(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るねじ込み式鋼管杭の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
<実施の形態1>
図1及び
図2は、それぞれ本発明の実施の形態1であるねじ込み式鋼管杭の一例を示すものである。
図1の(a)は、ねじ込み式鋼管杭の要部の正面図であり、
図1の(b)は、
図1の(a)のねじ込み式鋼管杭の平面図である。
図2の(a)は、ねじ込み式鋼管杭の要部の右側面図であり、
図2の(b)は、
図2の(b)のねじ込み式鋼管杭の平面図である。ここに例示するねじ込み式鋼管杭は、鋼管10と、複数(図示の例では2つ)の鋼製板20a,20bとを備えて構成されている。尚、これら
図1及び
図2に示すねじ込み式鋼管杭においては、先端側を下方、杭頭側を上方として説明する。
【0023】
鋼管10は、内部に中空部11を有した円筒状の形態を成すものである。この鋼管10の先端部には、
図3に示すように、複数(図示の例では2つ)の取付部12a,12bが形成されている。尚、
図3では、取付部12a,12bを示しやすくするように、先端側を上方、杭頭側を下方となるように示している。
【0024】
これら取付部12a,12bは、鋼管10の先端部を円周方向に2等分することにより、該先端部の円周方向に沿って形成されている。より詳細に説明すると、取付部12aは、段部13a,13bを介した状態で他の取付部12bに隣接しており、それぞれの先端面12a1,12b1が円周方向の一方から他方に向けて漸次上方に向けて傾斜している。つまり、一方の取付部12aの先端面12a1は、一方の段部13aの下端から他方の段部13bの上端に連続するよう傾斜して形成されており、他方の取付部12bの先端面12b1は、他方の段部13bの下端から一方の段部13aの上端に連続するよう傾斜して形成されている。
【0025】
ここで段部13a,13bの高さhは、ねじ込み式鋼管杭を埋設する地盤G(
図4参照)の状態、鋼管10の外径(以下、杭径ともいう)、鋼製板20a,20bの数等によって適宜決められるが、杭径に対する比が0.1〜0.5程度であることが望ましい。
【0026】
尚、ここで例示する2つの取付部12a,12bは、先端面12a1,12b1の延在長さ、並びに先端面12a1,12b1の傾斜角が互いに等しいものである。
【0027】
鋼製板20a,20bは、それぞれが鋼管10よりも外径が大きい円形状鋼板を2分割して形成されるもので、半円状を成している。ここで円形状鋼板の外径(以下、翼径ともいう)は、ねじ込み式鋼管杭を埋設する地盤Gの状態、鋼管10の外径、鋼製板20a,20bの数等によって適宜決められる。また、円形状鋼板の材質は、SM490材やSM570材相当の強度を有するものが用いられており、その厚み(板厚)は、10〜100mm程度とされる。
【0028】
一方の鋼製板20aは、一方の取付部12aの先端面12a1に沿って溶接等により取り付けられることで、鋼管10の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられている。この鋼製板20aの外周部は、
図1の(b)及び
図2の(b)にも示すように、鋼管10の径方向外部に向けて突出している。また、この鋼製板20aにおいては、鋼管10の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられていることにより、傾斜下端部21aと傾斜上端部22aとが形成されている。
【0029】
他方の鋼製板20bは、他方の取付部12bの先端面12b1に沿って溶接等により取り付けられることで、鋼管10の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられている。この鋼製板20bの外周部は、
図1の(b)及び
図2の(b)にも示すように、鋼管10の径方向外部に向けて突出している。また、この鋼製板20bにおいては、鋼管10の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられていることにより、傾斜下端部21bと傾斜上端部22bとが形成されている。
【0030】
そして、上述したように2つの取付部12a,12bは、先端面12a1,12b1の延在長さ及び傾斜角が互いに等しいものであるから、それぞれの取付部12a,12bに取り付けられる鋼製板20a,20bの傾斜角も互いに等しいものとなる。これにより、傾斜下端部21aと傾斜下端部21bとは、2つの鋼製板20a,20bにおいて最も下方に位置する部分となり、傾斜上端部22aと傾斜上端部22bとは、2つの鋼製板20a,20bにおいて最も上方に位置する部分となる。
【0031】
このようなねじ込み式鋼管杭においては、杭径に対する翼径の比が例えば1.5〜3とされる。
【0032】
図1中の符号14は、閉塞部材である。閉塞部材14は、例えば三角形状を成す板状体であり、段部13a,13bが形成されることにより鋼管10の先端部において側方に開口する部分を閉塞するものである。尚、本実施の形態1では、閉塞部材14により閉塞しているが、本発明においてはかかる部分を閉塞しなくてもよい。これはかかる部分の開口面積が小さいために鋼管の内部に土砂等が侵入しないからである。但し、本実施の形態1のように該部分を閉塞部材14で閉塞することによりねじ込み式鋼管杭の強度を向上させることができる。
