特許第5700647号(P5700647)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5700647
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】アンダーカバー
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20150326BHJP
   B60R 21/34 20110101ALI20150326BHJP
【FI】
   B62D25/20 N
   B60R21/34 691
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-8146(P2011-8146)
(22)【出願日】2011年1月18日
(65)【公開番号】特開2012-148655(P2012-148655A)
(43)【公開日】2012年8月9日
【審査請求日】2014年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091948
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 武男
(72)【発明者】
【氏名】木村 文彦
【審査官】 田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−179118(JP,U)
【文献】 特開2012−081856(JP,A)
【文献】 実開平04−133990(JP,U)
【文献】 特開2008−030523(JP,A)
【文献】 特開平11−180233(JP,A)
【文献】 特開2010−095045(JP,A)
【文献】 特開2005−178565(JP,A)
【文献】 特開2008−265417(JP,A)
【文献】 米国特許第05803533(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00−25/08
B62D 25/14−29/04
B60R 21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部又は車両後部における車体下部に固着され、前記車体下部を平面化して前記車体下部を覆うアンダーカバーであって、
車両前後方向における前記アンダーカバーの中間部の部位に、車幅方向に沿った幅寸法を有し、上方に突出した少なくとも一つ以上の突出部が設けられ、
前記アンダーカバーの車両前後方向への変形時に前記突出部が当接する車体構造部材の当接部位と前記突出部の当接部位との間が、車両前後方向において所定寸法離間して配設され、
前記突出部の高さ位置が、前記変形時に前記突出部が当接する前記車体構造部材の当接部位の高さ位置よりも高い位置に構成されてなり、
前記突出部よりも車両後部側における前記アンダーカバーの部位が、前記変形時に前記突出部が当接する前記車体構造部材の下方に配されてなり、
前記突出部における前記車体構造部材に対峙する面が、前記車体構造部材から離れる方向に向かって下り傾斜の傾斜面として形成され、前記突出部よりも車両後部側における前記アンダーカバーの部位に形成した前記車体構造部材への取付け孔が、車両前後方向に沿った長孔として形成されてなることを特徴とするアンダーカバー。
【請求項2】
車両前後方向に沿って形成されたリブが、前記突出部における前記車両前方側の前面及び前記車両後方側の後面に連接して構成されてなることを特徴とする請求項1記載のアンダーカバー。
【請求項3】
前記突出部が、前記アンダーカバーとは別体に構成され、前記別体に構成された突出部を取付けた前記アンダーカバーの部位より車両前方側における前記アンダーカバーの部位に、前記別体に構成された突出部の位置ズレを防止するエンボス部が形成されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載のアンダーカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部又は車両後部における車体下部に固着され、車体下部を平面化して車体下部を覆うアンダーカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から車体下部を覆うアンダーカバーは、車体下部における空力特性を向上させることを目的に配されていたり、騒音が外部に漏れ出るのを遮断すること等を目的として配されている。車両のフロントバンパーに障害物が接触したときにおいて、接触による衝撃力が小さいときには、アンダーカバーの弾性変形によって衝撃力を吸収し、接触によるフロントバンパーの破損を防止し、フロントバンパーの下端部が障害物から離れた後では、アンダーカバーが弾性復帰できるように構成されている。
また、接触による衝撃力が大きいときには、衝突による衝撃力の一部をアンダーカバーの変形で吸収することができるように構成されている。
【0003】
車体下部を覆うアンダーカバーの構成としては、自動車のアンダーカバー構造(特許文献1参照)や車両前部構造(特許文献2参照)などが提案されている。特許文献1に記載されたアンダーカバー構造では、アンダーカバーにおける空力特性を向上させると共に剛性を高く構成するため、アンダーカバーを上壁と下壁とを有する中空の二重構造に構成している。
