特許第5700421号(P5700421)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5700421
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】電子装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/173 20110101AFI20150326BHJP
【FI】
   H04N7/173 630
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-36523(P2011-36523)
(22)【出願日】2011年2月23日
(65)【公開番号】特開2012-175475(P2012-175475A)
(43)【公開日】2012年9月10日
【審査請求日】2013年8月21日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正洋
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩之
【審査官】 赤穂 州一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−139265(JP,A)
【文献】 特開2008−085762(JP,A)
【文献】 特開2008−211467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/10
7/14 − 7/173
7/20 − 7/22
21/00 −21/858
H04B 1/06
1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される電子装置であって、
1つのチャンネルに第1のディジタル放送と当該第1のディジタル放送よりも伝送レートが高い第2のディジタル放送とが階層化されたテレビ放送を受信する受信手段と、
前記受信手段により受信されたテレビ放送の受信感度を判定する感度判定手段と、
前記感度判定手段により判定された受信感度に応じて第1のディジタル放送または第2のディジタル放送の選択を切替える切替手段と、
車両の前方座席側に配置された前方表示部と、
車両の後方後部側に配置された後方表示部と、
後方表示部が使用されているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により後方表示部が使用されていると判定された場合には、前記切替手段により選択された第1または第2のディジタル放送の映像を前方および後方表示部に表示する表示手段と、
前記判定手段により後方表示部が使用されていると判定された場合には、前記切替手段により選択された第1または第2のディジタル放送の音声を前方および後方で出力する音声出力手段と、
前記判定手段により後方表示部が使用されていないと判定された場合には、第1のディジタル放送の音声が選択されるように前記切替手段を制御する切替制御手段と、
を有する電子装置。
【請求項2】
前記後方表示部は、開閉型のディスプレイを含み、前記判定手段は、前記ディスプレイが閉じられているとき、前記後方表示部が使用されていないと判定する、請求項に記載の電子装置。
【請求項3】
第1のディジタル放送は、ワンセグメント放送であり、第2のディジタル放送は、フルセグメント放送である、請求項1または2に記載の電子装置。
【請求項4】
1つのチャンネルに第1のディジタル放送と当該第1のディジタル放送よりも伝送レートが高い第2のディジタル放送とが階層化されたテレビ放送を受信する機能を備え、テレビ放送の受信感度に応じて第1または第2のディジタル放送の選択の切替を行い、さらに車両の前方座席側に配置された前方表示部と車両の後方座席側に配置された後方表示部とを備えた電子装置の放送切替方法であって、
前記後方表示部が使用されているか否かを判定するステップと、
前記後方表示部が使用されていると判定された場合には、第1または第2のディジタル放送の映像を前方および後方表示部に表示し、かつ第1または第2のディジタル放送の音声を前方および後方で出力し、前記後方表示部が使用されていないと判定された場合には、第1のディジタル放送の音声を出力させるステップを有する、放送切替方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタルテレビ放送を受信する機能を備えた車載用電子装置に関し、特に、主階層放送番組(例えば、フルセグメントを利用した固定受信向けサービスの番組)と副階層放送番組(例えば、ワンセグメントを利用した移動体/携帯向けサービスの番組)との切替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地上ディジタルテレビ放送は、1チャンネルの伝送帯域を13のセグメントに分割し、セグメント単位で異なる変調方式を採用することで、固定受信機向けの放送サービス(いわゆるフルセグメント放送)と、移動体/携帯端末向けの放送サービス(いわゆるワンセグメント)放送とを同時に送信することを可能にしている。
