(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
周方向に複数設けられ軸方向に貫通したスロットと各前記スロットの径方向内側で前記スロットの内部及び径方向内側に開口し前記スロットの周方向の幅よりも周方向に狭い複数のスリットとを有する電機子コアと、
各前記スロットの内周面を被覆する複数の絶縁部材と、
前記絶縁部材の内側を通るように前記スロットに挿入され巻線を構成する複数の導体とを備えたステータの製造方法であって、
シート状の絶縁材料から、互いに対向する2つの対向部と2つの前記対向部の互いに対向する一端部同士を連結する絶縁連結部とからなり断面略コ字状をなす前記絶縁部材を形成する絶縁部材形成工程と、
2つの前記対向部を前記対向部の厚さ方向に近づけて前記絶縁部材が前記スロットの周方向の幅以下となるように前記絶縁部材を撓ませた状態で、2つの前記対向部における前記絶縁連結部と反対側の端部を軸方向から前記スリットに挿入しつつ前記絶縁部材を軸方向から前記スロットに挿入する絶縁部材挿入工程と、
前記絶縁部材の内側に前記導体を軸方向から挿入する導体挿入工程と、
を備えており、
前記導体挿入工程よりも前に、前記スロットに挿入された前記絶縁部材を前記スロットの内周面に沿うように変形させる変形工程を備えたことを特徴とするステータの製造方法。
環状をなす環状部と、前記環状部から径方向内側に延び先端部に周方向に突出したロータ対向部を有する複数のティースと、前記ティース間に形成された複数のスロットと、各前記スロットの径方向内側で周方向に対向する前記ロータ対向部の先端面間に形成され前記スロットの内部及び径方向内側に開口するとともに前記スロットの周方向の幅よりも周方向に狭い複数のスリットとを有する電機子コアと、
各前記スロットの内周面を被覆する複数の絶縁部材と、
前記絶縁部材の内側を通るように前記スロットに挿入され巻線を構成する複数の導体とを備えたステータであって、
前記ロータ対向部の先端面の径方向の長さは、前記ロータ対向部の周方向の突出量よりも長く、
前記絶縁部材は、シート状をなし、前記スロットの周方向の両側面をそれぞれ被覆する2つの対向部と、2つの前記対向部の径方向外側の端部を連結し前記スロットの径方向外側の側面を被覆する絶縁連結部とから構成されるとともに、2つの前記対向部の径方向内側の端部が前記スリットの内部に配置されていることを特徴とするステータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたステータでは、絶縁部材の厚さの2倍の厚さとなるラップ部がスロットの内部に存在するため、このラップ部によって巻線の占有面積が減少されてしまう、即ち占積率が低下されるという問題があった。
【0006】
また、特許文献1に記載されているようにスロットの内周面に対応した四角筒状に整形した絶縁部材をスロットに挿入する際には、絶縁部材を撓ませながら挿入することがある。この場合、絶縁部材の端部が重なり合ったラップ部、及び四角筒状の絶縁部材の四隅の角部は撓み難いため、当該絶縁部材をスロットの周方向の幅よりも狭く変形させることが困難である。そのため、スロットの軸方向の開口縁部や、スロットの内周面に絶縁部材が擦れないように該絶縁部材をスロットに挿入することが困難である。従って、スロットの軸方向の開口縁部や、スロットの内周面に絶縁部材が擦れた場合のことを考慮すると、導体と電機子コアとの間の絶縁性を確保するためには、絶縁部材の厚さを厚くしておくことが望ましい。しかしながら、絶縁部材の厚さを厚くすると、占積率の低下が懸念される。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、導体と電機子コアとの間の絶縁性を確保しつつ占積率の低下を抑制することができるステータの製造方法、ステータ及びモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、周方向に複数設けられ軸方向に貫通したスロットと各前記スロットの径方向内側で前記スロットの内部及び径方向内側に開口し前記スロットの周方向の幅よりも周方向に狭い複数のスリットとを有する電機子コアと、各前記スロットの内周面を被覆する複数の絶縁部材と、前記絶縁部材の内側を通るように前記スロットに挿入され巻線を構成する複数の導体とを備えたステータの製造方法であって、シート状の絶縁材料から、互いに対向する2つの対向部と2つの前記対向部の互いに対向する一端部同士を連結する絶縁連結部とからなり断面略コ字状をなす前記絶縁部材を形成する絶縁部材形成工程と、2つの前記対向部を前記対向部の厚さ方向に近づけて前記絶縁部材が前記スロットの周方向の幅以下となるように前記絶縁部材を撓ませた状態で、2つの前記対向部における前記絶縁連結部と反対側の端部を軸方向から前記スリットに挿入しつつ前記絶縁部材を軸方向から前記スロットに挿入する絶縁部材挿入工程と、前記絶縁部材の内側に前記導体を軸方向から挿入する導体挿入工程と、を備え
ており、前記導体挿入工程よりも前に、前記スロットに挿入された前記絶縁部材を前記スロットの内周面に沿うように変形させる変形工程を備えたことをその要旨としている。
請求項2に記載の発明は、周方向に複数設けられ軸方向に貫通したスロットと各前記スロットの径方向内側で前記スロットの内部及び径方向内側に開口し前記スロットの周方向の幅よりも周方向に狭い複数のスリットとを有する電機子コアと、各前記スロットの内周面を被覆する複数の絶縁部材と、前記絶縁部材の内側を通るように前記スロットに挿入され巻線を構成する複数の導体とを備えたステータの製造方法であって、シート状の絶縁材料から、互いに対向する2つの対向部と2つの前記対向部の互いに対向する一端部同士を連結する絶縁連結部とからなり断面略コ字状をなす前記絶縁部材を形成する絶縁部材形成工程と、2つの前記対向部を前記対向部の厚さ方向に近づけて前記絶縁部材が前記スロットの周方向の幅以下となるように前記絶縁部材を撓ませた状態で、2つの前記対向部における前記絶縁連結部と反対側の端部を軸方向から前記スリットに挿入しつつ前記絶縁部材を軸方向から前記スロットに挿入する絶縁部材挿入工程と、前記絶縁部材の内側に前記導体を軸方向から挿入する導体挿入工程と、を備えており、前記電機子コアは、環状をなす環状部と、前記環状部から径方向内側に延び先端部に周方向に突出したロータ対向部を有する複数のティースとを備え、前記ティース間に前記スロットが形成されるとともに周方向に対向する前記ロータ対向部の先端面間に前記スリットが形成されるものであり、前記ロータ対向部の先端面の径方向の長さは、前記ロータ対向部の周方向の突出量よりも長いことをその要旨としている。
