特許第5700735号(P5700735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5700735
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】水処理装置及び水処理装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/46 20060101AFI20150326BHJP
【FI】
   C02F1/46 Z
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-174565(P2014-174565)
(22)【出願日】2014年8月28日
【審査請求日】2014年8月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000233044
【氏名又は名称】株式会社日立パワーソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 走者
(72)【発明者】
【氏名】戸張 正範
(72)【発明者】
【氏名】助川 邦男
(72)【発明者】
【氏名】永岡 英幸
(72)【発明者】
【氏名】桧垣 光次
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−279519(JP,A)
【文献】 特開平11−244859(JP,A)
【文献】 特開2012−106184(JP,A)
【文献】 特開2006−314914(JP,A)
【文献】 特開2006−255602(JP,A)
【文献】 特開2014−000563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水が流入し、液体を貯留する循環タンクと、
電極を有し、電気分解によって電解処理水を生成する電解処理槽と、
前記循環タンクと前記電解処理槽との間で液体を循環させる循環ポンプと、
前記電極に電流を印加する電極電源装置と、を備え、被処理水を連続処理し、
前記循環タンクは、
電気分解によって発生したガスを外部に排気するガス排出路と、
該循環タンク内に配置され、開口部が上方向を向いたU字配管であり、前記循環タンクからオーバーフローした液体を排出する液排出路と、を有する
ことを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記電極に印加する電流は、
循環タンクに流入する被処理水における対象物質の濃度である入口濃度と、
循環タンクに流入する被処理水の流量と、
循環タンクから流出する処理水における対象物質の要求される濃度である出口要求濃度と、
に基づいて決定される
ことを特徴とする請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記電解処理槽は並列に複数台設けられ、
前記電解処理槽の運転台数は、
循環タンクに流入する被処理水における対象物質の濃度である入口濃度と、
循環タンクに流入する被処理水の流量と、
循環タンクから流出する処理水における対象物質の要求される濃度である出口要求濃度と、
に基づいて決定される
ことを特徴とする請求項1に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記電解処理槽から前記循環タンクへと流れる流路は、
略上方向に延びる第1流路と、
略横方向に延びる第2流路と、を有し、
前記第1流路と前記第2流路の接続部に送風手段からの空気が流入する第3流路が接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記循環ポンプによって循環する液体の一部が供給され、前記循環タンクの内部に該液体を散布するノズルを備え、
前記ノズルは、
前記電解処理槽から前記循環タンクへと流れる流路における前記循環タンクとの接続部よりも低い位置に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の水処理装置。
【請求項6】
被処理水が流入し、液体を貯留する循環タンクと、
電極を有し、電気分解によって電解処理水を生成する電解処理槽と、
前記循環タンクと前記電解処理槽との間で液体を循環させる循環ポンプと、
前記電極に電流を印加する電極電源装置と、を備え、被処理水を連続処理し、
前記循環タンクは、
電気分解によって発生したガスを外部に排気するガス排出路と、
該循環タンク内に配置され、開口部が上方向を向いたU字配管であり、前記循環タンクからオーバーフローした液体を排出する液排出路と、を有する水処理装置の制御方法であって、
