(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の面材のうち最も戸先側の面材は、他の面材よりも見付け方向の寸法が大きく形成され、前記全開係合部と前記全開被係合部とが係合する全開係合状態において、その一部が他の面材よりも前記枠体内に突出するように構成されている請求項1または請求項2に記載の建具。
前記複数の面材のうち少なくとも1つの面材と前記枠体とのうち一方には、前記係合部を構成する全閉係合部が設けられ、他方には、前記被係合部を構成する全閉被係合部が設けられ、
前記複数の面材が直線状に並びかつ前記枠体の内側に位置する全閉状態において、当該複数の面材が見付け方向にスライドした際に、前記全閉係合部と前記全閉被係合部とが係合することで、前記複数の面材が前記枠体に対して固定される請求項3から請求項5のいずれかに記載の建具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような構成では、折れ戸をスライドさせるための長孔を枠体に設けるため、建具の製造工程が複雑になるおそれがある。また、長孔にゴミが溜まってしまうことで開閉に支障をきたすおそれがあり、当該長孔のゴミを除去するメンテナンスが煩わしいという問題もある。
【0006】
本発明の目的は、簡単な操作で面材を枠体に固定できるとともに、製造工程の複雑化を抑制でき、かつ、煩わしいメンテナンスが不要な建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の建具は、枠体と、
複数の面材と、この面材の吊り元を前記枠体に支持する支持部とを備えた建具であって、
前記複数の面材は、互いに隣接する側端縁同士が回動自在に連結され、前記複数の面材のうち吊り元の面材以外の面材を、隣接する面材に対して回動させつつ前記見付け方向にスライド自在に支持する支持レールを備え、前記支持部は、前記枠体に取り付けられる枠体側取付部と、枠体側回動軸によって前記枠体側取付部に回動自在に連結された中間部と、前記
吊り元の面材に取り付けられるとともに、前記枠体側回動軸と平行な面材側回動軸によって前記中間部に回動自在に連結された面材側取付部とを備え、前記面材を、前記枠体に対して回動自在に、かつ、当該面材と前記枠体の見付け面との面方向が平行となった状態を維持しつつ見付け方向にスライド自在に支持し、
前記複数の面材のうち少なくとも1つの面材と前記枠体とのうち一方には、全開係合部が設けられ、他方には、
全開被係合部が設けられ、
前記複数の面材が重なりかつ前記枠体の外側に位置する全開状態において、当該複数の面材が見付け方向にスライドした際に、前記
全開係合部と前記
全開被係合部とが係合することで、前記
複数の面材が前記枠体に対して固定されることを特徴とする。
【0008】
ここで、面材の開閉方向としては、左右方向であっても良いし、上下方向であっても良い。また、建具としては、例えば両縦枠にそれぞれ1つずつ回動自在に支持された面材で構成される開き戸であっても良いし、隣接する面材が回動自在に連結された折れ戸であっても良い。さらに、面材と枠体の見付け面とが平行となった状態とは、面材が枠体内に位置する建具が閉じられた状態と、面材が枠体外に位置する開かれた状態との少なくとも一方を意味するものである。また、例えば屋外から見て左側の縦枠に面材を支持させた場合、面材を左側にスライドさせた際に、係合部と被係合部とが係合される構成であっても良いし、右側にスライドさせた際に係合される構成であっても良い。
なお、上述の「面材と枠体の見付け面との面方向が平行となった状態」、および、後述する「全ての面材と枠体の見付け面との面方向が平行となった状態」とは、厳密な平行な状態のみを意味するものではなく、以下の効果を奏する範囲において平行から若干ずれた状態をも含むものである。
また、全開係合部としては、ピンなどの棒状部材、あるいは爪部を有する弾性部材が例示できる。また、全開被係合部としては、棒状部材や弾性部材の爪部が係合される溝が例示できる。さらに、全開係合部または全開被係合部が設けられる面材は、複数の面材のうちすくなくとも1つの面材であれば良い。
【0009】
本発明によれば、面材側回動軸を中心にして面材を回動させることで、建具を開閉できる。また、中間部が枠体に対して枠体側回動軸を中心に回動可能、かつ、中間部が面材に対して面材側回動軸を中心に回動可能なため、面材と枠体の見付け面とが平行な状態を維持しつつ、面材を見付け方向にスライドさせることができ、係合部と被係合部とを係合させることにより面材を枠体に固定できる。
