(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記リフト力と前記作業車両が走行する速度と前記ブームの角度とに基づいて前記ブームの上昇動作を開始させ、前記ブームの上昇動作の開始時からの前記リフト力又は前記ブームの角度の増加量に基づいて、前記上昇動作を終了させる、請求項1又は請求項2に記載の作業車両。
車体と、前記車体に支持されて回動するブームと、前記ブームの前記車体側とは反対側に支持されて回動するバケットとを備えた作業車両の前記バケットの動作を制御するにあたり、
前記ブームを回動させるブーム駆動部が前記ブームから受ける力としてのリフト力と、前記作業車両が走行する速度と、に少なくとも基づいて前記バケットのチルト動作を開始させ、
前記チルト動作を開始させた後は、前記チルト動作を開始した時点からの前記リフト力が上昇した量に基づいて前記チルト動作を終了させる、作業車両の制御方法。
前記リフト力と前記作業車両が走行する速度と前記ブームの角度とに基づいて前記ブームの上昇動作を開始させ、前記ブームの上昇動作の開始時からの前記リフト力又は前記ブームの角度の増加量に基づいて、前記上昇動作を終了させる、請求項4に記載の作業車両の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
<ホイールローダー>
図1は、本実施形態に係る作業車両を示す図である。本実施形態において、作業車両として、砕石又は砕石の掘削時に発生した土砂若しくは岩石等をダンプトラック等に積載するホイールローダー1を例とする。ホイールローダー1は、フロントエンドローダーであるが、本実施形態においてホイールローダー1の形式はこれに限定されるものではない。
【0017】
ホイールローダー1は、車体2と、ブーム3及びバケット4を備える作業機5と、前輪6F及び後輪6Rと、運転室7と、ブームシリンダ9と、バケットシリンダ10とを備えている。車体2には、作業機5、前輪6F及び後輪6R並びに運転室7が取り付けられている。運転室7内には、運転席DS及び操作レバーCLが設けられている。運転席DSの背もたれDSBから操作レバーCLに向かう方向を前方といい、操作レバーCLから背もたれDSBに向かう方向を後方という。ホイールローダー1の左右は、前方を基準とする。
【0018】
前輪6F及び後輪6Rは、路面Rに接地する。前輪6F及び後輪6Rの接地面側を下方といい、前輪6F及び後輪6Rの接地面から離れる方向を上方という。前輪6F及び後輪6Rが回転することにより、ホイールローダー1は走行する。ホイールローダー1の操舵は、車体2が前輪6Fと後輪6Rとの間で屈曲することにより実現される。
【0019】
作業機5は、車体2の前部に配置される。ブーム3は、車体2の前方側に支持されて、前方に向かって延びている。ブーム3は、車体2に支持されて回動する。バケット4は、開口部4H及び爪4Cを有している。バケット4は、爪4Cが土砂又は砕石等の積載物SRをすくい取る。爪4Cがすくい取った積載物SRは、開口部4Hからバケット4の内部に入る。バケット4は、ブーム3の車体2側とは反対側に支持されて回動する。
【0020】
ブームシリンダ9は、車体2とブーム3との間に設けられている。ブーム3は、ブームシリンダ9が伸縮することによって、車体2側の支持部を中心として回動する。バケットシリンダ10は、一端部が車体2に取り付けられて支持され、他端部がベルクランク11の一端部に取り付けられている。ベルクランク11の他端部は、バケット4に連結されている。バケット4は、バケットシリンダ10が伸縮することによって、ブーム3に支持された部分を中心として回動する。
【0021】
操作レバーCLは、ブームシリンダ9及びバケットシリンダ10の伸縮を制御する。運転室7に搭乗したオペレータが、操作レバーCLを操作すると、ブームシリンダ9及びバケットシリンダ10の少なくとも一方が伸縮する。すると、ブーム3及びバケット4の少なくとも一方が回動する。このように、ブーム3及びバケット4は、オペレータが、操作レバーCLを操作することによって動作する。
【0022】
<作業機5の制御系統>
図2は、作業機の動作を制御する制御系統を示す図である。
図1に示す作業機5の動作、すなわちブーム3及びバケット4の動作を制御する制御系統CSは、作業機油圧ポンプ12と、ブーム操作弁13と、バケット操作弁14と、パイロットポンプ15と、吐出回路12Cと、電磁比例制御弁20と、制御装置40と、を含む。
【0023】
作業機油圧ポンプ12は、ホイールローダー1に搭載される動力発生源としてのエンジン(EG)16によって駆動される。エンジン16の出力は、PTO(Power Take Off)17に入力された後、作業機油圧ポンプ12とトランスミッション(TM)18とに出力される。このような構造により、作業機油圧ポンプ12は、PTO17を介してエンジン16に駆動されて、作動油を吐出する。
【0024】
変速装置18は、PTO17から伝達されたエンジン16の出力を、
図1に示す前輪6F及び後輪6Rに伝達してこれらを駆動する。このように、ホイールローダー1は、エンジン16の出力によって前輪6F及び後輪6Rが駆動されて、走行する。
【0025】
作業機油圧ポンプ12が作動油を吐出する吐出口には、作動油が通過する油路としての吐出回路12Cが接続されている。吐出回路12Cは、ブーム操作弁13とバケット操作弁14とに接続されている。ブーム操作弁13及びバケット操作弁14は、いずれも油圧パイロット式の操作弁である。ブーム操作弁13とバケット操作弁14とは、それぞれブームシリンダ9とバケットシリンダ10とに接続されている。作業機油圧ポンプ12と、ブーム操作弁13と、バケット操作弁14と、吐出回路12Cとは、タンデム形式の油圧回路を形成している。
【0026】
ブーム操作弁13は、A位置、B位置、C位置及びD位置を有する4位置切換弁である。ブーム操作弁13は、A位置になるとブーム3が上昇し、B位置になると中立、C位置になるとブーム3は下降し、D位置になるとブーム3はそのときの位置を保持する。バケット操作弁14は、E位置、F位置及びG位置を有する3位置切換弁である。バケット操作弁14は、E位置になるとバケット4がチルト動作し、F位置になると中立、G位置になるとバケット4がダンプ動作する。
【0027】
バケット4のチルト動作は、
図1に示すバケット4の開口部4H及び爪4Cが運転室7に向かって回動することにより傾く動作である。バケット4のダンプ動作は、チルト動作とは反対に、バケット4の開口部4H及び爪4Cが運転室7から遠ざかるように回動することにより傾く動作である。
【0028】