【0003】
図1は、地上ディジタル放送のセグメント構造を示す図である。直交周波数分割多重方式(以下、OFDMと称す)は、周波数軸上に狭帯域の搬送波を複数並べ、各搬送波にデータを振り分けて伝送するものであり、移動受信時に一部の搬送波の波形が乱れても、その周波数を使用して伝送するデータに誤りが発生するだけで、他の搬送波からのデータにより補正が可能であり、マルチパス干渉に強い。日本の地上ディジタル放送では、OFDMのスペクトルラムを周波数毎に13のセグメントに分割し、例えば第1から第6セグメントおよび第8から第13のセグメントがフルセグメント放送に割り当てられ、これらのセグメントは、64直交振幅変調(64QAM)により変調され、第7セグメントがワンセグメント放送に割り当てられ、QPSK等により変調される。
【0004】
QAMとは、多数の振幅偏移変調を直交位相変調することで、位相変化と振幅変化を組み合わせた変調方式であり、1シンボル当たりの情報量を多くすることができるため、伝送効率が良いという利点があるが、高いCN比(Carrier to Noise ratio)が必要となる。したがって、QAM変調を用いたフルセグメント放送は、良好な電波状態でなければ、その番組を視聴することができない。
【0005】
他方、位相偏移変調(PSK)は、一定周波数の搬送波の位相を変化させることで変調するものであり、位相の種類を増やすことにより、変調1回当たりの送信するビットを増やすことができる。特に、QPSKとは、1回の変調で2ビットを伝送するものである。QPKSは、QAMと比較して伝送できる情報量は少ないが、電波状態が悪くCN比が低い場合でも、情報を伝達でき、ノイズ耐性が高いという利点がある。
【0006】
車載用の地上ディジタルテレビ受信装置では、受信エリアを広げるため、フルセグメント放送とワンセグメント放送の双方を自動的に切り替える階層間受信を行っている。つまり、自車の走行位置や受信環境によって電波状態が異なるため、受信状態が比較的良好な地域では、ノイズ耐性の低いフルセグメント放送を受信しこれを高品位にて出力し、受信状態が悪い地域では、ノイズ耐性の高いワンセグメント放送を受信しこれを出力している。
【0007】
特許文献1は、車両が走行していると判定された場合には、伝送劣化耐性の高い低品質階層の映像(ワンセグメント映像)を選択し、車両が停止していると判定された場合には、劣化耐性の低い高品質階層の映像(フルセグメント映像)を選択する車載用ディジタル放送受信装置を開示する。特許文献2は、ワンセグ放送を受信中に、所定のタイミングでフルセグチューナの電源をオンにしてフルセグ放送の電界強度を取得し、電界強度が閾値よりも大きい場合にワンセグ放送からフルセグ放送に表示を切替ええる映像再生装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−234972号公報
【特許文献2】特開2010−74560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の車載用ディジタルテレビ放送受信装置では、上記したように受信状態に応じてワンセグメント放送とフルセグメント放送の切替を行っているが、車両が、受信状態が変動し易い領域、例えば県境などを走行すると、フルセグメント放送とワンセグメント放送との間で切替が頻繁に生じてしまい、特に、切替時に音声が途切れたり、不連続となることがある。このような音声の途切れは、視聴者に不快感やストレスを感じさせるという課題がある。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を解決し、音声が途切れたり、切断されるのを抑制し、快適にテレビ放送の音声を聴くことができる電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る、移動体に搭載される電子装置は、1つのチャンネルに第1のディジタル放送と当該第1のディジタル放送よりも伝送レートが高い第2のディジタル放送とが階層化されたテレビ放送を受信する受信手段と、受信されたテレビ放送の受信感度を判定する感度判定手段と、前記感度判定手段により判定された受信感度に応じて第1のディジタル放送または第2のディジタル放送の選択を切替える切替手段と、テレビ放送を受信中に当該テレビ放送以外の映像を表示させる選択映像表示モードを設定する設定手段と、前記選択映像表示モードが設定された場合には、テレビ放送以外の選択された映像を表示し、前記選択映像表示モードが設定されていない場合には、前記切替手段により選択された第1または第2のディジタル放送の映像を表示する表示手段と、前記切替手段により選択された第1のディジタル放送または第2のディジタル放送の音声を出力する音声出力手段と、前記選択映像表示モードが設定された場合には、第1のディジタル放送の音声が選択されるように前記切替手段を制御する切替制御手段とを有する。