したがって、面材に設けた軸をスライドさせるための長孔を枠体に設けなくても、面材を見付け方向にスライドさせるだけの簡単な操作で、面材を枠体に固定することができる。さらに、従来の構成のような長孔を設ける必要がないため、建具の製造工程の複雑化を抑制できる上、長孔のゴミを除去するという煩わしいメンテナンスが不要となる。
また、本発明によれば、複数の面材から構成される折れ戸において、全開状態の面材をスライドさせるだけの簡単な方法で、面材を枠体に固定した状態(全開係合状態)にすることができる。なお、上述のあるいは後述する「面材が重なる状態」とは、面材が接触して重なっている状態であってもよいし、接触しないで重なっている状態であってもよい。
【0010】
この際、本発明の建具では、第1回動軸によって回動自在に連結された一対の第1取付部を有する第1丁番と、第2回動軸によって回動自在に連結された一対の第2取付部を有する第2丁番とを備え、前記枠体側取付部は、前記第1丁番の一方の第1取付部であり、前記枠体側回動軸は、前記第1回動軸であり、前記面材側取付部は、前記第2丁番の一方の第2取付部であり、前記面材側回動軸は、前記第2回動軸であり、前記中間部は、前記第1丁番の他方の第1取付部と、前記第2丁番の他方の第2取付部と、当該他方の第1取付部および当該他方の第2取付部を固定する固定部とで構成されていることが好ましい。
ここで、固定部としては、他方の第1取付部と他方の第2取付部とを間接的に固定する板状部材などであっても良いし、直接的に固定する接着剤やボルトおよびナットであっても良い。
本発明によれば、汎用品である丁番を固定部で固定するだけの簡単な構成で、上述の効果を奏することができる。
【0012】
さらに、本発明の建具では、前記複数の面材のうち最も戸先側の面材は、他の面材よりも見付け方向の寸法が大きく形成され、前記全開係合部と前記全開被係合部とが係合する全開係合状態において、その一部が他の面材よりも前記枠体内に突出するように構成されていることが好ましい。
本発明によれば、全開係合状態において、戸先側の面材の一部が他の面材よりも枠体内に突出するように構成されているため、当該突出する部分を手で持って複数の面材を全開状態にした後に、手を離すことなくそのまま面材をスライドさせることができ、建具を開ける操作を容易に行うことができる。
【0013】
また、本発明の建具では、前記枠体と前記最も戸先側の面材における前記枠体内に突出する部分とのうち一方には、規制係合部が設けられ、他方には、規制被係合部が設けられ、前記全開係合状態において、前記規制係合部と前記規制被係合部とが係合することで、前記全開係合部と前記全開被係合部との係合が解除される方向への前記複数の面材のスライドが規制されることが好ましい。
本発明によれば、全開係合状態において、規制係合部と規制被係合部との係合により、全開係合状態が解除される方向への複数の面材のスライドが規制されるので、複数の面材を枠体に適切に固定することができ、面材のがたつきを抑制できる。
【0014】
さらに、本発明の建具では、前記全開係合部と前記全開被係合部との係合位置は、前記支持部よりも前記枠体の外側に設定されていることが好ましい。
本発明によれば、支持部よりも枠体の外側において、複数の面材を枠体に固定するので、支持部よりも枠体の内側あるいは支持部と同じ位置において固定する場合と比べて、面材のがたつきを抑制できる。
【0015】
また、本発明の建具では、前記複数の面材のうち少なくとも1つの面材と前記枠体とのうち一方には、前記係合部を構成する全閉係合部が設けられ、他方には、前記被係合部を構成する全閉被係合部が設けられ、前記複数の面材が直線状に並びかつ前記枠体の内側に位置する全閉状態において、当該複数の面材が見付け方向にスライドした際に、前記全閉係合部と前記全閉被係合部とが係合することで、前記複数の面材が前記枠体に対して固定されることが好ましい。
ここで、全閉係合部および全閉被係合部としては、全開係合部および全開被係合部と同様のものが例示できる。また、全閉係合部を全開係合部として機能させても良いし、全閉被係合部を全開被係合部として機能させても良い。
本発明によれば、折れ戸において、全閉状態の面材をスライドさせるだけの簡単な方法で、面材を枠体に固定状態(全閉係合状態)にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る建具としての折れ戸1を図面に基づいて説明する。
図1および
