(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5700603
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】前掛け
(51)【国際特許分類】
A41D 13/04 20060101AFI20150326BHJP
【FI】
A41D13/04 A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-48694(P2014-48694)
(22)【出願日】2014年3月12日
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3169200号
【原出願日】2011年5月9日
(65)【公開番号】特開2014-101622(P2014-101622A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2014年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】500587805
【氏名又は名称】有限会社西山ビニール加工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西山 満
【審査官】
北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭57−147221(JP,U)
【文献】
実開昭58−072114(JP,U)
【文献】
実開昭56−146710(JP,U)
【文献】
特開平08−100307(JP,A)
【文献】
米国特許第06845516(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の正面側の胸部乃至脚部を覆うように装着される前掛けであって、
シート状の前掛本体と、
上記前掛本体の一方の側辺部の腰部対応位置から側方に延びるように設けられた伸縮可能な伸縮帯と、
を備え、
上記伸縮帯には、長さ方向に沿うように小片状の複数の第1面ファスナが間隔をおいて設けられていると共に、上記前掛本体には、他方の側辺部側に横方向に延びるように帯状の第2面ファスナが設けられており、
上記前掛本体を、着用者の正面側の胸部乃至脚部を覆うように位置付けると共に、上記伸縮帯を、着用者の背面側の腰部に巻き付け、且つ該伸縮帯に設けられた上記複数の第1面ファスナのうち少なくとも最も先端側の1つを、該前掛本体の他方の側辺部側に設けられた上記第2面ファスナに係合させることにより、着用者に装着されるように構成され、
上記前掛本体には、胸部対応部分に、縦方向に延びる縦添ロッドが設けられていると共に、該縦添ロッドが、縦方向に直列に並ぶように配設された複数のロッド材で構成されている前掛け。
【請求項2】
着用者の正面側の胸部乃至脚部を覆うように装着される前掛けであって、
シート状の前掛本体と、
上記前掛本体の一方の側辺部の腰部対応位置から側方に延びるように設けられた伸縮可能な伸縮帯と、
を備え、
上記伸縮帯には、長さ方向に沿うように小片状の複数の第1面ファスナが間隔をおいて設けられていると共に、上記前掛本体には、他方の側辺部側に横方向に延びるように帯状の第2面ファスナが設けられており、
上記前掛本体を、着用者の正面側の胸部乃至脚部を覆うように位置付けると共に、上記伸縮帯を、着用者の背面側の腰部に巻き付け、且つ該伸縮帯に設けられた上記複数の第1面ファスナのうち少なくとも最も先端側の1つを、該前掛本体の他方の側辺部側に設けられた上記第2面ファスナに係合させることにより、着用者に装着されるように構成され、
上記伸縮帯に設けられた上記複数の第1面ファスナのうち最も先端側の1つよりも、それ以外の他の第1面ファスナの方が、該伸縮帯の長さ方向の寸法が短い前掛け。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は前掛けに関する。
【背景技術】
【0002】
