【実施例】
【0021】
実施例1
図1〜
図6は、本発明を牡蠣の養殖用生け簀のための浮子構造体に適用した第1の例である。
【0022】
(幹材の製造)
主として、ポリプロピレンとポリエチレンのペレット状のプラスチック廃材を180℃で溶融押出し成形し、60mm角、12000mm長さの
図1に示す幹材1用の棒材を得た。この溶融押出し成形した棒材は、芯部に僅かに渦巻き状の巣を形成したものであったが、その曲げ抗力は3000kg/cm
2程度はあり、牡蠣養殖用生け簀のための浮き構造体の幹材として長期の使用に耐え得るものであった。
【0023】
(浮子の製造)
図2は、厚みが10mmのグラスファイバーの板材から作成した長さが900mmと巾が600mmで高さが450mmの箱体からなる浮子2を示す。この浮子2の上面と下面の相対する両端縁には、
図1に示す幹材1を4本装着固定する切欠け状位置21が形成されている。この浮子2には発泡プラスチック廃材を充填して浮力を付与するとともに、その浮力を調整するために、頂部に栓22を設けてそこに設けた海水注入口から海水を導入可能とし浮力調整可能な機能を持たせた。
【0024】
(構造体ユニットの作成)
図2に示す浮子2の上下の両側縁の取付け位置21に、
図1に示す幹材1を、それぞれの端部を20cm程度余して、上下面に2本ずつ計4本組み込ませて、耐海水の接着剤、ボルト、その他の接合手段によって固定した。この幹材1の取り付け本数は、養殖用浮き構造体の波浪に対する強度によって加減する。このようにして、それぞれの幹材1を、複数の浮子2(
図3には4個の場合が示されている。)に等間隔で取り付けて構造体ユニット3とした。
【0025】
また、幹材1と浮子2との固定には、上記接着剤による接合に加えて、または、単独に、
図4に示す固定バンド31を使用することができる。この固定用バンド31は、ステンレスまたはアルミニウムからなり、その両端の接合部にボルトを締め付けて固定する。
【0026】
(構造体の組立て)
図3に示す構造体ユニット3の複数を一定の間隔をおいて平行に配列し、
図1に示すプラスチック製の棒材を横材11として、ユニットの幹材1に直角に固定して、幹材1が格子状に配列した
図5に示す浮き構造体10を作成した。
【0027】
浮き構造体10の作成に際してのこの横材11の構造体ユニット3への固定は、
図6に示すように、構造体のユニット3の上方の幹材1に、
図1に示す幹材を横材11として使用し、番線12によって固定して、格子状に配列した幹材1を有する
図5に示す牡蠣養殖用の浮き構造体10を得た。
【0028】
(組立て構造体の波浪テスト)
実施例1によって得られた浮子構造体10の下方幹材に、400本の網に稚牡蠣を取り付けて吊り下げ、内海の牡蠣の養殖場において、耐波浪試験を行った結果、稚牡蠣の成長の時期までの6ヶ月間、放置した。
【0029】
その結果、浮き構造体10は、生け簀を設置したときの浮子2のほぼ2/3が海面上に浮き出た状態から、牡蠣の成長期には、牡蠣の成長に伴って網は重くなり、収穫期には、浮子のほぼ1/4だけが海面上に浮き出た状態となったが、成長した牡蠣の収穫には何らの支障がなかった。
【0030】
また、この期間、設置した生け簀の浮子構造体を構成する幹材1と浮子2には、何の問題も生じなかった。
【0031】
実施例2
実施例2は、
図7及び
図8に示すもので、本発明を回遊魚の生け簀用に適用した例を示す。
【0032】
本発明を、いわし、ハマチ、鯛等の小形回遊魚類の生け簀用として、上記実施例1に示した牡蠣の養殖用生け簀のための浮子構造体を
図6に示す円形の浮子構造体20に適用した例を示す。
【0033】
図6において、円形の浮子構造体20は、
図3に示す構造体ユニット3を幹材1の曲げ性を利用して曲げ、これを複数個、連結具4を利用して円形状に連結する。そして、この円形を構成する浮子構造体に、逃亡防止用の網を一面に吊り下げて生け簀として利用する。
【0034】
この連結具4は、
図3に示す構造体ユニット3の端部を幾分長めにとり、構造体ユニット3を幹材1の曲げ性を利用して曲げ、その端部の間を、
図8に示す連結具4のコの字の空間を利用して連結し、これを、ボルト穴のような連結穴にボルトのような手段で固定する。
【0035】
これによって、円形の浮子構造体20の下方幹材に枠に網を釣り下げて、円筒状の生け簀を形成する。
【0036】
実施例3
図9と
図10に示すもので、本発明を牡蠣養殖生け簀用に適用した第2の例30を示す。
【0037】
(幹材の構造と組立)
図9に示すように、平行に配列した複数の下方列12と、この下方列に直交して平行に配列した上方列13とから格子状の幹材を形成し、幹材1の下方列12と上方列13とを格子状に組立てて、縦横同一間隔の格子状幹材とした。
【0038】
幹材1の下方列12と上方列13とを固定する手段としては、その交差箇所を針金によって緊締の他に、締め付け金具や、上方列13の上面と下方列の下面に当板を配置しその間をボルトによって固定するという手段も採用できる。
【0039】
(浮子の構造と組立)
図9と
図10に示すように、この牡蠣の養殖用生け簀30は、下方の平行な幹材列12の上に、上方列の平行な幹材列13を配置して、鉄線その他の幹材連結具によって、上下幹材の交差位置を固定して格子状に形成し、この格子状の幹材1に浮子2を懸垂したものである。
【0040】
この浮子2は、グラスファイバー、硬質プラスチック材等で作られた円筒タンク状をなし、その上面には、浮力調整のための海水導入口25が設けられており、下方の幹材列12を挟んで取り付けた浮子懸垂用板23に取り付けた浮子懸垂用針金24によって支持懸垂する。
【0041】
浮子2に設けられた海水導入口25から海水を導入することによって、養殖用生け簀30全体の浮力を低下させて、波浪が激しい場合には、養殖用生け簀30全体を波面下に沈下させて波面の影響を少なくして、破損を防ぐ効果がある。
【0042】
(浮子と幹材との取付け)
その浮子は、格子状の幹材の下方列12の間と浮子の下面に懸垂用板材23を2組配置し、それぞれの懸垂用板材を利用して、前後2箇所で番線を浮子の回りに渡す浮子懸垂用針金24によって浮子を懸垂する。
これによって、1つの下方列12と1つの上方列13からなる格子状幹材1の下方列12に、一定間隔でタンク状の浮子を懸垂した浮子構造体30が得られる。
【0043】
実施例4
図11に示すとおり、実施例3で使用したものと同様に浮力調整を可能にした浮子2を利用して回遊魚の生け簀用とした第2の例40を示す。
【0044】
この例の場合、適宜の間隔で配置された浮子2の上下を幹材1によって連結し、上下の幹材1の間に支持板23を設け、上下の支持板23の間に浮子2を配置し、針金24によって固定したものである。4は、実施例3においても使用している幹材1を曲げた状態で連結し強化するための連結具である。
【0045】
これによって、比較的、簡単な構造でありながら、強度の高い生け簀が得られる。