ブーム操作弁13及びバケット操作弁14のパイロット受圧部は、それぞれ電磁比例制御弁20を介してパイロットポンプ15と接続されている。パイロットポンプ15は、PTO17に接続されて、エンジン16によって駆動される。パイロットポンプ15は、電磁比例制御弁20を介して、ブーム操作弁13のパイロット受圧部13R及びバケット操作弁14のパイロット受圧部14Rに所定圧力(パイロット圧力)の作動油を与える。
【0029】
電磁比例制御弁20は、ブーム下げ電磁比例制御弁21、ブーム上げ電磁比例制御弁22、バケットダンプ電磁比例制御弁23及びバケットチルト電磁比例制御弁24を有している。ブーム下げ電磁比例制御弁21及びブーム上げ電磁比例制御弁22は、ブーム操作弁13の各パイロット受圧部13R、13Rに接続されている。バケットダンプ電磁比例制御弁23及びバケットチルト電磁比例制御弁24は、バケット操作弁14の各パイロット受圧部14R、14Rに接続されている。ブーム下げ電磁比例制御弁21のソレノイド指令部21S、ブーム上げ電磁比例制御弁22のソレノイド指令部22S、バケットダンプ電磁比例制御弁23のソレノイド指令部23S及びバケットチルト電磁比例制御弁24のソレノイド指令部24Sには、制御装置40からのそれぞれの指令信号が入力される。
【0030】
ブーム下げ電磁比例制御弁21、ブーム上げ電磁比例制御弁22、ブーム操作弁13及びブームシリンダ9は、ブーム3を回動(昇降)させるブーム駆動部としての機能を有する。バケットダンプ電磁比例制御弁23、バケットチルト電磁比例制御弁24、バケット操作弁14及びバケットシリンダ10は、バケットを回動(チルト動作又はダンプ動作)させるバケット駆動部としての機能を有する。
【0031】
制御装置40は、例えば、コンピュータである。制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)等の処理部41と、ROM(Read Only Memory)等の記憶部42と、入力部43と、出力部44とを含む。処理部41は、コンピュータプログラムに記述された各種の命令を逐次実行することにより、作業機5の動作を制御する。処理部41は、記憶部42、入力部43及び出力部44と電気的に接続されている。このような構造により、処理部41は、記憶部42に記憶されている情報を読み出したり、記憶部42に情報を書き込んだり、入力部43から情報を受け取ったり、出力部44に情報を出力したりすることができる。
【0032】
記憶部42は、作業機5の動作を制御するためのコンピュータプログラム及び作業機5の動作の制御に用いるための情報を記憶している。本実施形態において、記憶部42は、本実施形態に係る作業車両の制御方法を実現するためのコンピュータプログラムを記憶している。処理部41は、このコンピュータプログラムを記憶部42から読み出して実行することにより、本実施形態に係る作業車両の制御方法を実現する。
【0033】
入力部43には、ブーム角度検出センサ46と、バケット角度検出センサ47と、ブームシリンダ9に充填されている作動油の圧力(ボトム圧力)を検出するブームシリンダ圧力センサ48と、変速装置18を制御するTM(Trans Mission)制御装置49と、車速センサ50と、第1ポテンショメータ31と、第2ポテンショメータ33と、入出力装置45とが接続されている。処理部41は、これらの検出値又は指令値を取得して、作業機5の動作を制御する。
【0034】
車速検出装置としての車速センサ50は、ホイールローダー1が走行する速度(車速)を検出する。TM制御装置49は、変速装置18の変速段を切り替える。この場合、TM制御装置49は、車速センサ50から取得した車速及びホイールローダー1のアクセル開度等に基づいて、変速段を制御する。
【0035】
出力部44には、ブーム下げ電磁比例制御弁21のソレノイド指令部21Sと、ブーム上げ電磁比例制御弁22のソレノイド指令部22Sと、バケットダンプ電磁比例制御弁23のソレノイド指令部23Sと、バケットチルト電磁比例制御弁24のソレノイド指令部24Sと、入出力装置45とが接続されている。処理部41は、ブーム下げ電磁比例制御弁21のソレノイド指令部21S又はブーム上げ電磁比例制御弁22のソレノイド指令部22Sにブームシリンダ9を動作させるための指令値を与えて、ブームシリンダ9を伸縮させる。ブームシリンダ9が伸縮することにより、ブーム3が昇降する。処理部41は、バケットダンプ電磁比例制御弁23のソレノイド指令部23S又はバケットチルト電磁比例制御弁24のソレノイド指令部24Sにブームシリンダ9を動作させるための指令値を与えて、バケットシリンダ10を伸縮させる。バケットシリンダ10が伸縮することにより、バケット4がチルト動作又はダンプ動作する。このようにして、処理部41は、作業機5、すなわちブーム3及びバケット4の動作を制御する。
【0036】
入力部43及び出力部44の両方に接続されている入出力装置45は、入力装置45Sと、発音装置45Bと、表示装置45Mとを備えている。入出力装置45は、入力装置45Sから制御装置40に指令値を入力したり、発音装置45Bから警告音を発生させたり、表示装置45Mに作業機5の状態又は制御に関する情報を表示したりする。入力装置45Sは、例えば、押しボタン式のスイッチである。入力装置45Sが操作されることにより、表示装置45Mに表示される情報が切り替えられたり、ホイールローダー1の操作モードが切り替えられたりする。
【0037】
それぞれの入力装置45Sには、ホイールローダー1の操作モードを切り替えたり、表示装置45Mの表示を切り替えたりする機能が割り当てられる。
図2に示す例では、1つの入力装置45Sに、操作モードの1つとしての自動掘削スタートを開始させるための機能が割り当てられている。このため、本実施形態において、入力装置45Sは、自動掘削スタートスイッチ34となる。自動掘削スタートスイッチ34が操作されると、入出力装置45は、掘削スタート信号を生成する。この掘削スタート信号は、制御装置40に入力される。
【0038】
掘削スタート信号が入力されると、制御装置40は、ホイールローダー1を自動掘削モードで制御する。同時に、制御装置40は、表示装置45Mにアイコン34Iを表示する。アイコン34Iは、自動掘削モードがONになっていること示すものである。なお、入出力装置45の入力装置45Sをタッチパネルとして表示装置45に組み込み、アイコン34Iを自動掘削スタートスイッチ34に割り当ててもよい。
【0039】
操作レバーCLは、ブーム操作レバー30とバケット操作レバー32とを含む。ブーム操作レバー30には、自身の操作量を検出する第1ポテンショメータ31が取り付けられている。バケット操作レバー32には、自身の操作量を検出する第2ポテンショメータ33が取り付けられている。第1ポテンショメータ31及び第2ポテンショメータ33の検出信号は、制御装置40の入力部43に入力される。
【0040】
ブーム操作レバー30には、キックダウンスイッチ35が設けられている。キックダウンスイッチ35は、変速装置18のセレクターレバー18Lが操作されない状態で、変速装置18の変速段を、より低速段に変更する。
