特許第5700744号(P5700744)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 和光純薬工業株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学の特許一覧

<>
  • 特許5700744-フラーレン含有水溶液及びその製造法 図000048
  • 特許5700744-フラーレン含有水溶液及びその製造法 図000049
  • 特許5700744-フラーレン含有水溶液及びその製造法 図000050
  • 特許5700744-フラーレン含有水溶液及びその製造法 図000051
  • 特許5700744-フラーレン含有水溶液及びその製造法 図000052
  • 特許5700744-フラーレン含有水溶液及びその製造法 図000053
  • 特許5700744-フラーレン含有水溶液及びその製造法 図000054
  • 特許5700744-フラーレン含有水溶液及びその製造法 図000055
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5700744
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】フラーレン含有水溶液及びその製造法
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/00 20060101AFI20150326BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20150326BHJP
   C08L 25/18 20060101ALI20150326BHJP
   C08L 33/02 20060101ALI20150326BHJP
   C08L 33/26 20060101ALI20150326BHJP
   C01B 31/02 20060101ALN20150326BHJP
   C08F 4/04 20060101ALN20150326BHJP
   C08F 293/00 20060101ALN20150326BHJP
【FI】
   C08L53/00
   C08K3/04
   C08L25/18
   C08L33/02
   C08L33/26
   !C01B31/02 101F
   !C08F4/04
   !C08F293/00
【請求項の数】18
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2008-515602(P2008-515602)
(86)(22)【出願日】2007年5月17日
(86)【国際出願番号】JP2007060165
(87)【国際公開番号】WO2007132923
(87)【国際公開日】20071122
【審査請求日】2010年5月17日
【審判番号】不服2014-3027(P2014-3027/J1)
【審判請求日】2014年2月18日
(31)【優先権主張番号】特願2006-137851(P2006-137851)
(32)【優先日】2006年5月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000252300
【氏名又は名称】和光純薬工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
(72)【発明者】
【氏名】池田 篤志
(72)【発明者】
【氏名】菊池 純一
(72)【発明者】
【氏名】山本 直之
【合議体】
【審判長】 須藤 康洋
【審判官】 小野寺 務
【審判官】 大島 祥吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−35809(JP,A)
【文献】 特開2005−225772(JP,A)
【文献】 特開2004−267972(JP,A)
【文献】 特開2003−12705(JP,A)
【文献】 特開2003−12784(JP,A)
【文献】 特開平5−320276(JP,A)
【文献】 特開2001−288233(JP,A)
【文献】 特開2006−249399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08K 3/04
C08F 4/04
C08F293/00
C01B 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式[7]
(式中、R11は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R12はシアノ基又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、Eは炭素数1〜6のアルキレン基を表し、qは2又は3を表し、kは10〜250の整数を表す。)で示される基を有するポリアルキレングリコールセグメント、及び一般式[2’]
(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R’はアンモニオ基を有する塩基性を示す基又は酸性を示す基を表す。)で示される第1モノマー単位を構成成分として含んでなるポリマー、フラーレン化合物及び水からなるフラーレン含有水溶液。
【請求項2】
ポリマーが、一般式[8’]
(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、Rはアルキル基、アルコキシカルボニル基又はハロゲン置換アラルキル基を表し、R13は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R14はシアノ基又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、Eは炭素数1〜6のアルキレン基を表し、nは20〜20000の整数を表し、pは0〜20000の整数を表し、mは1〜20の整数を表し、R、R’、R11〜R12、E、q及びkは前記に同じ。)で示されるものである、請求項1に記載の水溶液。
【請求項3】
’で示される、アンモニオ基を有する塩基性を示す基が一般式[5]
(式中、R〜Rは夫々独立して、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Tは炭素数1〜6のアルキレン基を表し、Xはハロゲンイオン、過塩素酸イオン、硫酸イオン又は硝酸イオンを表す。)で示される基である、請求項1又は2に記載の水溶液。
【請求項4】
’で示される酸性を示す基が、カルボキシル基又はそのアルカリ金属塩、或いは置換基としてスルホ基若しくはそのアルカリ金属塩を有するアルキル基又はアリール基である、請求項1〜3の何れかに記載の水溶液。
【請求項5】
置換基としてスルホ基又はそのアルカリ金属塩を有するアリール基が、一般式[6]
(式中、Rは水素原子又はアルカリ金属原子を表す。)で示される基である、請求項4に記載の水溶液。
【請求項6】
ポリマーの重合平均分子量が10,000〜400,000である、請求項1〜5の何れかに記載の水溶液。
【請求項7】
ポリマーが、一般式[7]で示されるポリアルキレングリコールセグメントを1〜70重量%含有し、一般式[2’]で示される第1モノマー単位を20〜85重量%含有する、請求項1〜6の何れかに記載の水溶液。
但し、ポリマー中の、一般式[7]で示されるポリアルキレングリコールセグメント及び一般式[2’]で示される第1モノマー単位のポリマー中の各重量%はポリマー全体で100重量%となるように上記範囲から選択される。
【請求項8】
一般式[8’]で示されるポリマーが、一般式[3]
(式中、R〜Rは前記に同じ。)で示される第2モノマー単位を0〜50重量%含有する、請求項2〜7の何れかに記載の水溶液。
但し、一般式[3]で示される第2モノマー単位のポリマー中の重量%はポリマー全体で100重量%となるように上記範囲から選択される。
【請求項9】
一般式[2’]で示される第1モノマー単位が、3−(メタクリルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロライド、スチレンスルホン酸又はそのアルカリ金属塩、或いはメタクリル酸由来のものである、請求項1〜8の何れかに記載の水溶液。
【請求項10】
一般式[3]
(式中、R〜Rは前記に同じ。)で示される第2モノマー単位が、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アリルシクロヘキサン、又はアリルペンタフルオロベンゼン由来のものである、請求項2〜9の何れかに記載の水溶液。
【請求項11】
水が、超純水である、請求項1〜10の何れかに記載の水溶液。
【請求項12】
一般式[7]
(式中、R11は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R12はシアノ基又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、Eは炭素数1〜6のアルキレン基を表し、qは2又は3を表し、kは10〜250の整数を表す。)で示される基を有するポリアルキレングリコールセグメント、及び一般式[2’]
(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R’はアンモニオ基を有する塩基性を示す基又は酸性を示す基を表す。)で示される第1モノマー単位を構成成分として含んでなるポリマーと水とを用いてフラーレン化合物を溶解させることを特徴とする、フラーレン含有水溶液の製造法。
【請求項13】
ポリマーが、一般式[8’]
(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、Rはアルキル基、アルコキシカルボニル基又はハロゲン置換アラルキル基を表し、R13は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R14はシアノ基又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、Eは炭素数1〜6のアルキレン基を表し、nは20〜20000の整数を表し、pは0〜20000の整数を表し、mは1〜20の整数を表し、R、R’、R11〜R12、E、q及びkは前記に同じ。)で示されるものである、請求項12に記載の製造法。
