【実施例】
【0042】
以下に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって本発明の範囲を限定するものではない。
【0043】
以下の実施例において、NMRスペクトルは、日本電子JNM−EX400型核磁気共鳴装置を使用し、内部標準としてテトラメチルシラン(TMS)を使用して測定した。MSスペクトルは日本電子JMS−T100LP型及びJMS−SX102A型質量分析計で測定した。元素分析はヤナコ分析CHN CORDER MT−6元素分析装置で行った。
【0044】
(参考例1)
ビス(アセタト−O)−〔6,7−ジフルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキシラト−O3,O4〕ボロン
窒素雰囲気下、無水酢酸21.4L(225mol)に、ホウ酸(触媒作成用)103g(1.67mol)を加え、70.0〜76.9°Cで30分間加熱撹拌した(撹拌速度69.5rpm)。内温24.6°Cまで冷却した後、1回目のホウ酸1.01kg(16.3mol)を加え、24.6〜27.4°Cで30分撹拌した。2回目のホウ酸1.01kg(16.3mol)を加え、24.7〜27.5°Cで30分撹拌した。3回目のホウ酸1.01kg(16.3mol)を加え、24.7〜27.7°Cで30分撹拌した。4回目のホウ酸1.01kg(16.3mol)を加え、25.4〜29.4°Cで30分撹拌した。さらに、50.0〜56.9°Cで30分撹拌し、ホウ酸トリアセテート調整液とした。当該調整液に、6,7−ジフルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸エチルエステル5.50kg(16.7mol)を加え、得られた混液を54.7〜56.9°Cで3時間撹拌した。当該混液を30.0°Cまで冷却し、室温で一夜放置した。混液を58.6°Cまで加熱し析出した化合物を溶解させ、アセトン16.5 Lを混液に加え、反応液(a)とした。
窒素雰囲下、常水193L及びアンモニア水(28%)33.7 L(555mol)の混合液を、−0.6°Cまで冷却した。当該混合液に、前述の反応液(a)を添加し、アセトン11.0Lで洗い込んだ。15.0°Cまで冷却後、4.3〜15.0°Cで1時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、常水55.0Lで洗浄し、湿潤粗結晶を14.1kg得た。設定温度65.0°Cで約22時間減圧乾燥し、粗結晶を6.93kg得た(収率96.7%)。
得られた粗結晶に、窒素雰囲下、アセトン34.7Lを加え、加熱溶解した(温水設定温度57.0°C)。加熱時、ジイソプロピルエーテル69.3Lを晶析するまで滴下した(滴下量12.0 L)。晶析確認後、48.3〜51.7°Cで15分撹拌し、残りのジイソプロピルエーテルを滴下し、45.8〜49.7°Cで15分撹拌した。15°Cまで冷却後、6.5〜15.0°Cで30分撹拌した。析出した結晶をろ取し、アセトン6.93L及びジイソプロピルエーテル13.9Lで洗浄し、湿潤結晶を7.41kg得た。得られた湿潤結晶を設定温度65.0°Cで約20時間減圧乾燥し、ビス(アセタト−O)−〔6,7−ジフルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキシラト−O
3,O
4〕ボロンを 6.47kg得た(収率90.3%)。
元素分析(%):C
17H
15BF
3NO
8として
計算値:C,47.58;H,3.52;N,3.26.
実測値:C,47.41;H,3.41;N,3.20.
1H−NMR(CDCl
3,400 MHz)δ:2.04(6H,s),4.21(3H, d,J=2.9Hz),4.88(2H,dt,J=47.0,4.4Hz),5.21(2H,dt,J=24.9,3.9Hz),8.17(1H,t,J=8.8Hz),9.10(1H,s).
ESI MS(positive) m/z:430(M+H)
+.
