特許第5700794号(P5700794)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5700794
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】磁石埋込型ロータ、及びモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20060101AFI20150326BHJP
【FI】
   H02K1/27 501C
   H02K1/27 501K
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-11285(P2011-11285)
(22)【出願日】2011年1月21日
(65)【公開番号】特開2012-157090(P2012-157090A)
(43)【公開日】2012年8月16日
【審査請求日】2013年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101352
【氏名又は名称】アスモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】内海 暁弘
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 章友
(72)【発明者】
【氏名】石野 行秀
【審査官】 マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−039048(JP,U)
【文献】 特開2006−296020(JP,A)
【文献】 特開2005−57885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータの磁極と対向してロータコアの周方向に複数の磁石磁極が形成され、前記磁石磁極内に永久磁石を埋め込む態様で構成された磁石埋込型ロータであって、
前記磁石磁極は、前記ロータコアと一体形成され前記永久磁石の反ステータ側に設けられた反ステータ側磁極部と、前記永久磁石のステータ側に設けられ前記永久磁石の収容部を開放可能とすべく前記反ステータ側磁極部に対して分離可能とされたステータ側磁極部とから構成され、
前記ロータコアの軸方向両側に備えられる保持部材にてそれぞれ前記ステータ側磁極部の軸方向端部を保持し、該ステータ側磁極部と前記反ステータ側磁極部とのそれぞれに対して前記永久磁石を隙間なく当接させて該ステータ側磁極部と前記反ステータ側磁極部とで前記永久磁石を挟圧保持するように構成されたことを特徴とする磁石埋込型ロータ。
【請求項2】
請求項1に記載の磁石埋込型ロータにおいて、
前記ステータ側磁極部は、その軸方向の長さが前記永久磁石の軸方向の長さより長くなるように構成され、該ステータ側磁極部は、軸方向において、前記永久磁石の軸方向端を越えて延びる軸方向端部を有し、
前記保持部材は、軸方向に凹む挿入部が設けられ、該挿入部は、前記ステータ側磁極部の前記軸方向端部と圧接する圧入部分を有していることを特徴とする磁石埋込型ロータ。
【請求項3】
請求項2に記載の磁石埋込型ロータにおいて、
記ステータ側磁極部の反ステータ側部分との間には隙間が生じるように構成されたことを特徴とする磁石埋込型ロータ。
【請求項4】
ステータの磁極と対向してロータコアの周方向に複数の磁石磁極が形成され、前記磁石磁極内に永久磁石を埋め込む態様で構成された磁石埋込型ロータであって、
前記磁石磁極は、前記ロータコアと一体形成され前記永久磁石の反ステータ側に設けられた反ステータ側磁極部と、前記永久磁石のステータ側に設けられ前記永久磁石の収容部を開放可能とすべく前記反ステータ側磁極部に対して分離可能とされたステータ側磁極部とから構成され、
前記ロータコアの軸方向両側に備えられる保持部材にてそれぞれ前記ステータ側磁極部の軸方向端部を保持し、該ステータ側磁極部と前記反ステータ側磁極部とで前記永久磁石を挟圧保持するように構成され、
前記保持部材は、前記ステータ側磁極部の軸方向端部を挿入して保持するように軸方向に形成された挿入部が設けられ、
前記挿入部には、前記ステータ側磁極部の軸方向端部における周方向の一部が挿入され、