【0004】
そして、アンダーカバーの下壁に沿って流れる空気の流れが、層流となるように、アンダーカバーの下壁の下面を略平坦面に形成している。また、二重構造に構成することにより、アンダーカバーの剛性を高めると共に、遮音、遮熱効果を高めている。
【0005】
特許文献2に記載された車両前部構造では、車体構造体とサスペンションメンバフロントクロスとの間に保護部材を支持している構成になっている。保護部材が、本願発明におけるアンダーカバーに相当しており、保護部材は、下方に湾曲したアーチ上に形成されている。
【0006】
車両前方からの衝撃荷重が保護部材に作用したときには、アーチ状の湾曲部を変形させることで、衝撃荷重を吸収する構成になっている。そして、所定以上の衝撃荷重が保護部材に加わったときには、保護部材をサスペンションメンバフロントクロスに取付けている取付部が破断して、保護部材からの反力が上昇しないように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−190873号公報
【特許文献2】特開2008−265417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された発明では、アンダーカバーが二重構造に構成されているため、アンダーカバーとしての構造が複雑になる。また、上壁と下壁とを組み立てた後でアンダーカバーを車両に装着することになるため、アンダーカバーの装着作業が煩雑になってしまう。しかも、中空部を有する構造のため、アンダーカバーとしての質量が増大し、アンダーカバーと路面との間の間隔が狭く構成されてしまうことになる。また、アンダーカバーとしての重量が増大してしまうことになる。
【0009】
特許文献2に記載された保護部材では、車両前方からの衝撃荷重に対して保護部材からの反力が上昇するのを抑えるため、アーチ状の湾曲部を変形させる構成になっている。そのため、保護部材からの反力の大きさとアーチ状の湾曲部の変形による変位量とは、略比例関係の状態になっている。
【0010】
アーチ状の湾曲部の変形による変位量が大きくなると、保護部材からの反力も大きくなってしまうため、保護部材からの反力を抑制することが難しい構成になっている。また、保護部材で衝撃荷重を吸収するためには、アーチ状の湾曲部の変形ストロークを許容する領域を車両の下方に確保しておかなければならない。
【0011】
そして、所定以上の衝撃荷重が保護部材に作用したときには、保護部材をサスペンションメンバフロントクロスに取付けている取付部が破断する構成になっている。そのため、取付部が破断するときには、大きく湾曲したアーチ状の湾曲部が急激に開放されることになる。その結果、アーチ状の湾曲部の近傍に障害物が存在したときには、急激に開放されたアーチ状の湾曲部よって障害物や保護部材を破損してしまう危険性があり、破損した障害物や保護部材が周囲に飛び散ってしまう虞もある。
【0012】
本願発明では、上述した従来の問題を解決し、従来からのアンダーカバーとしての性能を損なうことなく、車両前方からの衝撃荷重によってアンダーカバーが変形したときには、アンダーカバーからの反力を容易に抑制することができるアンダーカバーの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明の課題は、請求項1〜に記載された各発明により達成することができる。
即ち、本願発明は、車両前部又は車両後部における車体下部に固着され、前記車体下部を平面化して前記車体下部を覆うアンダーカバーであって、
車両前後方向における前記アンダーカバーの中間部の部位に、車幅方向に沿った幅寸法を有し、上方に突出した少なくとも一つ以上の突出部が設けられ、
前記アンダーカバーの車両前後方向への変形時に前記突出部が当接する車体構造部材の当接部位と前記突出部の当接部位との間が、車両前後方向において所定寸法離間して配設され、
前記突出部の高さ位置が、前記変形時に前記突出部が当接する前記車体構造部材の当接部位の高さ位置よりも高い位置に構成されてなり、
前記突出部よりも車両後部側における前記アンダーカバーの部位が、前記変形時に前記突出部が当接する前記車体構造部材の下方に配されてなり、
前記突出部における前記車体構造部材に対峙する面が、前記車体構造部材から離れる方向に向かって下り傾斜の傾斜面として形成され、前記突出部よりも車両後部側における前記アンダーカバーの部位に形成した前記車体構造部材への取付け孔が、車両前後方向に沿った長孔として形成されてなることを最も主要な特徴としている。
【0015】
更に、本願発明のアンダーカバーでは、車両前後方向に沿って形成されたリブが、前記突出部における前記車両前方側の前面及び前記車両後方側の後面に連接して構成されてなることを主要な特徴としている。
【0016】
