(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透明な基材層と、この基材層の一方の面側に積層される光学層と、基材層の他方の面側に積層されるスティッキング防止層とを備え、このスティッキング防止層の表面全面に微細凹凸形状を有する光学シートであって、
上記スティッキング防止層表面の微細凹凸形状が、合成樹脂とモノマー又はオリゴマーとを溶質として含む硬化性組成物を塗布し、硬化させることによって形成され、
上記スティッキング防止層の平均厚さが0.5μm以上4μm以下であり、
上記スティッキング防止層表面の算術平均粗さ(Ra)が0.08μm以上0.3μm以下、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が40μm以上400μm以下であることを特徴とする光学シート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施形態を詳説する。
【0023】
図1の光学シート1は、基材層2と、この基材層2の一方の面側に積層される光学層3と、この基材層2の他方の面側に積層されるスティッキング防止層4とを備えている。
【0024】
基材層2は、光線を透過させる必要があるので透明、特に無色透明のガラス又は合成樹脂から形成されている。かかる基材層2に用いられる合成樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリオレフィン、セルロースアセテート、耐候性塩化ビニル等が挙げられる。中でも、透明性に優れ、強度が高いポリエチレンテレフタレートが好ましく、撓み性能が改善されたポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0025】
基材層2の厚み(平均厚み)は、特には限定されないが、例えば10μm以上500μm以下、好ましくは35μm以上250μm以下、特に好ましくは50μm以上188μm以下とされる。基材層2の厚みが上記範囲未満であると、光学層3を形成するための樹脂組成物を塗工した際にカールが発生しやすくなってしまう、取扱いが困難になる等の不都合が発生する。逆に、基材層2の厚みが上記範囲を超えると、液晶表示装置の輝度が低下してしまうことがあり、またバックライトユニットの厚みが大きくなって液晶表示装置の薄型化の要求に反することにもなる。
【0026】
光学層3は、バインダー5と、このバインダー5中に分散する光拡散剤6とを有している。このように光学層3に光拡散剤6を分散させることにより、この光学層3を裏側から表側に透過する光線を均一に拡散させることができる。また、光拡散剤6によって光学層3の表面に微細凹凸が略均一に形成され、この微細凹凸の各凹部及び凸部がレンズ状に形成されている。かかる微細凹凸のレンズ的作用によって、当該光学シート1は、優れた光拡散機能を発揮し、この光拡散機能に起因して透過光線を法線方向側へ屈折させる屈折機能及び透過光線を法線方向に巨視的に集光させる集光機能をも有している。なお、光学層3の厚み(光拡散剤6を除いたバインダー5部分の厚みを意味する)は特には限定されないが、例えば10μm以上30μm以下程度とされている。また、バインダー5は光線を透過させる必要があるので透明とされており、特に無色透明が好ましい。
【0027】
光拡散剤6は、光線を拡散させる性質を有する粒子であり、無機フィラーと有機フィラーに大別される。無機フィラーとしては、具体的には、シリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫化バリウム、マグネシウムシリケート、又はこれらの混合物を用いることができる。有機フィラーの具体的な材料としては、アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル等を用いることができる。中でも、透明性が高いアクリル樹脂が好ましく、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が特に好ましい。
【0028】
光拡散剤6の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、球状、立方状、針状、棒状、紡錘形状、板状、鱗片状、繊維状などが挙げられ、中でも光拡散性に優れる球状のビーズが好ましい。
【0029】
光拡散剤6の平均粒子径の下限としては、1μm、特に2μm、さらに5μmが好ましく、光拡散剤6の平均粒子径の上限としては、50μm、特に20μm、さらに15μmが好ましい。これは、光拡散剤6の平均粒子径が上記範囲未満であると、光拡散剤6によって形成される光学層3表面の凹凸が小さくなり、光学シートとして必要な光拡散性を満たさないおそれがあり、逆に、光拡散剤6の平均粒子径が上記範囲を越えると、光学シート1の厚さが増大し、かつ、均一な拡散が困難になることからである。
【0030】
光拡散剤6の配合量(バインダー5の形成材料であるポリマー組成物中の基材ポリマー100部に対する固形分換算の配合量)の下限としては10部、特に20部、さらに50部が好ましく、この配合量の上限としては500部、特に300部、さらに200部が好ましい。これは、光拡散剤6の配合量が上記範囲未満であると、光拡散性が不十分となってしまい、一方、光拡散剤6の配合量が上記範囲を越えると光拡散剤6を固定する効果が低下することからである。なお、プリズムシートの表面側に配設される所謂上用光学シートの場合、高い光拡散性を必要とされないため、光拡散剤6の配合量としては10部以上40部以下、特に10部以上30部以下が好ましい。
【0031】
バインダー5は、基材ポリマーを含むポリマー組成物を硬化(架橋等)させることで形成される。このバインダー5によって、基材層2の表面全面に光拡散剤6が略等密度に配置固定される。なお、このバインダー5を形成するためのポリマー組成物は、その他に例えば微小無機充填剤、硬化剤、可塑剤、分散剤、各種レベリング剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、粘性改質剤、潤滑剤、光安定化剤等が適宜配合されてもよい。
【0032】
上記基材ポリマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂、紫外線硬化型樹脂等が挙げられ、これらのポリマーを1種又は2種以上混合して使用することができる。特に、上記基材ポリマーとしては、加工性が高く、塗工等の手段で容易に光学層3を形成することができるポリオールが好ましい。また、バインダー5に用いられる基材ポリマーは光線を透過させる必要があるので透明とされており、特に無色透明が好ましい。
【0033】
上記ポリオールとしては、例えば水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られるポリオール、水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールなどが挙げられ、これらを単体で又は2種以上混合して使用することができる。
【0034】
この水酸基含有不飽和単量体としては、(a)例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アリルアルコール、ホモアリルアルコール、ケイヒアルコール、クロトニルアルコール等の水酸基含有不飽和単量体、(b)例えば、エチレングリコール、エチレンオキサイド、プロピレングリコール、プロピレンオキサイド、ブチレングリコール、ブチレンオキサイド、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルデカノエート、プラクセルFM−1(ダイセル化学工業株式会社製)等の2価アルコール又はエポキシ化合物と、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸との反応で得られる水酸基含有不飽和単量体などが挙げられる。これらの水酸基含有不飽和単量体から選択される1種又は2種以上を重合してポリオールを製造することができる。