前記電極に印加する電流は、
循環タンクに流入する被処理水における対象物質の濃度である入口濃度と、
循環タンクに流入する被処理水の流量と、
循環タンクから流出する処理水における対象物質の要求される濃度である出口要求濃度と、
に基づいて決定される
ことを特徴とする水処理装置の制御方法。
【請求項7】
被処理水が流入し、液体を貯留する循環タンクと、
電極を有し、電気分解によって電解処理水を生成する並列に複数台設けられた電解処理槽と、
前記循環タンクと前記電解処理槽との間で液体を循環させる循環ポンプと、
前記電極に電流を印加する電極電源装置と、を備え、被処理水を連続処理し、
前記循環タンクは、
電気分解によって発生したガスを外部に排気するガス排出路と、
該循環タンク内に配置され、開口部が上方向を向いたU字配管であり、前記循環タンクからオーバーフローした液体を排出する液排出路と、を有する水処理装置の制御方法であって、
前記電解処理槽の運転台数は、
循環タンクに流入する被処理水における対象物質の濃度である入口濃度と、
循環タンクに流入する被処理水の流量と、
循環タンクから流出する処理水における対象物質の要求される濃度である出口要求濃度と、
に基づいて決定される
ことを特徴とする水処理装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア性窒素や有機物を除去する水処理装置及び水処理装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃水中からアンモニア性窒素や有機物を除去する方法として、微生物を用いて水処理する方法が知られている。例えば、特許文献1(特開2014−104416号公報)には、硝化工程ではアンモニアイオンは好気条件で独立栄養性細菌であるアンモニア酸化細菌によって亜硝酸イオンに酸化され、この亜硝酸イオンが独立栄養性細菌である亜硝酸酸化細菌によって硝酸イオンに酸化される。そして、脱窒工程ではこれらの亜硝酸イオンおよび硝酸イオンは嫌気条件下で、従属栄養性細菌である脱窒菌によって、有機物を電子供与体として利用しながら窒素ガスにまで分解されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−104416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、微生物を用いた脱窒処理を行う水処理装置では、各工程の水槽が必要であり、小型化が困難であるという課題がある。また、微生物によって処理するため、寒冷地では処理能力が低下するという課題がある。また、微生物を維持するため、必要に応じて有機物(例えばアルコール)を加えるといった維持管理が必要であるという課題がある。また、処理に際して汚泥が発生するため、その処理が必要になるという課題がある。
【0005】
そこで、本発明は、好適に処理が可能な水処理装置及び水処理装置の制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために、本発明は、被処理水が流入し、液体を貯留する循環タンクと、電極を有し、電気分解によって電解処理水を生成する電解処理槽と、前記循環タンクと前記電解処理槽との間で液体を循環させる循環ポンプと、前記電極に電流を印加する電極電源装置と、を備え、被処理水を連続処理し、前記循環タンクは、電気分解によって発生したガスを外部に排気するガス排出路と、該循環タンク内に配置され、開口部が上方向を向いたU字配管であり、前記循環タンクからオーバーフローした液体を排出する液排出路と、を有することを特徴とする水処理装置である。
【0007】
また、本発明は、被処理水が流入し、液体を貯留する循環タンクと、電極を有し、電気分解によって電解処理水を生成する電解処理槽と、前記循環タンクと前記電解処理槽との間で液体を循環させる循環ポンプと、前記電極に電流を印加する電極電源装置と、を備え、被処理水を連続処理し、前記循環タンクは、電気分解によって発生したガスを外部に排気するガス排出路と、該循環タンク内に配置され、開口部が上方向を向いたU字配管であり、前記循環タンクからオーバーフローした液体を排出する液排出路と、を有する水処理装置の制御方法であって、前記電極に印加する電流は、循環タンクに流入する被処理水における対象物質の濃度である入口濃度と、循環タンクに流入する被処理水の流量と、循環タンクから流出する処理水における対象物質の要求される濃度である出口要求濃度と、に基づいて決定されることを特徴とする水処理装置の制御方法である。
