(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えばプレートフィン型の熱交換器においては、燃料が流れる流路は、コルゲートフィンによって区画された、小断面積のフィン間隙間の集合によって構成される。このため、燃料が各フィン間隙間に流入する際に、燃料の流速変動や圧力変動が大きくなる。シェルアンドチューブ型の熱交換器においても、燃料が流れる流路は、小断面積のチューブの集合によって構成される。このため、プレートフィン型熱交換器と同様に、燃料が各チューブに流入する際に、燃料の流速変動や圧力変動が大きくなる。
【0007】
一方、航空機用熱交換器では、例えば航空機の飛行中を含む、様々な使用環境下において、燃料の温度が低くなり、燃料中の水分が過冷却の状態になる場合がある。本願発明者の検討によれば、航空機用燃料の温度が所定の温度帯域にあるときには特に、その燃料の流速変動や圧力変動をきっかけとして、過冷却状態の水分が相変化をし、氷結することがわかった。水分の氷結により、熱交換器を構成する部品に氷が付着すると、それを起点として次々と、燃料中の水分が氷結をして、氷が堆積してしまうことにもなる。コルゲートフィンやチューブによって構成される燃料の流入口付近において氷が堆積してしまうと、堆積した氷が流入口を塞いでしまうことにもなる。
【0008】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、航空機用燃料とオイルとの間で熱交換を行う航空機用熱交換器において、燃料中の水分が相変化により氷結したり、熱交換器を構成する部材に氷が付着したりすることを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者は、熱交換器本体を、航空機用燃料中の水分の氷結を防止する昇温部と、航空機用燃料及びオイル間の熱交換を主に行う熱交換部とに分け、昇温部においては熱交換器本体を局所的に昇温することで、燃料中の水分の氷結及び氷の付着を防止する一方、熱交換部においては燃料の流れ方向とオイルの流れ方向とを対向させることで、熱交換効率を高めるようにした。
【0010】
具体的に、ここに開示する技術は、航空機用熱交換器に係り、この熱交換器は、航空機用燃料とオイルとが通過している最中に、前記航空機用燃料及び前記オイルの間での熱交換を行うよう構成された熱交換器本体を備える。
【0011】
前記熱交換器本体は、当該熱交換器本体を局所的に昇温することを少なくとも行うよう構成された昇温部と、前記航空機用燃料及び前記オイルの間での熱交換を行うよう構成された熱交換部とを有し、前記昇温部は、前記航空機用燃料の流入口及び前記オイルの流入口を有していて、当該流入口を通じて前記熱交換器本体内に流入したオイルによって、前記昇温部は昇温される。
【0012】
前記熱交換部は、前記航空機用燃料の流出口及び前記オイルの流出口を有すると共に、前記航空機用燃料の流れ方向と前記オイルの流れ方向とが対向流となるように、前記昇温部を通過したオイルが、前記航空機用燃料の前記流出口の付近で当該熱交換部に導入されるよう構成される。
【0013】
この構成によると、航空機用燃料及びオイル間で熱交換を行う熱交換器本体は、昇温部と熱交換部とを含んでいる。昇温部は、熱交換器本体の昇温を局所的に行う部分であり、航空機用燃料の流入口が設けられる。昇温部は、熱交換器本体の温度状態を高めておくことによって、熱交換器本体内に燃料が流入する際の流速変動や圧力変動が生じても、過冷却の状態の水分が氷結することを抑制する。また、水分が仮に氷結したとしても、氷が熱交換器本体を構成する部材に付着することを防止する。こうして、燃料中の水分の氷結及び氷の付着を防止することによって、昇温部において氷が堆積してしまうことが防止される。その結果、燃料の流入口が塞がってしまうことが未然に回避される。
【0014】
昇温部は、オイルの流入口を有している。熱交換器本体に流入した直後の高温のオイルが、昇温部を局所的に昇温する。尚、昇温部においては、熱交換器本体の局所的な昇温が主として行われる。燃料中の水分の氷結や氷の付着を防止する上では、航空機用燃料の温度そのものを高めることよりも、航空機用燃料に接触する熱交換器本体の温度状態を高めることの方が効果的なためである。但し、昇温部も、熱交換器本体の一部であるため、この昇温部においても、航空機用燃料とオイルとの間の熱交換は行われ得る。
【0015】
熱交換部は、航空機用燃料及びオイル間の熱交換を行う。熱交換部は、航空機用燃料の流出口及びオイルの流出口を有する。昇温部を通過したオイルは、航空機用燃料の流出口付近で当該熱交換部に導入される。熱交換部においては、航空機用燃料の流れ方向とオイルの流れ方向とが対向流となるように構成される。尚、「流出口付近」は、熱交換部の全体で、航空機用燃料の流れとオイルの流れとを対向流にすることが可能になるように、オイルを、燃料の流出口の近くに導入することを意味する。
【0016】
燃料の流入口とオイルの流入口との双方を昇温部に設けた場合、例えば前記特許文献1にも記載されているように、通常であれば、熱交換器における燃料の流れ方向とオイルの流れ方向とは並行になる。これは、熱交換器の熱交換効率を低下させる。
【0017】
