特許第5700802号(P5700802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5700802
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】岩石の品質評価方法及び岩石の品質評価装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/24 20060101AFI20150326BHJP
   G01N 3/52 20060101ALI20150326BHJP
   G01N 3/00 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
   G01N33/24 Z
   G01N3/52
   G01N3/00 D
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2011-33797(P2011-33797)
(22)【出願日】2011年2月18日
(65)【公開番号】特開2012-173064(P2012-173064A)
(43)【公開日】2012年9月10日
【審査請求日】2013年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594051655
【氏名又は名称】株式会社セントラル技研
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 勝利
(72)【発明者】
【氏名】吉田 輝
(72)【発明者】
【氏名】川野 健一
(72)【発明者】
【氏名】小泉 悠
(72)【発明者】
【氏名】池尻 健
【審査官】 草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−150946(JP,A)
【文献】 特開平07−280779(JP,A)
【文献】 特開2006−212933(JP,A)
【文献】 特開2009−204513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/24
G01N 3/00−3/62
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然由来の岩石の品質評価方法であって、
所定の弾性係数測定方法で得られた岩石材料の弾性係数と、所定の吸水率測定方法で得られた前記岩石材料の吸水率と、に基づいて求められる前記岩石材料の弾性係数と吸水率との相関関係を、吸水率相関関係として演算装置に記憶させる吸水率相関関係準備工程と、
加速度センサーと球面形状の打撃面とを有する金属製のハンマーで岩石を打撃し、前記加速度センサーで得られる加速度データに基づいて前記演算装置に前記岩石の弾性係数を算出させる打球探査工程と、
前記打球探査工程で算出された前記弾性係数と、前記吸水率相関関係準備工程で記憶された前記吸水率相関関係と、に基づいて前記演算装置に前記岩石の吸水率を推定させる吸水率推定工程と、
前記吸水率推定工程で得られた吸水率推定値と、前記岩石の用途に応じて予め設定された吸水率基準値との比較に基づいて、前記用途に対する前記岩石の使用可否を判定する使用可否判定工程と、を備えたことを特徴とする岩石の品質評価方法。
【請求項2】
所定の弾性係数測定方法で得られた岩石材料の弾性係数と、所定の密度測定方法で得られた前記岩石材料の密度と、に基づいて求められる前記岩石材料の弾性係数と密度との相関関係を、密度相関関係として演算装置に記憶させる密度相関関係準備工程と、
前記打球探査工程で算出された前記弾性係数と、前記密度相関関係準備工程で記憶された前記密度相関関係と、に基づいて前記演算装置に前記岩石の密度を推定させる密度推定工程と、を更に備え、
前記使用可否判定工程では、
前記吸水率推定工程で得られた吸水率推定値が、前記岩石の用途に応じて予め設定された吸水率基準値以下であり、かつ前記密度推定工程で得られた密度推定値が、前記岩石の用途に応じて予め設定された密度基準値以上である場合には、前記岩石が前記用途に対して使用可能であると判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の岩石の品質評価方法。
【請求項3】
自然由来の岩石の品質評価方法であって、
所定の弾性係数測定方法で得られた岩石材料の弾性係数と、所定の密度測定方法で得られた前記岩石材料の密度と、に基づいて求められる前記岩石材料の弾性係数と密度との相関関係を、密度相関関係として演算装置に記憶させる密度相関関係準備工程と、
加速度センサーと球面形状の打撃面とを有する金属製のハンマーで岩石を打撃し、前記加速度センサーで得られる加速度データに基づいて前記演算装置に前記岩石の弾性係数を算出させる打球探査工程と、
前記打球探査工程で算出された前記弾性係数と、前記密度相関関係準備工程で記憶された前記密度相関関係と、に基づいて前記演算装置に前記岩石の密度を推定させる密度推定工程と、
前記密度推定工程で得られた密度推定値と、前記岩石の用途に応じて予め設定された密度基準値との比較に基づいて、前記用途に対する前記岩石の使用可否を判定する使用可否判定工程と、を備えたことを特徴とする岩石の品質評価方法。
【請求項4】
前記相関関係準備工程における前記所定の弾性係数測定方法は、
前記ハンマーで前記岩石材料を打撃し、前記加速度データに基づいて前記演算装置で前記岩石材料の弾性係数を算出させる方法であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の岩石の品質評価方法。
【請求項5】
前記打球探査工程における前記ハンマーは、
前記打撃面を含む球形状の打撃部を有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の岩石の品質評価方法。
【請求項6】
打球探査工程では、
前記岩石の粒径が15cm以上であり、前記ハンマーの質量が3kg未満であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の岩石の品質評価方法。
【請求項7】
自然由来の岩石の品質評価装置であって、
加速度センサーと球面形状の打撃面とを有する金属製のハンマーと、
前記ハンマーで岩石を打撃したときに前記加速度センサーで得られる加速度データを処理する演算装置と、を備え、
前記演算装置は、
所定の弾性係数測定方法で得られた岩石材料の弾性係数と、所定の吸水率測定方法で得られた前記岩石材料の吸水率と、に基づいて求められる前記岩石材料の弾性係数と吸水率との相関関係を、吸水率相関関係として記憶する吸水率相関関係記憶手段と、
前記加速度センサーで得られる前記加速度データに基づいて前記岩石の弾性係数を算出する弾性係数算出手段と、
前記弾性係数算出手段で算出された前記弾性係数と、前記吸水率相関関係記憶手段に記憶された前記吸水率相関関係と、に基づいて前記岩石の吸水率を推定する吸水率推定手段と、