【0009】
請求項1及び請求項2に記載の発明の方法によれば、絶縁部材形成工程で形成される絶縁部材は、断面略コ字状をなすため、2つの対向部における絶縁連結部と反対側の端部、即ちコ字状の開口部側の端部を容易に接離させることができる。従って、絶縁部材における絶縁連結部と反対側の端部の幅を狭くしながら、同絶縁部材の幅を対向部の厚さ方向に容易に狭くすることができる。よって、絶縁部材をスロットの周方向の幅よりも狭くなるように容易に変形させる(撓ませる)ことができるため、絶縁部材挿入工程において絶縁部材をスロットに挿入するときに、絶縁部材がスロットの内周面に接触することを抑制できる。その結果、絶縁部材の損傷が抑制されるため、厚さの薄い絶縁材料から絶縁部材を形成した場合であっても、導体と電機子コアとの間の絶縁性を確保することができる。また、スロットの内部で絶縁部材が重なり合う部位が形成されないため、絶縁部材による占積率の低下を抑制できる。これらのことから、導体と電機子コアとの間の絶縁性を確保しつつ占積率の低下を抑制することができる。
また、請求項1に記載の発明の方法によれば、変形工程において絶縁部材がスロットの内周面に沿って変形されると、絶縁部材の内側の空間が周方向に拡がる。従って、絶縁部材の内側に導体をより容易に挿入できるため、導体の先端部で絶縁部材を傷つけることをより抑制できる。
また、請求項2に記載の発明の方法によれば、絶縁部材挿入工程において絶縁部材がスロットに挿入されると、2つの対向部の径方向内側の端部(即ち2つの対向部における絶縁連結部と反対側の端部)は、スリットの内部に挿入される。そして、絶縁部材は、変形工程においてスロットの内周面に沿って変形されたときに、2つの対向部の径方向内側の端部がスリットの内部に配置されるように形成されていれば、スロットの内周面を全体的に被覆することができる。従って、本発明のように、ロータ対向部の先端面の径方向の長さが、ロータ対向部の周方向の突出量よりも長いと、変形工程の後に2つの対向部の径方向内側の端部が配置されてもよい範囲が径方向に広くなる。そのため、絶縁部材における2つの対向部の絶縁連結部側の端部と絶縁連結部と反対側の端部との間の長さの寸法精度を緩和することができる。その結果、ステータの製造コストを低減することができる。
【0010】
請求項
3に記載の発明は、請求項1
又は請求項2に記載のステータの製造方法において、前記絶縁部材挿入工程の後に、前記スロットから軸方向に突出した前記絶縁部材の軸方向の一端部を周方向に拡開して、前記絶縁部材の軸方向の一端部に周方向に拡開された拡開部を形成する拡開工程を備え、前記導体挿入工程では、前記拡開部側から前記導体を前記絶縁部材の内側に挿入することをその要旨としている。
【0011】
同方法によれば、導体挿入工程では、拡開部側から絶縁部材の内側に導体を挿入することにより、絶縁部材の内側に導体を容易に挿入できるため、導体の先端部で絶縁部材を傷つけることを抑制できる。
【0012】
請求項
4に記載の発明は、請求項1
乃至請求項
3の何れか1項に記載のステータの製造方法において、前記絶縁部材挿入工程よりも前に、前記スロットの軸方向の開口部の開口縁部に面取り加工を施す面取り工程を備えたことをその要旨としている。
【0013】
同方法によれば、面取り工程において、スロットの軸方向の開口部の開口縁部に面取り加工が施されることにより、その後に行われる絶縁部材挿入工程において、スロットの軸方向の開口部の開口縁部に絶縁部材が擦れたとしても、当該絶縁部材がスロットの軸方向の開口部の開口縁部によって傷つけられることが抑制される。
【0018】
請求項
5に記載の発明は、請求項1乃至請求項
4の何れか1項に記載のステータの製造方法において、前記導体は、2本の直線部とそれら直線部を繋ぐ連結部とを有し略U字状をなすセグメント導体であり、前記導体挿入工程では、各前記セグメント導体における2本の前記直線部を周方向にずれた異なる前記スロットにそれぞれ挿入することをその要旨としている。
【0019】
同方法によれば、セグメント導体によって巻線が構成されるため、より占積率を高くすることができる。
請求項
6に記載の発明は、環状をなす環状部と、前記環状部から径方向内側に延び先端部に周方向に突出したロータ対向部を有する複数のティースと、前記ティース間に形成された複数のスロットと、各前記スロットの径方向内側で周方向に対向する前記ロータ対向部の先端面間に形成され前記スロットの内部及び径方向内側に開口するとともに前記スロットの周方向の幅よりも周方向に狭い複数のスリットとを有する電機子コアと、各前記スロットの内周面を被覆する複数の絶縁部材と、前記絶縁部材の内側を通るように前記スロットに挿入され巻線を構成する複数の導体とを備えたステータであって、前記ロータ対向部の先端面の径方向の長さは、前記ロータ対向部の周方向の突出量よりも長く、前記絶縁部材は、シート状をなし、前記スロットの周方向の両側面をそれぞれ被覆する2つの対向部と、2つの前記対向部の径方向外側の端部を連結し前記スロットの径方向外側の側面を被覆する絶縁連結部とから構成されるとともに、2つの前記対向部の径方向内側の端部が前記スリットの内部に配置されていることをその要旨としている。
【0020】