これに対し、前記の構成では、燃料の流入口とオイルの流入口とを同じ位置に設けつつも、オイルは、昇温部を通過した後に、燃料の流出口の付近で当該熱交換部に導入される。熱交換部においては、燃料の流れ方向とオイルの流れ方向とを対向流にすることによって、熱交換器の熱交換効率が高まる。
【0018】
こうして、航空機用熱交換器において、航空機用燃料中の水分の氷結及び氷の堆積が防止されると共に、航空機用燃料及びオイル間の熱交換効率が高まる。これは、航空機用熱交換器の小型化及び軽量化に有利になる。
【0019】
前記の構成において、前記熱交換器本体は、エンドプレートによって両端開口が閉塞されることによって、前記オイルが流れるオイル流路を区画するように構成された筒状のシェルと、当該シェル内に配設されると共に前記エンドプレートを介して前記シェルの外に連通することによって、前記航空機用燃料が流れる燃料流路を構成する複数のチューブとを有するシェルアンドチューブ型であり、前記シェル内には、前記昇温部と前記熱交換部とを隔てるよう構成された隔壁部材が配設されている。
【0020】
つまり、ここに開示する特徴構成を有する熱交換器は、シェルアンドチューブ型の熱交換器本体によって構成することが可能である。シェルアンドチューブ型の熱交換器本体においては、オイル流路を区画するシェル内に、昇温部と熱交換部とを隔てる隔壁部材が配設されることになる。
【0021】
そして、このシェルアンドチューブ型の熱交換器本体において、前記昇温部は、前記エンドプレートと当該エンドプレートに隣り合う前記隔壁部材との間に設けられると共に、前記エンドプレートと前記隔壁部材との間には、少なくとも1のバッフルが配設されており、前記シェル内に前記オイルを流入させる流入口は、前記バッフルよりも前記隔壁部材の側の位置に設けられており、前記流入口を通じて前記シェル内に流入したオイルは、前記バッフルを横切った後、前記エンドプレートに向かって前記シェルの筒軸方向に流れるよう構成されている。
【0022】
シェルアンドチューブ型の熱交換器本体において最も昇温すべき部材は、航空機用燃料の流入口に対応するエンドプレートである。エンドプレートの昇温を効果的に行うために、シェル内(つまり、昇温部内)に流入したオイルを、このエンドプレートに十分に接触させる必要がある。例えばエンドプレートに近接して流入口を設けてしまうと、シェル内に流入したオイルがエンドプレートの表面に沿うように流れてしまい、エンドプレートを昇温する効果は低くなる。
【0023】
これに対し、前記の構成では、隔壁部材とエンドプレートとの間に少なくとも1つのバッフルを配設し、オイルの流入口を、バッフルよりも隔壁部材側に設けている。このことで、流入口を通じてシェルの径方向に、当該シェル内に流入したオイルは、前記バッフルを横切ってエンドプレートに向かってシェルの筒軸方向に流れるようになる。こうしてオイルはエンドプレートに対して十分に接触することになり、その結果、エンドプレートを効果的に昇温することが可能になる。
【0024】
シェルアンドチューブ型の前記熱交換器本体は、前記シェルの外側に設けられかつ、前記隔壁部材によって隔てられた前記昇温部と前記熱交換部とを連通させることによって、前記オイル流路の一部を構成するバイパス通路をさらに有している、としてもよい。
【0025】
こうすることで、昇温部を通過したオイルは、シェルの外側に設けられたバイパス通路を通って、シェル内に設けられた熱交換部における、燃料流路の流出口付近に導入することが可能になる。
【0026】
前記昇温部は、前記隔壁部材と前記エンドプレートとの間に設けられ、前記航空機用燃料の流入口を構成する前記チューブの先端は、前記昇温部を区画する前記エンドプレートに支持されており、前記チューブの先端は、前記エンドプレートを貫通せずに、当該エンドプレート内に埋設されている、としてもよい。
【0027】
チューブの先端がエンドプレートを貫通して、エンドプレートの表面から突出している場合、エンドプレートを昇温していたとしても、そのチューブ先端の温度は、エンドプレートの温度よりも低くなり得る。そのため、チューブの先端において航空機用燃料中の水分が氷結したり、チューブの先端に氷が付着したりする。また、チューブの先端がエンドプレートの表面よりも突出していると、堆積した氷によって流入口が塞がれやすい。
【0028】
これに対し、チューブの先端をエンドプレート内に埋設することで、相対的に温度の低い部位がなくなり、航空機用燃料中の水分が氷結することが防止される。また、エンドプレートの表面から突出する部位もなくなるため、氷の付着も防止される。その結果、燃料の流入口が塞がれてしまうことが、より一層効果的に防止される。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、前記の航空機用熱交換器では、熱交換器本体を昇温部と熱交換部とに分けている。昇温部では、熱交換器本体に流入直後の高温のオイルによって熱交換器本体を局所的に昇温することで、航空機用燃料中の水分が氷結したり、氷が付着したりすることを防止する。一方、熱交換部では、航空機用燃料の流れ方向とオイルの流れ方向とを対向流に構成することで、航空機用燃料及びオイル間の熱交換効率が高まり、航空機用熱交換器の小型化及び軽量化に有利になる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、航空機用熱交換器の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の実施形態の説明は例示である。