【請求項14】
超音波処理又は高速振動粉砕処理を行う、請求項12又は13に記載の製造法。
【請求項15】
一般式[7]
(式中、R11は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R12はシアノ基又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、Eは炭素数1〜6のアルキレン基を表し、qは2又は3を表し、kは10〜250の整数を表す。)で示される基及びアゾ基とを構成成分として2つ以上含んで成る重合開始剤を用いることにより得られる、一般式[7]で示される基を有するポリアルキレングリコールセグメント及び一般式[2]
(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、Rは塩基性を示す基又は酸性を示す基を表す。)で示される第1モノマー単位を構成成分として含んでなるポリマー、フラーレン化合物及び水からなるフラーレン含有水溶液。
【請求項16】
ポリマーが、一般式[8]
(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、Rはアルキル基、アルコキシカルボニル基又はハロゲン置換アラルキル基を表し、R13は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R14はシアノ基又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、Eは炭素数1〜6のアルキレン基を表し、nは20〜20000の整数を表し、pは0〜20000の整数を表し、mは1〜20の整数を表し、R、R、R11〜R12、E、q及びkは前記に同じ。)で示されるものである、請求項15に記載の水溶液。
【請求項17】
一般式[7]
(式中、R11は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R12はシアノ基又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、Eは炭素数1〜6のアルキレン基を表し、qは2又は3を表し、kは10〜250の整数を表す。)で示される基及びアゾ基とを構成成分として2つ以上含んで成る重合開始剤を用いることにより得られる、一般式[7]で示される基を有するポリアルキレングリコールセグメント及び一般式[2]
(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、Rは塩基性を示す基又は酸性を示す基を表す。)で示される第1モノマー単位を構成成分として含んでなるポリマーと水とを用いてフラーレン化合物を溶解させることを特徴とする、フラーレン含有水溶液の製造法。
【請求項18】
ポリマーが、一般式[8]
(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、Rはアルキル基、アルコキシカルボニル基又はハロゲン置換アラルキル基を表し、R13は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R14はシアノ基又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、Eは炭素数1〜6のアルキレン基を表し、nは20〜20000の整数を表し、pは0〜20000の整数を表し、mは1〜20の整数を表し、R、R、R11〜R12、E、q及びkは前記に同じ。)で示されるものである、請求項17に記載の製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式[1]
【0002】
(式中、qは2又は3を表し、kは10〜250の整数を表す。)で示される基を有するポリアルキレングリコールセグメント、及び一般式[2’]
【0003】
(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R’はアンモニオ基を有する塩基性を示す基又は酸性を示す基を表す。)で示される第1モノマー単位を構成成分として含んでなるポリマー、並びにフラーレン化合物及び水からなるフラーレン含有水溶液及びその製造法、一般式[1]で示される基及びアゾ基とを構成成分として2つ以上含んで成る重合開始剤を用いることにより得られる、一般式[1]で示される基を有するポリアルキレングリコールセグメント及び一般式[2]
【0004】
(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、Rは塩基性を示す基又は酸性を示す基を表す。)で示される第1モノマー単位を構成成分として含んでなるポリマー、フラーレン化合物及び水からなるフラーレン含有水溶液及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0005】
フラーレン化合物は、炭素原子60個以上のクラスター構造を有する化合物であり、新規な機能性化合物として注目をあびている。フラーレン化合物として、例えばC60、C70、C80等の炭素球殻構造を有するものや、所謂カーボンナノチューブと呼ばれるチューブ構造を有するもの等が知られている。その代表的化合物であるC60は、サッカーボールと同じ5・6員環の配置を持つためサッカーボール分子とも言われている。
【0006】
フラーレン化合物は極性が極めて低いため、フラーレン化学の研究は非水系に限られるという問題点があった。
【0007】
そこで、例えば電気化学、生化学、食品、医薬等の新たな分野での応用を目的として、フラーレン化合物の水溶化の開発が進められた。
フラーレン化合物を水溶化する方法として、例えばシクロデキストリンを用いてフラーレンを包接することにより水溶化する方法(特許文献1)が提案されている。しかしながら、シクロデキストリンは、例えば熱処理、超音波処理に不安定である、選択的化学修飾を行うのが難しくまた化学修飾すると包接能が低下し、フラーレン化合物を水溶化できない等の問題点を有していた。
【0008】
そこで、水溶性高分子を用いてフラーレン化合物を水溶化する方法として、例えばフラーレン化合物を有機溶媒に溶解させ、得られたフラーレン化合物溶液と水とを分散剤(ポリマー)の存在下に混合し、得られた混合液から有機溶媒を除去する方法(特許文献2)、例えば親水基と疎水基とを持つポリマーを分散剤として用いて、フラーレン化合物の水性分散液を製造する方法(特許文献3)等も提案されている。しかしながら、これらの方法は、例えば有機溶媒を用いているため医薬・食品分野で用いる場合には望ましくない、凝集・分散・沈殿することなくより安定であり、澄明なフラーレン含有水溶液とするには好ましい方法とは言い難い等の問題を有していた。
【0009】
また、ポリエチレングリコールセグメント(PEG)と第3級アミノ基又は/及び第2級アミノ基を側鎖に有するポリマー鎖セグメントを含んでなるブロックポリマーによりフラーレンが被覆された微小粒子の複合体を水溶液中で形成することにより、フラーレンを可溶化する方法(特許文献4)も提案されている。しかしながら、ブロックポリマーとして具体的に開示されているものはアセタール−PEG−PAMA〔2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート〕のみであった。
【0010】
このような状況下、有機溶媒を用いることなく、高い水溶性を有するフラーレン含有水溶液及びその製造方法の開発が望まれている。
【0011】
【特許文献1】特開平8-3201号公報
【特許文献2】特開2004-267972号公報
【特許文献3】特開2005-35809号公報
【特許文献4】特開2005-225772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、高い水溶性を有するフラーレン含有水溶液及びその製造法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、一般式[1]
【0014】
(式中、qは2又は3を表し、kは10〜250の整数を表す。)で示される基を有するポリアルキレングリコールセグメント、及び一般式[2’]
【0015】
(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R’はアンモニオ基を有する塩基性を示す基又は酸性を示す基を表す。)で示される第1モノマー単位を構成成分として含んでなるポリマー、フラーレン化合物及び水からなるフラーレン含有水溶液及びその製造法、並びに一般式[1]で示される基及びアゾ基とを構成成分として2つ以上含んで成る重合開始剤を用いることにより得られる、一般式[1]で示されるポリアルキレングリコールセグメント及び一般式[2]
【0016】
(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、Rは塩基性を示す基又は酸性を示す基を表す。)で示される第1モノマー単位を構成成分として含んでなるポリマー、フラーレン化合物及び水からなるフラーレン含有水溶液及びその製造法の発明である。
【発明の効果】
【0017】
一般式[1]で示される基を有するポリアルキレングリコールセグメント、及び一般式[2’]で示される第1モノマー単位を構成成分として含んでなるポリマーを共存させることにより、澄明なフラーレン含有水溶液を提供することが可能となる。また、本発明のフラーレン含有水溶液は、長期間保存後も沈殿・凝集が起こらず、より安定な状態で保存が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】参考例1のポリマー含有水溶液(「比較例1の水溶液」と略記)、実施例1で得られた当該ポリマーを含有するフラーレン水溶液(「実施例1の水溶液」の略記)、並びに実施例5で得られた当該ポリマーを含有する、超音波1時間照射のフラーレン水溶液〔「実施例5の水溶液(S−1h)」と略記〕及び2時間照射のフラーレン水溶液〔「実施例5の水溶液(S−2h)」と略記〕の200〜400nmに於ける吸収スペクトルである。
