(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5700487
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】巻積層鉄心の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/03 20060101AFI20150326BHJP
H02K 1/27 20060101ALI20150326BHJP
H02K 1/22 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
H02K15/03 Z
H02K1/27 501D
H02K1/27 501K
H02K1/22 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-134423(P2011-134423)
(22)【出願日】2011年6月16日
(65)【公開番号】特開2013-5597(P2013-5597A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2014年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100163267
【弁理士】
【氏名又は名称】今中 崇之
(72)【発明者】
【氏名】牧 清久
【審査官】
宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−063205(JP,A)
【文献】
特許第4429258(JP,B2)
【文献】
国際公開第2008/044420(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/03
H02K 1/22
H02K 1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各セグメント鉄心片が連結部で連結された帯状鉄心片を、該連結部で折り曲げて螺旋状に巻回して形成され、前記帯状鉄心片の巻始めと巻終わりに段差を有する巻鉄心本体の各磁極部に上下に貫通して形成された磁石挿入孔に永久磁石を樹脂封止する巻積層鉄心の製造方法であって、
前記各磁石挿入孔に前記永久磁石が挿入された前記巻鉄心本体の上下の前記段差に符合する段差を有する樹脂吐出金型と保持金型の間に前記巻鉄心本体を配置する第1工程と、
前記樹脂吐出金型に形成されている樹脂ポットから樹脂を押し出し、前記各磁石挿入孔に充填する第2工程とを有し、
しかも、前記樹脂吐出金型及び前記保持金型のうち前記巻鉄心本体の下側に配置される下型に前記巻鉄心本体をそれぞれの前記段差を合わせて載置した後、前記巻鉄心本体の軸心を中心にして該下型を下側回転駆動手段によって回転させ、前記巻鉄心本体の上側の段差と、前記樹脂吐出金型及び前記保持金型のうち前記巻鉄心本体の上側に配置される上型の段差を符合させることを特徴とする巻積層鉄心の製造方法。
【請求項2】
各セグメント鉄心片が連結部で連結された帯状鉄心片を、該連結部で折り曲げて螺旋状に巻回して形成され、前記帯状鉄心片の巻始めと巻終わりに段差を有する巻鉄心本体の各磁極部に上下に貫通して形成された磁石挿入孔に永久磁石を樹脂封止する巻積層鉄心の製造方法であって、
前記各磁石挿入孔に前記永久磁石が挿入された前記巻鉄心本体の上下の前記段差に符合する段差を有する樹脂吐出金型と保持金型の間に前記巻鉄心本体を配置する第1工程と、
前記樹脂吐出金型に形成されている樹脂ポットから樹脂を押し出し、前記各磁石挿入孔に充填する第2工程とを有し、
しかも、前記樹脂吐出金型及び前記保持金型のうち前記巻鉄心本体の上側に配置される上型に、前記巻鉄心本体の軸心を中心にして該上型を回転させ、前記巻鉄心本体の上側の段差と前記上型の段差を符合させる上側回転駆動手段を有していることを特徴とする巻積層鉄心の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の巻積層鉄心の製造方法において、前記樹脂吐出金型及び前記保持金型のうち前記巻鉄心本体の下側に配置される下型に、前記巻鉄心本体の軸心を中心にして該下型を回転させ、前記巻鉄心本体の下側の段差と前記下型の段差を符合させる下側回転駆動手段を有していることを特徴とする巻積層鉄心の製造方法。