図1は、航空機用熱交換器1の構成を示す概念図である。以下、航空機用熱交換器1を、単に熱交換器1ともいう。熱交換器1と熱交換器本体とは実質的に同じである。熱交換器1は、航空機に搭載されかつ、航空機用燃料と、エンジンの潤滑油、又は、エンジンによって駆動される発電機の潤滑油と、の間で熱交換を行う。熱交換器1は、燃料によってオイルを冷却する。燃料は、航空機の飛行中を含む様々な使用環境下において、極めて低温になる場合がある。その場合、燃料中の水分が過冷却の状態になり得る。そうした状態の燃料は、例えば熱交換器1に流入する際の流速変動や圧力変動等をきっかけとして、熱交換器1の流入口付近で氷結する場合がある。また、熱交換器1を構成する部材の温度が低い場合は、その温度の低い部材に、氷が付着することもある。氷が付着すると、氷結が次々と生じて氷が次第に堆積してしまうこともある。堆積した氷は、熱交換器1の燃料の流入口を塞いでしまうことにもなる。
図1に示す熱交換器1は、そうした燃料中の水分の氷結、及び、氷の付着を防止すると共に、熱交換器1の熱交換効率を高める。
【0032】
図1に示す熱交換器1は、一点鎖線で囲まれた昇温部11と、それ以外の熱交換部12とに分けられている。昇温部11は、燃料の流入口を有している。昇温部11は、燃料の温度が低く、また、燃料の流入口付近は、燃料の流速変動及び圧力変動が大きいため、燃料中の水分が氷結し易い部分である。
【0033】
図1に示す熱交換器1において、燃料は、白抜きの矢印で示すように、熱交換器1における紙面右側から流入し、熱交換器1内を右から左に向かって流れた後、熱交換器1における紙面左側から流出する。燃料は、熱交換器1内で、昇温部11を通過した後、熱交換部12に導入され、その後、熱交換部12から流出する。燃料の流出口は、熱交換部12に設けられている。
【0034】
昇温部11はまた、後述の通り、燃料中の水分の氷結及び氷の付着を防止すべく、熱交換器1を局所的に昇温する。熱交換器1の昇温は、オイルの熱を利用する。昇温部11には、オイルの流入口が設けられる。
図1において黒矢印で示すように、高温のオイルは先ず、昇温部11に流入するから、この昇温部11を、効果的に昇温することが可能になる。こうして、低温の燃料が流入口に流入する際に、流速変動や圧力変動が生じたときでも、高い温度状態によって、燃料中の水分の氷結が抑制される。また、流入口付近に氷が付着することも、抑制される。さらに、氷が付着したとしても、高い温度状態によって氷は速やかに剥がれるか、又は、消滅する。そうして、氷の堆積が回避され、その結果、堆積した氷によって流入口が塞がってしまうことが回避される。昇温部11では、燃料の温度を高めることよりも、熱交換器1を昇温することによって、燃料中の水分の氷結及び氷の付着を防止する。
【0035】
熱交換部12は、燃料とオイルとの熱交換を主に行う部分である。燃料の流入口とオイルの流入口とを、同じ位置に設けた場合、通常であれば、熱交換器内において、燃料の流れ方向とオイルの流れ方向は同じになり、熱交換器は並行流型になる。
【0036】
これに対し、
図1に示す熱交換器1では、昇温部11を通過したオイルを、熱交換部12における燃料の流出口の付近で、熱交換部12内に導入する。こうすることで、熱交換部12においては、紙面右から左向きの燃料の流れ方向に対し、オイルの流れ方向は、紙面左から右向きとなり、燃料の流れ方向とオイルの流れ方向とは対向するようになる。こうして、熱交換器1を対向流型に構成することによって、熱交換効率が高まる。このことは、熱交換器1の小型化及び軽量化を可能とし、航空機に搭載される熱交換器として有利になる。
【0037】
このように、ここに開示する熱交換器1は、オイルによって温度状態を高める昇温部11と、対向流型に構成された熱交換部12とを備え、それによって、燃料中の水分の氷結及び氷の堆積の防止と、熱交換効率の向上とを両立させる点が特徴である。以下、この特徴構成を備えたプレートフィン型の熱交換器と、シェルアンドチューブ型の熱交換器とについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0038】
(プレートフィン型熱交換器の例)
図2は、参考形態として、前記の特徴構成を備えたプレートフィン型の熱交換器2の外観を例示している。この熱交換器2も、航空機用燃料とオイルとの間で熱交換を行う。
図2において、符号21はコア、符号23は、コア21に取り付けられかつ、コア21に対し燃料を流入及び流出させるヘッダ、符号24は、コア21に取り付けられかつ、コア21に対しオイルを流入及び流出させるヘッダ、符号25は、詳細は後述するが、コア21に取り付けられかつ、コア21の昇温部11を通過したオイルのためのミキシングヘッダである。以下において、説明の便宜上、
図2に示すように、X軸、Y軸及びZ軸を定義する。つまり、X軸は、紙面右手前と左奥とを結ぶ方向に延び、Y軸は、紙面左手間と右奥とを結ぶ方向に延び、Z軸は、紙面下と上とを結ぶ方向に延びる。