図2】参考例2のポリマー含有水溶液(「比較例2の水溶液」と略記)、実施例2で得られた当該ポリマーを含有するフラーレン水溶液(「実施例2の水溶液」と略記)、並びに実施例6で得られた当該ポリマーを含有する、超音波1時間照射のフラーレン水溶液〔「実施例6の水溶液(S−1h)」と略記〕及び2時間照射のフラーレン水溶液〔「実施例6の水溶液(S−2h)」と略記〕の200〜400nmに於ける吸収スペクトルである。
図3】参考例3のポリマー含有水溶液(「比較例3の水溶液」と略記)、実施例3で得られた当該ポリマーを含有するフラーレン水溶液(「実施例3の水溶液」と略記)、並びに実施例7で得られた当該ポリマーを含有する、超音波1時間照射のフラーレン水溶液〔「実施例7の水溶液(S−1h)」と略記〕及び2時間照射のフラーレン水溶液〔「実施例7の水溶液(S−2h)」と略記〕の200〜400nmに於ける吸収スペクトルである。
図4】参考例4のポリマー含有水溶液(「比較例4の水溶液」と略記)、実施例4で得られた当該ポリマーを含有するフラーレン水溶液(「実施例4の水溶液」と略記)、並びに実施例8で得られた当該ポリマーを含有する、超音波1時間照射のフラーレン水溶液〔「実施例8の水溶液(S−1h)」と略記〕及び2時間照射のフラーレン水溶液〔「実施例8の水溶液(S−2h)」と略記〕の200〜400nmに於ける吸収スペクトルである。
図5】参考例8のポリマー含有水溶液(「比較例5の水溶液」と略記)、並びに実施例9で得られた当該ポリマーを含有する、超音波1時間照射のフラーレン水溶液〔「実施例9の水溶液(S−1h)」と略記〕及び2時間照射のフラーレン水溶液〔「実施例9の水溶液(S−2h)」と略記〕の200〜800nmに於ける吸収スペクトルである。
図6】高速振動粉砕処理を行った場合の各種フラーレン水溶液(実施例1〜4)の200〜800nmの吸収スペクトルである。
図7】超音波処理(2時間照射)を行った場合の各種フラーレン水溶液(実施例5〜9)の200〜800nmの吸収スペクトルである。
図8】高速振動粉砕処理を行った場合の各種フラーレン水溶液(実施例10〜12及び比較例6)の200〜800nmの吸収スペクトルである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
一般式[1]で示される基を有するポリアルキレングリコールセグメント、及び一般式[2’]で示される第1モノマー単位を構成成分として含んでなるポリマー(以下、「本発明に係るポリマー」と略記する場合がある。)は、更に一般式[3]
【0020】
(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、Rはアルキル基、アルコキシカルボニル基又はハロゲン置換アラルキル基を表す。)で示される第2モノマー単位1種以上を構成成分として含んでいてもよい。
【0021】
一般式[1]に於いて、kは通常10〜250、好ましくは20〜200、より好ましくは40〜150の整数である。
【0022】
一般式[1]に於いて、qは通常2又は3、好ましくは2である。
【0023】
一般式[2’]及び[3]に於いて、R及びRで示される炭素数1〜3のアルキル基としては、直鎖状或いは分枝状でもよく、通常炭素数1〜3、好ましくは炭素数1のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等が挙げられ、中でもメチル基が好ましい。
【0024】
一般式[3]に於いて、Rで示されるアルキル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜15、好ましくは3〜8のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、ネオヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、ネオヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、ネオオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、ネオノニル基、n-デシル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基、ネオデシル基、n-ウンデシル基、イソウンデシル基、sec-ウンデシル基、tert-ウンデシル基、ネオウンデシル基、n-ドデシル基、イソドデシル基、sec-ドデシル基、tert-ドデシル基、ネオドデシル基、n-トリデシル基、イソトリデシル基、sec-トリデシル基、tert-トリデシル基、ネオトリデシル基、n-テトラデシル基、イソテトラデシル基、sec-テトラデシル基、tert-テトラデシル基、ネオテトラデシル基、n-ペンタデシル基、イソペンタデシル基、sec-ペンタデシル基、tert-ペンタデシル基、ネオペンタデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロペンタデシル基等が挙げられ、中でもシクロヘキシルメチル基が好ましい。
【0025】
で示されるアルコキシカルボニル基としては、カルボキシル基の水素原子がアルキル基で置換されたものであり、当該アルキル基は直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよい。当該アルコキシカルボニル基としては、通常炭素数2〜15のものが挙げられ、具体的には、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、sec-ペンチルオキシカルボニル基、tert-ペンチルオキシカルボニル基、ネオペンチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルオキシカルボニル基、イソヘキシルオキシカルボニル基、sec-ヘキシルオキシカルボニル基、tert-ヘキシルオキシカルボニル基、ネオヘキシルオキシカルボニル基、n-ヘプチルオキシカルボニル基、イソヘプチルオキシカルボニル基、sec-ヘプチルオキシカルボニル基、tert-ヘプチルオキシカルボニル基、ネオヘプチルオキシカルボニル基、2-エチルヘキシルオキシカルボニル基、n-オクチルオキシカルボニル基、イソオクチルオキシカルボニル基、sec-オクチルオキシカルボニル基、tert-オクチルオキシカルボニル基、ネオオクチルオキシカルボニル基、n-ノニルオキシカルボニル基、イソノニルオキシカルボニル基、sec-ノニルオキシカルボニル基、tert-ノニルオキシカルボニル基、ネオノニルオキシカルボニル基、n-デシルオキシカルボニル基、イソデシルオキシカルボニル基、sec-デシルオキシカルボニル基、tert-デシルオキシカルボニル基、ネオデシルオキシカルボニル基、n-ウンデシルオキシカルボニル基、イソウンデシルオキシカルボニル基、sec-ウンデシルオキシカルボニル基、tert-ウンデシルオキシカルボニル基、ネオウンデシルオキシカルボニル基、n-ドデシルオキシカルボニル基、イソドデシルオキシカルボニル基、sec-ドデシルオキシカルボニル基、tert-ドデシルオキシカルボニル基、ネオドデシルオキシカルボニル基、シクロプロポキシカルボニル基、シクロブトキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルメチルオキシカルボニル基、シクロヘプチルオキシカルボニル基、シクロオクチルオキシカルボニル基、シクロノニルオキシカルボニル基、シクロデシルオキシカルボニル基等が挙げられ、中でも、例えばシクロヘキシルオキシカルボニル基、2-エチルヘキシルオキシカルボニル基、n-ドデシルオキシカルボニル基等が好ましい。
【0026】
で示されるハロゲン置換アラルキル基のアラルキル基としては、通常炭素数7〜12のものが挙げられ、具体的には、例えばベンジル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基等が挙げられ、中でもベンジル基が好ましい。
【0027】
ハロゲン置換アラルキル基としては、上記アラルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されたものが挙げられ、当該ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0028】
当該ハロゲン置換アラルキル基の具体例としては、例えばペンタフルオロフェニルメチル基、ペンタクロロフェニルメチル基、ペンタブロモフェニルメチル基、ペンタヨードフェニルメチル基、ペンタフルオロフェニルエチル基、ペンタクロロフェニルエチル基、ペンタブロモフェニルエチル基、ペンタヨードフェニルエチル基、ペンタフルオロフェニルプロピル基、ペンタクロロフェニルプロピル基、ペンタブロモフェニルプロピル基、ペンタヨードフェニルプロピル基、ペンタフルオロフェニルブチル基、ペンタクロロフェニルブチル基、ペンタブロモフェニルブチル基、ペンタヨードフェニルブチル基、ペンタフルオロフェニルペンチル基、ペンタクロロフェニルペンチル基、ペンタブロモフェニルペンチル基、ペンタヨードフェニルペンチル基、ペンタフルオロフェニルヘキシル基、ペンタクロロフェニルヘキシル基、ペンタブロモフェニルヘキシル基、ペンタヨードフェニルヘキシル基等が挙げられ、中でも、ペンタフルオロフェニルメチル基が好ましい。
【0029】
一般式[2’]に於いて、R’で示されるアンモニオ基を有する塩基性を示す基としては、例えば一般式[5’]
【0030】
(式中、R〜Rは夫々独立して、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Xはハロゲンイオン、過塩素酸イオン、硫酸イオン又は硝酸イオンを表す。)で示される基等が挙げられ、具体的には、例えば一般式[5]
【0031】
(式中、Tは炭素数1〜6のアルキレン基を表し、Xはハロゲンイオン、過塩素酸イオン、硫酸イオン又は硝酸イオンを表し、R〜Rは前記に同じ。)で示される基等が挙げられる。
【0032】
一般式[5’]及び[5]に於いて、R〜Rで示される炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、好ましくは直鎖状のものであり、通常炭素数1〜6、好ましくは1〜3のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、ネオヘキシル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