図2に示すように、折れ戸1は、建物Bの開口部B1に設けられた引違い窓90の室外側に配置される雨戸である。この折れ戸1は、それぞれアルミ形材製の上枠11、下枠12、および左右の縦枠13を枠組みして形成された枠体10と、上枠11および下枠12の室外側面にそれぞれ設けられた上下の支持レール20と、2枚の吊り元面材30と、上下に設けられた折れ戸丁番31を介してそれぞれの吊り元面材30に回動自在に連結された2枚の戸先面材40と、2枚の吊り元面材30の吊り元を左右の縦枠13にそれぞれ開閉自在に支持する一対の支持部50とを備えている。
【0018】
図1から
図3に示すように、上枠11および下枠12の左右の端部には、枠体10の外側(以下、枠体外側という)に向けて略三角形板状に突出する片寄せ片14が設けられている。この片寄せ片14の枠体外側端部には、室外側に突出し被係合部を構成する全開被係合部15が設けられている。この全開被係合部15における枠体10の中央側(以下、枠体中央側という)の側縁は、室外側が室内側よりも枠体外側に位置するように傾斜しており、後述する開閉係合部42の係合ピン422が当接可能な全開斜辺部151を構成している。また、全開斜辺部151の室内側には、枠体中央側から枠体外側に向けて切り欠かれた全開係合溝部152が設けられている。
【0019】
また、縦枠13における上下方向略中央には、規制係合部としての施錠部16が設けられている。この施錠部16は、縦枠13に固定された施錠ベース161に対して回動自在に設けられた回動板部162と、この回動板部162の回動先端側に設けられたピン163とを備えている。
【0020】
支持レール20は、戸先面材40の戸先側の上端および下端にそれぞれ設けられた摺動部材41がスライド自在に係合可能な断面略コ字状に形成されている。この摺動部材41は、回転可能な戸車であってもよいし、回転しないローラであってもよい。この支持レール20の左右両端側には、例えば樹脂により略長方形板状に形成された全開ガイド部材21がそれぞれ嵌め込まれている。
図4に詳細に示すように、この全開ガイド部材21には、枠体中央側から外側に向けて延びるガイド溝部211が設けられている。このガイド溝部211における見込み方向の寸法は、枠体中央側端部が摺動部材41の直径よりも大きく形成されており、当該端部よりも外側が摺動部材41の直径と略等しく形成されている。
また、支持レール20の左右方向略中央には、例えば全開ガイド部材21と同じ材料で形成された全閉ガイド部材22が嵌め込まれている。この全閉ガイド部材22には、左右から中央に向けてそれぞれ延びる一対のガイド溝部221が設けられている。このガイド溝部221における見込み方向の寸法は、左右両端部が摺動部材41の直径よりも大きく形成されており、当該端部よりも中央側が摺動部材41の直径と略等しく形成されている。
【0021】
このように、ガイド溝部211およびガイド溝部221の見込み方向の寸法を摺動部材41の直径と略等しくすることにより、詳しくは後述するが、摺動部材41がガイド溝部211やガイド溝部221に係合する状態において、戸先面材40の戸先側における見込み方向のがたつきが抑制される。
【0022】
また、支持レール20の室外側面には、それぞれ一対の被係合部を構成する全閉被係合部23が設けられている。この全閉被係合部23は、全開被係合部15と左右対称の形状に形成されており、全開ガイド部材21と全閉ガイド部材22との中間位置よりも若干全閉ガイド部材22側に設けられている。そして、全閉被係合部23における枠体外側の側縁は、室外側が室内側よりも枠体中央側に位置するように傾斜し、係合ピン422が当接可能な全閉斜辺部231を構成している。また、全閉斜辺部231の室内側には、枠体外側から枠体中央側に向けて切り欠かれた全閉係合溝部232が設けられている。
【0023】
吊り元面材30の室内側面における吊り元側かつ上下方向略中央には、上方に開口する略コ字状に形成されて、施錠部16の回動板部162を受ける錠受け32が設けられている。
戸先面材40は、吊り元面材30と高さ寸法が等しく、かつ、幅寸法が吊り元面材30よりも大きく形成されている。この戸先面材40の上端および下端における幅方向略中央には、係合部を構成する全開係合部および全閉係合部としての開閉係合部42がそれぞれ設けられている。この開閉係合部42は、戸先面材40の室外面から水平方向に突出する係合ベース421と、この係合ベース421の一面から垂直方向に突出する係合ピン422とを備えている。また、戸先面材40の上端に設けられた開閉係合部42は、係合ピン422が上方に突出するように設けられ、下端に設けられた開閉係合部42は、係合ピン422が下方に突出するように設けられている。