【0033】
このようなねじ込み式鋼管杭においては、鋼製板20a,20bは円形状鋼板を分割して構成されるものであるので、
図1の(b)及び
図2の(b)に示すように、鋼管10の先端開口が、鋼製板20a,20bにより略閉塞されてこれら鋼製板20a,20bの中央域に土砂取り込み用の開口が形成されていない閉端構造となっている。
【0034】
上記ねじ込み式鋼管杭においては、鋼製板20a,20bがそれぞれ鋼管10の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられているため、鋼管10の中心軸Lが地面に対して直交するよう配置した場合に、
図1の(c)及び
図2の(c)に示すように、地面に対する鋼製板20a,20bの投影形状が楕円となる。この場合において、傾斜下端部21a,21bと傾斜上端部22a,22bとを結ぶ線分Aが楕円の短軸となり、一方の鋼製板20aの傾斜下端部21aより
図1の(c)及び
図2の(c)において反時計回りに90°回転した位置となる中央部23aと、他方の鋼製板20bの傾斜下端部21bより反時計回りに90°回転した位置となる中央部23bとを結ぶ線分Bが楕円の長軸となる。
【0035】
上記鋼製板20a,20bにおいては、最も下方に位置する傾斜下端部21a,21bの下面にそれぞれ犠牲部材25が溶接等により取り付けられている。これら犠牲部材25は、例えば掘削刃等により構成されるもので、
図1に示すように上方あるいは正面から見た場合に矩形状をなし、
図2に示すように右方から見た場合に平行四辺形状を成す直方体である。これら犠牲部材25の材質は、特に限定されるものではなく、掘削対象となる地盤の強度に応じてその強度が適宜選択されるものである。
【0036】
これら犠牲部材25は、対応する傾斜下端部21a,21bにおいて、該傾斜下端部21a,21bを有する鋼製板20a,20bよりも径方向外部に突出するよう取り付けられている。ここで、犠牲部材25の鋼製板20a,20bからの突出長さ(張り出し長さ)は、翼径に対する犠牲部材25の径方向外部へ突出する長さの比が0.05以下であることが好ましい。翼径に対する犠牲部材25の径方向外部の突出長さの比がこのような範囲にあることにより、ねじ込み式鋼管杭が鋼管10の中心軸回りに回転することによる犠牲部材25の軌跡が上記長軸を形成する中央部23aの軌跡に近づけることができる。
【0037】
ここで具体的な寸法例を示すと、鋼管10の外径が1000mm、鋼製板20a,20bの傾きが14.4°で、投影形状(楕円)の長軸が2000mmで、短軸が1937mmとなる場合、犠牲部材25の径方向外部への突出長さは、31.5mmに調整されるのが望ましい。
【0038】
上記構成を有するねじ込み式鋼管杭を用いた施工例を、
図4を用いて説明する。
図4の(a)に示すように、回転力を付与して鋼管10の中心軸L回りに回転させてねじ込み式鋼管杭を地面gに接地させる。この場合、一方の鋼製板20aにおいては傾斜下端部21aが地盤Gに最初に貫入する部分であり、他方の鋼製板20bにおいては傾斜下端部21bが地盤Gに最初に貫入する部分となる。しかも、これら2つの傾斜下端部21a,21bは、2つの鋼製板20a,20bにおいて最も下方に位置する部分であるから、2つの鋼製板20a,20bにおいて地盤G中に最初に貫入する始端部となる。
【0039】
次に、
図4の(b)に示すように、2つの鋼製板20a,20bの突出部分のねじの作用により、ねじ込み式鋼管杭が地盤G中にねじ込まれる。この場合、犠牲部材25は、鋼管10の中心軸L回りに回転することによる自身の軌跡が中央部23a,23bの軌跡と略一致する。この犠牲部材25は、地盤Gに接触して摩耗しても鋼製板20a,20bの外周部が摩耗する割合を減少させることで鋼製板20a,20bの摩耗量を低減させる。
【0040】
この結果、
図4の(c)に示すように、ねじ込み式鋼管杭が地盤G中に埋設された場合に、鋼製板20a,20bの摩耗量が低減されて、鋼製板20a,20bは十分な面積及び板厚を有し、これにより支持体として大きな地盤支持力を得ることができる。
【0041】
従って、本発明の実施の形態1であるねじ込み式鋼管杭によれば、鋼製板20a,20bの摩耗量を低減させて、良好な地盤支持力を得ることができる。
【0042】
また、上記ねじ込み式鋼管杭によれば、犠牲部材25が、2つの鋼製板20a,20bにおいて最も下方(先端)となる傾斜下端部21a,21bに鋼製板20a,20bの径方向外部に突出するよう取り付けられているので、硬い地盤Gに対して行うように、鋼管10の中心軸L回りに正回転させて地盤G中にねじ込んだ後に一旦逆回転させて引き抜き、再度正回転させて地盤G中にねじ込むような施工を行っても、鋼製板20a,20bの傾斜下端部21a,21bと地盤Gとの間に隙間が形成されることを抑制し、直進性及び安定性に優れた施工を実施することができる。
【0043】
更に、上記ねじ込み式鋼管杭によれば、犠牲部材25を傾斜下端部21a,21bに配設しただけなので、鋼製板の投影形状が円となるよう鋼製板の形状を調整するのに比べて、ねじ込み式鋼管杭の製造を容易なものとすることができる。
【0044】
<実施の形態2>
図5−1は、本発明の実施の形態2であるねじ込み式鋼管杭の一例を示すものである。
