特許第5700879号(P5700879)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5700879
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】循環ポンプを備える流体噴射アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20150326BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
   B41J2/14 201
   B41J2/14 605
   B41J2/18
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-518366(P2013-518366)
(86)(22)【出願日】2010年10月28日
(65)【公表番号】特表2013-529566(P2013-529566A)
(43)【公表日】2013年7月22日
(86)【国際出願番号】US2010054458
(87)【国際公開番号】WO2012008978
(87)【国際公開日】20120119
【審査請求日】2012年12月27日
(31)【優先権主張番号】12/833,984
(32)【優先日】2010年7月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100076680
【弁理士】
【氏名又は名称】溝部 孝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(72)【発明者】
【氏名】コヴヤディノフ,アレキサンダー
(72)【発明者】
【氏名】コーニロヴィッチ,パヴェル
(72)【発明者】
【氏名】トーニエイネン,エリック,ディー
(72)【発明者】
【氏名】マーケル,デイビッド,ピー
【審査官】 名取 乾治
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06244694(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に形成されて、流体供給源と流体連絡している細長い流体スロットと、
前記流体スロットの長さ方向に沿って均等に隔置された液滴発生器のグループであって、前記液滴発生器のそれぞれは、それぞれの液滴発生器チャネルの第1の端部を介して前記流体スロットに個別に結合されている、液滴発生器のグループと、
前記液滴発生器の均等性に影響を与えることなく、それぞれの2つの液滴発生器チャネル間に設けられ、その第1の端部において前記流体スロットに結合されているポンプチャネルと、
前記ポンプチャネル内に配置されたポンプと、
前記ポンプチャネルの第2の端部とそれぞれの1以上の液滴発生器チャネルの各々の第2の端部とに結合された接続チャネル
を備える流体噴射アセンブリであって
記ポンプは、再循環チャネルを通して流体を循環させるように構成されており、該再循環チャネルは、前記流体スロット内で開始し、前記ポンプチャネル、前記接続チャネル、及び、それぞれの前記1以上の液滴発生器チャネルを通って前記流体スロットに戻るチャネルである、流体噴射アセンブリ。
【請求項2】
前記ポンプは、前記ポンプと前記流体スロットの間に、前記再循環チャネルの短い側と長い側が形成されるように、前記再循環チャネル内に配置される、請求項1の流体噴射アセンブリ。
【請求項3】
基板と、
前記基板に形成されて、流体供給源と流体連絡している細長い流体スロットと、
前記流体スロットの長さ方向に沿って均等に隔置された液滴発生器のグループであって、該液滴発生器の各々は、それぞれの液滴発生器チャネルの第1の端部を介して前記流体スロットに個別に結合されている、液滴発生器のグループと、
複数のポンプチャネルであって、それぞれのポンプチャネルは、それぞれの第1の端部において前記流体スロットに結合され、かつ、前記液滴発生器の均等性に影響を与えることなく、それぞれの2つの液滴発生器チャネル間に設けられている、複数のポンプチャネルと、
複数のポンプであって、該ポンプの各々は、それぞれのポンプチャネル内に配置されている、複数のポンプと、
複数の接続チャネルであって、該接続チャネルの各々は、それぞれのポンプチャネルの第2の端部とそれぞれの1以上の液滴発生器チャネルの各々の第2の端部とに結合されている、複数の接続チャネル
を備え、
前記ポンプの各々は、それぞれの再循環チャネルを通して流体を循環させるように構成されており、該それぞれの再循環チャネルは、前記流体スロット内で開始し、それぞれの前記ポンプチャネル、それぞれの前記接続チャネル、及び、それぞれの前記1以上の液滴発生器チャネルを通って前記流体スロットに戻るチャネルである、流体噴射アセンブリ。
【請求項4】
前記ポンプの各々は、該ポンプと前記流体スロットの間に、前記再循環チャネルの短い側と長い側が形成されるように、それぞれの前記再循環チャネル内に配置される、請求項3の流体噴射アセンブリ。
【請求項5】
各液滴発生器に関連付けられた1つの噴射素子を駆動するための噴射駆動トランジスタと、
前記複数のポンプを同時に駆動するためのポンプ駆動トランジスタ
をさらに備える、請求項3または4の流体噴射アセンブリ。
【請求項6】
各液滴発生器に関連づけられた1つの噴射要素を駆動するための噴射駆動トランジスタと、
それぞれのポンプを駆動するためのポンプ駆動トランジス
をさらに備える、請求項3または4の流体噴射アセンブリ。
【請求項7】
