特許第5700803号(P5700803)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5700803-赤外線カメラの光学配置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5700803
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】赤外線カメラの光学配置
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/02 20060101AFI20150326BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20150326BHJP
   G01J 1/04 20060101ALI20150326BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20150326BHJP
   G03B 17/14 20060101ALI20150326BHJP
   G03B 15/00 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
   G03B17/02
   G01J1/02 H
   G01J1/04 A
   H04N5/225 D
   G03B17/14
   G03B15/00 S
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-36082(P2011-36082)
(22)【出願日】2011年2月22日
(65)【公開番号】特開2012-173547(P2012-173547A)
(43)【公開日】2012年9月10日
【審査請求日】2013年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】100124327
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 勝博
(72)【発明者】
【氏名】小出 淳史
【審査官】 辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−094523(JP,A)
【文献】 特開2006−292594(JP,A)
【文献】 特開2010−261801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/02
G01J 1/02
G01J 1/04
G03B 15/00
G03B 17/14
H04N 5/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体にレンズが支持されたレンズユニットと、レンズを透過した赤外線を熱で検知して画像信号に変換する赤外センサが窓部を有するハウジング内に封入された赤外センサモジュールと、当該レンズと赤外センサモジュールとの間に配置されるシャッタとを備え、
当該赤外センサのセンサ面の端部と、窓部の端部と、シャッタの最大開口の縁部と、シャッタに最も近いレンズのレンズ有効面の端部とを結ぶ仮想線の光軸に対する傾斜角度が25°〜35°となるように、赤外センサのセンサ面と窓部、シャッタ及びレンズを配置したことを特徴とする赤外線カメラの光学配置。
【請求項2】
前記レンズユニットは、レンズマウントをカメラ本体に備えるカメラマウントと係合させる交換レンズユニットであり、
当該交換レンズユニットのレンズマウント及びカメラ本体のカメラマウントの開口が、前記仮想線上に位置する請求項1に記載の赤外線カメラの光学配置。
【請求項3】
カメラマウント及びレンズマウントとの接合面と、前記赤外センサのセンサ面との光軸方向における離間距離が10mm以上15mm以下である請求項1又は請求項2に記載の赤外線カメラの光学配置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、赤外線を検知して画像信号に変換処理する赤外線カメラにおける光学配置に関する。
【背景技術】
【0002】