また、R〜Rは全てアルキル基である方が好ましい。
【0033】
一般式[5]に於いて、Tで示される炭素数1〜6のアルキレン基としては、直鎖状又は分枝状でもよく、通常炭素数1〜6、好ましくは3〜5、より好ましくは3のものが挙げられ、具体的には、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の直鎖状アルキレン基、例えばエチリデン基、プロピレン基、イソプロピリデン基、エチルエチレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、1-メチルテトラメチレン基、2-メチルテトラメチレン基、1-メチルペンタメチレン基、2-メチルペンタメチレン基、3-メチルペンタメチレン基等の分枝状アルキレン基等が挙げられ、中でも、トリメチレン基が好ましい。
【0034】
一般式[5’]及び[5]に於いて、Xで示されるハロゲンイオンとしては、例えばフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等が挙げられる。
【0035】
一般式[2’]に於いて、R’で示される酸性を示す基としては、例えばカルボキシル基又はそのアルカリ金属塩、置換基としてスルホ基又はそのアルカリ金属塩を有するアルキル基又はアリール基等が挙げられる。
【0036】
置換基としてスルホ基又はそのアルカリ金属塩を有するアルキル基のアルキル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜10、好ましくは3〜6のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、ネオヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、ネオヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、ネオオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、ネオノニル基、n-デシル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基、ネオデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等が挙げられる。
【0037】
置換基としてスルホ基又はそのアルカリ金属塩を有するアリール基のアリール基として
は、通常炭素数6〜15のものが挙げられ、具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられ、中でもフェニル基が好ましい。
【0038】
カルボキシル基のアルカリ金属塩及びスルホ基のアルカリ金属塩のアルカリ金属塩としては、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩等が挙げられ、中でもナトリウム塩が好ましい。
【0039】
当該スルホ基又はそのアルカリ金属塩を置換基として有するアリール基の具体例としては、例えば一般式[6]
【0040】
(式中、R10は水素原子又はアルカリ金属原子を表す。)で示される基等が挙げられる。
【0041】
一般式[6]に於いて、R10で示されるアルカリ金属原子としては、例えばリチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子、ルビジウム原子等が挙げられ、中でもナトリウム原子が好ましい。
【0042】
一般式[6]で示される基の中の−SO10基は、フェニル基中の2〜6位の何れに結合していてもよいが、4位に結合するものが好ましい。
【0043】
一般式[1]で示される基を有するポリアルキレングリコールセグメントとしては、例えば一般式[7]
【0044】
(式中、R11は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R12はシアノ基又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、Eは炭素数1〜6のアルキレン基を表し、k及びqは前記に同じ。)で示されるもの等が挙げられる。
【0045】
一般式[7]に於いて、R11及びR12で示される炭素数1〜3のアルキル基としては、直鎖状或いは分枝状でもよく、通常炭素数1〜3、好ましくは1のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等が挙げられ、中でもメチル基が好ましい。
【0046】
11及びR12は、中でも、何れか一方がシアノ基であるのが好ましい。
【0047】
で示される炭素数1〜6のアルキレン基としては、直鎖状又は分枝状でもよく、通常炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜4、より好ましくは炭素数2のものが挙げられ、具体的には、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の直鎖状アルキレン基、例えばエチリデン基、プロピレン基、イソプロピリデン基、エチルエチレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、1-メチルテトラメチレン基、2-メチルテトラメチレン基、1-メチルペンタメチレン基、2-メチルペンタメチレン基、3-メチルペンタメチレン基等の分枝状アルキレン基等が挙げられ、中でも、エチレン基が好ましい。
【0048】
kは通常10〜250、好ましくは20〜200、より好ましくは40〜150の整数である。
【0049】
一般式[1]で示される基を有するポリアルキレングリコールセグメント、及び一般式[2’]で示される第1モノマー単位を構成成分として含んで成るポリマー(本発明に係るポリマー)は、更に一般式[3]で示される第2モノマー単位を構成成分として含んでいてもよく、このようなポリマーとしては、例えば一般式[8’]
【0050】
(式中、R13は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R14は夫々独立してシアノ基又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、Eは炭素数1〜6のアルキレン基を表し、nは20〜20,000の整数を表し、pは0〜20,000の整数を表し、mは1〜20の整数を表し、R、R’、R〜R、R11、R12、E、k及びqは前記に同じ。)で示されるもの等が挙げられる。
【0051】
一般式[8’]に於いて、R13及びR14で示される炭素数1〜3のアルキル基としては、直鎖状或いは分枝状でもよく、通常炭素数1〜3、好ましくは炭素数1のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等が挙げられ、中でもメチル基が好ましい。
【0052】
13及びR14は、中でも、何れか一方がシアノ基であるのが好ましい。
【0053】
で示される炭素数1〜6のアルキレン基としては、直鎖状又は分枝状でもよく、通常炭素数1〜6、好ましくは1〜4、より好ましくは2のものが挙げられ、具体的には、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の直鎖状アルキレン基、例えばエチリデン基、プロピレン基、イソプロピリデン基、エチルエチレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、1-メチルテトラメチレン基、2-メチルテトラメチレン基、1-メチルペンタメチレン基、2-メチルペンタメチレン基、3-メチルペンタメチレン基等の分枝状アルキレン基等が挙げられ、中でも、エチレン基が好ましい。
【0054】
nは、通常20〜20,000、好ましくは50〜8,000、より好ましくは75〜1,200の整数である。
【0055】
pは、通常0〜20,000、好ましくは0〜4,000、より好ましくは0〜1,200の整数である。
【0056】
mは、通常1〜20、好ましくは2〜6の整数である。
【0057】
本発明に係るポリマーの重合平均分子量は、通常10,000〜400,000、好ましくは20,000〜200,000である。
【0058】
また、本発明に係るポリマーに於ける一般式[1]で示される基を有するポリアルキレングリコールセグメントの含有量は、通常1〜70重量%、好ましくは10〜50重量%である。
【0059】
本発明に係るポリマーに於ける一般式[2’]で示される第1モノマー単位の含有量は、通常20〜85重量%、好ましくは50〜85重量%である。
【0060】
更に、本発明に係るポリマーに於ける一般式[3]で示される第2モノマー単位の含有量は、通常0〜85重量%、好ましくは0〜50重量%である。
【0061】
2.製造法
一般式[1]で示される基を有するポリアルキレングリコールセグメント及び一般式[2’]で示される第1モノマー単位を構成成分として含んで成るポリマー(本発明に係るポリマー)は、更に一般式[3]で示される第2モノマー単位を構成成分として含んでいてもよく、このような本発明に係るポリマーは、自体公知の方法に従って適宜合成してもよいが、例えば一般式[11]
【0062】
(式中、R11〜R14、E、E、k及びqは前記に同じ。)で示されるモノマー単位を有するアゾ基含有ポリアルキレングリコールセグメントを有する重合開始剤の共存下に、一般式[12’]
【0063】
(式中、R及びR’は前記に同じ。)で示される第1モノマー、要すれば一般式[13]
【0064】
(式中、R及びRは前記に同じ。)で示される第2モノマーを1種又は2種以上共重合することにより得られる。
【0065】
この場合、得られるポリマーは、ポリアルキレングリコールセグメントと、一般式[12’]で示される第1モノマー由来のモノマー単位(即ち、一般式[2’]で示されるモノマー単位)、要すれば一般式[13]で示される第2モノマー由来のモノマー単位(即ち、一般式[3]で示されるモノマー単位)を構成成分として含んでなるポリマーセグメントを2つ以上有するポリマー(即ち、ブロックポリマー)となる。