【0035】
また、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸シクロヘキシル、スチレン、ビニルトルエン、1−メチルスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、酢酸アリル、アジピン酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、マレイン酸ジエチル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エチレン、プロピレン、イソプレン等から選択される1種又は2種以上のエチレン性不飽和単量体と、上記(a)及び(b)から選択される水酸基含有不飽和単量体とを重合してポリオールを製造することもできる。
【0036】
かかる水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られるポリオールの数平均分子量は1000以上500000以下であり、好ましくは5000以上100000以下である。また、その水酸基価は5以上300以下、好ましくは10以上200以下、さらに好ましくは20以上150以下である。
【0037】
水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールは、(c)例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ハイドロキノンビス(ヒドロキシエチルエーテル)、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、キシリレングリコール等の多価アルコールと、(d)例えばマレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、トリメット酸、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸等の多塩基酸とを、プロパンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコール中の水酸基数が上記多塩基酸のカルボキシル基数よりも多い条件で反応させて製造することができる。
【0038】
かかる水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールの数平均分子量は500以上300000以下であり、好ましくは2000以上100000以下である。また、その水酸基価は5以上300以下、好ましくは10以上200以下、さらに好ましくは20以上150以下である。
【0039】
当該ポリマー組成物の基材ポリマーとして用いられるポリオールとしては、上記ポリエステルポリオール、及び、上記水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られ、かつ、(メタ)アクリル単位等を有するアクリルポリオールが好ましい。かかるポリエステルポリオール又はアクリルポリオールを基材ポリマーとするバインダー5は耐候性が高く、光学層3の黄変等を抑制することができる。なお、このポリエステルポリオールとアクリルポリオールのいずれか一方を使用してもよく、両方を使用してもよい。
【0040】
なお、上記ポリエステルポリオール及びアクリルポリオール中の水酸基の個数は、1分子当たり2個以上であれば特に限定されないが、固形分中の水酸基価が10以下であると架橋点数が減少し、耐溶剤性、耐水性、耐熱性、表面硬度等の被膜物性が低下する傾向がある。
【0041】
上記基材ポリマーとしては、シクロアルキル基を有するポリオールが好ましい。このように、バインダー5を構成する基材ポリマー(ポリオール)中にシクロアルキル基を導入することで、バインダー5の撥水性、耐水性等の疎水性が高くなり、高温高湿条件下での当該光学シート1の耐撓み性、寸法安定性等が改善される。また、光学層3の硬度、耐候性、肉持感、耐溶剤性等の塗膜基本性能が向上する。さらに、後述する表面に有機ポリマーが固定された微小無機充填剤との親和性及び微小無機充填剤の均一分散性がさらに良好になる。
【0042】
上記シクロアルキル基としては特に限定されず、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロペンタデシル基、シクロヘキサデシル基、シクロヘプタデシル基、シクロオクタデシル基等が挙げられる。
【0043】
上記シクロアルキル基を有するポリオールは、シクロアルキル基を有する重合性不飽和単量体を共重合することで得られる。このシクロアルキル基を有する重合性不飽和単量体とは、シクロアルキル基を分子内に少なくとも1つ有する重合性不飽和単量体である。この重合性不飽和単量体としては特に限定されず、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0044】
上述のように基材ポリマーとしてポリオールを用いる場合は、上記ポリマー組成物中に硬化剤としてポリイソシアネート化合物を含有するとよい。このポリイソシアネート化合物は、ジイソシアネートを重合してなる2量体、3量体、4量体等の誘導体である。このポリイソシアネート化合物の配合によってポリマー組成物の硬化反応速度が大きくなるため、微小無機充填剤の分散安定性に寄与するカチオン系帯電防止剤をポリマー組成物中に含有しても、カチオン系帯電防止剤による硬化反応速度の低下を十分補うことができ、さらに生産性を高めることができる。
【0045】
上記ポリイソシアネート化合物としては、キシレンジイソシアネート誘導体又はこのキシレンジイソシアネート誘導体と脂肪族ジイソシアネート誘導体との混合物が好ましい。このキシレンジイソシアネート誘導体は、ポリマー組成物の反応速度向上効果が大きく、また芳香族ジイソシアネート誘導体の中では熱や紫外線による黄変及び劣化が比較的小さいため、当該光学シート1の光線透過率の経時的低下を低減することができる。一方、脂肪族ジイソシアネート誘導体は、芳香族ジイソシアネート誘導体に比べて反応速度向上効果が小さいが、紫外線等による黄変、劣化等が格段に小さいため、キシレンジイソシアネート誘導体と混合することで、反応速度向上効果と黄変等の防止効果とをバランスよく達成することができる。
【0046】
この脂肪族ジイソシアネート誘導体としてはイソホロンジイソシアネート誘導体及びヘキサメチレンジイソシアネート誘導体が好ましい。かかるイソホロンジイソシアネート誘導体及びヘキサメチレンジイソシアネート誘導体は、脂肪族ジイソシアネート誘導体の中では硬化反応速度の向上作用が比較的大きく、上述の生産性及び耐熱性を促進することができる。
【0047】
上記ジイソシアネートの誘導体の型式としては、TMPアダクト型、イソシアヌレート型又はビュレット型が好ましい。これらの型式の誘導体によれば、上述の硬化反応速度を効果的に増大することができる。
【0048】
上記ポリイソシアネート化合物の配合量(ポリマー組成物中のポリマー分100部に対する固形分換算の配合量)の下限としては2部が好ましく、5部が特に好ましい。一方、硬化剤の上記配合量の上限としては20部が好ましく、15部が特に好ましい。このようにポリイソシアネート化合物の配合量を上記範囲とすることで、上述のポリマー組成物の硬化反応速度向上作用を効果的に奏することができる。
【0049】
また、上記ポリマー組成物中に微小無機充填剤を含有するとよい。バインダー5中への微小無機充填剤の分散含有により、光学層3ひいては当該光学シート1全体の耐熱性を高めることができ、その結果、バックライトユニットにおいてランプの熱や空気中の湿気に曝されても当該光学シート1の変形を格段に抑制することができる。
【0050】