さらに、戸先面材40の室内側面における戸先側かつ上下方向略中央には、錠受け32と同様に施錠部16の回動板部162を受ける規制被係合部としての錠受け43が設けられている。
なお、吊り元面材30および戸先面材40は、上框、下框、左右の縦框を框組みした内部にガラス製や樹脂製のパネルを嵌め込んだ構成としても良い。
【0024】
図3および
図5に詳細に示すように、支持部50は、左右の縦枠13の上下2箇所において、吊り元面材30を回動自在に支持している。この支持部50は、一対の第1丁番51と、一対の第2丁番52と、第1丁番51と第2丁番52とを固定する固定部としてのクランク板53と、一対の回動規制部54とを備えている。
【0025】
第1丁番51は、縦枠13の枠体中央側の見込み面に固定された取付部材55にねじ止めされた一方の第1取付部としての枠体側取付部511と、第1回動軸としての枠体側回動軸513によって枠体側取付部511に回動自在に連結された他方の第1取付部としての第1中間取付部512とを備えている。また、第2丁番52は、吊り元面材30の吊り元側の見込み面にねじ止めされた一方の第2取付部としての面材側取付部521と、第2回動軸としての面材側回動軸523によって面材側取付部521に回動自在に連結された他方の第2取付部としての第2中間取付部522とを備えている。
【0026】
クランク板53は、例えば金属板をクランク状に屈曲させたものであり、上下の第1中間取付部512が固着される第1板部531と、この第1板部531の端部に立設する第2板部532と、この第2板部532の先端から第1板部531と反対側に延びて上下の第2中間取付部522が固着される第3板部533とを備えている。具体的に、クランク板53は、第1丁番51の第1中間取付部512が枠体側取付部511と直線状に並ぶように回動した際に、第2丁番52の第2中間取付部522が第1中間取付部512よりも枠体外側に位置するように屈曲している。
そして、第1中間取付部512と、第2中間取付部522と、クランク板53とにより、中間部56が構成されている。
【0027】
回動規制部54は、縦枠13における取付部材55よりも屋外側にねじ止めされている。上側に設けられた回動規制部54は、枠体中央側に向かって枠体側回動軸513と略等しい位置まで延びる規制ベース541と、この規制ベース541の先端から下方に向かって第1中間取付部512の上端側と対向する位置まで延びる規制突出部542とを備えている。そして、回動規制部54は、規制突出部542と中間部56を構成する第1中間取付部512と当接により、中間部56の回動を規制する。また、下側の回動規制部54の規制突出部542は、規制ベース541の先端から上方に向かって第1中間取付部512の下端側と対向する位置まで伸びており、第1中間取付部512との当接により中間部56の回動を規制する。
【0028】
以上のような折れ戸1を開くときの動作について、
図6〜
図8を参照して説明する。
まず、
図6(A)に示すように、吊り元面材30および戸先面材40が直線状に並び、かつ、開閉係合部42の係合ピン422が全閉被係合部23の全閉係合溝部232に係合している状態(以下、全閉係合状態という)では、係合ピン422と全閉係合溝部232との係合により戸先面材40が枠体10に対して固定されている。また、摺動部材41が全閉ガイド部材22のガイド溝部221に係合することにより、戸先面材40の見込み方向のがたつきが抑制されている。さらに、施錠部16のピン163が錠受け32の枠体外側に位置するように、回動板部162が錠受け32に受けられる(係合する)ことで、すなわち施錠部16および錠受け32で施錠することで、係合ピン422と全閉係合溝部232との係合が解除される方向(枠体外側方向)への吊り元面材30のスライドが規制されている。
また、この全閉係合状態では、枠体側取付部511および第1中間取付部512が直線状に並び、面材側取付部521および第2中間取付部522も直線状に並び、さらに中間部56の第3板部533が縦枠13に近接している。
【0029】
この全閉係合状態から折れ戸1を開く際には、まず、回動板部162を回動させて施錠を解除した後、
図6(B)に示すように、吊り元面材30および戸先面材40と枠体10の見付け面との面方向が平行となった状態を維持しつつ、吊り元面材30および戸先面材40を枠体外側にスライドさせる。
