(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、地下工事では、施工場所の地下を掘ったときに周囲の地盤が崩れるのを防ぐために、最初に山留工事を行って施工場所の周囲に山留連壁を形成している。
【0003】
山留連壁を形成するには、一般的に土圧に耐荷させるためにH形鋼やI型鋼などの芯材が使用され、また上床スラブを逆巻き構築する場合、これらの芯材に加えて上床スラブを山留連壁内部で支持する先端支持杭が使用されている。先端支持杭は、芯材の地中挿入側(打ち込み側)の先端部に芯材をガイドする先端支持力を得られる拡大した構造であるガイド体が取り付けられたものである。ここでは芯材の場合について説明する。
【0004】
最初に、泥水掘削などにより地面に掘削孔を開け、掘削孔に芯材を軸方向に複数挿入した後、泥水中の型鋼の周囲にセメントミルク等の水硬性組成物を注入して泥水と置換させて硬化させる。あるいは、掘削孔に水硬性組成物を注入、オーガーなどで地山と混練した後に芯材を打ち込み、硬化させる。この芯材は水硬性組成物の硬化が終了した後、後年に地下を再び開発する際の障害とならないように、必要に応じて硬化物から引き抜いて撤去する場合がある。
【0005】
ところが、芯材と水硬性組成物の硬化物とは強固に付着するため、山留工事終了後に芯材を硬化物から引き抜く作業には付着強度に打ち勝つための相当な機械設備や工程が必要となり、設備や経費、日数等がかかる。
【0006】
そこで、例えば、芯材の周面に樹脂製の被膜材を設けた被膜芯材が提案されている(特許文献1参照)。この被膜芯材は、被膜材により芯材と水硬性組成物の硬化物とが接触しないので、引き抜き作業を容易に行うことが可能になっている。
【0007】
しかしながら、特許文献1の被膜芯材は、芯材に被膜材を設ける際に接着剤を用いることから以下の(1)〜(3)の問題がある。
【0008】
(1)接着剤の塗布作業に時間がかかるために芯材の出荷工場で塗布作業をしなけらばならず品質管理が出荷工場と施工現場に分散してしまい煩雑となる。
(2)接着強度を出すため、接着剤の塗布後に一晩程度乾燥させてから使用しなければならず通常よりも工事の遅延を招く。
(3)接着剤の塗布後、接着剤が雨等で水濡れしないようにシートで養生することが必要となり、品質管理が煩雑になる。
【0009】
つまり、特許文献1の被膜芯材は、接着剤の使用が不可欠であるがゆえに工事の遅延やコスト高騰を招いている。
【0010】
そこで、芯材の周面に樹脂製の被膜材をガムテープ(片面テープ)で固定する方法が提案されている。具体的には、芯材の周面に被膜材を被せて継ぎ合わせて、継ぎ目を上側からガムテープで芯材に固定している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、ガムテープで固定する方法は上記の(1)〜(3)の問題点は解消できるものの、以下の問題があった。
【0013】
被膜材の継ぎ目を上側からガムテープで芯材に固定するだけなので固定が十分とはいえなかった。短尺状の芯材の場合は問題ないが、10mを超える長尺状の芯材の場合は、地中挿入時にかかる摩擦や圧力によってガムテープが剥離したときに、セメントミルク等の水硬性組成物が芯材と被膜材との間に侵入する。そのため、水硬性組成物の硬化物と芯材とが付着してしまい、このことにより被膜材に不陸が生じ、山留工事終了後に被膜芯材を容易に引き抜くことができない。
【0014】
また、地中挿入時に摩擦や圧力によってガムテープが剥離したときには被膜材が芯材から脱落するため、山留工事終了後に被膜芯材を確実に回収することができなかった。
【0015】
さらに、芯材が複数分割されており、接合手段(例えば添接板、ボルト、ナット)で接合されている場合、被膜芯材を引き抜く際に接合手段が水硬性組成硬化物と干渉し、「特許文献1の方法」及び「樹脂製の被膜材をガムテープで固定する方法」のいずれにおいても、被膜芯材を引き抜くことはできない。
【0016】
本発明は、かかる従来の課題に鑑みてなされたものであり、山留工事終了後に容易に引き抜くことができ、且つ、確実に回収することができる被膜芯材、被膜芯材を備えた先端支持杭、および被膜芯材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するために本発明の被膜芯材は、
