特許第5700885号(P5700885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5700885フィルタレスコヒーレント受信装置のデジタル信号対信号ビート雑音低減
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5700885
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】フィルタレスコヒーレント受信装置のデジタル信号対信号ビート雑音低減
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/61 20130101AFI20150326BHJP
   H04J 14/00 20060101ALI20150326BHJP
   H04J 14/02 20060101ALI20150326BHJP
   G02F 2/00 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
   H04B9/00 610
   H04B9/00 E
   G02F2/00
【請求項の数】22
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-555412(P2013-555412)
(86)(22)【出願日】2011年11月15日
(65)【公表番号】特表2014-511058(P2014-511058A)
(43)【公表日】2014年5月1日
(86)【国際出願番号】US2011060675
(87)【国際公開番号】WO2012115693
(87)【国際公開日】20120830
【審査請求日】2013年11月7日
(31)【優先権主張番号】61/446,762
(32)【優先日】2011年2月25日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/270,210
(32)【優先日】2011年10月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504080663
【氏名又は名称】エヌイーシー ラボラトリーズ アメリカ インク
【氏名又は名称原語表記】NEC Laboratories America, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】フワング、 ユー−カイ
(72)【発明者】
【氏名】アイピー、 エズラ
(72)【発明者】
【氏名】キアン、 デイヨウ
(72)【発明者】
【氏名】ジ、 フィリップ ナン
(72)【発明者】
【氏名】青野 義明
(72)【発明者】
【氏名】田島 勉
【審査官】 川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−109847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00 − 10/90
H04J 14/00 − 14/08
G02F 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.1つのデータを分けることにて生成された2つのデータのうちの一方のデータを受信するフィルタレスコヒーレント受信機フロントエンドと、
b.前記2つのデータのうちの他方のデータについて信号−信号ビート雑音検波を実行する信号−信号ビート雑音検波器と、
c.前記フィルタレスコヒーレント受信機フロントエンドの出力と、前記信号−信号ビート雑音検波の結果と、を用いて、実時間信号−信号干渉除去を実行する実時間プロセッサと、
を有する、フィルタレスコヒーレント受信装置。
【請求項2】
データ復元用に前記実時間プロセッサに結合されているデジタルシグナルプロセッサ(DSP)を有する、請求項1に記載のフィルタレスコヒーレント受信装置。
【請求項3】
前記フィルタレスコヒーレント受信機フロントエンドは、ローカル発振器と偏光保持(PM)カプラとに結合されている90度光ハイブリッドを有する、請求項1に記載のフィルタレスコヒーレント受信装置。
【請求項4】
前記90度光ハイブリッドに結合されている複数のフォトダイオードを有する、請求項3に記載のフィルタレスコヒーレント受信装置。
【請求項5】
前記複数のフォトダイオードの各々に結合されているアナログ/デジタル変換器を有する、請求項4に記載のフィルタレスコヒーレント受信装置。
