導面2hによって、サージタンク2の外側内壁2a側に流れ、サージタンク2内の吸気全体を外側内壁2a側に押しやる。そのため、吸気全体としてサージタンク2の底部壁2fに直接衝突することなく外側内壁2aに沿って、底部壁2fから延び出し口3aを通り出口管3へのスムーズな流れが確保される。
【0029】
上述の通り、吸気は、特許文献1、2に記載のもののようにサージタンク2の下端に直接衝突することなく、その延び出し口3aから出口管3にスムーズに流入させられ、流れを乱されることなく出口3bに向かわせられる。したがって、吸気の流れが乱されることがなく、吸気の流速が低下することがないので、吸気効率が向上する。
【0030】
また、インテークマニホールド100は、特許文献2、3に記載のもののようにコレクタと出口管間の角度や、出口管の曲げ角が、吸気の流れを阻害せず、吸気の流速を低下させることがないので、吸気効率が向上する。その上、コンパクトな形態でありながら、サージタンク2において吸気が膨張し、複数の出口管3に均等に流れ込む。
【0031】
さらに、本実施の形態において、スロットルバルブ20aの開閉側が、吸気誘導面2h側に位置している。アイドリング時、つまりスロットルバルブ20aが閉じられた状態で供給された吸気は、吸気誘導面2hに沿って反出口管側となる外側内壁2a側へ斜め下向きの方向成分を有して流れる。これによって、アイドリング時の吸気効率が向上する。
【0032】
また、このような形態のインテークマニホールド100は、
図1、
図2に示すようにサージタンク2の底部と各出口管3の延び出し口3aから出口3bまでとを、
図2に示す割線6で上下に2分割することにより、2分割したアッパー部材11およびロア部材12によって、容易に型成形できる。アッパー部材11はロア部材12に比べ形態が複雑になるが、
図1に矢印で示すように概ね左右に開く成形型と、上下に開く成形型とによって型成形することができる。
【0033】
また、本発明のインテークマニホールド100は、上記のようにサージタンク2から延び出し口3aに続く出口管3と、吸気の流れを乱さない形状を得るために、インテークマニホールド100全体としての強度より、吸気の流れを優先して形成される。そこで、インテークマニホールド100全体としての強度を確保するために、サージタンク2と出口管3の間に補強リブ31と、縦向きリブ32を形成している。また、これらのリブには、さらに強度を高めるために、梁状補強リブ31aおよび32aをアッパー部材11側に成形する。
【0034】
また、出口管3同士の間の強度を確保するためには、横向き補強リブ33をロア部材12側に形成する。これらの補強リブを形成しても、アッパー部材11およびロア部材12は、左右および上下に開く型によって、型成形することができる。
【0035】
なお、本実施の形態のインテークマニホールド100は、その材質を特に問うものではないが、図示例では樹脂製としてある。具体的には、PA6GF30(ポリアミド6+ガラス30%入り)を採用している。これにより、必要な強度、耐熱性が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、コンパクト化に有利な屈曲形態を採用しながら、インテークマニホールドの構造を複雑化させることなく、吸気効率の向上を図るのに実用される。
【符号の説明】
【0037】
1 入り口
2 サージタンク
2a 外側内壁
2f 底部壁
2g 内側内壁
2h 吸気誘導面
3 出口管
3a 延び出し口
3b 出口
3c 上向き湾曲部
20 スロットルボディ
20a スロットルバルブ
100 インテークマニホールド