【0045】
(参考例2)
7−[(3S,4S)−3−{(シクロプロピルアミノ)メチル}−4−フルオロピロリジン−1−イル]−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸塩酸塩の製造
窒素雰囲気下、(3R,4S)−3−シクロプロピルアミノメチル−4−フルオロピロリジン3.56kg(15.4mol)、トリエチルアミン11.7 L(84.2mol)及びジメチルスルホキシド30.0Lの混液を、23.0〜26.3°Cで15分撹拌した。当該混液に23.0〜26.3°Cでビス(アセタト−O)[6,7−ジフルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキシラト−O
3,O
4]ボロン6.00kg(14.0mol)を加え、反応液とした。反応液を23.7〜26.3°Cで2時間撹拌した。反応液に酢酸エチル120Lを加え、さらに常水120Lを加えた後、水酸化ナトリウム960g(2mol/Lとする量)及び常水12.0Lの溶液を加え、5分間撹拌後、水層を分取した。水層に、酢酸エチル120Lを加え、5分間撹拌後、酢酸エチル層を分取した。酢酸エチル層を合わせて、常水120Lを加え、5分間撹拌後、静置し、水層を廃棄した。酢酸エチル層を減圧留去した。得られた残留物を、2−プロパノール60.0Lに溶解させ、室温で一夜放置した。当該溶液に塩酸5.24L(62.9mol)及び常水26.2L(2mol/Lとする量)の溶液を加え、28.2〜30.0°Cで30分撹拌した。外温55.0°Cで加熱し、溶解後(47.1°Cで溶解確認)、冷却し晶析させた。39.9〜41.0°Cで30分撹拌し、冷却後(目安:20.0°Cまでは設定温度7.0°C、それ以下は−10.0°C)、2.2〜10.0°Cで1時間撹拌した。析出した結晶をろ取、2−プロパノール60Lで洗浄し、7−{(3S,4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸塩酸塩の湿潤粗結晶を9.57kg得た。
【0046】
(参考例3)
7−[(3S,4S)−3−{(シクロプロピルアミノ)メチル}−4−フルオロピロリジン−1−イル]−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸塩酸塩A形結晶(化合物1)の製造方法
7−{(3S,4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸塩酸塩の湿潤粗結晶9.57kgをエタノール60L、精製水10.8Lの混液に添加し、加熱溶解した。この溶解液を、フィルターを通すことによりろ過し、エタノール24.0L及び精製水1.20Lの混液で洗い込んだ。溶解を確認し、加熱したエタノール(99.5)96.0Lを71.2〜72.6°Cで添加した。その溶解液を冷却し(温水設定温度60.0°C)晶析確認後(晶析温度61.5°C)、59.4〜61.5°Cで30分撹拌した。段階的に冷却させ(50.0°Cまで温水設定温度40.0°C、40.0°Cまで温水設定温度30.0°C、30.0°Cまで温水設定温度20.0°C、20.0°Cまで設定温度7.0°C、15.0°Cまで設定温度−10.0°C、これ以降溜置き)、4.8〜10.0°Cで1時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、エタノール30.0Lで洗浄し、7−[(3S,4S)−3−{(シクロプロピルアミノ)メチル}−4−フルオロピロリジン−1−イル]−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸塩酸塩の湿潤結晶を5.25kg得た。得られた湿潤結晶を設定温度50.0°Cで約13時間減圧乾燥し、化合物1を4.83kg得た(収率72.6%)。
国際公開第2013/069297号に基づく化合物1の粉末X線回折の結果を
図1に示す。
図1から理解できるように4.9度、10.8度、12.9度、18.2度、21.7度、24.7度及び26.4度にピークが見られ、10.8度、12.9度、及び24.7度に特徴的なピークが確認できる。
元素分析値(%):C
21H
24F
3N
3O
4HClとして
計算値:C,53.00;H,5.30;N,8.83.
実測値:C,53.04;H,5.18;N,8.83.