この微小無機充填剤を構成する無機物としては、特に限定されるものではないが、無機酸化物が特に好ましい。この無機酸化物は、金属元素が主に酸素原子との結合を介して3次元のネットワークを構成した種々の含酸素金属化合物と定義される。また無機酸化物を構成する金属元素としては、たとえば、元素周期律表II〜VI族から選ばれる元素が好ましく、元素周期律表III〜V族から選ばれる元素がさらに好ましい。その中でも、Si、Al、Ti及びZrから選択される元素が特に好ましく、金属元素がSiであるコロイダルシリカが、微小無機充填剤として最も好ましい。また微小無機充填剤の形状は、球状、針状、板状、鱗片状、破砕状等の任意の粒子形状でよく、特に限定されない。
【0051】
微小無機充填剤の平均粒子径の下限としては、5nmが好ましく、10nmが特に好ましい。一方、微小無機充填剤の平均粒子径の上限としては50nmが好ましく、25nmが特に好ましい。これは、微小無機充填剤の平均粒子径が上記範囲未満では、微小無機充填剤の表面エネルギーが高くなり、凝集等が起こりやすくなるためであり、逆に、平均粒子径が上記範囲を超えると、短波長の影響で白濁し、光学シート1の透明性が低下するおそれがあることからである。
【0052】
微小無機充填剤(無機物成分のみ)の配合量(ポリマー組成物中のポリマー分100部に対する固形分換算の配合量)の下限としては、10部が好ましく、50部が特に好ましい。一方、微小無機充填剤の上記配合量の上限としては500部が好ましく、200部が特に好ましい。これは、微小無機充填剤の配合量が上記範囲未満であると、光学シート1の耐熱性を十分に発現することができなくなってしまうおそれがあり、逆に、配合量が上記範囲を越えると、ポリマー組成物中への配合が困難になり、光学層3の光線透過率が低下するおそれがあることからである。
【0053】
微小無機充填剤としては、その表面に有機ポリマーが固定されたものを用いるとよい。このように有機ポリマー固定微小無機充填剤を用いることで、バインダー5中での分散性やバインダー5との親和性の向上が図ることができる。この有機ポリマーについては、その分子量、形状、組成、官能基の有無等に関して特に限定はなく、任意の有機ポリマーを使用することができる。また有機ポリマーの形状については、直鎖状、分枝状、架橋構造等の任意の形状のものを使用することができる。
【0054】
かかる有機ポリマーを構成する具体的な樹脂としては、例えば(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルおよびこれらの共重合体やアミノ基、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等の官能基で一部変性した樹脂等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリル−スチレン系樹脂、(メタ)アクリル−ポリエステル系樹脂等の(メタ)アクリル単位を含む有機ポリマーを必須成分とするものが被膜形成能を有し好適である。他方、上記ポリマー組成物の基材ポリマーと相溶性を有する樹脂が好ましく、従ってポリマー組成物に含まれる基材ポリマーと同じ組成であるものが最も好ましい。
【0055】
なお、微小無機充填剤は、微粒子内に有機ポリマーを包含していてもよい。このことにより、微小無機充填剤のコアである無機物に適度な軟度および靱性を付与することができる。
【0056】
上記有機ポリマーにはアルコキシ基を含有するものを用いるとよく、その含有量としては有機ポリマーを固定した微小無機充填剤1g当たり0.01mmol以上50mmol以下が好ましい。かかるアルコキシ基により、バインダー5を構成するマトリックス樹脂との親和性や、バインダー5中での分散性を向上させることができる。
【0057】
ここでいうアルコキシ基は、微粒子骨格を形成する金属元素に結合したRO基を示す。このRは置換されていてもよいアルキル基であり、微粒子中のRO基は同一であっても異なっていてもよい。Rの具体例としてはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル等が挙げられる。微小無機充填剤を構成する金属と同一の金属アルコキシ基を用いるのが好ましく、微小無機充填剤がコロイダルシリカである場合には、シリコンを金属とするアルコキシ基を用いるのが好ましい。
【0058】
上記有機ポリマー固定微小無機充填剤中の有機ポリマーの含有率については、特に制限されるものではないが、微小無機充填剤を基準にして0.5質量%以上50質量%以下が好ましい。
【0059】
上述のように、微小無機充填剤に固定する有機ポリマーとして水酸基を有するものを用い、バインダー5を構成するポリマー組成物中に水酸基と反応するような官能基を2個以上有する多官能イソシアネート化合物、メラミン化合物およびアミノプラスト樹脂から選ばれる少なくとも1種のものを含有するとよい。これにより、微小無機充填剤とバインダー5のマトリックス樹脂とが架橋構造で結合され、保存安定性、耐汚染性、可撓性、耐候性、保存安定性等が良好になり、さらに得られる被膜が光沢を有するものとなる。
【0060】
上記多官能イソシアネート化合物としては脂肪族、脂環族、芳香族及びその他の多官能イソシアネート化合物やこれらの変性化合物を挙げることができる。多官能イソシアネート化合物の具体例としては、例えばトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体、イソシアヌレート体等の3量体等;これらの多官能イソシアネート類とプロパンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールとの反応により生成される2個以上のイソシアネート基が残存する化合物;これらの多官能イソシアネート化合物をエタノール、ヘキサノール等のアルコール類、フェノール、クレゾール等のフェノール性水酸基を有する化合物、アセトオキシム、メチルエチルケトキシム等のオキシム類、ε−カプロラクタム、γ−カプロラクタム等のラクタム類等のブロック剤で封鎖したブロックド多官能イソシアネート化合物などを挙げることができる。なお、上記多官能イソシアネート化合物は1種又は2種以上混合して使用できる。中でも、被膜の黄変色を防止するために、芳香環に直接結合したイソシアネート基を有しない無黄変性多官能イソシアネート化合物が好ましい。
【0061】
上記メラミン化合物としては、例えば、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、イソブチルエーテル型メラミン、ヘキサメチロールメラミン、n−ブチルエーテル型メラミン、ブチル化ベンゾグアナミン等を挙げることができる。
【0062】
上記アミノプラスト樹脂としては、例えば、アルキルエーテル化メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられ、これらのアミノプラスト樹脂の単体又は2種以上の混合物もしくは共縮合物を使用できる。このアルキルエーテル化メラミン樹脂とは、アミノトリアジンをメチロール化し、シクロヘキサノールまたは炭素数1〜6のアルカノールでアルキルエーテル化して得られるものであり、ブチルエーテル化メラミン樹脂、メチルエーテル化メラミン樹脂、メチルブチル混合メラミン樹脂が代表的なものである。また、硬化を促進させるためのスルホン酸系触媒、たとえば、パラトルエンスルホン酸およびそのアミン塩等を使用することができる。
【0063】
また、ポリマー組成物中に帯電防止剤を含有するとよい。この帯電防止剤としては、特に限定されるものではなく、例えばアルキル硫酸塩、アルキルリン酸塩等のアニオン系帯電防止剤、第四アンモニウム塩、イミダゾリン化合物等のカチオン系帯電防止剤、ポリエチレングリコール系、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステル、エタノールアミド類等のノニオン系帯電防止剤、ポリアクリル酸等の高分子系帯電防止剤などが用いられる。中でも、帯電防止効果が比較的大きく、微小無機充填剤の分散状態の安定性を阻害しないカチオン系帯電防止剤が好ましい。また、このカチオン系帯電防止剤の中でも、上述の高疎水性のバインダー5に対する帯電防止性をより促進することができるアンモニウム塩及びベタインが特に好ましい。