【0012】
好ましくは電子装置はさらに、ナビゲーション機能を実行するナビゲーション手段を有し、前記設定手段は、選択される映像としてナビゲーションの道路地図画面を設定可能であり、前記表示手段は、選択映像表示モードが設定された場合に、前記道路地図画面を表示し、前記音声出力手段は、受信している第1のディジタル放送の音声を出力する。
【0013】
本発明に係る、車両に搭載される電子装置は、1つのチャンネルに第1のディジタル放送と当該第1のディジタル放送よりも伝送レートが高い第2のディジタル放送とが階層化されたテレビ放送を受信する受信手段と、前記受信手段により受信されたテレビ放送の受信感度を判定する感度判定手段と、前記感度判定手段により判定された受信感度に応じて第1のディジタル放送または第2のディジタル放送の選択を切替える切替手段と、車両の前方座席側に配置された前方表示部と、車両の後方後部側に配置された後方表示部と、後方表示部が使用されているか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により後方表示部が使用されていると判定された場合には、前記切替手段により選択された第1または第2のディジタル放送の映像を前方および後方表示部に表示する表示手段と、前記判定手段により後方表示部が使用されていると判定された場合には、前記切替手段により選択された第1または第2のディジタル放送の音声を前方および後方で出力する音声出力手段と、前記判定手段により後方表示部が使用されていないと判定された場合には、第1のディジタル放送の音声が選択されるように前記切替手段を制御する切替制御手段とを有する。
【0014】
好ましくは前記後方表示部は、開閉型のディスプレイを含み、前記判定手段は、前記ディスプレイが閉じられているとき、前記後方表示部が使用されていないと判定する。第1のディジタル放送は、ワンセグメント放送であり、第2のディジタル放送は、フルセグメント放送である。
【0015】
本発明の電子装置の放送切替方法は、1つのチャンネルに第1のディジタル放送と当該第1のディジタル放送よりも伝送レートが高い第2のディジタル放送とが階層化されたテレビ放送を受信する機能を備え、テレビ放送の受信感度に応じて第1または第2のディジタル放送の選択の切替を行う電子装置において行われるものであって、テレビ放送を受信中に当該テレビ放送以外の映像を表示させる選択映像表示モードが設定されているか否かを判定するステップと、前記選択映像表示モードが設定されていると判定された場合には、テレビ放送以外の選択された映像を表示し、かつ第1のディジタル放送の音声を出力し、前記選択映像表示モードが設定されていないと判定された場合には、第1または第2のディジタル放送の映像および音声を出力するステップを有する。
【0016】
本発明の電子装置の放送切替方法は、1つのチャンネルに第1のディジタル放送と当該第1のディジタル放送よりも伝送レートが高い第2のディジタル放送とが階層化されたテレビ放送を受信する機能を備え、テレビ放送の受信感度に応じて第1または第2のディジタル放送の選択の切替を行い、さらに車両の前方座席側に配置された前方表示部と車両の後方座席側に配置された後方表示部とを備えた電子装置において行われるものであって、前記後方表示部が使用されているか否かを判定するステップと、前記後方表示部が使用されていると判定された場合には、第1または第2のディジタル放送の映像を前方および後方表示部に表示し、かつ第1または第2のディジタル放送の音声を前方および後方で出力し、前記後方表示部が使用されていないと判定された場合には、第1のディジタル放送の音声を出力させるステップを有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、テレビ放送受信時に、テレビ放送以外の映像を選択的に表示する場合には、第1のディジタル放送が選択されるように切替手段を制御するようにしたので、受信感度に応じて切替手段が頻繁に切替わることがなくなり、音声の途切れが防止される。さらに、テレビ放送受信時に、後方表示部が使用されていないと判定された場合には、第1のディジタル放送が選択されるように切替手段を制御するようにしたので、前方表示部の視聴者に音声の途切れの不快感を与えることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】地上ディジタルテレビ放送のセグメント構造の例を説明する図である。