前記吸水率推定手段で得られた吸水率推定値と、前記岩石の用途に応じて予め設定された吸水率基準値との比較に基づいて、前記用途に対する前記岩石の使用可否を判定する使用可否判定手段と、を有することを特徴とする岩石の品質評価装置。
【請求項8】
前記演算装置は、
所定の弾性係数測定方法で得られた岩石材料の弾性係数と、所定の密度測定方法で得られた前記岩石材料の密度と、に基づいて求められる前記岩石材料の弾性係数と密度との相関関係を、密度相関関係として記憶する密度相関関係記憶手段と、
前記弾性係数算出手段で算出された前記弾性係数と、前記密度相関関係記憶手段に記憶された前記密度相関関係と、に基づいて前記岩石の密度を推定する密度推定手段と、を更に有し、
前記使用可否判定手段は、
前記吸水率推定手段で得られた吸水率推定値が、前記岩石の用途に応じて予め設定された吸水率基準値以下であり、かつ前記密度推定手段で得られた密度推定値が、前記岩石の用途に応じて予め設定された密度基準値以上である場合には、前記岩石が前記用途に対して使用可能であると判定する
ことを特徴とする請求項7に記載の品質評価装置。
【請求項9】
自然由来の岩石の品質評価装置であって、
加速度センサーと球面形状の打撃面とを有する金属製のハンマーと、
前記ハンマーで岩石を打撃したときに前記加速度センサーで得られる加速度データを処理する演算装置と、を備え、
前記演算装置は、
所定の弾性係数測定方法で得られた岩石材料の弾性係数と、所定の密度測定方法で得られた前記岩石材料の密度と、に基づいて求められる前記岩石材料の弾性係数と密度との相関関係を、密度相関関係として記憶する密度相関関係記憶手段と、
前記加速度センサーで得られる前記加速度データに基づいて前記岩石の弾性係数を算出する弾性係数算出手段と、
前記弾性係数算出手段で算出された前記弾性係数と、前記密度相関関係記憶手段に記憶された前記密度相関関係と、に基づいて前記岩石の密度を推定する密度推定手段と、
前記密度推定手段で得られた密度推定値と、前記岩石の用途に応じて予め設定された密度基準値との比較に基づいて、前記用途に対する前記岩石の使用可否を判定する使用可否判定手段と、を有することを特徴とする岩石の品質評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩石の品質評価方法及び品質評価装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建設事業において、自然由来の岩石が様々な用途に使用されている。例えば、コンクリートに使用される骨材は、採石場で採取した岩石を原材料としてJIS等に定められた規格を満足するように製造されたものが使用されている。また、例えば、ロックフィルダム建設において、ダム外周部のロック材には耐久性が要求されるので、建設現場近郊の原石山で採取した岩石のうち、良質なものがロック材として使用される。このような岩石は自然由来であるために、実際には様々な岩種が混在した状態になっていることが多い。よって、用途に適した岩石を効率的に採取するには、事前調査による岩種の確認が必要であると共に、採取中においても岩種の確認を頻繁に行う必要がある。岩石の品質評価の技術としては、例えば、下記非特許文献1,2に記載のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−150946号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】(財)ダム技術センター編,「多目的ダムの建設」,平成17年度版,第5巻,設計II編
【非特許文献2】(財)日本ダム協会編,「フィルダムの施工」,pp.239,表3.5.1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1のpp.87,表25-6に記載されたボーリング調査は、原石山の事前調査として行われる。当該ボーリング調査は原石山に対して50〜100mのグリッド上で実施するものであり、広大な原石山に対して点情報しか得られない。また、岩石の採取中に岩種を判定する方法としては、非特許文献1のpp.116,表15-23や非特許文献2に記載のような判定基準に従い、岩石の目視判定、岩石用ハンマーによる打撃音、及び周辺の地形や地質的組成に関する知識に基づいて、地質エンジニアが岩石の採取中に岩種を判定する。しかしながら、この方法には熟練した地質エンジニアが必要であると共に、判定に個人差が生じる可能性がある。また、非特許文献1のpp.119,表15-26に記載のように、ロックフィルダムのロック材やコンクリート用骨材に適用できる岩石は、その密度又は吸水率で規定されることが一般的である。密度及び吸水率を測定する方法としては、JIS A 1100「粗骨材の密度および吸水率試験」があるが、この試験には一定の時間がかかるので、現場で即座に岩石の品質評価を行うといった運用はできない。
【0006】
このような問題に鑑み、本発明は、採取現場で簡易に実行可能な岩石の品質評価方法及びそれを実行する品質評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、岩石の吸水率や密度は、岩石の弾性係数と相関関係があることを見出し、弾性係数の測定は、吸水率や密度の直接の測定に比べて現場で簡単に行う方法が存在する点に着目して、本発明を完成させた。
【0008】
本発明の岩石の品質評価方法は、自然由来の岩石の品質評価方法であって、所定の弾性係数測定方法で得られた岩石材料の弾性係数と、所定の吸水率測定方法で得られた岩石材料の吸水率と、に基づいて求められる岩石材料の弾性係数と吸水率との相関関係を、吸水率相関関係として演算装置に記憶させる吸水率相関関係準備工程と、加速度センサーと球面形状の打撃面とを有する金属製のハンマーで岩石を打撃し、加速度センサーで得られる加速度データに基づいて演算装置に岩石の弾性係数を算出させる打球探査工程と、打球探査工程で算出された弾性係数と、吸水率相関関係準備工程で記憶された吸水率相関関係と、に基づいて演算装置に岩石の吸水率を推定させる吸水率推定工程と、吸水率推定工程で得られた吸水率推定値と、岩石の用途に応じて予め設定された吸水率基準値との比較に基づいて、用途に対する岩石の使用可否を判定する使用可否判定工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この品質評価方法では、岩石材料の弾性係数と吸水率との相関関係(吸水率相関関係)が演算装置に記憶されている。そして、演算装置は、ハンマーで岩石を打撃したときの加速度データに基づき、当該岩石の弾性係数を算出する。更に、演算装置が、弾性係数と上記吸水率相関関係とに基づいて吸水率推定値を求め、吸水率推定値を吸水率基準値と比較することにより、岩石の使用可否の判定を行うことができる。よって、この品質評価方法によれば、ハンマーで岩石を打撃するといった簡易な作業によって、岩石の採取現場において当該岩石の使用可否をその場で判定することが可能になる。