同構成によれば、シート状の絶縁部材は、2つの対向部における絶縁連結部と反対側の端部、即ち2つの対向部の径方向内側の端部を容易に接離させることができる。従って、絶縁部材における絶縁連結部と反対側の端部の幅を狭くしながら、同絶縁部材の幅を対向部の厚さ方向に容易に狭くすることができる。よって、絶縁部材をスロットの周方向の幅よりも狭くなるように容易に変形させる(撓ませる)ことができるため、絶縁部材をスロットに挿入するときに、絶縁部材がスロットの内周面に接触することを抑制できる。その結果、絶縁部材の損傷が抑制されるため、絶縁部材の厚さが薄い場合であっても、導体と電機子コアとの間の絶縁性を確保することができる。また、スロットの内部で絶縁部材が重なり合う部位が形成されないため、絶縁部材による占積率の低下を抑制できる。これらのことから、導体と電機子コアとの間の絶縁性を確保しつつ占積率の低下を抑制することができる。
【0021】
また、絶縁部材は、2つの対向部の径方向内側の端部がスリットの内部に配置されるように形成されていれば、スロットの内周面を全体的に被覆することができる。従って、本発明のように、ロータ対向部の先端面の径方向の長さが、ロータ対向部の周方向の突出量よりも長いと、絶縁部材において2つの対向部の径方向内側の端部が配置されてもよい範囲が径方向に広くなる。そのため、対向部の径方向の長さの寸法精度を緩和することができる。その結果、ステータの製造コストを低減することができる。
【0022】
請求項
7に記載の発明は、請求項
6に記載のステータと、環状のロータコア及び前記ロータコアに固定された一方の磁極の複数のマグネットを有し前記ステータの内側に配置されたコンシクエントポール型のロータとを備え、前記ロータは、前記ロータコアを構成するロータコア材より比重及び磁性が小さい小磁性軽量部を有するモータとしたことをその要旨としている。
【0023】
同構成によれば、コンシクエントポール型のロータをモータに備えたことにより、ロータに取着するマグネットの数を半減できる。従って、このモータの製造コストを低減することができる。また、ロータは小磁性軽量部を有するため、ロータを軽量にし、モータ全体の重量を軽量化することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、導体と電機子コアとの間の絶縁性を確保しつつ占積率の低下を抑制することができるステータの製造方法、ステータ及びモータを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、モータ1のモータケース2は、有底筒状に形成された筒状ハウジング3と、該筒状ハウジング3のフロント側(
図1中、左側)の開口部を閉塞するフロントエンドプレート4とを有している。また、筒状ハウジング3のリア側(
図1中、右側)の端部には、回路基板等の電源回路を収容した回路収容ボックス5が取着されている。
【0027】
筒状ハウジング3の内周面にはステータ6が固定されている。ステータ6は、電機子コア7を備えている。電機子コア7は、鋼板よりなる板状のコアシート11を複数枚積層して形成されている。そして、
図2に示すように、電機子コア7は、円環状をなす環状部12と、該環状部12から径方向内側に延びる周方向に複数のティース13とを有する。本実施形態では、ティース13は、60個形成されている。
【0028】
図3に示すように、各ティース13の径方向内側の端部である先端部には、周方向の両側に突出した一対のロータ対向部13aが形成されている。各ロータ対向部13aの先端面(即ちロータ対向部13aにおける周方向の端面)は、径方向に略沿うように延びるとともに軸方向と平行をなす平面状の平坦面13bとなっている。周方向に対向するロータ対向部13aの平坦面13b同士は、互いに平行をなしている。また、平坦面13bの径方向の長さL1は、ロータ対向部13aにおける周方向の突出量L2よりも長く形成されている。更に、各ロータ対向部13aの径方向外側の端面は、各ロータ対向部13aの基端から先端に向かうに連れて環状部12から遠ざかるように傾斜した傾斜面13cとなっている。
【0029】
そして、電機子コア7においては、周方向に隣り合うティース13間に、電機子コア7を軸方向に貫通したスロットSが形成されている。更に、各ティース13の先端部に周方向に突出した前記ロータ対向部13aが設けられたことにより、各スロットSの径方向内側には、スロットSの周方向の幅W1よりもその周方向の幅W2が狭いスリット14が形成されている。各スリット14は、周方向に対向する平坦面13b間に形成された隙間である。各スリット14は、径方向両側に開口しており、径方向外側ではスロットの内部に開口し、径方向内側では電機子コア7の内側の空間(即ち、ティース13の径方向内側の先端面よりも径方向内側の空間)に開口している。更に、各スリット14は、軸方向の両側にも開口している。そして、このスリット14を介して、各スロットSは、電機子コア7の内側の空間と連通されている。尚、本実施形態では、各スロットSは、隣り合うティース13間の空間であって、平坦面13bよりも径方向外側となる部分(即ち、ティース13の周方向の両側面におけるロータ対向部13aよりも径方向外側の部位、傾斜面13c、及び隣り合うティース13間で径方向内側に露出した環状部12の内側面によって囲まれた空間)である。
【0030】
図4(a)及び
図4(b)に示すように、各スロットSの軸方向の両端開口部の開口縁部には、各スロットSにおける開口部の角部を面取りした面取り部15が形成されている。面取り部15は、例えば、プレス加工により、スロットSの軸方向の開口部の開口縁部の角部を押圧することにより形成される。本実施形態では、面取り部15は、スロットSの軸方向の開口部の開口縁部を、円弧状に面取りした形状をなしている。
【0031】