【0041】
キックダウンスイッチ35は、TM制御装置49に接続されている。キックダウンスイッチ35から指令値を取得したTM制御装置49は、変速装置18の変速段を、指令値を取得した時点における変速段よりも低速側に変更する。例えば、指令値を取得した時点における変速段が2段であった場合、TM制御装置49は、変速装置18の変速段を1段に変更する。本実施形態において、キックダウンスイッチ35は自動掘削スタートスイッチ34と兼用されてもよい。
【0042】
図3は、作業機を示す図である。作業機5のブーム3は、第1端部側が連結ピン3Pによって車体2にピン結合されている。ブーム3の両端部の間には、ブームシリンダ9を取り付けるためのブラケット3BRが取り付けられている。ブームシリンダ9は、第1端部が連結ピン9Paによって車体2にピン結合され、第2端部が連結ピン9Pbによってブラケット3BRにピン結合される。このような構造により、ブーム3は、ブームシリンダ9が伸縮すると、連結ピン3Pの中心軸Z1を中心として回動(昇降)する。
【0043】
バケット4は、ブーム3の第2端部側、すなわち車体2側とは反対側における端部側に、連結ピン4Paによってピン結合されている。このような構造により、バケット4は、連結ピン4Paの中心軸Z2を中心として回動する。バケットシリンダ10は、第1端部が連結ピン3Pによって車体2にピン結合され、第2端部が連結ピン11aによってベルクランク11の第1端部にピン結合される。ベルクランク11の第2端部は、連結部材11Lの第1端部と連結ピン11bによってピン結合されている。連結部材11Lの第2端部は、連結ピン4Pbによってバケット4とピン結合されている。
【0044】
ブーム3は、両方の端部の間に、ベルクランク11を支持する支持部材8が取り付けられている。ベルクランク11は、両端部の間が連結ピン11cによって支持部材8にピン結合されている。このような構造により、ベルクランク11は、連結ピン11cの中心軸Z3を中心として回動する。バケットシリンダ10が縮むと、ベルクランク11は第1端部が車体2側に移動する。ベルクランク11は、連結ピン11cの中心軸Z3を中心として回動するため、ベルクランク11の第2端部は車体2から遠ざかる方向に移動する。すると、バケット4は、連結部材11Lを介してダンプ動作する。バケットシリンダ10が伸びると、ベルクランク11は第1端部が車体2側から遠ざかる。すると、ベルクランク11の第2端部は車体2に近づくので、バケット4は連結部材11Lを介してチルト動作する。
【0045】
<ブームの角度α及びバケットの角度β>
作業機5において、ブーム3の角度(以下、適宜ブーム角度という)αは、連結ピン3Pの中心軸Z1と連結ピン4Paの中心軸Z2とを結ぶ直線L1と、連結ピン3Pを通り、かつ前輪6F及び後輪6Rの接地面と平行な水平線L2とのなす角度のうち小さい方である。本実施形態において、ブーム角度αは、水平線L2よりも路面R側に傾斜している場合は負になる。ブーム3が上昇するとブーム角度αは大きくなる。
【0046】
バケット4の角度(以下、適宜バケット角度という)βは、路面R(
図3では水平線L2が対応する)と、連結ピン4Paの中心軸Z2を通りバケット4の底面4Bに平行な直線L3とのなす角度である。本実施形態において、バケット角度βは、連結ピン4Paの中心軸Z2に対して直線L3の前方が下向きとなる場合は負になる。バケット4がチルト動作するとバケット角度βは大きくなる。
【0047】
ブーム角度αを検出するブーム角度検出センサ46は、ブーム3を車体2にピン結合する連結ピン3Pの部分に取り付けられている。バケット角度βを検出するバケット角度検出センサ47は、連結ピン11cの部分に取り付けられて、ベルクランク11を介して間接的にバケット4の角度を検出する。バケット角度検出センサ47は、ブーム3とバケット4とを連結する連結ピン4Paの部分に取り付けられてもよい。本実施形態において、ブーム角度検出センサ46及びバケット角度検出センサ47は、例えば、ポテンショメータが用いられるが、これには限定されない。
【0048】
ブーム角度検出センサ46が検出するブーム角度αは、ブーム3の姿勢を示す指標になる。このため、ブーム角度検出センサ46は、ブーム3の姿勢を検出するブーム姿勢検出装置として機能する。バケット角度検出センサ47が検出するバケット角度βは、バケット4の姿勢示す指標になる。このため、バケット角度検出センサ47は、バケット4の姿勢を検出するバケット姿勢検出装置として機能する。
【0049】
ホイールローダー1のオペレータが、ブーム操作レバー30又はバケット操作レバー32を操作すると、制御装置40は第1ポテンショメータ31又は第2ポテンショメータ33からブーム操作レバー30又はバケット操作レバー32の操作量の信号を取得する。そして、制御装置40は、この操作量の信号に対応する作業機速度制御指令を、ブーム下げ電磁比例制御弁21、ブーム上げ電磁比例制御弁22、バケットダンプ電磁比例制御弁23又はバケットチルト電磁比例制御弁24に出力する。
【0050】
ブーム下げ電磁比例制御弁21、ブーム上げ電磁比例制御弁22、バケットダンプ電磁比例制御弁23又はバケットチルト電磁比例制御弁24は、この作業機速度制御指令の大きさに応じたパイロット圧力を、対応するブーム操作弁13又はバケット操作弁14のパイロット受圧部に出力する。すると、ブームシリンダ9又はバケットシリンダ10はそれぞれのパイロット油圧に応じた速度で、対応する方向に作動する。
【0051】
<自動掘削>
ホイールローダー1は、オペレータがブーム操作レバー30及びバケット操作レバー32の少なくとも一方を操作することにより、作業機5が掘削対象を掘削する。この他にも、ホイールローダー1は、自動で掘削対象を掘削することもできる。ホイールローダー1が自動掘削を実行するにあたり、制御装置40は、自動掘削スタートスイッチ34からの掘削スタート信号を入力すると自動掘削を開始する。自動掘削において、制御装置40は、ブーム角度検出センサ46、バケット角度検出センサ47の検出値、ブームシリンダ圧力センサ48の検出値を取得する。そして、制御装置40は、取得した検出値に基づき、作業機速度制御指令を電磁比例制御弁20の各ソレノイド指令部21S、22S、23S、24Sに出力する。このようにして、制御装置40は、ブーム角度αとバケット角度βとを制御し、作業機5を自動で動作させて掘削する。このように、ホイールローダー1が自動掘削を実行する場合、制御装置40は、少なくともブーム角度検出センサ46の検出値とブームシリンダ圧力センサ48の検出値とに基づき、バケット駆動部とブーム駆動部とに指令信号を出力してブーム3及びバケット4の少なくとも一方の姿勢を自動で制御する。
【0052】