【0010】
または、本発明の岩石の品質評価方法は、所定の弾性係数測定方法で得られた岩石材料の弾性係数と、所定の密度測定方法で得られた岩石材料の密度と、に基づいて求められる岩石材料の弾性係数と密度との相関関係を、密度相関関係として演算装置に記憶させる密度相関関係準備工程と、打球探査工程で算出された弾性係数と、密度相関関係準備工程で記憶された密度相関関係と、に基づいて演算装置に岩石の密度を推定させる密度推定工程と、を更に備え、使用可否判定工程では、吸水率推定工程で得られた吸水率推定値が、岩石の用途に応じて予め設定された吸水率基準値以下であり、かつ密度推定工程で得られた密度推定値が、岩石の用途に応じて予め設定された密度基準値以上である場合には、岩石が用途に対して使用可能であると判定することとしてもよい。
【0011】
この構成によれば、岩石材料の弾性係数と密度との相関関係(密度相関関係)も演算装置に記憶されている。そして、演算装置は、弾性係数と上記密度相関関係とに基づいて密度推定値を求め、使用可否判定工程においては、吸水率推定値と吸水率基準値との比較及び密度推定値と密度基準値との比較に基づいて、岩石の使用可否の判定を行うことができる。よって、この品質評価方法によれば、岩石の吸水率のみならず密度も基準とした使用可否判定を行うことができる。
【0012】
本発明の岩石の品質評価方法は、自然由来の岩石の品質評価方法であって、所定の弾性係数測定方法で得られた岩石材料の弾性係数と、所定の密度測定方法で得られた岩石材料の密度と、に基づいて求められる岩石材料の弾性係数と密度との相関関係を、密度相関関係として演算装置に記憶させる密度相関関係準備工程と、加速度センサーと球面形状の打撃面とを有する金属製のハンマーで岩石を打撃し、加速度センサーで得られる加速度データに基づいて演算装置に岩石の弾性係数を算出させる打球探査工程と、打球探査工程で算出された弾性係数と、密度相関関係準備工程で記憶された密度相関関係と、に基づいて演算装置に岩石の密度を推定させる密度推定工程と、密度推定工程で得られた密度推定値と、岩石の用途に応じて予め設定された密度基準値との比較に基づいて、用途に対する岩石の使用可否を判定する使用可否判定工程と、を備えることを特徴とする。
【0013】
この品質評価方法では、岩石材料の弾性係数と密度との相関関係(密度相関関係)が演算装置に記憶されている。そして、演算装置は、ハンマーで岩石を打撃したときの加速度データに基づき、当該岩石の弾性係数を算出する。更に、演算装置が、弾性係数と上記密度相関関係とに基づいて密度推定値を求め、密度推定値を密度基準値と比較することにより、岩石の使用可否の判定を行うことができる。よって、この品質評価方法によれば、ハンマーで岩石を打撃するといった簡易な作業によって、岩石の採取現場において当該岩石の使用可否をその場で判定することが可能になる。
【0014】
また、相関関係準備工程における所定の弾性係数測定方法は、ハンマーで岩石材料を打撃し、加速度データに基づいて演算装置で岩石材料の弾性係数を算出させる方法であることとしてもよい。この方法によれば、ハンマー打撃によって得られる岩石の弾性係数から、吸水率推定値又は密度推定値を精度良く得ることができる。
【0015】
また、具体的な構成として、打球探査工程におけるハンマーは、打撃面を含む球形状の打撃部を有することとしてもよい。
【0016】
また、打球探査工程では、岩石の粒径が10cm以上であり、ハンマーの質量が3kg未満であることとしてもよい。粒径が10cm未満の小さい岩石であれば、ハンマー打撃時の衝撃により岩石全体が振動してしまい、岩石の弾性係数を正確に反映した良好な加速度データを取得することができない。また、ハンマーの質量が3kg未満であれば、持ち運びや取り扱いが容易であり、岩石の採取現場で容易に測定を行うことができる。
【0017】
本発明の品質評価装置は、自然由来の岩石の品質評価装置であって、加速度センサーと球面形状の打撃面とを有する金属製のハンマーと、ハンマーで岩石を打撃したときに加速度センサーで得られる加速度データを処理する演算装置と、を備え、演算装置は、所定の弾性係数測定方法で得られた岩石材料の弾性係数と、所定の吸水率測定方法で得られた岩石材料の吸水率と、に基づいて求められる岩石材料の弾性係数と吸水率との相関関係を、吸水率相関関係として記憶する吸水率相関関係記憶手段と、加速度センサーで得られる加速度データに基づいて岩石の弾性係数を算出する弾性係数算出手段と、弾性係数算出手段で算出された弾性係数と、吸水率相関関係記憶手段に記憶された吸水率相関関係と、に基づいて岩石の吸水率を推定する吸水率推定手段と、吸水率推定手段で得られた吸水率推定値と、岩石の用途に応じて予め設定された吸水率基準値との比較に基づいて、用途に対する岩石の使用可否を判定する使用可否判定手段と、を有することを特徴とする。
【0018】
この品質評価装置では、岩石材料の弾性係数と吸水率との相関関係(吸水率相関関係)が演算装置の吸水率相関関係記憶手段に記憶されている。そして、演算装置の弾性係数算出手段は、ハンマーで岩石を打撃したときの加速度データに基づき、当該岩石の弾性係数を算出する。更に、吸水率推定手段が、弾性係数と上記吸水率相関関係とに基づいて吸水率推定値を求め、使用可否判定手段が、吸水率推定値を吸水率基準値と比較することにより、岩石の使用可否の判定を行うことができる。よって、この品質評価装置によれば、ハンマーで岩石を打撃するといった簡易な作業によって、岩石の採取現場において当該岩石の使用可否をその場で判定することが可能になる。
【0019】
また、演算装置は、所定の弾性係数測定方法で得られた岩石材料の弾性係数と、所定の密度測定方法で得られた岩石材料の密度と、に基づいて求められる岩石材料の弾性係数と密度との相関関係を、密度相関関係として記憶する密度相関関係記憶手段と、弾性係数算出手段で算出された弾性係数と、密度相関関係記憶手段に記憶された密度相関関係と、に基づいて岩石の密度を推定する密度推定手段と、を更に有し、使用可否判定手段は、吸水率推定手段で得られた吸水率推定値が、岩石の用途に応じて予め設定された吸水率基準値以下であり、かつ密度推定手段で得られた密度推定値が、岩石の用途に応じて予め設定された密度基準値以上である場合には、岩石が用途に対して使用可能であると判定することとしてもよい。
【0020】
この構成によれば、岩石材料の弾性係数と密度との相関関係(密度相関関係)も演算装置に記憶されている。そして、密度推定手段は、弾性係数と上記密度相関関係とに基づいて密度推定値を求め、使用可否判定手段は、吸水率推定値と吸水率基準値との比較及び密度推定値と密度基準値との比較に基づいて、岩石の使用可否の判定を行うことができる。よって、この品質評価装置によれば、岩石の吸水率のみならず密度も基準とした使用可否判定を行うことができる。
【0021】
