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特許5700911配向され、固定化された巨大分子を含む組成物とその製造法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5700911
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】配向され、固定化された巨大分子を含む組成物とその製造法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20150326BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20150326BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
   G01N33/543 525G
   G01N33/543 525E
   C12N15/00 F
   G01N33/53 D
   G01N33/53 M
   G01N33/53 UZNA
【請求項の数】40
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2008-547664(P2008-547664)
(86)(22)【出願日】2006年12月22日
(65)【公表番号】特表2009-521688(P2009-521688A)
(43)【公表日】2009年6月4日
(86)【国際出願番号】US2006049279
(87)【国際公開番号】WO2007076132
(87)【国際公開日】20070705
【審査請求日】2009年12月21日
【審判番号】不服2012-22662(P2012-22662/J1)
【審判請求日】2012年11月16日
(31)【優先権主張番号】60/753,816
(32)【優先日】2005年12月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508188709
【氏名又は名称】ナノストリング テクノロジーズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(72)【発明者】
【氏名】フェリー,ショーン,エム.
(72)【発明者】
【氏名】ダナウェイ,ドウェイン,エル.
【合議体】
【審判長】 神 悦彦
【審判官】 信田 昌男
【審判官】 郡山 順
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−5070264(JP,A)
【文献】 特開2005−87057(JP,A)
【文献】 特開2004−125601(JP,A)
【文献】 特開2005−249739(JP,A)
【文献】 特表2006−503297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上にポリヌクレオチド複合体を伸張させ、且つ固定化する方法であって、
(a) 第1の核酸分子を提供するステップであって、第1の核酸分子が、
(i) 標的核酸に結合することができる第1の標的特異的配列、
(ii) 第1の標識結合領域と第2の標識結合領域とを有する足場となる1つのDNA、及び、
(iii) 支持体に結合することができる第1部分、
を含み、
第1の標的特異的配列が前記足場の一方の端部に位置し、第1部分が前記足場の他方の端部に位置し、
第1の標識結合領域が、第1のシグナルを構成する光を放出する1つ以上の検出可能な標識に結合した第1のRNA分子にハイブリダイズしており、且つ第1の標的特異的配列とはオーバーラップせず、且つ、
第2の標識結合領域が、第2のシグナルを構成する光を放出する1つ以上の検出可能な標識に結合した第2のRNA分子にハイブリダイズしており、且つ第1の標的特異的配列及び第1の標識結合領域とはオーバーラップしない、
前記ステップ;
(b) 第2の核酸分子を提供するステップであって、第2の核酸分子が、
(i) 標的核酸に結合することができる第2の標的特異的配列、及び、
(ii) 支持体に結合することができる第2部分、
を含み、
第1の標的特異的配列及び第2の標的特異的配列は標的核酸の異なる領域に結合し、且つ、
第2部分が、第2の標的特異的配列の端部に位置する、
前記ステップ;
(c) 第1の核酸分子及び第2の核酸分子を標的核酸を含有するサンプルと、第1及び第2の核酸分子の標的核酸へのハイブリダイゼーションに十分な条件下で接触させることで、ポリヌクレオチド複合体を産生するステップ;
(d) 第1部分及び第2部分のいずれか一方を支持体に結合させることで、ポリヌクレオチド複合体の第1の核酸分子及び第2の核酸分子のいずれか一方を支持体に固定化するステップ;
(e) ポリヌクレオチド複合体を伸張するために十分な外力を、ポリヌクレオチド複合体に適用し、第1のシグナル及び第2のシグナルを空間的に分離するステップ;
(f) ステップ(d)で支持体に結合していない第1部分又は第2部分を支持体に結合させることで、伸張されたポリヌクレオチド複合体を支持体に固定化するステップ;及び
(g) 外力を除去し、ポリヌクレオチド複合体が伸張された状態固定化されたままとするステップ、
を含む、前記方法。
【請求項2】
(h) 第1のシグナルの同一性及び第2のシグナルの同一性並びにそれらの互いの相対的な空間的位置を検出するステップであって、該シグナルの同一性及び相対的な空間的位置が標的核酸を同定するためのコードの少なくとも一部を構成する、前記ステップ;
(i) 前記検出されたシグナルの同一性及び相対的な空間的位置を、標的核酸を同定するための所定のコードと比較することで、サンプル中の標的核酸の存在を確立するステップ、