前記接続チャネルは、前記ポンプチャネルの第2の端部と、前記ポンプチャネルから異なる距離に配置されている2以上の液滴発生器チャネルの各々の第2の端部とに結合されており、前記ポンプチャネルからより遠くにある液滴発生器チャネルの断面積が、前記ポンプチャネルにより近い液滴発生器チャネルの断面積よりも大きく、このため、前記ポンプチャネルからより遠くにある液滴発生器チャネルの流体抵抗が、前記ポンプチャネルにより近い液滴発生器チャネルの流体抵抗よりも小さい、請求項1または2の流体噴射アセンブリ。
【請求項8】
前記接続チャネルの各々は、それぞれのポンプチャネルの第2の端部と、それぞれの前記ポンプチャネルから異なる距離に配置されているそれぞれの2以上の液滴発生器チャネルの各々の第2の端部とに結合されており、
それぞれの前記ポンプチャネルについて、ポンプチャネルからより遠くにある液滴発生器チャネルの断面積が、該ポンプチャネルにより近い液滴発生器チャネルの断面積よりも大きく、このため、該ポンプチャネルからより遠くにある液滴発生器チャネルの流体抵抗が、該ポンプチャネルにより近い液滴発生器チャネルの流体抵抗よりも小さいことからなる、請求項3〜6のいずれかの流体噴射アセンブリ。
【請求項9】
基板と、
前記基板に形成されて、流体供給源と流体連絡している細長い流体スロットと、
前記流体スロットの長さ方向に沿って均等に隔置された液滴発生器のグループであって、前記液滴発生器のそれぞれは、それぞれの液滴発生器チャネルの第1の端部を介して前記流体スロットに個別に結合されている、液滴発生器のグループと、
前記液滴発生器の均等性に影響を与えることなく、それぞれの2つの液滴発生器チャネル間に設けられ、その第1の端部において前記流体スロットに結合されているポンプチャネルと、
前記ポンプチャネル内に配置されたポンプと、
前記ポンプチャネルの第2の端部とそれぞれの1以上の液滴発生器チャネルの各々の第2の端部とに結合した接続チャネルと、
を備える流体噴射アセンブリ内で流体を循環させる方法であって、
前記ポンプにより、流体を、前記流体スロットから、前記ポンプチャネルを通してくみ出すステップと
前記ポンプにより、前記ポンプチャネルを通してくみ出された前記流体が、前記ポンプチャネルから前記接続チャネルを通り、さらに、それぞれの前記1以上の液滴発生器チャネルを通って前記流体スロットに戻るように、該流体を循環させる循環ステップ
を含む方法。
【請求項10】
それぞれの前記1以上の液滴発生器チャネルが複数の液滴発生器チャネルからなり、前記循環ステップが、前記流体が、前記ポンプチャネルから前記接続チャネルを通り、さらに、前記複数の液滴発生器チャネルを通って前記流体スロットに戻るように、該流体を循環させるステップを含むことからなる、請求項9の方法。
【請求項11】
前記複数の液滴発生器チャネルは、前記ポンプチャネルからより遠くにある液滴発生器チャネルの流体抵抗が、前記ポンプチャネルにより近い液滴発生器チャネルの流体抵抗よりも小さくなるように、異なる流体抵抗を有する、請求項10の方法。
【請求項12】
前記複数の液滴発生器チャネルが、チャネルの長さとチャネルの断面積からなるグループから選択された異なる寸法を有する、請求項11の方法。
【請求項13】
前記ポンプによって前記くみ出すステップが、再循環チャネル内に配置された熱抵抗型ポンプを作動させるステップを含み、前記再循環チャネルが、前記ポンプチャネル、前記接続チャネル、及び前記1以上の液滴発生器チャネルを備え、前記熱抵抗型ポンプは、前記熱抵抗型ポンプと前記流体スロットの間に、前記再循環チャネルの短い側と長い側が形成されるように配置される、請求項9〜12のいずれかの方法。
【請求項14】
熱抵抗型ポンプを作動させる前記ステップが、1つの駆動トランジスタで、複数の熱抵抗型ポンプを同時に駆動するステップを含むことからなる、請求項13の方法。
【請求項15】
前記液滴発生器の各々が、所定のノズル密度の噴射ノズルを有する、請求項1〜8のいずれかの流体噴射アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
インクジェットプリンター中の流体噴射装置は、ドロップ・オン・デマンドで流体液滴(インク滴)を噴射する。一般に、インクジェットプリンターは、一枚の紙などの印刷媒体に複数のノズルを通じてインク滴を噴射することによって画像を印刷する。ノズルは、典型的には、1以上のアレイをなすように配列されて、プリントヘッドと印刷媒体が互いに対して移動するときにノズルからインク滴を適切な順番で吐出することによって、印刷媒体に文字や他の画像が印刷されるようになっている。ある特定の例では、サーマルインクジェットプリントヘッドは、発熱体に電流を流して、熱を発生して、噴射チャンバ(firing chamber)内のほんの一部を気化させることによってノズルから液滴を噴射する。別の例では、圧電インクジェットプリントヘッドは、圧電材料アクチュエーターを使用して、インク滴をノズルの外に押し出す圧力パルスを生成する。
【0002】