【0039】
コア21は、
図3に示す燃料流路210と、
図4に示すオイル流路220とを、図においては明示しないチューブプレートを介して、交互に積層して構成されている。尚、
図3においては、オイルのヘッダ24及びミキシングヘッダ25の図示を省略し、
図4においては、燃料のヘッダ23の図示を省略している。コア21は、後述する各部材を、例えばろう付けによって一体化することで製造することが可能である。
【0040】
燃料流路210は、
図3に示すように、チューブプレートと、サイドバー211とによって区画されている。燃料流路210の内部は、X軸方向に延びる仕切り部材212によってY軸方向に仕切られている。これによって、燃料流路210は、それぞれX軸方向に延びる往路210aと復路210bとを含む2パスの流路に構成されている。燃料流路210の流入口213及び流出口214はそれぞれ、コア21のX軸を向いた側面(
図3における紙面右側の面)に、Y軸方向に並んで開口している。燃料流路210の流入口213及び流出口214の間は、仕切り部材212によって隔てられることになる。
【0041】
このコア21における昇温部11は、一点鎖線で囲まれた部分であり、この部分は、燃料の流入口213付近に対応する部分である。コア21において昇温部11以外の部分は、熱交換部12である。
【0042】
燃料のヘッダ23は、図例では、その内部が流入側と流出側とに仕切られている。ヘッダ23の流入側は、各層の燃料流路210における流入口213に連通し、ヘッダ23の流出側は、各層の燃料流路210における流出口214に連通している。また、ヘッダ23には、燃料が流入するポート231が流入側に連通して取り付けられ、燃料が流出するポート232が流出側に連通して取り付けられている。尚、燃料のヘッダは、図例とは異なり、流入側ヘッダと流出側ヘッダとで、別体にしてもよい。
【0043】
燃料流路210内には、伝熱面積を拡大させるコルゲートフィン215、216が配設されている。コルゲートフィン215、216は、矩形状や三角形状に切り出されることにより、往路210a、復路210b及び往路210aと復路210bとをつなぐUターン部の全体に配設されている。このコア21においては、昇温部11に配置されるコルゲートフィン215と、熱交換部に配置されるコルゲートフィン216とは種類が異なる。昇温部11に配置されるコルゲートフィン215は、熱交換部12に配置されるコルゲートフィン216と比較して熱交換効率が低いコルゲートフィンである。具体的に、
図3においてはコルゲートフィンを概念的に図示しているが、コルゲートフィン215は、相対的にピッチの広いプレーン型のコルゲートフィンである。これに対し、コルゲートフィン216は、相対的にピッチの狭いヘリンボーン型のコルゲートフィンである。尚、昇温部11に配置されるコルゲートフィン215、及び、熱交換部12に配置されるコルゲートフィン216はそれぞれ、適宜の種類のコルゲートフィンを選択することが可能である。
【0044】
図3に白抜きの矢印で示すように、流入側のポート231を介してヘッダ23内に流入した燃料は、流入口213からコア21内に流入した後、往路210a内をX軸方向に流れる。燃料は、その後、Uターン部で反転して、復路210b内をX軸方向の逆向きに流れる。そうして、燃料は、流出口214から流出し、ヘッダ23に至る。燃料は、その間に、主に熱交換部12において、オイルとの熱交換を行って、オイルを冷却する一方で、燃料の温度は高まる。ここで、燃料の流入口213においては、コルゲートフィン215によって区画された小断面積の各フィン間隙間内へと燃料が流入するため、大きな流速変動及び圧力変動が生じる。このときに、燃料中の水分が過冷却状態であれば、その水分が、流速変動及び圧力変動をきっかけとして氷結し、氷が流入口213付近に付着するようになる。こうして流入口付近に着氷すると、その氷に接した燃料の水分が次々と氷結し、氷が堆積することになる。その結果、堆積した氷によって、流入口213が塞がれてしまうことにもなる。
【0045】
前記の構成の燃料流路210に対し、オイル流路220は、
図4に示すように構成されている。つまり、オイル流路220は、チューブプレートと、サイドバー221とによって区画されている。オイル流路220の内部には、燃料流路210とは異なり、Y軸方向に延びる流路部材223が配設されており、この流路部材223は、オイル流路220内を、X軸方向に2つの領域に分けている。昇温部11は、X軸方向については、流路部材223によって、熱交換部12に対し隔てられる一方で、Y軸方向については、熱交換部12に連通している。
【0046】
熱交換部12内には、X軸方向に延びる仕切り部材222が配設されており、これによって、熱交換部12内のオイル流路220は、燃料流路210と同様に、それぞれX軸方向に延びる、往路220aと復路220bとを含む2パスの流路に構成されている。オイル流路220の流入口224及び流出口225は、コア21のY軸を向いた側面(
図4における紙面下側の面)に、X方向に並んで開口している。オイル流路220の流入口224は、昇温部11に設けられている。また、オイル流路220の流入口224及び流出口225の間は、流路部材223によって隔てられることになる。