【0064】
上記帯電防止剤の配合量(ポリマー組成物中のポリマー分100部に対する固形分換算の配合量)の下限としては0.1部が好ましく、0.5部が特に好ましい。一方、帯電防止剤の上記配合量の上限としては10部が好ましく、5部が特に好ましい。これは、帯電防止剤の配合量が上記下限より小さいと、上述の帯電防止効果を十分発揮することができないおそれがあり、逆に、帯電防止剤の上記配合量が上記上限を超えると、帯電防止剤の配合による全光線透過率の低下や強度の低下等の不都合が生じるおそれがあることからである。
【0065】
スティッキング防止層4は、表面全面に微細凹凸形状7を有している。このため、この光学シート1をプリズムシート等の他の光学シートや導光板等の表面に重ねて配設すると微細凹凸形状7の凸部部分が他の光学シート等の表面に当接し、光学シート1の裏面(スティッキング防止層4側の面)全面が他の光学シート表面等と当接することがない。これにより、光学シート1と他の光学シート等とのスティッキングが防止され、液晶表示装置の画面の輝度ムラが抑えられる。
【0066】
スティッキング防止層4の平均厚さの下限としては、0.5μmとされており、1μmが特に好ましく、1.5μmがさらに好ましい。一方、スティッキング防止層4の平均厚さの上限としては、4μmとされており、3.5μmが特に好ましく、3μmがさらに好ましい。スティッキング防止層4の平均厚さが上記下限より小さいと、後述する樹脂及びモノマー又はオリゴマーの塗布及び硬化による微細凹凸形状7の形成の際に、十分な大きさの凹凸形状の形成が困難となる。逆に、スティッキング防止層4の平均厚さが上記上限を超えると、このスティッキング防止層4による光吸収量が増加するため、光線透過率が低下してしまう。
【0067】
スティッキング防止層4表面の算術平均粗さ(Ra)の下限としては、0.03μmとされており、0.05μmが特に好ましく、0.08μmがさらに好ましい。一方、この算術平均粗さ(Ra)の上限としては、0.3μmとされており、0.25μmが特に好ましく、0.2μmがさらに好ましい。スティッキング防止層4表面の算術平均粗さ(Ra)が上記下限より小さいと、微細凹凸形状7が小さくなるため、凸部以外の部分も他の光学シート等の表面と当接し、スティッキング防止機能が発揮されないおそれがある。逆に、スティッキング防止層4表面の算術平均粗さ(Ra)が上記上限を超えると、凹凸形状が粗くなり、裏面に配設される他の光学シート等表面の傷付けが生じるおそれがある。
【0068】
スティッキング防止層4表面の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の下限としては、40μmとされており、80μmが特に好ましく、120μmがさらに好ましい。一方、この粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の上限としては、400μmとされており、280μmが特に好ましく、240μmがさらに好ましい。スティッキング防止層4表面の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が上記範囲の比較的小さい値をとることで、表面全面に微細凹凸形状7が島状かつ一様に形成されることとなり、算術平均粗さ(Ra)が上記範囲の比較的小さい値である場合においても、他の光学シート等表面との密着(スティッキング)による干渉縞発生を防止することができる。
【0069】
特に、算術平均粗さ(Ra)を比較的小さくした際に、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を上記範囲とし、表面全面に微細凹凸形状7が島状かつ一様に形成されることで、スティッキング防止層4がプリズムシート表面の帯状のプリズム部頂点と接するときにも、帯状部分において微細凹凸形状7の凸部分が当接する部分と当接しない部分とを作り出すことができる。従って、当該光学シート1によれば、プリズムシート表面(プリズム部側の面)に積層した際のスティッキング防止機能を効果的に発揮することができる。
【0070】
この粗さ曲面要素の平均長さ(RSm)が上記下限より小さいと、各凸部分のサイズが小さくなることで当接する他の光学シート等の表面の傷付けを発生させるおそれがある。また、プリズムシート表面(プリズム部側の面)がスティッキング防止層4と接する場合に、スティッキング防止層4と接する帯状のプリズム部頂点において、当接する部分と当接しない部分とが生じないおそれがある。逆に、この粗さ曲面要素の平均長さ(RSm)が上記上限を超えると微細な凹凸形状が十分に形成されず、凸部分以外の面において他の光学シート等表面と当接することで、干渉縞が生じるおそれがある。
【0071】
スティッキング防止層4表面の十点平均粗さ(Rz)の下限としては、0.2μmが好ましく、0.3μmが特に好ましく、0.4μmがさらに好ましい。一方、この十点平均粗さ(Rz)の上限としては、1.4μmが好ましく、1μmが特に好ましく、0.8μmが更に好ましい。スティッキング防止層4表面の十点平均粗さ(Rz)が上記下限より小さいと、スティッキング防止層4表面の微細凹凸形状7において、凸部以外の部分が、他の光学シート等の表面と当接することによってスティッキングが生じるおそれがある。逆に、この十点平均粗さ(Rz)が上記上限より大きいと、凹凸形状が粗くなりすぎて、裏面側に積層される他の光学シート等の表面の傷付けを生じるおそれがある。
【0072】
スティッキング防止層4の十点平均粗さ(Rz)の算術平均粗さ(Ra)に対する比(Rz/Ra)の下限としては3が好ましく、4が特に好ましく、5がさらに好ましい。一方、この比の上限としては10が好ましく、9が特に好ましく、8がさらに好ましい。スティッキング防止層4の十点平均粗さ(Rz)の算術平均粗さ(Ra)に対する比(Rz/Ra)を上記範囲と小さい値とすることで、当該光学シート1は、高さが比較的均等な凹凸形状を一様に備えることとなる。従って当該光学シート1は、スティッキング防止層4の微細凹凸形状7における凸部分の中でも特に突出した部分へ力が集中することによって生じる他のシートの傷付きを防止することができる。また、突出した凸部分が、例えばプリズム部頂点との接触等によって脱落することによる他の光学シート等表面の傷付けを防止することができる。スティッキング防止層4の十点平均粗さ(Rz)の算術平均粗さ(Ra)に対する比(Rz/Ra)が上記下限より小さいと、この微細凹凸形状7の十分な形成が困難となる。逆に、この比(Rz/Ra)が上記上限を超えると、微細凹凸形状7における凸部分の高さの差が顕著になり、その部分に力が集中することで、他の光学シート等の表面への傷付けが生じるおそれがある。
【0073】
スティッキング防止層4表面の二乗平均平方根粗さ(Rq)の下限としては、0.04μmが好ましく、0.07μmが特に好ましく、0.1μmがさらに好ましい。一方、この二乗平均平方根粗さ(Rq)の上限としては、0.4μmが好ましく、0.3が特に好ましく、0.2がさらに好ましい。当該光学シート1によれば、スティッキング防止層4表面の二乗平均平方根粗さ(Rq)が上記範囲と小さい値を有することで、微細凹凸形状7の傾斜がなだらかに形成されることとなり、積層する他の光学シートの傷付きを防止することができる。スティッキング防止層4表面の二乗平均平方根粗さ(Rq)が上記下限より小さいと、微細凹凸形状7の形成が十分ではないためスティッキング防止機能が低下するおそれがある。逆にこの二乗平均平方根粗さ(Rq)が上記上限を超えると、微細凹凸形状7に急な傾斜部分が生じることで、この急傾斜付近で他の光学シート等表面の傷付けを生じるおそれがある。
【0074】