1H NMR(DMSO−d
6,400MHz)δ(ppm):0.77−0.81(2H,m),0.95−1.06(2H,m),2.80−2.90(2H,m),3.21−3.24(1H,m),3.35−3.39(1H,m),3.57(3H,s),3.65−3.78(3H,m),4.13(1H,dd,J=41.8,13.1Hz),4.64−4.97(3H,m),5.14(1H,dd,J=32.7,15.6Hz),5.50(1H,d,J=53.7Hz),7.80(1H,d,J=13.7Hz),8.86(1H,s),9.44(2H,brs),15.11(1H,brs).
ESI MS(positive) m/z:440(M+H)
+.
【0047】
(実施例1)
表2記載の処方に従い、ワンダーブレンダー(WB−1、大阪ケミカル社製)を用いて45秒間粉砕した化合物1と、L−グルタミン酸塩酸塩を、乳棒乳鉢で3分間混合した。得られた混合品及び結晶セルロースをポリエチレン袋中で3分間混合した。さらに、当該混合品にフマル酸ステアリルナトリウムを加え、ポリエチレン袋中で30秒間混合した。当該混合品を打錠機(HT―AP―18SS−II、畑鉄工所、直径8.5mmの臼、曲率半径10mmのR面杵)を用いて質量200mgとなるように圧縮成形した後、手で粉砕し造粒物を得た。得られた造粒物のうち、850μm篩を通過し、106μm篩上に残った顆粒を主薬顆粒とした。次に主薬顆粒、結晶セルロース及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースをポリエチレン袋中で3分間混合した。さらに、当該混合品にステアリン酸マグネシウムを加え、ポリエチレン袋中で30秒間混合した。当該混合品を打錠機(HT―AP―18SS−II、畑鉄工所、直径8.5mmの臼、曲率半径10mmのR面杵)を用いて質量250mg、錠厚4.2mmとなるように打錠し、錠剤(素錠)を得た。
【0048】
(実施例2)
表2記載の処方に従い、L−グルタミン酸塩酸塩の代わりにクエン酸二水素ナトリウムを用いた以外は、実施例1と同様に操作を行った。
【0049】
(実施例3)
表2記載の処方に従い、L−グルタミン酸塩酸塩の代わりにクエン酸二ナトリウムを用いた以外は、実施例1と同様に操作を行った。
【0050】
(比較例1)
表2記載の処方に従い、ワンダーブレンダー(WB−1、大阪ケミカル社製)を用いて45秒間粉砕した化合物1と、結晶セルロースを、ポリエチレン袋中で3分間混合した。さらに、当該混合品にフマル酸ステアリルナトリウムを加え、ポリエチレン袋中で30秒間混合した。当該混合品に打錠機(HT―AP―18SS−II、畑鉄工所、直径8.5mmの臼、曲率半径10mmのR面杵)を用いて質量200mgとなるように圧縮成形した後、手で粉砕し造粒物を得た。得られた造粒物のうち、850μm篩を通過し、106μm篩上に残った顆粒を主薬顆粒とした。次に主薬顆粒、結晶セルロースと低置換度ヒドロキシプロピルセルロースをポリエチレン袋中で3分間混合した。さらに、当該混合品にステアリン酸マグネシウムを加え、ポリエチレン袋中で30秒間混合した。当該混合品を打錠機(HT―AP―18SS−II、畑鉄工所、直径8.5mmの臼、曲率半径10mmのR面杵)を用いて質量250mg、錠厚4.2mmとなるように打錠し、錠剤を得た。
【0051】
【表2】
【0052】
(試験例1)溶出試験(第一液)
実施例と比較例の各組成物(錠剤)を評価するために第十六改正日本薬局方溶出試験法装置2(パドル法)に準じて溶出試験を実施した。溶出試験の詳細な条件は下記の通りである。溶出試験の結果を
図2に示す。
パドル回転数: 50rpm
試験液の温度: 37℃