遠赤外、赤外あるいは近赤外線等の放射エネルギーを検出して映像に変換する赤外線カメラは、例えば、警備上の監視、自動車走行時や災害時における暗所での人や動物の感知等に用いられる。赤外線カメラの撮像方法として、例えば、特許文献1に開示されているように、赤外線を熱的に検知する熱型赤外線撮像素子が受光部として用いられる。特許文献1に開示の熱型赤外線カメラは、温度に応じて物理的特性が変化する温度検知部と入射した赤外線量に応じて発熱する赤外線吸収層とが熱的に結合して構成された受光部を備える。そして、赤外線の入射により赤外線吸収層が発熱し、この熱が温度検知部に温度変化を生じさせると、温度検知部の物理的特性に生じる変化を電流又は電圧の変化として読み出すことで赤外線を電気信号として出力する。
【0003】
さらに、従来、赤外線カメラは、防犯カメラ等の定点観察用途、自動車のナイトビジョン等の用途において、人や動物の有無が判別可能である程度であり、広角撮像は可能であるが、解像度が不十分であった。しかし、近年、赤外線カメラ用のレンズにおいても、高い解像度のものが求められ、且つ、広角、高倍率といった目的に応じて、可視光カメラのように、望遠や広角等、用途に応じて用いられる交換レンズへの期待が高まっている。
【0004】
例えば、特許文献2には、広角にすべく設計された複数のレンズからなる遠赤外線カメラ用レンズを用いたレンズユニットと、赤外センサとを備えた撮像装置が開示されている。この赤外線カメラ用のレンズは、赤外光を透過させることが可能なゲルマニウムからなるものが用いられている。これらの赤外線カメラ用のレンズは、温度とレンズの屈折率との相関が高く、僅かな温度変化でもレンズの屈折率が変化し焦点がずれやすい。また、赤外センサは周囲の温度変化の影響を受けるので、赤外線カメラでは、特許文献3に開示の赤外線撮像システムのように、レンズとセンサ(二次元センサ)との間にシャッタを介挿させて所定の間隔で開閉させ、シャッタを閉じた状態で温度補正を行い、シャッタが開いた直後に二次元センサからの出力を得て、センサ周囲の温度変化による撮像精度の低下を防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−281864号公報
【特許文献2】特開2009−63942号公報
【特許文献3】特開2010−261801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車載用や携帯用の赤外線カメラにおいて、撮像精度の向上と、小型化が求められている。しかし、上述の通り、赤外線量を熱で検知する赤外線カメラの場合、温度管理のために、赤外センサを真空容器内に配置したり、シャッタを配置する必要があり、撮像精度を向上させるためには、必然的に装置が大きくなるという課題があった。
【0007】
そこで、本件発明は、撮像精度の向上と、装置の小型化を兼ね備える赤外線カメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意研究を行った結果、以下の赤外線カメラの光学配置を採用することで上記目的を達成するに到った。
【0009】
本件発明に係る赤外線カメラの光学配置は、枠体にレンズが支持されたレンズユニットと、レンズを透過した赤外線を熱で検知して画像信号に変換する赤外センサが窓部を有するハウジング内に封入された赤外センサモジュールと、当該レンズと赤外センサモジュールとの間に配置されるシャッタとを備え、当該赤外センサのセンサ面の端部と、窓部の端部と、シャッタの最大開口の縁部と、シャッタに最も近いレンズのレンズ有効面の端部とを結ぶ仮想線の光軸に対する傾斜角度が25°〜35°となるように、赤外センサのセンサ面と窓部、シャッタ及びレンズを配置したことを特徴とする。
【0010】
本件発明に係る赤外線カメラでは、前記レンズユニットは、レンズマウントをカメラ本体に備えるカメラマウントと係合させる交換レンズユニットであり、当該交換レンズユニットのレンズマウント及びカメラ本体のカメラマウントの開口が、前記仮想線上に位置するものとすることがより好ましい。
【0011】
本件発明に係る赤外線カメラの光学配置では、カメラマウント及びレンズマウントとの接合面と、前記赤外センサのセンサ面との光軸方向における離間距離が10mm以上15mm以下であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本件発明に係る赤外線カメラの光学配置は、赤外センサのセンサ面の端部、窓部の端部、シャッタの最大開口の縁部及び像面側のレンズのレンズ有効面の端部それぞれを結ぶ仮想線の光軸に対する傾斜角度が25°〜35°となるように、赤外センサのセンサ面と窓部、シャッタ及びレンズを配置したことにより、撮像精度を高めながら小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本件発明に係る赤外線カメラの光学配置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る赤外線カメラの光学配置の好ましい実施の形態を説明する。