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記足場が、他の標識結合領域とはオーバーラップしない追加の標識結合領域を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの追加の標識結合領域が、光を放出する1つ以上の検出可能な標識に結合したRNA分子にハイブリダイズしている、請求項3記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの追加の標識結合領域が、光を放出する検出可能な標識に結合していないRNA分子にハイブリダイズしている、請求項3記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの追加の標識結合領域が、光を放出する1つ以上の検出可能な標識に結合したRNA分子にハイブリダイズしており、且つ、少なくとも別の1つの追加の標識結合領域が、光を放出する検出可能な標識に結合していないRNA分子にハイブリダイズしている、請求項3記載の方法。
【請求項7】
前記足場が、他の標識結合領域とはオーバーラップせず、各々が光を放出する1つ以上の検出可能な標識に結合したRNA分子にハイブリダイズしている第3及び第4の標識結合領域をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記足場が、他の標識結合領域とはオーバーラップせず、検出可能な標識に結合していないRNA分子にハイブリダイズしている少なくとも1つの追加の標識結合領域をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記足場が、他の標識結合領域とはオーバーラップせず、各々が検出可能な標識に結合していないRNA分子にハイブリダイズしている少なくとも3つの追加の標識結合領域を含む、請求項7記載の方法。
【請求項10】
検出可能な標識に結合していないRNA分子にハイブリダイズしている追加の標識結合領域が、一対の標識結合領域の間に位置し、該一対の各メンバーは1以上の検出可能な標識に結合したRNA分子にハイブリダイズしている、請求項9記載の方法。
【請求項11】
検出可能な標識に結合していないRNA分子にハイブリダイズしている追加の標識結合領域が、各対の標識結合領域の間に位置し、該対の各メンバーは1以上の検出可能な標識に結合したRNA分子にハイブリダイズしている、請求項10記載の方法。
【請求項12】
外力が直流電場である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
第1部分又は第2部分が1以上の非共有結合を介して支持体に結合する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
第1部分又は第2部分が1以上の共有結合を介して支持体に結合する、請求項1記載の方法。
【請求項15】
外力がポリヌクレオチド複合体を配向させるのに十分である、請求項1記載の方法。
【請求項16】
伸張されるポリヌクレオチド複合体が配向させた状態で固定化される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
標的核酸が1本鎖である、請求項1記載の方法。
【請求項18】
標的核酸が2つの相補鎖を含む、請求項1記載の方法。
【請求項19】
標的核酸がDNA又はRNAである、請求項1記載の方法。
【請求項20】
第1及び第2のRNA分子が、それぞれ4つ以上のアミノアリル改変型UTPヌクレオチドを含む、請求項1記載の方法。
【請求項21】
第1及び第2のRNA分子並びに第3又は第4の標識結合領域にハイブリダイズしているRNA分子が、それぞれ4つ以上のアミノアリル改変型UTPヌクレオチドを含む、請求項7記載の方法。
【請求項22】
1以上のフルオロフォア標識が各アミノアリル改変型UTPヌクレオチドに結合されている、請求項20記載の方法。
【請求項23】
1以上のフルオロフォア標識が各アミノアリル改変型UTPヌクレオチドに結合されている、請求項21記載の方法。
【請求項24】
第1の核酸分子又は第2の核酸分子が標的核酸の末端にハイブリダイズする、請求項1記載の方法。
【請求項25】
第1の核酸分子及び第2の核酸分子がそれぞれ標的核酸の末端にハイブリダイズする、請求項24記載の方法。
【請求項26】
第1の核酸分子又は第2の核酸分子が標的核酸の非末端にハイブリダイズする、請求項1記載の方法。
【請求項27】
第1の核酸分子及び第2の核酸分子がそれぞれ標的核酸の非末端にハイブリダイズする、請求項26記載の方法。
【請求項28】
第1部分及び第2部分が、それぞれリガンド、抗原、炭水化物、核酸、受容体、レクチン及び抗体から成る群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項29】
第1部分又は第2部分が、それぞれビオチン、ジゴキシゲニン、FITC、アビジン、ストレプトアビジン、抗ジゴキシゲニン及び抗FITCから成る群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項30】
第1部分又は第2部分が、それぞれスクシンアミド、アミン、アルデヒド、エポキシ及びチオールから成る群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項31】
支持体が、リガンド、抗原、核酸、受容体又は抗体を含む、請求項1記載の方法。
【請求項32】
支持体が、ビオチン、ジゴキシゲニン、FITC、アビジン、ストレプトアビジン、抗ジゴキシゲニン又は抗FITCを含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
支持体が、スクシンアミド、アミン、アルデヒド、エポキシ又はチオールを含む、請求項1記載の方法。
【請求項34】
支持体が、ニトロセルロース、ナイロン、ガラス、ポリマー、ゲル、デキストラン、セルロース又はラテックスから構成される、請求項1記載の方法。
【請求項35】