インクジェットプリンターは、手頃なコストで高品質の印刷を提供するが、継続的に進歩していくためには、種々の開発課題を克服する必要がある。たとえば、気泡は、インクジェットプリントヘッドに継続して存在する課題である。印刷中に、空気が、インクから放出されて気泡を形成するが、この気泡は、噴射チャンバからプリントヘッド内の他の位置に移動して、インク流の閉塞、印刷品質の劣化、部分的には充填されているプリントカートリッジが空に見えるという問題、及びインク漏れなどの問題を引き起こす可能性がある。さらに、顔料ベースのインクを使用するときに生じる問題に顔料インク媒体分離(PIVS:pigment-ink vehicle separation)がある。顔料ベースのインクは、染料ベースのインクよりも長持ちし、かつ、変色しにくい傾向があるので、インクジェット印刷には好ましい。しかしながら、顔料粒子は、保管されている間、すなわち、使用されていない間に、沈殿してインク溶媒から分離(すなわち、PIVS)して、噴射チャンバ及びプリントヘッド内のノズルへのインク流を妨げるかまたは完全に遮断してしまう可能性がある。水や溶媒の蒸発などの「デキャップ(decap)」(すなわち、キャップ(蓋)がついていないノズルが周囲の環境にさらされる)に関連する他の要因が、上記PIVSや粘性インクプラグ形成(viscous ink plug formation)などの局所的なインク特性に影響を与えうる。デキャップは、液滴の飛しょう経路、速度、形状、及び色を変えてしまうという効果を与えうるが、これらの効果は、印刷品質に悪影響を及ぼす。
【0003】
以下、本発明のいくつかの例示的な実施形態を、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】1実施形態にしたがう、流体噴射アセンブリを組み込むのに適したインクジェットペンの1例を示す。
図2】1実施形態にしたがう、液滴発生器及び液滴発生器チャネルを横断する面に沿った流体噴射アセンブリの断面図である。
図3】1実施形態にしたがう、流体ポンプ及びポンプチャネルを横断する面に沿った流体噴射アセンブリの断面図である。
図4】1実施形態にしたがう、流体スロットの側面に沿った液滴発生器の例示的な配列を有する流体噴射アセンブリの部分底面図である。
図5】1実施形態にしたがう、流体スロットの側面に沿った液滴発生器の別の例示的な配列を有する流体噴射アセンブリの部分底面図である。
図6】1実施形態にしたがう、流体スロットの側面に沿った液滴発生器の別の例示的な配列を有する流体噴射アセンブリの部分底面図である。
図7】1実施形態にしたがう、流体スロットの側面に沿った液滴発生器の別の例示的な配列を有する流体噴射アセンブリの部分底面図である。
図8】1実施形態にしたがう、液滴発生器チャネルの幅が異なる液滴発生器の例示的な配列を有する流体噴射アセンブリの部分底面図である。
図9】1実施形態にしたがう、基本的な流体噴射装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
問題及び解決策(ソリューション)の概要
上記したように、インクジェット印刷システムの開発において解決されるべき種々の課題が依然として存在する。たとえば、そのようなシステムで使用されるインクジェットプリントヘッドには、インクの閉塞及び/またはインクの目詰まりという問題が依然として存在する。この問題に対するこれまでの解決策は、主として、プリントヘッドの使用前後にプリントヘッドを保守/整備することを含んでいる。たとえば、典型的には、ノズルが乾燥したインクで目詰まりしないように、プリントヘッドを使用しないときには、プリントヘッドに蓋(キャップ)をする。また、ノズルを使用する前に、ノズルを通してインクを吐出させることによってノズルからインクが出るようにする(プライミングの実施)。これらの解決策には、保守/整備用の時間に起因して、すぐに印刷することができない、また、保守/整備中に消費されるインク量が多いために総所有コストが高くなるといった欠点がある。したがって、インクジェット印刷システムにおけるインクの閉塞及び/または目詰まりを含むデキャップ性能は、依然として、全体的な印刷品質を低下させる可能性があり、また、総所有コストもしくは製造コストもしくはこれらの両方を高くする可能性がある基本的な問題である。
【0006】
プリントヘッドにおけるインクの閉塞または目詰まりには多くの原因がある。インクの閉塞の1つの原因は、プリントヘッドに気泡として蓄積する過度の空気である。インクがインク槽(インクリザーバ)に保管されているときなどにインクが空気にさらされると、余分な空気がインクに溶け込む。その後におけるプリントヘッドの噴射チャンバからのインク滴の吐出動作によって、インクから余分な空気が放出され、その放出された空気は気泡として蓄積される。それらの気泡は、噴射チャンバからプリントヘッドの他の領域に移動し、そこで、プリントヘッドへのインクの流れ及びプリントヘッド内のインクの流れを遮断する場合がある。
【0007】
顔料ベースのインクも、プリントヘッドにおけるインクの閉鎖や目詰まりを引き起こす場合がある。インクジェット印刷システムは、顔料ベースのインク及び染料ベースのインクを使用し、それら2つのタイプのインクには利点と欠点があるが、顔料ベースのインクが一般に好まれる。染料ベースのインクでは、染料粒子が液体中に溶けるので、インクは紙の中により深く染み込む傾向がある。このため、染料ベースのインクの方が効率が劣り、また、染料ベースのインクが画像のエッジでにじむことによって画像品質が低下する場合がある。これとは対照的に、顔料ベースのインクは、インク媒体(inkvehicle)と分散剤で覆われた高濃度の不溶性の顔料粒子とからなり、該分散剤は、顔料粒子がインク媒体に懸濁した状態を維持できるようにしている。これは、顔料インクが、紙に染み込むのではなく、紙の表面により長くとどまるのを助ける。この結果、顔料インクは、染料インクよりも効率がよい。なぜなら、印刷された画像中に同じ色の強さ(または色の濃さ)を生じるのに、顔料インクの方がインクが少なくて済むからである。顔料インクはまた、染料インクよりも長持ちし、かつ、変色しにくい傾向がある。なぜなら、顔料インクは、水にあたっときに染料インクよりも汚れにくいからである。