前記保持部材には、前記ステータ側磁極部の挿入された以外の部分をステータ側に露出させる開口部分が設けられたことを特徴とする磁石埋込型ロータ。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の磁石埋込型ロータにおいて、
前記ステータ側磁極部は、前記保持部材の軸方向間のステータ側面に前記挿入部に挿入する部分よりステータ側に突出する突出部分が設けられたことを特徴とする磁石埋込型ロータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁石埋込型ロータにおいて、
前記ロータコアの軸方向両側に備えられる保持部材の少なくとも一方には、軸方向に突出し前記磁石磁極の周方向両側と係合する係合部が設けられたことを特徴とする磁石埋込型ロータ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁石埋込型ロータを備えたことを特徴とするモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石埋込型ロータ、及び該ロータを備えたモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータに用いられるロータとして、磁石埋込型(以下、IPM型という)ロータが知られている。IPM型ロータとしては、例えば特許文献1にて示されているように、コアシートを複数枚積層させたロータコアに収容孔(軸線方向孔)が周方向に所定間隔に形成され、該収容孔に永久磁石を挿入して磁石磁極が構成されたものがある。このような構造のロータでは、ロータコアの軸方向の両側に保持部材(ベース部材)が設けられ、永久磁石及びロータコアが保持部材にて軸方向両側から保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4163953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のIPM型構造のロータでは、永久磁石を収容孔内に挿入する構成としていることで、永久磁石の端部周縁のロータコアの一部が径方向に繋がった枠形状をなしている。そのため、その端部周縁のロータコアの一部で漏れ磁束が生じ、永久磁石の有効磁束が低減することになる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、IPM型構造を採用したロータにおいて、漏れ磁束の低減を図り、モータトルクを向上させることができるロータ、及びそのロータを備えるモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ステータの磁極と対向してロータコアの周方向に複数の磁石磁極が形成され、前記磁石磁極内に永久磁石を埋め込む態様で構成された磁石埋込型ロータであって、前記磁石磁極は、前記ロータコアと一体形成され前記永久磁石の反ステータ側に設けられた反ステータ側磁極部と、前記永久磁石のステータ側に設けられ前記永久磁石の収容部を開放可能とすべく前記反ステータ側磁極部に対して分離可能とされたステータ側磁極部とから構成され、前記ロータコアの軸方向両側に備えられる保持部材にてそれぞれ前記ステータ側磁極部の軸方向端部を保持し、該ステータ側磁極部と前記反ステータ側磁極部とのそれぞれに対して前記永久磁石を隙間なく当接させて該ステータ側磁極部と前記反ステータ側磁極部とで前記永久磁石を挟圧保持するように構成されたことをその要旨とする。
【0007】