支持体が、膜、ビーズ、フィルター、多孔性物質及びガラス表面から成る群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項36】
膜がニトロセルロース又はナイロンから構成される、請求項35記載の方法。
【請求項37】
フィルターがニトロセルロース又はナイロンから構成される、請求項35記載の方法。
【請求項38】
多孔性物質が、アクリル/スチレンメチルメタクリレートコポリマー又はエチレン/アクリル酸から構成される、請求項35記載の方法。
【請求項39】
支持体が、円板、平板、小板、ビーズ、サブミクロン粒子、被覆磁性ビーズ、ゲルパッド、マイクロタイターウェル、スライド、膜及びフリットから成る群より選択される形態を含む、請求項1記載の方法。
【請求項40】
支持体が、ストレプトアビジン、ビオチン化BSA、アルデヒド又はエポキシで被覆される、請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本出願は、米国仮特許出願第60/753,816号(2005年12月23日出願)(これは参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)の利益を主張する。
【0002】
本発明は、巨大分子認識、巨大分子標識、巨大分子延伸(stretching)、巨大分子配向、巨大分子固定化、及びナノテクノロジーの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
2.発明の背景
巨大分子は、ある巨大分子を他の巨大分子から容易に区別するのに使用できるモノマー又は他の成分のユニークな配列を含むことができる。巨大分子が他の主体(entity)と結合又は会合すると、その主体は巨大分子の特徴により同定することができる。主体は、巨大分子が会合することができる当業者に明らかな任意の主体、例えば支持体、表面、他の分子、アレイ中の位置、又は他の任意の主体であることができる。
【0004】
巨大分子の多くの特徴の中で、その構造がその多様性の大部分を提供する。一般にその1次構造、すなわちこれらのモノマーもしくは他の成分の配列が、ある巨大分子を他の巨大分子から区別する。しかし、ほとんどではないが多くの巨大分子は、別の階層の構造、例えば2次構造、3次構造、又はさらに4次構造を含み、これは、巨大分子の1次構造を同定する当業者の能力を実質的に妨害することがある。例えば、特徴A、B、C、D、E、及びFの1次配列を含む単純な巨大分子は、各特徴が1次構造に沿って順に認識できる場合には容易に同定することができる。しかしその巨大分子がねじれたり、もつれたり、又は3次元構造に折り畳まれていた場合(これは溶液中の巨大分子ではよく起きる)、特徴が適当な配列において容易に同定できないかもしれない。2次構造又は3次もしくは4次構造のために、当業者は1次構造A、B、F、C、E、及びDを有する巨大分子を1次構造A、B、C、D、E、及びFと区別できないかもしれない。
【0005】
当業者は、3次元巨大分子から1次構造を探り出すための技術を開発している。特定の巨大分子(例えばポリヌクレオチド及びポリペプチド)について、その特徴の1次配列を同定するための化学的技術は当業者に公知である。さらに、その構造の複雑さを低下させることにより1次構造の解明を容易にするために、巨大分子を伸張もしくは延伸、又はコーミング(combing)するためのいくつかの技術が開発されている。これらの技術は、一般的に、巨大分子を伸張することができるなんらかの外力の適用を含む。いくつかの技術は、伸張された状態で巨大分子を非選択的に固定化すること(例えば、巨大分子を表面上で乾燥することによる)をさらに含んでいる。
【0006】
巨大分子の1次構造の同定を容易にする方法及び組成物は、巨大分子認識や巨大分子標識の分野、及び他の分野におけるこれらの有用性をさらに増強するであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、種々の巨大分子の1次構造の同定を容易にする方法及び組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
3.発明の概要
特定の態様において、本発明は、伸張された状態で巨大分子を選択的に固定化する方法を提供する。驚くべきことに、本発明では、伸張のためにどのような外力が使用されても、十分に伸張されたまま巨大分子を選択的に固定化することができる。さらに、本発明の方法は、互いに配向している伸張された巨大分子の選択的固定化を容易にする。すなわち、本発明の方法では、複数の巨大分子を互いに同じ配向で容易に固定化することができる。
【0009】
1つの態様において、本発明は、伸張された状態で巨大分子を選択的に固定化する方法を提供する。巨大分子は当業者に公知の任意の巨大分子であることができ、例えばポリマー、多糖、ポリヌクレオチド、又はポリペプチドである。本発明のこの態様の方法のために、一般に、巨大分子の第1部分は、当業者に公知の任意の方法により固定化される。実際には、巨大分子の第1部分を固定化する技術は、本発明の多くの実施形態において決定的に重要なものではない。特定の実施形態において、巨大分子の第1部分は、選択的又は非選択的に固定化することができる。特定の実施形態において、第1部分は、1つ又はそれ以上の共有結合により固定化される。特定の実施形態において、第1部分は、1つ又はそれ以上の非共有結合により固定化される。固定化された第1部分の例は下記の節に記載される。
【0010】
固定化された第1部分により、当業者に公知の巨大分子を伸張するための任意の方法により巨大分子を伸張することができる。特定の実施形態において、巨大分子を伸張する技術は、本発明の方法にとって決定的に重要なものではない。特定の実施形態において、巨大分子のクラスに適した巨大分子を伸張する方法は当業者の判断に従う。特定の実施形態において、巨大分子は、巨大分子を伸張することができる外力の適用により伸張される。外力は、巨大分子を伸張するための当業者に公知の任意の外力であることができる。外力の例には、重力、流体力、電磁力、及びこれらの組合せなどがある。巨大分子を伸張するための具体的な技術は下記の節に記載される。