図5−1の(a)は、ねじ込み式鋼管杭の要部の正面図であり、
図5−1の(b)は、ねじ込み式鋼管杭の平面図である。尚、この
図5−1に示すねじ込み式鋼管杭においては、先端側を下方、杭頭側を上方として説明する。
【0045】
ここに例示するねじ込み式鋼管杭は、鋼管30と、複数(図示の例では2つ)の鋼製板40a,40bとを備えて構成されている。
【0046】
鋼管30は、内部に中空部31を有した円筒状の形態を成すものである。この鋼管30の先端部には、複数(図示の例では2つ)の取付部32a,32bが形成されている。これら取付部32a,32bは、鋼管30の先端部を円周方向に2等分することにより、該先端部の円周方向に沿って形成されている。
【0047】
より詳細に説明すると、取付部32aは、上記円周方向の一方側の一端部から該円周方向の他方側の他端部に向けて先端面32a1が漸次上方に向けて傾斜する態様で形成されている。また、取付部32bは、上記円周方向の一方側の一端部から該円周方向の他方側の他端部に向けて図示せぬ先端面が漸次上方に向けて傾斜する態様で形成されている。これら取付部32aと取付部32bとでは、取付部32aの他端部と取付部32bの一端部とが連続し、かつ取付部32aの一端部と取付部32bの他端部とが段部33aを介して連続している。つまり、取付部32aと取付部32bとは見かけ上は一体のものであり、取付部32aの先端面32a1が段部33aの下端から取付部32bの一端部に連続するよう傾斜して形成されており、取付部32bの先端面が取付部32aの他端部から段部33aの上端に連続するよう傾斜して形成されている。尚、本実施の形態2においては、取付部32aの先端面32a1の傾斜角と、取付部32bの先端面の傾斜角とは略等しいものであるが、本発明においては、傾斜角が異なっていてもよい。
【0048】
鋼製板40a,40bは、それぞれが鋼管30よりも外径が大きい円形状鋼板を分割して形成されるもので、半円状を成している。ここで円形状鋼板の外径(以下、翼径ともいう)は、ねじ込み式鋼管杭を埋設する地盤の状態、鋼管30の外径(以下、杭径ともいう)、鋼製板40a,40bの数等によって適宜決められる。また、円形状鋼板の材質は、SM490材やSM570材相当の強度を有するものが用いられており、その厚み(板厚)は、10〜100mm程度とされる。
【0049】
一方の鋼製板40aは、一方の取付部32aの先端面32a1に沿って溶接等により取り付けられることで、鋼管30の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられている。この鋼製板40aの外周部は、
図5−1の(b)にも示すように、鋼管30の径方向外部に向けて突出している。また、この鋼製板40aにおいては、鋼管30の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられていることにより、傾斜下端部41aと傾斜上端部42aとが形成されている。
【0050】
他方の鋼製板40bは、他方の取付部32bの先端面に沿って溶接等により取り付けられることで、鋼管30の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられている。この鋼製板40bの外周部は、
図5−1の(b)にも示すように、鋼管30の径方向外部に向けて突出している。また、この鋼製板40bにおいては、鋼管30の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられていることにより、傾斜下端部41bと傾斜上端部42bとが形成されている。
【0051】
そして、上述したように取付部32aの他端部と取付部32bの一端部とが連続し、かつ取付部32aの一端部と取付部32bの他端部とが段部33aを介して連続していることから、鋼管30の外周部の一部の下方、すなわち取付部32aの他端部と取付部32bの一端部とが連続する部分で2つの鋼製板40a,40bが互いに交差して配設されている。また、このように鋼管30の外周部の一部の下方で2つの鋼製板40a,40bが互いに交差していることで、この交差部分から傾斜下端部41bまでの離間距離よりも該交差部分から傾斜下端部41aまでの離間距離の方が長くなり、これにより、鋼製板40aの傾斜下端部41aが傾斜下端部41bよりも下方に位置し、2つの鋼製板40a,40bにおいて鋼製板40aの傾斜下端部41aが最も下方に位置する部分となる。
【0052】
このようなねじ込み式鋼管杭においては、杭径に対する翼径の比が例えば1.5〜3とされる。
【0053】
また、上記ねじ込み式鋼管杭においても、上述した実施の形態1と同様に、段部33aが形成されることにより鋼管30の先端部において側方に開口する部分(図示せず)が形成されており、かかる部分は図示せぬ閉塞部材により閉塞されている。尚、本実施の形態2では、鋼管30の先端部において側方に開口する部分を図示せぬ閉塞部材により閉塞しているが、本発明においてはかかる部分を閉塞しなくてもよい。これはかかる部分の開口面積が小さいために鋼管の内部に土砂等が侵入しないからである。但し、本実施の形態2のように該部分を閉塞部材で閉塞することによりねじ込み式鋼管杭の強度を向上させることができる。
【0054】
そして、このようなねじ込み式鋼管杭においては、鋼製板40a,40bは円形状鋼板を分割して構成されるものであるので、