【0066】
一般式[12’]で示される第1モノマーの具体例としては、例えば3-(メタクリルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロライド、N-(3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、3-(アクリルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロライド等の(メタ)アクリルアミド類、例えばスチレンスルホン酸又はそのアルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等)等のスルホン酸類、例えばメタクリル酸、アクリル酸等のカルボン酸類等が挙げられる。
【0067】
一般式[13]で示される第2モノマーの具体例としては、例えばメタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-ドデシル等の(メタ)アクリル酸エステル類、例えばアリルシクロヘキシル等のα,β-不飽和脂肪族炭化水素類、例えばアリルペンタフルオロベンゼン等のα,β-不飽和芳香族炭化水素類等が挙げられる。
【0068】
当該第2モノマーは、本発明に係るポリマーの構成成分として1種以上含まれていてもよい。
【0069】
一般式[11]で示されるモノマー単位を有するアゾ基含有ポリアルキレングリコールセグメントを有する重合開始剤は、市販品を用いても常法により適宜合成したものを用いてもよい。市販品を使用する場合の具体例としては、例えばVPE−0201、VPE−0401、VPE−0601等の高分子アゾ重合開始剤(和光純薬工業(株)製)等が挙げられる。
【0070】
また、常法により適宜合成したものを使用する場合の具体例としては、例えば特開平4-372675号公報等に記載の製造法に従って容易に製造することができる。即ち、例えば一般式[14]
【0071】
(式中、k及びqは前記に同じ。)で示されるポリアルキレングリコールと、例えば一般式[15]
【0072】
(式中、Xはハロゲン原子を表し、R11〜R14、E及びEは前記に同じ。)で示されるアゾ基含有二塩基酸ジハライドとを適当な溶媒中、要すれば塩基性触媒の存在下で反応させることにより得ることができる。
【0073】
また、一般式[11]で示されるモノマー単位を有するアゾ基含有ポリアルキレングリコールセグメントは、例えば特開平6-93100号公報、特開平6-322089号公報等に記載の製造法に従って製造したものを用いてもよい。即ち、例えば上記一般式[14]で示されるポリアルキレングリコールと、一般式[16]
【0074】
(式中、R11〜R14、E及びEは前記に同じ。)で示されるアゾ基含有二塩基酸とを適当な溶媒中、要すれば塩基性触媒の存在下、脱水剤を用いて反応させることによっても得ることができる。
【0075】
一般式[15]に於いて、Xで示されるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0076】
上記製造法は、何れも塩基性触媒の存在下で行うのが好ましく、使用する塩基性触媒の具体例としては、例えばトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、ピペリジン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、トリ-n-ブチルアミン、N-メチルモルホリン等の有機アミン類、例えば水素化ナトリウム等の金属水素化物類、例えばn-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム等の塩基性アルカリ金属化合物類等が挙げられる。
【0077】
塩基性触媒の使用量としては特に限定されるものではないが、一般式[15]で示されるアゾ基含有二塩基酸ジハライド、一般式[16]で示されるアゾ基含有二塩基酸或いは脱水剤に対して通常0.5〜5倍モル、好ましくは0.5〜1.5倍モルの範囲から適宜選択される。
【0078】
また、当該ポリアルキレングリコールと一般式[16]で示されるアゾ基含有二塩基酸とを反応させる方法に於いて使用される脱水剤の具体例としては、脱水縮合剤として用いられるものであれば特に限定されないが、例えば濃硫酸、五酸化二リン、無水塩化亜鉛等の無機脱水剤類、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピルカルボジイミド)塩酸塩等のカルボジイミド類、ポリリン酸、無水酢酸、カルボニルジイミダゾール、p-トルエンスルホニルクロライド等が挙げられる。
【0079】
脱水剤の使用量としては特に限定されるものではないが、少ないと反応が遅くなり、且つ到達分子量も小さくなり、多すぎると短時間で高分子量になるが分子量の制御が困難となり、且つ、経済的でないため、相当するアゾ基含有二塩基酸に対して通常1〜5倍モル、好ましくは2〜3倍モルの範囲から適宜選択される。
【0080】
反応溶媒としては、どちらの方法に於いても例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、例えば四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類、例えばn-ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。これらは夫々単独で用いても、二種以上適宜組み合わせて用いてもよい。
【0081】
一般式[14]で示されるポリアルキレングリコールと、一般式[15]で示されるアゾ基含有二塩基酸ジハライド或いは一般式[16]で示されるアゾ基含有二塩基酸との使用割合は特に限定されず必要に応じて適宜決定されるが、高分子量のアゾ基含有ポリアルキレングリコールセグメントを有する重合開始剤を得るには両者をほぼ等モル量用いることが好ましい。
【0082】
反応温度は、特に限定されないが、あまり高いとアゾ基が分解し、低すぎると反応速度が遅くなり製造に時間を要し、且つ高分子量のアゾ基含有ポリアルキレングリコールセグメントを有する重合開始剤が得られ難くなるため、通常−10〜60℃の範囲から適宜選択される。また、反応温度は低温から段階的に温度を上昇させる方法をとってもよい。
【0083】
反応時間は製造方法により異なるが、通常1〜60時間の範囲から適宜選択される。
【0084】
目的物の単離は、使用した原料、塩基性触媒、脱水剤、溶媒等の種類や量並びに反応液の状態等に応じて適宜行えばよく、例えば粘稠な反応液の場合には、反応液を適当な溶媒で希釈した後、濾過或いは水洗等の操作により副生する第四級アンモニウム塩等の不純物を除いた後、溶媒を除去することにより目的のアゾ基含有ポリアルキレングリコールセグメントを有する重合開始剤を得ることができる。また、得られた該アゾ基含有ポリアルキレングリコールセグメントを有する重合開始剤は精製及び/又は単離することなく、そのまま重合反応に付してもよい。
【0085】
尚、原料として用いられる、上記一般式[14]で示されるポリアルキレングリコール、一般式[15]で示されるアゾ基含有二塩基酸ジハライド又は一般式[16]で示されるアゾ基含有二塩基酸は、市販品を用いても或いは常法により適宜製造したものを用いてもよい。
【0086】
本発明に係るポリマー、即ち、一般式[1]で示される基を有するポリアルキレングリコールセグメント、一般式[2’]で示される第1モノマー単位及び、要すれば一般式[3]で示される第2モノマー単位を構成成分として含んで成るポリマーは、例えば親水性有機溶媒中、一般式[11]で示されるアゾ基含有ポリアルキレングリコールセグメントを有する重合開始剤、一般式[12’]で示される化合物及び、要すれば一般式[13]で示される化合物を、得られるポリマーの主たる構成単位である一般式[1]で示される基を有するポリアルキレングリコールセグメント、一般式[2’]で示される第1モノマー単位及び、場合によっては更に一般式[3]で示される第2モノマー単位の組成比が目的とする組成となるように夫々の使用量を選択設定して重合反応させ、得られる溶液から、不溶性有機溶剤を沈殿剤として用いて晶析、単離することにより得られる。
【0087】
重合溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類、例えばテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル類、例えばN-メチルピロリドン、N,N'-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の親水性有機溶媒が挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上適宜組み合わせて用いてもよい。また、反応に影響が出ない範囲であれば、含水溶媒であってもよい。
【0088】
上記重合反応の方法としては、例えば懸濁重合、溶液重合、バルク重合、乳化重合等が挙げられる。この際アゾ基含有ポリアルキレングリコールセグメントを有する重合開始剤と通常のラジカル重合開始剤(例えばアゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビスイソ酪酸ジメチル等)を併用してもよい。
【0089】
この共重合反応を行う際、必要に応じて連鎖移動剤(例えばラウリルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ブチルメルカプタン、2-メルカプトエタノール、チオグリコール酸ブチル等)を添加し、分子量の調節を行ってもよい。
【0090】
重合反応時の濃度としては、当該アゾ基含有ポリシロキサンセグメントを有する重合開始剤、一般式[2’]で示される第1モノマーの合計、或いは一般式[3]で示される第2モノマーを更に構成成分として含む場合は、当該アゾ基含有ポリシロキサンセグメントを有する重合開始剤、当該第1モノマー及び第2モノマーの合計が、通常5〜100重量%(無溶媒)、好ましくは5〜80重量%、より好ましくは10〜70重量%、更に好ましくは20〜50重量%の範囲となるよう適宜選択される。