本発明の品質評価装置は、自然由来の岩石の品質評価装置であって、加速度センサーと球面形状の打撃面とを有する金属製のハンマーと、ハンマーで岩石を打撃したときに加速度センサーで得られる加速度データを処理する演算装置と、を備え、演算装置は、所定の弾性係数測定方法で得られた岩石材料の弾性係数と、所定の密度測定方法で得られた岩石材料の密度と、に基づいて求められる岩石材料の弾性係数と密度との相関関係を、密度相関関係として記憶する密度相関関係記憶手段と、加速度センサーで得られる加速度データに基づいて岩石の弾性係数を算出する弾性係数算出手段と、弾性係数算出手段で算出された弾性係数と、密度相関関係記憶手段に記憶された密度相関関係と、に基づいて岩石の密度を推定する密度推定手段と、密度推定手段で得られた密度推定値と、岩石の用途に応じて予め設定された密度基準値との比較に基づいて、用途に対する岩石の使用可否を判定する使用可否判定手段と、を有することを特徴とする。
【0022】
この品質評価装置では、岩石材料の弾性係数と密度との相関関係(密度相関関係)が演算装置の密度相関関係記憶手段に記憶されている。そして、演算装置の弾性係数算出手段は、ハンマーで岩石を打撃したときの加速度データに基づき、当該岩石の弾性係数を算出する。更に、密度推定手段が、弾性係数と上記密度相関関係とに基づいて密度推定値を求め、使用可否判定手段が、密度推定値を密度基準値と比較することにより、岩石の使用可否の判定を行うことができる。よって、この品質評価装置によれば、ハンマーで岩石を打撃するといった簡易な作業によって、岩石の採取現場において当該岩石の使用可否をその場で判定することが可能になる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の岩石の品質評価方法及び品質評価装置によれば、採取現場で簡易に岩石の品質評価を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の品質評価装置の第1実施形態の構成を示す図である。
図2】第1実施形態の品質評価装置のコンピュータの構成を示す図である。
図3】岩石の弾性係数と吸水率との相関関係を示すグラフの一例である。
図4】本発明の品質評価方法の第1実施形態を示すフローチャートである。
図5】本発明者らが行った試験の結果を示すグラフである。
図6】本発明の品質評価方法を用いた岩石採取工事の一例を示すフローチャートである。
図7】第2実施形態の品質評価装置のコンピュータの構成を示す図である。
図8】岩石の弾性係数と絶乾密度との相関関係を示すグラフの一例である。
図9】本発明の品質評価方法の第2実施形態を示すフローチャートである。
図10】第3実施形態の品質評価装置のコンピュータの構成を示す図である。
図11】本発明の品質評価方法の第3実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る岩石の品質評価方法及び品質評価装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0026】
(第1実施形態)
図1に、本実施形態の品質評価装置を示す。品質評価装置1は、自然由来の岩石Rの品質評価を行うための装置である。自然由来の岩石とは、原石山の岩盤から発破等で産出される岩石などが含まれる。この種の岩石は、例えばロックフィルダムのロック材やコンクリート用骨材として使用されるため、品質評価装置1によって所定の品質を満足するか否かが評価され使用可能であるか否かが判定される。
【0027】
図に示すとおり、品質評価装置1は、金属製のハンマー11と、チャージアンプ13と、チャージアンプ13用の直流電源装置15と、ターミナルパネル19と、AD変換器21と、コンピュータ(演算装置)23と、デジタルカメラ25と、GPS装置27と、を備えている。
【0028】
ハンマー11は、ユーザが把持するための棒状の把手部11cと、把手部11cの先端に取り付けられた球体形状の打撃部11aと、打撃部11aの上方に取り付けられた一軸の加速度センサー11bと、を有している。ハンマー11は、品質評価対象である岩石Rを打撃するためのものである。品質評価装置1のユーザは、把手部11cを把持して打撃部11aを岩石Rに衝突させる。打撃部11aの表面のうち下部は、実際に岩石に衝突する球面形状の打撃面11dを構成する。
【0029】
ハンマー11の質量は、岩石の採取現場(原石山)における持ち運びや取り扱いを容易にする観点から、3kg未満であることが好ましい。打撃部11aの直径は例えば5cm程度である。なお、後述する打球探査法を実行するためには、打撃部11a全体を球形とすることは必須ではなく、少なくとも打撃面11dが球面形状をなすようにすればよい。
【0030】
加速度センサー11bは、打撃面11dと岩石Rとの衝突方向における加速度を計測する。ユーザがハンマー11で岩石Rを打撃したとき、加速度センサー11bは、打撃面11dと岩石との衝突により発生する衝撃波形を加速度波形として検知する。そして、検知された加速度波形は、加速度信号として、チャージアンプ13、ターミナルパネル19、及びAD変換器21を介して、コンピュータ23に送信される。チャージアンプ13は、加速度センサー11bからの加速度信号を増幅し、ターミナルパネル19は、増幅された信号に含まれるノイズ成分を除去し、AD変換器21は、ノイズ除去後の信号をAD変換する機能を有する。
【0031】
コンピュータ23としては、所定の品質評価プログラムを格納した市販のパーソナルコンピュータを用いることができる。コンピュータ23は、上記品質評価プログラムを実行することにより、加速度センサー11bから得られる加速度信号に基づく演算を行い、岩石の評価結果を出力する。コンピュータ23としては、岩石の採取現場における持ち運びや取り扱いを容易にする観点から小型・軽量であることが好ましいので、ラップトップ型コンピュータを採用することが好ましい。
【0032】
デジタルカメラ25としては、市販のデジタルカメラを用いることができる。ユーザがデジタルカメラ25で岩石Rの外観写真を撮像することにより、岩石Rの外観写真データと品質評価結果とを関連付けてコンピュータ23に記録することができる。GPS装置27としては、市販のGPS装置を用いることができる。GPS装置27は、GPS衛星から受信した電波に基づいて品質評価装置1の現在位置を算出し、現在位置情報をコンピュータ23に送信する。岩石Rの採取位置で岩石Rの品質評価作業を行うことにより、岩石Rの採取位置と品質評価結果とを関連付けてコンピュータ23に記録することができ、採取位置ごとに岩石の品質評価結果を管理することができる。
【0033】
図2に示すように、コンピュータ23は、情報記憶部30aと演算部40aと情報蓄積部50と、ディスプレイ60とを有している。情報記憶部30aには、吸水率相関関係31aと、吸水率基準値33aとが格納されている。吸水率相関関係31aは、岩石の弾性係数と吸水率との相関関係を示す情報であり、例えば、図3のような曲線のグラフで表される。後述の吸水率相関関係準備工程によって吸水率相関関係31aが取得され、予め情報記憶部30aに保存される。岩石の弾性係数と吸水率との相関関係は、図3のような曲線で表される。