この発明では、所謂IPM型構造のロータにおいて、永久磁石を埋め込む態様で構成される磁石磁極は、ロータコアと一体形成された反ステータ側磁極部と、永久磁石の収容部を開放可能とすべく反ステータ側磁極部に対して分離可能とされたステータ側磁極部とから構成される。そして、ロータコアの軸方向両側に備えられる保持部材にてそれぞれステータ側磁極部の軸方向両端部分を保持し、該反ステータ側磁極部とステータ側磁極部とで永久磁石が挟圧保持される。つまり、反ステータ側磁極部とステータ側磁極部とを分離構造としたことにより各磁極部間の磁気抵抗が高くなるため、永久磁石の端部周縁に生じ得る漏れ磁束が低減される。結果、永久磁石の有効磁束の増加に繋がり、モータトルクを向上させることが可能となる。また、磁石磁極は、ステータ側磁極部と反ステータ側磁極部とで永久磁石を挟圧保持して構成されることで、永久磁石とステータ側及び反ステータ側磁極部との間の隙間(クリアランス)が極めて小さくなる。このことによっても永久磁石の有効磁束の増加、ひいてはモータトルクの向上に繋がる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の磁石埋込型ロータにおいて、前記ステータ側磁極部は、その軸方向の長さが前記永久磁石の軸方向の長さより長くなるように構成され、該ステータ側磁極部は、軸方向において、前記永久磁石の軸方向端を越えて延びる軸方向端部を有し、前記保持部材は、軸方向に凹む挿入部が設けられ、該挿入部は、前記ステータ側磁極部の前記軸方向端部と圧接する圧入部分を有していることをその要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の磁石埋込型ロータにおいて、前記ステータ側磁極部の反ステータ側部分との間には隙間が生じるように構成されたことをその要旨とする。
【0011】
この発明では、挿入部へのステータ側磁極部の圧入時に、該ステータ側磁極部の端部が隙間側に逃げることが可能となるため、圧入作業が容易となり、また寸法誤差等の吸収を図ることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、ステータの磁極と対向してロータコアの周方向に複数の磁石磁極が形成され、前記磁石磁極内に永久磁石を埋め込む態様で構成された磁石埋込型ロータであって、前記磁石磁極は、前記ロータコアと一体形成され前記永久磁石の反ステータ側に設けられた反ステータ側磁極部と、前記永久磁石のステータ側に設けられ前記永久磁石の収容部を開放可能とすべく前記反ステータ側磁極部に対して分離可能とされたステータ側磁極部とから構成され、前記ロータコアの軸方向両側に備えられる保持部材にてそれぞれ前記ステータ側磁極部の軸方向端部を保持し、該ステータ側磁極部と前記反ステータ側磁極部とで前記永久磁石を挟圧保持するように構成され、前記保持部材は、前記ステータ側磁極部の軸方向端部を挿入して保持するように軸方向に形成された挿入部が設けられ、前記挿入部には、前記ステータ側磁極部の軸方向端部における周方向の一部が挿入され、前記保持部材には、前記ステータ側磁極部の挿入された以外の部分をステータ側に露出させる開口部分が設けられたことをその要旨とする。
この発明では、所謂IPM型構造のロータにおいて、永久磁石を埋め込む態様で構成される磁石磁極は、ロータコアと一体形成された反ステータ側磁極部と、永久磁石の収容部を開放可能とすべく反ステータ側磁極部に対して分離可能とされたステータ側磁極部とから構成される。そして、ロータコアの軸方向両側に備えられる保持部材にてそれぞれステータ側磁極部の軸方向両端部分を保持し、該反ステータ側磁極部とステータ側磁極部とで永久磁石が挟圧保持される。つまり、反ステータ側磁極部とステータ側磁極部とを分離構造としたことにより各磁極部間の磁気抵抗が高くなるため、永久磁石の端部周縁に生じ得る漏れ磁束が低減される。結果、永久磁石の有効磁束の増加に繋がり、モータトルクを向上させることが可能となる。また、磁石磁極は、ステータ側磁極部と反ステータ側磁極部とで永久磁石を挟圧保持して構成されることで、永久磁石とステータ側及び反ステータ側磁極部との間の隙間(クリアランス)が極めて小さくなる。このことによっても永久磁石の有効磁束の増加、ひいてはモータトルクの向上に繋がる。
また、保持部材には軸方向に形成された挿入部が設けられ、軸方向両側に設けられる保持部材の挿入部のそれぞれにステータ側磁極部の軸方向両端部分が挿入され該磁極部が保持される。これにより、ステータ側磁極部を保持する構造を簡易な構成とすることができる。
【0013】