芯材と、前記芯材の軸方向に沿って前記芯材の周面を被覆するように継ぎ合わせられた複数の被膜材とを備える被膜芯材であって、
前記複数の被膜材は、継ぎ目の下側が前記芯材に両面接着手段で固定され、継ぎ目の上側は片面テープが被覆するように貼付されていることを特徴とする。
【0018】
なお、両面接着手段としては両面テープや接着剤等が挙げられる。
【0019】
ここで、隣接する被膜材の継ぎ目の両側に一対の被膜材貫通孔を設け、芯材および両面接着手段には、一対の被膜材貫通孔と対応する位置にそれぞれ一対の芯材貫通孔と一対の両面接着手段貫通孔を設け、これらの一対の被膜材貫通孔、一対の両面接着手段貫通孔、一対の芯材貫通孔に結束紐を通し、当該結束紐で片面テープを跨いで隣接する被膜材を結束するようにしても良い。
【0020】
また、芯材の地中挿入側の先端部に樹脂製の被膜材を被せて固定しても良い。
【0021】
また、芯材が複数の部分芯材から構成され、これらの部分芯材が接合手段で接合されている場合には、複数の被膜材のうち、少なくとも芯材で接合手段が設置されている部分から引き抜き側に配置される被膜材を、外側が硬質材で内側が軟質材で形成した二層構造から構成し、軟質材で前記芯材を被覆することが好ましい。
【0022】
また、本発明の先端支持杭は、複数の被膜材が芯材の周面の軸方向に被覆して継ぎ合わせられた被膜芯材と、前記被膜芯材の地中挿入側の先端部に外嵌したガイド体とを備える先端支持杭において、前記被膜芯材に、本発明の被膜芯材を用いたことを特徴とする。
【0023】
また、本発明の被膜芯材の製造方法は、
芯材の周面で軸方向に離間して設定された被膜材の複数の継ぎ目位置にそれぞれ両面接着手段を設ける準備工程と、
前記芯材の周面に複数の被膜材を各継ぎ目位置で継ぎ合わせて各両面接着手段に貼付して前記芯材に固定し、当該複数の被膜材の各継ぎ目に片面テープを被覆して貼付する被膜材取付工程とを備えることを特徴とする。
【0024】
ここで、準備工程では、各両面接着手段の設置前に、芯材の各継ぎ目位置の両側に一対の芯材貫通孔を設け、各両面接着手段の設置後に、当該各両面接着手段の前記一対の芯材貫通孔と対応する位置に一対の両面接着手段貫通孔を設け、
被膜材取付工程では、各被膜材の取付後に、各被膜材の前記一対の両面接着手段貫通孔と対応する位置に一対の被膜材貫通孔を設け、これらの一対の被膜材貫通孔、一対の両面接着手段貫通孔、一対の芯材貫通孔に結束紐を通し、当該結束紐により前記片面テープを跨いで隣接する被膜材を結束するようにしても良い。
【0025】
また、被膜材取付工程では、さらに芯材の地中挿入側の先端部に樹脂製の被膜材を被せて固定しても良い。
【発明の効果】
【0026】
本発明の被膜芯材、先端支持杭、被膜芯材の製造方法では、芯材の周面に被覆された被膜材の継ぎ目の下側を両面テープや接着剤等の両面接着手段で芯材に固定し、継ぎ目の上側を片面テープで被覆するように貼付した。これにより、被膜芯材や先端支持杭の地中挿入時には上側の片面テープが剥離しても被膜材は下側の両面接着手段に密着しているので、水硬性組成物が芯材と被膜材との間に侵入するのを防ぎ、水硬性組成物の硬化物と芯材とが付着するのを防ぐことができる。よって、本発明は、山留工事終了後に被膜芯材を容易に引き抜くことができる。
【0027】
また、被膜芯材や先端支持杭の地中挿入時には、上側の片面テープが剥離しても被膜材は下側の両面接着手段に密着しているため、芯材からの被膜材の脱落を防ぐことができ、山留工事終了後に被膜芯材を確実に回収することができる。さらに、被膜材は結束紐により強固に芯材に固定されているので被膜材の脱落を確実に防ぐことができる。また、結束紐は、被膜芯材の引き抜きの際に低い破断強度で確実に破断するので、被膜芯材の回収をより確実に行うことができる。
【0028】