図3に示すように、各スロットSには、絶縁性の樹脂材料から形成されたシート状の絶縁部材16がそれぞれ挿入されている。本実施形態の絶縁部材16の厚さは、前記スリット14の周方向の幅W2の半分よりも小さい値となっている。各絶縁部材16は、該絶縁部材16の両端部が互いに対向するように折り返した形状をなすとともに、スロットSに軸方向から挿入されている。この絶縁部材16は、スロットSの周方向の両側面をそれぞれ被覆する2つの対向部16a,16bと、2つの対向部16a,16bの径方向外側の端部を連結しスロットSの径方向外側の側面を被覆する絶縁連結部16cとから構成されている。そして、2つの対向部16a,16bの径方向内側の端部は、前記スリット14の内部に配置されている。また、各絶縁部材16において、2つの対向部16a,16bは、周方向に離間している。そして、スロットSに挿入された絶縁部材16は、スロットSの内周面に沿うように整形されており、スロットSの内周面(即ち、ティース13の周方向の両側面におけるロータ対向部13aよりも径方向外側の部位、傾斜面13c、及び隣り合うティース13間で径方向内側に露出した環状部12の内側面)を被覆している。更に、各絶縁部材16の2つの対向部16a,16bの径方向内側の端部は、スリット14内で平坦面13bを被覆している。また、
図5に示すように、絶縁部材16は、スロットSの軸方向の長さよりも軸方向に長く形成されており、スロットSの軸方向の両端開口部からスロットSの外部に突出している。
【0032】
図2に示すように、電機子コア7には、複数のセグメント導体17同士が電気的に接続されて構成される3相(U相、V相、W相)Y結線のセグメント巻線18が巻装されている。セグメント導体17は、同一断面形状の線材から形成してなるものであり、
図5及び
図6に示すように、周方向位置の異なるスロットSを貫通するとともにスロットS内において異なる径方向位置(内側と外側)に配置される2本の直線部17a,17bと、それら直線部17a,17bを繋ぐ連結部17cとを有する略U字状に形成されたものである。
【0033】
また、
図4及び
図6に示すように、本実施形態のステータ6は、スロットS内に前記直線部17a,17bが径方向に4つ並んで配置されるものである。そして、前記セグメント導体17は、2つの直線部17a,17bが径方向内側から1つ目と4つ目に配置されるもの(
図6において外側に図示されたセグメント導体17x)と、2つの直線部17a,17bが径方向内側から2つ目と3つ目に配置されるもの(
図6において内側に図示されたセグメント導体17y)の2種類が用いられている。尚、セグメント巻線18は、主に上記した略U字状の2種類のセグメント導体17にて構成されるが、その一部であって例えば巻線端部(電源接続端子や中性点接続端子等)となるものは、特殊な種類のセグメント導体(例えば、直線部が1つだけのセグメント導体)が用いられる。
【0034】
そして、
図5及び
図6に示すように、各直線部17a,17bは、スロットSを軸方向に貫通して外部に突出したその先端部が変形されて(折り曲げられて)他の先端部や特殊な種類のセグメント導体と溶接等により電気的に接続されている。このように、各直線部17a,17bの先端部が他の直線部17a,17bの先端部や特殊な種類のセグメント導体と電気的に接続されることで、複数のセグメント導体17によってセグメント巻線18が構成されることになる。尚、各直線部17a,17bは、絶縁部材16の内側に挿入されてスロットSを貫通している。そして、各直線部17a,17bの先端側の部位は、前記絶縁部材16を介して前記面取り部15に押し付けられるように面取り部15付近で屈曲されている。
図6では、屈曲された直線部17a,17bの先端側の部位を二点鎖線で図示している。また、各セグメント導体17は、各セグメント導体17と電機子コア7との間に介在された絶縁部材16によって、電機子コア7と電気的に絶縁されている。
【0035】
図1に示すように、ステータ6の内側には、該ステータ6と径方向に対向するロータ21が配置されている。ロータ21は、回転軸22に貫挿固着されている。回転軸22は、本実施形態では、金属(好ましくは非磁性体材)製シャフトであって、筒状ハウジング3の底部3aに支持された軸受24及びフロントエンドプレート4に支持された軸受25により軸支されている。
【0036】
回転軸22に固着されたロータ21は、コンシクエントポール型のロータである。ロータ21は、
図7に示すように、鋼板よりなるロータ用コアシート26が複数枚積層されて形成された環状のロータコア27を有し、該ロータコア27が回転軸22に外嵌されて固着されている。
【0037】
ロータコア27は、
図1、
図2及び
図7に示すように、円筒状に形成され回転軸22に外嵌される軸固定筒部31と、その軸固定筒部31の外側面を一定の間隔を空けて内包する磁石固定筒部32と、軸固定筒部31と磁石固定筒部32とを一定の間隔に連結する橋絡部33とを有している。
【0038】
磁石固定筒部32の外周面には、周方向に5個の扇形状の凹部32aが等角度に、軸方向全体に凹設されている。そして、扇状の凹部32aを形成することで、磁石固定筒部32における凹部32aの間に5個の突極34が形成されている。
【0039】
周方向に形成された5個の凹部32aには、マグネット35が固着配置されている。5個のマグネット35は、ロータコア27に対して、径方向において内側の面がN極に、径方向においてステータ6側(外側)の面がS極となるように配置される。その結果、マグネット35に対し周方向に隣り合う突極34の外側面(ステータ6側の面)はマグネット35の外側面と異なる磁極であるN極となる。
【0040】
尚、本実施形態のロータ21に対するステータ6におけるティース13の個数「Z」は、以下のように設定している。
ロータ21のマグネット35の個数(=磁極対)を「p」(但し、pは2以上の整数)とし、セグメント巻線18の相数を「m」とすると、ティース13の個数「Z」は、
「Z=2×p×m×n」(但し、「n」は自然数)
となるように構成されている。
【0041】
本実施形態では、この数式に基づいて、ティース13の個数「Z」は、Z=2×5(マグネット35の個数)×3(相数)×2=60(個)とされている。