更にまた、本願発明のアンダーカバーでは、前記突出部が、前記アンダーカバーとは別体に構成され、前記別体に構成された突出部を取付けた前記アンダーカバーの部位より車両前方側における前記アンダーカバーの部位に、前記別体に構成された突出部の位置ズレを防止するエンボス部が形成されてなることを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本願発明に係わるアンダーカバーでは、車両に加わった衝撃荷重によってアンダーカバーに対して車両の前後方向に変形させる荷重が作用したときに、突出部が車体構造部材に当接するまでの間、アンダーカバーは弾性変形を行いながら車体構造部材側に移動を行って突出部を車体構造部材に当接させることができる。
【0018】
特に、アンダーカバーを車体構造部材に取付けている取付け孔を車両前後方向に沿った長孔として形成しておくことにより、アンダーカバーの移動を容易に行わせることができ、移動量を長く構成することができる。尚、長孔を形成しておくことにより、アンダーカバーを車体に取付けるときには、アンダーカバーを下方から垂直に持ち上げて、車体構造部材の下面にあてがうだけで、位置合わせが容易に行うことができ、取付け作業を容易に行える効果も奏している。
【0019】
このように、衝撃荷重が小さいときには、アンダーカバーの弾性変形及び移動によって衝撃荷重を吸収することができる。そのため、衝撃荷重が除かれれば、アンダーカバーは弾性復帰し、フロントバンパーを破損させることがない。
【0020】
衝撃荷重が大きなときには、突出部が車体構造部材に当接することになり、アンダーカバーが車体構造部材側に更に移動するのを抑えることができる。即ち、アンダーカバーは車体構造部材によって移動が規制されることになるので、必要反力を得るための剛性をアンダーカバーに確保させることができる。
【0021】
特に、突出部における車体構造部材に対峙する面が、車体構造部材から離れる方向に向かって下り傾斜の傾斜面として形成しておくことにより、突出部における車体構造部材に対峙する面が車体構造部材に当接したとき、当接した突出部の下り傾斜面と車体構造部材との引っ掛かり量が増すことになる。そして、突出部と車体構造部材との当接状態が外れることがなくなり、アンダーカバーの変形量とアンダーカバーから生じる反力の値を安定させることができる。
【0022】
また、突出部における車体構造部材に対峙する面と車体構造部材との間で引っ掛かりが生じるので、アンダーカバーを車体構造部材に取付けている取付け部材が破断したとしても、アンダーカバーは車体構造部材から離れて、単独で挙動してしまうのが防止される。そのため、特許文献2のように、弾性変形したアンダーカバーが急激に復元することによって生じる障害物やアンダーカバーの破損を、本願発明では防止できる。
【0023】
突出部における車両前方側の面及び車両後方側の面に連接して、車両前後方向に沿ったリブを設けておくことにより、突出部が車体構造部材に当接した後での突出部の強度を保持することができる。そして、リブを車両の前後方向に延設して構成しておくことによりアンダーカバーの補強を行うことができる。アンダーカバーの補強を行うことにより、アンダーカバーの底面を平坦面に構成することができ、アンダーカバーの底面に沿って流れる空気の流れが層流となるようにさせることができる。
【0024】
突出部としては、アンダーカバーと一体的に成形して構成することも、アンダーカバーとは別体にて構成しておくこともできる。アンダーカバーとは別体に突出部を構成したときには、アンダーカバーを成形する金型等の構成をシンプルに構成することができ、アンダーカバーの製造単価を下げることができる。
また、突出部をアンダーカバーとは別体に構成した場合には、突出部の位置ズレを防止するためのエンボス部をアンダーカバーに形成しておくことが望ましい構成となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】アンダーカバーの全体斜視図である。(実施例1)
図2】突出部の要部拡大斜視図である。(実施例1)
図3】車体構造部材の底面図である。(実施例1)
図4図1におけるIV−IV断面図である。(実施例1)
図5】IV−IV断面において、アンダーカバーを車体構造部材に組み付けるときを示す断面図である。(実施例1)
図6】IV−IV断面において、アンダーカバーに衝撃荷重が作用したときの要部拡大断面図である。(実施例1)
図7】IV−IV断面において、突出部が車体構造部材に衝突したときの断面図である。(実施例1)
図8】IV−IV断面において、アンダーカバーからの反力を示す断面図である。(実施例1)
図9図9(a)は、他の構成のアンダーカバーの全体斜視図であり、図9(b)は、図9(a)の要部拡大図である。(実施例2)
図10図9(a)のX―X断面図である。(実施例2)
図11】別体に構成した突出部の側面図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明に係わるアンダーカバーとしては、車両前部の車体下部にアンダーカバーが固着された構成例を用いて説明を行うが、アンダーカバーとしては、車両後部における車体下部に固着される構成にしておくこともできる。
【0027】
また、車体構造部材2の形状が図2に示す形状を有する車両に、アンダーカバー1を装着する構成例を用いて説明を行うが、車体構造部材2の形状は、車両の車種等に応じて異なっているため、本願発明に係わるアンダーカバー1が装着される車体構造部材2の形状は、図2に示した形状に限定されるものではない。そのため、アンダーカバー1の形状としても、以下において説明する構成に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