【請求項6】
前記信号−信号ビート雑音検波器は偏光ビームスプリッタ(PBS)を有する、請求項1に記載のフィルタレスコヒーレント受信装置。
【請求項7】
前記PBSに結合されている複数のフォトダイオードと、
前記複数のフォトダイオードの各々に結合されているアナログ/デジタル変換器と、
を有する、請求項6に記載のフィルタレスコヒーレント受信装置。
【請求項8】
前記実時間プロセッサは複数のデジタルリサンプリングブロックを有する、請求項1に記載のフィルタレスコヒーレント受信装置。
【請求項9】
直接検波された信号−信号ビート雑音は、該コヒーレント受信装置において、デジタル信号減算によって出力された複数の干渉項を相殺するために使用される、請求項8に記載のフィルタレスコヒーレント受信装置。
【請求項10】
複数の重み付け係数とそれらのI_x、Q_x、I_y、およびQ_yに対する正確なタイミングとは、装置の起動校正中に調整される固定値の集合である、請求項8に記載のフィルタレスコヒーレント受信装置。
【請求項11】
a.フィルタレスコヒーレント受信機フロントエンドが、1つのデータを分けることにて生成された2つのデータのうちの一方のデータを受信するステップと、
b.前記2つのデータのうちの他方のデータについて信号−信号ビート雑音検波を実行するステップと、
c.前記フィルタレスコヒーレント受信機フロントエンドの出力と、前記信号−信号ビート雑音検波の結果と、を用いて、実時間信号−信号干渉除去を実行するステップと、
を有する、フィルタレスコヒーレント受信装置においてデジタル信号対信号ビート雑音低減を実現する方法。
【請求項12】
前記実時間信号−信号干渉除去は、デジタル信号相殺を使用して信号−信号ビート雑音を除去するステップを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記信号−信号ビート雑音検波は、信号−信号ビート項を検波するステップを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記信号−信号ビート雑音検波は、光信号経路設定用の複数のPM(偏光保持)構成要素を使用して、前記コヒーレント受信機と同じ偏光基準値を維持するステップを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記信号−信号ビート雑音検波は、PBSを使用してxおよびy偏光上の信号−信号ビート項を求めるステップを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記信号−信号ビート雑音検波は、前記ビート項を検波するように複数の専用チャンネルを設けるステップを有する、請求項13から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
応答を一致させるようにコヒーレント受信機で使われているフォトダイオードと同じ周波数応答を有するフォトダイオードを前記信号−信号ビート雑音検波の実行時に使用するステップを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記実時間信号−信号干渉除去は、信号−信号干渉を除去するようにコヒーレント受信機出力と直接検波出力とをデジタル的に減算するステップを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
複数のWDMチャネル間で信号−信号ビート項を共有するステップを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
入力される波長分割多重(WDM)光信号をコヒーレント受信機と信号−信号干渉(SSI)検波受信機とへの2つの入力として設けられている2つの経路に分割し、前記光信号は前記コヒーレント受信機と前記SSI検波受信機に対して1つの偏光基準を有しているステップと、
前記コヒーレント受信機の4つの信号成分をデジタル化するステップと、
偏光ビームスプリッタ(PBS)を使用してSSI信号を別個のSSI XおよびY偏光に分離し、SSI XおよびY偏光をデジタル化するステップと、
前記SSI XおよびY偏光を前記コヒーレント受信機によって受信された前記信号成分から減算することによってデジタルSSI抑制を実行するステップと、
を有する、フィルタレスコヒーレント受信装置においてデジタル信号対信号ビート雑音低減を実現する方法。
【請求項21】
