(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記磁気光学材料層は前記第一の層に対向し、前記屈折率可変層は前記第二の層に対向し、前記磁気光学材料層と前記屈折率可変層との間及び該屈折率可変層と前記第二の層との間に透光性電極層が介在され、
前記屈折率可変層は電界によりその屈折率が変化する材料からなる、請求項1に記載の光学体。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上記において第一の層と第二の層は反射層とすることが好ましい。第一の層と第二の層との間で光を多重反射させることにより光の変調を増幅できるからである。
光を入出射する第一の層はハーフミラー層(第一の反射層)とし、対向する第二の層は全反射層(第二の反射層)とすることが好ましいが、第二の反射層は必ずしも全反射層に限定されるものではない。
第一の反射層及び第二の反射層は金属層若しくは誘電体多層膜層(ブラッグミラー層)とすることができる。
反射層を構成する金属層としては、アルミニウム、白金、金、銀及びこれらの合金の短層膜若しくは複層膜を挙げることができる。
【0010】
反射層としてブラッグミラー層を採用する場合、誘電体他多層膜の繰り返し単位を構成する誘電体層のペアの材質及び膜厚はブラッグの反射条件(d=λ/4:ここに、λは各層の光学波長、dは各層の膜厚)を満足することを条件に、入射光の波長や用途に応じて任意に選択できる。具体的には、誘電体層のペアとして酸化シリコン(SiO
2)と酸化タンタル(Ta
2O
5)との組合せ、酸化シリコン(SiO
2)とシリコン(Si)、酸化シリコン(SiO
2)と酸化アルミニウム(Al
2O
3)等が挙げられる。
誘電体層ペアの繰返し数も任意に選択可能であるが、第一の反射層と第二の反射層とで同じ誘電体ペアを採用するときは、第一の反射層の繰返し数より第二の反射層の繰返し数が大きいものとする。誘電体層のペアとして酸化シリコン(SiO
2)と酸化タンタル(Ta
2O
5)との組合せを採用したときは、第一の反射層は3ペア以上、第二の反射層は5ペア以上とすることが好ましい。更に好ましくは、第一の反射層は5ペア以上、第二の反射層は7ペア以上とする。
【0011】
第一の層と第二の層との間隔は、m×λ/2(ここに、mは自然数、λは第一の層と第二の層との間の光学波長)とする。これにより、第一の層と第二の層との間隔が光学波長の節の幅と一致する。
ここに光学波長はλ
0/nで規定される。λ
0は真空における入射光の波長、nは実効屈折率である。第一の層と第二の層との間に1種類の材料層のみが介在されるとき、実効屈折率nは当該材料の屈折率に等しい。第一の層と第二の層との間に複数の材料層が介在するときは、複数の異なる材料が連続する層を1つの材料の1つの層と見なしたときの屈折率である。例えば、連続する2層の片方の屈折率と膜厚をn
1、d
1とし、もう片方をn
2、d
2としたとき、(n
1×d
1+n
2×d
2)/(d
1+d
2)が連続する2層の実行屈折率となる。
【0012】
設計容易性の観点からは、第一の層と第二の層の間に複数の層が介在される場合は、各層の厚さを各層の光学波長/2の自然数倍とすることが好ましい。例えば、第一の層と第二の層との間に層A及び層Bが介在される場合、層A及び層Bの厚さをそれぞれm
1×λ
A/2、m
2×λ
B/2とする。ここに、λ
Aは層Aの光学波長、λ
Bは層Bの光学波長である。このように設計すれば、第一の層と第二の層との間に複数の層が介在される場合においても、第一の層と第二の層との間隔はm×λ/2(ここに、mは自然数、λは第一の層と第二の層間の光学波長)の関係が常に維持される。
第一の層と第二の層との間に透光性電極層を介在させる場合には、当該透光性電極層も上記の関係を保持するものとすることが好ましい。
【0013】
上記において、第一の層と第二の層との間隔を規定するとき、及び第一の層と第二の層との間に介在される複数の層における各層の厚さを規定するときに光学波長λが用いられている。この光学波長λは多少のマージンを有することができる。各層の厚さをnmオーダーで正確に制御することは極めて困難だからである。また、多少のマージン(好ましくは±10%以内、更に好ましくは±5%以内)があっても、目的にかなった変調ができるからである。
第一の層及び第二の層は反射層とすることが好ましいことは既述したが、第一の層及び第二の層の少なくとも一方を誘電体多重層(ブラッグミラー層)としたとき、多重層を構成する誘電体層の一部又は全部を光学磁性体材料や電気光学材料などの屈折率可変層で形成すると、これらの層も光の変調機能に寄与する場合がある。