【0034】
吸水率基準値33aは、岩石Rが所望の用途に使用可能であるための吸水率の上限値を示す情報である。例えば、岩石Rをロックフィルダムのロック材として使用する場合には、岩石Rの吸水率が3.0%以下であることが要求されるので、「吸水率基準値=3.0%」との情報が情報記憶部30aに格納される。この吸水率基準値33aは、例えば、特記仕様書や施工計画書に基づいて設定され、ユーザによるコンピュータ23のキー操作等により事前に入力される。情報記憶部30a及び情報蓄積部50は、例えば、コンピュータ23に内蔵された記憶装置の記憶領域である。
【0035】
演算部40aは、弾性係数算出部41と、吸水率推定部43aと、使用可否判定部45aと、を備えている。弾性係数算出部41、吸水率推定部43a、及び使用可否判定部45aは、コンピュータ23のCPU、RAM等のハードウェア上に所定の品質評価プログラムを読み込ませることにより、CPUの制御のもとで通信モジュール、入力装置、出力装置等を動作させるとともに、RAMや補助記憶装置におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことでソフトウエア的に実現される構成要素である。
【0036】
弾性係数算出部41は、加速度センサー11bから得られる加速度信号に基づき、Hertzの弾性接触論を用いて、岩石Rの弾性係数を算出する。Hertzの弾性接触論によれば、球体を弾性体表面に衝突させたときの球体と弾性体平面との接触時間は、次式(1)で表される。
【数1】
【0037】
但し、
:球体の弾性係数
μ:球体のポアソン比
R :球体の半径
M :球体の質量
:弾性体の弾性係数
μ:弾性体のポアソン比
:衝突速度
である。
【0038】
特許文献1では、以上のようなHertzの弾性接触論を、コンクリート構造物の剛性の測定に利用することが開示されている。本実施形態では、岩石Rの弾性係数を測定する場合にHertzの弾性接触論を適用する。すなわち、本実施形態では、上記のHertzの弾性接触論において、上記球体にハンマー11の打撃部11aを当てはめ、上記弾性体に岩石Rを当てはめる。この場合、式(1)において、E,μ,R,Mは既知である。また、岩石Rのポアソン比μとしては、一般的な岩石のポアソン比として0.2の値を用いればよい。更に、T及びVは、加速度信号で表される衝撃波形から算出することができる。従って、加速度信号が得られれば、式(1)に基づいて、未知量である岩石Rの弾性係数Eを算出することができる。
【0039】
吸水率推定部43aは、弾性係数算出部41で得られた岩石Rの弾性係数Eに基づいて、岩石Rの吸水率を推定する。即ち、吸水率推定部43aは、情報記憶部30aに格納された吸水率相関関係31a(図3)を読み出し、上記弾性係数Eの値に対応する吸水率の値を、岩石Rの吸水率推定値として求める。
【0040】
使用可否判定部45aは、吸水率推定部43aで得られた吸水率推定値と、情報記憶部30aから読み出した吸水率基準値33aとの大小比較を行う。そして、吸水率推定値が吸水率基準値33a以下である場合には、岩石Rが所定の用途に(例えば、ロックフィルダムのロック材としての用途に)使用可能であると判定する。一方、吸水率推定値が吸水率基準値33aよりも大きい場合には、岩石Rが所定の用途に使用不可能であると判定する。その後、使用可否判定部45aは、判定結果(岩石Rの使用の可否)を、例えば、吸水率推定値と一緒に、コンピュータ23のディスプレイ60に表示する。更に、使用可否判定部45aは、岩石Rの使用の可否と、吸水率推定値と、GPS装置27から得られる現在位置情報と、デジタルカメラ25から得られる岩石Rの外観写真データと、を関連付けて情報蓄積部50に蓄積する。
【0041】
更に、使用可否判定部45aは、情報蓄積部50に蓄積されている前回の評価に係る岩石の吸水率推定値と、今回の評価に係る岩石Rの吸水率推定値とを比較することで、岩石の品質変動の有無を判定してもよい。
【0042】
続いて、上述の品質評価装置1を用いて行う岩石の品質評価方法について、図4を参照し説明する。
【0043】
〔吸水率相関関係準備工程〕
岩石の弾性係数と吸水率との相関関係を示す吸水率相関関係を、コンピュータ23の情報記憶部30aに保存する(S101)。吸水率相関関係は、各種の現場(各種の岩種)において、岩石の弾性係数計測と吸水率測定とを行い、弾性係数と吸水率との相関関係を求め、これらの既往データを総合して求めた相関関係である。
【0044】
吸水率相関関係は以下のような手順で求められる。まず、現場において岩石サンプル(岩石材料)を採取する。この場合、粒径が15cm以上のものを岩石サンプルとして選定する。「粒径が15cm以上」とは、岩石が、大きさ15cmの篩目をもつ篩を通過しないことを意味する。以下の説明においても、「粒径」との語を用いるときは同様の定義とする。続いて、後述する打球探査法により、採取した岩石サンプルを打撃し弾性係数を算出する。その一方で、採取した岩石の吸水率を、JIS A 1100の試験により測定する。そして、算出された上記弾性係数と測定された上記吸水率との関係をプロットする。以上を多数の岩石サンプルについて行うことにより、岩石の弾性係数と吸水率との相関関係が求められる。
【0045】
なお、実際に岩石を採取しようとする岩石の採取現場で岩石サンプルを採取し、その岩石サンプルに基づいて吸水率相関関係を求め、コンピュータ23の情報記憶部30aに保存してもよい。この場合、岩石を採取しようとする採取現場に特有の吸水率相関関係を取得することができる。なお、吸水率相関関係準備工程は、採取現場で行う必要はなく、岩石サンプルを室内に持ち込んで行ってもよい。
【0046】
〔打球探査工程〕
まず、岩石の採取現場において品質評価対象の岩石Rを選定し採取する(S103)。この場合、粒径が15cm以上のものを岩石Rとして選定する。次に、打球探査法によって岩石Rの弾性係数を算出する。具体的には、ユーザは、選定した岩石Rをハンマー11の打撃面11dで打撃する。打撃時にハンマー11に発生する加速度が加速度センサー11bで検知され、加速度信号がコンピュータ23に入力され、演算部41aの弾性係数算出部41に入力される。そして、弾性係数算出部41が、加速度信号に基づいて、前述の式(1)より、岩石Rの弾性係数を算出する(S105)。
【0047】
〔吸水率推定工程〕
続いて、吸水率推定部43aは、上記打球探査工程による弾性係数算出値と、吸水率相関関係31aと、に基づいて、岩石Rの吸水率を推定する。具体的には、吸水率推定部43aは、情報記憶部30aから吸水率相関関係31aを読み出し、上記弾性係数算出値に対応する吸水率の値を、岩石Rの吸水率推定値として求める(S107)。
【0048】
〔使用可否判定工程〕