この発明では、保持部材に設けた挿入部には、ステータ側磁極部の軸方向端部における周方向の一部が挿入される。そして、保持部材には、ステータ側磁極部の挿入された以外の部分をステータ側に露出させる開口部分が設けられる。これにより、ステータ側磁極部は、軸方向端部における周方向の挿入された以外の部分がステータ側に開口部分から露出されることでステータに直接対向する磁束発生面を広くすることができ、有効磁束の増加を図ることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明では、請求項2〜4のいずれか1項に記載の磁石埋込型ロータにおいて、前記ステータ側磁極部は、前記保持部材の軸方向間のステータ側面に前記挿入部に挿入する部分よりステータ側に突出する突出部分が設けられたことをその要旨とする。
【0015】
この発明では、ステータ側磁極部は、保持部材の軸方向間のステータ側面に、挿入部に挿入する部分よりステータ側に突出する突出部分が設けられる。これにより、ステータ側磁極部とステータとの間の隙間がその突出部分で小さくなるため、有効磁束の増加を図ることができる。
【0016】
請求項6に記載の発明では、請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁石埋込型ロータにおいて、前記ロータコアの軸方向両側に備えられる保持部材の少なくとも一方には、軸方向に突出し前記磁石磁極の周方向両側と係合する係合部が設けられたことをその要旨とする。
【0017】
この発明では、ロータコアの軸方向両側に備えられる保持部材の少なくとも一方には、軸方向に突出し磁石磁極の周方向両側と係合する係合部が設けられる。これにより、永久磁石は係合部により周方向両側からも保持されるため、永久磁石の位置ずれ等を確実に防止することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明では、請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁石埋込型ロータを備えたモータである。
この発明では、漏れ磁束が低減され、モータトルクの向上が図られたモータを提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、IPM型構造を採用したロータにおいて、漏れ磁束の低減を図り、モータトルクを向上させることができるロータ、及びそのロータを備えるモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態におけるモータの概略構成図である。
図2】本実施形態におけるロータの分解斜視図である。
図3】本実施形態におけるロータの断面図である。
図4】(a)は別例におけるロータの断面図であり、(b)は別例におけるカバー部材及び外側磁極部の組み付けを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態のモータMは、インナロータ型のブラシレスモータであり、モータケース1の内部に、ステータ2及びロータ20を収容して構成されている。モータケース1は、有底円筒状のケース本体3と、該ケース本体3の開口部を閉塞する略円板状のカバープレート4とから構成されている。ケース本体3の内周面には、円環状のステータ2が固定され、該ステータ2のティース5には、ロータ20を回転させる回転磁界を発生させるための巻線磁極6が巻装されている。
【0022】
ステータ2の内側には、回転軸7を備えるロータ20が配置されている。略円柱状に形成された回転軸7の基端部は、前記ケース本体3の底部中央に設けられた軸受8によって軸支される一方、該回転軸7の先端側の部位は、前記カバープレート4の径方向の中央部に設けられた軸受9によって軸支されている。また、回転軸7の先端部は、カバープレート4の径方向の中央部を貫通してモータケース1の外部に突出している。
【0023】