自動掘削において、オペレータがキックダウンスイッチ35を操作すると、TM制御装置49は、変速装置18の変速段をより変速比の大きい変速段に変更する。その結果、ホイールローダー1の駆動力は大きくなるので、掘削効率が向上する。前述したように、自動掘削スタートスイッチ34とキックダウンスイッチ35とを兼用すると、自動掘削の開始と同時に変速装置18の変速段がより変速比の大きい変速段に変更されるので、掘削作業が容易かつ効率的に実現できる。
【0053】
自動掘削機能を有するホイールローダー1は、ホイールローダー1による掘削作業において、オペレータの負担を軽減することができる。未熟なオペレータでも熟練者に近い作業を可能とするために、ホイールローダー1の自動掘削機能をさらに高度化することが望まれている。
【0054】
ホイールローダー1は、牽引力によって掘削対象を掘削する。掘削作業は、例えば、作業機5を掘削対象に進入させた後、ホイールローダー1のオペレータが、バケット4及びブーム3を操作することによってホイールローダー1の牽引力を適切に調整しながらバケット4に土砂類を積み込む作業である。ホイールローダー1の掘削作業において、熟練したオペレータは、ホイールローダー1の操作及び挙動を通じて掘削の状態を把握し、適切なタイミングでバケット4及びブーム3を操作することにより、掘削状態に応じた適切な牽引力をホイールローダー1に発揮させていると考えられる。
【0055】
本発明者らは、掘削時におけるホイールローダー1の動作及び各部の状態等を詳細に検討した。その結果、本発明者らは、ブーム3のリフト力は、ホイールローダー1の牽引力と相関が高いことを見出した。そして、本発明者らは、ホイールローダー1の生産効率の向上には、ブーム3のリフト力に基づいて、バケット4のチルト動作のタイミング及びブーム3のリフトのタイミングを決定すること、特にチルト動作を終了させるタイミングが重要であることが有効であることを見出した。本実施形態において、リフト力は、ブーム駆動部、具体的にはブームシリンダ9がブーム3から受ける力である。生産効率は、単位時間あたりにおけるホイールローダー1の掘削量である。
【0056】
本実施形態において、ホイールローダー1は、自動掘削において、リフト力に基づいてバケット4のチルト動作を終了させる。具体的には、ホイールローダー1が自動掘削を実行するにあたり、制御装置40は、所定の条件が成立したときにはバケット4のチルト動作を開始し、チルト動作を開始した時点からリフト力が上昇した量に基づいて、チルト動作を終了させる。このようにすると、ホイールローダー1は、自動掘削において、適切なタイミングでバケット4のチルト動作を終了させることができるので、オペレータの熟練度に関わらず、ホイールローダー1の生産効率を向上させて、熟練者に近い生産効率を実現することができる。
【0057】
<作業車両の制御方法>
図4、
図5及び
図6は、本実施形態に係る作業車両の制御方法における処理の一例を示すフローチャートである。
図7は、本実施形態に係る作業車両の制御方法におけるタイミングチャートである。
図8は、自動掘削時にバケットチルト電磁比例制御弁を開く時間(ON時間)と閉じる時間(OFF時間)とを説明するための図である。
図7中、上段のタイミングチャートの縦軸はブーム角度α及び自動リフト指令OPaであり、横軸は時間tである。
図7中、下段のタイミングチャートの縦軸は、バケット角度β、自動チルト指令OPb、ボトム圧力Pb及び車速Vcであり、横軸は時間tである。
図7において、自動リフト指令OPa及び自動チルト指令OPbは、いずれもON状態とOFF状態とが示される。本実施形態に係る作業車両の制御方法は、自動で掘削作業を行うときにおけるホイールローダー1の制御方法、特に作業機5の制御方法である。
【0058】
本実施形態の自動掘削制御は、処理の状態をステージという概念で区別する。本実施形態において、ステージは、0から6まで存在する。ステージ0は自動掘削制御の終了の状態、ステージ1は自動掘削制御の開始条件を判定する状態、ステージ2は自動リフト中に自動リフトの終了判定中の状態、ステージ3は自動チルト待機中の状態、ステージ4は自動チルト開始条件判定中の状態、ステージ5は自動チルト動作中の状態、ステージ6は自動チルト動作終了条件判定中の状態である。
【0059】
ステップS101において、
図2に示す制御装置40の処理部41は、ホイールローダー1が自動掘削制御中であるか否かを判定する。ステージが0よりも大きい場合、処理部41は、自動掘削制御中であると判定する。ステージが0である場合、処理部41は、自動掘削制御中ではないと判定する。ステージが0である場合、すなわち自動掘削制御中でない場合(ステップS101、No)、処理部41は、自動掘削モードがON、すなわち起動しているか否かを判定する。処理部41は、例えば、
図2に示す自動掘削スタートスイッチ34が操作されたことを検出した場合、自動掘削モードがONになっていると判定する。
【0060】
自動掘削モードがONになっている場合(ステップS102、Yes)、ステップS103において、処理部41は、例えば、
図2に示す入出力装置45の表示装置45Mに、自動掘削モードがONになっていることを表示する。次に、ステップS104に進み、処理部41は、条件1が成立したか否かを判定する。条件1は、ホイールローダー1が前進かつバケット4が接地している場合である。処理部41は、例えば、
図2に示すセレクターレバー18L又はTM制御装置49から前進信号を検出した場合、ホイールローダー1が前進していると判定する。また、処理部41は、
図2に示すブーム角度検出センサ46の検出値が判定値aよりも小さい場合、バケット4が接地していると判定する。判定値aは限定されるものではないが、本実施形態では−30度としている。
【0061】
条件1が成立した場合(ステップS104、Yes)、ステップS105において、処理部41はキックダウン条件が成立したか否かを判定する。キックダウン条件は、
図2に示す変速装置18の変速モードが自動変速モードかつTM制御装置49にキックダウン指令があった場合又は変速装置18の変速段が1段かつ示すキックダウンスイッチ35がONになった場合に成立する。キックダウン条件が成立した場合(ステップS105、Yes)、ステップS102、ステップS104及びステップS105の条件がすべて満たされたことになるので、自動掘削制御が開始される。
図7のタイミングチャートでは、時間tが0で自動掘削制御が開始される。
【0062】
ステップS106において、処理部41は、ステージの書き換え処理を実行する。ステップS106以降において自動掘削制御が実行されることになるので、ステップS106において、処理部41は、ステージを1に書き換えて、自動掘削制御の状態を、自動リフト条件の判定中に遷移させる。
図7のタイミングチャートでは、時間t=0で自動掘削制御が開始する。