【0008】
一方、顔料ベースのインクの1つの欠点は、インクジェットペンのアウトオブボックス(out-of-box:箱から取り出した状態での)性能を劣化させる場合がある長期保管や他の極端な環境などの要因に起因してインクジェットプリントヘッド内でインク閉塞が生じる可能性があることである。インクジェットペンは、インク供給源に内部で結合している一方の端部で固定されているプリントヘッドを有する。インク供給源を、ペン本体内に内蔵することができ、または、ペン以外のプリンタ部分に配置してペン本体を介してプリントヘッドに結合することができる。長期の保管期間にわたる大きな顔料粒子に対する重力作用及び/または分散剤の劣化によって、PIVS(顔料−インク媒体分離)として知られている顔料の沈殿もしくはクラッシング(crashing)が生じうる。顔料粒子の沈殿もしくはクラッシングは、噴射チャンバへの及びプリントヘッド内のノズルへのインク流を妨げるかもしくは完全に遮断して、プリントヘッドによるアウトオブボックス性能を不十分なものにすると共に画像品質を低下させてしまう可能性がある。
【0009】
インクからの水分及び溶媒の蒸発などの他の要因もまた、PIVS、及び/またはインク粘度の増加、及び、粘性プラグ形成(viscous plugformation)に寄与して、不使用期間後において、デキャップ性能を劣化させ、及び、即時印刷を妨げる可能性がある。
【0010】
PIVS、並び、空気及び粒子の集積などの問題を解決する伝統的な方法は、インクの吐出、機械式ポンプ及び他の外部ポンプ、及び、サーマルインクジェット噴射チャンバ内でのインク混合を含む。しかしながら、これらの解決策は一般に、めんどうでコストが高く、かつ、インクジェットの問題を部分的に解決するだけである。上記の問題を解決するための最近の技術には、オンダイインク再循環によってインクの微小再循環(micro-recirculation)を行うものがある。ある微小再循環技術は、ターンオンエネルギー(turn on energy:TOE)未満のエネルギーのパルスをノズル噴射抵抗器に印加することによってノズルを噴射させることなく(すなわち、ノズルをオンにすることなく)、インクの再循環を引き起こすようにしている。この技術には、インクがノズル層にたまる危険があるなどのいくつかの欠点がある。別の微小再循環技術は、補助のマイクロバブルポンプを実装してインク再循環中のノズルの信頼性を改善するオンダイインク再循環アーキテクチャを含んでいる。しかしながら、この技術には、該補助のポンプによってノズルの信頼性とノズルの密度/解像度との間にトレードオフが生じるという欠点がある。なぜなら、該補助のポンプは、そのように使用されない場合には、液滴噴射要素として使用できるからである。
【0011】
本開示のいくつかの実施形態は、一般的には、流体噴射アセンブリ(すなわち、プリントヘッド。アセンブリはアッセンブリーともいう)の一定間隔もしくは均等間隔で配置された液滴噴射用サーマルインクジェットチャンバ間に、サイズ及び/または形状が不ぞろいの補助のポンプ抵抗(器)を配置して、流体噴射アセンブリのノズル密度及び元のノズルピッチを維持することによって、従来の微小再循環技術を改良するものである。ポンプ抵抗を再循環チャネル内に非対称に配置することによって、該チャネルを通して流体を循環させる慣性メカニズムが生成される。開示されている実施形態は、PIVS、空気及び粒子の集積、短いデキャップ時間、及び、保守/備及びプライミング中における多くのインク消費などの、現代のプリントヘッドIDS(IDS:インク供給システム)に関する重要な問題に対処すると共に、標準的なノズルピッチ及びノズル密度/解像度を維持する。
【0012】
1実施形態では、流体噴射アセンブリは、流体スロットと一定間隔で隔置された液滴発生器のグループを備える。液滴発生器はそれぞれ個別に、液滴発生器チャネルの第1の端部を介して流体スロットに結合しており、また、液滴発生器チャネルの第2の端部において接続チャネルに結合している。ポンプチャネル内に配置されているポンプは、2つの液滴発生器チャネルの間に配置されており、流体を循環させる、すなわち、ポンプチャネルを通して流体スロットから接続チャネルに流体を送り、液滴発生器チャンネルを通して流体スロットに流体を戻すように構成されている。別の実施形態では、流体噴射アセンブリにおいて流体を循環させる方法は、一定間隔で配置された液滴発生器間に均等に(または等間隔で)配置されたポンプチャネルを通じて流体スロットから流体をくみ出すことを含む。流体は、ポンプチャネルから、接続チャネルを通り、そして、一定間隔で配置された液滴発生器のうちの1つを含む液滴発生器チャネルを通って流体スロットに戻るように循環する。別の実施形態では、流体噴射装置は、流体スロットに沿って一定間隔で配置された、ある一定のノズル密度の噴射ノズルと、流体を流体スロットから噴射ノズルに送り、さらに流体スロットへと戻すように流体を循環させるために2つのノズル間に一定間隔で均等に配置された流体ポンプとを有する流体噴射アセンブリを備える。流体噴射装置はまた、液滴の噴射、及び、流体噴射アセンブリ中の流体の循環を制御するための電子コントローラを備える。
【0013】
例示的な実施形態