【0047】
流入口224及び流出口225が開口するコア21の側面に対して逆側の側面には、第2流出口226及び第2流入口227が、X軸方向に並んで設けられている。第2流出口226は、昇温部11を通過後のオイルが、コア21の外に一旦流出する開口である。第2流入口227は、オイルがコア21内に再流入する開口である。第2流出口226及び第2流入口227の間もまた、流路部材223によって隔てられている。
【0048】
オイルのヘッダ24も、燃料のヘッダ23と同様に、その内部が流入側と流出側とに仕切られている。ヘッダ24の流入側は、各層のオイル流路220における流入口224に連通し、ヘッダ24の流出側は、各層のオイル流路220の流出口225に連通している。ヘッダ24には、燃料が流入するポート241が流入側に連通して取り付けられ、燃料が流出するポート242が流出側に連通して取り付けられている。尚、オイルのヘッダも、流入側ヘッダと流出側ヘッダとで、別体に構成してもよい。
【0049】
ミキシングヘッダ25は、各層のオイル流路220における第2流出口226に連通すると共に、各層のオイル流路220における第2流入口227に連通している。各層のオイル流路220からミキシングヘッダ25内に流入したオイルは、そのミキシングヘッダ25内で混ざり合った後、第2流入口227を通じて、各層のオイル流路220内に分配されることになる。これにより、オイルの温度の均等化が図られる。
【0050】
オイル流路220内にも、伝熱面積を拡大させるコルゲートフィン228が配設されている。コルゲートフィン228は、三角形状又は矩形状に切り出されることによって、オイル流路220内の全体に配設されている。オイル流路220内のコルゲートフィン228は、適宜の種類のコルゲートフィンを採用することが可能である。
図4では概念的に示しているが、ここでは、セレート型のコルゲートフィンを採用している。
【0051】
図4に黒矢印で示すように、流入側のポート241を介してヘッダ24内に流入したオイルは、流入口224からコア21内、つまり、昇温部11に流入した後、流路部材223によって区画された流路内をY軸方向に流れる。そうして、昇温部11を通過した後、熱交換部12における燃料の流出口214付近に導入され、その後、第2流出口226を通じてミキシングヘッダ25内に流入する。オイルは、ミキシングヘッダ25内で各層のオイル流路220の昇温部11を通過したオイルと混ざり合う。こうして温度が略均等化したオイルは、第2流入口227を通じて、コア21内に、再び流入する。
【0052】
オイルはその後、熱交換部12における往路220a内をX軸方向に流れた後、Uターン部で反転して、今度は復路220b内をX軸方向の逆向きに流れる。そうして、オイルは、流出口225から流出し、ヘッダ24に至る。熱交換部12においては、燃料の流れ方向とオイルの流れ方向とが対向する。
【0053】
このように、プレートフィン型の熱交換器2では、オイルの流入口224を昇温部11に設けているため、コア21に流入した直後の高温のオイルによって、オイル流路220と燃料流路210とを区画するチューブプレートや、燃料流路210内に配設したコルゲートフィン215の温度状態を高めることが可能になる。一般的に、燃料流路210における流入口213付近においては、燃料中の水分の氷結や氷の付着が起こり易いところ、燃料が接触する金属部分の温度を高めておくことによって、燃料中の水分が氷結してしまうことが防止される。また、金属部分に氷が付着することも、効果的に防止される。また、仮にコルゲートフィン215等に氷が付着したとしても、高い温度状態であることで、氷が剥がれるか、又は、氷が消滅する。その結果、燃料の流入口213付近において氷が堆積することが確実に防止される。従って、燃料の流入口213が堆積した氷によって塞がってしまうことが回避される。
【0054】
尚、燃料の流入口213付近において、燃料中の水分が氷結し、その氷が燃料流路210内に流入したときには、燃料流路210内を流れる燃料の圧力によって、氷は強制的に流れるため、コルゲートフィン215、216等に氷が付着することは、ほとんど生じない。従って、燃料流路210の途中において氷が堆積することは生じない。また、燃料流路210内では、燃料の流速変動や圧力変動も小さいため、燃料中の水分が氷結することも起き難い。
【0055】
ここで、
図4に示すように、オイル流路220において、流路部材223によって区画される流路の幅W
1は、熱交換部12における、往路220a及び復路220bの幅W
2と比較して狭くされている。これにより、この流路を通過する際のオイルの流速は、相対的に高くなる。この幅狭に設定された流路は、昇温部11におけるオイルの流路に相当するため、昇温部11においては、オイルの流速が相対的に高くなる。このことは、昇温部11における、オイルからコア21を構成する部材(前述した、チューブプレートや、コルゲートフィン215)への熱伝達率を高め、昇温部11の温度状態を高くする上で有利になる。
【0056】