図1及び図2に示すように、回転軸7には、ステータ2と径方向に対向するようにその軸方向の中央部よりも基端部寄りの部位に略円柱状のロータコア21が配置されている。ロータコア21は、後述の内側磁極部27と突極31とが一体形成されたコア本体部分21aと、外側磁極部28とで構成されている。コア本体部分21aは、磁性金属板材からなるコアシート22を軸方向に複数枚積層し互いにかしめにより連結して構成され、外周面には軸方向に沿って永久磁石23が当接して配置されている。またロータ20には、ロータコア21の基端側に配置されたカバー部材24と、該カバー部材24と対向してロータコア21の先端側に配置されたカバー部材25とが該ロータコア21の軸方向の両側に配置されている。そして、ロータ20は、各カバー部材24,25が外側磁極部28の軸方向端部を保持し、その外側磁極部28と内側磁極部27とで永久磁石23が挟圧保持される構造となっている。
【0024】
回転軸7におけるロータコア21と軸受9との間には、円環状に形成され周方向に複数の磁極を有するセンサマグネット11が固定されている。これに対し、前記カバープレート4の内側面4aには回路基板12が固定され、該回路基板12上にはセンサマグネット11と軸方向に対向する位置に例えばホールIC等よりなる磁気センサ13が配置されている。磁気センサ13は、ロータ20の回転位置を検出すべく、センサマグネット11の回転に伴う磁界変化を検出する。
【0025】
次に、ロータ20の構成について詳細に説明する。
ロータコア21(コア本体部分21a)は、円環状に形成され中央部分に圧入孔21bが設けられ、該圧入孔21bへの回転軸7の圧入にて該回転軸7に対して固定されている。ロータコア21の外周部分には、永久磁石23が配置された磁石磁極26が周方向に(90°間隔に)4個形成されている。各磁石磁極26は、ロータコア21のコア本体部分21aと一体形成され永久磁石23の径方向内側(反ステータ側)に設けられた内側磁極部(反ステータ側磁極部)27と、永久磁石23の径方向外側(ステータ側)に配置され内側磁極部27と別体で設けられた外側磁極部(ステータ側磁極部)28とから構成されている。内側磁極部27は、径方向外側に突出した凸形状をなしその凸形状の先端部分は平坦面27aをなしており、各平坦面27aに永久磁石23がそれぞれ(全部で4個)配置されている。永久磁石23は、略直方体に形成され長手方向が軸方向に沿って配置されている。永久磁石23の径方向内側の内側平坦面23aは、内側磁極部27の平坦面27aと当接して配置されている。
【0026】
永久磁石23の径方向外側には、長方形板状をなす外側磁極部28が配置されている。外側磁極部28は、磁性金属板材からなる略直方体のコア部材29を周方向に複数個積層し互いにかしめにより連結して構成されている。永久磁石23の径方向外側の外側平坦面23bは、外側磁極部28の径方向内側の平坦面28aと当接して配置されている。
【0027】
内側及び外側磁極部27,28は、周方向の長さが永久磁石23と同じ長さに形成されている。また、各内側磁極部27と永久磁石23とは、軸方向の長さが同じ長さとなるように構成されている。そして、内側及び外側磁極部27,28は永久磁石23を径方向両側から挟み込み、該永久磁石23をそれぞれ埋め込む態様で収容して磁石磁極26を構成している。このように永久磁石23を埋設する態様であっても、外側磁極部28を分離構造としたことで永久磁石23の収容部を開放状態として永久磁石23の組み付けを行うことが可能なため、この組み付け作業が容易であり、しかも内側磁極部27と外側磁極部28とのそれぞれに対して永久磁石23が隙間無く当接可能に組み付けられる。
【0028】
磁石磁極26は、径方向外側に突出した形状に構成され、内側及び外側磁極部27、28と永久磁石23の周方向両端部分は磁石磁極26の磁極中心線(外側平坦面23bの中央位置から径方向に延びる線)に沿って面一に形成されている。その突出形状の各磁石磁極26間には、ロータコア21の外周部に一体形成された突極31がそれぞれ磁石磁極26と軸方向から見て一定面積の空隙Kを設けて形成されている。因みに、空隙Kは、磁石磁極26の側面と、突極31の側面とで周方向の面が構成され、径方向内側から外側の開口部分に向かうに連れてその周方向の幅が広くなる扇形状をなしている。
【0029】
ロータ20の軸方向両側には、略円板状のカバー部材24,25が配置されている。各カバー部材24,25は、その外径がロータコア21の外径(この場合、突極31部分での外径)と等しく形成されている。各カバー部材24,25は、径方向の中央部分に固定孔24a,25aがそれぞれ設けられ、各固定孔24a,25aへの回転軸7の圧入にて該回転軸7に対して固定されている。両カバー部材24,25は、回転軸7が圧入されることにより、該回転軸7及びロータコア21と一体回転可能に固定される。