また、芯材が複数の部分芯材から構成され、これらの部分芯材が接合手段で接合されている場合には、少なくとも芯材で接合手段が設置されている部分から引き抜き側に配置される被膜材を、外側が硬質材で内側が軟質材で形成された二層構造で構成し、軟質材で芯材を被覆する。このようにすれば、被膜芯材を引き抜く際に障害となる接合手段は、軟質材や硬質材と一体となって剥離または分離するか、軟質材そのものが破壊されて、被膜芯材を容易に引き抜くことができる。また、被膜芯材の打ち込み時には、外側の硬質材が内部の軟質材を防護するので被膜材の脱落を防止でき、さらに結束紐を使用した場合には被膜材が強固に芯材に固定されるので被膜材の脱落を確実に防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図にしたがって説明する。
【0031】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態の被膜芯材1の斜視図である。
図1では、被膜芯材1の地中挿入側部分を示している。この被膜芯材1は、芯材2と、芯材2の周面を被覆する複数の樹脂製の周面用被膜材3と、芯材2の地中挿入側の先端部を被覆する複数の樹脂製の先端部用被膜材4とを備えている。
【0032】
芯材2としてはH型鋼が使用されており、上フランジ21、下フランジ22、ウェブ23を有している。なお、芯材2としては、H型鋼の他に、I型鋼、鉄柱、コンクリート杭、ポール、筒状のパイル(中空パイル)、長尺板状の杭である鋼矢板(シートパイル)や波板等が挙げられる。芯材2の形状、長さ、材質等は特に限定されない。
【0033】
各周面用被膜材3は、芯材2の軸方向に沿って芯材2の周面を被覆して継ぎ合わせられている。そして、継ぎ目の下側が芯材2に両面テープ5(両面接着手段)で固定されており、継ぎ目の上側は片面テープ6が被覆するように貼付されている。なお、両面接着手段として両面テープ5の他に接着剤等を使用しても良い。
【0034】
さらに各周面用被膜材3は、芯材2の周面の上半分を被覆する上周面用被膜材3aと、芯材2の周面の下半分を被覆する下周面用被膜材3bとから構成されている。上周面用被膜材3aと下周面用被膜材3bは、それぞれ片面テープ7、8により芯材2に固定されて継ぎ合わせられており、継ぎ目には片面テープ9が被覆するように貼付されている。
【0035】
また、隣接する周面用被膜材3,3の継ぎ目の両側には、被膜材貫通孔30,30が複数設けられている。また、両面テープ5と芯材2には、被膜材貫通孔30,30と対応する位置にそれぞれ両面テープ貫通孔50,50(両面接着手段貫通孔)、芯材貫通孔20,20が設けられている。被膜材貫通孔30,30、両面テープ貫通孔50,50、芯材貫通孔20,20には結束紐10が通されている。この結束紐10は片面テープ6を跨いで隣接する周面用被膜材3,3を結束している。
【0036】
各先端部用被膜材4は、芯材2の上フランジ21、下フランジ22、ウェブ23の各先端部に被覆されている。
【0037】
具体的に説明すると、上フランジ21側と下フランジ22側の先端部用被膜材4は、それぞれ片面テープ12、周面用被膜材3を介して上フランジ21の先端部と下フランジ22の先端部に被覆されている。ここで、片面テープ12、周面用被膜材3、芯材2には、片面テープ貫通孔120,120、被膜材貫通孔30,30、芯材貫通孔20,20が連通して設けられている。これらの貫通孔には結束紐11が通されており、この結束紐11により上フランジ21側と下フランジ22側の先端部用被膜材4が結束されている。
【0038】
また、ウェブ23側の先端部用被膜材4は、周面用被膜材3を介してウェブ23の先端部に被覆されている。ここで、周面用被膜材3と芯材2には、被膜材貫通孔30,30、芯材貫通孔20,20が連通して設けられている(一方のみ図示)。これらの貫通孔には結束紐11が通されており、この結束紐11によりウェブ23側の先端部用被膜材4が結束されている。
【0039】
以上のように構成されている被膜芯材1において、次に被膜芯材1の製造方法を説明する。被膜芯材1の製造は、準備工程、被膜材取付工程の順に行われる。以下に、各工程について説明する。
【0040】
(1)準備工程(
図2〜
図3参照)
準備工程では、最初に、芯材2の上フランジ21、ウェブ23、下フランジ22の周面に亘って周面用被膜材3の継ぎ目位置20aを軸方向に離間して設定する。
【0041】