【0011】
当業者により伸張されたと認識される場合、巨大分子は伸張された状態である。特定の実施形態において、巨大分子を伸張することができる外力の領域にあるとき、巨大分子は伸張された状態である。特定の実施形態において、その平均流体力学半径が当業者により認識されるその自然状態の巨大分子の平均流体力学半径の2倍より大きいとき、巨大分子は伸張された状態である。
【0012】
本発明のこの態様において、前記方法は一般に、巨大分子が伸張した状態のまま、巨大分子の第2部分を選択的に固定化する工程を含む。これにより、第1部分と第2部分の間で伸張された固定化巨大分子を得ることができる。驚くべきことに、巨大分子が伸張されたまま選択的に固定化されるため、伸張を固定化された巨大分子で維持することができる。一般に、巨大分子の第1部分と第2部分は同じではない。
【0013】
選択的固定化は、当業者に公知の巨大分子の一部分を選択的に固定化するための任意の方法に従って行うことができる。選択的固定化は、例えば1つ又はそれ以上の共有結合の形成、1つ又はそれ以上の非共有結合の形成、或いはその両方を介して行うことができる。選択的固定化技術の具体例は下記の節に記載される。具体的な実施形態において、巨大分子の第2部分を固定化するのに1つ又はそれ以上の結合対が使用される。
【0014】
第2部分は、当業者に公知の任意の支持体上に固定化することができる。支持体は、当業者に公知の固定化に有用であると判断される任意の支持体であることができる。特定の実施形態において、第2部分は他の分子に固定化することができる。別の有用な支持体には、表面、膜、ビーズ、多孔性物質、電極、アレイ、および当業者に公知の他の任意の支持体などがある。
【0015】
別の態様において、本発明は、選択的に固定化され、伸張された巨大分子を含む組成物を提供する。この組成物は一般に、支持体と、該支持体上に選択的に固定化された伸張された巨大分子とを含む。支持体は当業者に公知の任意の支持体であることができる。支持体の例は下記の節に記載される。巨大分子の少なくとも2つの部分が支持体上に固定化され、巨大分子はこの2つの部分の間で伸張された状態である。特定の実施形態において、巨大分子の少なくとも1つの部分は支持体上に選択的に固定化される。特定の実施形態において、巨大分子の2つまたはそれ以上の部分が支持体上に選択的に固定化される。巨大分子は、特に本発明の方法を含む当業者に公知の任意の技術により伸張及び/又は固定化することができる。
【0016】
別の態様において、本発明は、配向させた状態で巨大分子を選択的に固定化するための方法を提供する。巨大分子は上記の任意の巨大分子であることができる。特定の実施形態において、巨大分子はフレキシブルであることができ、又は特定の実施形態において、巨大分子は剛性又は半剛性であることができる。本発明のこの態様の方法について、一般的には、巨大分子の第1部分は上記したように固定化される。固定化された第1部分により、当業者に公知の巨大分子を伸張するための任意の技術により巨大分子を配向させることができる。特定の実施形態において、巨大分子を配向させる技術は、本発明の方法にとって決定的に重要なものではない。特定の実施形態において、巨大分子のクラスに適した巨大分子を配向させる技術は当業者の判断に従う。特定の実施形態において、巨大分子は、巨大分子を配向させることができる外力の適用により配向される。外力は、巨大分子を配向させるための当業者に公知の任意の外力であることができる。外力の例には、重力、流体力、電磁力、及びこれらの組合せなどがある。巨大分子を伸張させるための具体的な技術は、下記の節に記載される。
【0017】
当業者により配向されたと認識される場合、巨大分子は配向した状態である。特定の実施形態において、巨大分子を配向させることができる外力の領域にあるとき、巨大分子は配向した状態である。特定の実施形態において、その末端が、当業者により認識されるように、巨大分子を配向させることができる外力の領域に沿って配置されるとき、巨大分子は配向した状態である。特定の実施形態において、複数の巨大分子の末端が、当業者により認識されるように平行して配置されるとき、複数の巨大分子は配向した状態である。
【0018】
本発明のこの態様において、前記方法は一般に、巨大分子が配向した状態のまま、巨大分子の第2部分を選択的に固定化する工程を含む。これにより、第1部分と第2部分の間で配向した固定化巨大分子を得ることができる。驚くべきことに、巨大分子が伸張されたまま選択的に固定化されるため、この配向を固定化された巨大分子で維持することができる。選択的固定化は、上記の方法に従って行うことができる。
【0019】
別の態様において、本発明は、選択的に固定化された配向した巨大分子を含む組成物を提供する。この組成物は一般に、支持体と、該支持体上に選択的に固定化された配向した巨大分子とを含む。支持体は当業者に公知の任意の支持体であることができる。支持体の例は下記の節に記載される。巨大分子の少なくとも2つの部分が支持体上に固定化され、巨大分子は2つの部分の間で配向した状態である。特定の実施形態において、巨大分子の少なくとも1つの部分が支持体上に選択的に固定化される。特定の実施形態において、巨大分子の両方の部分が支持体上に選択的に固定化される。巨大分子は、特に本発明の方法を含む当業者に公知の任意の技術により、配向及び/又は固定化することができる。
【0020】
本発明の方法及び組成物は、当業者に公知の任意の目的に使用することができる。例えば、固定化されかつ伸張及び/又は配向された巨大分子は、巨大分子が固定化された支持体の標識として使用することができる。固定化されかつ伸張及び/又は配向された巨大分子の1次配列は、当業者に公知の任意の方法により同定することができる。有利には、伸張及び/又は配向される巨大分子の固定化は、そのような技術を容易にすることができる。特定の実施形態において、固定化されかつ伸張及び/又は配向された巨大分子は、ナノパス(nanopath)、例えばナノワイヤ(nanowire)又はナノ回路(nanocircuit)を製造するために使用することができる。固定化されかつ伸張及び/又は配向された巨大分子のさらなる用途は、下記の節に記載される。