【0030】
各カバー部材24,25には、軸方向に突出し断面形状が前記空隙Kの扇形状に合わせて形成され各磁極26,31及び永久磁石23の周方向両端部に係合する係合部24b,25bがそれぞれ設けられている。また、各カバー部材24,25には、外側磁極部28の軸方向端部部分をそれぞれ挿入して保持するように断面形状が略長方形に凹設された挿入溝24c,25cが周方向に磁石磁極26の位置に応じて(全部で4個)それぞれ形成されている。挿入溝24c,25cは、径方向外側に位置する外側の側面24d,25dが外側磁極部28の同側の平坦面28bの軸方向端部と圧接する圧入部分として設けられている。そして、各挿入溝24c,25cの側面24d,25dと外側磁極部28の外側の平坦面28bとが圧接するようにして各カバー部材24,25が回転軸7に固定される。これにより、外側磁極部28は、該磁極部28自身と内側磁極部27とで永久磁石23を挟持するように固定されることとなる。
【0031】
また、このカバー部材24,25の取り付け状態では、挿入溝24c,25cの近傍に設けた各係合部24b,25bが各磁極26,31及び永久磁石23の周方向両端部に当接する。更に、各カバー部材24,25のロータコア21側の面は、ロータコア21及び永久磁石23の軸方向端面にも当接する。これにより、永久磁石23は、外側磁極部28と内側磁極部27とによる径方向の保持のみならず、周方向及び軸方向の保持(移動規制)が図られている。
【0032】
因みに、図3に示すように、各挿入溝24c,25cの溝幅(径方向長さ)は、外側磁極部28の厚さよりも大となるように形成されており、径方向内側に位置する各挿入溝24c,25cの内側の側面24e,25eと外側磁極部28の径方向内側の平坦面28aとの間に隙間Sが生じるように構成されている。この隙間Sは、外側磁極部28の軸方向端部が各挿入溝24c,25cに挿入された際の逃げ空間として機能する。また、各カバー部材24,25においては、挿入溝24c,25cがその径方向外側部24f,25fよりも内側に位置しているため、その挿入溝24c,25cに挿入される外側磁極部28(磁石磁極26)は、ロータ20の最外周よりも若干内側に後退した位置となっている。
【0033】
そして、このようなロータ20は、径方向外側面がN極となるように各永久磁石23が配置されて磁石磁極26がN極磁極として構成されるとともに、各磁石磁極26間の突極31がS極磁極として機能することで、45°等間隔の8磁極の所謂コンシクエントポール型(ハーフマグネット型)にて構成されている。また、永久磁石23はロータコア21に埋め込む態様で組み付けられることから、ロータ20は磁石埋込型ロータであり、ブラシレスモータMは所謂IPM型モータでもある。
【0034】
次に、本実施形態の作用について説明する。
本実施形態のロータ20では、磁石磁極26を内側磁極部27と外側磁極部28との別体で構成し、その径方向の間に永久磁石23が挟み込まれるようにして配置される。この場合、内側及び外側磁極部27,28は、永久磁石23の周方向両端周縁部分が非当接で離間した状態となっている。これにより、ロータ20は、内側及び外側磁極部27,28を非当接としたことにより相互の磁気抵抗が高くなるため、永久磁石23の端部周縁に生じ得る漏れ磁束が低減され、永久磁石23の有効磁束が増加するようになっている。尚、各カバー部材24,25を非磁性体で形成することでより好適に漏れ磁束の低減が可能となる。
【0035】
また、外側磁極部28の軸方向両端部分が各カバー部材24,25の各挿入溝24c,25cに圧入されて外側磁極部28の固定が行われていることで、永久磁石23が内側及び外側磁極部27,28で好適に挟圧保持される。ここで、ロータコアの収容孔に永久磁石を挿入する態様の従来のIPM型構造のロータでは、永久磁石をスリット部内への挿入を円滑に行う必要があることから、永久磁石の外側面とスリット部内側面との間に隙間(クリアランス)が設定されている。これが、永久磁石23の有効磁束の低減、ひいてはモータトルクの低下させる一要因となる。これに対し本実施形態では、永久磁石23と内側及び外側磁極部27,28とが面全体で隙間なく当接状態となるため、このことでも永久磁石23の有効磁束が増加するようになっている。