図7中の矢印ADCで示す期間に、自動掘削制御が行われる。
【0063】
次に、処理部41は、ステップS107に進み、自動掘削制御の終了条件が成立しているか否かを判定する。本実施形態において、次に示す(1)から(8)のうちのいずれか1つが成立した場合、自動掘削制御の終了条件が成立する。
(1)自動掘削モードがOFF(自動掘削モードの起動停止)である場合
(2)前進信号以外が検出された場合
(3)バケット4のチルトエンドが検出されてから所定時間(本実施形態では0.5秒)経過した後である場合
(4)ブーム角度αが所定角度以上(本実施形態では0度以上)である場合
(5)作業機5がロックされている場合
(6)センサ又は作業機5の制御系統CSに不具合が発生した場合
(7)ブーム操作レバー30の操作量が、ブーム3を下降させる方向において所定量よりも大きい場合
(8)バケット操作レバー32の操作量が、バケット4をダンプ動作させる方向において所定量よりも大きい場合
【0064】
自動掘削制御の終了条件が成立していない場合(ステップS107、No)、ステップS108において、処理部41は、ステージが1であるか否かを判定する。ステージが1である場合(ステップS108、Yes)、処理部41は、ステップS109において条件2が成立するか否かを判定する。条件2は、ブーム3の自動リフト(上昇)を開始させるための条件である。本実施形態において、条件2は、ボトム圧力Pbが判定値bよりも大きい状態が所定時間ta以上継続し、かつブーム角度αが判定値cよりも小さく、かつ車速Vcが判定値dよりも小さい状態が所定時間tb以上継続したときに成立する。
【0065】
このように、処理部41は、リフト力、すなわちボトム圧力Pbと車速Vcとブーム角度αとに基づいて、ブーム3の上昇動作を開始させる。このように、本実施形態は、ボトム圧力Pbを用いてブーム3の自動リフトの開始条件を判定するため、ホイールローダー1が牽引力を発揮できるタイミングを適切に判定することができる。
【0066】
本実施形態において、判定値bは6MPa、判定値cは−10度であるが、これらの値には限定されない。所定時間ta、tbは限定されるものではないが、本実施形態ではいずれも0.1秒である。本実施形態において、所定時間ta、tbは同一であるが、両者は異なっていてもよい。
【0067】
条件2が成立した場合(ステップS109、Yes)、ステップS110で、処理部41は、ブーム3の自動リフトを実行し、ステージの書き換え処理を実行する。
図7のタイミングチャートでは、時間t=T1で自動リフトが開始される。自動リフトを実行するにあたって、処理部41は、
図2に示すブーム上げ電磁比例制御弁22のソレノイド指令部22Sに自動リフト指令を与える。すると、ブームシリンダ9が伸びることにより、ブーム3が上昇する。自動リフト指令は、ブーム上げ電磁比例制御弁22の全閉を0%、全開を100%とした百分率で指令するものである。
図7中の符号OPaは、自動リフト指令に対応する。条件2が成立すると、処理部41は、ステージを2に書き換えて、自動掘削制御の状態を、自動リフト中における自動リフトの終了判定中に遷移させる。次に、ステップS111において、処理部41は、ステージが2であるか否かを判定する。
【0068】
ステージが2である場合(ステップS111、Yes)、処理部41は、ステップS112において条件3が成立するか否かを判定する。条件3は、ブーム3の自動リフトを終了させるための条件である。本実施形態において、条件3は、ブーム3が自動リフトを開始した時点からブーム角度αが増加した量が判定値fよりも大きい場合又はボトム圧力Pbが判定値gよりも大きい状態が所定時間tc以上継続した場合に成立する。本実施形態において、判定値fは3度、判定値gは30MPaであるが、これらの値には限定されない。所定時間tcは限定されるものではないが、本実施形態では0.1秒である。
【0069】
本実施形態は、ブーム3の上昇動作の開始時からのリフト力、すなわちボトム圧力Pb又はブームの角度αの増加量に基づいて、前記上昇動作を終了させる。このように、処理部41は、ボトム圧力Pb又はブーム角度αの増加量を用いてブーム3の自動リフトの終了条件を判定するため、ホイールローダー1が発生する牽引力が適切な大きさになった時点で自動リフトを終了させ、自動チルト動作に移行させることができる。
【0070】
条件3が成立した場合(ステップS112、Yes)、処理部41は、ステップS113で、ブーム3の自動リフトを終了し、ステージの書き換え処理を実行する。
図7のタイミングチャートでは、t=t2で自動リフトが終了している。
図7から分かるように、自動リフトの終了後は、自動リフトの開始前と比較してブーム角度αは増加している。また、
図7から分かるように、自動リフト中にボトム圧力Pbは上昇している。条件3が成立すると、処理部41は、ステージを3に書き換えて、自動掘削制御の状態を、自動チルト動作の待機中に遷移させる。次に、
図5に示すステップS114において、処理部41は、ステージが3であるか否かを判定する。なお、
図4のvは、
図5のvに対応する。
【0071】
ステージが3である場合(ステップS114、Yes)、ステップS115で、処理部41は、自動チルト指令を0%に設定して、バケットチルト電磁比例制御弁24のソレノイド指令部24Sに出力する。自動チルト指令は、バケットチルト電磁比例制御弁24を所定の開度で開弁させるための指令である。自動チルト指令は、バケットチルト電磁比例制御弁24の全閉を0%、全開を100%とした百分率で指令するものである。
【0072】
自動チルト指令は、
図8の開閉弁パターンに示すように、バケットチルト電磁比例制御弁24を開弁させるON時間Δt1と、バケットチルト電磁比例制御弁24を閉弁させるOFF時間Δt2とを組み合わせた指令である。ON時間Δt1とOFF時間t2とは、例えば、自動チルトの回数に応じて予め設定され、自動チルト周期テーブルとして、
図2に示す制御装置40の記憶部42に記憶されている。
【0073】
ステップS116に進み、処理部41は、これから実行される自動チルト動作の回数に対応したOFF時間Δt2を、前述した自動チルト周期テーブルから読み出す。そして、処理部41は、OFF時間Δt2が経過したか否かを判定する。このような処理によって、本実施形態において、処理部41は、ブーム3の自動リフトを終了させるための条件3が成立した後、所定時間が経過するまでは自動チルト動作を実行しない。
【0074】
OFF時間Δt2が経過すると(ステップS116、Yes)、処理部41は、ステップS117で、ステージを4に書き換えて、自動掘削制御の状態を、自動チルト動作の開始条件判定中に遷移させる。OFF時間Δt2が経過しない場合(ステップS116、No)、処理部41は、OFF時間Δt2が経過するまで待機する。