次に、上フランジ21と下フランジ22の各継ぎ目位置20aの両側に芯材貫通孔20,20を設ける。さらに地中挿入先端側の芯材2には、ウェブ23の先端部にも芯材貫通孔20,20を設ける。芯材貫通孔20の径は、芯材2の強度が低下しない程度、例えば5〜25mmが好ましい。さらに、芯材2の下地調整(表面の清掃および乾燥)を行う。
【0042】
次に、各継ぎ目位置20aに両面テープ5を貼付する。両面テープ5の貼付方法は、継ぎ目位置20aを両面テープ5で一周に亘って被覆するように貼付して塞ぐ。最後に、両面テープ5の芯材貫通孔20,20と対応する位置に両面テープ貫通孔50,50を設ける。
【0043】
(2)被膜材取付工程(
図4〜
図9参照)
被膜材取付工程は、以下の(a)〜(e)の順に行われる。各工程について説明する。
(a)上周面被膜材取付工程
(b)下周面被膜材取付工程
(c)継ぎ目被覆工程
(d)結束工程
(e)先端部被膜材取付工程
【0044】
(a)上周面被膜材取付工程(
図4参照)
上周面被膜材取付工程では、周面用被膜材3の上半分を構成する上周面用被膜材3aを使用する。具体的には、芯材2の周面の上半分に複数の上周面用被膜材3aを被覆し、その両端を片面テープ7でウェブ23に固定する。ここで、各上周面用被膜材3aは各継ぎ目位置20aで軸方向に継ぎ合わせ、継ぎ目3cの下側を両面テープ5に貼付して固定する。その後に、上周面用被膜材3aの両面テープ貫通孔50または芯材貫通孔20と対応する位置に被膜材貫通孔30を設ける。
【0045】
(b)下周面被膜材取付工程(
図5参照)
下周面被膜材取付工程では、周面用被膜材3の下半分を構成する下周面用被膜材3bを使用する。具体的には、芯材2の周面の下半分に複数の下周面用被膜材3bを被覆し、その両端を上周面用被膜材3aに継ぎ合わせた後、片面テープ8で上周面用被膜材3aに固定する。このときに、各下周面用被膜材3bを各継ぎ目位置20aで軸方向に継ぎ合わせ、継ぎ目3cの下側を両面テープ5に固定する。その後に、下周面用被膜材3bの両面テープ貫通孔50または芯材貫通孔20と対応する位置に被膜材貫通孔30を設ける。
【0046】
(c)継ぎ目被覆工程(
図6参照)
継ぎ目被覆工程では、上周面用被膜材3aと下周面用被膜材3bとの継ぎ目3dに片面テープ9を被覆するように貼付して継ぎ目3dを塞ぐ。さらに、隣接する上周面用被膜材3a,3aおよび下周面用被膜材3b,3bの継ぎ目3cにも片面テープ6を一周に亘って被覆するように貼付して継ぎ目3cを塞ぐ。
【0047】
(d)結束工程(
図7参照)
結束工程では、最初に、被膜材貫通孔30,30、両面テープ貫通孔50,50、芯材貫通孔20,20に結束紐10を通して片面テープ6を跨ぐように結束紐10の両端を結節し、これによって隣接する周面用被膜材3,3を結束する。なお、結束紐10は、隣接する周面用被膜材3,3の脱落が防止できるように結束可能でありかつ、被膜芯材1の引き抜き時に低い破断強度で確実に破断するものであれば良く、インシュロック、ABタイ、針金、麻紐等、種類は特に限定されない。
【0048】
(e)先端部被膜材取付工程(
図8〜
図9、
図1参照)
掘削孔にオーガーなどで地山と混練した後に芯材を打ち込むときに、先端部においては被膜材と芯材界面が剥離分離し被膜材が脱落する問題がある。このため、先端部被膜材取付工程では、最初に
図8に示すように地中挿入先端側の芯材2の上フランジ211、下フランジ212、ウェブ213の各先端部にそれぞれ片面テープ12を被覆するようにして貼付する。その後に、上フランジ211、下フランジ212に貼付された片面テープ12の被膜材貫通孔30と対応する位置に片面テープ貫通孔120を設ける。
【0049】
次に、
図9と
図1に示すように各片面テープ12の上からそれぞれ先端部用被膜材4を被せる。そして、上フランジ21と下フランジ22に被せられた先端部用被膜材4には、片面テープ貫通孔120、被膜材貫通孔30、芯材貫通孔20に結束紐11を通して結節し、先端部用被膜材4を上フランジ21と下フランジ22に固定する。また、ウェブ23に被せられた先端部用被膜材4には、被膜材貫通孔30、芯材貫通孔20に結束紐11を通して結節し、先端部用被膜材4をウェブ23に固定する。なお、結束紐11は、先端部用被膜材4を芯材2(H型鋼)の先端部に固定可能なものであれば良く、上記の結束紐10と同様、インシュロック、ABタイ、針金、麻紐等、種類は特に限定されない。最後に点検と必要であれば補修を行い、被膜芯材1が完成する。