図5−1の(b)に示すように、鋼管30の先端開口が、鋼製板40a,40bにより略閉塞されてこれら鋼製板40a,40bの中央域に土砂取り込み用の開口が形成されていない閉端構造となっている。
【0055】
上記ねじ込み式鋼管杭においては、鋼製板40a,40bがそれぞれ鋼管30の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられているため、鋼管30の中心軸Lが地面に対して直交するよう配置した場合に、
図5−1の(c)に示すように、地面に対する鋼製板40a,40bの投影形状が楕円となる。かかる投影形状において、一方の鋼製板40aの傾斜下端部41aと鋼管30の中心軸Lを通る線分Cが最も短い径(以下、短径ともいう)となり、一方の鋼製板40aの傾斜上端部42aより
図5−1の(c)において時計回りに90°回転した位置となる中央部44aと、他方の鋼製板40bの傾斜下端部41bより反時計回りに90°回転した位置となる中央部44bとを結ぶ線分Dが最も長い径(長径ともいう)となる。
【0056】
上記鋼製板40a,40bにおいては、最も下方に位置する傾斜下端部41aの下面に犠牲部材45が溶接等により取り付けられている。これら犠牲部材45は、例えば掘削刃等により構成されるものである。この犠牲部材45の材質は、特に限定されるものではなく、掘削対象となる地盤の強度に応じてその強度が適宜選択されるものである。
【0057】
この犠牲部材45は、傾斜下端部41aにおいて、該傾斜下端部41aを有する鋼製板40aよりも径方向外部に突出するよう取り付けられている。ここで、犠牲部材45の鋼製板40aからの突出長さ(張り出し長さ)は、翼径に対する犠牲部材45の径方向外部へ突出する長さの比が0.05以下であることが好ましい。翼径に対する犠牲部材45の径方向外部の突出長さの比がこのような範囲にあることにより、ねじ込み式鋼管杭が鋼管30の中心軸L回りに回転することによる犠牲部材45の軌跡が上記長径を形成する中央部44a,44bの軌跡に近づけることができる。
【0058】
上記構成を有するねじ込み式鋼管杭に回転力を付与して鋼管30の中心軸L回りに回転させて地面に接地させる場合、一方の鋼製板40aにおいては傾斜下端部41aが地盤に最初に貫入する部分であり、他方の鋼製板40bにおいては傾斜下端部41bが地盤に最初に貫入する部分となるが、一方の鋼製板40aの傾斜下端部41aが、2つの鋼製板40a,40bにおいて最も下方に位置する部分であるから、地盤中に最初に貫入する始端部となる。
【0059】
そして、2つの鋼製板40a,40bの突出部分のねじの作用により、ねじ込み式鋼管杭が地盤中にねじ込まれる場合、犠牲部材45は、鋼管30の中心軸L回りに回転することによる自身の軌跡が中央部44a,44bの軌跡と略一致する。この犠牲部材45は、地盤に接触して摩耗することにより鋼製板40a,40bの外周部が摩耗する割合を減少させることで鋼製板40a,40bの摩耗量を低減させる。
【0060】
この結果、ねじ込み式鋼管杭が地盤中に埋設された場合に、鋼製板40a,40bの摩耗量が低減されて、鋼製板40a,40bは十分な面積及び板厚を有し、これにより支持体として大きな地盤支持力を得ることができる。
【0061】
従って、本発明の実施の形態2であるねじ込み式鋼管杭によれば、鋼製板40a,40bの摩耗量を低減させて、良好な地盤支持力を得ることができる。
【0062】
また、上記ねじ込み式鋼管杭によれば、犠牲部材45が、2つの鋼製板40a,40bにおいて最も下方(先端)となる傾斜下端部41aに鋼製板40aの径方向外部に突出するよう取り付けられているので、硬い地盤に対して行うように、鋼管30の中心軸L回りに正回転させて地盤中にねじ込んだ後に一旦逆回転させて引き抜き、再度正回転させて地盤中にねじ込むような施工を行っても、鋼製板40aの傾斜下端部41aと地盤との間に隙間が形成されることを抑制し、直進性及び安定性に優れた施工を実施することができる。
【0063】
更に、上記ねじ込み式鋼管杭によれば、犠牲部材45を傾斜下端部41aに配設しただけなので、鋼製板の投影形状が円となるよう鋼製板の形状を調整するのに比べて、ねじ込み式鋼管杭の製造を容易なものとすることができる。
【0064】
図5−2は、本発明の実施の形態2であるねじ込み式鋼管杭の変形例を示す平面図である。上述した実施の形態2であるねじ込み式鋼管杭においては、鋼製板40aは半円状を成しているものであったが、本発明においては、この
図5−2に示すように、鋼製板40a′は鋼管30の径外側となる一部分が切り欠かれた形状を成すものであってもよい。このような鋼製板40a′においても傾斜下端部41a′に犠牲部材45が鋼製板40a′の径方向外部に突出するよう取り付けられている。
【0065】
上述した実施の形態1と2では、2つの鋼製板20a,20b,40a,40bを備えたねじ込み式鋼管杭について説明したが、本発明のねじ込み式鋼管杭は、鋼製板の数が2つに限られず、3つの鋼製板を備えたねじ込み式鋼管杭、4つの鋼製板を備えたねじ込み式鋼管杭であっても良い。以下に説明する。
【0066】
<実施の形態3>
図6は、本発明の実施の形態3であるねじ込み式鋼管杭の一例を示すものである。
図6の(a)は、ねじ込み式鋼管杭の要部の正面図であり、