【0036】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)本実施形態のロータ20において、永久磁石23を埋め込む態様で構成された磁石磁極26は、ロータコア21と一体形成された内側磁極部27と、内側磁極部27と別体で設けられた外側磁極部28とから構成される。ロータコア21の軸方向の両側に設けられたカバー部材24,25にて各外側磁極部28の軸方向両端部分を保持し、内側及び外側磁極部27,28にて永久磁石23が挟圧保持される。そして、内側磁極部27と外側磁極部28とは、永久磁石23の周方向両端周縁部分が非当接で離間した状態で固定される。これにより、ロータ20は、内側及び外側磁極部27,28を非当接としたことにより相互の磁気抵抗が高くなるため、永久磁石23の端部周縁に生じ得る漏れ磁束が低減される。結果、永久磁石23の有効磁束の増加に繋がり、モータトルクを向上させることができる。
【0037】
(2)磁石磁極26は、内側及び外側磁極部27,28で永久磁石23を径方向両側から挟圧保持して構成されることで、永久磁石23と内側及び外側磁極部27,28との間の隙間(クリアランス)が極めて小さくなる。これにより、永久磁石23の有効磁束を増加、ひいてはモータトルクを向上させることができる。
【0038】
(3)各カバー部材24,25には、軸方向に凹設された挿入溝24c,24cが設けられ、軸方向両側に設けられる各カバー部材24,25の挿入溝24c,24cのそれぞれに外側磁極部28の軸方向両端部分が挿入され該外側磁極部28が保持される。これにより、外側磁極部28を保持する構造を簡易な構成とすることができる。
【0039】
(4)各挿入溝24c,25cには、外側磁極部28の平坦面28bを圧接させる側面24d,25dが設けられる。そして、各挿入溝24c,25cは、外側磁極部28の径方向内側の平坦面28aとの間に隙間Sが生じるようにその溝幅(径方向長さ)を外側磁極部28の厚さよりも大きくして構成される。これにより、各挿入溝24c,25cへの外側磁極部28の圧入時に、該外側磁極部28の端部が隙間S側に逃げることが可能となるため、圧入作業が容易となり、また寸法誤差等の吸収を図ることができる。
【0040】
(5)ロータコア21の軸方向両側に設けられた各カバー部材24,25には、軸方向に突出し、磁石磁極26の周方向両側と係合する係合部24b,25bがそれぞれ設けられる。これにより、永久磁石23はその係合部24b,25bにより周方向両側からも保持されるため、永久磁石23の位置ずれ等を確実に防止することができる。
【0041】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、各カバー部材24,25の挿入溝24c,25cに、外側磁極部28の平坦面28bが周方向全体に亘って圧接するように挿入されていたがこれに限定されない。
【0042】
例えば、図4(a)(b)に示すように、各挿入溝24c,25cに外側磁極部28の軸方向端部における両角部(周方向の一部)のみを挿入する構成に変更する。また、各挿入溝24c,25cより外側の径方向外側部24f,25fに外側磁極部28の軸方向端部の中央部分を径方向外側(ステータ2側)に露出させる開口部24g,25gを設けてもよい。この場合、外側磁極部28は、軸方向両端部分の両角部に径方向内側に凹状をなす凹設部28cが設けられ、換言すれば凹設部28c以外の部分が径方向外側に膨出した形状をなしている。そして、外側磁極部28は、凹設部28cを設けた角部を各挿入溝24c,25cに圧入、この場合、径方向外側面では各挿入溝24c,25cの側面24d,25dに圧接、径方向内側面では各挿入溝24c,25cの側面24e,25eと隙間Sを有して組み付けられる。
【0043】