【0050】
以上説明したように本実施の形態の被膜芯材1およびその製造方法においては、
図5と
図6に示すように、周面用被膜材3の継ぎ目3cの下側を両面テープ5で芯材に固定し、継ぎ目3cの上側を片面テープ6で被覆するように貼付した。
【0051】
したがって、被膜芯材1の地中挿入時(被膜芯材1の打ち込み時)に上側の片面テープ6が剥離しても周面用被膜材3は下側の両面テープ5に密着しているので、セメントミルク等の水硬性組成物が芯材2と周面用被膜材3との間に侵入するのを防ぐので、周面用被膜材3の脱落を防ぎ、その後、水硬性組成物の硬化物と芯材2とが付着するのを防ぐことができる。よって、本実施の形態の被膜芯材1およびその製造方法は、山留工事終了後に被膜芯材1を容易に引き抜くことができる。
【0052】
また、被膜芯材1の地中挿入時に上側の片面テープ6が剥離しても、周面用被膜材3は下側の両面テープ5に密着しているため、芯材2からの脱落を防ぐことができる。よって、山留工事終了後に被膜芯材1を確実に回収することができる。
【0053】
また、本実施の形態では、隣接する周面用被膜材3,3の継ぎ目3cの両側に被膜材貫通孔30,30を設け、芯材2および両面テープ5には、被膜材貫通孔30,30と対応する位置に芯材貫通孔20,20および両面テープ貫通孔50,50を設け、これらの貫通孔に結束紐10を通し、この結束紐10により片面テープ6を跨いで隣接する周面用被膜材3,3を結束するようにした。
【0054】
したがって、片面テープ6は周面用被膜材3,3にしっかりと固定されるので、地中挿入時に剥離するのを防ぐことができる。さらに周面用被膜材3は、この結束紐10によって下側の両面テープ5にしっかりと密着する。このため、地中挿入時に片面テープ6が破断しても水硬性組成物が芯材2と周面用被膜材3との間に侵入するのを確実に防ぐので、剥離脱落を防ぎ、水硬性組成物の硬化物と芯材2とが付着するのを確実に防ぐことができる。よって、被膜芯材1をさらに容易に引き抜くことができる。
【0055】
また、周面用被膜材3は下側の両面テープ5にしっかりと密着するため、地中挿入時に芯材2からの脱落を確実に防止することができる。よって、被膜芯材1をより確実に回収することができる。
【0056】
また、結束紐10は、周面用被膜材3を、地中挿入時は脱落を防止し、引き抜き時は低い破断強度で確実に破断する。したがって地中挿入時に芯材2からの脱落を防止でき、引き抜き時に確実に回収することができる。
【0057】
また、本実施の形態では、地中挿入先端側の芯材2の先端部に先端部用被膜材4を被せて固定した。これにより、地中挿入時に周面用被膜材3の先端と芯材2との間に水硬性組成物が侵入するのを防ぎ、このことにより周面用被膜材3と芯材2との界面が剥離分離し被膜材が脱落することを防ぐと同時に、水硬性組成物の硬化物と芯材2とが付着するのを確実に防ぐことができる。よって、被膜芯材1をさらに容易に引き抜くことができる。
【0058】
さらに、芯材2の先端部には先端部用被膜材4が被せられる前に片面テープ12が被覆されるので、先端部は二重の被膜材で養生される。したがって、地中挿入時に周面用被膜材3の先端と芯材2との間に水硬性組成物が侵入するのを確実に防ぎ、水硬性組成物の硬化物と芯材2とが付着するのをより確実に防ぐことができる。よって、被膜芯材1をさらに容易に引き抜くことができる。
【0059】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、芯材が単一の部材の場合に本発明を適用した例を説明したが、本実施の形態では、芯材が複数に分割された部分芯材からなり、各部分芯材が接合手段で接合されている場合に本発明を適用した例を説明する。
【0060】
図10は、本発明の第2の実施の形態を示す被膜芯材301の接合部分の断面図である。この被膜芯材301は、芯材302と、芯材302の周面を被覆する複数の第1周面用被膜材303、第2周面用被膜材304、第3周面用被膜材305と、芯材302の地中挿入側の先端部を被覆する複数の樹脂製の先端部用被膜材4(