図6の(b)は、ねじ込み式鋼管杭の平面図である。ここに例示するねじ込み式鋼管杭は、鋼管50と、3つの鋼製板60a,60b,60cとを備えて構成されている。尚、この
図6に示すねじ込み式鋼管杭においては、先端側を下方、杭頭側を上方として説明する。
【0067】
鋼管50は、内部に中空部51を有した円筒状の形態を成すものである。この鋼管50の先端部には、3つの取付部52a,52b,52cが形成されている。
【0068】
これら取付部52a,52b,52cは、鋼管50の先端部を円周方向に3等分することにより、該先端部の円周方向に沿って形成されている。より詳細に説明すると、取付部52a,52b,52cは、段部53を介した状態で他の取付部52a,52b,52cに隣接しており、それぞれの先端面が円周方向の一方から他方に向けて漸次上方に向けて傾斜している。ここで段部53の高さは互いに等しいものである。尚、ここで例示する3つの取付部52a,52b,52cは、先端面の延在長さ、並びに先端面の傾斜角が互いに等しいものである。
【0069】
鋼製板60a,60b,60cは、それぞれが鋼管50よりも外径が大きい円形状鋼板を3分割して形成されるもので、扇形状を成している。ここで円形状鋼板の外径(以下、翼径ともいう)は、ねじ込み式鋼管杭を埋設する地盤の状態、鋼管50の外径(以下、杭径ともいう)、鋼製板60a,60b,60cの数等によって適宜決められる。また、円形状鋼板の材質は、SM490材やSM570材相当の強度を有するものが用いられており、その厚み(板厚)は、10〜100mm程度とされる。
【0070】
第1鋼製板60aは、第1取付部52aの先端面に沿って溶接等により取り付けられることで、鋼管50の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられている。この第1鋼製板60aの外周部は、
図6の(b)にも示すように、鋼管50の径方向外部に向けて突出している。また、この第1鋼製板60aにおいては、鋼管50の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられていることにより、傾斜下端部61aと傾斜上端部62aとが形成されている。
【0071】
第2鋼製板60bは、第2取付部52bの先端面に沿って溶接等により取り付けられることで、鋼管50の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられている。この第2鋼製板60bの外周部は、
図6の(b)にも示すように、鋼管50の径方向外部に向けて突出している。また、この第2鋼製板60bにおいては、鋼管50の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられていることにより、傾斜下端部61bと傾斜上端部62bとが形成されている。
【0072】
第3鋼製板60cは、第3取付部52cの先端面に沿って溶接等により取り付けられることで、鋼管50の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられている。この第3鋼製板60cの外周部は、
図6の(b)にも示すように、鋼管50の径方向外部に向けて突出している。また、この第3鋼製板60cにおいては、鋼管50の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられていることにより、傾斜下端部61cと傾斜上端部62cとが形成されている。
【0073】
そして、上述したように3つの取付部52a,52b,52cは、先端面の延在長さ及び傾斜角が互いに等しいものであるから、それぞれの取付部52a,52b,52cに取り付けられる鋼製板60a,60b,60cの傾斜角も互いに等しいものとなる。これにより、傾斜下端部61a,61b,61cは、3つの鋼製板60a,60b,60cにおいて最も下方に位置する部分となる。
【0074】
このようなねじ込み式鋼管杭においては、杭径に対する翼径の比が例えば1.5〜3とされる。
【0075】
図6中の符号64は、閉塞部材である。閉塞部材64は、例えば三角形状を成す板状体であり、段部53が形成されることにより鋼管50の先端部において側方に開口する部分を閉塞するものである。尚、本実施の形態3では、閉塞部材64により閉塞しているが、本発明においてはかかる部分を閉塞しなくてもよい。これはかかる部分の開口面積が小さいために鋼管の内部に土砂等が侵入しないからである。但し、本実施の形態3のように該部分を閉塞部材64で閉塞することによりねじ込み式鋼管杭の強度を向上させることができる。
【0076】
このようなねじ込み式鋼管杭においては、鋼製板60a,60b,60cは円形状鋼板を分割して構成されるものであるので、
図6の(b)に示すように、鋼管50の先端開口が、鋼製板60a,60b,60cにより略閉塞されてこれら鋼製板60a,60b,60cの中央域に土砂取り込み用の開口が形成されていない閉端構造となっている。
【0077】
尚、
図6の(b)に示すように、互いに隣り合う鋼製板60a,60b,60c間には僅かに隙間が形成されている。かかる隙間については、そのまま残しておいてもよいし、例えば複数の鋼製板60a等の内角の総和が360°を超えるようにして上方(杭頭側)若しくは下方(先端側)から見た場合に隙間が現れないようにしてもよい。
【0078】