前掛け或いはエプロンについては多数の発明や考案が提案されている。例えば、特許文献1には、台形の本体の上端に面ファスナを用いて首に巻き付け装着可能な上部ベルトが設けられると共に、下側に面ファスナを用いて腰に巻き付け装着可能な下部ベルトが設けられた洗顔エプロンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−309418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、多様な体型に対応することができる前掛けを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、着用者の正面側の胸部乃至脚部を覆うように装着される前掛けであって、シート状の前掛本体と、該前掛本体の一方の側辺部の腰部対応位置から側方に延びるように設けられた伸縮可能な伸縮帯とを備え、該伸縮帯には、長さ方向に沿うように小片状の複数の第1面ファスナが間隔をおいて設けられていると共に、該前掛本体には、他方の側辺部側に横方向に延びるように帯状の第2面ファスナが設けられており、該前掛本体を、着用者の正面側の胸部乃至脚部を覆うように位置付けると共に、該伸縮帯を、着用者の背面側の腰部に巻き付け、且つ該伸縮帯に設けられた該複数の第1面ファスナのうち少なくとも最も先端側の1つを、該前掛本体の他方の側辺部側に設けられた該第2面ファスナに係合させることにより、着用者に装着されるように構成され
、該前掛本体には、胸部対応部分に、縦方向に延びる縦添ロッドが設けられていると共に、該縦添ロッドが、縦方向に直列に並ぶように配設された複数のロッド材で構成されている。
また、本発明は、シート状の前掛本体と、該前掛本体の一方の側辺部の腰部対応位置から側方に延びるように設けられた伸縮可能な伸縮帯とを備え、該伸縮帯には、長さ方向に沿うように小片状の複数の第1面ファスナが間隔をおいて設けられていると共に、該前掛本体には、他方の側辺部側に横方向に延びるように帯状の第2面ファスナが設けられており、該前掛本体を、着用者の正面側の胸部乃至脚部を覆うように位置付けると共に、該伸縮帯を、着用者の背面側の腰部に巻き付け、且つ該伸縮帯に設けられた該複数の第1面ファスナのうち少なくとも最も先端側の1つを、該前掛本体の他方の側辺部側に設けられた該第2面ファスナに係合させることにより、着用者に装着されるように構成され、該伸縮帯に設けられた該複数の第1面ファスナのうち最も先端側の1つよりも、それ以外の他の第1面ファスナの方が、該伸縮帯の長さ方向の寸法が短い。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、伸縮帯に設けられた複数の第1面ファスナのうち少なくとも最も先端側の1つを、前掛本体の他方の側辺部側に設けられた第2面ファスナに係合させることにより着用者に装着されるので、腰部周りの小さい着用者の場合には、第2面ファスナに係合させる第1面ファスナの数を多くし、また、腰部周りの大きい着用者の場合には、第2面ファスナに係合させる第1面ファスナの数を少なくすることができ、しかも、いずれの場合も、第2面ファスナが帯状であって、その長さ方向で第1面ファスナの係合位置の調節を行うことができ、これらにより多様な体型に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態1に係る前掛けの(a)正面図及び(b)背面図である。
【
図2】実施形態1に係る前掛けの装着状態を示す(a)正面側斜視図及び(b)背面側斜視図である。
【
図3】(a)は腰部周りの小さい着用者の場合の第1及び第2面ファスナの係合状態を示す説明図であり、(b)は腰部周りの大きい着用者の場合の第1及び第2面ファスナの係合状態を示す説明図である。
【
図4】実施形態1に係る前掛けにおける前掛本体の胸部対応部分を表面側に折り返したときの装着状態を示す正面側斜視図である。
【
図5】実施形態2に係る前掛けの(a)正面図及び(b)背面図である。
【
図6】(a)は実施形態1に係る前掛けを装着して屈んで作業する状態を示す説明図であり、(b)は実施形態2に係る前掛けを装着して屈んで作業する状態を示す説明図である。
【
図7】その他の実施形態に係る前掛けの(a)正面図及び(b)背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施形態1)
図1(a)及び(b)は実施形態1に係る前掛け10を示す。
図2(a)及び(b)は実施形態1に係る前掛け10の装着状態を示す。この実施形態1に係る前掛け10は、例えば魚市場等の水を多く使用する作業を行う場合において、衣服の汚れを防止すると共に防水のために着用者Pの正面側の胸部乃至脚部を覆うように装着されるものである。
【0009】
実施形態1に係る前掛け10は、シート状の前掛本体11を備えている。前掛本体11は、例えば、塩化ビニルシート等の樹脂シートで構成されており、縦長さが800〜1200mm、及び横長さが700〜1000mmである。
【0010】
前掛本体11は、上部の胸部対応部分11aが略横長楕円の上半分形状、及び下部の腹部乃至脚部対応部分11bが下側両角部が円弧にされた略矩形状にそれぞれ形成されており、周縁にパイピング処理が施されている。前掛本体11は、胸部対応部分11aと腹部乃至脚部対応部分11bとの間の腰部対応部分11cの裏面側に、前掛本体11と同じ材質の帯状シート12が横方向に延びるように設けられていると共にその外周部がウェルダ加工により溶接され、それによって腰部対応部分11cが補強されている。