一方、燃料流路210においては、前述の通り、昇温部11に配設されるコルゲートフィン215は、その熱交換効率が相対的に低い。これにより、昇温部11において暖められるコルゲートフィン215の温度を、燃料の温度に対して可能な限り高く維持することが可能になるから、昇温部11における、燃料中の水分の氷結を防止する上で有利になる。また、この例では、昇温部11に配設するコルゲートフィン215を、フィンピッチが相対的に広いコルゲートフィンとしている。これによってコルゲートフィンによって区画される各フィン間隙間の横断面積が相対的に広くなる。これは、燃料が流入する際の流速変化及び圧力変化を緩和すると共に、燃料中の水分が氷結したとしても、その氷は流入口を通過してコア21内に流入し易くなる。このこともまた、燃料の流入口が、堆積した氷によって閉塞してしまうことを防止する上で有利になる。
【0057】
こうして昇温部11においては、燃料中の水分の氷結及び氷の付着を防止する一方で、熱交換部12においては、燃料の流れ方向とオイルの流れ方向とが対向するように構成されているため、熱交換効率を高めることが可能になる。ここで、燃料流路210を、往路210aと復路210bとを含む2パスに構成することは、燃料の流入口213と流出口214とを隣接して配置することを可能にする(
図3参照)。そのため、オイル流路220において、流路部材223を設けて、昇温部11におけるオイルの流れ方向を、燃料の流れ方向に対して交差する方向に設定することで、昇温部11を通過したオイルを、熱交換部12における燃料の流出口の付近に、自動的に導入することが可能になる。つまり、プレートフィン型の熱交換器1は、そのレイアウト上、前述した特徴構成の実現が容易である。
【0058】
ここで、オイル流路220の構成としては、例えば
図5に示すように、ミキシングヘッダ25を省略することも可能である。すなわち、
図5の構成例では、流路部材223がY軸方向について、昇温部11に対応する短い長さに設定されている。それに伴い、第2流出口226及び第2流入口227が省略されている。そして、昇温部11に隣接する箇所、言い換えると、燃料流路210における流出口214の付近に、三角形状のコルゲートフィン229を配設しており、これによって、コア21の内部において、昇温部11を通過した後のオイルの流れ方向を、Y軸方向からX軸方向へと変更している。尚、
図5において、
図4に示す構成例と同じ構成について、同じ符号を付している。このように、ミキシングヘッダ25を省略することによって、熱交換器2の小型化及び軽量化にさらに有利になる。
【0059】
また、プレートフィン型の熱交換器において、燃料流路及びオイル流路はそれぞれ、2パスに構成することに限らず、1パスに構成してもよいし、3パス以上に構成してもよい。但し、1パスや3パス等の場合には、燃料流路の流入口と流出口とが隣り合って配置されなくなることから、オイル流路の構成を変更する必要がある。例えば前述したミキシングヘッダ25を備えた構成例のように、昇温部11を通過したオイルを、コア21に設けた流出口を通じて、コア21の外のミキシングヘッダに流入させると共に、燃料流路の流出口付近に設けた流入口を通じて、オイルをコア内に再び流入させるようにしてもよい。
【0060】
(シェルアンドチューブ型熱交換器の例)
図6は、
図1に示す特徴構成を備えたシェルアンドチューブ型の熱交換器3の外観を例示している。この熱交換器3も、航空機用燃料とオイルとの間での熱交換を行う。以下において、説明の便宜上、
図6に示すように、X軸、Y軸及びZ軸を定義する。つまり、X軸は、紙面右手前と左奥とを結ぶ方向に延び、Y軸は、紙面左手前と右奥とを結ぶ方向に延び、Z軸は紙面下と上とを結ぶ方向に延びる。
【0061】
熱交換器3は、円筒状のシェル31を備えており、シェル31の両端開口はそれぞれ、図示を省略する燃料通路に接続されている。燃料は、
図6の例では、シェル31の筒軸がX軸方向に一致するよう配置された熱交換器3の手前側から流入し、熱交換器3内をX軸方向に流れた後、熱交換器3の奥側から流出する。これに対し、オイルは、詳細は後述するが、シェル31の外周面に取り付けられた流入側ポート32を通じてシェル31内に流入し、同じくシェルの外周面に、流入側ポート32に並んで取り付けられた流出側ポート33を通じてシェル31外に流出する。
【0062】
図7は、シェルアンドチューブ型の熱交換器3の縦断面図である。シェル31の両端開口は、エンドプレート310、311によって閉塞されている。各エンドプレート310、311は、燃料の流入側(つまり、
図7における紙面右側)及び流出側(つまり、紙面左側)のそれぞれにおいて、燃料の通路と、シェル31内のオイルの流路とを区画する区画壁として機能する。
【0063】
エンドプレート310、311によって区画されたシェル31内には、多数のチューブ34とバッフル35、36とを備えて構成されるマトリックス30が配設されている。後述する構成のマトリックス30は、各部材をろう付けにより一体化することで製造可能である。
【0064】
チューブ34は、燃料流路を構成する細管である。チューブ34は各々、X軸方向に延びると共に、シェル31の径方向及び周方向に所定の間隔を空けて配列されている。尚、