【0021】
4.図面の簡単な説明
後述の[図面の簡単な説明]を参照のこと。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
5.1 定義
本明細書で使用するすべての用語は、特に明記しない場合は、当業者に一般的な意味を有する。以下の用語は以下の意味を有する。
【0023】
本明細書において用語「結合対」は、互いに選択的に結合(すなわち、組成物中の他の成分に対する親和性よりも大きな親和性で互いに結合)することができる第1及び第2の分子もしくは成分を意味する。結合対のメンバー間の結合は共有結合でも非共有結合でもよい。特定の実施形態において、前記結合は非共有結合である。結合対の例には、免疫学的結合対(例えば、任意のハプテン性のもしくは抗原性の化合物とこれに対応する抗体若しくは結合部分又はその断片との組合せ、例えばジゴキシゲニンと抗ジゴキシゲニン、フルオレセインと抗フルオレセイン、ジニトロフェノールと抗ジニトロフェノール、ブロモデオキシウリジンと抗ブロモデオキシウリジン、マウス免疫グロブリンとヤギ抗マウス免疫グロブリン)および非免疫学的結合対(例えば、ビオチン−アビジン、ビオチン−ストレプトアビジン、ホルモン−ホルモン結合性タンパク質、受容体−受容体リガンド(例えば、アセチルコリン受容体−アセチルコリン又はその類似体)、IgG−プロテインA、レクチン−炭水化物、酵素−酵素補因子、酵素−酵素インヒビター、核酸2本鎖を形成できる相補的ポリヌクレオチド対など)などがある。例えば、免疫反応性結合メンバーには、抗原、ハプテン、アプタマー(aptamer)、抗体(1次又は2次)、およびこれらの複合体(組換えDNA法又はペプチド合成により生成されるものを含む)などが含まれ得る。抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体、組換えタンパク質又はその混合物もしくは断片、ならびに抗体と他の結合メンバーとの混合物でもよい。他の一般的な結合対には、特に限定されないが、ビオチンとアビジン(又はその誘導体)、ビオチンとストレプトアビジン、炭水化物とレクチン、相補的ヌクレオチド配列(プローブ及び捕捉核酸配列を含む)、組換え法により生成されるものを含む相補的ペプチド配列、エフェクターと受容体分子、ホルモンとホルモン結合性タンパク質、酵素補因子と酵素、酵素インヒビターと酵素などがある。
【0024】
「選択的結合」は、当業者が認める組成物中の他の分子又は成分に対する、分子又は成分の一対の互いに優先的な任意の結合を意味する。特定の実施形態において、分子又は成分の一対は、これらが他の分子又は成分と比較して互いに優先的に結合するとき、選択的に結合する。選択的結合は、ある分子又は成分の、他の分子又は成分に対する親和性若しくは結合力、又はその両方を含み得る。具体的な実施形態において、選択的結合は、解離定数(K)が約1x10-5M未満、又は約1x10-6M、1x10-7M、1x10-8M、1x10-9M、もしくは1x10-10M未満であることが必要である。これに対して、特定の実施形態において、非選択的結合は、有意に小さい親和性、例えば1x10-3Mより大きいKdを有する。
【0025】
「伸張された状態(extended state)」は、当業者が伸張されたと認識する状態の巨大分子を指す。特定の実施形態において、巨大分子は、溶液中でその天然のコンフォメーションと比較して伸張しているとき、伸張された状態にある。特定の実施形態において、巨大分子は、巨大分子を伸張させることができる外力の領域にあるとき、伸張された状態にある。特定の実施形態において、巨大分子の伸張された状態は定量的に測定することができる。かかる実施形態において、当業者は、Rを巨大分子の末端間ベクトル(すなわち、巨大分子の両端間の距離)として、そして<R>を平均末端間ベクトルとして認識し、その結果、当業者に適切とみなされる溶液中で95%のRは2<R>以内となる。溶液の例には、例えば水又はpHバッファー中の巨大分子の希釈溶液などがある。具体的な実施形態において、Rが2.0<R>より大きいとき、巨大分子は伸張された状態にある。
【0026】
「配向した状態」は、当業者が配向したと認識する状態の巨大分子を指す。特定の実施形態において、巨大分子は、溶液中でその天然のコンフォメーションと比較して配向しているとき、配向した状態にある。特定の実施形態において、巨大分子は、巨大分子を配向させることができる外力の領域に沿って配置されるとき、配向した状態にある。特定の実施形態において、当業者により認識されるように、巨大分子は、これが平行して配置された複数の巨大分子の1つであるとき、配向している。
【0027】
5.2 選択的固定化の方法
要約に記載されるように、本発明は、伸張された状態で巨大分子を選択的に固定化する方法を提供する。巨大分子はいったん選択的に固定化されると、当業者に公知の任意の目的に使用することができる。
【0028】
5.2.1 巨大分子
本方法において、巨大分子は、当業者に公知の限定されない任意の巨大分子であることができる。特定の実施形態において、巨大分子は、本発明の方法で伸張することができる巨大分子である。特定の実施形態において、巨大分子は、下記の節に記載されるように1つまたは2つの部分で固定化することができる。
【0029】
特定の実施形態において、巨大分子は、当業者に公知の任意のポリマーである。例えば巨大分子は、多糖、ポリペプチド、又はポリヌクレオチドであることができる。有用なポリヌクレオチドには、リボ核酸、デオキシリボ核酸、及び当業者に公知の他のポリヌクレオチドなどがある。
【0030】