図2】本発明の実施例に係る車載用電子装置の機能ブロック図である。
図3】本発明の第1の実施例に係るテレビ放送受信機能部の構成を示す図である。
図4】本発明の第1の実施例に係るテレビ放送受信機能部の動作を説明するフローチャートである。
図5】本発明の第1の実施例によるワンセグメント放送とフルセグメント放送の切替条件を示すテーブルである。
図6】本発明の第2の実施例に係るテレビ放送受信機能部の構成を示す図である。
図7】本発明の第2の実施例に係るテレビ放送受信機能部の動作を説明するフローチャートである。
図8】本発明の第2の実施例によるワンセグメント放送とフルセグメント放送の切替条件を示すテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0020】
図2は、本発明の実施例に係る車載用電子装置の機能的な構成例を示す図である。本実施例の車載用電子装置10は、ユーザからの入力を受け取るユーザインターフェース20、地上ディジタルテレビ放送を受信しこれを再生する機能を備えたテレビ放送機能部30、自車位置を検出し自車位置周辺の道路を表示したり目的地までの経路を案内する機能を備えたナビゲーション機能部40、AM/FMラジオ放送を受信しこれを再生する機能を備えたラジオ放送機能部50、CD、DVD、ブルーレイディスク、半導体メモリなどの記録媒体に記録された映像や音声データを再生する機能を備えた記録媒体再生機能部60、携帯電話、スマートフォンなどの携帯情報端末を接続し当該携帯情報端末のアプリケーションを利用する外部端末機能部70、自車の後部座席において映像や音声を再生するリアエンターテイメント機能部80、これらの各機能部30〜80で再生された映像や音声をディスプレイやスピーカから出力する出力手段90を備えて構成される。但し、図2の機能的な構成は一例であり、車載用電子装置10は、上記のすべての機能を備える必要はなく、反対に、上記の機能に加えて他の機能を備えるものでもよい。
【0021】
ユーザは、ユーザインターフェース20を介して複数の機能部の中から所望のメディアソースを選択し、選択したメディアソースを出力手段90から出力させることができる。さらに選択するメディアソースは1つに限らず、複数であってもよい。例えば、ナビゲーション機能部40とラジオ放送機能部50とを選択し、ディスプレイにナビゲーション画面を表示させ、ラジオ放送の音声を出力させたり、ナビゲーション画面を表示させ、CDやDVDから再生された音声を出力させることができる。また、テレビ放送機能部30を選択した場合には、テレビ放送の音声のみを出力させ、ディスプレイにユーザが任意に選択した別のメディアソースの映像、例えば、ナビゲーション画面を表示させることができる。以後、テレビ放送を受信時にテレビ放送以外の映像を選択して表示しかつ受信しているテレビ放送の音声を出力する動作を、選択映像表示モードと称する。選択映像表示モードは、ユーザ入力によって設定され、また、ユーザ入力によって解除される。選択映像表示モードにおいて、どのような映像を選択するかは、ユーザオプションである。選択映像表示モードの設定に関する情報は、メモリに保持される。
【0022】
図3は、本実施例のテレビ放送機能部100の構成を示すブロック図である。図中、「第1」は、ワンセグメント放送を意味し、「第2」は、フルセグメント放送を意味する。テレビ放送機能部100は、図3に示すように、第1のアンテナ102と、第2のアンテナ103と、第1のアンテナ102に接続された第1のチューナ/OFDM復調部104と、第2のアンテナ3に接続された第2のチューナ/OFDM復調部105と、第1および第2のチューナ/OFDM復調部104、105からの信号を合成するダイバーシティ合成部108と、受信したディジタル放送の伝送中に生じる誤りを検出しそれを訂正する誤り訂正部109と、多重化されているストリームデータを分離し、音声ストリーム、映像ストリームおよびデータストリームを得るデマルチプレクサ110と、第1の放送の音声ストリームをデコードしディジタル音声信号を再生する第1の音声デコーダ111と、第2の放送の音声ストリームをデコードしディジタル音声信号を再生する第2の音声デコーダ112と、第1の放送の映像ストリームをデコードし映像信号を再生する第1の映像デコーダ113と、第2の放送の映像ストリームをデコードし映像信号を再生する第2の映像デコーダ114と、データストリームをデコードするデータデコーダ115と、選択映像表示モードが設定されているとき、テレビ放送以外のメディアソースからの映像を供給する映像供給部130と、第1