図1は、本件発明に係る赤外線カメラの光学配置の一実施の形態を示す断面図である。赤外線カメラ1は、特に、中赤外、遠赤外の撮像に用いられ、レンズユニット2と、赤外センサモジュール3と、シャッタユニット5とを備える。そして、本件発明に係る赤外線カメラの光学配置は、当該赤外センサのセンサ面の端部と、窓部の端部と、シャッタの最大開口の縁部と、シャッタに最も近いレンズのレンズ有効面の端部とを結ぶ仮想線の光軸に対する傾斜角度が25°〜35°となるように、赤外センサのセンサ面と窓部、シャッタ及びレンズを配置したことを特徴とする。まず、レンズユニット2、赤外センサモジュール3、シャッタユニット5について説明する。
【0015】
レンズユニット2は、枠体21に複数のレンズ14が光軸Lに沿って支持され、そのレンズ14のうち、ズームレンズ、フォーカスレンズ等が光軸方向に移動可能に設けられる。また、レンズユニット2の像面側の端部にはレンズマウント22を備え、カメラ本体10に備えるカメラマウント16と係合してカメラ本体10に取り付けられる。本実施の形態では、バヨネットマウントとした。本実施の形態では、レンズユニット2は、赤外センサモジュール3を備えるカメラ本体10に着脱可能な交換レンズとしたが、本件発明は、レンズユニットをカメラ本体に固定する赤外線カメラにおいても効果を奏する。
【0016】
赤外センサモジュール3は、カメラ本体10に設けられ、レンズ14を透過した赤外線を熱で検知して画像信号に変換する赤外センサ31を有する。赤外センサモジュール3は、赤外センサ31と、この赤外センサ31を収容するハウジング32とを備える。
【0017】
赤外センサ31は、撮像性能、設置環境の観点から、ボロメータ、サーモパイル、サーミスタ等を用いることが好ましい。この赤外センサ31は、第1ハウジング321内に配置され、赤外光を検知するセンサ面31aを有する。具体的には、第1ハウジング321の開口32aに面した位置にセンサ面31aを配置し、この開口32aにゲルマニウム製の窓部32bを嵌合して接着し、減圧処理することにより、第1ハウジング321内に赤外センサ31を真空密封する。ボロメータ(赤外センサ31)のセンサ面31aは、シリコン、ゲルマニウム等の半導体、白金、ニッケル等の金属、ニオブ、錫などの超伝導体、カルコゲナイドガラスなどの誘電体からなる薄膜を用いることができる。
【0018】
そして、赤外センサ31は、赤外線量を熱により検知するものであり、感度、信号雑音比を大きくするために、所望の温度に保持する。そのため、赤外センサモジュール3には、調温手段33を有する。調温手段33は、赤外センサ31の検知面31aにおいて、熱検知により生じた熱を所定温度に調整する調温素子33aと、調温素子33aで吸収した熱をハウジング32外に放熱する放熱部33bとを備える。本実施の形態では、調温素子33aは、ペルチェ素子を用いた。放熱部33bは、調温素子33aに接続された熱伝導部材であり、調温素子33aが赤外センサ31の検知面31aの温度を調整することにより生じた熱を第1ハウジング321の外部に放熱する。本実施の形態では、第1ハウジング321のうち、窓部32を有する面(シャッタ51と対向する面)を除く面をアルミニウム製とし、第1ハウジング321のアルミニウム製の部分を放熱部33bとした。
【0019】
ここで、赤外センサモジュール3のハウジング32は、赤外センサ3を密封する第1ハウジング321と、少なくとも放熱部33bを含む第1ハウジング321の外周部を囲む第2ハウジング322とからなる。第2ハウジング322は、放熱部33bからの熱がカメラ本体10の外部に伝わらないように設けられる。なお、本実施の形態では、第1ハウジング321は、側面及び像面側は断熱性を考慮してセラミック製とし、開口32aを有する面は金属製とした。また、第2ハウジング322は、アルミニウム製とすることにより、外部に放熱しやすい構成とした。
【0020】
シャッタユニット5は、シャッタ51が開閉可能な状態で枠体52に取り付けられたユニットである。レンズユニット2と赤外センサモジュール3との間に配置され、所定の間隔でシャッタ51が開閉する。赤外線量を熱で検知する赤外線カメラでは、被写体側の温度変化量を赤外センサ31で検知するため、撮像性能を高めるためには、赤外センサ31を基準温度に保つ必要がある。そこで、基準温度に設定されたシャッタ51をレンズ14と赤外センサ31との間に設け、シャッタ51を逐次閉じて、赤外センサ31の検知温度を基準温度に補正する。