巨大分子は、本発明の方法に従って巨大分子の伸張及び固定化を可能にするのに十分な任意のサイズであることができる。特定の実施形態において、巨大分子がポリヌクレオチドであるとき、巨大分子は、500bpより大きい、750bpより大きい、1kbより大きい、1.5kbより大きい、2.0kbより大きい、2.5kbより大きい、3.0kbより大きい、4.0kbより大きい、又は5.0kbより大きい長さを有することができる。特定の実施形態において、巨大分子がポリペプチドであるとき、巨大分子は、50アミノ酸より大きい、100アミノ酸より大きい、200アミノ酸より大きい、300アミノ酸より大きい、400アミノ酸より大きい、500アミノ酸より大きい、750アミノ酸より大きい、1000アミノ酸より大きい、1500アミノ酸より大きい、2000アミノ酸より大きい、2500アミノ酸より大きい、3000アミノ酸より大きい、4000アミノ酸より大きい、又は5000アミノ酸より大きいサイズを有することができる。特定の実施形態において、巨大分子が多糖であるとき、巨大分子は、50サッカリドより大きい、100サッカリドより大きい、200サッカリドより大きい、300サッカリドより大きい、400サッカリドより大きい、500サッカリドより大きい、750サッカリドより大きい、1000サッカリドより大きい、1500サッカリドより大きい、2000サッカリドより大きい、2500サッカリドより大きい、3000サッカリドより大きい、4000サッカリドより大きい、又は5000サッカリドより大きいサイズを有することができる。
【0031】
巨大分子は、当業者により認識されるような天然の巨大分子であることができるし、又は巨大分子は非天然の巨大分子であることもできる。特定の実施形態において、巨大分子がポリペプチドであるとき、巨大分子は、天然に存在するアミノ酸のみを含むことができるし、又は巨大分子は天然に存在するアミノ酸と天然に存在しないアミノ酸とを含むこともできる。他のアミノ酸は、当業者に公知の任意のアミノ酸、又はその誘導体もしくは類似体であることができる。特定の実施形態において、巨大分子がポリヌクレオチドであるとき、該ポリヌクレオチドは、天然に存在するヌクレオチドのみを含むことができ、又は該ポリヌクレオチドは、天然に存在するヌクレオチドと天然に存在しないヌクレオチドとを含むことができる。特定の実施形態において、巨大分子が多糖であるとき、該多糖は、天然に存在するサッカリドのみを含むことができ、又は該多糖は、天然に存在するサッカリドと天然に存在しないサッカリドとを含むことができる。特定の実施形態において、ポリマーは、非天然のモノマーのみを含むことができる。別の実施形態において、巨大分子は、複数のクラスのモノマー、例えばアミノ酸、ヌクレオチド、及び/又はサッカリドを含むことができる。
【0032】
特定の実施形態において、巨大分子は、モノマーの一次共有結合鎖を1つだけ含む。例えば、巨大分子がポリペプチドであるとき、特定の実施形態において、巨大分子は一次アミノ酸鎖を1つだけ含む。巨大分子がポリヌクレオチドであるとき、特定の実施形態において、巨大分子は1本鎖である。別の実施形態において、巨大分子は、モノマーの一次共有結合鎖を2つ含む。例えば、巨大分子がポリペプチドであるとき、特定の実施形態において、巨大分子は一次アミノ酸鎖を2つ含む。巨大分子がポリヌクレオチドであるとき、特定の実施形態において、巨大分子は2つのポリヌクレオチド鎖を含む。特定の実施形態において、巨大分子は、部分的に又は全体が2本鎖であることができる。別の実施形態において、巨大分子は、モノマーの一次共有結合鎖を3つ又はそれ以上含む。例えば、巨大分子がポリペプチドであるとき、特定の実施形態において、巨大分子は3つの一次アミノ酸鎖を含む。巨大分子がポリヌクレオチドであるとき、特定の実施形態において、巨大分子は3つのポリヌクレオチド鎖を含む。例えば、巨大分子は3つの鎖F1、X及びF2を含むことができる(ここで、鎖Xの一部は鎖F1に相補的であり、かつ鎖Xの一部は鎖F2に相補的である)。一例を図2Aに示す。特定の実施形態において、巨大分子は、モノマーの一次共有結合鎖を4つ以上含む。
【0033】
有利には、本発明の巨大分子は、当業者に公知の技術により、巨大分子の検出、画像化、又は同定を容易にする1つ又はそれ以上の標識を含むことができる。標識は当業者に公知の任意の検出可能な成分であることができる。巨大分子の標識の例には、検出可能なアイソトープ、ラジオアイソトープ、蛍光物質、色素、酵素、リガンド、受容体、抗原、抗体、レクチン、炭水化物、ヌクレオチド配列、および当業者に公知の他の任意の検出可能な標識などがある。有用な標識、標識を含む巨大分子、およびこれらの調製法は、米国仮特許出願第60/753,758号(2005年12月23日出願)、標題「Nanoreporters And Methods Of Manufacturing And Use Thereof」(この内容は参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0034】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは天然の(例えば、A、G、C、T、U)もしくは合成ヌクレオ塩基、又はこれらの組合せである。ポリヌクレオチドの骨格は、完全に「天然の」ホスホジエステル結合から構成され得るか、又は1つ又はそれ以上の改変された結合、例えば1つ又はそれ以上のホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロアミダート、又は他の改変された結合などを含有してもよい。具体例として、ポリヌクレオチドは、アミド交互結合を含むペプチド核酸(PNA)でもよい。本発明とともに使用できる合成塩基と骨格のさらなる例、ならびにその合成法は、例えば米国特許第6,001,983号; Uhlman & Peyman, 1990, Chemical Review 90(4):544 584; Goodchild, 1990, Bioconjugate Chem. 1(3):165 186; Egholm et ah, 1992, J. Am. Chem. Soc. 114:1895 1897; Gryaznov et al., J. Am. Chem. Soc. 116:3143 3144、ならびに上記のすべてに引用されている文献に記載されている。