デジタル信号処理時に複数の性能フィードバックによって複数の重み付け係数と複数のタイミングオフセットとを調整するステップを有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記デジタルSSI抑制の後にデータ復元用の複数の信号成分を処理するステップを有する、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2011年2月25日に提出され、その内容が参照によって本明細書に援用される仮出願番号第61/446,762号に対する優先権を主張する。
【0002】
本出願は、フィルタレスコヒーレント光受信機に関する。
【背景技術】
【0003】
コヒーレント光検波は、成熟した商用技術になってきており、光ファイバ通信を革命的に変えている。コヒーレント検波の利点には、電場の復元によって可能になる、受信機感度の改善、スペクトル効率の増加、およびチャネル障害のデジタル補償がある。コヒーレント検波をチューナブル光学素子と組み合わせることは、動作が制御層ソフトウェアによって定められている複数の動的にチューナブルなトランシーバを促進することである。我々は、コヒーレント受信機を使用し、ノードにおける全ての分岐チャネルの中の各トランスポンダにおいて、ローカル発振器(LO)レーザーが復調の対象のチャネルの中心周波数付近でチューニングされているカラーレスおよびディレクションレスであり再構成可能な光挿入/分岐マルチプレクサ(ROADM)アーキテクチャを最近提案した。このアーキテクチャは、トランスポンダアグリゲータにおいて、光デマルチプレクサやチューナブルフィルタアレイなどの波長セレクタを必要とせず、そのため受信機はフィルタレス受信機と呼ばれる。
【0004】
コヒーレント受信機のフロントエンドは信号をLOと結合する光ハイブリッドである。2乗光検波の光検出の後、出力光電流は、所望の信号−LOビート項と、信号−信号およびLO−LOビートから発生する望ましくない干渉とからなる。LO−LOビートは、直流遮断を使用して容易に除去可能な直流(DC)項である。信号−信号干渉は、しかしながら、信号−LOビート項と同じダウンコンバートされた帯域を占め、WDMチャネルの数の増加に対して線形に増大する。たとえば、通常のLO対信号(光チャネルあたり)パワー比が20dBの場合、信号−信号干渉は、WDMチャネルの数が100に近づくと、信号―LOビート項に匹敵するパワーに達することになる。そのため、フィルタレス受信機の構成において、1つの重要な課題は、性能の低下が許容可能なように、信号−信号干渉項をできるだけ小さく維持することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
信号−信号干渉は、1対の同一のフォトダイオードがLOの逆の位相(180°の差)と混合されている信号によって照らされる平衡検波を使用して抑制されてもよい。そのため、LOの位相にかかわらず、1対のフォトダイオードの2つの入力の共通項である干渉は出力光電流を減算した後で相殺することができる。この場合、装置性能を、両フォトダイオードの応答度マッチング、光ハイブリッドのパワー不均衡、および2つの入力間のタイミング歪みなどの要因によって決まる光フロントエンドのコモンモード除去比(CMRR)を増加させることによって改善することができる。非平衡のフォトダイオードを平衡フォトダイオードに置き換えることによって、コヒーレント受信機の部品コストが上昇することがあるのに対して、CMRR>20dBのようにする構成もシステムの複雑さを増加させることがある余分な工学的取り組みが必要である。
【0006】
雑音と干渉の低減もまた、複数の冗長な信号混合経路をコヒーレント受信機内に追加することによって達成される。複数のミキシング部品として90度ハイブリッドの代わりに3×3カプラを使用することによって、コヒーレント検波において雑音と干渉の影響を最小にすることが可能で、それはこれらの共通項がIおよびQ成分の抽出時に低減されことになるからである。しかしながら、このアプローチは実装コストと複雑さを増加させることになり、それはダウンコンバートに必要な追加のチャネル(各偏光において2チャネルの代わりに3チャネル)のためである。また、IおよびQ成分の抽出のための余分なステップのために、より多くのDSPリソースが必要になるかもしれない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、フィルタレスコヒーレント受信機フロントエンドと、フィルタレスコヒーレント受信機フロントエンドに結合されている信号−信号ビート雑音検波器と、信号−信号干渉を除去するようにフィルタレスコヒーレント受信機フロントエンドと信号−信号ビート雑音検波器とに結合されている実時間プロセッサとを有しているフィルタレスコヒーレント受信装置用の装置と方法とが開示される。