【0014】
屈折率可変層はこれを通過する光に対して、光通過方向にその屈折率を変化させる。
屈折率可変層は第一の層と第二の層との間の実質的な全体を占有しても、また、その一部のみであってもよい。
かかる屈折率可変層を形成する材料として電気光学材料、音響光学材料、熱光学材料等を挙げることができる。
電気光学材料は電界の印加によって屈折率が変化する材料であって、PZT(PbZr
0.52Ti
0.48O
3)、PLZT、PLHT、SBN、LT、LN、KDP、DKDP、BNN、KTN、BTO等を挙げることができる。
屈折率可変層を電気光学材料で形成した場合、当該屈折率可変層へ印加する電界を制御することにより、その屈折率を変化・制御可能である。屈折率可変層へ電界を印加するために、特許文献1にも記載してある通り、当該屈折率可変層を透光性電極でサンドイッチする構成を採用できる。勿論、光学体の外部から電界を印加してもよい。この場合、電界の印加の方向は屈折率可変層の面内方向に対して垂直に限らず、傾斜していてもよい。
【0015】
音響光学材料は応力の印加・歪によって屈折率変化が生じる材料であって、PZT(PbZr
0.52Ti
0.48O
3)、LT、LN、Al
2O
3、Y
3Al
5O
12、Si、SiO
2等を挙げることができる。
屈折率可変層を音響光学材料で形成した場合、当該屈折率可変層へ印加する応力を制御することにより、その屈折率を変化させることにより制御可能である。屈折率可変層へ応力を印加するためには、屈折率可変層を光透過性の圧電素子で挟むことが考えられる。
【0016】
熱光学材料は温度により屈折率が変化する材料であって、液晶が該当する。
屈折率可変層を熱光学材料で形成した場合、当該屈折率可変層へ印加する熱を制御することにより、その屈折率を変化させることにより制御可能である。屈折率可変層の温度を制御するには、例えばヒーターを具備すればよい。
【0017】
屈折率可変層は単層若しくは複数層とすることができる。複数層とした場合、この複数層を構成する各層は同一の材料であっても異なる材料であってもよい。
【0018】
磁気光学材料は磁気光学効果(ファラディ効果、カー効果)を有し、直線偏光光が干渉するとこれを右回りの楕円偏光光(右円偏光光)と左回りの楕円偏光光(左円偏光光)とに変換する。このとき、右円偏光光と左円偏光光とには位相差が生じている。またこの磁性体材料は非相反性を有するので、位相差の生じた右円偏光光と左円偏光光を再度磁気光学材料へ干渉させて直線偏光光へ再変換したとき、その位相差が維持されて直線偏光光の偏光面の回転(角度の変化)としてあらわれる。
【0019】
このような磁気光学効果を奏する磁性体材料には強磁性体材料、反強磁性体材料、フェリ磁性体材料、常磁性体材料を挙げられる。
ファラディ効果を奏する透光性の強磁性体材料としてCdCo、のような磁性記憶媒体用材料、CoFe
2O
4のようなスピネルフェライト、PbFe
12O
19のようなヘキサゴナルフェライト、CdCr
2S
4のようなカルコゲナイド、フェライト、CrCl
3のようなクロム化トリハライド、Y
3Fe
5O
12(BiY)
3Fe
5O
12のようなガーネット、(LaSr)MoO
3のようマンガン酸化合物、EuOのようなユウロビウム化合物、Fe及びその合金からなる金属薄膜、Co及びその合金からなる薄膜、Mn及びその合金からなる薄膜、その他Fe
2O
4等やポリエチレン等の有機材料を挙げることができる。
【0020】
ファラディ効果を奏する透光性の反強磁性体材料としては、酸化マンガン等を挙げることができる。
【0021】
常磁性体材料は外部から磁界を印加することにより磁気光学効果を奏する。
ファラディ効果を奏する透光性の常磁性体材料として、Tb
3AlO
12、GGG(Gd
3Ga
5O
12)等の希土類Al置換ガーネット、酸素等の気体、水等の液体、塩化カリウム等の固体、GGG(Gd
3Ga
5O
12)、GGS等のクラウン等のガラスを挙げることができる。
青色光のような短波長を変調対象とする際には、TAG、TGGを採用することが好ましい。短波長を殆ど吸収しないからである。
磁性体材料層は単層若しくは複数層とすることができる。複数層とした場合、この複数層を構成する各層は同一の材料であっても異なる材料であってもよい。
【0022】