【0091】
重合反応は、不活性ガス雰囲気下で行うことが望ましい。不活性ガスとしては、例えば窒素ガス、アルゴンガス等が挙げられる。
【0092】
重合温度は、高すぎると反応の制御が困難になり、低すぎると反応速度が遅くなり反応に時間を要するため、通常30〜120℃、好ましくは60〜100℃である。また、重合反応の進行に合わせて重合温度を変化させ、反応の制御を行ってもよい。
【0093】
重合時間は、通常3〜24時間、好ましくは5〜15時間である。
【0094】
沈殿剤として用いる有機溶媒としては、生成したポリマーが不溶物として析出するものであれば特に限定されないが、例えばヘキサン、酢酸エチル、ジエチルエーテル等が挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上適宜組み合わせて用いてもよい。更に、溶媒の使用量は、少なすぎると、得られる共重合体に含まれる残存重合溶媒の量や未反応の残存モノマーの量が多くなるため、通常重合溶媒の2倍容量以上、好ましくは3〜20倍容量、より好ましくは5〜10倍容量である。
【0095】
尚、反応後の後処理等はこの分野に於いて通常行われる後処理法に準じてこれを行えばよい。
【0096】
また、本発明に係るポリマーは、自体公知の方法に従って適宜合成すればよいが、フラーレン化合物をより安定に水溶化させたフラーレン含有水溶液を得るには、一般式[1]
(式中、qは2又は3を表し、kは10〜250の整数を表す。)で示される基及びアゾ基とを構成成分として2つ以上含んで成る重合開始剤(以下、「本発明に係る重合開始剤」と略記する場合がある。)を用いることにより得られるポリマーを用いた方が好ましい。
【0097】
当該重合開始剤としては、例えば一般式[11]で示されるモノマー単位を有するアゾ基含有ポリアルキレングリコールセグメントを通常2〜20個、好ましくは4〜12個有する重合開始剤が挙げられる。
【0098】
当該重合開始剤を用いて得られる本発明に係るポリマーの好ましい例としては、例えば上記一般式[1]で示される基を有するポリアルキレングリコールセグメント及び一般式[2]
【0099】
(式中、Rは塩基性を示す基又は酸性を示す基を表し、Rは前記に同じ。)で示される第1モノマー単位を構成成分として含んでなるポリマーセグメントを含むポリマーであって、当該ポリアルキレングリコールセグメントと当該ポリマーセグメントを3個以上含むもの(即ちブロックポリマー)が挙げられる。
【0100】
一般式[1]で示される基を有するポリアルキレングリコールセグメント、及び一般式[2]で示される第1モノマー単位を構成成分として含んでなるポリマーセグメントを2つ以上含んで成るポリマーに於けるポリマーセグメントは、当該構成成分として更に上記一般式[3]で示される第2モノマー単位1種以上を含んでいてもよい。
【0101】
一般式[2]に於いて、Rで示される塩基性を示す基としては、例えば一般式[4’]
【0102】
(式中、R及びRは夫々独立して、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)で示される基等の置換基を有していてもよいアミノ基を有するもの、上記一般式[5’]で示される基等のアンモニオ基を有するもの等が挙げられる。また、一般式[4’]で示される基を有する塩基性を示す基の好ましい具体例としては、例えば一般式[4]
【0103】
(式中、Tは炭素数1〜6のアルキレン基を表し、R及びRは前記に同じ。)で示される基が挙げられ、一般式[5’]で示される基を有する塩基性を示す基の好ましい具体例としては、例えば上記一般式[5]で示される基等が挙げられる。
【0104】
一般式[4’]及び[4]に於いて、R〜Rで示される炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜6、好ましくは1〜3のものが挙げられ、具体的には、例えば上記一般式[5’]及び[5]に於けるR〜Rで示される炭素数1〜6のアルキル基の例示と同様のものが挙げられる。
【0105】
一般式[4]に於いて、Tで示される炭素数1〜6のアルキレン基としては、直鎖状又は分枝状でもよく、通常炭素数1〜6、好ましくは3〜5、より好ましくは3のものが挙げられ、具体的には、例えば上記一般式[5]に於けるTで示される炭素数1〜6のアルキレン基の例示と同様のものが挙げられ、中でもトリメチレン基が好ましい。
【0106】
一般式[2]に於けるRで示される塩基性を示す基の中でも、置換基を有していてもよいアンモニオ基が好ましく、特に一般式[5]で示される基がより好ましい。
【0107】
一般式[2]に於いて、Rで示される酸性を示す基としては、上記一般式[2’]に於けるR’で示される酸性を示す基の例示と同様のものが挙げられる。
【0108】
本発明に係る重合開始剤を用いることにより得られる、一般式[1]で示される基を有するポリアルキレングリコールセグメント、及び一般式[2]で示される第1モノマー単位を構成成分として含んで成るポリマー(本発明に係るポリマー)は、更に一般式[3]で示される第2モノマー単位を構成成分として含んでいてもよく、このようなポリマーとしては、例えば一般式[8]
【0109】
(式中、R〜R、R11〜R14、E〜E、k、q、n、p及びmは前記に同じ。)で示されるもの等が挙げられる。
【0110】
上記一般式[8]で示される本発明に係るポリマーの重合平均分子量は、通常10,000〜400,000、好ましくは20,000〜200,000である。
【0111】
また、本発明に係るポリマーに於ける一般式[1]で示される基を有するポリアルキレングリコールセグメントの含有量は、通常1〜70重量%、好ましくは10〜50重量%である。
【0112】
本発明に係るポリマーに於ける一般式[2]で示される第1モノマー単位の含有量は、通常20〜85重量%、好ましくは50〜85重量%である。
【0113】
更に、本発明に係るポリマーに於ける一般式[3]で示される第2モノマー単位の含有量は、通常0〜85重量%、好ましくは0〜50重量%である。
【0114】
また、上記一般式[8]で示される本発明に係るポリマーは、前述した一般式[8’]で示されるポリマーの製造方法と同様の操作を行うことにより容易に得られ、具体的には、例えば一般式[11]で示されるモノマー単位を有するアゾ基含有ポリアルキレングリコールセグメントの共存下に、一般式[12]
【0115】
(式中、R及びRは前記に同じ。)で示される第1モノマー、要すれば一般式[13]で示される第2モノマーを1種又は2種以上共重合することにより得られる。
【0116】
一般式[12]で示される第1モノマーの具体例としては、例えばN-(3-ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、3-(メタクリルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロライド、N-(3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、3-(アクリルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロライド等の(メタ)アクリルアミド類、例えばスチレンスルホン酸又はそのアルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等)等のスルホン酸類、例えばメタクリル酸、アクリル酸等のカルボン酸類等が挙げられる。
【0117】
その他の反応条件、反応処理等は前述した一般式[8’]で示されるポリマーの製造方法と同様である。
【0118】
本発明に係る重合開始剤を用いることにより得られる本発明に係る一般式[8]で示されるポリマーは、一般式[1]で示される基を有するポリアルキレングリコールセグメント、一般式[2]で示される第1モノマー単位、要すれば一般式[3]で示される第2モノマー単位を構成成分とするポリマーセグメントを有しており、これらセグメントを少なくとも個以上有するブロックポリマーである。より具体的に述べれば、ポリアルキレングリコールセグメントを「A」、ポリマーセグメントを「B」と略記すれば、−(A−B)x−(式中、xは20の整数)で示されるブロックポリマーである。従って、単に当該ポリアルキレングリコールセグメント、第1モノマー単位、要すれば第2モノマー単位を構成成分とするポリマーセグメントのみからなるポリマーとは異なるものである。このような構造の違いに起因して、本発明に係る重合開始剤により得られる当該ポリマーを用いた場合の方が、フラーレン化合物をより安定に水溶化させたフラーレン含有水溶液を提供することができるのである。
【0119】
3.ポリマーの性質
このようにして得られた本発明に係るポリマーは、例えば塗料用樹脂組成物、被覆用樹脂組成物等の樹脂組成物、例えば頭髪化粧料用基材(例えばセット剤、トリートメント剤等)、基礎化粧料用基材等の化粧料用基材、離型剤、コーティング剤、表面改質剤、医療材料等としての用途が期待されているが、中でも、フラーレン化合物の水溶化剤として有用である。
【0120】
例えば本発明に係るポリマーは、当該ポリマーを構成するモノマー単位の組成比を適宜選択することにより、例えば人体に悪影響を及ぼす有機溶媒等を用いることなく、フラーレン化合物を安定に水溶化させたフラーレン含有水溶液を提供することが可能となる。
【0121】
このようにして得られた水溶液は、経時変化後も沈殿・凝集が起こり難いため、澄明な水溶液として安定に提供するが可能となる。
【0122】
尚、本願明細書中に於ける「水溶化」及び「溶解」とは、本発明のフラーレン含有水溶液中のフラーレン化合物が沈殿・凝集することなくより安定的に分散されている状態を意味する。これは、700nm付近での紫外−可視吸収スペクトルの吸収が殆どない、即ち散乱がほとんど無いことを意味する。本発明のフラーレン含有水溶液の700nm付近の吸光度は、通常0.01以下、好ましくは0.005以下である。
【0123】
本発明のフラーレン含有水溶液は、例えば本発明に係るポリマー、フラーレン化合物及び水を混合し、例えば超音波処理、粉砕処理、撹拌処理等の水溶化処理を行った後、遠心分離等により不溶成分を除去することにより得られる。