および第2の音声デコーダ111、112に接続され第1の放送または第2の放送の音声信号を選択する音声切替処理部116と、第1および第2の映像デコーダ113、114および映像供給部130に接続され第1の放送、第2の放送または映像供給部130からのいずれかの映像を選択する映像切替処理部117と、音声切替処理部116から出力されたディジタル音声信号をアナログ音声信号に変換するD/Aコンバータ118と、アナログ音声信号を出力するスピーカ119と、映像切替処理部117から出力された映像信号をディスプレイに描画するための描画処理部120と、ディスプレイ121と、制御部122と、ユーザからの入力を受け取る入力部123と、車両の状態に関する情報を取得する車両情報取得部124とを有する。
【0023】
第1および第2のチューナ/OFDM復調部104、105は、入力部123からのユーザの入力に応じて、選択されたチャンネルの周波数の放送信号を受信し、受信した信号を復調し、トランスポートストリームを生成する。ダイバーシティ合成部108は、第1のチューナ/OFDM復調部104からのトランスポートストリームの位相を制御する位相器108aおよび位相制御されたトランスポートストリームと第2のチューナ/OFDM復調部105からのトランスポートストリームを合成する合成器108bを含み、ダイバーシティ合成されたトランスポートストリームを誤り訂正部109へ出力する。ダイバーシティ合成を用いることで受信性能は向上するが、必ずしも必須ではない。
【0024】
誤り訂正部109は、トランスポートストリームから受信したディジタル放送の伝送中の誤り率を算出し、誤り率を示す信号BERを制御部122へ出力する。制御部122は、誤り率と閾値とを比較し、誤り率が閾値を超えるとき、受信感度が悪化していると判定し、閾値以下のとき受信感度が良好であると判定する。閾値は、例えば制御部122の不揮発性の書き換え可能なメモリに格納されている。なお、本実施例では、受信感度の判定に誤り率を用いるが、これ以外にも、第1および/または第2のチューナ104、105の受信強度(例えば、電界強度)を監視することで受信感度を判定することも可能である。
【0025】
デマルチプレクサ110は、入力したトランスポートストリームに多重化されている音声ストリーム、映像ストリームおよびデータストリームを分離し、それぞれのデコーダ111、112、113、114、115へ出力する。ここで、データストリームには、データ放送用の情報ストリームが含まれ、さらにそこには、EIT(Event Information Table)が含まれている。EITには、番組の名称、放送日時、番組内容、番組を識別するためのイベントID等が含まれている。
【0026】
第1の音声デコーダ111は、ワンセグメント放送の番組、すなわち第1の放送番組の音声ストリームをデコードし、再生されたディジタル音声信号を出力する。第2の音声デコーダ112は、フルセグメント放送の番組、すなわち第2の放送番組の音声ストリームをデコードし、再生されたディジタル音声信号を出力する。第1の映像デコーダ113は、ワンセグメント放送の番組の映像ストリームをデコードし、第2の映像デコーダ114は、フルセグメント放送の番組の映像ストリームをデコードし、それぞれ映像信号を出力する。データデコーダ115は、データストリームをデコードし、その結果を制御部122へ出力する。
【0027】
音声切替処理部116は、制御部122からの切替制御信号S2に応じて第1の放送または第2の放送の音声信号を選択し、映像切替処理部117は、切替制御信号S3に応じて第1の放送または第2の放送の映像信号を選択する。切替制御信号S2、S3は、テレビ放送の受信感度または受信状態が悪化しているか否かに応じて設定される。また、制御部122は、選択映像表示モードが設定されたとき、制御信号S1により映像供給部130から選択された映像を出力させ、切替制御信号S2によりワンセグメント放送の音声に固定されるように音声切替処理部116を制御し、切替制御信号S3により選択映像票jモードで選択された映像が出力されるように映像切替処理部117を制御する。
【0028】
D/Aコンバータ118は、音声切替処理部116から出力された音声信号をアナログ音声信号に変換し、スピーカ119がこれを出力する。描画処理部120は、映像切替処理部117から出力された映像信号をディスプレイ121の表示サイズに適合するようにスケーリング処理等を行い、ディスプレイがこれを出力する。入力部123は、マウス、キーボード、タッチパネル等のユーザ入力インターフェースを提供し、入力された情報が制御部122へ出力される。車両情報取得部124は、パーキングブレーキのオン・オフ情報や車速センサによる車速情報を制御部122へ提供し、制御部122は、これらの情報から車両が走行中であるか否かを判定し、走行中であるとき、受信感度に応じてワンセグメント放送とフルセグメント放送の切替制御を行う。