図1は、1実施形態にしたがう、本明細書に開示されている流体噴射アセンブリ102を組み込むのに適したインクジェットペン100の1例を示している。この実施形態では、流体噴射アセンブリ102は、液滴噴射プリントヘッド102として開示されている。インクジェットペン100は、ペンカートリッジ本体104、プリントヘッド102、及び電気的接点106を備えている。プリントヘッド102内の個々の液滴発生器204(たとえば、図2を参照)は、接点106に供給される電気信号によって電力(エネルギー)を与えられて、選択されたノズル108から流体の液滴を噴射する。この流体を、種々の印刷可能な流体、インク、前処理(用)組成物(pre-treatment composition)、及び定着液などの印刷処理で使用される任意の適切な流体とすることができる。いくつかの例では、流体を、印刷用流体(printing fluid)以外の流体とすることができる。ペン100は、該ペン100自体の流体供給源をカートリッジ本体104内に有することができ、または、たとえば、チューブ(管)を通じてペン100に接続された流体槽(流体リザーバ)などの外部の供給源(不図示)から流体を受け取ることができる。流体供給源を有するペン100は、一般に、流体供給源(中の流体)が空になると使い捨て可能である。
【0014】
図2及び図3は、本開示の1実施形態にしたがう、流体噴射アセンブリ102(プリントヘッド102)の断面図である。図2は、液滴発生器及び液滴発生器チャネルを横断する面に沿った流体噴射アセンブリ102の断面図であり、図3は、流体ポンプ及びポンプチャネルを横断する面に沿った流体噴射アセンブリ102の断面図である。図2及び図3を参照すると、流体噴射アセンブリ102は、流体スロット202が形成された基板200を備えている。流体スロット202は、流体槽などの流体供給源(不図示)と流体連絡している、図2の紙面の向こう側に向かって伸びる細長いスロットである。一般に、流体ポンプ206によって引き起こされた流れに基づいて、流体は、流体スロット202から、液滴発生器204を通って(すなわち、チャンバ214を横断して)循環する。図2及び図3の黒い矢印によって示されているように、ポンプ206は、流体再循環チャネルを通じて流体スロット202から液体をくみ出す。再循環チャネルは、流体スロット202から開始して、最初に、該再循環チャネルの開始部の近く(または、該開始部により近い側)に配置されているポンプ206(図3)を含むポンプチャネル208を通過する。再循環チャネルは、次に、接続チャネル210(図2及び図3)を通って伸びている。再循環チャネルはさらに、液滴発生器204を含む液滴発生器チャネル212(図2)を通り抜けて、流体スロット202に戻ったところで終了する。接続チャネル210を通る流れの方向は、図3では(紙面の手前側から紙面の向こう側に向かって流れることを示す)×を囲んでいる円で示されており、図2では、(紙面の向こう側から紙面の手前側に向かって流れることを示す)点(ドット)を囲んでいる円で示されていることに留意されたい。しかしながら、これらの流れの方向は例示に過ぎず、種々のポンプ構成、及び、流体噴射アセンブリ102のどこを横断する断面図であるかに依存して、それらの方向が逆になる場合もある。
【0015】
再循環チャネル内の流体ポンプ206の正確な位置は、多少変わりうるものの、いずれの場合でも、再循環チャネルの長さ方向の中心点(中間点)に関して非対称に配置される。たとえば、再循環チャネルのおよその中心点は、図2及び図3の接続チャネル210中のどこかにある。なぜなら、再循環チャネルは、図3の流体スロット202内のポイント「A」で始まって、ポンプチャネル208、接続チャネル210、及び液滴発生器チャネル212を通り、さらに、該流体スロット202に戻って図2のポイント「B」で終了するからである。したがって、ポンプチャネル208内の流体ポンプ206の非対称配置によって、ポンプ206と流体スロット202の間に再循環チャネルの短い側が形成され、及び、液滴発生器チャネル212を通って流体スロット202へと戻る、再循環チャネルの長い側が形成される。再循環チャネルの短い側における流体ポンプ206の非対称位置は、図2及び図3、並びに、後述する図4図8の黒い矢印で示すように、再循環チャネルの長い側に向かう方向(順方向)に正味の流体流れが生じるという該再循環チャネル内の流体ダイオード特性(すなわち、流体の一方方向への流れ)を基礎付けるものである。
【0016】
液滴発生器204を、流体スロット202の両側に、及び、図2の紙面の向こう側へと伸びているスロットの長さ方向に沿って(たとえば、互いに等間隔で)均等に配置することができる。しかしながら、さらに、いくつかの実施形態では、スロット202の両側にある液滴発生器を、上記とは異なる種々のサイズとし、及び/または、上記とは異なる種々の間隔で配置することもできる。各液滴発生器204は、ノズル108、噴射チャンバ214、及び、該チャンバ214内に配置された噴射素子(射出素子ともいう)216を備えている。液滴発生器204(すなわち、ノズル108、チャンバ214、及び噴射素子216)は、プリミティブと呼ばれるグループに編成されており、各プリミティブは、一度に2以上の噴射素子216が作動しないようになっている隣接する噴射素子216のグループから構成される。プリミティブは、典型的には、12個の液滴発生器204からなるグループを含んでいるが、これとは異なる、6個、8個、10個、14個、16個などの数の液滴発生器を含むこともできる。
【0017】