試験液 : 第十六改正日本薬局方 溶出試験第一液 900mL
【0053】
塩析剤を含有しない比較例1の錠剤では、溶出性が極めて悪く、60分後の溶出率でも25%以下に留まる。これは、錠剤表面上にある化合物1が、水と接するとゲル化してしまい、錠剤内部への速やかな水の浸透を阻害することが原因と考えられる。実際に、溶出試験後の残骸を観察してみると、錠剤の内部まで溶液が浸透しておらず、錠剤の崩壊が起きていないことが視認された。
【0054】
その一方で、L−グルタミン酸塩酸塩(実施例1)、クエン酸二水素ナトリウム(実施例2)またはクエン酸二ナトリウム(実施例3)などの塩析剤を含有する実施例1〜3の錠剤においては、溶出率は著しく改善された。実施例1〜3の錠剤はいずれも、10分後に70%以上、60分後には90%程の溶出率を示していることが分かる(
図2)。なお、L−グルタミン酸塩酸塩は、pHが3.5以下でありので、塩析剤としての役割と同時に、pHが3.5以下の酸性物質としての役割を担う。
【0055】
(実施例4)
表3記載の処方に従い、化合物1、粉砕した後に目開き212μm篩を用いて篩過したL−グルタミン酸塩酸塩1mg、目開き212μm篩を用いて篩過したクエン酸二水素ナトリウム、及び結晶セルロースをポリエチレン袋中で3分間混合した。さらに、当該混合品にステアリン酸マグネシウムを加え、ポリエチレン袋中で1分間混合した。当該混合品をローラーコンパクター(TF−MINI、フロイント産業社製、ロール圧力:70kgf、ロール回転数:3min
−1)を用いて圧縮成形した後、ロールグラニュレーター(GRN−T−54−S、日本グラニュレーター社製)を用いて整粒し造粒物を得た(ピッチ幅6mm、2mm、1.2mm、0.6mmの4種類のロールを使用した。)。得られた造粒物を目開き850μm篩を用いて篩過し、得られた篩過品を主薬顆粒とした。次に主薬顆粒、結晶セルロースと低置換度ヒドロキシプロピルセルロースをポリエチレン袋中で3分間混合した。さらに、当該混合品にステアリン酸マグネシウムを加え、ポリエチレン袋中で1分間混合した。当該混合品を打錠機(HT―AP―18SS−II、畑鉄工所、直径8.5mmの臼、曲率半径10mmのR面杵)を用いて質量250mg、錠厚4.2mmとなるように打錠し、素錠を得た。さらに、当該素錠に対し、ハイコーター(HCT−MINI、フロイント産業社製)を用いてヒプロメロース、酸化チタンとポリエチレングリコール400の混合物を水系コーティングした。
【0056】
(実施例5)
表3記載の処方に従い、実施例4と同様に操作を行った。
【0057】
(実施例6)
表3記載の処方に従い、実施例4と同様に操作を行った。
【0058】
(実施例7)
表3記載の処方に従い、化合物1、目開き212μm篩を用いて篩過したクエン酸二水素ナトリウム、及び結晶セルロースをポリエチレン袋中で3分間混合した。さらに、当該混合品にステアリン酸マグネシウムを加え、ポリエチレン袋中で1分間混合した。ローラーコンパクター(TF−MINI、フロイント産業社製、ロール圧力:70kgf、ロール回転数:3min
−1)を用いて圧縮成形した後、ロールグラニュレーター(GRN−T−54−S、日本グラニュレーター社製)を用いて整粒し造粒物を得た(ピッチ幅6mm、2mm、1.2mm、0.6mmの4種類のロールを使用した。)。得られた造粒物を目開き850μm篩を用いて篩過し、得られた篩過品を主薬顆粒とした。次に主薬顆粒、結晶セルロースと低置換度ヒドロキシプロピルセルロースをポリエチレン袋中で3分間混合した。さらに、当該混合品にステアリン酸マグネシウムを加え、ポリエチレン袋中で1分間混合した。当該混合品を打錠機(HT―AP―18SS−II、畑鉄工所、直径8.5mmの臼、曲率半径10mmのR面杵)を用いて質量250mg、錠厚4.2mmとなるように打錠し、素錠を得た。さらに、当該素錠に対し、ハイコーター(HCT−MINI、フロイント産業社製)を用いてヒプロメロース、酸化チタンとポリエチレングリコール400の混合物を水系コーティングした。