【0029】
制御部122は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、またはプロセッサなどを含んで構成される。また、制御部122は、メモリにプログラムを格納し、当該プログラムを実行することで各部を制御することができる。本実施例では、制御部122は、入力部123からのユーザ入力に基づき選択映像表示モードを設定することができる。選択映像表示モードは、上記したようにテレビ放送を受信しているとき、当該テレビ放送以外の選択された映像をディスプレイ121に表示させ、他方、スピーカ119からは受信しているテレビ放送の音声を出力させる動作モードである。ユーザは、選択映像表示モードを設定するとき、併せて、ディスプレイ121に表示させる映像をメディアソースの中から選択する。すなわち、車載用電子装置10が保有するまたは実行することができるメディアソースを選択し、選択された映像信号は、映像供給部130に供給される。
【0030】
選択映像表示モードが設定された場合には、映像供給部130は、制御信号S1に応答して、選択されたメディアソースの映像信号を映像切換処理部117へ供給する。また、映像切換処理部117は、切替制御信号S3に応答して、選択映像表示モードが設定されている場合には、映像供給部130から供給された映像信号を選択し、これを描画処理部120へ出力し、他方、選択映像表示モードが設定されていない場合には、受信感度に応じて選択されたワンセグメント放送またはフルセグメント放送のいずれかの映像信号を描画処理部120へ出力する。音声切換処理部116は、切替制御信号S2に応答して、選択映像表示モードが設定されている場合には、フルセグメント放送とワンセグメント放送間の切換を停止し、ワンセグメント放送の音声を選択し(ワンセグメント放送の音声に出力を固定する)、選択映像表示モードが設定されていない場合には、受信感度に応じて選択されたフルセグメント放送またはワンセグメント放送の音声を出力する。
【0031】
次に、本発明の第1の実施例による車載用電子装置の放送切替動作を説明する。図4は、第1の実施例の放送切替動作を説明するフローチャートである。車載用電子装置10において、車両の走行中に、メディアソースとしてテレビ放送がユーザ選択されると(S101)、制御部122は、選択映像表示モードが設定されているか否かを判定する(S102)。制御部122は、選択映像表示モードが設定されていると判定した場合には、制御信号S1により、映像供給部130から選択された映像信号を映像切換処理部117に出力させ、切替制御信号S3により、映像切替処理部117に選択された映像を選択させ、この映像をディスプレイ121に表示させる。また、制御部122は、切換制御信号S2により、受信しているワンセグメント放送の音声を音声切換処理部116に選択させ、ワンセグメント放送の音声に固定する(S103)。
【0032】
一方、選択映像表示モードが設定されていない場合には、車両の受信感度に応じた通常の切換動作、すなわち、制御部122は、誤り率を示す信号BERに基づき受信感度が良好であるか否かを判定し、受信感度が良好であるときは、切換制御信号S2、S3を介して、音声切換処理部116および映像切換処理部117にフルセグメント放送の音声信号および映像信号を選択させ、これらを出力させ、受信感度が悪化したときは、音声切換処理部116および映像切換処理部117にワンセグメント放送の音声信号および映像信号を選択させ、これらを出力させる(S104)。図5は、選択映像表示モードが設定されているときと、設定されていないときの映像、音声の選択結果を示すテーブルである。
【0033】
選択映像表示モードが設定されている場合には、ユーザにとってテレビ放送の音声への関心が高く、つまり、音声を主とした視聴条件と考えられ、この場合には、ワンセグメント放送とフルセグメント放送の切換を停止し、ワンセグメント放送の音声に出力を固定することで、テレビ放送の音切れを防止し、切換に伴うストレスや不快感を解消する。さらに、ワンセグメント放送は、フルセグメント放送よりもノイズ耐性が強いため、受信感度が低下しても音声品質を保つことができる。
【0034】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。図6は、第2の実施例に係るテレビ放送機能部100Aの構成を示すブロック図であり、第1の実施例と同じ構成については同一番号を付しここでの説明を省略する。また、第2の実施例では、テレビ放送機能部100Aは、図2に示すリアエンターテイメント機能部80と共働する。
【0035】