また、軸固定筒部31と磁石固定筒部32とを連結保持する橋絡部33は、ロータ21に5個設けられている。各橋絡部33は、軸固定筒部31の外周面から延出形成されるとともに、磁石固定筒部32の内周面と連結されている。また、各橋絡部33は、磁石固定筒部32の内周面に対し、マグネット35を固着した凹部32aと対応した位置で連結されている。しかも、各橋絡部33は、その周方向の中心位置(角度)がマグネット35の周方向の中心位置(角度)と径方向に並ぶ(角度が一致する)ように設けられている。そして、軸固定筒部31の外側面と磁石固定筒部32の内側面との間に形成された空間は、周方向に5個配置された橋絡部33にて5個に分割され、軸固定筒部31と磁石固定筒部32との間に軸方向に貫通した5個の空隙36が形成される。この空隙36は、積層鋼板よりなるロータコア材よりも比重及び磁性が小さいことから、ロータコア27は、この空隙36が形成されることによって軽量となり、モータ1を軽量化することができる。
【0042】
図1及び
図2に示すように、上記したモータ1では、回路収容ボックス5内の電源回路からセグメント巻線18に駆動電流が供給されると、ステータ6でロータ21を回転させるための回転磁界が発生され、ティース13とロータ21間で磁束が授受されつつロータ21が回転駆動される。
【0043】
次に、本実施形態のステータ6の製造方法を説明する。
まず、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、スロットSの軸方向の両端開口部の開口縁部に面取りを施す面取り工程を行う。面取り工程では、各スロットSの軸方向の両端開口部の開口縁部の角部にプレス加工を施すことにより、当該角部に円弧状の面取りを施す。これにより、各スロットSの軸方向の両端開口部の開口縁部には、円弧状の面取り部15が形成される。
【0044】
次に、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、シート状の絶縁材料41から断面略コ字状をなす絶縁部材16を形成する絶縁部材形成工程を行う。絶縁材料41は四角形のシート状をなしている。そして、絶縁部材形成工程では、絶縁材料41を、該絶縁材料41の両端部が互いに対向するように折り返す。これにより、絶縁材料41からは、互いに対向する2つの対向部16a,16bと、2つの対向部16a,16bの互いに対向する一端部同士を連結する絶縁連結部16cとからなり断面コ字状をなす絶縁部材16が形成される。
【0045】
絶縁部材形成工程で形成された絶縁部材16においては、対向部16a,16bは、厚さ方向に互いに対向するとともに、平行をなしている。また、絶縁連結部16cは四角形の短冊状をなすとともに、対向部16a,16bと絶縁連結部16cとは直角をなしている。そして、絶縁部材16の幅W3(絶縁部材16における対向部16a,16bの対向方向の幅)は、スロットSの周方向の幅W1(
図3参照)よりも若干狭くなっている。更に、絶縁部材16の長さL3(対向部16a,16b及び絶縁連結部16cと平行な方向の長さ)は、スロットSの軸方向の長さよりも長く形成されている。また、対向部16a,16bにおける絶縁連結部16cと直交する方向の長さL4は、
図10に示すスロットSの径方向の長さL5よりも長く、本実施形態では、ティース13の径方向の長さ(即ちティース13の基端と先端との間の長さ)と略等しくなっている。
【0046】
次に、
図9に示すように、絶縁部材16をスロットSに挿入する絶縁部材挿入工程が行われる。絶縁部材挿入工程では、前記絶縁部材形成工程で形成された絶縁部材16の対向部16a,16bを、図示しない駆動装置にて駆動される一対の治具51,52によって対向部16a,16bの対向方向の両側から緩く挟み、対向部16a,16bを互いに近接させると同時に、対向部16a,16b間の間隔を狭めるように絶縁連結部16cを撓ませる。治具51,52にて挟まれた絶縁部材16は、絶縁部材形成工程で形成された形状から変形して(撓んで)、
図10に示すように、その幅W4がスロットSの周方向の幅W1よりも狭くなっている。更に、対向部16a,16bにおける絶縁連結部16cと反対側の端部においては、絶縁部材16の幅W5は、スリット14の周方向の幅W2よりも狭くなっている。
【0047】
そして、
図9に示すように、治具51,52にて挟まれた絶縁部材16は、絶縁連結部16c側の端部が電機子コア7の径方向外側を向くように、且つ絶縁連結部16cと反対側の端部が電機子コア7の径方向内側を向くように、スロットSの軸方向の一端開口部と軸方向に対向配置される。このとき、絶縁連結部16cは、電機子コア7の軸方向に沿って延びている。そして、図示しない器具によって、絶縁部材16を、電機子コア7の軸方向に沿って治具51,52に対して移動させることにより、スロットSの軸方向の一端開口部から電機子コア7の軸方向に沿って絶縁部材16をスロットSの内部に挿入する。このとき、一対の対向部16a,16bにおける絶縁連結部16cと反対側の端部は、軸方向からスリット14内に挿入される。また、
図10に示すように、2つの対向部16a,16bにおける絶縁連結部16cと反対側の端部(即ち対向部16a,16bの径方向内側の端部)は、スリット14から電機子コア7の内側に突出可能である。更に、前記したように、絶縁部材16は、治具51,52によって挟まれることにより、その幅W4がスロットSの周方向の幅W1よりも狭くなっているとともに、該絶縁部材16における絶縁連結部16cと反対側の端部の幅W5が、スリット14の周方向の幅W2よりも狭くなっている。そのため、絶縁部材16は、スロットSの内周面並びにスリット14の内側面(即ち平坦面13b)に接触することなくスロットSの内部に挿入されることが可能である。
【0048】