噴射素子216は、熱抵抗器(thermal resistor)や圧電アクチュエーターなどの、対応するノズル108を通じて流体液滴を噴射するように動作可能な任意のデバイスとすることができる。この例示的な実施形態では、噴射要素216及び流体ポンプ206は、基板200の上面の酸化物層218、及び、酸化物層218の上に付着(乃至堆積)させた薄膜スタック(薄膜層)220から形成された熱抵抗器である。薄膜スタック220は、一般に、酸化物層、噴射素子216及びポンプ206を画定する金属層、導電トレース、及びパッシベーション層を含む。流体ポンプ206を、熱抵抗器素子として説明したが、他のいくつかの実施形態では、流体ポンプを、流体噴射アセンブリ102のポンプチャネル208内に適切に配置することが可能な任意の種々のタイプのポンピング素子(pumping element)とすることができる。たとえば、別のいくつかの実施形態では、流体ポンプ206を、圧電アクチュエーターポンプ、静電ポンプ(electrostatic pump)、電気流体力学ポンプ(electrohydrodynamic pump)などとして実施することができる。
【0018】
基板200の上面にはまた、各噴射素子216を選択的に作動させるための、及び、流体ポンプ206を作動させるための、追加の集積回路222が形成されている。該追加の集積回路222は、たとえば各噴射素子216に関連付けられている電界効果トランジスタ(FET)などの駆動トランジスタを含んでいる。噴射素子216の各々は、噴射素子216の各々を個別に作動させることができる専用の駆動トランジスタを有しているが、ポンプ206の各々は、典型的には、専用の駆動トランジスタを有していない。これは、一般的には、ポンプ206を個別に作動させる必要がないからである。典型的には、1つの駆動トランジスタが、1つのグループの全てのポンプ206に同時に電力を供給する。流体噴射アセンブリ102はまた、壁及びチャンバ214を有するチャンバ層224を備えており、該チャンバ層224は、ノズル108を有するノズル層226から基板200を分離している。
【0019】
図4は、本開示の1実施形態にしたがう、流体スロット202の側部に沿った液滴発生器204の例示的な配列を示す、流体噴射アセンブリ102の部分底面図である。このように配列された液滴発生器204(ノズル108)は、12個のノズル108及び6個の小さなポンプ抵抗206を有する1つのプリミティブを表している。したがって、この実施形態では、2つのノズル108毎に(すなわち、2つの噴射素子216毎に)1つのポンプ抵抗206がある。上記したように、液滴発生器204内の噴射素子216の各々は、噴射素子216を個別に作動させることができる専用の駆動トランジスタを有しており、一方、典型的には、1つの駆動トランジスタが、1つのグループの全てのポンプ206に同時に電力を供給する。したがって、1つの駆動トランジスタが、6個の全てのポンプ206に電力を供給し、または、2つの駆動トランジスタの各々が、3つのポンプ206に電力を供給するなどのやり方で電力を供給することができる。したがって、図4に示す液滴発生器の配列は、13個の駆動トランジスタや14個の駆動トランジスタなどを実装することができる。図4では、上述の黒の矢印で示した流体再循環チャネルを明瞭に見ることができる。流体スロット202からの流体は、流体ポンプ206によって引き起こされた流れに基づいて液滴発生器204を通って循環する。ポンプ206は、流体を流体スロット202から流体再循環チャネルへとくみ出す。流体再循環チャネルは、一般的には、流体スロット202から始まり、先ず、ポンプチャネル208を通過する。再循環チャネルは続いて、接続チャネル210を通過する。再循環チャネルはさらに、各々が液滴発生器204を含んでいる1以上の液滴発生器チャネル212を通過する。そして、再循環チャネルは、液滴発生器チャネル212のスロット端部のところで終了し、そこで、流体スロット202に戻る。
【0020】
図4に示すように、液滴発生器204(ノズル108)は、流体スロット202の長さ方向に沿って、均等に、すなわち、互いに等しい間隔で配列されている。1実施形態では、インクジェットペン100のノズル108の密度は、600NPCI(ノズル/コラム・インチ:nozzles per column inch)であり、これは、スロット202の1つの側に沿った列(コラム)に1インチ当たり600個のノズルが配列されていることを表している。列は、流体スロット202の両側にあるので、600NPCIのインクジェットペン100は、一般に、1200ピクセルのペン、すなわち、1200DPI(ドット/インチ)のペンと見なされる。図4は、そのような1実施形態における微小再循環チャネルを可能にする形状・寸法の例を示している。したがって、ノズル108が均等に配置されている600NPCIインクジェットペン100では、ノズルピッチ(すなわち、ノズルの中心間の距離)を約42ミクロン(μm)とすることができる。したがって、ノズルチャンバ214及び液滴発生器チャネル212の直径(もしくは幅)が22ミクロンの場合は、10ミクロン幅のポンプチャネル208を、ノズル108の均等性または密度に影響を与えることなく、液滴発生器チャネル212の間に均等に(すなわち、両側の液滴発生器チャネルの各々から)5ミクロンだけ離して設けることができる。ポンプ抵抗206の形状及びサイズは、6×30ミクロン(μm)として示されているが、それらの形状及び寸法を、所望のポンピング効果を達成し、及び、ポンプ206を異なるサイズのポンプチャネル208内に設ける(乃至取り付ける)ために調整することができる。開示している実施形態では、微小再循環チャネル及びポンプの配列は、600NPCI(1200DPI)のノズル密度を有するインクジェットペン100に適用されるものとして図示及び説明されているが、均等に配置された液滴発生器204(ノズル108)間におけるそのようなチャネル及びポンプの均等配置は、たとえば、1200NPCI(2400DPI)などのより高いノズル密度を有するインクジェットペン100にも適用されることが考慮されていることに留意されたい。ノズル密度がより高いペンに適用されるそのような配列乃至配置は、日々進歩する微細加工技術によって実現されることが当業者には理解されよう。