【0075】
ステップS118において、処理部41は、ステージが4であるか否かを判定する。ステージが4である場合(ステップS118、Yes)、ステップS119で、処理部41は、条件4が成立したか否かを判定する。条件4は、自動チルト動作を開始するための条件である。本実施形態において、条件4は、ボトム圧力Pbが判定値jよりも大きい状態が所定時間td以上継続し、かつ車速Vcが判定値kよりも小さい状態が所定時間te以上継続した場合に成立する。本実施形態において、判定値jは16MPa、判定値kは時速2kmであるが、これらの値には限定されない。所定時間td、teは限定されるものではないが、本実施形態ではいずれも0.1秒である。本実施形態において、所定時間td、teは同一であるが、両者は異なっていてもよい。
【0076】
条件4が成立した場合(ステップS119、Yes)、ステップS120において、処理部41は、ステージを5に書き換えて、自動掘削制御の状態を、自動チルト動作中に遷移させる。また、ステップS120において、処理部41は、
図2に示すブームシリンダ圧力センサ48から、ボトム圧力Pbを取得する。このボトム圧力Pbは、自動チルト動作を開始した時点におけるボトム圧力Pbであり、自動チルト動作を開始したときのリフト力に対応する。
【0077】
前述したように、処理部41は、リフト力検出装置の検出結果、すなわちブームシリンダ圧力センサ48の検出結果であるボトム圧力Pbと、車速センサ50の検出結果である車速Vcとに基づいて、バケット4の自動チルト動作を開始させる。このように、ホイールローダー1の牽引力と相関が高いリフト力に対応するボトム圧力Pbと車速Vcとを用いることにより、処理部41は、ホイールローダー1の牽引力が飽和したタイミングを比較的容易かつ確実に知ることができる。その結果、処理部41は、適切なタイミングでバケット4を自動でチルト動作させることができるので、効率的な荷積み作業を実現できる。このため、ホイールローダー1は、生産性が向上する。
【0078】
次に、ステップS121において、処理部41は、ステージが5であるか否かを判定する。ステージが5である場合(ステップS121、Yes)、ステップS122で、処理部41は、自動チルト指令をpに設定して、バケットチルト電磁比例制御弁24のソレノイド指令部24Sに出力する。本実施形態において、pは100%である。自動チルト指令がバケットチルト電磁比例制御弁24のソレノイド指令部24Sに出力されることにより、バケット4は自動チルト動作を開始する。
図7に示すタイミングチャートでは、時間t=t3で自動チルト動作が開始している。
図7中の符号OPbは、自動チルト指令に対応する。
【0079】
次に、ステップS123に進み、処理部41は、これから実行される自動チルト動作の回数に対応したON時間Δt1を、前述した自動チルト周期テーブルから読み出す。そして、処理部41は、ON時間Δt1が経過したか否かを判定する。ON時間Δt1が経過したら(ステップS123、Yes)、処理部41は、ステップS124において、処理部41は、ステージを6に書き換えて、自動掘削制御の状態を、自動チルト動作の終了条件判定中に遷移させる。
【0080】
ステップS125に進み、処理部41は、ステージが6であるか否かを判定する。ステージが6である場合(ステップS125、Yes)、ステップS126で、処理部41は、条件5が成立したか否かを判定する。条件5は、自動チルト動作を終了させるための条件である。本実施形態において、条件5は、ボトム圧力Pbが判定値jよりも大きく、かつバケット4が自動チルト動作を開始した時点におけるボトム圧力Pbからのボトム圧力Pbの上昇量ΔPbが判定値mよりも大きい場合又は車速Vcが判定値nよりも大きい状態が所定時間tf以上継続した場合に成立する。本実施形態において、判定値mは4MPa、判定値kは時速2kmであるが、これらの値には限定されない。所定時間tfは限定されるものではないが、本実施形態では0.1秒である。
【0081】
条件5が成立した場合(ステップS126、Yes)、
図6に示すステップS127において、処理部41は、自動チルト指令を0%に設定して、バケットチルト電磁比例制御弁24のソレノイド指令部24Sに出力する。また、処理部41は、ステップS128で、現在の自動チルト動作の回数に1を加算する。0%の自動チルト指令がバケットチルト電磁比例制御弁24のソレノイド指令部24Sに与えられることにより、バケットシリンダ10の動作は停止し、バケット4の自動チルト動作は終了する。
図7においては、時間t=t4で自動チルト動作が終了している。ステップS128で、現在の自動チルト動作の回数に1が加算されるのは、ステップS122において、自動チルト動作が実行されているからである。なお、
図4のxは、
図5のxに対応する。
【0082】
前述したように、処理部41は、バケット4がチルト動作を開始した時点からのボトム圧力Pbの上昇量ΔPbに基づいてチルト動作を終了させる。すなわち、処理部41は、ホイールローダー1の牽引力と相関が高いリフト力に対応するボトム圧力Pbに基づいてチルト動作を終了させて、ホイールローダー1の牽引力による掘削動作に移行させる。このため、ホイールローダー1の作業機5をチルト動作から掘削動作へ適切なタイミングで移行させることができるので、効率的な荷積み作業を実現できる。このため、ホイールローダー1は、生産性が向上する。
【0083】
また、本実施形態において、処理部41は、ボトム圧力Pbの上昇量ΔPbに加え、車速Vcを用いてチルト動作を終了させるタイミングを決定する。車速Vcも、ホイールローダー1の牽引力と相関がある。このため、処理部41は、車速Vcを用いることにより、ホイールローダー1の作業機5をチルト動作から掘削動作へより適切なタイミングで移行させることができるので、さらに効率的な荷積み作業を実現できる。
【0084】
次に、ステップS128に進み、処理部41は、ステージを3に書き換えて、自動掘削制御の状態を、自動チルト動作の待機中に遷移させる。ステップS129において、処理部41は、ステージが0であるか否かを判定する。ステージが0でない場合(ステップS129、No)、処理部41は、ステップS130で、ブーム指令を現在のレバー指令に現在の自動リフト指令を加算した値に設定する。また、処理部41は、ステップS131で、バケット指令を現在のレバー指令に現在の自動チルト指令を加算した値に設定する。本実施形態において、ステップS130とステップS131とを実行する順序は問わない。レバー指令は、ブーム操作レバー30又はバケット操作レバー32の操作量から求められた、ブーム操作弁13の開度又はバケット操作弁14の開度を決定するための指令である。
【0085】