そして、絶縁部材16は、スロットSを軸方向に貫通してスロットSの軸方向の両側の開口部から軸方向の両側に突出した状態となるまでスロットS内に挿入される。各スロットSに挿入された絶縁部材16は、治具51,52による拘束力が解除されるため、
図11に示すように、絶縁部材16の弾性力によって対向部16a,16bが周方向に互いに離間するように開く。従って、対向部16a,16bにおける絶縁連結部16cと反対側の端部、即ち対向部16a,16bの径方向内側の端部が、スリット14の内側面に接触する。よって、対向部16a,16bの径方向内側の端部とスリット14の内側面との間の摩擦力によって、絶縁部材16は、スロットSの内部に保持されやすくなっている。
【0049】
次に、絶縁部材16をスロットSの内周面に沿うように変形させる絶縁部材変形工程が行われる。
図14に示すように、絶縁部材変形工程では、スロットSの断面形状(軸方向と直交する断面形状)よりも一回り小さい(絶縁部材16の厚さの分だけ小さい)断面形状を備えた棒状の加熱器具61を用いる。加熱器具61は、図示しない駆動装置によって電機子コア7の軸方向に沿って移動可能である。そして、所定の温度に加熱した加熱器具61を、各絶縁部材16の内側に挿入することにより、各絶縁部材16をスロットSの内周面に沿うように変形させる。このとき、加熱器具61は、スロットSの軸方向の一端開口部からスロットS内に挿入されるとともに、スロットSの約3分の1の深さまで挿入される。これにより、各スロットSの軸方向の一端開口部側では、絶縁部材16がスロットSの内周面に沿った形状となるため、絶縁部材16の内側の空間が周方向に拡がる。
【0050】
次に、
図12(a)及び
図12(b)に示すように、スロットSから軸方向に突出した絶縁部材16の軸方向の一端部を周方向に拡開する拡開工程を行う。拡開工程では、スロットSの軸方向の一端開口部から突出している絶縁部材16の軸方向の一端部に、所定温度に加熱された加熱成形器71を圧接する。加熱成形器71は、略四角錐状をした複数の加熱成形部72が一体となって連なっている。尚、
図12(a)及び
図12(b)では、複数の加熱成形部72のうち1つのみを図示している。加熱成形部72の先端部72aは、スロットSの形状に対応した形状をなしており、スロットSに挿入可能となっている。また、加熱成形部72の基端側の部位は、その周方向の幅が、スロットSの周方向の幅よりも広く形成されている。更に、複数(本実施形態では30個)の加熱成形部72は、1つ置きのスロットSに同時に挿入できるように、周方向に所定の間隔を空けて配置されている。
【0051】
図12(a)に示すように、所定温度に加熱された加熱成形部72が、加熱成形器71の図示しない駆動装置によって、スロットSの軸方向の一端開口部から突出した絶縁部材16の軸方向の一端部の内側に軸方向から当接するように移動される。尚、スロットSの軸方向の一端開口部から突出した絶縁部材16の軸方向の一端部は、前記変形工程において加熱器具61が挿入された側の端部である。そして、
図12(b)に示すように、加熱成形部72は、その先端部72aがスロットSの軸方向の一端開口部からスロットSの内部に挿入されるまで、絶縁部材16の内側に押し付けられる。これにより、スロットSの軸方向の一端開口部から突出した絶縁部材16の軸方向の一端部は、加熱成形部72の外形形状に応じて周方向に拡開される。即ち、スロットSの軸方向の一端開口部から突出した絶縁部材16の軸方向の一端部に、周方向に拡開した拡開部44が形成される。
【0052】
本実施形態の拡開工程では、
図13(a)に示すように、周方向に一つ置きのスロットS内に挿入された絶縁部材16の軸方向の一端部に拡開部44を形成すると、駆動装置によって加熱成形部72が電機子コア7から軸方向に離間される。その後、駆動装置によって加熱成形部72が1スロット分だけ周方向に移動され、
図13(b)に示すように、加熱成形部72によって同様にして残りの一つ置きのスロットS内に挿入された絶縁部材16の軸方向の一端部に拡開部44が形成される。
【0053】
次に、
図15に示すように、スロットS内に挿入された絶縁部材16の内側に複数のセグメント導体17を軸方向から挿入する導体挿入工程を行う。導体挿入工程では、略U字状のセグメント導体17の2本の直線部17a,17bを、周方向に所定の個数だけ離間した2つのスロットSにそれぞれ挿入する。直線部17a,17bは、絶縁部材16の内側に拡開部44側から挿入される。また、セグメント導体17は、スロットSの軸方向の他端開口部(即ち、拡開部44と反対側の開口部)から直線部17a,17bの先端部がスロットSの外部に突出するまで、電機子コア7の軸方向に沿って電機子コア7に対して移動される。
【0054】
次に、スロットSの軸方向の他端開口部から突出した直線部17a,17bの先端部を周方向に屈曲する屈曲工程が行われる。
図5に示すように、屈曲工程では、各直線部17a,17bは、スロットSの軸方向の他端開口部の開口縁部に設けられた面取り部15との間に絶縁部材16が介在された状態で、面取り部15に対して押圧されながら該面取り部15付近で周方向に屈曲される。そして、各直線部17a,17bの先端部が周方向に屈曲されることにより、各直線部17a,17bの先端は、それぞれ接続される別の直線部17a,17bと隣り合う位置に配置される。
【0055】
次に、直線部17a,17bを電気的に接続する接続工程が行われる。接続工程では、各直線部17a,17bを、それぞれ別の直線部17a,17bと溶接により電気的に接続する。これにより、複数のセグメント導体17からセグメント巻線18が形成され、こうしてステータ6が完成する。
【0056】
次に、本実施形態のステータ6の製造方法の作用を述べる。
絶縁部材形成工程で形成される絶縁部材16は、断面略コ字状をなすため、2つの対向部16a,16bにおける絶縁連結部16cと反対側の端部、即ちコ字状の開口部側の端部を容易に近接させることができる。従って、絶縁部材挿入工程において、絶縁部材16における絶縁連結部16cと反対側の端部の幅を狭くしながら、同絶縁部材16の幅を対向部16a,16bの厚さ方向に容易に狭くすることができる。よって、絶縁部材16をスロットSの周方向の幅よりも狭くなるように容易に変形させる(撓ませる)ことができる。