【0059】
【表3】
【0060】
(試験例2)安定性試験
実施例4〜7の各組成物(錠剤)をガラス瓶に充填し、密栓した状態で40℃、4週間保存した。保存後における7−{(3S,4S)−3−アミノメチル−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸(化合物2)の含有量と、化合物1の含有量を液体クロマトグラフィーで測定し、化合物2の含量を化合物1の含量に対する百分率で表した。液体クロマトグラフィーによる試験条件は試験条件1で行った。
【0061】
(試験条件1)
カラム:内径4.6mm、長さ150mmのそれぞれのステンレス管に3μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填し、分離カラムとした(ジーエルサイエンス、Inertsil ODS−3)。
A液:1−オクタンスルホン酸ナトリウム2.16gを薄めたリン酸(1→1000)に溶かして1000mLとした。
B液:液体クロマトグラフィー用メタノール
送液:A液及びB液の混合比を変えて濃度勾配を制御した。
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:294nm)
化合物2の化合物1に対する保持時間:0.69
【0062】
安定性試験結果を表4に示す。pH3.5以下の酸性物質であるL−グルタミン酸塩酸塩が配合された錠剤(実施例4〜6)は、pH3.5以下の酸性物質の含有量が配合されていない錠剤(実施例7)と比べ、化合物2の生成がほとんどおきておらず、安定化効果が高かった。
【0063】
【表4】
【0064】
実施例4〜6で得られた錠剤は、塩析剤としてクエン酸二水素ナトリウムを含有している。従って、実施例1〜3と同様に試験例1(第一液)の条件で溶出試験を行うと、溶出率の著しい改善効果が認められる(
図3)。溶出試験液を水にした場合でも溶出率の改善効果があるかどうかを確認した。
【0065】
(試験例3)溶出試験(製造直後、水)
実施例4〜6で得られた錠剤を第十六改正日本薬局方溶出試験法装置2(パドル法)に準じて溶出試験を実施した。溶出試験の詳細な条件は下記の通りである。溶出試験の結果を
図4に示す。
パドル回転数: 50rpm
試験液の温度: 37℃
試験液 : 第十六改正日本薬局方 水 900mL
【0066】
実施例4〜6いずれの錠剤においても、60分後の溶出率は50%を超える結果となった。さらに、L−グルタミン酸塩酸塩1.0mgを使用した実施例4や、L−グルタミン酸塩酸塩3.0mgを使用した実施例5は、L−グルタミン酸塩酸塩7.2mgを使用した実施例6に比べ、初期溶出が早く、10分後に60%程の溶出率を示している。(
図4)
【0067】
(試験例4)溶出試験(加速条件で保存後、第一液)
実施例4〜6で得られた錠剤をガラス瓶に充填し、開栓及び密栓した状態で加速条件下(40℃/75%RH)4週間保存した。保存後の錠剤を、試験例1(試験液:第一液)と同様にして溶出試験を実施した。溶出試験の結果を
図5(開栓)及び
図6(密栓)に示す。
加速条件下保存した場合、溶出率が低下する傾向にあるが、実施例4(L−グルタミン酸塩酸塩1.0mg)は、開栓条件においても、密栓条件においても、溶出率の低下を生じなかった。また、実施例5(L−グルタミン酸塩酸塩3.0mg)においては、開栓条件ならば、溶出率の低下を生じなかった。
【0068】
(実施例8)