スティッキング防止層4表面の各凸部分の平均高さ(h)の下限としては、0.5μmが好ましく、0.7μmが特に好ましく、1μmがさらに特に好ましい。また、この平均高さ(h)の上限としては、3μmが好ましく、2.5μmがさらに好ましく、2μmがさらに特に好ましい。当該光学シートによれば、このようにスティッキング防止層4表面の各凸部分の平均高さ(h)を上記のように比較的小さくすることで、他の光学シート等表面の傷付けを低減することができ、また傷付けが生じた際の、傷の深さを浅くすることができる。各凸部分の平均高さ(h)が上記下限より小さいと、十分なスティッキング防止機能を発揮することができない。逆に、この平均高さ(h)が上記上限を超えると、他の光学シート表面の傷付けを生じさせ、また、この生じる傷が深いものとなるおそれがある。なお、この平均高さ(h)は、レーザー顕微鏡で所定面積中を観察し、観察される複数の凸部分中、高さが高い上位16個の凸部分の平均高さによって算出される。
【0075】
スティッキング防止層4表面の各凸部分の平均突起径(r
1)の下限としては、2μmが好ましく、2.5μmが特に好ましく、3μmがさらに特に好ましい。一方、この平均突起径(r
1)の上限としては、5μmが好ましく、4.5μmが特に好ましく、4μmがさらに特に好ましい。当該光学シートによれば、このようにスティッキング防止層4表面の各凸部分の平均突起径(r
1)を上記のように比較的小さくすることで、他の光学シート等表面の傷付けを低減することができ、また、この生じる傷の傷幅を狭いものとすることができる。各凸部分の平均突起径(r
1)が上記下限より小さいと、十分なスティッキング防止機能を発揮することができない。逆に、この平均突起径(r
1)が上記上限を超えると、他の光学シート表面の傷付けを生じさせ、また、この生じる傷の傷幅が広いものとなる。なお、この平均突起径(r
1)は、レーザー顕微鏡で所定面積中を観察し、観察される複数の凸部分中、高さが高い上位16個の凸部分の平均突起径によって算出される。また、突起径(r
1)とは、凸部分の高さ(h)の90%の高さ(0.9h)において切断された断面の直径をいい、各突起径の平均はこのフェレー径(一定方向の平行線で投影像を挟んだときの間隔)から算出する。
【0076】
スティッキング防止層4表面の各凸部分の平均径(r
2)の下限としては、40μmが好ましく、60μmが特に好ましく、70μmがさらに特に好ましい。一方この平均径(r
2)の上限としては、200μmが好ましく、150μmが特に好ましく、120μmがさらに特に好ましい。当該光学シートによれば、このようにスティッキング防止層4表面の各凸部分の平均径(r
2)を上記のように比較的大きくすることで、他の光学シート表面に傷付けが生じた際の、傷深さを浅く抑えることができる。各凸部分の平均径(r
2)が上記下限より小さいと、十分なスティッキング防止機能を発揮することができない。逆に、この平均径(r
2)が上記上限を超えると、他の光学シート表面への傷付けが発生しやすくなるとともに、この傷深さが深くなってしまう。なお、この平均径(r
2)は、レーザー顕微鏡で所定面積中を観察し、観察される複数の凸部分中、高さが高い上位16個の凸部分の平均径によって算出される。また、各径とは、凸部分の高さ(h)の5%の高さ(0.05h)において切断された断面の直径をいい、各径の平均はこのフェレー径(一定方向の平行線で投影像を挟んだときの間隔)から算出する。
【0077】
スティッキング防止層4表面の各凸部分の高さ比(h/r
2)の下限としては、1/400が好ましく、1/200が特に好ましく、1/150がさらに特に好ましく、1/120がさらに特に好ましい。また、この高さ比(h/r
2)の上限としては、1/10が好ましく、1/30が特に好ましく、1/60がさらに特に好ましく、1/80がさらに特に好ましい。当該光学シートによれば、このようにスティッキング防止層4表面の各凸部の高さ比(h/r
2)を上記のように小さくすることで、他の光学シート表面の傷付けの発生を抑えるとともに、傷付けが生じた場合の傷自体の大きさを小さく抑えることができる。この高さ比(h/r
2)が上記下限より小さいと、十分なスティッキング防止機能を発揮させることができないおそれがある。逆に、この高さ比(h/r
2)が上記上限を超えると、他の光学シート表面に傷付けを生じやすくなるとともに、この傷自体の大きさが拡大する。
【0078】
また、当該スティッキング防止層4表面の凸部分は、このように比較的小さい平均高さ(h)、比較的小さい平均突起径(r
1)、比較的大きい平均径(r
2)及び小さい高さ比(h/r
2)を備えることで、この層と接する面における摩擦力を向上させることができる。このようなスティッキング防止層4を備える当該光学シート1によれば、このスティッキング防止層4及びこの層と接する他の光学シートやプリズムシートの間の摩擦が高まることで、スリップを防止し、その結果、このシート間で生じる微細なズレを抑えることで、他の光学シート又はプリズムシート表面の傷付けを抑えることができる。
【0079】
スティッキング防止層4表面の凸部分の存在密度の下限としては、40個/mm
2が好ましく、60個/mm
2が特に好ましく、80個/mm
2がさらに特に好ましい。また、この凸部分の存在密度の上限としては、500個/mm
2が好ましく、400個/mm
2が特に好ましく、300個/mm
2がさらに特に好ましい。スティッキング防止層4表面の凸部分の存在密度が上記下限より小さいと、十分なスティッキング防止機能を発揮することができなくなるおそれがある。逆に、この凸部分の存在密度が上記上限より大きいと、他の光学シート等の表面の傷付けを生じやすくなる。なお、この凸部分の存在密度は、レーザー顕微鏡において1000倍に拡大して観察した視野内の凸部分の個数を計測し、その視野面積を用いて算出する。
【0080】
なお、上記平均高さ(h)、平均突起径(r
1)、平均径(r
2)及び存在密度を算出する際の凸部分とはスティッキング防止層4表面における高さ0.2μm以上の突起をいう。
【0081】
スティッキング防止層4表面の鉛筆硬度の下限としては、基材層2がガラスである場合は、Hが好ましく、2Hが特に好ましい。一方この鉛筆硬度の上限としては、5Hが好ましく、4Hが特に好ましい。また、基材層2がポリエチレンテレフタレート等合成樹脂である場合は、スティッキング防止層4表面の鉛筆硬度の下限としては、Bが好ましく、HBが特に好ましい。一方この場合の鉛筆硬度の上限としては、3Hが好ましく、2Hが特に好ましい。当該光学シート1によれば、スティッキング防止層4表面が上記形状であることに加え、鉛筆硬度が上記範囲であることで、効果的にスティッキング防止機能を発揮しつつ、積層する他のシートの傷付きを防止することができる。スティッキング防止層4表面の鉛筆硬度が上記下限より小さいと、微細凹凸形状7における先端等が脆くなることで欠けてしまい、その結果、他の光学シート等の表面への傷付けが生じるおそれがある。逆にこの鉛筆硬度が上記上限を超えると、高い硬度を有する微細凹凸形状7そのものによって、他の光学シート等の表面への傷付けを生じるおそれがある。
【0082】
このスティッキング防止層4の材質としては、特に限定されず、合成樹脂等を用いることができるが、合成樹脂及びモノマー又はオリゴマーを溶質として含む硬化性組成物の硬化物であり、この硬化物により表面の微細凹凸形状7が形成されていることが好ましい。さらには、上記溶質の組成は少なくとも膜状にした際に層分離するものであることが好ましい。この層分離は合成樹脂とモノマー又はオリゴマーとの間で生じてもよいし、その他複数のモノマー又はオリゴマー間で生じてもよい。当該光学シート1によれば、上記硬化性組成物を塗布し硬化させることで、各成分の硬化の際の収縮率の差によって微細凹凸形状7を好適に形成することができる。この微細凹凸形状7は、上記の層分離した状態においてより好適に形成される。
【0083】
