特許第5700786号(P5700786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5700786
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】浮き構造体
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/00 20060101AFI20150326BHJP
【FI】
   A01K61/00 V
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-283464(P2010-283464)
(22)【出願日】2010年12月20日
(65)【公開番号】特開2011-223980(P2011-223980A)
(43)【公開日】2011年11月10日
【審査請求日】2013年12月2日
(31)【優先権主張番号】特願2010-81931(P2010-81931)
(32)【優先日】2010年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592165440
【氏名又は名称】福岡金網工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301070634
【氏名又は名称】株式会社 太陽マリーン商会
(74)【代理人】
【識別番号】100082164
【弁理士】
【氏名又は名称】小堀 益
(74)【代理人】
【識別番号】100105577
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 隆人
(72)【発明者】
【氏名】山本 健重
(72)【発明者】
【氏名】中村 賢三
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−154466(JP,A)
【文献】 特開昭49−59441(JP,A)
【文献】 特開昭48−14093(JP,A)
【文献】 特開平8−228630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプラスチック材からなる浮子に,プラスチック材からなる格子状に組み込まれた幹材を連結した浮き構造体であって、
前記浮子は、グラスファイバーの板材からなる箱体に、浮子材としてペレット状の発泡樹脂廃材を充填してなり、上面に設けられた閉塞可能な海水流入口から海水を導入して浮力を調整可能であり、
且つ、
前記幹材は、溶融性プラスチック廃材を溶融押し出し成形して得た断面が多角形の棒材である浮き構造体。
【請求項2】
前記浮子が、箱体が幹材装着部を形成した6面体状をなし、この浮子を格子状に組み込まれた幹材に装着した請求項1に記載の浮き構造体。
【請求項3】
前記浮子が、箱体が円筒形状をなし、格子状に組み込まれた幹材に懸垂して連結された請求項1に記載の浮き構造体。
【請求項4】
前記格子状に組み込まれた幹材が、断面が正方形のプラスチック棒を平行に配列した複
数の下方列と、この下方列に直交して平行に配列し固定したプラスチック棒からなる上方
列からなる請求項1に記載の浮き構造体。
【請求項5】
浮き構造体が、牡蠣の養殖用生け簀のためのものである請求項1に記載の浮き構造体。
【請求項6】
浮き構造体が、回遊魚の生け簀用である請求項1に記載の浮き構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、浮子の間を幹材で連結した牡蠣の養殖、各種魚類の生け簀等、漁場用生け簀用、あるいは、船舶用の浮桟橋として利用可能な浮き構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような浮き構造体、とくに漁場用生け簀の構造体としては、従来、複数の浮子の間を綱、または、鉄パイプその他の金属パイプからなる幹材を連結した構造のものが使用されてきた。
【0003】
ところが、浮子の間を連結する幹材として金属パイプを使用する場合には、重くて取り扱いに困難が伴う。また、幹材として綱を用いる場合は、弛みがひどく安定性が悪く、組み立てられた幹材上での作業は困難を伴う場合がある。
【0004】