【0008】
他の態様において、信号−信号ビート雑音干渉の低減は、フィルタレスコヒーレント受信機の複数の信号−信号ビート項を同時に検波することによって実現される。複数の通常のコヒーレント受信機チャネルの1つと同じ光検波器とADCの帯域応答と有することになる各偏光に対する1つの追加のチャネルがWDM信号帯域全体にわたってビート雑音検波専用となる。検波された信号−信号ビート項は、それから、DSPを使用して実時間で、デジタルサンプリング後に複数の通常のコヒーレント受信機チャネルに存在する信号−信号干渉を相殺するように使用することができる。
【0009】
さらに他の態様において、フィルタレスコヒーレント受信装置においてデジタル信号対信号ビート雑音低減を実現する方法は、入力される波長分割多重(WDM)光信号をコヒーレント受信機と信号−信号干渉(SSI)検波受信機とへの複数の入力として設けられている2つの経路に分割し、光信号は1つの偏光基準を有しているステップと、コヒーレント受信機の4つの信号成分をデジタル化するステップと、偏光ビームスプリッタ(PBS)を使用してSSI信号を別個のSSI XおよびY偏光に分離し、SSI XおよびY偏光をデジタル化するステップと、SSI XおよびY偏光をコヒーレント受信機によって受信された4つの信号成分から減算することによってデジタルSSI抑制を実行するステップとを有している。
【0010】
好ましい実施態様の複数の利点は、1つまたは2つ以上の以下の利点を有していてもよい。装置は、WDM装置においてフィルタレスコヒーレント受信機の構成についての信号−信号干渉抑制方法を提供する。複数のWDMチャネル全体について複数の信号−信号ビート雑音項目を同時に検波し、DSPにおいて適切な相殺を適用することによって、装置内に存在するWDMチャネルの増加による性能ペナルティを大幅に減少させることになる。フィルタレスコヒーレント受信機での複数の非平衡のフォトダイオードの使用はコストを削減する。一般的な偏光多重光回線について、装置は全部で4つのフォトダイオード、つまり平衡フォトダイオードの場合に必要な数の半分を使用する。装置は、ビート雑音検波用に2つの追加のチャネルを必要とする。しかし、信号−信号ビート雑音はWDM装置に存在する全ての光回線について同じになるので、検波されたビート雑音情報は、すべてのWDMチャネルで共有することができる。そのため、装置は、1つのWDMトランスポンダ内の光回線の数が増加すると、2つの追加のフォトダイオードと2つのADCの追加することと引き替えに、フォトダイオードの数を半分に減らすことによって、部品コストを大幅に減少させる。装置は、平衡検波の場合のような高CMRRの実現に必要なハードウェア技術に関わるハードウェアの複雑さも減少させる。また、装置は、平衡検波の純粋なハードウェアCMRRがフィルタレス用途に十分ではない(つまり、CMRR<20db)場合に、性能を改善する手段として平衡コヒーレント受信機にも適用することができる。前述の利点は、追加の信号経路設定と干渉の低減のために必要な動作のためにDSPの複雑さをわずかに増加させることによって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】典型的なフィルタレスコヒーレント受信機の図である。
図2】シミュレーション中に発生し、取得された複数の信号波形の図である。
図3】複数のチューナブル光学素子を備えているフィルタレスコヒーレント受信機の典型的な過程の図である。
図4】SSI検波共有用の典型的なWDMトランシーバの図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、標準的なコヒーレント受信機フロントエンドと、信号−信号ビート雑音検波とデジタル領域での信号−信号干渉の相殺用の追加のフロントエンドとを有している典型的なフィルタレスコヒーレント受信機を示している。図2はシミュレーション中に発生し取得された複数の信号波形を示している。複数のWDM光信号(10)は、2個のPMファイバ(21、22)を通して2個の異なるフロントエンドモジュールに接続されている偏光保持(PM)カプラ(20)を使用してまず分離される。フィルタレスコヒーレント受信機フロントエンドは、光ハイブリッド(30)、フォトダイオード(40〜43)、およびADC(50〜53)を使用したO/EダウンコンバートとA/D変換とのために、複数のWDMチャネルの1つをチューナブル周波数LO(11)を使用して選択する。直流遮断後、ダウンコンバートされた直交成分あたりの光電流パワーはLO信号ビート項と信号−信号ビート項とを有することになる。