上記の合成樹脂としては、例えば(メタ)アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリシラン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂又はフッ素樹脂などが挙げられる。(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリルモノマーの重合体又は共重合体、(メタ)アクリルモノマーと他のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとの共重合体などが挙げられる。オレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体などが挙げられる。ポリエーテル樹脂としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂などが挙げられる。樹脂としては、これらの樹脂を構成する構造単位を2種以上有する共重合体であってもよく、これらの樹脂を構成する構造単位とそれ以外のモノマーとからなる共重合体であってもよい。この中で微細凹凸形状が好ましいサイズとなり、スティッキング防止効果が向上する観点から、アクリルモノマーの共重合体が好ましい。
【0084】
上記合成樹脂の質量平均分子量の下限としては、2,000が好ましく、5,000がより好ましい。一方、樹脂の質量平均分子量の上限としては100,000が好ましく、50,000がより好ましい。質量平均分子量が上記下限より小さいと、スティッキング防止層4の微細凹凸形状7が小さくなり、スティッキング防止効果が不足するおそれがある。逆に、質量平均分子量が上記上限を超えると、スティッキング防止層4の微細凹凸形状7の硬度が高くなり過ぎて、スティッキング防止層4に付着する他の光学シート等表面の傷付けが生じるおそれがある。
【0085】
上記オリゴマーとしては、上記の合成樹脂の低分子量のものが挙げられる。オリゴマーとしては、繰り返し単位の数が3〜10であり、重量平均分子量が8,000以下のものが好ましい。オリゴマーとしては、これらのオリゴマーを構成する構造単位を2種以上有する共重合体であってもよく、これらのオリゴマーを構成する構造単位とそれ以外のモノマーとからなる共重合体であってもよい。
【0086】
上記モノマーとしては、重合可能な官能基を有している化合物である限り、用いることができる。重合可能な官能基としては、不飽和二重結合が好ましく、重合が容易である点で、(メタ)アクリロイル基が特に好ましい。また、モノマーとしては、多官能性モノマーが好ましい。多官能性モノマーとしては、多価アルコールなどの(メタ)アクリレートエステルを挙げられ、具体的にはジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどが例示される。このモノマーとしては、重合可能な官能基以外の官能基、例えば、ウレタン基、イソシアヌレート基、ウレア基、カーボネート基、アミド基、エステル基、カルボキシル基、イミノ基、アミノ基、エーテル基、ヒドロキシル基などを分子内に有していてもよい。また、モノマーは、フッ素、塩素等のハロゲン、ケイ素、イオウ、リンなどの原子を有していてもよい。
【0087】
上記溶質である合成樹脂、オリゴマー及びモノマーは、それぞれ、互いに反応する官能基を有していることが好ましい。各々の成分がこのような官能基を有していることによって、得られるスティッキング防止層4の強度が上がり耐久性を向上させることができる。このような反応する官能基の組み合わせとしては、例えば、エチレン性不飽和基とエチレン性不飽和基、活性水素を有する官能基(水酸基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基など)とエポキシ基、活性水素を有する官能基とイソシアネート基、活性水素を有する官能基と活性水素を有する官能基、シラノール基とシラノール基、シラノール基とエポキシ基、活性メチレン基とアクリロイル基、オキサゾリン基とカルボキシル基などが挙げられる。この中で、成分間の強固な結合が生成することによって、得られるスティッキング防止層4の強度が向上することから、互いに反応する官能基としては、エチレン性不飽和基とエチレン性不飽和基の組み合わせが好ましい。
【0088】
また、上記溶質としては、合成樹脂と、モノマー又はオリゴマーと、極性基を有するモノマー又はオリゴマーの三成分を含有することが好ましい。このスティッキング防止層4がこのような成分を含有する、特に極性基を有するモノマー又はオリゴマーが含有されることで、樹脂硬化物の相分離が促進されて、微細凹凸形状7が効果的に発現され、スティッキング防止層4の効果が向上される。当該極性基としては、例えば、ウレタン基、イソシアヌレート基、ウレア基、カーボネート基、アミド基、エステル基、カルボキシル基、酸無水物基、エーテル基、エポキシ基、イミノ基、アミノ基、ヒドロキシル基などが挙げられる。極性基を有するのモノマー又はオリゴマーの具体例としては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。この中でも、相分離が起こり易く、微細凹凸形状7が効果的な形状に発現し、スティッキング防止効果が向上することから、ウレタン(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0089】
さらには、上記溶質の三成分の組み合わせとしては、塗布、硬化時に海−島−湖の相構造を形成するものが好ましい。このような組み合わせにすることによって、塗膜厚さが薄い場合でも、形成される微細凹凸形状7が比較的大きくなり、スティッキング防止効果が大きくなる。
【0090】
次に、当該光学シート1の製造方法について説明する。当該光学シート1の製造方法としては、一般的には、(a)バインダー5を構成するポリマー組成物に光拡散剤6を混合することで光学層用塗工液を製造する工程と、(b)この光学層用塗工液を基材層2の表面に塗工することで光学層3を積層する工程と、(c)樹脂及びモノマー又はオリゴマーを溶質として含む硬化性組成物を調整することでスティッキング防止層用塗工液を製造する工程と、(d)このスティッキング防止層用塗工液を基材層2の裏面に塗布することでスティッキング防止層4を積層し、硬化させることでこの表面に微細凹凸形状7を形成する工程とを有する。
【0091】
(c)工程における硬化性組成物は、上述の各溶質成分(合成樹脂及びモノマー又はオリゴマー)に加え、溶剤及び重合開始剤等が配合されている。
【0092】
上記溶剤としては、例えばエーテル類、ジエチレングリコールアルキルエーテル類、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート類、芳香族炭化水素類、ケトン類、エステル類等を挙げることができる。
【0093】
これらの溶剤としては、
エーテル類として、例えばテトラヒドロフラン等;
ジエチレングリコールアルキルエーテル類として、例えばジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等;
エチレングリコールアルキルエーテルアセテート類として、例えばメチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等;
プロピレングリコールモノアルキルエーテル類として、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等;
プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類として、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等;
プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート類として、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート等;
芳香族炭化水素類として、例えばトルエン、キシレン等;
ケトン類として、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等;