【0021】
図5図7は、本開示のいくつかの実施形態にしたがう、流体スロット202の側部に沿った液滴発生器204の種々の例示的な配列を有する流体噴射アセンブリ102の部分底面図である。それぞれの実施形態において、液滴発生器204(ノズル108)の配列は、12個のノズル108を有する1つのプリミティブを表している。しかしながら、12個のノズル108間におけるポンプ抵抗206の数及びそれらの配列はそれぞれの実施形態間で異なっている。図5の実施形態は、1つのノズル108または1つの噴射素子216毎に1つのポンプ抵抗206を備えている。図6の実施形態は、4つのノズル108または4つの噴射素子216の毎に1つのポンプ抵抗206を備えている。図7の実施形態は、6個のノズル108または6個の噴射素子216毎に1つのポンプ抵抗206を備えている。各噴射素子216は、該噴射素子216を個別に作動できるようにするための専用の駆動トランジスタ(FET)を有しているが、図5図7の実施形態の各々では、1つの駆動トランジスタが、ポンプ206のブループ全体に同時に電力を供給するようにすることも、2つ以上の駆動トランジスタの各々が、ポンプ206のサブセットに同時に電力を供給するようにすることもできる。したがって、図5図7に示されている液滴発生器の配列は、わずか13個の駆動トランジスタを実装することもでき、または、極端な場合には、24個もの駆動トランジスタを実装することもできる。後者の場合には、異なるサイズの(すなわち、基板上で異なる大きさの空間を占める)FETを使用することができる。たとえば、比較的小さいFETをポンプ206用に使用し、それより大きいFETを噴射素子216用に使用することができる。図5図7に示されているそれぞれの実施形態において、流体ポンプ206によって引き起こされた流れに基づいて、流体スロット202からの流体は、液滴発生器204を通って再循環チャネルに沿って循環する。流体再循環チャネルは、黒い矢印で示されており、一般的には、流体スロット202から始まる。各再循環チャネルは、最初にポンプチャネル208を通り抜け、続いて、接続チャネル210を通る。再循環チャネルは次に、各々が液滴発生器204を含む液滴発生器チャネル212を通り抜ける。そして、再循環チャネルの各々は、液滴発生器チャネル212のスロット端部のところで終了し、そこで、流体スロット202に戻る。
【0022】
図5図7に示す実施形態の各々において、液滴発生器204(ノズル108)は、流体スロット202の長さ方向に沿って、均等に、すなわち、互いに等しい間隔で配列されている。1実施例では、インクジェットペン100のノズル108の密度は、600NPCI(ノズル/コラム・インチ)であり、これは、スロット202の1つの側に沿った列(コラム)に1インチ当たり600個のノズルが配列されていることを表している。ノズル108が均等に配置されている600NPCIインクジェットペン100では、標準的なノズルピッチ(すなわち、ノズルの中心間の距離)は約42ミクロンである。したがって、ノズルチャンバ214及び液滴発生器チャネル212の直径(もしくは幅)が22ミクロンの場合は、10ミクロン幅のポンプチャネル208を、ノズル108の均等性または密度に影響を与えることなく、液滴発生器チャネル212の間に均等に(すなわち、両側の液滴発生器チャネルの各々から)5ミクロンだけ離して設けることができる。図5図7に示されている実施形態は、ノズル108の均等性または密度に影響を与えることなく流体の再循環を可能にするように均等に配置された液滴発生器204(ノズル108)及びポンプ抵抗206のいくつかの可能な配列を例示している。
【0023】
図8は、本開示の1実施形態にしたがう、液滴発生器チャネル212の幅が異なる(すなわち、ノズルチャネルの幅が異なる)液滴発生器204の例示的な配列を有する流体噴射アセンブリ102の部分底面図である。この実施形態における液滴発生器204及びポンプ206は、上記の図7の実施形態と類似のやり方で配列されている。したがって、その液滴発生器204(ノズル108)の配列は、12個のノズル108を有するプリミティブを表しており、6個のノズル108または6個の噴射素子216毎に1つのポンプ抵抗206がある。さらに、上記の例と同様に、ノズル108の密度は600NPCIであり、ノズルピッチは約42ミクロンである。
【0024】
一般に、ポンプ206は、たとえば図7に示すように、複数の液滴発生器チャネル212を通して流体を再循環させるので、ポンプチャネル208に一番近い液滴発生器チャネル212が最も大きな流体流れを受け取り、ポンプチャネル208から一番遠くにある液滴発生器チャネル212が最も小さい流体流れを受け取る。したがって、流体の再循環は、全ての液滴発生器208を均一に通るわけではない。このように流体流れが異なることによって、ポンプ206により近いノズル108と、ポンプ206からより遠くにあるノズル108との間で生成される液滴の品質に変化が生じうる。図8に示す例示的な実施形態は、ポンプチャネル208からの液滴発生器チャネル212の距離に基づいて、該チャネル212の幅を変えることによってこの起こりうる再循環流れの違いを改善乃至除去する。より具体的には、液滴発生器チャネルの幅は、該液滴発生器チャネル212が、ポンプチャネル208から離れるにしたがって大きくなり、ポンプチャネル208に近づくにしたがって小さくなる。ポンプチャネル208に最も近い液滴発生器チャネル212は、その幅がより狭いので、その液滴発生器チャネル212を通る流体流れ(の量)を制限するが、ポンプチャネル208からより遠くにある液滴発生器チャネル212の幅はより広いので、そのより遠くにある液滴発生器チャネル212を通る流体流れ(の量)はより多くなる。したがって、液滴発生器チャネル212がポンプチャネル208に近いほど、液滴発生器チャネル212の幅が狭くなることによって、全ての液滴発生器チャネル212を通って循環する流体流れ(の量)がチャネル間でより均一になる傾向がある。