ステップS132において、処理部41は、条件6が成立したか否かを判定する。条件6は、自動掘削制御中にチルトエンドが検出された後、所定時間tgが経過した場合に成立する。条件6は、自動掘削制御による掘削が終了したことの条件である。所定時間tgは限定されるものではないが、本実施形態では0.5秒である。チルトエンドは、バケットシリンダ10が伸び切り、バケット4がこれ以上チルト動作できなくなった状態である。チルトエンドは、例えば、バケット角度検出センサ47が検出する。
図7のタイミングチャートでは、t=t10でバケット4がチルトエンドに到達している。
【0086】
条件6が終了すると(ステップS132、Yes)、ステップS133で、処理部41は、例えば、
図2に示す入出力装置45の発音装置45Bから、自動掘削制御による掘削が完了したことを示す音を発音させる。この音が発音装置45Bから発音されることで、ホイールローダー1のオペレータは、自動掘削制御による掘削が完了したことを知ることができる。
【0087】
次に、処理部41は、ステップS134において、自動掘削制御を終了させるか否かを判定する。例えば、ホイールローダー1のオペレータが自動掘削モードをOFF、すなわち自動掘削モードを解除した場合又はブーム操作レバー30若しくはバケット操作レバー32を所定量操作した場合等は、オペレータの操作を優先させて処理部41が自動掘削制御を終了させる。
【0088】
例えば、オペレータの前述したような操作がなかった場合、処理部41は、自動掘削制御を終了させない(ステップS134、No)。この場合、処理部41は、スタートに戻ってステップS101以降の処理を実行する。また、例えば、オペレータの前述したような操作があった場合、処理部41は、自動掘削制御を終了させる(ステップS134、Yes)。この場合、処理部41は、ステージがどのような状態にあっても0に書き換える。その後、処理部41は、ステップS135において、例えば、
図2に示す入出力装置45の発音装置45Bから、自動掘削制御が未完で終了したことを示す音を発音させる。この音が発音装置45Bから発音されることで、ホイールローダー1のオペレータは、自身の操作等によって自動掘削制御が中途で終了したことを知ることができる。
【0089】
本実施形態において、自動掘削制御による掘削が完了したときの音と、自動掘削制御が未完で終了したときの音とを異ならせる。このようにすることで、オペレータは、自動掘削制御による掘削が完了したことと、自動掘削制御が未完で終了したこととを区別することができる。ステップS135が終了したら、処理部41は、スタートに戻ってステップS101以降の処理を実行する。
【0090】
次に、ステップS101において肯定、すなわちYesの判定がされた場合を説明する。ステップS101において、ステージが0でない場合、すなわち自動掘削制御中である場合(ステップS101、Yes)、処理部41は、自動掘削制御中であるか否かの判定をする必要はない。このため、処理部41は、ステップS107に進み、ステップS107以降の処理を実行する。
【0091】
次に、ステップS102において否定、すなわちNoの判定がされた場合を説明する。ステップS102において、自動掘削モードがOFFになっている場合(ステップS102、No)、処理部41は、ステップS136において、例えば、
図2に示す入出力装置45の表示装置45Mから、自動掘削モードがONになっていること示すインジケータとしてのアイコン34Iを消去する。このようにすることで、ホイールローダー1のオペレータは、自動掘削モードがOFFになっていることを認識しやすくなる。
【0092】
処理部41は、ステップS136の処理を実行したらステップS137に進む。ステップS137において、処理部41は、自動掘削制御を終了させる。処理部41は、自動掘削制御を終了させる場合、ステージを0に書き換える。そして、処理部41は、自動リフト指令、自動チルト指令及び自動チルト動作を実行した回数を、いずれもリセットする。本実施形態において、処理部41は、自動リフト指令を0%及び自動チルト指令を0%に、自動チルト動作を実行した回数を0回に設定することにより、これらをリセットする。ステップS136が終了したら、処理部41は、ステップS129に進み、ステップS129以降の処理を実行する。なお、
図4のwは、
図6のwに対応する。
【0093】
次に、ステップS104において否定、すなわちNoの判定がされた場合について説明する。この場合は、条件1が成立しなかった場合なので(ステップS104、No)、自動掘削制御は実行されない。このため、処理部41は、ステップS137以降の処理を実行する。次に、ステップS105において否定、すなわちNoの判定がされた場合について説明する。この場合は、キックダウン条件が成立しなかった場合なので(ステップS105、No)、自動掘削制御は実行されない。このため、処理部41は、ステップS137以降の処理を実行する。
【0094】
次に、ステップS107において肯定、すなわちYesの判定がされた場合について説明する。この場合は、自動掘削制御を終了させる条件が成立した場合なので(ステップS107、Yes)、以後は自動掘削制御が実行されない。このため、処理部41は、ステップS137以降の処理を実行する。例えば、ステップS132における条件6が成立し、かつオペレータによる自動掘削モードの解除等が発生しない場合、処理部41は、ステップS132以後、ステップS133を処理、ステップS134でNo判定、ステップS101でYes判定となって、ステップS107に至る。ステップS132で判定される条件6は、前述した自動掘削モードの終了条件の(3)が成立したことを含んでいる。このため、処理部41は、ステップS107において自動掘削制御を終了させる条件が成立したと判定し(ステップS107、Yes)、ステップS137以降の処理を実行する。
【0095】
次に、ステップS108において否定、すなわちNoの判定がされた場合、ステージは1以外である。処理部41は、ステップS111以降の処理、すなわちブーム3の自動リフトの終了判定を実行する。次に、ステップS109において否定、すなわちNoの判定がされた場合について説明する。この場合は、条件2が成立しなかった場合であり、ブーム3の自動リフトを開始させないことになる。処理部41は、ステップS129以降の処理を実行する。次に、ステップS111において否定、すなわちNoの判定がされた場合は、ステージが2以外である。この場合、処理部41は、ステップS114以降の処理を実行する。
【0096】
次に、ステップS112において否定、すなわちNoの判定がされた場合について説明する。この場合は、条件3が成立しなかった場合であり、ブーム3の自動リフトは終了させないことが判定されている。この場合、処理部41は、ステップS138に処理を進める。ステップS138において、処理部41は、ブーム操作レバー30の中立が所定時間th継続したか否かを判定する。本実施形態において、所定時間thは0.1秒であるが、これには限定されない。