この明細書において「透光性」とは入射光(変調対象光)を透過する特性を指し、いわゆる透明性(可視光についての透光性)に限られるものではない。また、屈折率可変層は必然的に透光性を有するものとする。
カー効果を有する材料としてはR
3Fe
5O
12(R=希土類元素、例えばBi、Y、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)のようなガーネット、MFe
2O
4(M=Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mg、Li
0.5Fe
0.5)のようなスピネルフェライト、MFe
12O
19(M=Ba、Pb、Sr、Ca、Ni
0.5Fe
0.5、Ag
0.5La
0.5)のような六方晶フェライト、MnBi、PtCo、EuO、PtMnSbからなる多結晶膜、Gd−Co、Gd−Fe、Dy−Fe、Tb−Fe、Gd−Tb−Fe、Gd−Dy−Fe、Tb−Fe−Co、Gd−Tb−Fe−Co、(Gd−Fe)−Bi、(Gd−Fe)−Sn、Nd−Dy−Fe−Coのような希土類−遷移金属薄膜、及び前記材料からなる薄膜からなる複合膜等を挙げることができる。
【0023】
磁性体材料層を光透過性としたとき、磁性体材料層と屈折率可変層との積層体を繰返してなる多層構造を採用することもできる。この多層構造を採用する場合、各磁性体材料層は同一の材料で形成することが好ましいが、また異なる材料で形成することを除外するものではない。同様に、各屈折率可変層も同一の材料で形成することが好ましいが、異なる材料で形成してもよい。
【0024】
この発明の光学体は、既述のように直線偏光光の偏光面の回転角度を任意に制御でき、また、楕円偏光光の位相を任意に制御できる。この点において、光変調素子として機能する。
また、直線偏光光の偏光面の回転角度及び楕円偏光光の位相の変化はともに有意に(大きく)とれるので、これを光メモリ素子として用いることもできる。
【0025】
図1はこの発明の第3の局面の構造を示す模式図である。
第一の層3はハーフミラー層であり、第二の層5は全反射層である。第一の層3と第二の層5の間(この明細書で「キャビティ7」ということがある)に、屈折率可変層8と磁気光学材料層9とが介在される。
このように構成された光学体1によれば、屈折率可変層8と磁気光学材料層9が第一の層3と第二の層5との間に介在されるので、両層3−5間で変調対象光が多重反射する際に、屈折率可変層8と磁気光学材料層9の両層の影響を受けるので、変調効率が向上する。
【0026】
磁気光学材料層9は透光性を有する(ファラディ効果を有する)ものとすることができ(第4の局面)、その場合は磁気光学効果層9を屈折率可変層8より第一の層3側に配置することが好ましい。直線偏光光を入出射光とするとき、光学体と外部とのインターフェース部において直線偏光光と楕円偏光光との間の変換が必要になるからである。
【0027】
磁気光学材料としてカー効果を有する(特に、非透光性の)ものを採用する場合には、磁気光学材料層は第二の層5側に配置する。
図2にこの例の光学体11の模式図を示す。なお、
図1と同一の作用を奏する要素には同一の符号を付してその説明を省略する。このカー効果発現層15は第二の反射層5の表面に形成される。このカー効果発現層15自体が十分な、好ましくは実質的に100%の反射率を備えれば、カー効果発現層15自体を第二の反射層とすることができる。
カー効果発現層15で変換された光の位相差が屈折率可変層18において増幅される。
【0028】
図3は他の態様の光学体21を示す。なお、
図1と同一の作用を奏する要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
この光学体21では、磁性体材料層9をキャビティ7の外側、即ち第一の層3の入射光対向面側に配置した。
このように構成された光学体21によれば、直線偏光光を入射光としたとき、当該直線偏光光は磁性体材料層9で僅かに位相差をもった右円偏光光と左円偏光光に変換され、両楕円偏光の位相差はキャビティ7において増幅される。
磁性体材料層9としてガーネットのバルクの基板へ第一の層、屈折率可変層及び第二の層を順次積層してなる光学体を用いることができる。
同様に、屈折率可変層8としてPLZT等のバルクの基板を用い、その両面へ第一の層と第二の層を積層し、更に第一の層へ磁気光学材料層9を積層する構成を採用できる。
【0029】
図4は他の光学体31を示す。なお、
図3と同一の作用を奏する要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