そのため、近年、とくに、牡蠣の養殖用生け簀を形成するための幹材として、金属パイプに比べて、軽量で撓りに優れた竹材が使用されるようになった。この竹材の使用は、森林の荒廃による竹林による浸食を防ぐための対策として有望視されるようになった。
【0005】
この構造体は、直径が10cm程度の竹竿を針金によって格子状に組み、これを防水性の布材で浮材を包んだ浮子に連結したものであった。
【0006】
この竹材は、比較的安価で、表面がなめらかな円形をしており、比較的、取り扱いが便利で、生け簀の構造体自体に撓みがあって少々の波浪に耐えることができ、生け簀の網を釣り下げるには強度も充分で、海中に沈んだ場合の釣り下げ強度も充分である等の利点がある。
【0007】
ところが、この竹材を使用しての生け簀の構造体の組立てには、凡そ、その大きさと長さが定まったものが要求され、浮子に取り付けるための枠構造体の組立には、3〜5mm以上の針金によって結び付ける必要があり、その組立てには、相当の手間と労力と熟練を要する。さらには、海水による腐食による短寿命化の問題もある。
【0008】
また、養殖用生け簀のための浮子としては、下記の特許文献に開示されているように、その製作の容易性と取扱いの便利さから、プラスチック製の釣鐘形のもの多く考案されている。しかしながら、単純な棒材を幹材として使用する場合には取り扱いが不便であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実公平2−36384号公報
【特許文献2】実開平3−31849号公報
【特許文献3】実開平7−1758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、海水に対して耐腐食性を有し、海面の揺れに対しても撓りと抵抗力があり、牡蠣の養殖、漁場用生け簀用、船舶用の浮桟橋等として好適に利用できる軽量の浮き構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、プラスチック材とくにプラスチック材廃材から得た幹材を格子状に組み込合わせ、この格子状の幹材に複数の浮子を連結した浮き構造体である。
【0012】
本発明の浮き構造体を構成するプラスチック素材としては、主としてpp,peのよう
な熱可塑性プラスチックの廃材を利用することができる。そのためのプラスチック廃材は、種類ごとに格別に選別されたものである必要はない。
【0013】
浮子の間を連結する幹材にするために再溶融されるプラスチック廃材は、通常のペレッ
ト状の廃材を通常の溶融押し出し機を用いて、180℃程度の温度で押し出し成形し、断
面が3角、4角、6角状の任意の多角形状であって、径が60mm程度、長さが12000mm程度の棒材に成形し、浮き構造体の幹材に使用する。
【0014】
また、このような幹材を連結するための浮子としては、グラスファイバーのパネル材から箱状体を作成し、浮子としての機能をペレット状の発泡プラスチックの廃材を充填することによって持たせ、また、海水を注入できるようにして、浮力を調整するようにしたものを使用する。
【0015】
さらに、幹材を形成する格子状に組み立てられたプラスチック棒相互の結合、格子状の幹材と浮子との取付けには、完成した構造体を海上に浮かべた際の波浪と、吊り下げる牡蠣網の重力に耐えさせるため結合手段を採る必要がある。しかも、その結合は簡単な手段である必要がある。
【発明の効果】
【0016】
本発明の浮構造体は、プラスチック廃材を溶融押し出しだけの棒体を組み合わせただけで均一な撓み性に富んだ幹材とすることができ、また、浮子としても、装入プラスチック材と海水の導入によって浮力を調整できる任意のサイズと形状のものとすることができ、組立てと保守が簡便になる。
【0017】
また、各部材の作成には使用済みのプラスチック廃材を使用し、その使用後の廃材を再利用することによって、プラスチック廃材の再利用のリサイクル系を形成することができる。
【0018】
さらには、従来、浮構造体を構成する幹材としては表面が丸い竹材をそのまま使用していたため浮構造体上での作業は安定さを欠いていたが、本発明のプラスチック製の幹材では任意の断面形状のものとすることができ、浮構造体上の作業として安定性を重視した断面が多角形のものを使用することによって浮構造体上の作業を効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の浮き構造体に使用する幹材を示す。