【0124】
本発明のフラーレン含有水溶液に使用されるフラーレン化合物としては、炭素原子60個以上で構成されるフラーレン化合物が全て挙げられるが、具体的には例えばC60、C70、C74、C76、C78、C80、C82、C84等の炭素原子60〜120個の炭素球殻構造を有するもの、例えばカーボンナノチューブ等のナノメートルサイズのチューブ構造を有するもの等が挙げられ、これらを更に各種官能基で化学修飾されたものでもよく、中でも、入手が容易であり実用的であることからC60が好ましい。
当該フラーレン化合物は、市販品を用いても適宜合成したものを用いてもよい。
【0125】
本発明のフラーレン含有水溶液に使用される水としては、特に限定されないが、例えば蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等の精製水、水道水等が挙げられ、より高純度な水溶液を提供したい場合は超純水を用いるのが好ましい。
【0126】
尚、本発明に係るポリマーのうち、下記(1)〜(7)を構成成分として含んでなるポリマーは新規である。以下、「PEGseg」とはポリエチレングリコールセグメントを意味する。
(1)PEGseg、スチレンスルホン酸ナトリウム由来のモノマー単位及びメタクリル酸シクロヘキシル由来のモノマー単位、
(2)PEGseg、3-(メタクリルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロライド由来のモノマー単位及びメタクリル酸シクロヘキシル由来のモノマー単位、
(3)PEGseg、N-(3-ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド由来のモノマー単位及びメタクリル酸シクロヘキシル由来のモノマー単位、
(4)PEGseg、メタクリル酸由来のモノマー単位及びメタクリル酸n-ドデシル由来のモノマー単位、
(5)PEGseg、メタクリル酸由来のモノマー単位及びメタクリル酸2-エチルへキシル由来のモノマー単位、
(6)PEGseg、メタクリル酸由来のモノマー単位、メタクリル酸シクロヘキシル由来のモノマー単位及びアリルペンタフルオロベンゼン由来のモノマー単位、
(7)PEGseg、メタクリル酸由来のモノマー単位及びアリルシクロヘキシル由来のモノマー単位
また、このようなポリマーがフラーレン化合物の水溶化剤として有用なものであることも新規である。
【0127】
本発明に係るポリマー、フラーレン化合物及び水の混合は、任意の順序で行えばよい。即ち、(1)これらを同時に混合してもよいし、(2)当該ポリマーとフラーレン化合物を混合した後に水を混合してもよいし、(3)当該ポリマーと水を混合した後にフラーレン化合物を混合してもよいし、(4)フラーレン化合物と水を混合した後に当該ポリマーを混合してもよく、水溶化処理の種類により適宜選択される。中でも、(3)当該ポリマーと水を混合した後にフラーレン化合物を混合する方法が好ましい。
【0128】
本発明に係るポリマーの使用量は、過剰量だと当該水溶液中でポリマー間の会合が起こるため安定した溶液を調製できない場合があり、また少量だとフラーレン化合物を水溶化し難くなる場合があるため、水に対して、通常0.5〜30重量%、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは1〜15重量%である。
【0129】
本発明に係るポリマーは単独でも2種以上組み合わせて用いてもよい。また、本発明に係るポリマーを水に溶解させる際には、溶液のpHを適宜調整してもよい。
【0130】
フラーレン化合物の使用量は、過剰量だとコスト面でも効率的でなく、少量だと当該水溶液中のフラーレン化合物の含有量が少なくなるため、ポリマーに対して、通常0.1〜2重量%、好ましくは0.2〜1重量%である。
【0131】
本発明の水溶液のpHは、通常4.0〜10.0である。
【0132】
pHを調整するには、自体公知の方法に従って行えばよいが、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の酸、例えばアルカリ金属水酸化物(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アンモニウム等の塩基の水溶液を所望のpHとなるように適宜添加すればよい。
【0133】
フラーレン化合物を水溶化する方法としては、上記した如きフラーレン化合物、水及び本発明に係るポリマーを混合したものを、更に例えば超音波処理、高速振動粉砕処理、撹拌処理等に付す方法等が挙げられ、これらを適宜組み合わせて行ってもよい。
【0134】
水溶化処理を行う際の温度は、特に限定されないが、通常0〜100℃、好ましくは20〜80℃である。
【0135】
超音波処理する際の照射時間は、短いとフラーレンの水溶化効率が低く、長ければ高濃度でフラーレン化合物を可溶化できるが、操作の効率面を考慮すると、通常0.1〜24時間、好ましくは0.1〜12である。
尚、超音波処理は、本発明に係るポリマー、フラーレン化合物及び水を混合した後に行うのが好ましい。
【0136】
高速振動粉砕処理を行う際の処理時間は、通常0.1〜8時間、好ましくは0.1〜4時間、より好ましくは0.1〜1時間である。
尚、高速振動粉砕処理を行う際は、本発明に係るポリマーとフラーレン化合物を混合した後に行い、得られた混合物を水で自体公知の方法で抽出処理するのが好ましい。
【0137】
また、上記水溶化処理を行った後に、遠心分離により水溶液中の不溶成分を除去するのが好ましい。
尚、その他の後処理等はこの分野に於いて通常行われる後処理法に準じてこれを行えばよい。
【0138】
このようにして得られた本発明のフラーレン含有水溶液は、本発明に係るポリマーを構成するモノマー単位及びその組成比を適宜選択することにより、有機溶媒等を使用することなくフラーレン化合物を効率よく水溶化させるため、例えば医療・食品分野への応用が可能となる。
【0139】
本発明のフラーレン含有水溶液は、当該ポリマーとフラーレン化合物の会合分子が安定に水和しているため、これら会合分子間の更なる会合が起こり難く、経時変化後も沈殿・凝集することなくより安定で澄明な水溶液を提供することが可能となる。このことは、700nm領域で紫外−可視吸収スペクトルに於ける吸収が殆どない、即ち散乱がないことからも明らかである。
【0140】
また、当該ポリマーとフラーレン化合物の会合分子は、単分散であり凝集が起こらないことから、水溶液中で安定な水和状態として存在することができる。
【0141】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0142】
以下の参考例に於いて本発明に係るポリマーを合成する際に用いられる「化合物(1)、(5)、(6)、(8)、(12)、(13)、(19)、(23)及び(25)」とは、下記表1に示される化合物のことを意味する。
【0143】
【表1】
【0144】
参考例1.本発明に係るポリマーの合成
スチレンスルホン酸ナトリウム(化合物(25))(東京化成社製)5g〔以下、「モノマーA」と略記する。〕とメタクリル酸シクロヘキシル(化合物(8))(和光純薬工業(株)社製) 10g〔以下、「モノマーB」と略記する。〕とをイソプロパノール 120g中に溶解し、重合開始剤(アゾ基含有ポリエチレングリコール)(商品名:VPE-0201,和光純薬工業(株)社製) 5gを添加した後、アルゴンガス置換下、78℃で6時間攪拌した。反応終了後、得られた反応液をヘキサン 500mLに投入し、上澄みを除去した。残渣を減圧乾燥することにより、本発明に係るポリマーを得た。
得られたポリマーの各種モノマー、アゾ基含有ポリエチレングリコールを含んで成る重合開始剤(以下「VPE」と略記する場合がある。)、及びその仕込み重量比について表2に示す。
【0145】
参考例2〜10.各種ポリマーの合成
各種ポリマーを合成する際に用いたモノマーA、モノマーB及びモノマーC(尚、一般式[3]で示される第2モノマーを2種用いた場合の2つのモノマーを「モノマーB」及び「モノマーC」とした。)並びにその仕込み重量比を表2に併せて示す。また、各種ポリマーの合成は、参考例1と同様の操作により行った。
【0146】
【表2】
【0147】
実施例1.高速振動粉砕法を用いたフラーレン含有水溶液の調製
(1)フラーレン含有水溶液の調製
参考例1のポリマー 2.5 mgとフラーレンC60 1.0 mg(1.39μmol)を高速振動粉砕容器(振幅:約33mm、振動数:約30s-1)〔商品名「MM200」、レッチェ(Retsch)社製〕に入れ、高速振動粉砕を20 分30 Hzで行った。その後、超純水 3 mLを加え抽出し、得られた抽出液を遠心分離(14000 rpm、5 分)〔商品名「Microfuge 22R」、ベックマン・コールター(Beckman Coulter)社製〕にかけ不溶成分を沈殿させ、上澄みを分取し、目的とするフラーレン水溶液を得た。
ここで得られたフラーレン水溶液の紫外−可視吸収スペクトルを図1に示す。
また、得られたフラーレン水溶液の340nm及び700nmの吸光度(OD340、OD700)を表3に示す。
【0148】
(2)フラーレン含有水溶液の吸光度及びC60濃度の測定
γ−シクロデキストリン(CD) 36mg及びフラーレンC60 5mgを超純水 1.5mlに溶解し、得られたCD−C60水溶液(C60/CD質量比=0.023)の332nmのOD値を測定した(0.83)。このOD値及びモル吸光係数(ε=42,658)〔Angew. Chem., Int. Ed. Engl., 1994, Vol.33, p1597に記載のlogε=4.63より算出〕からCD−C60水溶液中のC60濃度を求めた(0.19mM)。
次いで、このCD−C60水溶液を80℃で加熱処理し、CD−C60会合体水溶液を調製した。得られたCD−C60会合体水溶液の340nmでのOD値を測定し(0.39)、これにより当該会合体水溶液のモル吸光係数を算出した(ε=20,076)。
【0149】
実施例1−(1)の340nmの吸光度(OD340値)及び上記で求めたCD−C60会合体水溶液のモル吸光係数(ε=20,076)からフラーレン含有水溶液中のC60濃度を算出した。その結果を表3に併せて示す。
【0150】
実施例2〜4.