この光学体31では磁気光学材料層9の表面に第三の層6が形成されている。この第三の層6と第一の層3とをともに反射層とすることにより、両者の間で変調対象光を多重反射させ磁気光学材料層9の磁気光学効果を増幅する。
この第三の層6も第一層の3及び第二の層5と同様に形成することができる。第三の層6と第一の層3との間隔もm×λ/2とすることが好ましい。ここに、m:自然数、λ:第二の層6と第一の層3との間の光学波長である。
【0030】
図5に他の形態の光学体41の構成を示す。なお、
図1と同一の要素には同一の符号を付してその説明を部分的に省略する。この光学体41では屈折率可変層8が電気光学材料で形成されている。この屈折率可変層8は光透過性の一対の電極層42、43で挟まれており、電極層42、43へ印加する電圧を制御することにより、屈折率可変層8へ印加される電界を制御し、もって屈折率可変層8の屈折率を制御する。
【0031】
屈折率制御手段としての透光性電極42、43へ印加する電圧の制御回路は光学体21へ一体的に組みつけることが装置構成の簡素化の見地から好ましい。
電圧制御回路は汎用的な半導体集積回路技術により、第一の反射層3若しくは第二の反射層5の一方へ形成することができる。
第一の反射層3側から光を入射させることを考慮すれば、電圧制御回路を当該第一の反射層3へ配置することは好ましくない。入射光及び出射光を遮ることとなるからである。
【0032】
したがって、電圧制御回路は第二の反射層5の表面へ形成することが好ましい。
図6は電圧制御回路を有する半導体機能層53を備えた光変調装置51を示す。なお、
図5と同一の作用を奏する要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
図中の符号54は半導体機能層53から透光性電極42、43への電源線を示す。半導体機能層53はこの電源線54を介して制御された電圧を透光性電極42、43間へ印加する。
第二の層5側へ半導体機能層53を形成した結果、基板57は第一の3側の配置となる。
この基板57の形成材料は透光性を有するSiO
2やSGGG(例えば、Gd
2.68Ca
0.32Ga
4.04Mg
0.32Zr
0.64O
12)等を用いることができる。
【0033】
図7に示す光変調システム61は、
図6に示す光変調装置51へ光入射デバイス63と出射光処理デバイス65とを、基板57に対向配置したものである。
光入射デバイス63は光源、光ファイバ及び偏光板等から構成され、光学体へ所望の偏光光を入射する。
出射光処理デバイス65は、基板57を通過してきた光学体の出射光を処理する。位相変調された出射光を入射光と干渉させて干渉計等に利用できる。
【実施例】
【0034】
以下、この発明の実施例について説明する。
図8は実施例の光学体81の構成を示す。
実施例の光学体81はSGGG(例えば、Gd
2.68Ca
0.32Ga
4.04Mg
0.32Zr
0.64O
12)の基板87(厚さ:0.7mm)の上へ、酸化タンタル(膜厚:90nm)と酸化シリコン(膜厚:134nm)なる積層体を単位ペアとして、計9ペアからなる第一の反射層93を積層する。
更に、膜厚712nmのBi:YIG(Bi
1Y
2Fe
5O
12、光学波長λ:780nm)を光学磁性体材料層89として積層する。この光学磁性体材料層89の上には膜厚174nmからなるPLZT(具体的組成Pb
0.91La
0.09Zr
0.65Ti
0.35O
3、光学波長λ:780nm)を屈折率可変層88として積層する。なお、PLZT層88は電気光学材料であるのでこのPLZT層88の両面へITO等からなる透光性電極層を形成することとなるが、この実施例では当該一対の透光性電極はごく薄く形成するものとしてその膜厚を無視することとした(その結果、
図8に透光性電極は示されていない)。なお、
図8の構成において、第一の層83と第二の層85との間隔(磁気光学材料層89と屈折率可変層88との合計厚さ)はλ/2の5倍である。
PLZT層88の上には第一の層83と同じ単位ペアを有し、そのペアの繰返し数を18とした第二の反射層85が形成されている。
【0035】
各層はスパッタ法により形成される。
各層の形成方法はスパッタ法に限定されるものではなく、蒸着法、イオンプレーティング法、スプレー法、イオンビーム照射法等の汎用的な薄膜製造技術を適用可能である。
【0036】