【0008】
また、本発明は、被処理水が流入し、液体を貯留する循環タンクと、電極を有し、電気分解によって電解処理水を生成する並列に複数台設けられた電解処理槽と、前記循環タンクと前記電解処理槽との間で液体を循環させる循環ポンプと、前記電極に電流を印加する電極電源装置と、を備え、被処理水を連続処理し、前記循環タンクは、電気分解によって発生したガスを外部に排気するガス排出路と、該循環タンク内に配置され、開口部が上方向を向いたU字配管であり、前記循環タンクからオーバーフローした液体を排出する液排出路と、を有する水処理装置の制御方法であって、前記電解処理槽の運転台数は、循環タンクに流入する被処理水における対象物質の濃度である入口濃度と、循環タンクに流入する被処理水の流量と、循環タンクから流出する処理水における対象物質の要求される濃度である出口要求濃度と、に基づいて決定されることを特徴とする水処理装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、好適に処理が可能な水処理装置及び水処理装置の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る廃水処理装置の構成図である。
図2】接続部の拡大断面模式図である。
図3】第1実施形態に係る廃水処理装置が備える制御装置の機能ブロック図である。
図4】算出テーブルの原理を説明するグラフである。
図5】第2実施形態に係る廃水処理装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
【0012】
≪第1実施形態≫
第1実施形態に係る廃水処理装置(水処理装置)について図1を用いて説明する。図1は、第1実施形態に係る廃水処理装置の構成図である。
【0013】
第1実施形態に係る廃水処理装置は、処理対象の廃水中に含まれる水溶性有機物(例えば、アルコール)やアンモニアを電気分解処理によって低減(除去)して、処理水として排出する装置である。即ち、第1実施形態に係る廃水処理装置は、廃水中の水溶性有機物を電気分解処理することによって、処理水における生物化学的酸素要求量(BOD;Biochemical Oxygen Demand)や化学的酸素要求量(COD;Chemical Oxygen Demand)を目標値以下まで低減することができるようになっている。また、第1実施形態に係る廃水処理装置は、廃水中のアンモニアを電気分解処理することによって、処理水におけるアンモニア性窒素濃度を低減することができるようになっている。ちなみに、廃水中に含まれる窒素(N)は、アンモニア性窒素、亜硝酸性窒素、硝酸性窒素等があるが、大部分をアンモニア性窒素が占める。このため、アンモニア性窒素を低減することが、廃水中の窒素(N)を目標値以下まで低減する(脱窒する)上で有効である。
【0014】
図1に示すように、廃水処理装置は、廃水槽10と、電解質槽16と、消泡材槽18と、循環タンク20と、電解処理槽30と、電極電源装置35と、送風機36と、制御装置50と、を備えている。
【0015】
廃水槽10は、処理対象の廃水が貯留される槽である。廃水槽10から循環タンク20に向かって廃水が流れる流路11が設けられており、この流路11には、ポンプ12と、開閉弁13と、ストレーナ14と、流量計15と、が設けられている。なお、ポンプ12の運転および開閉弁13の開閉は、制御装置50によって制御されるようになっている。ストレーナ14は、液体中の固形物を捕集する装置であり、ストレーナ14の捕集部(図示せず)は網目構造を有している。流量計15で検出された流量は、制御装置50に入力されるようになっている。
【0016】
電解質槽16は、電解処理槽30における電気分解を行う際に用いられる電解質の水溶液が貯留されている槽である。電解質としては、例えば、塩化ナトリウム(NaCl)を用いることができる。電解質槽16から流路11の合流位置11aに向かって電解質水溶液が流れる流路が設けられており、この流路には、ポンプ17が設けられている。なお、ポンプ17の運転は、制御装置50によって制御されるようになっている。
【0017】
消泡材槽18は、循環タンク20において液面に泡が発生することを抑制するための消泡材が貯留されている槽である。電解質としては、例えば、シリコーン系消泡剤を用いることができる。消泡材槽18から流路11の合流位置11aに向かって消泡剤が流れる流路が設けられており、この流路には、ポンプ19が設けられている。なお、ポンプ19の運転は、制御装置50によって制御されるようになっている。
【0018】