リアエンターテイメント機能部80は、後部座席の搭乗者への情報提供を行うものであり、車載用電子装置10が実行可能なメディアソースの映像および音声を後部座席の搭乗者へ提供する。好ましくは、ディスプレイは、車両の天井に開閉可能に設置されたり、あるいは前方座席の裏面に設置され、スピーカは、車両後方に設置される。リアエンターテイメント機能部80は、単独で動作することも可能であるが、前方座席側においてメディアソースが選択されている場合には、通常、これと同じメディアソースの映像および音声が出力される。例えば、前方座席側でテレビ放送の映像と音声が出力されている場合には、後方座席側でも同じテレビ放送の映像と音声が出力される。
【0036】
図6に示すように、車両の前方座席側に前方ディスプレイ121Fと前方スピーカ119Fが配置され、車両の後方座席側に後方ディスプレイ121Rと後方スピーカ119Rが配置される。リア情報取得部126は、リアエンターテイメント機能部80が使用されているか否かに関する情報を制御部122へ提供する。例えば、後方ディスプレイ121Rが車両の天井に取り付けられた開閉型のディスプレイであるとき、リア情報取得部126は、ディスプレイが開いた位置または閉じた位置にあることを示す情報を提供する。あるいは、リア情報取得部126は、後方ディスプレイ121Rの電源のオンまたはオフに関する情報を提供したり、リアエンターテイメント機能部80の使用の有無に関するユーザ入力情報を提供するものであってもよい。
【0037】
次に、第2の実施例による車載用電子装置の動作を図7のフローチャートを参照して説明する。先ず、ユーザによりメディアソースとしてテレビ放送が選択されると(S201)、次に、制御部122は、リア情報取得部126から提供される情報に基づきリアエンターテイメント機能部80が使用中か否かを判定する(S202)。制御部122は、例えば、後方ディスプレイ121Rが閉じた位置にあれば不使用と判定し、ディスプレイが開いた位置にあれば使用中と判定したり、後方ディスプレイ121Rの電源がオフであれば不使用と判定し、オンであれば使用中と判定することができる。
【0038】
リアエンターテイメント機能部80が使用中であると判定した場合には、制御部122は、切換制御信号S2、S3を介して、通常の受信感度に応じたフルセグメント放送とワンセグメント放送の切換を制御する(S203)。つまり、前方ディスプレイ121Fと後方ディスプレイ121Rには、同一の映像が表示され、この映像は、受信感度に応じてフルセグメント放送の映像またはワンセグメント放送の映像に切換えられる。また、前方スピーカ119Fと後方スピーカ119Rは、同一の音声を出力し、この音声は、受信感度に応じてフルセグメント放送の映像またはワンセグメント放送の映像に切替えられる。
【0039】
他方、リアエンターテイメント機能部80が不使用であると判定した場合には、制御部122は、切換制御信号S2により、受信しているチャンネルのワンセグメント放送の音声を選択させ、出力をワンセグメント放送の音声に固定させる(S204)。また、映像切換処理部117は、切換制御信号S3により、受信感度に応じてフルセグメント放送またはワンセグメント放送の映像の切換を行う。
【0040】
リアエンターテイメント機能部80が不使用である場合には、運転者または助手席の搭乗者は、比較的音声を主とした視聴を行っているものと考えられ、従って、そのような場合には、フルセグメント放送とワンセグメント放送間の音声切換を停止し、ワンセグメント放送の音声に固定することで、切替えに伴う音切れが生ぜず、音切れによるストレスや不快感をなくすことができる。
【0041】
なお、上記説明では、第1の実施例と第2の実施例をそれぞれ別個の例として説明をしたが、本発明は、第1および第2の実施例を組み合わせたものであってもよい。つまり、リアエンターテイメント機能部80が不使用であり、かつ、選択映像表示モードが設定されている場合に、ワンセグメント放送とフルセグメント放送の音声の切換を停止させ、ワンセグメント放送の音声に固定するようにしてもよい。
【0042】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0043】
100,100A:テレビ放送機能部 109:誤り訂正部
110:デマルチプレクサ 111:第1の音声デコーダ
112:第2の音声デコーダ 113:第1の映像デコーダ
114:第2の映像デコーダ 116:音声切替処理部
117:映像切替処理部 122:制御部
123:入力部 124:車両情報取得部
125:リア情報取得部 130:映像供給部
S1:制御信号
S2、S3:切替制御信号
図1
図2
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図6
図7
図8