【0013】
【数1】
【0014】
(R:フォトダイオード応答度、Pch:チャネルあたりの光パワー、PLO:LO光パワー、Nch:WDMチャネル数、R:受信機BW、fsp:WDMチャネル間隔)
信号−信号ビート雑音検波のフロントエンドは、xおよびy偏光上のWDM信号に対する直接検波とA/D変換とを可能にする偏光ビームスプリッタ(PBS、31)を有している。フィルタレスコヒーレント受信機と同じ偏光基準が使用され、そのため、複数のPM構成要素が信号分離と別個のモジュールへの経路設定とに使用される。直接検波用フォトダイオード(44と45)は、コヒーレント受信機モジュールに使用されるフォトダイオードと同じ周波数応答を有することになるのに対して、ADC(54と55)は、最適な応答と2つのモジュール間でのデジタルサンプリング後のタイミングマッチングとを保証するように、コヒーレント受信機で使用されるのと同じサンプリングクロック(56)を共有する。
【0015】
デジタル化された2つの信号がより小さいステップサイズを有するようにリサンプリング(60と61)された後で、直接検波された信号−信号ビート雑音SS_xとSS_y(74と75)とは、デジタル信号減算(81、83、85、および87)によって、コヒーレント受信機の複数の出力の位置で複数の干渉項を相殺するのに使用されることになる。SS_xとSS_yに対する重み付け係数とI_x、Q_x、I_y、およびQ_y(70〜73)に対するそれらの正確なタイミングとは、システム起動校正中に調整し設定できる値の固定された集合となる。いったん重み付け係数とタイミングオフセットとが設定されると、コヒーレントに受信された複数の信号がDSPにデータ復元(90)のために送られる前に、信号−信号干渉を除去するようにSS_xとSS_yとに実時間で適用可能である(80、82、84、および86)。
【0016】
信号−信号ビート雑音項は、WDM装置内で各光回線について同じとなるので(それらの偏光の基準が各コヒーレント受信機で同じである場合)、同じ直接検波モジュールを同じ複数のWDM装置内の全てのチャネルに対して使用することができる。トランスポンダバックプレーンにわたっての適切な信号経路設定と、複数の重み付け係数と複数のタイミングスキューとの別個の調整を実現するだけでよい。
【0017】
コヒーレント検波において、局部発振器(LO)レーザーは、イントラダイン検波を介して信号を電気ベースバンドに復調するために対象のチャネルの中心周波数付近にチューンされている。ダウンコンバートされた全帯域は、光検波器帯域によって与えられ、それは通常数十GHz内にある。電気ベースバンド信号はサンプリング可能であるので、対象のチャネルを抽出するのに使用される複数のデジタル信号処理(DSP)アルゴリズム、コヒーレント検波、およびDSPによって、受信機の位置での光フィルタリングの必要性がなくなる。これによって、複数の波長分割多重(WDM)チャネルを近接して1つにパッキング可能になり、それは複数のデジタルフィルタを任意の鋭いカットオフを備えるように構成可能であるためである。コヒーレント光直交周波数分割多重(CO−OFDM)において、複数の周波数サブチャネルをデジタル的に分離可能に維持しながら、実際にオーバーラップさせることができる。コヒーレント受信機のフロントエンドは信号をLOと組み合わせる光ハイブリッドである。次に2乗光検波が行われる。出力光電流は、信号−信号およびLO−LOビートから発生する干渉によって劣化した必要な信号−LOビート項からなる。干渉は、1対の同一のフォトダイオードがLOの逆の位相と混合されている信号によって照らされる「平衡検波」を使用して抑制されてもよい。光ハイブリッド内の複数のフォトダイオードの応答性の不正確さ、つまりパワーの不均衡によって、干渉抑制が低下する。信号−信号干渉は、WDMチャネルの数に合わせて増減するので、フィルタレス受信機は、性能の損失が受容可能なことを保証するように注意深く構成する必要がある。装置性能は、(i)光フロントエンドのコモンモード除去比(CMRR)の増加と(ii)LOのパワーとWDMチャネルあたりのパワーとの比の増加によって改善される。