図2】本発明に使用する浮子の第1の例を示す。
図3】幹材を図2に示す浮子に取り付けた浮子構造体のユニットを示す。
図4】浮子構造体のユニット組立て金具を示す。
図5】浮子構造体のユニット組立て要領を示す。
図6】牡蠣養殖生け簀用の浮子構造体の第1の例を上から見た状態を示す。
図7】回遊魚の生け簀用の浮子構造体を示す。
図8】回遊魚の生け簀用の浮子構造体の連結金具を示す。
図9】牡蠣養殖生け簀用の浮子構造体の第2の例を示す。
図10図9に示す浮子構造体の断面を示す。
図11】回遊魚の生け簀用の浮子構造体の第2の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態を図に示す実施例によって説明する。
【実施例】
【0021】
実施例1
図1図6は、本発明を牡蠣の養殖用生け簀のための浮子構造体に適用した第1の例である。
【0022】
(幹材の製造)
主として、ポリプロピレンとポリエチレンのペレット状のプラスチック廃材を180℃で溶融押出し成形し、60mm角、12000mm長さの図1に示す幹材1用の棒材を得た。この溶融押出し成形した棒材は、芯部に僅かに渦巻き状の巣を形成したものであったが、その曲げ抗力は3000kg/cm程度はあり、牡蠣養殖用生け簀のための浮き構造体の幹材として長期の使用に耐え得るものであった。
【0023】
(浮子の製造)
図2は、厚みが10mmのグラスファイバーの板材から作成した長さが900mmと巾が600mmで高さが450mmの箱体からなる浮子2を示す。この浮子2の上面と下面の相対する両端縁には、図1に示す幹材1を4本装着固定する切欠け状位置21が形成されている。この浮子2には発泡プラスチック廃材を充填して浮力を付与するとともに、その浮力を調整するために、頂部に栓22を設けてそこに設けた海水注入口から海水を導入可能とし浮力調整可能な機能を持たせた。
【0024】
(構造体ユニットの作成)
図2に示す浮子2の上下の両側縁の取付け位置21に、図1に示す幹材1を、それぞれの端部を20cm程度余して、上下面に2本ずつ計4本組み込ませて、耐海水の接着剤、ボルト、その他の接合手段によって固定した。この幹材1の取り付け本数は、養殖用浮き構造体の波浪に対する強度によって加減する。このようにして、それぞれの幹材1を、複数の浮子2(図3には4個の場合が示されている。)に等間隔で取り付けて構造体ユニット3とした。
【0025】
また、幹材1と浮子2との固定には、上記接着剤による接合に加えて、または、単独に、図4に示す固定バンド31を使用することができる。この固定用バンド31は、ステンレスまたはアルミニウムからなり、その両端の接合部にボルトを締め付けて固定する。
【0026】
(構造体の組立て)
図3に示す構造体ユニット3の複数を一定の間隔をおいて平行に配列し、図1に示すプラスチック製の棒材を横材11として、ユニットの幹材1に直角に固定して、幹材1が格子状に配列した図5に示す浮き構造体10を作成した。
【0027】
浮き構造体10の作成に際してのこの横材11の構造体ユニット3への固定は、図6に示すように、構造体のユニット3の上方の幹材1に、図1に示す幹材を横材11として使用し、番線12によって固定して、格子状に配列した幹材1を有する図5に示す牡蠣養殖用の浮き構造体10を得た。
【0028】
(組立て構造体の波浪テスト)
実施例1によって得られた浮子構造体10の下方幹材に、400本の網に稚牡蠣を取り付けて吊り下げ、内海の牡蠣の養殖場において、耐波浪試験を行った結果、稚牡蠣の成長の時期までの6ヶ月間、放置した。
【0029】
その結果、浮き構造体10は、生け簀を設置したときの浮子2のほぼ2/3が海面上に浮き出た状態から、牡蠣の成長期には、牡蠣の成長に伴って網は重くなり、収穫期には、浮子のほぼ1/4だけが海面上に浮き出た状態となったが、成長した牡蠣の収穫には何らの支障がなかった。
【0030】
また、この期間、設置した生け簀の浮子構造体を構成する幹材1と浮子2には、何の問題も生じなかった。
【0031】
実施例2
実施例2は、図7及び図8に示すもので、本発明を回遊魚の生け簀用に適用した例を示す。
【0032】
本発明を、いわし、ハマチ、鯛等の小形回遊魚類の生け簀用として、上記実施例1に示した牡蠣の養殖用生け簀のための浮子構造体を図6に示す円形の浮子構造体20に適用した例を示す。