【0057】
上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)絶縁部材形成工程で形成される絶縁部材16は、断面略コ字状をなすため、2つの対向部16a,16bにおける絶縁連結部16cと反対側の端部、即ちコ字状の開口部側の端部を容易に接離させることができる。従って、絶縁部材16における絶縁連結部16cと反対側の端部の幅を狭くしながら、同絶縁部材16の幅を対向部16a,16bの厚さ方向に容易に狭くすることができる。よって、絶縁部材16をスロットSの周方向の幅W1よりも狭くなるように容易に変形させる(撓ませる)ことができるため、絶縁部材挿入工程において絶縁部材16をスロットSに挿入するときに、絶縁部材16がスロットSの内周面に接触することを抑制できる。その結果、絶縁部材16の損傷が抑制されるため、厚さの薄い絶縁材料41から絶縁部材16を形成した場合であっても、セグメント導体17と電機子コア7との間の絶縁性を確保することができる。また、スロットSの内部で絶縁部材16が重なり合う部位が形成されないため、絶縁部材16による占積率の低下を抑制できる。これらのことから、セグメント導体17と電機子コア7との間の絶縁性を確保しつつ占積率の低下を抑制することができる。
【0058】
(2)導体挿入工程では、拡開部44側から絶縁部材16の内側にセグメント導体17を挿入することにより、絶縁部材16の内側にセグメント導体17を容易に挿入できるため、直線部17a,17bの先端部で絶縁部材16を傷つけることを抑制できる。その結果、絶縁部材16の厚さを薄くすることに貢献できる。
【0059】
(3)面取り工程において、スロットSの軸方向の両端開口部の開口縁部に面取り加工が施されることにより、その後に行われる絶縁部材挿入工程において、スロットSの軸方向の両端開口部の開口縁部に絶縁部材16が擦れたとしても、当該絶縁部材16がスロットSの軸方向の両端開口部の開口縁部によって傷つけられることが抑制される。従って、絶縁部材16の厚さを薄くすることに貢献できる。
【0060】
(4)変形工程において絶縁部材16がスロットSの内周面に沿って変形されると、絶縁部材16の内側の空間が周方向に拡がる。従って、絶縁部材16の内側にセグメント導体17をより容易に挿入できるため、セグメント導体17の先端部で絶縁部材16を傷つけることをより抑制できる。これによっても、絶縁部材16の厚さを薄くすることに貢献できる。
【0061】
(5)絶縁部材挿入工程において絶縁部材16がスロットSに挿入されると、2つの対向部16a,16bの径方向内側の端部(即ち2つの対向部16a,16bにおける絶縁連結部16cと反対側の端部)は、スリット14の内部に挿入される。そして、絶縁部材16は、変形工程においてスロットSの内周面に沿って変形されたときに、2つの対向部16a,16bの径方向内側の端部がスリット14の内部に配置されるように形成されていれば、スロットSの内周面を全体的に被覆することができる。従って、本実施形態のように、ロータ対向部13aの先端面(即ち平坦面13b)の径方向の長さL1が、ロータ対向部13aの周方向の突出量L2よりも長いと、変形工程の後に2つの対向部16a,16bの径方向内側の端部が配置されてもよい範囲が径方向に広くなる。そのため、絶縁部材16における2つの対向部16a,16bの絶縁連結部16c側の端部と絶縁連結部16cと反対側の端部との間の長さ(即ち、長さL4)の寸法精度を緩和することができる。その結果、ステータ6の製造コストを低減することができる。
【0062】
(6)セグメント導体17によって巻線(セグメント巻線18)が構成されるため、より占積率を高くすることができる。その結果、出力当たりのモータ1の体格を小さくすることができる。また、スロットSの軸方向の両端開口部の開口縁部は、面取りが施されて面取り部15が形成されているため、セグメント導体17の直線部17a,17bを周方向に屈曲するときに、直線部17a,17bとスロットSの軸方向の開口部の開口縁部との間に挟まれた絶縁部材16が当該開口縁部によって損傷されることが抑制される。
【0063】
(7)ステータ6において、シート状の絶縁部材16は、2つの対向部16a,16bにおける絶縁連結部16cと反対側の端部、即ち2つの対向部16a,16bの径方向内側の端部を容易に接離させることができる。従って、絶縁部材16における絶縁連結部16cと反対側の端部の幅を狭くしながら、同絶縁部材16の幅を対向部16a,16bの厚さ方向に容易に狭くすることができる。よって、絶縁部材16をスロットSの周方向の幅よりも狭くなるように容易に変形させる(撓ませる)ことができるため、絶縁部材16をスロットSに挿入するときに、絶縁部材16がスロットSの内周面に接触することを抑制できる。その結果、絶縁部材16の損傷が抑制されるため、絶縁部材16の厚さが薄い場合であっても、セグメント導体17と電機子コア7との間の絶縁性を確保することができる。また、スロットSの内部で絶縁部材16が重なり合う部位が形成されないため、絶縁部材16による占積率の低下を抑制できる。これらのことから、セグメント導体17と電機子コア7との間の絶縁性を確保しつつ占積率の低下を抑制することができる。
【0064】
また、ステータ6において、絶縁部材16は、2つの対向部16a,16bの径方向内側の端部がスリット14の内部に配置されるように形成されていれば、スロットSの内周面を全体的に被覆することができる。従って、本実施形態のように、ロータ対向部13aの先端面(即ち平坦面13b)の径方向の長さL1が、ロータ対向部13aの周方向の突出量L2よりも長いと、各絶縁部材16において2つの対向部16a,16bの径方向内側の端部が配置されてもよい範囲が径方向に広くなる。そのため、対向部16a,16bの径方向の長さの寸法精度を緩和することができる。その結果、ステータ6の製造コストを低減することができる。