【0011】
前掛本体11の一方の側辺部の腰部対応位置には、伸縮可能な伸縮帯13の一端部が縫い合わせられて取り付けられていると共に、伸縮帯13は前掛本体11から側方に延びるように設けられている。伸縮帯13は、例えば、衣料用の幅広ゴムで構成されており、長さが150〜300mm、及び幅が30〜70mmである。伸縮帯13の表面側には、長さ方向に沿うように小片状の一対の第1面ファスナ14a,14b(例えばフック型面ファスナ)が間隔をおいて設けられている。具体的には、伸縮帯13の最も先端側の他端部に長さ(伸縮帯13の長さ方向の寸法)が30〜70mmの第1面ファスナ14aが縫い合わせられて取り付けられていると共に、その位置から長さ30〜70mmの間隔をおいた位置に他の第1面ファスナ14bが縫い合わせられて取り付けられている。なお、第1面ファスナ14a,14bの片数は3片以上の複数であってもよい。
【0012】
前掛本体11の他方の側辺部側には、腰部対応部分11cの裏面側に側辺部から前掛本体11の内側に横方向に延びるように帯状の第2面ファスナ15(例えばループ型面ファスナ)が設けられている。具体的には、前掛本体11の他方の側辺部には、帯状シート12で補強された腰部対応部分11cに、長さ(横方向の寸法)が150〜300mmの第2面ファスナ15が縫い合わせられて取り付けられている。
【0013】
前掛本体11の胸部対応部分11aには、各々が縦方向に延びると共に横方向に間隔をおいて並行に延びる一対の縦添ロッド16が配設されている。縦添ロッド16は、例えば、弾性を有するポリエチレン樹脂等の樹脂ロッドで構成されており、長さが150〜200mm、及び幅が5〜15mmである。一対の縦添ロッド16のそれぞれは、前掛本体11の裏面側に設けられ、その上から前掛本体11と同じ材質の短冊状シート17が被せられると共にその外周部がウェルダ加工により溶接され、それによって前掛本体11と短冊状シート17との間に封入されて設けられている。なお、縦添ロッド16の数は1本であってもよく、また、3本以上であってもよい。
【0014】
前掛本体11の胸部対応部分11aにおける一対の縦添ロッド16のそれぞれが設けられた部分よりも上側の前掛本体11と短冊状シート17とが二層となった部分には鳩目18が設けられている。なお、この鳩目18は、使用後にフック掛けして吊しておくために用いられるものである。
【0015】
以上の構成の実施形態1に係る前掛け10は、前掛本体11を、着用者Pの正面側の胸部乃至脚部を覆うように位置付けると共に、伸縮帯13を、着用者Pの背面側の腰部に巻き付け、そして、伸縮帯13の表面側に設けられた一対の第1面ファスナ14a,14bのうち少なくとも最も先端側の1つ、つまり、伸縮帯13の最も先端側の他端部に第1面ファスナ14aを、前掛本体11の他方の側辺部側の裏面側に設けられた第2面ファスナ15に係合させることにより、着用者Pに装着されるように構成されている。
【0016】
このとき、腰部周りの小さい着用者Pの場合には、
図3(a)に示すように、第2面ファスナ15に一対の第1面ファスナ14a,14bの両方を係合させ、また、腰部周りの大きい着用者Pの場合には、
図3(b)に示すように、第2面ファスナ15に伸縮帯13の最も先端側の他端部に設けられた第1面ファスナ14aのみを係合させることができ、しかも、いずれの場合も、第2面ファスナ15が帯状であって、その長さ方向で第1面ファスナ14a,14bの係合位置の調節を行うことができ、これにより多様な体型に対応することができる。
【0017】
また、伸縮帯13に一対の第1面ファスナ14a,14bが間隔をおいて設けられているので、
図3(b)に示すように第2面ファスナ15に伸縮帯13の最も先端側の他端部に設けられた第1面ファスナ14aのみを係合させる場合、第2面ファスナ15に係合する伸縮帯13の最も先端側の他端部に設けられた第1面ファスナ14aと他端部以外の部分に設けられた第2面ファスナ15に係合しないそれ以外の他の第1面ファスナ14bとの間の伸縮帯13の部分を伸び代として伸縮性を有効活用することができる。この場合、伸縮帯13の最も先端側の他端部に設けられた第1面ファスナ14aを確実に第2面ファスナ15に係合させると共に、他端部以外の部分に設けられた第2面ファスナ15に係合しないそれ以外の他の第1面ファスナ14bによる伸縮帯13の伸縮性の喪失を小さく抑え、それによって伸縮帯13の伸縮性を有効活用する観点からは、伸縮帯13の最も先端側の他端部に設けられた第1面ファスナ14aよりも、他端部以外の部分に設けられたそれ以外の他の第1面ファスナ14bの方が、伸縮帯13の長さ方向の寸法が短いことが好ましい。