図7においては、理解容易のために、一部のチューブ34の図示を省略している。各チューブ34の両端は、エンドプレート310、311に形成された貫通孔に内挿されており、これによって、各チューブ34は、エンドプレート310、311によってその両端が支持されている。また、各チューブ34の両端開口はそれぞれ、エンドプレート310、311を介して、燃料の通路に連通している。こうして、各チューブ34において、燃料の流入側のエンドプレート310に支持された端部開口は、燃料の流入口として機能し、燃料の流出側のエンドプレート311に支持された端部開口は、燃料の流出口として機能する。
【0065】
ここで、
図8に拡大して示すように、燃料の流入側のエンドプレート310においては、チューブ34の先端が、エンドプレート310内に埋設しており、
図8に仮想的に示すように、チューブ34の先端は、エンドプレート310を貫通して、エンドプレート310の表面から突出するようには構成されていない。これによって、後述の通り、チューブ34の先端に氷が堆積することを防止する。
【0066】
前述の通り、エンドプレート310、311によって区画されたシェル31内には、複数のバッフル35、36が、X軸方向に等間隔を空けて配置されている。複数のバッフル35、36は、中央部に貫通孔が形成されていると共に、シェル31の内周面に内嵌する円環状のリングバッフル35と、中央部に貫通孔が形成されていない一方で、シェル31の内周面に対して径方向に所定の隙間が設けられる円盤状のディスクバッフル36と、を含んでいる。リングバッフル35とディスクバッフル36とは、X軸方向に交互に配設されている。各チューブ34は、リングバッフル35及びディスクバッフル36を貫通して配設されている。
【0067】
このような構成によって、燃料は、
図7に白抜きの矢印で示すように、熱交換器3における燃料の流入側において、先端開口を通じてチューブ34内に流入し、シェル31内においては、チューブ34に沿ってX軸方向に流れた後、熱交換器3における燃料の流出側において、各チューブ34の先端開口を通じて流出するようになる。
【0068】
シェル31内には、流入側のエンドプレート310に対して、X軸方向に所定の距離だけ離して隔壁部材37が配設されている。隔壁部材37は円盤状であって、シェル31の内周面に内嵌している。これによって、隔壁部材37は、シェル31内を、X軸方向について、互いに連通しない2つの空間に分割している。隔壁部材37は、昇温部11と熱交換部12とを隔てる部材であり、隔壁部材37と流入側のエンドプレート310との間の空間が昇温部11を構成し、隔壁部材37と流出側のエンドプレート311との間の空間が熱交換部12を構成する。隔壁部材37とエンドプレート310との間には、リングバッフル35が配設されている。
【0069】
流入側ポート32は、昇温部11に連通しており、具体的には、隔壁部材37とエンドプレート310との間に配設されたリングバッフル35よりも、隔壁部材37の側に連通している。流出側ポート33は、熱交換部12に連通しており、具体的には、隔壁部材37の近傍に位置している。つまり、シェル31に対するオイルの流入口321と流出口331とは、隔壁部材37を間に挟んで隣り合って設けられている。
【0070】
シェル31において、オイルの流入口321及び流出口331に対し筒軸を挟んだ逆側には、シェル31外にオイルを流出させる第2流出口381及びシェル31内にオイルを流入させる第2流入口382がそれぞれ設けられている。第2流出口381は、隔壁部材37と流入側のエンドプレート310との間、図例では特に、隔壁部材37とエンドプレート310との間に配設されたリングバッフル35と流入側のエンドプレート310との間に設けられ、これによって第2流出口381は、昇温部11に連通している。これに対し、第2流入口382は、流出側のエンドプレート311の近傍、より詳しくは、流出側のエンドプレート311と、X軸方向に並設した複数のバッフル35、36の内、最も燃料の流出側に配設されたリングバッフル35との間に設けられている。こうして、第2流入口382は、熱交換部12における燃料の流出口付近に連通している。
【0071】
第2流出口381と第2流入口382とは、シェル31の外に設けられたバイパス通路38を介して互いに連通している。バイパス通路38は、昇温部11と熱交換部12とをシェル31の外側で互いに連通する。図例において、バイパス通路38は、シェル31の外周面に沿って、X軸方向に延びており、シェル31を構成する円筒に対して一体的に設けられている。尚、図例では、バイパス通路38を、シェル31に対して一体的に設けているが、バイパス通路38は、第2流出口381と第2流入口382とをつなぐ、シェル31とは別体の、例えばパイプであってもよい。
【0072】
このような構成によって、