続いて、使用可否判定部45aは、上記吸水率推定値と吸水率基準値33aとを比較して岩石の使用可否を判定する。具体的には、使用可否判定部45aは、情報記憶部30aから吸水率基準値33aを読み出し、吸水率推定値と吸水率基準値とを大小比較する(S109)。吸水率推定値が吸水率基準値以下の場合には、岩石Rは使用可能と判定し(S111)、吸水率推定値が吸水率基準値よりも大きい場合には、岩石Rは使用不可能と判定する(S113)。その後、使用可否判定部45aは、判定結果(岩石Rの使用の可否)を、例えば、吸水率推定値と一緒に、コンピュータ23のディスプレイ60に表示する。
【0049】
〔外観写真取得工程〕
続いて、ユーザは、デジタルカメラ25を用いて岩石Rの外観写真を撮影する。得られた外観写真データは、デジタルカメラ25からコンピュータ23に送信される(S121)。なお、外観写真取得工程は、打球探査工程の前に行ってもよい。
【0050】
〔現在地取得工程〕
続いて、GPS装置27は、GPS衛星から受信した電波に基づいて品質評価装置1の現在位置を算出し、現在位置情報をコンピュータ23に送信する(S123)。なお、現在地取得工程は、打球探査工程の前に行ってもよい。
【0051】
〔データ記録工程〕
続いて、使用可否判定部45aは、岩石Rの使用の可否と、吸水率推定値と、GPS装置27から得られる現在位置情報と、デジタルカメラ25から得られる岩石Rの外観写真データと、を関連付けて情報蓄積部50に蓄積する(S125)。その後、岩石の品質評価を継続する場合には(S127でYes)、S103の処理に戻り、それ以外の場合には(S127でNo)、処理を終了する。
【0052】
以上の品質評価方法及び品質評価装置によれば、ハンマー11で岩石Rを打撃するといった簡易な作業によって、岩石Rの品質評価が可能である。従って、1回の品質評価が、例えば30秒程度と短時間で可能であり、岩石Rの採取現場において当該岩石Rの使用可否をその場で判定するといった運用が可能になる。よって、採取される岩石の品質を頻繁に確認するといった運用も可能になる。また、多くのデータを収集して統計的処理を行うことが可能になり、評価の精度を高めることができる。また、ユーザの熟練度が評価の精度に与える影響も小さい。また、ハンマー11の質量を3kg未満としているので、ハンマー11の持ち運びや取り扱いが容易であり、採取現場で容易に測定を行うことができる。以上の結果、迅速な岩石の評価が可能になり、原石山の開発を効率的に行うことができる。
【0053】
また、打球探査工程においては、岩石Rの粒径が15cm以上とされている。仮に岩石Rが粒径15cm未満の小さい岩石であれば、ハンマー打撃時の衝撃で岩石全体が振動し正確な加速度信号が得られないが、岩石Rの粒径を15cm以上とすることで、打撃に起因する岩石全体の振動を抑えることができ、岩石の弾性係数を正確に反映した良好な加速度データを取得することができる。岩石Rの粒径は、30cm以上であることが更に好ましい。
【0054】
現場で比較的簡便に岩石の変形特性を測定するための他の手法として、いわゆるロックシュミットハンマー法(JGS 3411:地盤工学会基準)の適用も考えられる。本発明者らは、本実施形態における打球探査工程で岩石の弾性係数を求める手法と、ロックシュミットハンマー法とを比較する試験を行った。なお、ロックシュミットハンマー法は公知の手法であるので、詳細な説明を省略する。
【0055】
ほぼ同じ材質でサイズが異なる3種類の岩石を供試体として準備した。サイズ「大」の供試体は、粒径30cm以上のものであり、サイズ「中」の供試体は、粒径15cm以上30cm未満のものであり、サイズ「小」の供試体は、粒径10cm以上15cm未満のものである。3種類の供試体それぞれについて、静弾性係数をロックシュミットハンマー法で測定し、弾性係数を本実施形態における打球探査法で測定した。打球探査法におけるハンマー11の打撃部11aの直径は5cmとした。測定結果は、標本数、標準偏差及び変動係数と一緒に表1に示した。また、測定値の平均値については、図5のグラフとしても示している。
【表1】
【0056】
図5から判るように、ロックシュミットハンマー法では、供試体のサイズによって測定値が変動しやすい。すなわち、同じ材質の3種の供試体は、本来であれば変形特性はすべて等しいと考えられるが、ロックシュミットハンマー法によれば、供試体のサイズが大きいほど、静弾性係数の測定値が大きくなる傾向にあった。これに対して、本実施形態における打球探査法によれば、サイズ「大」の供試体とサイズ「中」の供試体とでは、ほぼ同じ弾性係数の測定値が得られている。よって、本実施形態における打球探査法は、弾性係数の測定値が岩石寸法の影響を受けにくい点において、ロックシュミットハンマー法よりも優れていることが判った。
【0057】
また、ロックシュミットハンマー法は、そもそも岩盤を対象とした調査・試験法であり、本実施形態の打球探査法が対象とするような発破等で生じる岩石を対象としたものではない。よって、発破等で生じる岩石にロックシュミットハンマー法を使用したとしても、基準で定められた使用方法ではないため評価結果の信頼性が低いと考えられる。また、ロックシュミットハンマー法では、15〜50cm四方の大きさを有する岩盤表面を測定面とする旨規定されているが、発破等で発生する岩石には上記のような測定面は実際にはほとんど存在しない。また、ロックシュミットハンマー法では、測定点の凹凸を1mm以内としており、これが満足されない場合にはグラインダーや砥石等で測定点を平滑化する旨規定されている。しかしながら、発破等で生じる岩石においては、凹凸1mm以内のものはほとんど存在せず、測定点の平滑化作業に時間を要するので、実際には迅速な岩石評価は難しい。
【0058】
また、ロックシュミットハンマー法では、打撃部であるプランジャーを測定面に対し垂直に保つことが規定されている。しかしながら、岩石採取現場では、足場が必ずしも水平ではないので、プランジャーを垂直に保つことは困難である。なお、試験基準JGS 3411(表-3.4.1)には、打撃方向によるハンマー反発度の補正方法が掲載されているが、これはあくまでハンマー打撃方向が下向き(-90度)、水平方向(0度)、上向き(+90度)というような場合の補正方法であり、プランジャーは測定面に対して垂直であることが前提となっている。以上の理由により、発破等で生じる岩石に対してロックシュミットハンマー法を適用することは困難である。
【0059】
また、打球探査法では、サイズ「小」の供試体の弾性係数は測定不可能であった。よって、本実施形態の品質評価方法が対象とする岩石Rの粒径は15cm以上であることが必要であり、30cm以上であることが更に好ましいことが確認された。
【0060】
なお、外観写真取得工程は省略してもよく、品質評価装置1のデジタルカメラ25を省略してもよい。また、現在地取得工程は省略してもよく、品質評価装置1のGPS装置27を省略してもよい。
【0061】
続いて、上述の品質評価方法の使用の一例として、原石山からロックフィルダムのロック材となる岩石を採取する採取工事について図6を参照し説明する。
【0062】