エステル類として、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ヒドロキシ酢酸メチル、ヒドロキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、3−ヒドロキシプロピオン酸メチル、3−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−ヒドロキシプロピオン酸プロチル、3−ヒドロキシプロピオン酸ブチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸プロピル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸プロピル、エトキシ酢酸ブチル、プロポキシ酢酸メチル、プロポキシ酢酸エチル、プロポキシ酢酸プロピル、プロポキシ酢酸ブチル、ブトキシ酢酸メチル、ブトキシ酢酸エチル、ブトキシ酢酸プロピル、ブトキシ酢酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸ブチル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル等をそれぞれ挙げることができる。これらの溶剤は、単独で又は混合して用いることができる。
【0094】
上記重合開始剤としては、
例えばアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、アントラキノン、1−(4−i−プロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、カルバゾール、キサントン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、1,1−ジメトキシデオキシベンゾイン、3,3'−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサントン系化合物、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−2−オン、2−(4−メチルベンジル)−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、トリフェニルアミン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリ−メチルペンチルフォスフィンオキサイド、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、フルオレノン、フルオレン、ベンズアルデヒド、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、ミヒラーケトン、3−メチルアセトフェノン、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン等が挙げられる。このようなラジカル発生剤は、1種を単独で使用することもできるし、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0095】
(d)工程における硬化方法としては、熱硬化や放射線硬化など組成物の組成にあわせて公知の方法を用いることができる。使用される放射線としては、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を使用できる。これらの放射線の中でも、波長が190〜450nmの範囲にある放射線が好ましい。
【0096】
当該光学シート1によれば、スティッキング防止層4の表面全面に上記性状の微細凹凸形状7を有するため、このなだらかかつ均等に形成される微細凹凸形状7の凸部分が、このスティッキング防止層7側に重ねて配設される他の光学シート等とのスティッキングを防止し、かつ他の光学シート等の表面の傷付きを防止することができる。さらには、当該光学シート1自体が巻いたり、重ねたりすることで、当該光学シート1同士が擦れ合っても、互いに傷付け合うことや、ブロッキングすることが防止される。
【0097】
従って、
図2(a)に示すようなランプ21、導光板22、プリズムシート24及び光拡散シート25を備え、ランプ21から発せられる光線を分散させて表面側に導く液晶表示装置用のバックライトユニット20において、光拡散シート25として上記光学シート1を用いると、光学シート1の良好なスティッキング防止性及び傷付き防止性によりプリズムシート24表面のスティッキング及び傷付きが低減され、その結果、干渉縞の発生や傷付きによる輝度ムラの発生が低減され、品質が高められる。
【0098】
特に当該光学シート1は、スティッキング防止層4が、上記の表面性状を備えているため、このようにプリズムシート24の表面に積層される場合において、スティッキング防止層4とプリズムシート表面の帯状のプリズム部頂点とが接するときにも、帯状部分において当接する部分と当接しない部分とを作り出すことができる。従って、当該光学シート1によれば、プリズムシート24表面(プリズム部側の面)に対するスティッキング防止機能を効果的に発揮することができる。また、当該光学シート1における微細凹凸形状7は、プリズムシート24のプリズム部頂点との接触においても脱離しにくい形状となっている。従って、プリズムシートの表面側に光学シート1を備える当該バックライトユニットにおいても、高いスティッキング防止機能及び傷付け防止機能が十分に発揮され、当該バックライトユニットは高品質を備えることができる。
【0099】
また、当該バックライトユニットは、光学シート1を、プリズムシートなどの他の光学シートの表面に積層することもでき、導光板の表面に積層することもできる。このような本発明のバックライトユニットにおいては、光学シート1のスティッキング防止層4の面と、この面と接する他の光学シート又は導光板の表面との間の動摩擦係数が比較的大きくすることができる。この動摩擦係数の下限としては、0.4が好ましく、0.5が特に好ましく、0.55がさらに特に好ましい。また、この動摩擦係数の上限としては、実用的な観点から0.8が好ましく、0.7が特に好ましい。当該バックライトユニットによれば、このように光学シート1のスティッキング防止層4の面と、この面と接する他の光学シート又は導光板の表面との動摩擦係数が高いことで、この間のスリップを防止することができ、このスリップによって生じる他の光学シート又はプリズムシート表面の傷付け発生を抑えることができる。
【0100】
なお、本発明の光学シートは上記実施形態に限定されるものではなく、例えばプリズムシート(屈折性光学シート)、マイクロレンズシート、偏光シート、反射偏光シート、反射シート、位相差シート、視野拡大シート等の他の形態の光学シートの一の面に上記スティッキング防止層を備えることも可能である。一の面(光学層とは反対側の面)に積層されるスティッキング防止層によって、これら種々の形態の光学シートに傷付き防止性及びスティッキング防止性を付与することができる。
【実施例】
【0101】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0102】
[実施例1]
ポリエステルポリオールを基材ポリマーとするバインダー樹脂配合物(東洋紡績(株)の「バイロン」)100部、平均粒子径が20nmのコロイダルシリカ(扶桑化学工業(株)の「PL−1」)50部、硬化剤(日本ポリウレタン(株)の「コロネートHX」)5部及び光安定化剤(大塚化学(株)の「PUVA−1033」)5部を含むポリマー組成物中に、平均粒子径15μmのアクリル系樹脂ビーズ(積水化成品工業(株)の「MBX−15」)50部を混合して塗工液を作製し、この塗工液をロールコート法によって厚さ100μmの透明ポリエステル製の基材層(東洋紡績(株)の「A−4300」)の表面に15g/m
2(固形分換算)塗工し、硬化させることで光学層を形成した。
【0103】