ポリヌクレオチドを構成する一般的合成ヌクレオ塩基には、3-メチルウラシル、5,6-ジヒドロウラシル、4-チオウラシル、5-ブロモウラシル、5-ソロウラシル(thorouracil)、5-ヨードウラシル、6-ジメチルアミノプリン、6-メチルアミノプリン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、6-アミノ-8-ブロモプリン、イノシン、5-メチルシトシン、7-デアザアデニン、及び7-デアザグアノシンなどがある。標的核酸を構成する合成ヌクレオ塩基のさらなる非限定例は、Fasman, CRC Practical Handbook of Biochemistry and Molecular Biology, 1985, pp. 385-392; Beilstein 's Handhuch der Organischen Chemie, Springer Verlag, Berlin 及び Chemical Abstracts中に見つけることができ、これらのすべては、かかるヌクレオ塩基の構造、性質、および調製を説明する文献への参照を提供する。
【0035】
巨大分子は、当業者に公知の任意の技術に従って調製することができる。有利には、本発明の巨大分子は、下記の節に記載されるように、巨大分子の調製及び/又は精製を容易にするのに使用できる標識及び/又は結合対のメンバーを含むことができる。さらに、本発明の特定の巨大分子は、後述するように、結合対のメンバーを含む分子と複合体を形成することができる。これらの複合体は、巨大分子又は複合体の調製及び/又は精製を容易にするために使用することができる。
【0036】
5.2.2 第1部分の固定化
本発明の方法において、巨大分子の第1部分が固定化される。一般に、第1部分は、当業者により固定化されていると認識される場合、固定化されている。第1部分は当業者に公知の任意の技術により固定化することができる。特定の実施形態において、巨大分子の第1部分を固定化するための技術は、本発明の方法にとって決定的に重要なものではない。
【0037】
巨大分子の第1部分は、巨大分子中の任意の位置であることができる。特定の実施形態において、第1部分は巨大分子の末端である。本発明の目的において、巨大分子の部分が、巨大分子の末端から5個未満、4、3、2、1もしくは0のモノマーであるとき、「末端で」あることができる。もちろん多くの巨大分子は2つの末端を有するが、本発明の方法は、3つ以上の末端を有する巨大分子、及び1又は0個の末端を有する巨大分子(例えば環状巨大分子)に適用可能である。特定の実施形態において、第1部分は巨大分子の末端ではない。
【0038】
巨大分子は、当業者に公知の任意の支持体に固定化することができる。支持体は、制限なく、巨大分子を固定化することができる任意の成分であることができる。特定の実施形態において、支持体は、表面、膜、ビーズ、多孔性物質、電極又はアレイである。
【0039】
特定の実施形態において、巨大分子の第1部分は、非選択的に固定化することができる。別の実施形態において、巨大分子の第1部分は、選択的に固定化することができる。有利な実施形態において、巨大分子の第1部分が固定化された後、巨大分子のある部分は、巨大分子が本方法の以降の工程で伸張及び/又は配向できるのに十分に動くよう自由になるべきである。特に、特定の実施形態において、巨大分子の第1部分が非選択的に固定化されるとき、巨大分子のいずれかの部分の伸張を妨げる程度に巨大分子全体が非選択的に固定化されないことが重要である。
【0040】
固定化は、当業者に公知の支持体との任意の相互作用によるものでありうる。固定化は、静電的、イオン性相互作用、1つ又はそれ以上の共有結合、1つ又はそれ以上の非共有結合、又はこれらの組合せを介することができる。特定の実施形態において、固定化は、電極との静電的相互作用を介することができる。別の実施形態において、固定化は、電極以外の支持体との静電的相互作用を介する。
【0041】
特定の実施形態において、巨大分子の第1部分は、結合対の第1メンバーを含む。結合対の第1メンバーは、巨大分子の第1部分に共有結合できるか、又はこれらは非共有結合することができる。有用な共有結合及び非共有結合は、当業者には明らかであろう。有用な実施形態において、巨大分子の第1部分が結合する支持体は、結合対の第2メンバーを含む。支持体は第2メンバーに共有結合できるか、又はこれらは非共有結合することができる。図1Aは、支持体の成分に選択的に結合することができる成分F1を含む巨大分子を例示する。成分F1は、例えばアビジンで被覆された支持体に結合できるビオチンであることができる。
【0042】
特定の実施形態において、巨大分子の第1部分は、支持体上の結合対のメンバーと結合して1つ又はそれ以上の非共有結合を形成することができる結合対のメンバーを含むことができる。有用な支持体の例には、リガンド、抗原、炭水化物、核酸、受容体、レクチン、及び抗体よりなる群から選択される結合成分を含むものがある。巨大分子の第1部分は、支持体の結合成分と結合できる結合成分を含む。
【0043】
有利な実施形態において、巨大分子の第1部分は、アビジン−ビオチン結合対を介して支持体に固定化することができる。特定の実施形態において、巨大分子は、その第1部分中にビオチン成分を含むことができる。例えば、ポリヌクレオチド巨大分子は、ビオチン化ヌクレオチド残基を含むすることができる。同様に、ポリペプチド巨大分子はビオチン化アミノ酸残基を含むことができる。アビジンを含む支持体は、当業者に公知のアビジンを含む任意の支持体であることができる。ビオチンを含む有用な支持体は市販されており、例えばTB0200 (Accelr8)、SAD6、SAD20、SADlOO、SAD500、SAD2000 (Xantec)、SuperAvidin (Array-It)、ストレプトアビジンスライド(カタログ番号MPC 000、Xenopore)及びSTREPTAVIDINnslide(カタログ番号439003、Greiner Bio-one)などがある。