【0033】
図6において、円形の浮子構造体20は、図3に示す構造体ユニット3を幹材1の曲げ性を利用して曲げ、これを複数個、連結具4を利用して円形状に連結する。そして、この円形を構成する浮子構造体に、逃亡防止用の網を一面に吊り下げて生け簀として利用する。
【0034】
この連結具4は、図3に示す構造体ユニット3の端部を幾分長めにとり、構造体ユニット3を幹材1の曲げ性を利用して曲げ、その端部の間を、図8に示す連結具4のコの字の空間を利用して連結し、これを、ボルト穴のような連結穴にボルトのような手段で固定する。
【0035】
これによって、円形の浮子構造体20の下方幹材に枠に網を釣り下げて、円筒状の生け簀を形成する。
【0036】
実施例3
図9図10に示すもので、本発明を牡蠣養殖生け簀用に適用した第2の例30を示す。
【0037】
(幹材の構造と組立)
図9に示すように、平行に配列した複数の下方列12と、この下方列に直交して平行に配列した上方列13とから格子状の幹材を形成し、幹材1の下方列12と上方列13とを格子状に組立てて、縦横同一間隔の格子状幹材とした。
【0038】
幹材1の下方列12と上方列13とを固定する手段としては、その交差箇所を針金によって緊締の他に、締め付け金具や、上方列13の上面と下方列の下面に当板を配置しその間をボルトによって固定するという手段も採用できる。
【0039】
(浮子の構造と組立)
図9図10に示すように、この牡蠣の養殖用生け簀30は、下方の平行な幹材列12の上に、上方列の平行な幹材列13を配置して、鉄線その他の幹材連結具によって、上下幹材の交差位置を固定して格子状に形成し、この格子状の幹材1に浮子2を懸垂したものである。
【0040】
この浮子2は、グラスファイバー、硬質プラスチック材等で作られた円筒タンク状をなし、その上面には、浮力調整のための海水導入口25が設けられており、下方の幹材列12を挟んで取り付けた浮子懸垂用板23に取り付けた浮子懸垂用針金24によって支持懸垂する。
【0041】
浮子2に設けられた海水導入口25から海水を導入することによって、養殖用生け簀30全体の浮力を低下させて、波浪が激しい場合には、養殖用生け簀30全体を波面下に沈下させて波面の影響を少なくして、破損を防ぐ効果がある。
【0042】
(浮子と幹材との取付け)
その浮子は、格子状の幹材の下方列12の間と浮子の下面に懸垂用板材23を2組配置し、それぞれの懸垂用板材を利用して、前後2箇所で番線を浮子の回りに渡す浮子懸垂用針金24によって浮子を懸垂する。
これによって、1つの下方列12と1つの上方列13からなる格子状幹材1の下方列12に、一定間隔でタンク状の浮子を懸垂した浮子構造体30が得られる。
【0043】
実施例4
図11に示すとおり、実施例3で使用したものと同様に浮力調整を可能にした浮子2を利用して回遊魚の生け簀用とした第2の例40を示す。
【0044】
この例の場合、適宜の間隔で配置された浮子2の上下を幹材1によって連結し、上下の幹材1の間に支持板23を設け、上下の支持板23の間に浮子2を配置し、針金24によって固定したものである。4は、実施例3においても使用している幹材1を曲げた状態で連結し強化するための連結具である。
【0045】
これによって、比較的、簡単な構造でありながら、強度の高い生け簀が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の浮子構造体の実施例として、牡蠣養殖用の浮き構造体として幹材1を格子状にした例と、幹材1を円形に組んだ魚の生け簀用の例を挙げたが、これらの実施例に限らず、これらの浮き構造体の上面に、硬質プラスチック板または鉄板などを張り付けることによって小船舶の浮き桟橋としても利用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 幹材
11 横置き用幹材
12 格子状の下方列の幹材
13 格子状の上方列の幹材
2 浮子
21 装着固定する位置
22 幹材の固定用バンド
23 浮子懸垂用支持板
24 浮子懸垂用針金
25 海水注入口
3 構造体ユニット
31 固定バンド
4 連結具
10、30 牡蠣養殖用浮子構造体
20、40 回遊魚用浮子構造体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11