表5記載の処方に従い、化合物1、目開き212μm篩を用いて篩過したアルギン酸、目開き212μm篩を用いて篩過したクエン酸二水素ナトリウム、及び結晶セルロースをポリエチレン袋中で3分間混合した。さらに、当該混合品にステアリン酸マグネシウムを加え、ポリエチレン袋中で1分間混合した。当該混合品をローラーコンパクター(TF−MINI、フロイント産業社製、ロール圧力:70kgf、ロール回転数:3min
−1)を用いて圧縮成形した後、ロールグラニュレーター(GRN−T−54−S、日本グラニュレーター社製)を用いて整粒し造粒物を得た(ピッチ幅6mm、2mm、1.2mm、0.6mmの4種類のロールを使用した。)。得られた造粒物を目開き850μm篩を用いて篩過し、得られた篩過品を主薬顆粒とした。次に主薬顆粒、結晶セルロースと低置換度ヒドロキシプロピルセルロースをポリエチレン袋中で3分間混合した。さらに、当該混合品にステアリン酸マグネシウムを加え、ポリエチレン袋中で1分間混合した。当該混合品を打錠機(HT―AP―18SS−II、畑鉄工所、直径8.5mmの臼、曲率半径10mmのR面杵)を用いて質量250mg、錠厚4.2mmとなるように打錠し、素錠を得た。さらに、当該素錠に対し、ハイコーター(HCT−MINI、フロイント産業社製)を用いてヒプロメロース、酸化チタンとポリエチレングリコール400の混合物を水系コーティングした。
【0069】
(実施例9)
アルギン酸の変わりにL−グルタミン酸塩酸塩を用いて、実施例8と同様に操作を行った。
【0070】
(実施例10) 表5記載の処方に従い、化合物1、目開き212μm篩を用いて篩過したクエン酸二水素ナトリウム、及び結晶セルロースをポリエチレン袋中で3分間混合した。さらに、当該混合品にステアリン酸マグネシウムを加え、ポリエチレン袋中で1分間混合した。当該混合品をローラーコンパクター(TF−MINI、フロイント産業社製、ロール圧力:70kgf、ロール回転数:3min
−1)を用いて圧縮成形した後、ロールグラニュレーター(GRN−T−54−S、日本グラニュレーター社製)を用いて整粒し造粒物を得た(ピッチ幅6mm、2mm、1.2mm、0.6mmの4種類のロールを使用した。)。得られた造粒物を目開き850μm篩を用いて篩過し、得られた篩過品を主薬顆粒とした。次に主薬顆粒、結晶セルロースと低置換度ヒドロキシプロピルセルロースをポリエチレン袋中で3分間混合した。さらに、当該混合品にステアリン酸マグネシウムを加え、ポリエチレン袋中で1分間混合した。当該混合品を打錠機(HT―AP―18SS−II、畑鉄工所、直径8.5mmの臼、曲率半径10mmのR面杵)を用いて質量250mg、錠厚4.2mmとなるように打錠し、素錠を得た。さらに、当該素錠に対し、ハイコーター(HCT−MINI、フロイント産業社製)を用いてヒプロメロース、酸化チタンとポリエチレングリコール400の混合物を水系コーティングした。
【0071】
【表5】
【0072】
(試験例5)溶出試験(製造直後、水)
実施例8〜9で得られた組成物(錠剤)を、試験例3と同様に溶出試験を行った。溶出試験の結果を
図7に示す。20℃における水への溶解度が10%未満であるアルギン酸を用いた実施例8は、20℃における水への溶解度が10%以上であるL−グルタミン酸塩酸塩を用いた実施例9に比べ、溶出率が高い。20℃における水への溶解度が10%以上であるL−グルタミン酸塩酸塩を用いた場合は、その使用量の増加につれ、水に対する溶出率が低くなる傾向にあったが(
図4)、アルギン酸に関しては、7.2mgと比較的高用量用いた場合でも、高い溶出率を維持していることが分かる。
【0073】
(試験例6)安定性試験