図1参照)とを備えている。なお、周面用被膜材304、305は、それぞれ
図12と
図14に示す。
【0061】
本実施の形態の芯材302にはH型鋼が使用されている。この芯材302は、複数の部分芯材302aが接合されて構成されている。複数の部分芯材302aは、H型鋼を軸方向に分割したものであり、軸方向に継ぎ合わせられている。
【0062】
軸方向に継ぎ合わせられた複数の部分芯材302aは、接合手段(添接板306と固定部材307)で接合されている。具体的に説明すると、継ぎ目に添接板306が当てられており、添接板306は、固定部材307(ボルト307aとナット307b)を用いて部分芯材302aに固定されている。
【0063】
また、第1周面用被膜材303、第2周面用被膜材304、第3周面用被膜材305は、芯材302の軸方向に沿って芯材302の周面を被覆して継ぎ合わせられている。そして、図示しないが、第1の実施の形態と同様に、継ぎ目の下側が芯材302に両面接着手段で固定されており、継ぎ目の上側は片面テープが被覆するように貼付されている。
【0064】
なお、第1周面用被膜材303は、部分芯材302aの接合部分(添接板306と固定部材307が設置されている部分)を被覆している。また、第2周面用被膜材304は、部分芯材302aの接合部分の上側部分を被覆しており、第3周面用被膜材305は、部分芯材302aの接合部分の下側部分を被覆している。
【0065】
このように本実施の形態の被膜芯材301は、第1の実施の形態の被膜芯材1と同様に、各周面被膜材303〜305の継ぎ目の下側を両面接着手段で芯材302に固定し、継ぎ目の上側を片面テープ6で被覆するように貼付したので、山留工事終了後に被膜芯材301を容易に引き抜くことができる。
【0066】
また、被膜芯材301の地中挿入時には、上側の片面テープが剥離しても各被膜材303〜305は下側の両面接着手段に密着しているため、被膜材303〜305の脱落を防ぐことができ、山留工事終了後に被膜芯材301を確実に回収することができる。さらに、周面用被膜材303〜305は結束紐により強固に芯材302に固定されているので周面用被膜材303〜305の脱落を確実に防ぐことができる。
【0067】
さらに、図示しないが、第1の実施の形態と同様に、隣接する周面用被膜材303,303、304,304、305,305の継ぎ目の両側には、一対の被膜材貫通孔が複数設けられている。また、両面接着手段と芯材302には、一対の被膜材貫通孔と対応する位置にそれぞれ一対の両面接着手段貫通孔、一対の芯材貫通孔が設けられている。これらの一対の被膜材貫通孔、一対の両面接着手段貫通孔、一対の芯材貫通孔には結束紐が通されている。この結束紐は片面テープ6を跨いで隣接する周面用被膜材303,303、304,304、305,305を結束している。
【0068】
したがって、片面テープ6は、隣接する周面用被膜材303,303、304,304、305,305にしっかりと固定されるので、地中挿入時に剥離するのを防ぐことができる。さらに、隣接する周面用被膜材303,303、304,304、305,305は、この結束紐によって下側の両面接着手段にしっかりと密着するため、剥離脱落を防ぎ、水硬性組成物の硬化物と芯材302とが付着するのを確実に防ぐことができる。よって、被膜芯材301をさらに容易に引き抜くことができる。また、結束紐は、被膜芯材301の引き抜きの際に低い破断強度で確実に破断するので、被膜芯材301の回収をより確実に行うことができる。
【0069】
次に、周面用被膜材303〜305の構成について以下に説明する。
【0070】
最初に、
図10と
図11を用いて第1周面用被膜材303の構成を説明する。第1周面用被膜材303は、芯材302の周面の左半分を被覆する左周面用被膜材303aと、芯材302の周面の右半分を被覆する右周面用被膜材303bとから構成されている。双方の被膜材303a,303bは、図示しないが第1の実施の形態と同様に片面テープにより芯材302に固定されて継ぎ合わせられており、継ぎ目には片面テープが被覆するように貼付されている。