循環タンク20には、廃水槽10からの廃水(および、電解質槽16からの電解質水溶液、消泡材槽18からの消泡材)が流入する流路11と、循環タンク20から電解処理槽30に廃水(循環タンク20で希釈された廃水)を送るための流路31と、電解処理槽30からの電解処理水が流入する流路34と、循環タンク20から処理水を排出するU字配管21と、気体を排出する流路22と、が接続されている。
【0019】
循環タンク20から電解処理槽30に向かって廃水が流れる流路31が設けられており、この流路31には、ポンプ32が設けられている。なお、ポンプ32の運転は、制御装置50によって制御されるようになっている。
【0020】
電解処理槽30は、流路上に一対の電極30aが設けられ、電極電源装置35によって一対の電極30a間に電流が流れるようになっている。なお、電極電源装置35は、制御装置50によって制御されるようになっている。これにより、電解処理槽30は、電気分解処理によって、廃水中の有機物やアンモニアを分解することができるようになっている。
【0021】
ここで、電解質として塩化ナトリウム(NaCl)を用いた場合、電気分解の反応式は以下の反応式(1)〜(3)のようになる。
陽極反応:2Cl → Cl+2e …(1)
陰極反応:2Na+2HO+2e → 2NaOH+H …(2)
Cl+2NaOH → NaClO+NaCl+HO …(3)
このように、電気分解によって、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)が生成される。なお、生成された次亜塩素酸ナトリウムは水溶液中であるため、この生成は次亜塩素酸(HClO)および次亜塩素酸イオン(ClO)が発生することでもある。
【0022】
そして、電気分解によって生成した次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)は、アンモニア(NH3)と反応することによって、反応式(4)〜(6)のようになる。
NH +NaClO → NHCl+NaOH …(4)
NHCl+NaClO → NHCl+NaOH …(5)
NHCl+NHCl → N+3HCl …(6)
このように、次亜塩素酸ナトリウムによって、廃水中のアンモニア(NH)に由来するアンモニア性窒素(N)を窒素ガス(N)として脱窒する。
【0023】
また、反応式は、省略するが、生成した次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を用いて、次亜塩素酸(HClO)および次亜塩素酸イオン(ClO)の酸化作用によって、有機物を水(HO)や二酸化炭素(CO)に分解する。
【0024】
このように、電解処理槽30は、電気分解処理によって、廃水中のアンモニア性窒素や有機物を低減する。また、電気分解処理の際、塩素ガス(Cl)、水素ガス(H)、窒素ガス(N)、二酸化炭素ガス(CO)等が発生する。
【0025】
電解処理槽30の下流側から循環タンク20に向かって略上方向に延びる流路33および略横方向に延びる流路34が設けられており、この途中(流路33と流路34の接続部)で、送風機36からの流路37が合流している。送風機36は、電解処理槽30の発生ガス(特に、可燃性の水素ガス)を希釈するための空気を送風するものであり、流路37を介して、流路33と流路34の接続部に空気を供給する。
【0026】
図2は、流路33、流路34のおよび流路37の接続部の拡大断面模式図である。図2に示すように、流路33から発生ガスGを含んだ電解処理水Wが接続部に流入する。そして、電解処理水Wは、流路34を液層として循環タンク20に向かって流れる。一方、発生ガスGは、気層へと放出されるが、流路37からの空気Aで速やかに希釈される。そして、希釈された発生ガスDは、流路34を気層として循環タンク20に向かって流れる。
【0027】
このような構成により、電解処理槽30で発生した水素ガスは、流路33、流路34および流路37の接続部で、爆発限界以下まで速やかに希釈される。これにより、水素ガスによる事故を防止することができる。
【0028】
図1に戻り、電解処理槽30で処理された電解処理水および希釈された発生ガスは、流路34から循環タンク20に流入する。希釈されたガスは、循環タンク20の上方に設けられた流路22からスクラバ23を経由して外部に排気される。電解処理槽30で処理された電解処理水は、循環タンク20に流入し、流路11から流入する廃水を希釈するとともに、未反応の次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)が循環タンク20の内部でアンモニア性窒素(N)および有機物を低減する。