実施例8、実施例10で得られた組成物(錠剤)を、ガラス瓶に充填し、密栓した状態で40℃、4週間保存した。保存後の化合物2の含有量と、化合物1の含有量を液体クロマトグラフィーで測定し、化合物2の含量を化合物1の含量に対する百分率で表した。液体クロマトグラフィーによる試験条件は前記の試験条件1で行った。
安定性試験結果を表6に示す。アルギン酸を配合した錠剤(実施例8)は、アルギン酸が配合されておらず、pH3.5以下の酸性物質を配合していない錠剤(実施例10)と比べ、化合物2の生成がほとんどおきておらず、安定化効果が高かった。
【0074】
【表6】
【0075】
(実施例11)
表7記載の処方に従い、化合物1、目開き212μm篩を用いて篩過したクエン酸二水素ナトリウム、及び結晶セルロースをポリエチレン袋中で3分間混合した。さらに、当該混合品にステアリン酸マグネシウムを加え、ポリエチレン袋中で1分間混合した。当該混合品をローラーコンパクター(TF−MINI、フロイント産業社製、ロール圧力:70kgf、ロール回転数:3min
−1)を用いて圧縮成形した後、ロールグラニュレーター(GRN−T−54−S、日本グラニュレーター社製)を用いて整粒し造粒物を得た(ピッチ幅6mm、2mm、1.2mm、0.6mmの4種類のロールを使用した。)。得られた造粒物を目開き850μm篩を用いて篩過し、得られた篩過品を顆粒とした。次に顆粒、目開き212μm篩を用いて篩過した酒石酸、結晶セルロース、及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースをポリエチレン袋中で3分間混合した。さらに、当該混合品にステアリン酸マグネシウムを加え、ポリエチレン袋中で1分間混合した。当該混合品を打錠機(HT―AP―18SS−II、畑鉄工所、直径8.5mmの臼、曲率半径10mmのR面杵)を用いて質量250mg、錠厚4.2mmとなるように打錠し、素錠を得た。さらに、当該素錠に対し、ハイコーター(HCT−MINI、フロイント産業社製)を用いてヒプロメロース、酸化チタンとポリエチレングリコール400の混合物を水系コーティングした。
【0076】
(実施例12)
酒石酸をクエン酸に変えた以外は実施例11と同様の方法で錠剤を製造した。
【0077】
【表7】
【0078】
(試験例7)溶出試験(第一液)
実施例6、11、12と比較例1の各組成物(錠剤)を評価するために、試験例1と同様の方法で溶出試験を実施した。溶出試験の結果を
図8に示す。
【0079】
L−グルタミン酸塩酸塩と同様に、酒石酸およびクエン酸は20℃における水への溶解度が10%以上であるpH3.5以下の酸性物質である。実施例6の錠剤と同様に、酒石酸を含有する実施例11の錠剤、及びクエン酸を含有する実施例12のいずれも良好な溶出率の改善が認められた。
【0080】
(実施例13)
表8記載の処方に従い、化合物1、目開き212μm篩を用いて篩過したアルギン酸とクエン酸二水素ナトリウム、及び結晶セルロースをポリエチレン袋中で3分間混合した。さらに、当該混合品にステアリン酸マグネシウムを加え、ポリエチレン袋中で1分間混合した。当該混合品を、ローラーコンパクター(TF−MINI、フロイント産業社製、ロール圧力:70kgf、ロール回転数:3min
−1)を用いて圧縮成形した後、ロールグラニュレーター(GRN−T−54−S、日本グラニュレーター社製)を用いて整粒し造粒物を得た(ピッチ幅6mm、2mm、1.2mm、0.6mmの4種類のロールを使用した。)。得られた造粒物を目開き850μm篩を用いて篩過し、得られた篩過品を主薬顆粒とした。次に主薬顆粒、結晶セルロースと低置換度ヒドロキシプロピルセルロースをポリエチレン袋中で3分間混合した。さらに、当該混合品にステアリン酸マグネシウムを加え、ポリエチレン袋中で1分間混合した。当該混合品を、打錠機(HT―AP―18SS−II、畑鉄工所、直径7.5mmの臼、曲率半径9mmのR面杵)を用いて質量190mg、錠厚3.9mmとなるように打錠し、素錠を得た。さらに、当該素錠に対し、ハイコーター(HCT−MINI、フロイント産業社製)を用いてヒプロメロース、酸化チタンとポリエチレングリコール400、黄色三二酸化鉄の混合物を水系コーティングした。