この吊り元面材30のスライドに伴い、中間部56が面材側取付部521に対して回動しつつ面材側回動軸523が枠体外側にスライドするとともに、枠体側回動軸513を中心にして中間部56が枠体外側に回動する。そして、中間部56が回動規制部54と当接すると中間部56の回動が規制され、吊り元面材30および戸先面材40のスライドも規制される。さらに、係合ピン422と全閉係合溝部232との係合が解除され、戸先面材40が回動可能な状態(以下、全閉状態という)となる。
【0030】
次に、
図7(C)に示すように、さらに戸先面材40を吊り元面材30に対して回動させつつ枠体外側にスライドさせる。このとき、中間部56の回動が回動規制部54により規制されているため、戸先面材40のスライドに伴い、面材側回動軸523を中心にして吊り元面材30が枠体外側に回動し、やがて、
図7(D)に示すように、係合ピン422が全開被係合部15の全開斜辺部151と当接する。
【0031】
この後、
図8(E)に示すように、戸先面材40を若干枠体中央側にスライドさせると、枠体側回動軸513を中心にして中間部56が枠体中央側に回動し、中間部56の第3板部533が縦枠13に当接するとともに、係合ピン422が全開係合溝部152の開口部に当接する。これにより、吊り元面材30および戸先面材40が重なり、かつ、係合ピン422と全開係合溝部152とが係合していない状態となる(以下、全開状態という)。
【0032】
そして、吊り元面材30および戸先面材40が重なった状態を維持しつつ、戸先面材40を枠体外側にスライドさせると、
図8(F)に示すように、枠体側回動軸513を中心にして中間部56が枠体外側に回動し、係合ピン422が全開係合溝部152に係合する。この係合により、戸先面材40を枠体10に対して固定した状態(以下、全開係合状態という)となる。また、摺動部材41が全開ガイド部材21のガイド溝部211に係合することにより、戸先面材40の見込み方向のがたつきが抑制される。この後、施錠部16のピン163が錠受け43の枠体内側に位置するように、回動板部162を錠受け43に係合させることで、係合ピン422と全開係合溝部152との係合が解除される方向(枠体中央側方向)への吊り元面材30のスライドを規制する。
以上により、折れ戸1が開かれた状態となる。
【0033】
次に、折れ戸1を閉じるときの動作について、
図9および上述の
図6〜
図8を参照して説明する。
まず、
図8(F)に示すような全開係合状態において、施錠部16および錠受け43による施錠を解除した後、戸先面材40を枠体中央側にスライドさせると、
図8(E)に示す全開状態となる。
この後、戸先面材40をさらに枠体中央側にスライドさせると、
図9(A)に示すように、中間部56と縦枠13との当接により、中間部56の枠体中央側への回動が規制されているため、吊り元面材30が面材側回動軸523を中心にして枠体中央側に回動し、やがて、
図9(B)に示すように、係合ピン422が全閉被係合部23の全閉斜辺部231と当接する。
【0034】
この後、
図6(B)に示すように、戸先面材40を若干枠体外側にスライドさせると、枠体側回動軸513を中心にして中間部56が枠体外側に回動して回動規制部54に当接し、全閉状態となる。そして、戸先面材40を枠体中央側に移動させることで、
図6(A)に示すような全閉係合状態となる。
以上により、折れ戸1が閉じられた状態となる。
【0035】
以上の本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)すなわち、中間部56が縦枠13に対して枠体側回動軸513を中心に回動可能、かつ、中間部56が吊り元面材30に対して面材側回動軸523を中心に回動可能な支持部50を設けているため、吊り元面材30および戸先面材40が重なった状態を維持しつつ戸先面材40を枠体外側にスライドさせることができ、全開被係合部15と開閉係合部42とを係合させることにより吊り元面材30および戸先面材40を枠体10に固定できる。
したがって、例えば吊り元面材30の上端および下端に設けた軸をスライドさせるための長孔を枠体に設けなくても、吊り元面材30および戸先面材40を枠体外側にスライドさせるだけの簡単な操作で、枠体10に固定できる。さらに、前記長孔を設ける必要がないため、折れ戸1の製造工程の複雑化を抑制できる上、長孔のゴミを除去するという煩わしいメンテナンスが不要となる。
【0036】