これにより、外側磁極部28は、各挿入溝24c,25cに挿入される軸方向端部の両角部以外の部分が径方向外側(ステータ2側)に開口部24g,25gから露出することでステータに直接対向する磁束発生面を広くすることができ、有効磁束を増加させることできる。しかも、各挿入溝24c,25cに外側磁極部28の軸方向端部における両角部(周方向の一部)のみを挿入する構成としたことで、外側磁極部28の圧入荷重が軽減され、圧入作業が容易となる。更に、図4(a)に示すように、外側磁極部28は、各挿入溝24c,25cに挿入される軸方向端部の両角部以外の部分がロータ20の最外周まで膨出しているため、外側磁極部28、即ち磁石磁極26と対向するステータ2との隙間を小さくすることで、有効磁束を増加させることができる。
【0044】
・上記実施形態では、各カバー部材24,25の挿入部として、軸方向に凹設した挿入溝24c,25cとしたが、これに限定されず、例えば軸方向に貫通した貫通孔として挿入部を構成してもよい。また、各カバー部材24,25の挿入部に外側磁極部28の軸方向端部を挿入していたが、カバー部材24,25に凸部、外側磁極部28に凹部を設けて凹凸嵌合関係を逆にしてもよい。
【0045】
・上記実施形態では、挿入溝24c,25cに挿入される外側磁極部28の軸方向端部は僅かであるが、例えば挿入溝24c,25cより外側の径方向外側部24f,25fの一部又は全体を軸方向に延設し、外側磁極部28の外側の平坦面28bにおいて軸方向に広い範囲で当接させるようにしてもよい。この場合、外側磁極部28の軸方向端部の限られた部分での挿入溝24c,25cへの圧入では、軸方向中央部分が径方向に湾曲しがちであるため、径方向外側部24f,25fを軸方向に延長することで、その湾曲形状となることが低減される。
【0046】
・上記実施形態では、磁石磁極26において内側及び外側磁極部27,28が永久磁石23の周方向両側で離間した状態としたが、これに限定されない。漏れ磁束を低減させる観点では互いの部材を離間させることが好ましいが、例えば内側及び外側磁極部27,28を当接させた構成としてもよい。この場合、内側及び外側磁極部27,28の当接部分では、一体構成のものと比べて磁気抵抗は高いため、発生する漏れ磁束は小さい。
【0047】
・上記実施形態では、外側磁極部28において略直方体のコア部材29を周方向に積層して構成したが、これに限定されず、コア部材29を軸方向に積層する構成や、これら積層型に限らず磁性粉体の圧縮成形にて外側磁極部28を構成してもよい。また、ロータコア21のコア本体部分21aにおいても、磁性粉体の圧縮成形にて構成してもよい。
【0048】
・上記実施形態では、各カバー部材24,25を略円環状に構成したが、これに限定されない。例えば、カバー部材24,25において磁石磁極26部分を残し、突極31部分を省略した形状としてもよい。
【0049】
・上記実施形態では、ロータコア21を圧入孔21bにて回転軸7に外嵌固定したが、これに限定されず、例えばカバー部材24,25にてロータコア21を保持できれば、ロータコア21の中心孔を回転軸7の外径よりも大きく形成し、ロータコア21と回転軸7とを非当接として構成してもよい。これにより、ロータコア21の軽量化が図られ、また回転軸7への漏れ磁束が低減される。
【0050】
・上記実施形態でのロータ20の磁極数は一例であり、適宜変更してもよい。
・上記実施形態では、インナロータ型のモータMに用いられるロータ20に適用したが、アウタロータ型のモータのロータに適用してもよい。この場合、ロータとステータとの径方向の対向関係が逆になる。
・上記各実施形態では、ロータ20の周方向に磁石磁極26と突極31とを交互に配置させたハーフマグネット型のIPM型モータに適用したが、これに限定されず、全磁極を磁石磁極26で構成したフルマグネット型のIPM型モータに適用してもよい。
【符号の説明】
【0051】
2…ステータ、6…巻線磁極(ステータの磁極)、21…ロータコア、23…永久磁石、24,25…カバー部材(保持部材)、24b,25b…係合部、24c,25c…挿入溝(挿入部)、24d,25d…側面(圧入部分)、24g,25g…開口部(開口部分)、26…磁石磁極、27…内側磁極部(反ステータ側磁極部)、28…外側磁極部(ステータ側磁極部)、S…隙間。
図1
図2
図3
図4