【0025】
一般に、このような流れの均一化を、再循環チャネルの長さに比例し、かつ、再循環チャネルの断面積に反比例するように、再循環チャネルの流体抵抗を(協働して)制御する(または、再循環チャネルの長さに比例し、かつ、再循環チャネルの断面積に反比例するようになっている再循環チャネルの流体抵抗を(協働して)制御する)種々の手段によって実現することができる。液滴噴射素子216から再循環ポンプ206まで通常伸びている再循環チャネルの流体抵抗を、再循環する流体の流量(または流速)を小さくするために、大きくすることができ、また、再循環する流体の流量(または流速)を大きくするために、小さくすることができる。再循環チャネルの長さを短くし、及び/または、再循環チャネルの断面積を大きくすることによって、該再循環チャネル内の流体抵抗を小さくすることができる。チャネルの幅と深さの両方を用いて該チャネルの断面積を制御することができる。したがって、チャネルの幅及び/または深さを大きくすることによって流体抵抗を小さくすることができる。
【0026】
次に、流体を流体噴射アセンブリ中を循環させる方法について説明する。この方法は、本開示の1実施形態にしたがうものであり、図1図8に関して説明した流体噴射アセンブリ102の実施形態に関連付けられるものである。
【0027】
この方法は、流体を流体スロットから、均等に隔置された液滴発生器間に配置されているポンプチャネルを通してくみ出すステップを含む。該ポンプチャネルを、均等に隔置された液滴発生器間に均等に配置することができる。くみ出すステップは、再循環チャネル内に非対称に配置されている熱抵抗型ポンプ(または、他のタイプのポンプ機構)を作動させるステップを含むことができ、ここで、該再循環チャネルは、ポンプチャネル、接続チャネル、及び、液滴発生器チャネルを備えている。熱抵抗型ポンプを作動させるステップは、1つの駆動トランジスタで、複数の熱抵抗型ポンプを同時に駆動するステップを含むことができる。
【0028】
この方法はさらに、ポンプチャネルからの流体が、接続チャネルを通り、さらに、均等に隔置された液滴発生器の1つを備えている1つの液滴発生器チャネルを通って該流体スロットへと戻るように、該流体を循環させる循環ステップを含む。この循環ステップは、ポンプチャネルからの流体が、接続チャネルを通り、さらに、各々(の液滴発生器チャネル)が均等に隔置された液滴発生器を備えている複数の液滴発生器チャネルを通って該流体スロットへと戻るように、該流体を循環させるステップを含むことができる。この循環ステップは、ポンプチャネルからの流体が、接続チャネルを通り、さらに、(少なくとも2つ以上の液滴発生器チャネルが)異なる流体抵抗を有する複数の液滴発生器チャネルを通って該流体スロットへと戻るように、該流体を循環させるステップを含むことができる。液滴発生器チャネルのこの異なる流体抵抗を、該チャネルの長さ及び断面積を変えることによって実現することができる(すなわち、より長いチャネルはより大きな流体抵抗を有し、より短いチャネルはより小さい流体抵抗を有する。また、断面積がより大きなチャネルはより小さな流体抵抗を有し、断面積がより小さなチャネルはより大きな流体抵抗を有する)。チャネルの断面積を、該チャネルの幅及び深さによって調整することができる。
【0029】
図9は、本開示の1実施形態にしたがう、基本的な流体噴射装置のブロック図である。流体噴射装置900は、電子コントローラ902及び流体噴射アセンブリ102を備えている。流体噴射アセンブリ102を、本開示において説明し及び/または図示し及び/または考慮した任意の流体噴射アセンブリ102の実施形態とすることができる。電子コントローラ902は、典型的には、的確なやり方で流体液滴を噴射させるために、流体噴射アセンブリ102と通信し及び該アセンブリ102を制御するためのプロセッサ、ファームウェア、及び他の電子回路を備える。
【0030】
1実施形態では、流体噴射装置900はインクジェット印刷装置である。この場合、流体噴射装置900は、流体を流体噴射アセンブリ102に供給するための流体/インク供給源及びアセンブリ904、噴射された流体液滴のパターンを受け取るための媒体を供給する媒体搬送(もしくは媒体供給)アセンブリ906、及び電源908も備えることができる。一般に、電子コントローラ902は、コンピュータなどのホストシステムからデータ910を受け取る。データ910は、たとえば、印刷される文書及び/またはファイルを表し、及び、1つ以上の印刷ジョブコマンド及び/またはコマンドパラメータを含む印刷ジョブを構成する。電子コントローラ902は、データ910から、文字、及び/または、シンボル(記号)、及び/または、他のグラフィックスもしくは画像を形成する液滴の噴射パターンを画定乃至決定する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9