【0029】
そして、循環タンク20の処理水は、U字配管21を介して循環タンク20から排出される。U字配管21は、開口部21aが上方向に向いたU字管として構成されている。このような構成により、循環タンク20の処理水を排出する際、循環タンク20の内部のガスを取り出すことなく、処理水のみを取り出すことが可能となる。また、循環タンク20の液面の高さは、通常、U字配管21の開口部21aの高さとなっている。
【0030】
また、廃水の種類によっては、電気分解処理によって泡が発生することもある。このため、流路31の分岐位置(ポンプ32の下流側)から循環タンク20内の消泡ノズル24に向かって電解処理水が流れる流路38が設けられており、この流路には、開閉弁39が設けられている。なお、開閉弁39の開閉は、制御装置50によって制御されるようになっている。
【0031】
消泡ノズル24は、電解処理水を循環タンク20内にミスト散布することによって、活性酸素の効果で速やかに消泡する。ここで、消泡ノズル24は、流路34の吐出口よりも低い位置に設けられている。このような構成により、流路34から循環タンク20内に流入する空気(送風機36からの空気)によって、ミストが飛散することを防止することができる。
【0032】
次に、第1実施形態に係る廃水処理装置が備える電極電源装置35および制御装置50について、図3を用いて説明する。図3は、第1実施形態に係る廃水処理装置の機能ブロック図である。
【0033】
図3に示すように、電極電源装置35は、印加電流制御部35aと、電極電流検出部35bと、電極電圧検出部35cと、を備えている。
【0034】
印加電流制御部35aは、制御装置50(後述する電流指令部52)の指令に基づいて、CC(Constant Current;定電流)制御で一対の電極30aに電流を印加する。
【0035】
電極電流検出部35bは、一対の電極30a間の電流を検出する。検出した電流は印加電流制御部35aに入力(フィードバック)されるようになっている。また、電極電圧検出部35cは、一対の電極30a間の電圧を検出する。
【0036】
図3に示すように、制御装置50は、運転制御部51と、電流指令部52と、記憶部53と、入力部54と、を備えている。
【0037】
運転制御部51は、各種ポンプ、各種開閉弁、電極電源装置35、送風機36を制御することによって、廃水処理装置の運転全体を制御することができるようになっている。
【0038】
電流指令部52は、一対の電極30aに印加する電流を決定して、印加電流制御部35aに指令する。詳細は後述する。
【0039】
記憶部53は、入口濃度格納部53aと、出口濃度格納部53bと、算出テーブル格納部53cと、を備えている。
【0040】
入口濃度格納部53aは、循環タンク20に流入する廃水(廃水槽10の廃水)の入口濃度(例えば、アンモニア性窒素濃度、COD、BOD)が格納される。
出口濃度格納部53bは、循環タンク20に流出する処理水(U字配管21から排出される処理水)に要求される濃度の基準値である出口濃度(例えば、アンモニア性窒素濃度、COD、BOD)が格納される。
算出テーブル格納部53cは、電流指令部52が電流を算出する際に用いる算出テーブルが格納されている。なお、算出テーブルにかえて、関数として格納されていてもよい。
【0041】
入力部54は、入口濃度格納部53aに格納する入口濃度や出口濃度格納部53bに格納する出口濃度を入力することができるようになっている。例えば、管理者は、廃水槽10から廃水のサンプルを抽出して試薬試験等によって廃水の濃度(入口濃度)を求める。そして、管理者は、入力部54を操作して、入口濃度を入力する(入口濃度格納部53aに格納する)。なお、入口濃度は図示しない濃度検出手段によって検出して、その値を入口濃度格納部53aに格納するようにしてもよい。また、管理者は、管理者は、入力部54を操作して、処理水の基準値である出口濃度を入力する(出口濃度格納部53bに格納する)。
【0042】
<電流算出処理>
次に、電流指令部52の電流算出処理について説明する。
電流指令部52は、入口濃度格納部53aに格納された入口濃度と、出口濃度格納部53bに格納された出口濃度と、流量計15で検出した流量に基づいて、算出テーブル格納部53cに格納された算出テーブルを参照して、電極30aに印加する電流を決定する。
【0043】