【請求項4】
各セグメント鉄心片が連結部で連結された帯状鉄心片を、該連結部で折り曲げて螺旋状に巻回して形成され、前記帯状鉄心片の巻始めと巻終わりに段差を有する巻鉄心本体の各磁極部に上下に貫通して形成された磁石挿入孔に永久磁石を樹脂封止する巻積層鉄心の製造方法であって、
前記各磁石挿入孔に前記永久磁石が挿入された前記巻鉄心本体を該巻鉄心本体の下側の段差に符合する段差を有する搬送治具に載せて、前記巻鉄心本体の上側の段差に符合する段差を有する樹脂吐出金型からなる上型と、保持金型からなる下型の間に前記巻鉄心本体を配置する第1工程と、
前記上型に形成されている樹脂ポットから樹脂を押し出し、前記各磁石挿入孔に充填する第2工程とを有し、
しかも、前記巻鉄心本体の軸心を中心にして前記下型を前記搬送治具ごと下側回転駆動手段によって回転させ、前記巻鉄心本体の上側の段差と前記上型の段差を符合させることを特徴とする巻積層鉄心の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1記載の巻積層鉄心の製造方法において、前記帯状鉄心片の端部が前記磁極部の端部に位置し、前記帯状鉄心片の端部に対して前記磁石挿入孔が一定角度位置にあることを特徴とする巻積層鉄心の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1記載の巻積層鉄心の製造方法において、前記各セグメント鉄心片は1又は複数の磁極片部を有することを特徴とする巻積層鉄心の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状鉄心片を連結部で折り曲げて螺旋状に巻回して形成された巻鉄心本体の両端面の段差の影響を受けることなく、高効率で高品質の製品を製造可能な巻積層鉄心の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、永久磁石型積層鉄心の回転子の磁石固定において、磁石挿入孔と磁石との隙間に溶融樹脂を射出注入して磁石を固定する方法(通称「マグネットモールド工法」と称されている)がある。一般的に、この方法は複数の鉄心片を積層した鉄心本体の上下面に金型面を密着させ、所定の樹脂注入路を経由して樹脂を注入できる金型構造が用いられている。そして、この特許文献1で開示されている鉄心本体は板材から円環状の形状で打ち抜かれた鉄心片を所定の厚さまで積層して上下面がほぼ平坦な円筒形状をしており、この形態の鉄心本体の磁石固定に使用する前述の樹脂成型金型は鉄心本体端面に接する面が樹脂の注入経路以外はほぼ平坦形状である。
【0003】
一方、特許文献2には、積層鉄心を形成する材料使用量を抑制する方法として、所定数のスロットを有する円弧状のセグメント鉄心片同士を、連結部を曲げながら同心円状に螺旋巻して、円筒形状に積層した巻鉄心本体(即ち、巻積層鉄心の原型)が開示されている。この巻鉄心本体の特徴として、
図5(A)、(B)に示すように、螺旋状に積層された巻鉄心本体100にはセグメントの巻積層始めと巻積層終わりの部分にセグメントの板厚分の段差101、102が必然的に発生する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4429258号公報
【特許文献2】WO2008/044420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように上下に段差を有する巻鉄心本体の磁石挿入孔に磁石を入れて、金型の上型及び下型の間に配置し、一方の金型から樹脂を注入しようとすると、巻鉄心本体端面に発生する段差のために、樹脂漏れが発生し、巻鉄心本体そのままの状態では、樹脂充填が困難であった。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、上下面に段差を有する巻鉄心本体に永久磁石を合理的に樹脂封止する巻積層鉄心の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る巻積層鉄心の製造方法は、各セグメント鉄心片が連結部で連結された帯状鉄心片を、該連結部で折り曲げて螺旋状に巻回して形成され、前記帯状鉄心片の巻始めと巻終わりに段差を有する巻鉄心本体の各磁極部に上下に貫通して形成された磁石挿入孔に永久磁石を樹脂封止する巻積層鉄心の製造方法であって、