(2)汎用品である第1丁番51と第2丁番52とをクランク板53で固定することで支持部50を構成しているため、簡単な構成で上述の効果を奏することができる。
【0037】
(3)戸先面材40の幅寸法を吊り元面材30よりも大きくしているため、戸先面材40の戸先側の部分を手で持って全開状態にした後に、手を離すことなくそのまま吊り元面材30および戸先面材40をスライドさせることができ、折れ戸1を開ける操作を容易に行うことができる。
【0038】
(4)戸先面材40の戸先側に錠受け43を設けるとともに、縦枠13に施錠部16を設けているため、錠受け43と施錠部16との係合により、係合ピン422と全閉係合溝部232との係合が解除される方向への吊り元面材30のスライドを規制することができ、吊り元面材30と戸先面材40とを枠体10に固定することができる。よって、吊り元面材30と戸先面材40とのがたつきを抑制できる。
【0039】
(5)全開被係合部15を縦枠13よりも枠体外側に設けることで、全開被係合部15と開閉係合部42との係合位置を支持部50よりも枠体外側に設定している。このため、支持部50よりも枠体中央側あるいは支持部50と同じ位置において固定する場合と比べて、吊り元面材30と戸先面材40とのがたつきを抑制できる。
【0040】
(6)開閉係合部42と係合する全閉被係合部23を支持レール20に設けているため、全閉状態で枠体中央側にスライドさせて全閉被係合部23と開閉係合部42とを係合させるだけの簡単な方法で、折れ戸1を閉じた状態においても吊り元面材30および戸先面材40を枠体10に固定できる。
【0041】
(7)全開状態において戸先面材40を枠体外側にスライドさせることで、全開被係合部15と開閉係合部42とを係合させる構成としている。このため、折れ戸1を開けるための自然な操作で吊り元面材30と戸先面材40とを固定できる。
【0042】
(8)枠体側回動軸513を中心にした中間部56の回動を規制する回動規制部54を設けているため、中間部56が枠体外側に回動しすぎることにより、開閉係合部42が全開被係合部15よりも枠体外側を通過してしまうという不具合を防止できる。
【0043】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、
図10に示すように、枠体外側から枠体中央側に向けて切り欠かれた全開係合溝部152Aを有する全開被係合部15Aを片寄せ片14に設けても良い。
このような構成において、折れ戸を開けるために戸先面材40を枠体外側にスライドさせると、
図6(A),(B)、
図7(C)、
図10(A)に示すような順序で吊り元面材30と戸先面材40とが回動する。そして、さらに戸先面材40を枠体外側にスライドさせると、
図10(B)に示すように、中間部56の回動が回動規制部54により規制された状態であっても、係合ピン422が全開被係合部15Aの全開斜辺部151Aと当接することなく、全開係合溝部152Aの開口部に当接する全開状態となる。この後、戸先面材40を枠体中央側にスライドさせることで、
図10(C)に示すように、係合ピン422が全開係合溝部152Aに係合する全開係合状態となる。
この
図10に示すような構成にすれば、戸先面材40を枠体外側にスライドさせた後に、枠体中央側にスライドさせるだけで良く、折れ戸を開ける操作を容易にできる。
【0044】
また、前記実施形態において、建具の一例である折れ戸として雨戸を例示したが、引違い窓90の代わりに開口部B1に設けられる窓であっても良いし、防火用の扉であっても良い。また、折れ戸を構成する面材の数は、3枚以上であっても良い。さらには、両開きの折れ戸ではなく、片開きの折れ戸であっても良いし、1枚の面材からなる片開きの窓、さらには、左右縦枠にそれぞれ1枚ずつの面材が支持された両開きの窓であっても良い。
そして、第1丁番51と第2丁番52とをクランク板53で連結することで支持部50を構成したが、第1中間取付部512と第2中間取付部522とクランク板53とを1枚の板状部材で構成した中間部を用い、当該中間部と、枠体側取付部511と、枠体側回動軸513と、面材側取付部521と、面材側回動軸523とによって、支持部を構成してもよい。また、1つのクランク板53の上下のそれぞれに、第1丁番51と第2丁番52とを固着したが、2つのクランク板を用い、当該2つのクランク板のそれぞれに、第1丁番51と第2丁番52とをそれぞれ1つずつ固着する構成としてもよい。
【0045】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。