まず、原石山から発破等で採取した岩石サンプルについて、室内又は採取現場で、前述の吸水率相関関係準備工程を実行する(S151)。続いて、原石山から粒径15cm以上の代表的な岩石を品質評価用の岩石として選定し(S153)、上述の品質評価方法を用いて、ロック材としての岩石の使用可否を判定する(S155)。同じ採取位置から採取する岩石は5個以上とし、かつ同一の岩石を対象とした評価を5回以上実施することが好ましい。ここで、使用不可能と判定された場合には、岩石を廃棄し(S157)、岩石の採取位置を変更して(S159)、S153の処理に戻る。
【0063】
S155において岩石が使用可能と判定された場合には、当該採取位置において岩石の採取工事を実行する(S161)。計画数量の岩石を採取するまで、採取工事を継続する(S163)。採取工事の継続中においては、仕様書や施工計画書に基づく所定の品質確認数量に達したところで(S167)、S153の処理に戻り岩石の品質評価を行う。また、採取工事の継続中において、採取している岩石の岩種又は地層が変化した場合や、岩石に変化が見られた場合にも(S169)、S153の処理に戻り岩石の品質評価を行う。以上を繰り返し、計画数量の岩石を採取したところで(S163でYes)、採取工事を終了する(S165)。
【0064】
(第2実施形態)
続いて、本発明に係る岩石の品質評価方法及び品質評価装置の第2実施形態について図7図9を参照しながら説明する。本実施形態の評価装置の機器構成は第1実施形態の機器構成(図1)と同じである。本実施形態においては、コンピュータ23における処理が第1実施形態とは異なり、それに伴って、コンピュータ23の情報記憶部30bに格納される情報と、演算部40bの構成とが、第1実施形態とは異なる。なお、本実施形態において、第1実施形態と同一又は同等の構成要素や処理については図面に同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0065】
図7に示すように、情報記憶部30bには、密度相関関係31bと、密度基準値33bとが格納されている。密度相関関係31bは、岩石の弾性係数と絶乾密度(以下、単に「密度」という)との相関関係を示す情報であり、例えば、図8のような曲線のグラフで表される。後述の密度相関関係準備工程によって密度相関関係31bが取得され、予め情報記憶部30bに保存される。岩石の弾性係数と密度との相関関係は、図8のような曲線で表される。
【0066】
密度基準値33bは、岩石Rが所望の用途に使用可能であるための密度の下限値を示す情報である。例えば、岩石Rをロックフィルダムのロック材として使用する場合には、岩石Rの密度が2.3t/m以上であることが要求されるので、「密度基準値=2.3t/m」との情報が情報記憶部30bに格納される。この密度基準値33bは、例えば、仕様書や施工計画書に基づいて設定され、ユーザによるコンピュータ23のキー操作等により事前に入力される。情報記憶部30b及び情報蓄積部50は、例えば、コンピュータ23に内蔵された記憶装置の記憶領域である。
【0067】
演算部40bは、弾性係数算出部41と、密度推定部43bと、使用可否判定部45bと、を備えている。弾性係数算出部41、密度推定部43b、及び使用可否判定部45bは、コンピュータ23のCPU、RAM等のハードウェア上に所定の品質評価プログラムを読み込ませることにより、CPUの制御のもとで通信モジュール、入力装置、出力装置等を動作させるとともに、RAMや補助記憶装置におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことでソフトウエア的に実現される構成要素である。
【0068】
弾性係数算出部41の機能は第1実施形態で説明した通りである。
【0069】
密度推定部43bは、弾性係数算出部41で得られた岩石Rの弾性係数Eに基づいて、岩石Rの密度を推定する。即ち、密度推定部43bは、情報記憶部30bに格納された密度相関関係31b(図8)を読み出し、上記弾性係数Eの値に対応する密度の値を、岩石Rの密度推定値として求める。
【0070】
使用可否判定部45bは、密度推定部43bで得られた密度推定値と、情報記憶部30bから読み出した密度基準値33bとの大小比較を行う。そして、密度推定値が密度基準値33b以上である場合には、岩石Rが所定の用途に(例えば、ロックフィルダムのロック材としての用途に)使用可能であると判定する。一方、密度推定値が密度基準値33bよりも小さい場合には、岩石Rが所定の用途に使用不可能であると判定する。その後、使用可否判定部45bは、判定結果(岩石Rの使用の可否)を、例えば、密度推定値と一緒に、コンピュータ23のディスプレイ60に表示する。更に、使用可否判定部45bは、岩石Rの使用の可否と、密度推定値と、GPS装置27から得られる現在位置情報と、デジタルカメラ25から得られる岩石Rの外観写真データと、を関連付けて情報蓄積部50に蓄積する。
【0071】
更に、使用可否判定部45bは、情報蓄積部50に蓄積されている前回の評価に係る岩石の密度推定値と、今回の評価に係る岩石Rの密度推定値とを比較することで、岩石の品質変動の有無を判定してもよい。
【0072】
続いて、上述の評価装置を用いて行う本実施形態の品質評価方法について、図9を参照し説明する。
【0073】
〔密度相関関係準備工程〕
岩石の弾性係数と密度との相関関係を示す密度相関関係を、コンピュータ23の情報記憶部30bに保存する(S201)。密度相関関係は、各種の現場(各種の岩種)において、岩石の弾性係数計測と密度測定とを行い、弾性係数と密度との相関関係を求め、これらの既往データを総合して求めた相関関係である。
【0074】
密度相関関係は以下のような手順で求められる。まず、岩石の採取現場において岩石サンプル(岩石材料)を採取する。この場合、粒径が15cm以上のものを岩石サンプルとして選定する。続いて、後述する打球探査法により、採取した岩石サンプルを打撃し弾性係数を算出する。その一方で、採取した岩石の密度を、JIS A 1100の試験により測定する。そして、算出された上記弾性係数と測定された上記密度との関係をプロットする。以上を多数の岩石サンプルについて行うことにより、当該採取現場における岩石の弾性係数と密度との相関関係が求められる。
【0075】
なお、実際に岩石を採取しようとする岩石の採取現場で岩石サンプルを採取し、その岩石サンプルに基づいて密度相関関係を求め、コンピュータ23の情報記憶部30bに保存してもよい。この場合、岩石を採取しようとする採取現場に特有の密度相関関係を取得することができる。なお、密度相関関係準備工程は、採取現場で行う必要はなく、岩石サンプルを室内に持ち込んで行ってもよい。
【0076】
〔打球探査工程〕
続いて、打球探査工程を行う(S103,S105)。打球探査工程の詳細は、第1実施形態で説明した通りである。
【0077】
〔密度推定工程〕