上記鋼製板60a,60b,60cにおいては、最も下方に位置する傾斜下端部61a,61b,61cの下面にそれぞれ犠牲部材65が溶接等により取り付けられている。これら犠牲部材65は、例えば掘削刃等により構成されるものである。これら犠牲部材65の材質は、特に限定されるものではなく、掘削対象となる地盤の強度に応じてその強度が適宜選択されるものである。
【0079】
これら犠牲部材65は、対応する傾斜下端部61a,61b,61cにおいて、該傾斜下端部61a,61b,61cを有する鋼製板60a,60b,60cよりも径方向外部に突出するよう取り付けられている。ここで、犠牲部材65の鋼製板60a,60b,60cからの突出長さ(張り出し長さ)は、翼径に対する犠牲部材65の径方向外部へ突出する長さの比が0.05以下であることが好ましい。
【0080】
上記ねじ込み式鋼管杭においては、鋼製板60a,60b,60cがそれぞれ鋼管50の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられているため、鋼管50の中心軸LLが地面に対して直交するよう配置した場合に地面に形成される投影形状において、各鋼製板60a,60b,60cの傾斜下端部61a,61b,61cと鋼管50の中心軸Lを通る線分が最も短い径となる。
【0081】
上記構成を有するねじ込み式鋼管杭に回転力を付与して鋼管50の中心軸L回りに回転させて地面に接地させる場合、第1鋼製板60aにおいては傾斜下端部61aが地盤に最初に貫入する部分であり、第2鋼製板60bにおいては傾斜下端部61bが地盤に最初に貫入する部分となり、第3鋼製板60cにおいては傾斜下端部61cが地盤に最初に貫入する部分となる。しかも、これら3つの傾斜下端部61a,61b,61cは、3つの鋼製板60a,60b,60cにおいて最も下方に位置する部分であるから、3つの鋼製板60a,60b,60cにおいて地盤中に最初に貫入する始端部となる。
【0082】
そして、3つの鋼製板60a,60b,60cの突出部分のねじの作用により、ねじ込み式鋼管杭が地盤中にねじ込まれる場合、犠牲部材65は、鋼管50の中心軸L回りに回転することにより、地盤に接触して摩耗することで鋼製板60a,60b,60cの外周部が摩耗する割合を減少させる。これにより鋼製板60a,60b,60cの摩耗量を低減させる。
【0083】
この結果、ねじ込み式鋼管杭が地盤中に埋設された場合に、鋼製板60a,60b,60cの摩耗量が低減されて、鋼製板60a,60b,60cは十分な面積及び板厚を有し、これにより支持体として大きな地盤支持力を得ることができる。
【0084】
従って、本発明の実施の形態3であるねじ込み式鋼管杭によれば、鋼製板60a,60b,60cの摩耗量を低減させて、良好な地盤支持力を得ることができる。
【0085】
また、上記ねじ込み式鋼管杭によれば、犠牲部材65が、3つの鋼製板60a,60b,60cにおいて最も下方(先端)となる傾斜下端部61a,61b,61cに鋼製板60a,60b,60cの径方向外部に突出するよう取り付けられているので、硬い地盤に対して行うように、鋼管50の中心軸L回りに正回転させて地盤中にねじ込んだ後に一旦逆回転させて引き抜き、再度正回転させて地盤中にねじ込むような施工を行っても、鋼製板60a,60b,60cの傾斜下端部61a,61b,61cと地盤との間に隙間が形成されることを抑制し、直進性及び安定性に優れた施工を実施することができる。
【0086】
更に、上記ねじ込み式鋼管杭によれば、犠牲部材65を傾斜下端部61a,61b,61cに配設しただけなので、鋼製板の投影形状が円となるよう鋼製板の形状を調整するのに比べて、ねじ込み式鋼管杭の製造を容易なものとすることができる。
【0087】
<実施の形態4>
図7は、本発明の実施の形態4であるねじ込み式鋼管杭の一例を示すものである。
図7の(a)は、ねじ込み式鋼管杭の要部の正面図であり、
図7の(b)は、ねじ込み式鋼管杭の平面図である。ここに例示するねじ込み式鋼管杭は、鋼管70と、4つの鋼製板80a,80b,80c,80dとを備えて構成されている。尚、この
図7に示すねじ込み式鋼管杭においては、先端側を下方、杭頭側を上方として説明する。
【0088】
鋼管70は、内部に中空部71を有した円筒状の形態を成すものである。この鋼管70の先端部には、4つの取付部72a,72b,72c,72dが形成されている。
【0089】
これら取付部72a,72b,72c,72dは、鋼管70の先端部を円周方向に4等分することにより、該先端部の円周方向に沿って形成されている。より詳細に説明すると、取付部72a,72b,72c,72dは、段部73を介した状態で隣接しており、それぞれの先端面が円周方向の一方から他方に向けて漸次上方に向けて傾斜している。ここで段部73の高さは等しいものとする。尚、ここで例示する4つの取付部72a,72b,72c,72dは、先端面の延在長さ、並びに先端面の傾斜角が互いに等しいものである。
【0090】
鋼製板80a,80b,80c,80dは、それぞれが鋼管70よりも外径が大きい円形状鋼板を4分割して形成されるもので、扇形状を成している。ここで円形状鋼板の外径(以下、翼径ともいう)は、ねじ込み式鋼管杭を埋設する地盤の状態、鋼管70の外径(以下、杭径ともいう)、鋼製板80a,80b,80c,80dの数等によって適宜決められる。また、円形状鋼板の材質は、SM490材やSM570材相当の強度を有するものが用いられており、その厚み(板厚)は、10〜100mm程度とされる。