また、スティッキング防止層用塗工液として、アクリル樹脂0.6質量部、多官能不飽和二重結合含有モノマーであるペンタエリスリトールトリアクリレート41.9質量部、ウレタンアクリレート57.7質量部、重合開始剤である2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(チバガイギー社製「IRGACURE907」)7質量部及び1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(チバガイギー社製「IRGACURE184」)3質量部をメチルエチルケトン(MEK)とメチルイソブチルケトン(MIBK)の混合溶媒(混合比:MEK/MIBK=1:1質量比)に混合させ、不揮発成分率を50質量%となるように調製した。この塗工液を上記基材層の裏面に、バーコーターを用いて、コート厚み2g/m
2でバーコート塗布した。これを80℃で1分間乾燥して溶剤を除去乾燥し、得られた塗膜を超高圧水銀灯で、紫外線400mJ/cm
2の照射エネルギーとなるように露光して硬化させることで平均厚さが2.8μmのスティッキング防止層を形成した。これにより実施例1の光学シートを得た。
【0104】
[実施例2]
スティッキング防止層用の塗工液の塗工量を0.5g/m
2(固形分換算)としたこと以外は実施例1と同様にして、スティッキング防止層の平均厚さが0.7μmの実施例2の光学シートを得た。
【0105】
[実施例3]
スティッキング防止層用の塗工液の塗工量を1g/m
2(固形分換算)としたこと以外は実施例1と同様にして、スティッキング防止層の平均厚さが1.4μmの実施例3の光学シートを得た。
【0106】
[実施例4]
スティッキング防止層用の塗工液の塗工量を1.5g/m
2(固形分換算)としたこと以外は実施例1と同様にして、スティッキング防止層の平均厚さが2.1μmの実施例4の光学シートを得た。
【0107】
[実施例5]
スティッキング防止層用の塗工液の塗工量を2.5g/m
2(固形分換算)としたこと以外は実施例1と同様にして、スティッキング防止層の平均厚さが3.5μmの実施例5の光学シートを得た。
【0108】
[比較例1]
スティッキング防止層用の塗工液として、ウレタンアクリレートを配合せず(他の成分は同様に配合)、この塗工液をロールコート法により上記基材層の裏面に2g/m
2(固形分換算)塗工したこと以外は実施例1と同様にして、スティッキング防止層の平均厚さが2.8μmの比較例1の光学シートを得た。
【0109】
[比較例2]
スティッキング防止層用の塗工液の塗工量を3g/m
2としたこと以外は、比較例1と同様にして、スティッキング防止層の平均厚さが4.2μmの比較例2の光学シートを得た。
【0110】
[比較例3]
ポリエステルポリオールを基材ポリマーとするバインダー樹脂配合物(東洋紡績(株)の「バイロン」)100部、平均粒子径が20nmのコロイダルシリカ(扶桑化学工業(株)の「PL−1」)50部、硬化剤(日本ポリウレタン(株)の「コロネートHX」)5部及び光安定化剤(大塚化学(株)の「PUVA−1033」)5部を含むポリマー組成物中に、平均粒子径5μmのアクリル系樹脂ビーズ(積水化成品工業(株)の「MBX−5」)10部を混合して塗工液を作製し、この塗工液をロールコート法により上記基材層の裏面に2g/m
2(固形分換算)塗工し、硬化させることでスティッキング防止層を形成した以外は実施例1と同様にして、スティッキング防止層の平均厚さが3.0μmの比較例3の光学シートを得た。
【0111】
[特性の評価]
上記実施例1〜5及び比較例1〜3の光学シートを用い、表面性状の算術平均粗さ(Ra)、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)、十点平均粗さ(Rz)、二乗平均平方根粗さ(Rq)及び鉛筆硬度を測定し、また、これらの光学シートをバックライトユニットに組み込んだ際の正面輝度、及び光学シートが及ぼす他の光学シートへの影響(密着性、干渉縞の発生、傷付きの発生)を評価した。その結果を下記表1に示す。
【0112】
表面性状の「算術平均粗さ(Ra)」及び「十点平均粗さ(Rz)」は、JIS B0601−1994に準じ、「粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)」及び「二乗平均平方根粗さ(Rq)」はJIS B0601−2001に準じ、カットオフλc2.5mm、評価長さ12.5mmとし、株式会社東京精密製の触針式表面粗さ測定器「サーフコム470A」を用いて測定した。「鉛筆硬度」は、JIS K5400の試験方法8.4に準じて測定した。
【0113】
また、光学シートをバックライトユニットに組み込んだ際の正面輝度、及び光学シートが及ぼす他の光学シートへの影響(密着性、干渉縞の発生)は、これらの光学シートを、実際にエッジライト型バックライトユニットに組み込み(光学シートとしては、導光板の表面に積層した恵和(株)製のプリズムシートH505、及びこの表面に積層した実施例又は比較例の光学シート(光拡散シート)を用いた。)、以下の通り評価した。
【0114】
プリズムシートとの密着性は、気温40℃、湿度90%の状態で48時間放置した後の密着性を以下の観点で評価した。
◎:全く密着していない
○:密着している部分もある
△:一定程度密着している
×:強く密着している
【0115】
干渉縞の発生は目視にて以下の観点で評価した。
◎:全く干渉縞が発生していない
○:注視してみるとわずかに干渉縞が確認できる
△:注視しなくとも干渉縞が確認できる
×:はっきりと干渉縞が確認できる
【0116】
傷付きの発生は、これらの光学シートのスティッキング防止層と、恵和(株)製のプリズムシートH505の表面(プリズム部側の面)とを100回こすり合わせた後のプリズム部の傷付きの有無を顕微鏡にて観察し、以下の観点で評価した。
◎:全く傷付きが観測されない
○:わずかな傷付きが観測される
△:傷付きが観測される
×:はっきりと傷付きが観測される
【0117】
【表1】
【0118】
上記表1に示すように、実施例1〜5の光学シートは、バックライトユニットに組み込んだ際に高い正面輝度を有することに加え、他の光学シートとの密着性や干渉縞の発生を抑え、さらに他の光学シート表面の傷付きを低減させていることが示されている。特に、十点平均粗さ(Rz)の算術平均粗さ(Ra)に対する比(Rz/Ra)の値を抑えることで、密着性、干渉縞及び傷付きの発生が低減していることがわかる。
【0119】
[実施例6〜12]
実施例1において、スティッキング防止層用塗工液の成分であるアクリル樹脂、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びウレタンアクリレートの配合量を下記表2に示す通りとし、スティッキング防止層用塗工液の不揮発成分率を60質量%となるようにし、かつ形成されるスティッキング防止層の平均厚さが2μmになるようにした以外は、実施例1と同様にして、実施例6〜12の光学シートを得た。
【0120】
[特性の評価]
上記得られた実施例6〜12の光学シートについて、上記と同様に、表面性状の算術平均粗さ(Ra)、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)、十点平均粗さ(Rz)、二乗平均平方根粗さ(Rq)及び鉛筆硬度を測定し、また、これらの光学シートをバックライトユニットに組み込んだ際の正面輝度、及び光学シートが及ぼす他の光学シートへの影響(密着性、干渉縞の発生、傷付きの発生)を、上記評価基準に従い評価した。加えて、スティッキング防止層表面の各凸部分の平均高さ(h)、平均突起径(r
1)、平均径(r
2)、及び存在密度を測定した。各凸部分についての測定には、レーザー顕微鏡「VK−8500」(キーエンス社製)を用いた。その結果を下記表2に示す。
【0121】
【表2】
【0122】
上記表2の結果から、光学シートを形成する成分の配合量比を変えることにより、高い正面輝度及び傷付き防止性を維持しつつ、スティッキング防止層の表面性状を調整することができ、積層させる他の光学シート等に合わせて設計することで、密着防止性等をさらに向上できることが示された。