【実施例1】
【0028】
図1に示すように、アンダーカバー1は、前方部1aと中間部1bと後方部1cとを備えた構成になっており、前方部1aは、アンダーカバー1を取付けるラジエーターコアサポート部材2a(図2参照)と同様の平面形状に構成されている。図1のIV−IV断面図である図4に示すように、アンダーカバー1は、前方部1aから中間部1bにかけて下り傾斜の傾斜面として構成されており、中間部1bからは立上り面17が形成されている。
【0029】
前方部1aには、アンダーカバー1をフロントバンパー3に取付けるための取付け面11が形成されている。また、中間部1bに形成した立上り面17の後方側には、アンダーカバー1を車体構造部材2に取付けるための取付け面12が形成されている。取付け面12の後方側にはアンダーカバー1の後方部1cが延設されており、図示は省略しているが後方部1cにも、アンダーカバー1をサスペンションフレーム2b(図1参照)に取付けるための取付け面が形成されている。
ラジエーターコアサポート部材2a及びサスペンションフレーム2bは、車体構造部材2を構成している構成の一部として使用されている。
【0030】
アンダーカバー1を取付ける車体構造部材2は、図2に示すような構成になっている。ラジエーターコアサポート部材2aの先端部には、図4に示すように、アンダーカバー1の取付け面12を取付けるための取付け孔6が、車幅方向に沿って複数形成されている。ラジエーターコアサポート部材2aの取付け孔6とアンダーカバー1の取付け面12に形成した取付け
孔12aとは、クリップ4bを介して連結されることになる。
【0031】
ラジエーターコアサポート部材2aの前方には、フロントバンパー3が配されており、フロントバンパー3の裏面には、アンダーカバー1の取付け面11を取付けるための取付け孔5が、車幅方向に沿って複数形成されている。図4に示すように、フロントバンパー3の取付け孔5とアンダーカバー1の取付け面11に形成した取付け孔11aとは、クリップ4aを介して連結されることになる。
【0032】
図1図2図4に示すように、アンダーカバー1の前方部1aと中間部1bに形成した立上り面17の前面との間には、車両の前後方向に沿って形成された複数のリブ18aが、車両の車幅方向に複数形成されている。また、立上り面17の裏面にも、車両の前後方向に沿って形成された複数のリブ18bが、車両の車幅方向に複数形成されている。
【0033】
図1図2に示すように、車幅方向における立上り面17の一部部位は、更に延設されて形成されており、延設されて形成された部位は、車幅方向に幅寸法を有した突出部15として形成されている。図1では、突出部15を車幅方向に二つ設けた構成を示しているが、突出部15としては、車幅方向に少なくとも一つ以上設けておくことができる。
【0034】
図2に示すように、立上り面17の前面に連接して形成されたリブ18aのうちで、突出部15の前方傾斜面15aの位置に配されているリブ18aは、突出部15の前方傾斜面15aに沿って、突出部15の頂部面15cまで延びるように形成されている。同様に図4に示すように、立上り面17の裏面に連接したリブ18bに関しても、立上り面17の裏面と突出部15の後方傾斜面15bの裏面との間に配されるリブ18bは、立上り面17の裏面と突出部15の後方傾斜面15bの裏面と突出部15の頂部面15cの裏面とをそれぞれ接続するように形成されている。
【0035】
図4及び突出部15の要部拡大図である図6に示すように、突出部15の後方傾斜面15bは、下り傾斜の傾斜面として形成されている。即ち、突出部15の後方傾斜面15bは、アンダーカバー1の車両前後方向への変形時に突出部15の後方傾斜面15bが当接するラジエーターコアサポート部材2aの当接部20から離れる方向に向かって下り傾斜の傾斜面として形成されている。そして、突出部15の頂部面15cにおける後方側端縁から、前方側に角度θ傾いた形状に構成されている。
【0036】
図4図5に示すように、アンダーカバー1を車体構造部材2に装着したときには、突出部15の後方傾斜面15bから後方に延設された取付け面12は、ラジエーターコアサポート部材2aの底面から下方に配されており、突出部15の頂部面15cの高さ位置は、ラジエーターコアサポート部材2aの当接部20の高さ位置よりも上方の位置に配されることになる。そして、突出部15の後方傾斜面15bとラジエーターコアサポート部材2aの当接部20との間は、車両前後方向において所定寸法L離間して配設されることになる。
【0037】
次に、図6図8を用いて、衝撃力が車両前方から加わった場合について説明する。図8に示すように、車両前方から衝撃力が加わると、フロントバンパー3は、破線で示す初期状態の位置から細線で示す後方の位置に移動する。このとき、フロントバンパー3に接続しているアンダーカバー1は、前方部1aと中間部1bとの間での傾斜面と立上り面17との間での弾性変形と図6に示すように、後方への移動によって衝撃力を吸収してフロントバンパー3が破損するのを防止する。
【0038】
特に、アンダーカバー1は、前方部1aから中間部1bにかけて下り傾斜の傾斜面として構成されているので、傾斜させることによって意図した方向にアンダーカバー1を変形させることができる。