【0091】
第1鋼製板80aは、第1取付部72aの先端面に沿って溶接等により取り付けられることで、鋼管70の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられている。この第1鋼製板80aの外周部は、
図7の(b)にも示すように、鋼管70の径方向外部に向けて突出している。また、この第1鋼製板80aにおいては、鋼管70の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられていることにより、傾斜下端部81aと傾斜上端部82aとが形成されている。
【0092】
第2鋼製板80bは、第2取付部72bの先端面に沿って溶接等により取り付けられることで、鋼管70の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられている。この第2鋼製板80bの外周部は、
図7の(b)にも示すように、鋼管70の径方向外部に向けて突出している。また、この第2鋼製板80bにおいては、鋼管70の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられていることにより、傾斜下端部81bと傾斜上端部82bとが形成されている。
【0093】
第3鋼製板80cは、第3取付部72cの先端面に沿って溶接等により取り付けられることで、鋼管70の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられている。この第3鋼製板80cの外周部は、
図7の(b)にも示すように、鋼管70の径方向外部に向けて突出している。また、この第3鋼製板80cにおいては、鋼管70の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられていることにより、傾斜下端部81cと傾斜上端部82cとが形成されている。
【0094】
第4鋼製板80dは、第4取付部72dの先端面に沿って溶接等により取り付けられることで、鋼管70の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられている。この第4鋼製板80dの外周部は、
図7の(b)にも示すように、鋼管70の径方向外部に向けて突出している。また、この第4鋼製板80dにおいては、鋼管70の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられていることにより、傾斜下端部81dと傾斜上端部82dとが形成されている。
【0095】
そして、上述したように4つの取付部72a,72b,72c,72dは、先端面の延在長さ及び傾斜角が互いに等しいものであるから、それぞれの取付部72a,72b,72c,72dに取り付けられる鋼製板80a,80b,80c,80dの傾斜角も互いに等しいものとなる。これにより、傾斜下端部81a,81b,81c,81dは、4つの鋼製板80a,80b,80c,80dにおいて最も下方に位置する部分となる。
【0096】
このようなねじ込み式鋼管杭においては、杭径に対する翼径の比が例えば1.5〜3とされる。
【0097】
上記ねじ込み式鋼管杭においては、図には明示していないが、段部73が形成されることにより鋼管70の先端部において側方に開口する部分(図示せず)が形成されており、かかる部分は図示せぬ閉塞部材により閉塞されている。尚、本実施の形態4では、鋼管70の先端部において側方に開口する部分を図示せぬ閉塞部材により閉塞しているが、本発明においてはかかる部分を閉塞しなくてもよい。これはかかる部分の開口面積が小さいために鋼管の内部に土砂等が侵入しないからである。但し、本実施の形態4のように該部分を閉塞部材で閉塞することによりねじ込み式鋼管杭の強度を向上させることができる。
【0098】
そして、このようなねじ込み式鋼管杭においては、鋼製板80a,80b,80c,80dは円形状鋼板を分割して構成されるものであるので、
図7の(b)に示すように、鋼管70の先端開口が、鋼製板80a,80b,80c,80dにより略閉塞されてこれら鋼製板80a,80b,80c,80dの中央域に土砂取り込み用の開口が形成されていない閉端構造となっている。
【0099】
尚、
図7の(b)に示すように、互いに隣り合う鋼製板80a,80b,80c,80d間には僅かに隙間が形成されている。かかる隙間については、そのまま残しておいてもよいし、例えば複数の鋼製板80a等の内角の総和が360°を超えるようにして上方(杭頭側)若しくは下方(先端側)から見た場合に隙間が現れないようにしてもよい。
【0100】
上記鋼製板80a,80b,80c,80dにおいては、最も下方に位置する傾斜下端部81a,81b,81c,81dの下面にそれぞれ犠牲部材85が溶接等により取り付けられている。これら犠牲部材85は、例えば掘削刃等により構成されるものである。これら犠牲部材85の材質は、特に限定されるものではなく、掘削対象となる地盤の強度に応じてその強度が適宜選択されるものである。
【0101】