【0071】
双方の被膜材303a,303bは、それぞれ外側が硬質材331で形成されて内側が軟質材332で形成された二層構造で構成されている。軟質材332は硬質材331の内面に密着されており、軟質材332で固定部材307、添接板306、芯材302を被覆(包含)している。硬質材331としては、薄鉄板やFRP樹脂板等が挙げられる。軟質材332としては、発泡スチロール樹脂等が挙げられる。
【0072】
このように構成することにより、被膜芯材301を引き抜く際に、添接板306や固定部材307があっても、これらの部材は軟質材332や硬質材331と一体となって剥離または分離するか、軟質材332そのものが破壊されて、被膜芯材301を容易に引き抜くことができる。また、被膜芯材301の打ち込み時(地中挿入時)には、外側の硬質材331が内部の軟質材332を防護するので脱落を防止でき、さらに結束紐によりこれらが強固に芯材302に固定できるので、脱落を確実に防止できる。
【0073】
次に、
図12と
図13を用いて第2周面用被膜材304の構成を説明する。第1周面用被膜材303を、芯材302の接合手段(添接板306及び固定部材307)が設置されている部分に被覆した場合、被膜芯材301を引き抜く際に第1周面用被膜材303が、その上側にある水硬性組成硬化物と干渉して被膜芯材301を引き抜くことができない。これを防ぐために、第2周面用被膜材304は、芯材302の接合手段の設置部分よりも上側部分(引き抜き側)に被覆されている。
【0074】
この第2周面用被膜材304は、第1周面用被膜材303と同じ厚みを有しており、芯材302の周面の左半分を被覆する左周面用被膜材304aと、芯材302の周面の右半分を被覆する右周面用被膜材304bとから構成されている。双方の被膜材304a,304bは、図示しないが第1の実施の形態と同様に片面テープにより芯材302に固定されて継ぎ合わせられており、継ぎ目には片面テープが被覆するように貼付されている。
【0075】
双方の被膜材304a,304bは、それぞれ外側が硬質材341で形成されて内側が軟質材342で形成された二層構造で構成されている。軟質材342は硬質材341の内面に密着しており、芯材302を被覆している。硬質材341としては、薄鉄板やFRP樹脂板等が挙げられる。軟質材332としては、発泡スチロール樹脂等が挙げられる。
【0076】
このように構成することにより、被膜芯材301の引き抜き時には、接合手段の設置部分から上側が水硬性組成硬化物と干渉することがないので被膜芯材301を容易に引き抜くことができる。
【0077】
次に、
図14と
図15を用いて第3周面用被膜材305の構成を説明する。この第3周面用被膜材305は、芯材302の周面の左半分を被覆する左周面用被膜材305aと、芯材302の周面の右半分を被覆する右周面用被膜材305bとから構成されている。
【0078】
本実施の形態では、芯材302の接合手段の設置部分よりも下側部分は水硬性組成硬化物と干渉しないので、この下側部分を被覆する第3周面用被膜材305は樹脂による一層構造で構成されている。この場合、一層であるから、
図15に示すように樹脂板350を折り曲げて第3周面用被膜材305の形状(半H型)になるように、樹脂板350に折り目加工を行う。これにより、第3周面用被膜材305を現場で組み立てることが可能になるので、運搬の際に場所をとらずにすみ、簡便性を高めることができる。
【0079】
以上、本発明にかかる実施の形態を例示したが、これらの実施の形態は本発明の内容を限定するものではない。また、本発明の請求項の範囲を逸脱しない範囲であれば、各種の変更等は可能である。
【0080】
例えば、第1の実施の形態では、芯材2において、隣接する周面用被膜材3,3を結束するための貫通孔(芯材貫通孔20,20、被膜材貫通孔30,30、両面テープ貫通孔50,50)を上フランジ21と下フランジ22とに設けたが、これに加えてウェブ23にも上記の貫通孔を設け、これらの貫通孔に結束紐10を通して、この結束紐10により隣接する周面用被膜材3,3を結束するようにしても良い。
【0081】