【0039】
また、アンダーカバー1をラジエーターコアサポート部材2aに取付けるのに当たって、アンダーカバー1の取付け面12に形成した取付け孔12aを、車両の前後方向に伸びる長孔として形成している。長孔として形成することによって、衝撃力がアンダーカバー1に作用したときに、アンダーカバー1の移動を容易に行わせることができ、後方への移動量を長く構成することができる。
【0040】
車両前方から衝撃力が小さいときには、アンダーカバー1は弾性復帰を行い、フロントバンパー3は、図8で示すように細線の後退位置から破線で示した初期位置に戻ることができる。しかし、車両前方から衝撃力が大きいときには、図7に示すように、突出部15の後方傾斜面15bはラジエーターコアサポート部材2aの当接部20に当接して、アンダーカバー1の後方への移動が規制されることになる。
【0041】
即ち、ラジエーターコアサポート部材2aの当接部20に、アンダーカバー1の後方への移動を規制するストッパとしての機能を奏させることができる。そして、突出部15の頂部面15cは、ラジエーターコアサポート部材2aの当接部20に引っ掛かることになり、アンダーカバー1が、ラジエーターコアサポート部材2aの当接部20との当接状態が解除されるのを防止しておくことができる。
【0042】
このように、ストッパとしての機能を奏する当接部20に当接したアンダーカバー1は、一種の構造体となってフロントバンパー3に対して反力を作用させることができる。そして、障害物がアンダーカバー1の下方に引き込まれてしまうのを防止することができる。
【0043】
このように、本願発明のアンダーカバー1では、車両前方から衝撃力によってアンダーカバー1に衝撃荷重を受けた際に、衝撃荷重が小さい場合と衝撃荷重が大きい場合に応じてそれぞれ適切な対応で作動することができる。しかも、衝撃荷重が大きい場合には、アンダーカバー1として反力を奏させるための剛性を確保することができる。
【0044】
また、補強用のリブ18a、18bを設けることにより、アンダーカバー1の底面を平面状態に構成しておくことができ、アンダーカバー1の底面に沿って流れる空気の流れを、層流状態の流れとして流すことができ、アンダーカバー1の底面に沿って流れる空気に対する空力抵抗を減らすことができる。しかも、アンダーカバー1の表面積を増加させても、必要な強度をリブ18a、18bによって保持することができるので、表面積増加に伴う質量の増加も抑えられる。
また、リブ18a、18bによって、アンダーカバー1としての必要剛性を確保することができるので、車両の衝突時にアンダーカバー1が破壊に至ることを防止できる。
【実施例2】
【0045】
図9図11を用いて、本願発明に係わるアンダーカバー1の突出部の構成について、他の構成について説明する。実施例1では、突出部15をアンダーカバー1と一体的に形成した構成について説明を行ったが、実施例2では、突出部22をアンダーカバー1とは別体に構成して、アンダーカバー1に取付ける構成について説明する。
【0046】
他の構成は、実施例1と同様の構成となっている。そのため、実施例1における構成と同様の構成については、実施例1で用いた部材符号を用いることで、その部材についての説明を省略する。
【0047】
図9(a)、図9(b)、図10に示すように、アンダーカバー1には、中間部1bに形成した立上り面17の後面17bと取付け面12との間に突出部22を取付けるための凹部23が形成されている。図10に示すように、凹部23に突出部22を固定することができる。図9(a)の要部拡大図である図9(b)に示すように、凹部23への突出部22の取付けは、リペ
ット等の固定手段を用いて行うことができる。突出部22の剛性を高めるため、突出部22の前面側及び裏面側には、リブ25a、25bがそれぞれ設けられている。
【0048】
また、突出部22がラジエーターコアサポート部材2aの当接部20に当接したときに、当接状態が外れないようにするため、突出部22の上部を当接部20側に曲げたカギ状の形状に構成しておくことができる。また、突出部22が当接部20に当接した際に、突出部22が位置ズレを生じさせないように、立上り面17の後面17bによって、位置ズレを防止させている。
【0049】
突出部22の位置ズレを防止するための構成としては、立上り面17の後面17bを用いる代わりに、隆起部を突出部22の位置ズレを防止する側に設けておくこともできる。即ち、エンボス部を設けておくことにより、突出部22の位置ズレを防止させることができる。エンボス部としては、アンダーカバー1に隆起させた隆起部や立上り面17の後面17b等を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本願発明の技術思想は、アンダーカバーの構成として、好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1・・・アンダーカバー、2・・・車体構造部材、3・・・フロントバンパー、15・・・突出部、17・・・立上り面、20・・・当接部、22・・・突出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11