これら犠牲部材85は、対応する傾斜下端部81a,81b,81c,81dにおいて、該傾斜下端部81a,81b,81c,81dを有する鋼製板80a,80b,80c,80dよりも径方向外部に突出するよう取り付けられている。ここで、犠牲部材85の鋼製板80a,80b,80c,80dからの突出長さ(張り出し長さ)は、翼径に対する犠牲部材85の径方向外部へ突出する長さの比が0.05以下であることが好ましい。
【0102】
上記ねじ込み式鋼管杭においては、鋼製板80a,80b,80c,80dがそれぞれ鋼管70の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられているため、鋼管70の中心軸Lが地面に対して直交するよう配置した場合に地面に形成される投影形状において、各鋼製板80a,80b,80c,80dの傾斜下端部81a,81b,81c,81dと鋼管70の中心軸Lを通る線分が最も短い径となる。
【0103】
上記構成を有するねじ込み式鋼管杭に回転力を付与して鋼管70の中心軸L回りに回転させて地面に接地させる場合、第1鋼製板80aにおいては傾斜下端部81aが地盤に最初に貫入する部分であり、第2鋼製板80bにおいては傾斜下端部81bが地盤に最初に貫入する部分となり、第3鋼製板80cにおいては傾斜下端部81cが地盤に最初に貫入する部分となり、第4鋼製板80dにおいては傾斜下端部81dが地盤に最初に貫入する部分となる。しかも、これら4つの傾斜下端部81a,81b,81c,81dは、4つの鋼製板80a,80b,80c,80dにおいて最も下方に位置する部分であるから、4つの鋼製板80a,80b,80c,80dにおいて地盤中に最初に貫入する始端部となる。
【0104】
そして、4つの鋼製板80a,80b,80c,80dの突出部分のねじの作用により、ねじ込み式鋼管杭が地盤中にねじ込まれる場合、犠牲部材85は、鋼管70の中心軸L回りに回転することにより地盤に接触して摩耗することで、鋼製板80a,80b,80c,80dの外周部が摩耗する割合を減少させる。これにより鋼製板80a,80b,80c,80dの摩耗量を低減させる。
【0105】
この結果、ねじ込み式鋼管杭が地盤中に埋設された場合に、鋼製板80a,80b,80c,80dの摩耗量が低減されて、鋼製板80a,80b,80c,80dは十分な面積及び板厚を有し、これにより支持体として大きな地盤支持力を得ることができる。
【0106】
従って、本発明の実施の形態4であるねじ込み式鋼管杭によれば、鋼製板80a,80b,80c,80dの摩耗量を低減させて、良好な地盤支持力を得ることができる。
【0107】
また、上記ねじ込み式鋼管杭によれば、犠牲部材85が、4つの鋼製板80a,80b,80c,80dにおいて最も下方(先端)となる傾斜下端部81a,81b,81c,81dに鋼製板80a,80b,80c,80dの径方向外部に突出するよう取り付けられているので、硬い地盤に対して行うように、鋼管70の中心軸L回りに正回転させて地盤中にねじ込んだ後に一旦逆回転させて引き抜き、再度正回転させて地盤中にねじ込むような施工を行っても、鋼製板80a,80b,80c,80dの傾斜下端部81a,81b,81c,81dと地盤との間に隙間が形成されることを抑制し、直進性及び安定性に優れた施工を実施することができる。
【0108】
更に、上記ねじ込み式鋼管杭によれば、犠牲部材85を傾斜下端部81a,81b,81c,81dに配設しただけなので、鋼製板の投影形状が円となるよう鋼製板の形状を調整するのに比べて、ねじ込み式鋼管杭の製造を容易なものとすることができる。
【0109】
以上、本発明の好適な実施の形態1〜4について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
【0110】
上述した実施の形態1では、犠牲部材25は、傾斜下端部21a,21bの下面に溶接等により取り付けられていたが、本発明においては、
図8に示すように、犠牲部材25′が傾斜下端部21aの側面に溶接等により取り付けられていてもよいし、
図9に示すように、犠牲部材25”が傾斜下端部21aの上面に溶接等により取り付けられていてもよい。
【0111】
上述した実施の形態1〜4では、各取付部12a等の先端面12a1等の傾斜角を同じものとして該取付部12a等に取り付けられる鋼製板20a等の傾斜角を等しいものとして説明したが、本発明においては、鋼製板の傾斜角がそれぞれ異なる態様で配設されてもよい。その場合、複数の鋼製板のうち最も先端に位置する傾斜下端部に犠牲部材を配設すればよい。
【0112】
上述した実施の形態1〜4では、複数の鋼製板20a等のうち最も先端に位置する傾斜下端部21a等に犠牲部材25等を取り付けたが、本発明においては、犠牲部材は、最も先端に位置する傾斜下端部以外の個所にも必要に応じて適宜配設してもよい。
【0113】
上述した実施の形態1〜4では、複数の鋼製板20a等は鋼管10等の先端部に取り付けられていたが、本発明においては、鋼製板は鋼管の先端部だけに限られず、その側周面に設けられていても良い。
円筒状の鋼管10よりも外径が大きい円形状鋼板を略扇形状に分割して形成された複数の鋼製板20a,20bが、鋼管10の軸方向に直交する方向に対して傾斜するよう鋼管10の周方向に沿って取り付けられたねじ込み式鋼管杭であって、複数の鋼製板20a,20bのうち最も先端となる傾斜下端部21a,21bにおいて鋼製板20a,20bよりも径方向外部に突出する態様で配設された犠牲部材25を備えたものである。