【0018】
一実施形態において、流れ動作は以下のようになる。
1.入力WDM光信号を、コヒーレントRxとSSI検波モジュールへの2つの経路に分離する。
−コヒーレントRxとSSI Rxとの間の偏光基準は同じでなければならない。これは、信号分離用の複数のPMカプラとパッチコードとを使用することによって容易に行うことができる。
−ただし、本明細書で言及する偏光基準は受信機定義についてのみである。シグナル送信時に偏光回転が存在しても問題ではない。
2.コヒーレントRxに対して同じフロントエンド構成。
−4個の信号成分がデジタル化されることになる:I_x、Q_x、I_y、Q_y。
3.SSI Rxは、XおよびY偏波を分離するPBS、2個の非平衡PD、および2個のADCによって構成されている。
−2個の信号成分はデジタル化されることになる:SS_xとSS_y。(XおよびY偏光上のSSI)
4.デジタルSSI抑制
−デジタルリサンプリングが最初に適用されるので、タイミングオフセットを微調整できる。
−それから、SSIをコヒーレントRxによって受信された4個の成分から減算することができる。
−重み付け係数cIxとタイミングオフセットkIxを最初に計測することができる。それらも、DSPにおいて性能フィードバックによって微調整することができる。
5.デジタルSSI抑制後、4つの信号成分をデータ復元用の標準的なDSPアルゴリズムを使用して処理することができる。
【0019】
図4はSSI検波共有用の典型的なWDMトランシーバを示している。入力WDMチャネル200が複数のチャネルを分離するPMカプラと複数のパッチコード210に対して供給される。複数のチャネルの1つは、SSIモジュールを備えている共有SSI受信サンプリングクロックカードに供給される。複数のチャネルは、データを複数のDSP 240に供給する複数のコヒーレント受信モジュール242にも供給される。複数のカードは、SSIデジタル情報をバックプレーンにわたって2チャンネルを通して通信し、ADCサンプリングクロックも、バックプレーンにわたって供給される。
【0020】
一実施形態において、装置は、3×3カプラの代わりに使用される。3×3カプラのアプローチには、標準的な90度光ハイブリッドの再構成が必要であって、したがって、現在の商用装置に対しては非実用的である。通常の偏光多重光回線については、3×3カプラのアプローチには、各光回線について6個のフォトダイオードと6個のADCとが必要となる。しかし、本装置は、各光回線に4個のフォトダイオードと4個のADCと、全ての光回線用に追加の2個のフォトダイオードと2個のADCだけしか使用しない。そのため、装置は2個以上の光回線が存在する場合、コストに関してより良好である。3×3カプラのアプローチはDSPをより複雑にする必要があるが、それはIとQ成分を冗長なチャネルから抽出するのに必要な余分な動作が必要なためである。
【0021】
信号−信号ビート雑音を得るために直接検波を使用することによって、装置は、フィルタレスコヒーレント受信機構成によって発生する大きな信号−信号干渉を減少させることができる。直接検波ビート雑音項の複数の重み付け係数とタイミングスキューとを調整することによって、干渉の最適な相殺が平衡アナログ光検波の助けを使用してまたは使用せずにデジタル領域で実現できる。コヒーレントおよび直接検波モジュール用の複数のADCは同一のサンプリングクロック源を共有しているので、相殺過程でのタイミングウォークオフを防止することになる。
装置は、コヒーレント検波のモジュールと直接検波のモジュールに対する信号分配に複数の偏光保持構成要素を使用することができる。これによって、偏光ビーム分離後に両モジュールによって検波される複数のビート項が同じ偏光基準を有することになる。
【0022】
装置は、デジタル領域での信号-信号ビート雑音干渉の除去に複数の追加の直接検波チャネルを専用に使用することができる。これによって、フィルタレスコヒーレント受信機を使用する場合に、WDMチャネルの数が増加したときに、装置の性能を同様なレベルに保持することができる。干渉項は全ての光回線にわたって共通なため、WDMトランスポンダ内で1つの方向の検波モジュールだけが全てのコヒーレントトランシーバに対して必要である。直接検波情報を共有することによって、装置は構成要素のコストについて大きな利点を有する。
図1
図2
図3
図4