前記各磁石挿入孔に前記永久磁石が挿入された前記巻鉄心本体の上下の前記段差に符合する段差を有する樹脂吐出金型と保持金型の間に前記巻鉄心本体を配置する第1工程と、
前記樹脂吐出金型に形成されている樹脂ポットから樹脂を押し出し、前記各磁石挿入孔に充填する第2工程とを有し、
しかも、前記樹脂吐出金型及び前記保持金型のうち前記巻鉄心本体の下側に配置される下型に前記巻鉄心本体をそれぞれの前記段差を合わせて載置した後、前記巻鉄心本体の軸心を中心にして該下型を下側回転駆動手段によって回転させ、前記巻鉄心本体の上側の段差と、前記樹脂吐出金型及び前記保持金型のうち前記巻鉄心本体の上側に配置される上型の段差を符合させる。
【0008】
また、第2の発明に係る巻積層鉄心の製造方法は、各セグメント鉄心片が連結部で連結された帯状鉄心片を、該連結部で折り曲げて螺旋状に巻回して形成され、前記帯状鉄心片の巻始めと巻終わりに段差を有する巻鉄心本体の各磁極部に上下に貫通して形成された磁石挿入孔に永久磁石を樹脂封止する巻積層鉄心の製造方法であって、
前記各磁石挿入孔に前記永久磁石が挿入された前記巻鉄心本体の上下の前記段差に符合する段差を有する樹脂吐出金型と保持金型の間に前記巻鉄心本体を配置する第1工程と、
前記樹脂吐出金型に形成されている樹脂ポットから樹脂を押し出し、前記各磁石挿入孔に充填する第2工程とを有し、
しかも、前記樹脂吐出金型及び前記保持金型のうち前記巻鉄心本体の上側に配置される上型に、前記巻鉄心本体の軸心を中心にして該上型を回転させ、前記巻鉄心本体の上側の段差と前記上型の段差を符合させる上側回転駆動手段を有している。
【0009】
第3の発明に係る巻積層鉄心の製造方法は、第2の発明に係る巻積層鉄心の製造方法において、前記樹脂吐出金型及び前記保持金型のうち前記巻鉄心本体の下側に配置される下型に、前記巻鉄心本体の軸心を中心にして該下型を回転させ、前記巻鉄心本体の下側の段差と前記下型の段差を符合させる下側回転駆動手段を有している。
【0010】
第4の発明に係る巻積層鉄心の製造方法は、各セグメント鉄心片が連結部で連結された帯状鉄心片を、該連結部で折り曲げて螺旋状に巻回して形成され、前記帯状鉄心片の巻始めと巻終わりに段差を有する巻鉄心本体の各磁極部に上下に貫通して形成された磁石挿入孔に永久磁石を樹脂封止する巻積層鉄心の製造方法であって、
前記各磁石挿入孔に前記永久磁石が挿入された前記巻鉄心本体を該巻鉄心本体の下側の段差に符合する段差を有する搬送治具に載せて、前記巻鉄心本体の上側の段差に符合する段差を有する樹脂吐出金型からなる上型と、保持金型からなる下型の間に前記巻鉄心本体を配置する第1工程と、
前記上型に形成されている樹脂ポットから樹脂を押し出し、前記各磁石挿入孔に充填する第2工程とを有し、
しかも、前記巻鉄心本体の軸心を中心にして前記下型を前記搬送治具ごと下側回転駆動手段によって回転させ、前記巻鉄心本体の上側の段差と前記上型の段差を符合させる。
【0011】
第5の発明に係る巻積層鉄心の製造方法は、第1〜第4の発明に係る巻積層鉄心の製造方法において、前記帯状鉄心片の端部が前記磁極部の端部に位置し、前記帯状鉄心片の端部に対して前記磁石挿入孔が一定角度位置にある。
そして、第6の発明に係る巻積層鉄心の製造方法は、第1〜第5の発明に係る巻積層鉄心の製造方法において、前記各セグメント鉄心片は1又は複数の磁極片部を有する。
【0012】
なお、以上の発明において、巻鉄心本体とは、セグメント鉄心片が連結部で連結された帯状鉄心片を、連結部で折り曲げて螺旋状に巻回して形成されたものであって、各磁極部に上下に貫通して形成された磁石挿入孔に永久磁石が樹脂封止されていないものをいい、この巻鉄心本体に永久磁石が樹脂封止されているものを巻積層鉄心とする。
【発明の効果】
【0013】