参考例1のポリマーの代わりに所定の参考例で得られたポリマーを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、目的とするフラーレン水溶液を得た。各水溶液の紫外−可視吸収スペクトルを図2〜4に夫々示す。
また、得られたフラーレン水溶液の340nm及び700nmの吸光度(OD340、OD700)を表3に併せて示す。
【0151】
高速振動粉砕処理を行うことにより得られた各種フラーレン水溶液(実施例1〜4)の吸収スペクトルを図6に併せて示す。
【0152】
実施例5〜8.超音波法を用いたフラーレン含有水溶液の調製
各種ポリマー 3.0 mgを超純水 3.6 mLに溶かし、その後C60 3.0 mg(4.17μmol)を加え、氷浴中でプローブ型による超音波(30W)〔プローブ型超音波装置「BRANSON SONIFIER 250D型」〕を照射した。1時間照射後、得られた溶液を分取し、遠心分離(14000 rpm、5 分)〔商品名「Microfuge 22R」、ベックマン・コールター(Beckman Coulter)社製〕により不溶成分を沈殿させ、上澄みを分取し、1時間照射のフラーレン水溶液(S−1h)を得た。
【0153】
また、超音波照射を2時間行った以外は上記と同様の操作を行うことにより2時間照射のフラーレン水溶液(S−2h)を得た。
ここで得られた1時間照射のフラーレン水溶液(S−1h)と2時間照射のフラーレン水溶液(S−2h)の紫外−可視吸収スペクトルを図1に併せて示す。
【0154】
更に、1時間照射により得られたフラーレン水溶液(S−1h)の340nm及び700nmの吸光度(OD340、OD700)を測定し、実施例1―(2)と同様にC60濃度を算出した。その結果を表3に併せて示す。
【0155】
【表3】
【0156】
実施例9.
参考例8のポリマーを用いた以外は上記実施例5〜8と同様の操作を行い、超音波1時間照射のフラーレン水溶液(S−1h)及び2時間照射のフラーレン水溶液(S−2h)を得た。これら水溶液の紫外−可視吸収スペクトルを図5に示す。
【0157】
超音波処理(2時間照射)を行うことにより得られた各種フラーレン水溶液(実施例5〜9)の吸収スペクトルを図6に併せて示す。
【0158】
比較例1〜5.各参考例のポリマー含有水溶液
参考例1〜4及び8のポリマー 3.0 mgを超純水 3.6 mLに溶かした各種ポリマー含有水溶液(比較例1〜5の水溶液)を調製した。
その各種ポリマー含有水溶液の紫外−可視吸収スペクトルを図1〜5に併せて示す。
【0159】
また、参考例2のポリマー含有水溶液(比較例2)、高速振動粉砕処理を行った当該ポリマー含有フラーレン水溶液(実施例2)、超音波処理を行った当該ポリマー含有フラーレン水溶液〔実施例5の水溶液(S-2h)〕について、レーザーゼータ電位計(商品名「ELS-8000」、大塚電子(株)社製)を用いて当該ポリマーとフラーレン化合物との会合分子の粒径(直径)及び多分散指数を測定した。その結果を表4に示す。
【0160】
【表4】
【0161】
比較例1〜5、表3及び図1〜5の結果から明らかなように、本発明に係るポリマー(参考例1〜4のポリマー)を用いてフラーレン化合物の水溶化を行った場合、700nmでの吸収がほとんどなかった。これは、フラーレン水溶液中の散乱がほとんどないことを示しており、このことから、本発明の方法により得られたフラーレン含有水溶液は、フラーレン化合物がより安定に分散された澄明な溶液であることがわかる。
また、本発明のフラーレン水溶液は、1ヶ月保存後も、沈殿・凝集が起こらなかった。
【0162】
図1〜5の結果から明らかなように、本発明に係るポリマーをフラーレン水溶液に混合するとフラーレン化合物を水溶化することが分かった。また、超音波処理を1時間行った場合よりも2時間行った場合の方がフラーレン化合物の水溶化率が高いことが分かった。
図6より、高速振動粉砕処理により水溶化を行った場合、参考例1及び4のポリマーを用いた方がフラーレン化合物をより水溶化することが分かった。
図7より、超音波処理により水溶化を行った場合、参考例8のポリマーを用いた方がフラーレン化合物をより水溶化することが分かった。
表4の結果から明らかなように、本発明のフラーレン含有水溶液は、高速振動粉砕処理に比べ、超音波処理を行った方が、平均粒径が小さく且つ分散性が低い水溶液、即ち、沈殿・凝集が起こり難い、より安定なフラーレン水溶液が得られることが分かる。
【0163】
参考例11〜13. 本発明に係るポリマーの合成
各種ポリマーを合成する際に用いた重合開始剤、モノマーA、モノマーB及びその仕込み重量比を表5に併せて示す。また、各種ポリマーの合成は、参考例1と同様の操作により行った。
【0164】
【表5】
【0165】
実施例10〜12.高速振動粉砕法を用いたフラーレン含有水溶液の調製
参考例1のポリマーの代わりに所定の参考例11〜13で得られたポリマーを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、目的とするフラレン水溶液を得た。また、得られたフラーレン水溶液の340nm及び700nmの吸光度(OD340、OD700)を表6に併せて示す。
また、高速振動粉砕処理を行うことにより得られた各種フラーレン水溶液(実施例10〜12)の吸収スペクトルを図8に示す。
【0166】
比較例6.
モノマーAとして3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルメタクリレート(DMAPMA)と重合開始剤VPE-0201(アゾ基含有ポリエチレングリコール)をその仕込み重量比が重合開始剤VPE-0201(アゾ基含有ポリエチレングリコール):モノマーA=9:11となるように使用すること以外は、参考例1と同様の操作を行うことにより目的とするポリマーを合成した。
得られたポリマーを用いて実施例1と同様の操作を行うことにより高速振動粉砕法を用いたフラーレン含有水溶液を得た。また、得られたフラーレン水溶液の340nm及び700nmの吸光度(OD340、OD700)を表6に併せて示す。
高速振動粉砕処理を行うことにより得られたフラーレン水溶液の吸収スペクトルを図8に併せて示す。
【0167】
【表6】
【0168】
実施例10、比較例6及び図8の結果から明らかなように、本発明に係る参考例11のポリマー(即ち、アンモニオ基を有する塩基性基を有する第1モノマー(モノマーA)を用いて得られるポリマーに相当)を用いる方が、比較例6のポリマー(即ち、N,N-ジメチルアミノ基を有するモノマーを用いて得られるポリマーに相当)を用いる場合よりも、より高濃度で安定なフラーレン水溶液を得ることができることが判る。言い換えれば、より高濃度で安定なフラーレン水溶液を得るには、比較例6に係るモノマー(即ち、N,N-ジメチルアミノ基を有するもの)を用いて得られるポリマーよりも本発明に係る第1モノマー(即ち、アンモニオ基を有するもの)を含んで成るポリマーを用いる方が好ましいことが判る。
【0169】
また、実施例11〜12、比較例6及び図8の結果からも明らかなように、本発明に係る参考例12〜13のポリマー(即ち、アンモニオ基を有する塩基性基を有する第1モノマーと更に本発明に係る第2モノマー(モノマーB)を用いて得られるポリマーに相当)を用いる方が、比較例6のN,N-ジメチルアミノ基を有するモノマーから得られるポリマーよりも、より高濃度で安定なフラーレン水溶液が得られることが判る。
【0170】
更に、実施例10〜12及び図8の結果から明らかなように、参考例12〜13のポリマー(即ち、本発明に係るアンモニオ基を有する塩基性基を有する第1モノマーと更に本発明に係る第2モノマーを用いて得られるものに相当)を用いた方が、参考例11のポリマー(即ち、本発明に係るアンモニオ基を有する塩基性基を有する第1モノマーを用いて得られるものに相当)よりも、より高濃度で安定なフラーレン水溶液を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0171】
一般式[1]で示される基を有するポリアルキレングリコールセグメント、及び一般式[2’]で示される第1モノマー単位を構成成分として含んでなるポリマーを共存させることにより、澄明なフラーレン含有水溶液を提供することが可能となる。また、本発明のフラーレン含有水溶液は、長期間保存後も、沈殿・凝集が起こらない安定な水溶液である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8