図4は、算出テーブルの原理を説明するグラフである。ここで、図4(a)のグラフa1は、本実施形態に係る廃水処理装置に入口濃度Rin1の廃水を流量L1で供給し、電極30aに横軸で示す電流を印加した際(電流を変化させた際)の出口濃度の値を縦軸に示したグラフである。同様に、グラフa2は、入口濃度Rin2の廃水を流量L1で供給し、電極30aに横軸で示す電流を印加した際の出口濃度の値を縦軸に示したグラフである。グラフa3は、入口濃度Rin3の廃水を流量L1で供給し、電極30aに横軸で示す電流を印加した際の出口濃度の値を縦軸に示したグラフである。グラフa4は、入口濃度Rin4の廃水を流量L1で供給し、電極30aに横軸で示す電流を印加した際の出口濃度の値を縦軸に示したグラフである。また、図4(b)は、流量L2とした場合のグラフである。このような関係は、実験によって予め求められ、算出テーブル格納部53cに格納されている。
【0044】
電流指令部52は、算出テーブル格納部53cに格納されているこのような情報に基づいて、電極30aに印加する電流を決定する。
【0045】
例えば、流量L1で、入口濃度Rin3、出口濃度Routとすると、図4(a)から、グラフa3と、グラフb(破線で示す出口濃度Routから水平に引いた線)の交点における横軸の値である電流Is1を電極30aに印加する電流と決定する。同様に、流量L1で、入口濃度Rin4、出口濃度Routとすると、図4(a)から、グラフa4と、グラフbの交点における横軸の値である電流Is2を電極30aに印加する電流と決定する。また、流量L2で、入口濃度Rin3、出口濃度Routとすると、図4(b)から電流Is3を電極30aに印加する電流と決定する。同様に、流量L2で、入口濃度Rin4、出口濃度Routとすると、図4(b)から、電流Is4を電極30aに印加する電流と決定する。
【0046】
<作用効果>
第1実施形態に係る廃水処理装置によれば、連続処理にて廃水を処理水に水処理することができる。また、従来の微生物を用いる水処理装置(例えば特許文献1)と比較して、装置を小型化することができる。また、従来の微生物を用いる水処理装置(例えば特許文献1)で生じるような温度変化による処理能力の低下がなく、安定して水処理することができる。また、従来の微生物を用いる水処理装置(例えば特許文献1)で生じるような汚泥の発生もなく、汚泥処理を削減することができる。
【0047】
≪第2実施形態≫
第2実施形態に係る廃水処理装置(水処理装置)について図5を用いて説明する。図5は、第2実施形態に係る廃水処理装置の構成図である。
【0048】
第2実施形態に係る廃水処理装置は、第1実施形態に係る廃水処理装置と比較して、複数(図5では3基)の電解処理槽30(30A〜30C)および電極電源装置35(35A〜35C)が並列に設けられている。また、電解処理槽30(30A〜30C)の上流に開閉弁40(40A〜40C)が配置され、下流に開閉弁41(41A〜41C)がそれぞれ配置されている。なお、電極電源装置35(35A〜35C)、開閉弁40(40A〜40C)および開閉弁41(41A〜41C)は、制御装置50によって制御される。
【0049】
第2実施形態に係る廃水処理装置の電流指令部52は、入口濃度、出口濃度、流量に基づいて、算出テーブル格納部53cに格納された算出テーブルを参照して、運転する電解処理槽30の台数を決定する。
【0050】
<作用効果>
第2実施形態に係る廃水処理装置によれば、廃水の量や濃度に応じて、適切な運転台数を決定し、水処理運転することができる。また、電解処理槽30の並列台数を増やすことによって、従来の微生物を用いる水処理装置(例えば特許文献1)では処理が困難な高濃度廃水に対しても水処理が可能となる。
【符号の説明】
【0051】
10 廃水槽(被処理水槽)
15 流量計
20 循環タンク
21 U字配管(排出路)
21a 開口部
24 消泡ノズル(ノズル)
30 電解処理槽
30a 電極
32 ポンプ(循環ポンプ)
33 流路(第1流路)
34 流路(第2流路)
35 電極電源装置
35a 印加電流制御部
36 送風機
37 流路(第3流路)
50 制御装置
51 運転制御部
52 電流指令部
53 記憶部
53a 入口濃度格納部
53b 出口濃度格納部
53c 算出テーブル格納部
【要約】
【課題】好適に処理が可能な水処理装置を提供する。
【解決手段】
被処理水が流入し、液体を貯留する循環タンク20と、電極30aを有し、電気分解によって電解処理水を生成する電解処理槽30と、循環タンク20と電解処理槽30との間で液体を循環させる循環ポンプ32と、電極30aに電流を印加する電極電源装置35と、循環タンク20からオーバーフローした液体を排出する排出路21と、を備え、被処理水を連続処理する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5