目的に沿う第1の発明に係る巻積層鉄心の製造方法は、樹脂吐出金型及び保持金型のうち巻鉄心本体の下側に配置される下型に巻鉄心本体をそれぞれの段差を合わせて載置した後、巻鉄心本体の軸心を中心にして下型を下側回転駆動手段によって回転させ、巻鉄心本体の上側の段差と上型の段差を符合させているので、巻鉄心本体に上型及び下型を密着させて巻鉄心本体の上下から樹脂漏れが生じないようにした後、磁石挿入孔への樹脂封止ができる。
【0014】
また、第2の発明に係る巻積層鉄心の製造方法は、巻鉄心本体を下型に載せた後、巻鉄心本体の軸心を中心にして上型を回転させ、巻鉄心本体の上側の段差と上型の段差を符合させているので、樹脂漏れがなく、磁石挿入孔への樹脂封止ができる。
【0015】
更に、第3の発明に係る巻積層鉄心の製造方法は、樹脂吐出金型及び保持金型のうち巻鉄心本体の下側に配置される下型に、巻鉄心本体の軸心を中心にして下型を回転させ、巻鉄心本体の下側の段差と下型の段差を符合させる下側回転駆動手段を有しているので、巻鉄心本体を回転させなくても巻鉄心本体の下側の段差に下型の段差を符合させることができる。
【0016】
第4の発明に係る巻積層鉄心の製造方法は、各磁石挿入孔に永久磁石が挿入された巻鉄心本体を下側の段差に符合する段差を有する搬送治具に載せて、巻鉄心本体の上側の段差に符合する段差を有する樹脂吐出金型からなる上型と、保持金型からなる下型の間に巻鉄心本体を配置する第1工程と、上型に形成されている樹脂ポットから樹脂を押し出し、各磁石挿入孔に充填する第2工程とを有し、しかも、巻鉄心本体の軸心を中心にして下型を搬送治具ごと下側回転駆動手段によって回転させ、巻鉄心本体の上側の段差と上型の段差を符合させるので、上型を回転させる必要がなく、更に装置の簡略化に繋がる。
【0017】
第5の発明に係る巻積層鉄心の製造方法は、帯状鉄心片の端部が磁極部の端部に位置し、帯状鉄心片の端部に対して磁石挿入孔が一定角度位置にあるので、段差の位置決めが容易となる。
そして、第6の発明に係る巻積層鉄心の製造方法は、各セグメント鉄心片が1の磁極片部を有する場合は、基本となる薄板条材の幅が短くなり、材料歩留りが向上する。また、各セグメント鉄心片が複数の磁極片部を有する場合には、連結部の位置を円周方向にずらすことができて巻鉄心本体を強固に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る巻積層鉄心の製造方法を説明する断面図である。
【
図2】同巻積層鉄心の製造方法を適用する巻積層鉄心の平面図である。
【
図3】本発明の第2の実施の形態に係る巻積層鉄心の製造方法を説明する断面図である。
【
図4】本発明の第3の実施の形態に係る巻鉄心本体の製造方法を示す断面図である。
【
図5】(A)、(B)はそれぞれ従来例に係る巻鉄心本体の正面図及び平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
続いて、添付した図面を参照しながら、本発明を具体化した実施の形態について説明する。
図1、
図2に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る巻積層鉄心の製造方法により製造された巻積層鉄心10は、磁極部11を構成する磁極片部を1(複数であってもよい)有するセグメント鉄心片12が連結部13で連結された帯状鉄心片14を、連結部13で折り曲げて螺旋状に巻回して形成した巻鉄心本体15を有している。巻鉄心本体15は、帯状鉄心片14の巻始めと巻終わりに段差17、18を有し、巻鉄心本体15の各磁極部11に上下に貫通した磁石挿入孔20が形成され、最終的には、この磁石挿入孔20に、永久磁石21(この時点では未磁化のものが使用されている)が樹脂封止されて巻積層鉄心10が構成されている。以下、巻鉄心本体15に永久磁石21を樹脂封止する方法について説明する。
【0020】
なお、巻鉄心本体15の上下に形成されている段差18、17の位置は、各連結部13に対して一定角度位置に形成されている。この実施の形態では、連結部13の中央に帯状鉄心片14の端部が形成されている。従って、磁極部11の端部と、帯状鉄心片14の端部が一致することになる。これによって、各磁極部11の円周方向中心にある磁石挿入孔20の円周方向中心位置は段差17、18(帯状鉄心片14の端部)に対して常に一定の角度位置にある。なお、19は内側開口部を示す。
【0021】