図8に示した構成の光学体81の光学特性をマトリックスアプローチ法に従いシミュレートした。このシミュレーションについてはM. Inoue, T. Fujii, “A theoretical analysis of magneto-optical Faraday effect of YIG films w ith random multilayer structure”,Appl. Phys. 81, 317 (1997).を参照されたい。
結果を
図9〜
図12に示す。
実施例の光学体81へ780nmの波長(赤色)の直線偏光光を入射したところ、出射光の偏光面の回転角(入射光の偏光面の角度との差)は
図9に示すものとなった。
反射率(入射光に対する出射光の強度)は
図10に示すように、ほぼ100%である。なお、
図10(B)は
図10(A)における波長780.4nm前後の部分拡大図である。
図9及び
図10の結果から、実施例の光学体81によれば波長及びその強度を維持して、入射光の偏光面を任意の角度に変更できることがわかる。
【0037】
図11は、出射光の偏光面の回転角(入射光の偏光面の角度との差)及び出射光の位相(入射光の位相との差)と図示しない透光性電極へ印加する電圧との関係を示す。実施例で用いてシミュレーションでは透光性電極は厚さを持たず、かつその材料は完全な透光性であり、かつ電気抵抗を持たないものと仮定している。
図11より、0.0〜0.2Vという小さな電圧範囲において出射光の回転角と位相とを制御可能なことがわかる。なお、実施例の光学体では、電圧変化に対して偏光面の角度変化は同期しており、両者の間に実質的な時間おくれはない。
図12は印加電圧と反射率(入射光に対する出射光の強度)についても0.0〜0.2Vの印加電圧範囲において殆ど全反射の状態を維持できる。なお、
図12(B)は
図12(A)における0.1V前後の部分拡大図である。
【0038】
図13には他の実施例の光学体101を示す。なお、
図8と同一の作用を奏する要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
この実施例では磁気光学材料層109としてTAG(Tb
3Al
5O
12)を採用している。この実施例ではTAGからなる磁気光学材料層109の厚さを840.71nm、PLZTからなる屈折率可変層108の厚さを100.00nmとしている。これにより、第一の層83と第二の層85との間隔(磁気光学材料層109と屈折率可変層108との合計厚さ)はλ/2の9倍である。
なお、TAGは常磁性体材料であるので、外部より光の入射方向である膜面垂直方向に磁場を印加しているものとする。
【0039】
図13の光学体101についても前の実施例と同様にしてその特性をシミュレートした。入射光は波長405nm(青色)の直線偏光光である。結果を
図14、
図15に示す。
図14は印加電圧と回転角(入射光の偏光面と出射光の偏光面との回転角度差)との関係を示す。
図15は印加電圧と反射率(入射光に対する出射光の強度)との関係を示す。
図14及び
図15より、TAGを磁気光学材料に採用すれば、入射光に短波長を採用しても光学体において殆ど損失は起こらず、ほぼ100%の反射率を確保することができる。また、電圧変化に対して偏光面の角度変化は同期しており、両者の間に実質的な時間おくれはない。
【0040】
図16は他の実施例の光学体111を示す。なお、
図13と同一の作用を奏する要素には同一の符号を付してその説明を部分的に省略する。
この実施例の光学体は、
図8の光学体81から磁気光学材料層89を省略したものである。なお、
図16の例では、第一の層83と第二の層85との間にm×λ/2(m:自然数、λ:光学波長)の関係を確保するため、PLZTからなる屈折率可変層118の厚さを4847nmとしている(m=28)。
図16の光学体111についても前の実施例と同様にしてその特性をシミュレートした。入射光は波長780nm(赤色)の直線偏光光である。結果を
図17、
図18に示す。
図17は印加電圧と位相(入射光の位相と出射光の位相との差)との関係を示す。
図18は印加電圧と反射率(入射光に対する出射光の強度)との関係を示す。
図17及び
図18より0.0〜2.0V程度の小さな電圧範囲により全範囲(±180度)にわたり位相制御できることがわかる。また、反射率(入射光に対する出射光の強さ)についてもほぼ60%以上確保できている。電圧変化に対して位相変化は同期しており、両者の間に実質的な時間遅れはない。
【0041】
本発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様も本発明に含まれる。