図7に黒矢印で示すように、オイルは、流入側ポート32を通じてシェル31の昇温部11内に流入する。熱交換器3内に流入した直後の高温のオイルによって、昇温部11の温度状態が高まる。具体的には、流入側のエンドプレート310の温度が高まる。ここで、オイルの流入口321は、リングバッフル35を挟んでエンドプレート310とは逆側に位置しており、特に第2流出口381が、リングバッフル35とエンドプレート310との間に開口しているため、昇温部11に流入したオイルは、リングバッフル35を横切って、エンドプレート310に向かってX軸方向に流れるようになる。こうして、オイルとエンドプレート310に向かって直交する方向に流すことによって、高温のオイルとエンドプレート310の接触を増やし、エンドプレート310の温度を効果的に高めることが可能になる。つまり、オイルの流入口をリングバッフル35よりもエンドプレート310側に設け、それによって、流入口とエンドプレート310とが近接してしまうと、流入口を通じて、シェル31の径方向(つまり、Z軸方向)に流れて、昇温部11内に流入したオイルは、その昇温部11内においても、エンドプレート310の表面に沿って流れてしまう。このようなオイルの流れは、エンドプレート310の昇温を効率的に行うことができない。これに対し前記の構成は、オイルの流入口321の位置を、エンドプレート310から離しかつ、その流入口321とエンドプレート310との間にリングバッフル35を介在させることによって、径方向に流入したオイルの流れ方向を変更して、筒軸方向の流れを作り出すことができる。その結果、エンドプレート310の昇温効果を高めることが可能になる。
【0073】
こうしてエンドプレート310の温度状態が高くなるため、燃料の流入口近傍において、燃料中の水分が氷結してしまうことが防止される。また、氷がエンドプレート310等に付着することも防止される。その結果、チューブ34の先端開口によって構成される燃料の流入口が、堆積した氷によって塞がれてしまうことが未然に回避される。
【0074】
また、チューブ34の先端は、
図8に示すように、エンドプレート310内に埋設しており、同図に仮想的に示すように、エンドプレート310の表面から突出していない。前述したように、エンドプレート310は、シェル31の内側から暖めるようにしているが、チューブ34の先端がエンドプレート310の外側の表面から突出していると、チューブ34の先端の温度が、エンドプレート310よりも低くなり、チューブ34の先端に氷が付着して、氷が堆積してしまう虞がある。これは特にチューブ34の先端開口の閉塞を招く。
【0075】
これに対し、チューブ34の先端を、エンドプレート310内に埋設することは、チューブ34の先端の温度を、エンドプレート310の温度と同様に高い温度状態に維持することが可能になる。また、チューブ34の先端が露出していないため、チューブ34の先端に氷が付着することも防止される。その結果、燃料の流入口付近で氷の堆積を防止して、チューブ34の先端開口が塞がってしまうことが、確実に防止される。
【0076】
昇温部11内を流れたオイルは、昇温部11に開口する第2流出口381を通じて、シェル31外に一旦流出する。オイルは、バイパス通路38内を、X軸方向に流れて、第2流入口382を通じてシェル31内の熱交換部12に流入する。
【0077】
熱交換部12における、燃料の流出側に流入したオイルは、燃料の流れ方向に対向するように、X軸方向に流れる。具体的に、熱交換部12には、リングバッフル35とディスクバッフル36とが交互に配設されているため、オイルは、
図7に黒矢印で示すように、リングバッフル35の貫通孔をX軸方向に通過した後、シェル31の径方向外方に流れ、ディスクバッフル36とシェル31の内周面との隙間をX軸方向に通過し、その後、シェル31の径方向の内方に流れるようになる。こうしてオイルは、X軸方向のアキシャル流れと、径方向のラジアル流れとが組み合わさって、各チューブ34を横切るように熱交換部12内を流れ、その間に、チューブ34内を流れる燃料との間で熱交換を行う。このように、熱交換部12においては、X軸方向については、燃料の流れ方向とオイルの流れ方向とが対向するように構成されているため、熱交換効率を高めることが可能になる。
【0078】
そうして、熱交換部12内をX軸方向に流れて、隔壁部材37の近傍にまで到達したオイルは、流出側ポート33を通じて、シェル31の外に流出する。
【0079】
尚、シェル31に対するオイルの流入口321の配置は、図例に限定されるものではなく、例えば、流入側のエンドプレート310に対してさらに離して配置し、エンドプレート310と隔壁部材37との間に、2以上のバッフルを配設するようにしてもよい。複数のバッフルは、例えばリングバッフル35とディスクバッフル36とを交互に配置してもよい。
【課題】航空機用燃料とオイルとの間で熱交換を行う航空機用熱交換器において、燃料中の水分が相変化により氷結したり、熱交換器を構成する部材に氷が付着したりすることを防止する。
【解決手段】航空用熱交換器3は、熱交換器本体(マトリックス30及びシェル31)を備える。熱交換器本体は、シェル内に配設された隔壁部材37によって隔てられた、熱交換器本体を局所的に昇温することを少なくとも行うよう構成された昇温部11と、航空機用燃料及びオイルの間での熱交換を行うよう構成された熱交換部12とを有する。昇温部内には、少なくとも1のバッフル35が配設され、オイルの流入口321はバッフルよりも隔壁部材の側の位置に設けられる。熱交換部は、航空機用燃料の流出口を有する。昇温部を通過したオイルは、熱交換部における、航空機用燃料の流出口付近で当該熱交換部に導入される。熱交換部は、対向流型に構成される。