そして、巻鉄心本体15の各永久磁石21が装入された磁石挿入孔20に樹脂を充填する樹脂吐出金型が上型24に、巻鉄心本体15を支持する保持金型が下型25にそれぞれ形成されている。
巻鉄心本体15の上下には段差18、17が形成されているので、上型24の下面にはこの段差18に一致する段差26が設けられ、上型24の下面は、段差26の厚み(ピッチ)で螺旋面(円周方向傾斜面)27が形成されている。一方、下型25の上面には、段差17に一致する段差28が設けられ、下型25の上面にはこの段差28を1ピッチとする螺旋面(円周方向傾斜面)29が形成されている。これによって、巻鉄心本体15の段差18、17に上型24及び下型25の段差26、28を一致させた場合は、巻鉄心本体15が上型24と下型25に密着状態で挟まれることになる。
【0022】
上型24は、上型ホルダー30に図示しないブッシュ(又は軸受)を介して回転可能に取付けられている。そして、上型24は中央に設けられている上シャフト32及びカプリング33を介して上側回転駆動手段の一例である減速モータ(又は油圧モータ)34に連結され、減速モータ34の回転によって巻鉄心本体15を軸心を中心にして上型24が小角度回転可能となっている。
【0023】
上型24には複数の樹脂ポット36が上下に貫通して設けられ、上型24の底面には樹脂ポット36に連通する樹脂流路37が設けられ、上型24、下型25で挟まれる巻鉄心本体15の磁石挿入孔20に、樹脂ポット36からの樹脂を導くようになっている。
【0024】
各樹脂ポット36に内部の樹脂を下方に押し出すプランジャ38が設けられ、プランジャ38を昇降する図示しない油圧シリンダが設けられている。上型24は、上型ホルダー30、図示しない支持部材で上型ホルダー30に取付けられている減速モータ34、上型24に取り付けられて、プランジャ38を昇降する油圧シリンダーと共に、図示しない昇降手段によって昇降する構造となっている。
【0025】
下型25は下型ホルダー31に図示しないブッシュ(又は軸受)を介して、回転可能に取り付けられている。下型25の下部中央に設けられている下シャフト40、この下シャフト40に取付けられているカプリング41を介して下側回転駆動手段の一例である減速モータ(油圧モータ)42が設けられている。これによって、巻鉄心本体15の軸心を中心にして下型25を回転させて、下型25の段差28を巻鉄心本体15の段差17の向きに合わせることができる。
【0026】
従って、ロボットハンド等で把持されて、図示しないセンサーで段差17、18の位置が予め検出され、永久磁石21が磁石挿入孔20に挿入された巻鉄心本体15を下型25の上位置に持って来ると、減速モータ34、42が回転して、上型24及び下型25が回転し、巻鉄心本体15の段差17、18に下型25の段差28と上型24の段差26の位置を一致させる。なお、巻鉄心本体15の最下部のセグメント鉄心片12の磁石挿入孔20には、図示しない桟が設けられ、内部に装着されている永久磁石21が落下しないようにすることもできる。また、巻鉄心本体15は予め予熱装置で予熱されている。
【0027】
下型25の上に巻鉄心本体15を載せた後、上型24を昇降手段によって下降させると、上型24の底部に設けられている螺旋面27が巻鉄心本体15の上面に一致し、下型25の上面に形成されている螺旋面29が巻鉄心本体15の下面に一致する。
また、巻鉄心本体15の段差18の位置は、磁石挿入孔20の位置に対して特定角度となるので、上型24の底部に設けられている樹脂流路37の半径方向端部が磁石挿入孔20の半径方向内側部分に位置することになる。
【0028】
次に樹脂ポット36内に溜まって溶解している熱硬化性の樹脂を、プランジャ38を押し下げて押し出すと、樹脂は樹脂ポット36から樹脂流路37を通って、各磁石挿入孔20に充填され、永久磁石21を樹脂封止する。樹脂が硬化した後に、上型24を上昇させると、永久磁石21を磁石挿入孔20に樹脂封止した巻積層鉄心10が取り出せる。
【0029】
前記実施の形態において、巻鉄心本体15をロボットハンド等で保持した状態で、上型24を巻鉄心本体15の加圧はしないで載る位置まで下げて、次に減速モータ34、42を所定方向に回転し、巻鉄心本体15の段差18、17に上型24の段差26及び下型25の段差28を当接させ、この位置で上型24を更に下げて、上型24及び下型25で巻鉄心本体15を加圧するようにすることもできる。