続いて、密度推定部43bは、上記打球探査工程で得られる弾性係数算出値と、密度相関関係31bと、に基づいて、岩石Rの密度を推定する。具体的には、密度推定部43bは、情報記憶部30bから密度相関関係31bを読み出し、上記弾性係数算出値に対応する密度の値を、岩石Rの密度推定値として求める(S207)。
【0078】
〔使用可否判定工程〕
続いて、使用可否判定部45bは、上記密度推定値と密度基準値33bとを比較して岩石の使用可否を判定する。具体的には、使用可否判定部45bは、情報記憶部30bから密度基準値33bを読み出し、密度推定値と密度基準値とを大小比較する(S209)。密度推定値が密度基準値以上の場合には、岩石Rは使用可能と判定し(S111)、密度推定値が密度基準値よりも小さい場合には、岩石Rは使用不可能と判定する(S113)。その後、使用可否判定部45bは、判定結果(岩石Rの使用の可否)を、例えば、密度推定値と一緒に、コンピュータ23のディスプレイ60に表示する。
【0079】
〔外観写真取得工程〕
続いて、外観写真取得工程を行う(S121)。外観写真取得工程の詳細は、第1実施形態で説明した通りである。
【0080】
〔現在地取得工程〕
続いて、現在地取得工程を行う(S123)。現在地取得工程の詳細は、第1実施形態で説明した通りである。
【0081】
〔データ記録工程〕
続いて、使用可否判定部45bは、岩石Rの使用の可否と、密度推定値と、GPS装置27から得られる現在位置情報と、デジタルカメラ25から得られる岩石Rの外観写真データと、を関連付けて情報蓄積部50に蓄積する(S225)。その後、岩石の品質評価を継続する場合には(S127でYes)、S103の処理に戻り、それ以外の場合には(S127でNo)、処理を終了する。
【0082】
以上の品質評価方法及び品質評価装置によれば、ハンマー11で岩石Rを打撃するといった簡易な作業によって、岩石Rの品質評価が可能である。よって、本実施形態の品質評価方法によっても、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0083】
(第3実施形態)
続いて、本発明に係る岩石の品質評価方法の第3実施形態について図10及び図11を参照しながら説明する。本実施形態の評価装置の機器構成は第1実施形態の機器構成(図1)と同じである。本実施形態においては、コンピュータ23における処理が第1実施形態とは異なり、それに伴って、コンピュータ23の情報記憶部30cに格納される情報と、演算部40cの構成とが、第1実施形態とは異なる。なお、本実施形態において、第1又は第2実施形態と同一又は同等の構成要素や処理については図面に同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0084】
図10に示すように、情報記憶部30cには、吸水率相関関係31aと、吸水率基準値33aと、密度相関関係31bと、密度基準値33bとが格納されている。そして、演算部40aは、弾性係数算出部41と、吸水率推定部43aと、密度推定部43bと、使用可否判定部45bと、を備えている。
【0085】
続いて、上述の評価装置を用いて行う本実施形態の品質評価方法について、図11を参照し説明する。
【0086】
〔吸水率相関関係準備工程〕
まず、吸水率相関関係準備工程を行う(S101)。吸水率相関関係準備工程の詳細は、第1実施形態で説明した通りである。
【0087】
〔密度相関関係準備工程〕
続いて、密度相関関係準備工程を行う(S201)。密度相関関係準備工程の詳細は、第2実施形態で説明した通りである。なお、吸水率相関関係準備工程と密度相関関係準備工程と実行順序は逆であってもよい。
【0088】
〔打球探査工程〕
続いて、打球探査工程を行う(S103,S105)。打球探査工程の詳細は、第1実施形態で説明した通りである。
【0089】
〔吸水率推定工程〕
続いて、吸水率推定工程を行う(S107)。吸水率推定工程の詳細は、第1実施形態で説明した通りである。
【0090】
〔密度推定工程〕
続いて、密度推定工程を行う(S207)。密度推定工程の詳細は、第2実施形態で説明した通りである。なお、吸水率推定工程と密度推定工程と実行順序は逆であってもよい。
【0091】
〔使用可否判定工程〕
続いて、使用可否判定部45cは、上記吸水率推定値と吸水率基準値33aとの比較、及び上記密度推定値と密度基準値33bとを比較に基づいて、岩石の使用可否を判定する。具体的には、使用可否判定部45cは、情報記憶部30cから吸水率基準値33aを読み出し、吸水率推定値と吸水率基準値とを大小比較する。更に、使用可否判定部45cは、情報記憶部30cから密度基準値33bを読み出し、密度推定値と密度基準値とを大小比較する(S309)。ここで、「吸水率推定値が吸水率基準値以下かつ密度推定値が密度基準値以上」との条件が満足される場合には、岩石Rは使用可能と判定する(S111)。それ以外の場合には、岩石Rは使用不可能と判定する(S113)。その後、使用可否判定部45cは、判定結果(岩石Rの使用の可否)を、例えば、吸水率推定値、密度推定値と一緒に、コンピュータ23のディスプレイ60に表示する。
【0092】
〔外観写真取得工程〕
続いて、外観写真取得工程を行う(S121)。外観写真取得工程の詳細は、第1実施形態で説明した通りであるので、重複する説明は省略する。
【0093】
〔現在地取得工程〕
続いて、現在地取得工程を行う(S123)。現在地取得工程の詳細は、第1実施形態で説明した通りであるので、重複する説明は省略する。
【0094】
〔データ記録工程〕
続いて、使用可否判定部45bは、岩石Rの使用の可否と、吸水率推定値と、密度推定値と、GPS装置27から得られる現在位置情報と、デジタルカメラ25から得られる岩石Rの外観写真データと、を関連付けて情報蓄積部50に蓄積する(S325)。その後、岩石の品質評価を継続する場合には(S127でYes)、S103の処理に戻り、それ以外の場合には(S127でNo)、処理を終了する。
【0095】
以上の品質評価方法及び品質評価装置によれば、ハンマー11で岩石Rを打撃するといった簡易な作業によって、岩石Rの品質評価が可能である。よって、本実施形態の品質評価方法によっても、第1及び第2実施形態と同様の作用効果が得られる。また、本実施形態の品質評価方法及び品質評価装置によれば、岩石の吸水率のみならず密度も基準とした使用可否判定を行うことができる。
【符号の説明】
【0096】
1…品質評価装置、11…ハンマー、11a…打撃部、11b…加速度センサー、11d…打撃面、23…コンピュータ(演算装置)、30a,30b,30c…情報記憶部(吸水率相関関係記憶手段、密度相関関係記憶手段)、31a…吸水率相関関係、31b…密度相関関係、33a…吸水率基準値、33b…密度基準値、40a,40b,40c…演算部、41…弾性係数算出部、43a…吸水率推定部、43b…密度推定部、45a,45b,45c…使用可否判定部、R…岩石。
図1
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