【0018】
さらに、前掛本体11の胸部対応部分11aには縦添ロッド16が配設されているので、実施形態1に係る前掛け10が、前掛本体11が首から提げられずに、第1及び第2面ファスナ14a,14b,15の係合のみにより着用者Pに装着されても、胸部対応部分11aが縦添ロッド16によって支持され、そのため胸部対応部分11aが自重で撓んで前垂れ状態になるのを規制することができる。なお、実施形態1に係る前掛け10は、第1及び第2面ファスナ14a,14b,15の係合に加え、鳩目18間に首提げ紐を渡し、それを首に掛けて着用者Pに装着することも可能ではあるが、着用者Pの作業性を高めると共に肩凝りを防止する観点から、第1及び第2面ファスナ14a,14b,15の係合のみにより着用者Pに装着されることが好ましい。また、この場合、
図4に示すように、使用状況に応じて前掛本体11の胸部対応部分11aを表面側に折り返せば、着用者Pの上半身の自由度が高まり、作業性をより高めることができる。
【0019】
(実施形態2)
図5(a)及び(b)は実施形態2に係る前掛け10を示す。なお、実施形態1と同一名称の部分は実施形態1と同一符号で示す。
【0020】
実施形態2に係る前掛け10では、一対の縦添ロッド16のそれぞれは、縦方向に直列に並ぶように配設された一対の短尺のロッド材16aで構成されている。ロッド材16aは、例えば、弾性を有するポリエチレン樹脂等の樹脂ロッドで構成されており、長さが80〜120mm、及び幅が5〜15mmである。一対の縦添ロッド16のそれぞれは、前掛本体11の裏面側に縦方向に直列に並ぶように一対のロッド材16aが設けられ、その上から前掛本体11と同じ材質の短冊状シート17が被せられると共にその外周部及びロッド材16a間がウェルダ加工により溶接され、それによって前掛本体11と短冊状シート17との間に封入されて設けられている。なお、縦添ロッド16は3本以上のロッド材16aで構成されていてもよい。
【0021】
実施形態1に係る前掛け10では、上記の通り、前掛本体11の胸部対応部分11aを表面側に折り返して使用することも可能であるが、例えば、その状態で屈んで作業する場合には、
図6(a)に示すように、胸部対応部分11aに設けられた単一の長尺のロッド材で構成された縦添ロッド16が支えるため、必ずしも作業性は良好とならない。しかしながら、実施形態2に係る前掛け10によれば、縦添ロッド16が一対の短尺のロッド材16aで構成されているので、屈んで作業する場合でも、
図6(b)に示すように、縦添ロッド16が、それを構成する一対のロッド材16aの間で折れ、そのため縦添ロッド16の支えが生じず、良好な作業性を得ることができる。
【0022】
また、実施形態2に係る前掛け10によれば、上側のロッド材16aと下側のロッド材16aとの間の部分で折り返して使用することも可能であり、多様な態様で使用することができる。
【0023】
その他の構成、作用効果は実施形態1と同一である。
【0024】
(その他の実施形態)
実施形態1及び2では、伸縮帯13に第1面ファスナ14a,14b及び前掛本体11に第2面ファスナ15がそれぞれ設けられた構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、
図7(a)及び(b)に示すように、前掛本体11の他方の側辺部の腰部対応位置に、非伸縮性の非伸縮帯19の一端部が縫い合わせられて取り付けられていると共に、非伸縮帯19は前掛本体11から側方に延びるように設けられ、その非伸縮帯19の裏面側に、長さ方向に沿うように帯状の第2面ファスナ15が設けられて縫い合わせられて取り付けられた構成であってもよい。この前掛け10の場合、前掛本体11を、着用者Pの正面側の胸部乃至脚部を覆うように位置付けると共に、伸縮帯及び非伸縮帯19を、着用者Pの背面側の腰部に巻き付け、そして、伸縮帯の表面側に設けられた一対の第1面ファスナ14a,14bの少なくとも1つを、非伸縮帯19の裏面側に設けられた第2面ファスナ15に係合させることにより、着用者Pに装着されるように構成されている。なお、伸縮帯の裏面側に第1面ファスナ14a,14b及び非伸縮帯19の表面側に第2面ファスナ15がそれぞれ設けられた構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は前掛けについて有用である。
【符号の説明】
【0026】
P 着用者
10 前掛け
11 前掛本体
11a 胸部対応部分
13 伸縮帯
14a,14b 第1面ファスナ
15 第2面ファスナ
16 縦添ロッド
16a ロッド材