【0081】
(実施例14、15)
アルギン酸の使用量を表8記載の量に変更した以外は実施例13と同様の方法で錠剤を製造した。
【0082】
【表8】
【0083】
(試験例8)溶出試験(製造直後、水)
実施例13〜15で得られた錠剤について、試験例3と同様の方法で溶出試験を実施した。溶出試験の結果を
図9に示す。
【0084】
実施例13〜15いずれの錠剤においても、60分後の溶出率は85%を超える結果となり、良好な溶出率の改善が認められた。また、
図9から理解できるように、アルギン酸のような、20℃における水への溶解度が10%未満であるpH3.5以下の酸性物質を使用した場合、その含有量に関わらず、良好な溶出率を示した。
【0085】
(実施例16)
表9記載の処方に従い、化合物1、目開き212μm篩を用いて篩過したL−アスパラギン酸、目開き212μm篩を用いて篩過したクエン酸二水素ナトリウム、及び結晶セルロースをポリエチレン袋中で3分間混合した。さらに、当該混合品にステアリン酸マグネシウムを加え、ポリエチレン袋中で1分間混合した。当該混合品をローラーコンパクター(TF−MINI、フロイント産業社製、ロール圧力:70kgf、ロール回転数:3min
−1)を用いて圧縮成形した後、ロールグラニュレーター(GRN−T−54−S、日本グラニュレーター社製)を用いて整粒し造粒物を得た(ピッチ幅6mm、2mm、1.2mm、0.6mmの4種類のロールを使用した。)。得られた造粒物を目開き850μm篩を用いて篩過し、得られた篩過品を主薬顆粒とした。次に主薬顆粒、結晶セルロースと低置換度ヒドロキシプロピルセルロースをポリエチレン袋中で3分間混合した。さらに、当該混合品にステアリン酸マグネシウムを加え、ポリエチレン袋中で1分間混合した。当該混合品を打錠機(HT―AP―18SS−II、畑鉄工所、直径8.5mmの臼、曲率半径10mmのR面杵)を用いて質量250mg、錠厚4.2mmとなるように打錠し、素錠を得た。さらに、当該素錠に対し、ハイコーター(HCT−MINI、フロイント産業社製)を用いてヒプロメロース、酸化チタンとポリエチレングリコール400の混合物を水系コーティングした。
【0086】
(実施例17)
L−アスパラギン酸をアジピン酸に変更した以外は実施例16と同様の方法で錠剤を製造した。
【0087】
(実施例18)
L−アスパラギン酸をコハク酸に変更した以外は実施例16と同様の方法で錠剤を製造した。
【0088】
(実施例19)
L−アスパラギン酸をメタクリル酸ポリマーLに変更した以外は実施例16と同様の方法で錠剤を製造した。
【0089】
【表9】
【0090】
(試験例9)溶出試験(製造直後、水)
実施例8、9、16〜19で得られた錠剤について、試験例3と同様の方法で溶出試験を実施した。溶出試験の結果を
図10に示す。
【0091】
アルギン酸と同様に、L−アスパラギン酸、アジピン酸、コハク酸、メタクリル酸コポリマーLはいずれも20℃における水への溶解度が10%未満であり、pHが3.5以下の酸性物質である。このような酸性物質を用いて製造された実施例8、16〜19の錠剤は、実施例9(20℃における水への溶解度が10%以上である酸性物質を化合物1(1質量部)に対し0.05質量部よりも多く配合した錠剤)よりも高い溶出率の改善が認められた。