【0030】
また、巻鉄心本体15をロボットハンド等で保持した状態で、減速モータ42のみを所定方向に回転し、巻鉄心本体15の段差17に下型25の段差28を当接させ、上型24は動かさずに、再度減速モータ42のみを所定方向に回転し、巻鉄心本体15の段差18に上型の段差26を当接又は位置合わせをして、この位置で上型24を下降させて、上型24及び下型25で巻鉄心本体15を加圧することもできる。
【0031】
続いて、
図3を参照しながら、本発明の第2の実施の形態に係る巻積層鉄心の製造方法について説明する。この実施の形態に適用する巻積層鉄心10は、第1の実施の形態に係る巻積層鉄心と同様である(
図2参照)。第1の実施の形態では巻積層鉄心10を樹脂封入時に、直接上型24、下型25で挟んでいるが、この実施の形態では、搬送治具45の上に、巻鉄心本体15を載せて、磁石挿入孔20への樹脂封止を行っている。
【0032】
搬送治具45は平面視して矩形又は円形の板部46を有し、板部46の中央には、巻鉄心本体15の内側開口部19に嵌入するガイド軸47を有している。板部46は、巻鉄心本体15の底部(下面)に形成された段差17に符合する段差49を有すると共に、段差49を1ピッチとする螺旋面50が形成されている。これによって、巻鉄心本体15の底部は、板部46の上面に密接状態で載ることになる。
【0033】
なお、巻鉄心本体15の内側開口部19の周囲に切欠き溝や、凸条を設け、内側開口部19に嵌入するガイド軸にこれに符合する凸条やキー溝を設け、巻鉄心本体15をこのガイド軸に回転しないように載せてもよい。この場合も、板部46には巻鉄心本体15の段差17に一致する段差49及び螺旋面50を設けておく。
【0034】
搬送治具45を載せる下型52の上面は、搬送治具45の下面と同様、水平面を形成し、下型52は上部の巻鉄心本体15を支持する保持金型としての役目をする。
樹脂吐出金型としての役目をする上型53は、
図1に示す第1の実施の形態に係る上型24と同一構造であるが、上型53の中央下部には、ガイド穴54が形成され、ガイド軸47の先部が嵌入するようになっている。それによって、巻鉄心本体15と上型53と下型52の位置決めが行われる。
【0035】
従って、巻鉄心本体15の上には、段差18が形成されているので、上型53の下面にはこの段差18に一致する段差26が設けられ、上型53の下面は、段差26の厚みで螺旋面(円周方向傾斜面)27が形成されている。これによって、巻鉄心本体15の段差18、17に上型53の段差26、及び搬送治具45の板部46の段差49を一致させるので、巻鉄心本体15が上型53と板部46との間に密着状態で挟まれることになる。
【0036】
上型53は上型ホルダー30に図示しないブッシュ(又は軸受)を介して回転可能に取付けられている。そして、上型53は中央に設けられている上シャフト32及びカプリング33を介して上側回転駆動手段の一例である減速モータ(又は油圧モータ)34に連結され、減速モータ34の回転によって上型53が小角度回転可能となっている。
【0037】
上型53には複数の樹脂ポット36が上下に貫通して設けられ、上型53の底面には樹脂ポット36に連通する樹脂流路37が設けられ、上型53と下型52で挟まれる巻鉄心本体15の磁石挿入孔20に、樹脂ポット36からの樹脂を導くようになっている。
【0038】
各樹脂ポット36に内部の樹脂を下方に押し出すプランジャ38が設けられ、プランジャ38を昇降する図示しない油圧シリンダが設けられている。上型53は、上型ホルダー30、図示しない支持部材で上型ホルダー30に取付けられている減速モータ34、上型53に取り付けられて、プランジャ38を昇降する油圧シリンダーと共に、図示しない昇降手段によって昇降する構造となっている。
上型53及び下型52には、内部の樹脂(通常、熱硬化性樹脂、例えば、エポキシ樹脂)を加熱するヒータが設けられている。
【0039】
続いて、第2の実施の形態に係る巻積層鉄心の製造方法について説明する。予め帯状鉄心片14を螺旋巻した巻鉄心本体15を用意する。なお、巻鉄心本体15の上下に隣り合うセグメント鉄心片12は、帯状鉄心片14を巻回しながらかしめ積層されている。