【0021】
赤外線カメラは、被写体側から入射する赤外光をレンズユニット2の複数のレンズ14を透過させ、赤外センサモジュール3のセンサ面31aで結像させる。センサ面31aでは、結像させた赤外線量を温度変化量として検知し、これを検知信号を画像処理手段(不図示)に伝達して画像処理を行う。ここで、シャッタ51は、逐次開閉し、赤外センサ31を基準温度に補正する。
【0022】
次に、光学配置について説明する。本件発明に係る赤外線カメラの光学配置では、図1に示すように、赤外センサ31のセンサ面31aの端部と、窓部32bの端部と、シャッタ51の最大開口の縁部と、レンズ14aのレンズ有効面の端部とを結ぶ線を仮想線Mとする。この仮想線Mが、光軸Lに対する傾斜角度θが25°〜35°となるように、センサ面31a、窓部32b、シャッタ51及びレンズ14aをこの順に配置する。つまり、図1に示す断面図では、赤外センサ31のセンサ面31aの外周端部と、像面側のレンズ14aのレンズ有効面の外周端部とを結ぶ仮想線Mが、光軸Lに対する傾斜角度θが25°〜35°であり、この仮想線M上に、センサ面31aの端部と、窓部32bの端部と、シャッタ51の最大開口の縁部と、レンズ14aのレンズ有効面の端部とが位置するように配置する。
【0023】
この仮想線Mの光軸Lに対する傾斜角度θが25°より小さいと、これらの配置の光軸方向における長さを小さくすることができず、赤外線カメラの小型化を図ることができない、あるいは、望まれるF値を維持することができず、小型化と撮像精度の向上という両方を実現できない。一方、仮想線Mの光軸Lに対する傾斜角度θが35°よりも大きくすると、センサ面31a、窓部32b、シャッタ51及びレンズ14aのレンズ有効面のそれぞれの面積が大きくなり、小型化に反するとともに赤外線カメラが重くなるので好ましくない。なお、仮想線Mの光軸Lに対する傾斜角度θは26°〜32°の範囲とすると、より好ましい。
【0024】
また、レンズユニット2として、交換レンズユニットを用いる場合、レンズマウント22をカメラ本体10に備えるカメラマウント16と係合させるが、この交換レンズユニットのレンズマウント22及びカメラ本体10のカメラマウント16の開口が、仮想線M上に位置するようにすると、レンズユニット2内に存在する赤外線等、不要な赤外線の入射を防ぐことができる。
【0025】
さらに、本件発明に係る赤外線カメラの光学配置1では、図1に符号Sで示すように、レンズマウント22とカメラマウント16との接合面と、赤外センサ31のセンサ面31aとの離間距離Sが、光軸方向において10mm以上15mm以下であることも特徴の一つである。レンズマウント22とカメラマウント16との接合面とは、レンズマウント22とカメラマウント16とが接合した状態で、各マウントにおいて光軸Lと垂直な面同士が当接する面をいう。赤外線カメラでは、シャッタユニット5が必須である。また、レンズ14及び赤外センサ31は、それぞれ温度管理が重要であるため、互いの熱による温度変化を防ぐため、密接配置が出来ない。そのため、機構的に光軸方向の長さを抑えることができない。しかし、本件発明に係る赤外線カメラの光学配置では、レンズマウント22とカメラマウント16との接合面と、赤外センサ31のセンサ面31aとの離間距離Sが10mm以上15mm以下という極めて小さく抑えられるようにした。これと併せて、レンズ14、シャッタ51、窓部32b、赤外センサ31のセンサ面31aを仮想線Mの角度に揃えることにより、F値を1.0に保ち、且つ、光軸方向の長さ及びレンズ径方向の大きさを抑えた光学配置とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本件発明に係る赤外線カメラの光学配置は、交換レンズ式のレンズユニットや、固定式のレンズユニットを備える赤外線カメラに利用可能である。そして、本件発明に係る赤外線カメラの光学配置は、撮像精度の向上と小型化を兼ね備える赤外線カメラを実現でき、軽量化も同時に実現できる。そのため、車載用、携帯用の赤外線カメラの他、防犯等の監視用カメラとしても、小型高性能化に貢献できる。
【符号の説明】
【0027】
1・・・光学配置
2・・・レンズユニット
3・・・赤外センサモジュール
14・・・レンズ
32b・・・窓部
51・・シャッタ
22・・・レンズマウント
16・・・カメラマウント
図1