【0097】
ブーム操作レバー30の中立が所定時間th継続した場合(ステップS138、Yes)、処理部41は、ステップS139において、自動リフトの指令をhに設定する。本実施形態においてhは60%であるが、これに限定されない。ブーム操作レバー30の中立が所定時間th継続しなかった場合(ステップS138、No)、ホイールローダー1のオペレータがブーム操作レバー30を操作したことになる。この場合は、オペレータの操作を優先させるため、処理部41は、ステップS140において、自動リフトの指令を0%に設定する。処理部41は、ステップS139又はステップS140で自動リフトの指令を設定したら、ステップS129以降の処理を実行する。
【0098】
次に、ステップS114において否定、すなわちNoの判定がされた場合、処理部41は、バケット4の自動チルト動作の待機中か否かを判定する必要はない。この場合、処理部41は、ステップS118以降の処理を実行する。ステップS116において否定、すなわちNoの判定がされた場合、OFF時間Δt2は経過していない。この場合も、処理部41は、ステップS118以降の処理を実行する。
【0099】
ステップS118において否定、すなわちNoの判定がされた場合、処理部41は、バケット4の自動チルト動作の開始を判定する必要はない。この場合、処理部41は、ステップS121以降の処理を実行する。ステップS119において否定、すなわちNoの判定がされた場合、バケット4の自動チルト動作の開始条件は成立しないと判定されている。この場合、処理部41は、ステップS121以降の処理を実行する。
【0100】
ステップS121において否定、すなわちNoの判定がされた場合、自動チルト動作中ではない。この場合、処理部41は、ステップS125以降の処理を実行する。ステップS123において否定、すなわちNoの判定がされた場合、ON時間Δt1が経過していない。この場合も、処理部41は、ステップS125以降の処理を実行する。
【0101】
ステップS125において否定、すなわちNoの判定がされた場合、自動チルト動作の終了条件判定中ではない。この場合、処理部41は、条件5を判定せずに、ステップS129以降の処理を実行する。ステップS126において否定、すなわちNoの判定がされた場合、自動チルト動作を終了させる条件は成立していない。この場合も、処理部41は、ステップS129以降の処理を実行する。
【0102】
ステップS129において肯定、すなわちYesの判定がされた場合、ステージは0である。すなわち、自動掘削制御は終了している。また、ステップS132において否定、すなわちNoの判定がされた場合、自動掘削制御による掘削が終了していない。これらの場合、処理部41は、ステップS134以降の処理を実行する。
【0103】
本実施形態では、ボトム圧力Pb及び車速に基づいてバケット4のチルト動作が開始され、ボトム圧力Pbの上昇量ΔPbに基づいて自動チルト動作が終了する。このチルト動作の開始と停止とは、バケット4がチルトエンドに到達するまで繰り返される。
図7のタイミングチャートでは、時間t=t5、t7、t9でバケット4のチルト動作が開始し、時間t=t6、t8、t10でバケット4のチルト動作が終了する。このように、処理部41は、自動掘削制御において、バケット4のチルト動作とその停止とを繰り返すことができるので、オペレータによるホイールローダー1の掘削作業を模擬できる。
【0104】
本実施形態は、ブーム3が受ける力としてのリフト力に基づいて自動掘削時におけるバケット4及びブーム3の動作を自動で制御する。リフト力は、ホイールローダー1の牽引力と相関が高いため、自動掘削制御にリフト力を利用すれば、ホイールローダー1の牽引力を有効に掘削に利用できる。その結果、本実施形態は、ホイールローダー1のオペレータの熟練度に関わらず、掘削作業時の生産性を高い水準に維持することができる。
【0105】
特に、本実施形態は、自動掘削制御を実行しているときにバケット4を自動でチルト動作させる場合、ブーム3のリフト力に基づいてチルト動作を終了させる。このような処理によって、本実施形態は、牽引力が有効に利用できるタイミングにおいてもバケット4のチルト動作を継続させるような無駄な動作を低減できるので、オペレータの熟練度に関わらず、掘削作業時の生産効率を熟練者に近い高い水準に維持することができる。
【0106】
また、本実施形態は、ブーム3が受ける力としてのリフト力に基づいて自動掘削時におけるバケット4及びブーム3の動作を自動で制御するため、現場毎にそれぞれ異なる堆積物の種類若しくは質又は形状に対して柔軟に対応することができる。このため、本実施形態は、自動掘削において、掘削作業時の生産効率を向上させることができる。また、本実施形態は、現場毎に熟練したオペレータの掘削作業を記憶装置に記憶させる必要はないので、掘削作業を効率よく行うことができる。
【0107】
熟練者、中堅者、初心者をオペレータとして、ホイールローダー1の自動掘削による生産性と、ホイールローダー1をマニュアル操作することによる掘削の生産性とを比較した。砕石の場合、マニュアル操作による生産性は、熟練者が2ton/秒、中堅者が1.75ton/秒、初心者が1.4ton/秒であった。これに対し、ホイールローダー1の自動掘削による生産性は、熟練者が1.6ton/秒、中堅者が1.9ton/秒、初心者が1.8ton/秒であった。この結果から分かるように、ホイールローダー1の自動掘削を用いることにより、中堅者及び初心者であっても、熟練者のマニュアル操作並の生産性を実現できた。
【0108】
爆砕石の場合、マニュアル操作による生産性は、熟練者が3.2ton/秒、中堅者が2ton/秒、初心者が1.9ton/秒であった。これに対し、ホイールローダー1の自動掘削による生産性は、熟練者が2.3ton/秒、中堅者が2.5ton/秒、初心者が2.3ton/秒であった。この結果から分かるように、ホイールローダー1の自動掘削を用いることにより、オペレータの熟練度に関わらず、同程度の生産性を実現できた。また、中堅者及び初心者は、熟練者のマニュアル操作に近い生産性を実現できた。
【0109】
以上、本実施形態を説明したが、前述した内容により本実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
ホイールローダー1は、車体2と、ブーム3と、バケット4と、ブームシリンダ9と、バケットシリンダ10と、ブーム角度検出センサ46と、バケット角度検出センサ47と、ブームが受ける力としてのリフト力を検出するブームシリンダ圧力センサと、を備える。ホイールローダー1は、所定の条件が成立したときにはバケット4のチルト動作を開始し、チルト動作を開始した時点からリフト力が上昇した量に基づいてチルト動作を終了させる。