次に、巻鉄心本体15を搬送治具45に載せた状態で巻鉄心本体15を予熱する。なお、この状態で磁石挿入孔20に永久磁石21が挿入されている。そして、巻鉄心本体15の段差17は搬送治具45の板部46に形成されている段差49に符合させる。
【0040】
この搬送治具45に巻鉄心本体15を載せた状態で、下型52の上に載せる。搬送治具45と下型52は図示しないピンとこのピンが嵌入する穴部とによって位置決めがなされ、下型52の中心に巻鉄心本体15が載るようになっている。
この状態で、巻鉄心本体15の段差18の円周方向角度位置は判るので、減速モータ34を回転させて、上型53の底面(螺旋面27)に形成されている段差26と、巻鉄心本体15の上面に形成されている段差18の位置を合わせておく。
【0041】
上型53を昇降手段によって下降させると、上型53の底部に設けられている螺旋面27が巻鉄心本体15の上面に一致する。巻鉄心本体15の段差18の位置は、磁石挿入孔20の位置に対して特定角度となるので、上型53の底部に設けられている樹脂流路37の半径方向端部が磁石挿入孔20の半径方向内側部分に位置することになる。
【0042】
次に樹脂ポット36内に溜まって溶解している熱硬化性の樹脂を、プランジャ38を押し下げて押し出すと、樹脂は樹脂ポット36から樹脂流路37を通って、各磁石挿入孔20に充填され、永久磁石21を樹脂封止する。樹脂が硬化した後に、上型53を上昇させると、永久磁石21を磁石挿入孔20に樹脂封止した巻積層鉄心10が搬送治具45に載った状態で取り出せる。
【0043】
続いて、
図4を参照しながら、本発明の第3の実施の形態に係る巻積層鉄心の製造方法について説明する。この実施の形態において、搬送治具45の上に巻鉄心本体15を載せ、巻鉄心本体15を載せた搬送治具45を下型52の上に巻鉄心本体15の軸心を下型52の回転中心に合わせて載せている。
上型53は固定で、樹脂吐出金型として作用し、樹脂ポット36が複数設けられ、各樹脂ポット36に挿入された樹脂をプランジャ38で押し出し、巻鉄心本体15の磁石挿入孔20に充填するようになっている。
【0044】
この実施の形態においては、搬送治具45に巻鉄心本体15を位置合わせを行って載せた状態で、搬送治具45ごと下型52を回転させて、上型53の底部に設けられている螺旋面27を巻鉄心本体15の上面に一致させて、位置合わせを行う。
【0045】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその構成を変更することもできる。例えば、巻積層鉄心の形状、寸法、内側開口部の大きさ、段差の数等が異なる場合も本発明は適用される。
また、樹脂ポットの位置と磁石挿入孔の位置を平面視して一部重ねることによって、樹脂流路を省略することもできる。
なお、本発明の実施の形態では、金型を減速モータで所定方向に回転させ、巻鉄心本体の段差に当接させていたが、手動によって金型又は巻鉄心本体を所定方向に回転させることもできる。
【0046】
また、前記実施の形態において、一つの巻鉄心本体15の上面及び下面にはそれぞれ2の段差しかなかったが、複数条の帯状鉄心片を多条巻(通常2条巻)した場合は、巻鉄心の上面、下面にそれぞれ複数の段差が形成される。この場合でも、それぞれの段差の位置を特定して形成すれば、本発明に係る製造方法が適用可能である。
更に、前記実施の形態において、樹脂吐出金型を上型に、保持金型を下型に設けたが、樹脂吐出金型を下型に、保持金型を上型に設けることも可能である。
【符号の説明】
【0047】
10:巻積層鉄心、11:磁極部、12:セグメント鉄心片、13:連結部、14:帯状鉄心片、15:巻鉄心本体、17、18:段差、19:内側開口部、20:磁石挿入孔、21:永久磁石、24:上型、25:下型、26:段差、27:螺旋面、28:段差、29:螺旋面、30:上型ホルダー、31:下型ホルダー、32:上シャフト、33:カプリング、34:減速モータ、36:樹脂ポット、37:樹脂流路、38:プランジャ、40:下シャフト、41:カプリング、42:減速モータ、45:搬送治具、46:板部、47:ガイド軸、49:段差、50:螺旋面、52:下型、53:上型、54:ガイド穴