この場合には、片面テープ6が周面用被膜材3,3により強く固定されるので、地中挿入時に剥離するのを確実に防ぐことができる。さらに周面用被膜材3も下側の両面テープ5により強く密着する。したがって、地中挿入時に上側の片面テープ6が破断しても、水硬性組成物が芯材2と周面用被膜材3との間に侵入するのを確実に防ぐので、周面用被膜材3の剥離脱落を確実に防ぎ、水硬性組成物の硬化物と芯材2とが付着するのをより確実に防ぐことができる。よって、被膜芯材1をさらに容易に引き抜くことができる。
【0082】
また、第1の実施の形態や第2の実施の形態では被膜芯材を山留連壁などにおける単体で使用した場合を説明したが、逆巻き構築などの場合で上床スラブを山留連壁内部で支持する場合などにおいて、第3の実施の形態として
図16に示す先端支持杭101や、第4の実施の形態として
図17に示す先端支持杭201にも本発明を適用することができる。
【0083】
(第3の実施の形態)
図16の先端支持杭101は、第1の実施の形態の被膜芯材1と、ガイド体102(二点鎖線で図示)とを備えている。このガイド体102は周知の部材であり、芯材2の地中挿入先端側に外嵌した筒体102aと、筒体102aの先端に設けられた受板102bと、筒体102aと受板102bとを接続する接続リブ102c,102cとを備えている。受板102bには、水硬性組成物の通過孔(図示せず)が設けられている。なお、このガイド体102の設置工程は、第1の実施の形態で説明した(e)先端部被膜材取付工程の後に行う。
【0084】
そして、この先端支持杭101は、第1の実施の形態の被膜芯材1を備えていることにより、セメントミルク等の水硬性組成物が芯材2と周面用被膜材3との間に侵入するのを防ぐので、周面用被膜材3の剥離脱落を防ぎ、水硬性組成物の硬化物と芯材2との付着を防ぐことができる。なお、先端支持杭101に、第1の実施の形態の被膜芯材1に代えて第2の実施の形態の被膜芯材301を使用しても良い。
【0085】
また、この先端支持杭101は、山留工事終了後に被膜芯材1が引き抜かれる。このときにも、水硬性組成物の硬化物と芯材2との付着は防いでいるので容易に引き抜くことができる。また、周面用被膜材3は下側の両面テープ5に密着していることから芯材2からの脱落を防いでいるため、被膜芯材1を確実に回収することができる。また、ガイド体102は、先端支持杭101の引き抜き時に被膜芯材1に当接して引き抜きを補助、ガイド体102自体は土中に存置されつつ、芯材2の引き抜き方向をガイドし、引き抜き作業を容易にしている。
【0086】
(第4の実施の形態)
図17の先端支持杭201は、第1の実施の形態の被膜芯材1と、ガイド体202(二点鎖線で図示)と、鉄筋籠203(二点鎖線で図示)とを備えている。ガイド体202および鉄筋籠203は周知の部材である。ガイド体202は、芯材2の地中挿入先端側に外嵌した筒体202aと、筒体202aの先端に設けられた接続リング202bと、筒体202aと接続リング202bとを接続する接続リブ202c,202cとを備えている。鉄筋籠203は筒体202aを囲むように配置されており、接続リング202bを介して密着する被膜芯材1が貫通する形で筒体202aに固定されている。なお、ガイド体202と鉄筋籠203の設置工程は、第1の実施の形態で説明した(e)先端部被膜材取付工程の後に行う。
【0087】
また、鉄筋籠203は、先端支持杭201の地中挿入時に掘削孔の内周面(図示せず)に当接して挿入を補助している。ここで、先端支持杭201は、第1の実施の形態の被膜芯材1を備えていることにより、セメントミルク等の水硬性組成物が芯材2と周面用被膜材3との間に侵入するのを防ぐので、周面用被膜材3の剥離脱落を防ぎ、水硬性組成物の硬化物と芯材2との付着を防ぐことができる。
【0088】
また、この先端支持杭201は、山留工事終了後に被膜芯材1が引き抜かれる。このときにも水硬性組成物の硬化物と芯材2との付着は防いでいるので容易に引き抜くことができる。また、周面用被膜材3は下側の両面テープ5に密着していることから芯材2からの脱落を防いでいるため、被膜芯材1を確実に回収することができる。なお、先端支持杭201に、第1の実施の形態の被膜芯材1に代えて第2の実施の形態の被膜芯材301を使用しても良い。