【0065】
(8)コンシクエントポール型のロータ21をモータ1に備えたことにより、ロータ21に取着するマグネット35の数を半減できる。従って、このモータ1の製造コストを低減することができる。また、ロータ21は空隙36を有するため、ロータ21を軽量にし、モータ1全体の重量を軽量化することができる。
【0066】
(9)絶縁部材16は、絶縁部材挿入工程において該絶縁部材16を撓ませていた治具51,52等の拘束力が無くなると、該絶縁部材16の弾性力によって原形に復帰しようとするため、2つの対向部16a,16b同士が周方向に離間する。そのため、各絶縁部材16において周方向に離間した2つの対向部16a,16bは、スロットSの周方向の幅W1よりも周方向に狭いスリット14の内部で、スリット14の内側面(即ち平坦面13b)に接触する。このように、スリット14の内部に挿入された2つの対向部16a,16bがスリット14の内側面に接触することで、絶縁部材16は、電機子コア7に対して移動し難くなるため、スロットSの内部に配置された状態に維持されやすい。従って、絶縁部材挿入工程の後に行われる工程を容易に行うことができる。
【0067】
(10)従来のように筒状にした絶縁部材をスロットに挿入する場合には、筒状の絶縁部材に高い寸法精度が要求される。これに対し、本実施形態の絶縁部材16は、2つの対向部16a,16bにおける絶縁連結部16cと反対側の端部が、スロットSの内部及び電機子コア7の径方向内側に開口したスリット14に挿入されるため、絶縁部材16の径方向の長さの寸法精度を緩和してもよい(寸法公差を大きく取ることができる)。その結果、ステータ6の製造コストをより低減させることができる。
【0068】
(11)絶縁部材挿入工程において、絶縁部材16は、2つの対向部16a,16bにおける絶縁連結部16cと反対側の端部が、スロットSの内部及び径方向内側に開口したスリット14に挿入される。従って、絶縁部材16を撓ませたときに、絶縁部材16の径方向(電機子コア7の径方向)の長さが長くなったとしても、容易に絶縁部材16をスロットSに挿入することができる。
【0069】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、ロータ21は、空隙36を備えているが、空隙36を備えない構成であってもよい。また、ロータ21は、コンシクエントポール型のロータに限らない。例えば、ロータ21は、N極のマグネットとS極のマグネットとが周方向に交互に配置されたものであってもよい。また、ロータ21は、磁極毎にマグネットがロータコアに埋設された磁石埋め込み型のロータであってもよい。また、ロータ21のマグネット35の数は、5個に限らず適宜変更してもよい。
【0070】
・上記実施形態では、スロットSに挿入される導体は、セグメント巻線18を構成する略U字状のセグメント導体17である。しかしながら、スロットSに挿入される導体は、セグメント導体17に限らず、銅線等からなるものであってもよい。
【0071】
・上記実施形態では、ロータ対向部13aの先端面(即ち平坦面13b)の径方向の長さL1は、ロータ対向部13aの周方向の突出量L2よりも長くなっている。しかしながら、ロータ対向部13aの先端面(即ち平坦面13b)の径方向の長さL1は、ロータ対向部13aの周方向の突出量L2以下の長さであってもよい。
【0072】
・上記実施形態では、絶縁部材挿入工程の後に、変形工程が行われ、次いで、拡開工程が行われている。しかしながら、絶縁部材挿入工程の後においては、絶縁部材16の2つの対向部16a,16bは周方向に離間しているので、セグメント導体17の挿入は可能であることから、変形工程及び拡径工程は必ずしも行わなくてもよい。また、必要に応じて、変形工程あるいは拡開工程の何れかを行うものでもよい。
【0073】
・上記実施形態では、拡開工程は、変形工程の後に行われるが、絶縁部材挿入工程よりも後であれば変形工程の前に行われてもよい。また、拡開工程は必ずしも行わなくてもよい。
【0074】
・上記実施形態の面取り工程では、スロットSの軸方向の両端開口部の開口縁部に面取り部15を形成しているが、スロットSの軸方向の両端開口部のうち何れか一方の開口部の開口縁部のみに面取り部15を形成してもよい。
【0075】
・上記実施形態では、面取り工程は、絶縁部材形成工程の前に行われている。しかしながら、面取り工程は、絶縁部材挿入工程よりも前であれば、いつ行われてもよい。また、面取り工程は必ずしも行わなくてもよい。
【0076】
・上記実施形態の変形工程では、加熱器具61は、スロットSの軸方向の一端開口部からスロットSの約3分の1の深さまで挿入される。しかしながら、変形工程において、加熱器具61をスロットSに挿入する量はこれに限らない。例えば、加熱器具61は、スロットSを貫通するまで同スロットSに挿入されてもよい。
【0077】
・上記実施形態の絶縁部材挿入工程では、絶縁部材16をスロットSの周方向の幅W1よりも狭くなるように撓ませる。しかしながら、絶縁部材挿入工程では、絶縁部材16をスロットSの周方向の幅W1と同じ幅となるように撓ませてもよい。
【0078】
・絶縁部材形成工程で形成される絶縁部材16の形状は、断面略コ字状であれば、上記実施形態の形状に限らない。尚、「断面略コ字状」とは、互いに対向する2つの対向部と、当該2つの対向部の互いに対向する端部同士を連結する絶縁連結部とから形成された絶縁部材の断面形状であって、例えば、断面U字状も含まれる。従って、絶縁部材16は、例えば、絶縁連結部16cから遠ざかるに連れて対向部16a,16b間の間隔が広くなるように形成されもよい。
【0079】
・上記実施形態では、電機子コア7は、60本のティース13を備えることにより、周方向に60個のスロットSを備えている。しかしながら、ティース13の本数(スロットSの個数)は適宜変更してもよい。