【0044】
特定の実施形態において、巨大分子の第1部分は、支持体上のヌクレオチド配列に選択的に結合することができるヌクレオチド配列を含むことができる。
【0045】
別の実施形態において、巨大分子の第1部分はアビジンを含むことができ、支持体はビオチンを含むことができる。ビオチンを含む有用な支持体は市販されており、例えばOptiarray-biotin(Accler8)、BD6、BD20、BDlOO、BD500及びBD2000(Xantec)などがある。
【0046】
別の実施形態において、巨大分子の第1部分は、1つ又はそれ以上の他の分子と複合体を形成することができ、これは次に、支持体の結合成分に共有結合又は非共有結合できる。例えば、巨大分子の第1部分は、例えば支持体のアビジン成分に選択的に結合することができるビオチン成分を含む、別の分子に選択的に結合することができる。図2Aは、F1を含む第3の分子に選択的に結合することができる第2の分子Xに選択的に結合することができる巨大分子を例示する。F1は支持体上の成分に選択的に結合することができる。図2Bは、F1を含む第2の分子に選択的に結合することができる巨大分子を例示し、F1は支持体上の成分に選択的に結合することができる。
【0047】
別の実施形態において、巨大分子の第1部分は、支持体上の結合対のメンバーと反応して1つ又はそれ以上の共有結合を形成することができる結合対のメンバーを含むことができる。反応基を含む有用な支持体には、スクシンアミド、アミン、アルデヒド、エポキシ、及びチオールよりなる群から選択される反応性成分を含むものなどがある。反応性成分を含む有用な支持体の例には、特に限定されないが、エポキシ、アルデヒド、金、ヒドラジド、スルフヒドリル、NHS-エステル、アミン、チオール、カルボキシレート、マレイミド、ヒドロキシメチルホスフィン、イミドエステル、イソシアネート、ヒドロキシル、ペンタフルオロフェニル-エステル、ソラレン、ピリジルジスルフィド、もしくはビニルスルホン、又はこれらの混合物を含む表面などがある。そのような表面は商業的供給源から入手できるか又は標準的な技術に従って調製することができる。巨大分子の第1部分は、支持体の反応性成分と反応することができる反応性成分を含むであろう。反応性成分を含む有用な支持体の例には、特に限定されないが、OptArry-DNA NHS基(Accler8)、Nexterion Slide AL(Schott)及びNexterion Slide E(Schott)などがある。
【0048】
特定の実施形態において、巨大分子の第1部分は、光活性化により支持体に結合させることができる反応性成分を含むことができる。支持体が光活性化成分を含むか、又は巨大分子の第1部分が光活性化成分を含むことができる。光活性化成分のいくつかの例には、アリールアジド、例えばN-((2-ピリジルジチオ)エチル)-4-アジドサリチルアミド;フッ化アリールアジド、例えば4-アジド-2,3,5-6-テトラフルオロ安息香酸;ベンゾフェノンベースの試薬、例えば4-ベンゾイル安息香酸のスクシンイミジルエステル;及び5-ブロモ-デオキシウリジンなどがある。
【0049】
別の実施形態において、巨大分子の第1部分は、当業者に公知の他の結合対を介して支持体に固定化することができる。
【0050】
5.2.3 巨大分子の伸張
本発明の特定の方法において、巨大分子は伸張された状態である。一般に、いずれの巨大分子も、当業者によりそのように認識される場合に、伸張された状態である。
【0051】
特定の実施形態において、巨大分子は、巨大分子を伸張するのに適した条件下で巨大分子を伸張することができる外力の領域にあるとき、伸張された状態である。かかる外力及び条件は当業者に明らかである。例えば、多くの巨大分子は、流体力又は重力により伸張することができ、多くの荷電巨大分子は電磁力により伸張することができる。特定の実施形態において、外力は、間接的に巨大分子に適用することができる。例えば巨大分子は、外力により動かすことができる成分を含むか又は該成分に共有結合又は非共有結合することができる。特定の実施形態において、巨大分子は、電磁力、流体力、又は光の力により動かすことができる成分に結合することができる。
【0052】
特定の実施形態において、外力は電磁力である。例えば巨大分子が荷電しているとき(例えばポリヌクレオチド)、巨大分子は電場又は磁場中で伸張することができる。この領域は、当業者の判断に従って巨大分子を伸張するのに十分強いものとする。電場又は磁場中で巨大分子を伸張する技術の例は、Matsuura et al, 2002, J Biomol Struct Dyn. 20(3):429-36; Ferree & Blanch, 2003, Biophys J. 85(4):2539-46; Stigter & Bustamante, 1998, Biophys J. 1998 75(3): 1197-210; Matsuura et al, 2001, Nucleic Acids Res. 29(16); Ferree & Blanch, 2004, Biophys J. 87(l):468-75(これらの内容は参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0053】
特定の実施形態において、外力は流体力である。例えば多糖、ポリペプチド、及びポリヌクレオチドを含む多くの巨大分子は、動流体の領域で伸張することができる。流体力は、当業者の判断に従って巨大分子を伸張するのに十分強いものとする。流体力領域で巨大分子を伸張する技術の例は、Bensimon et al, 1994, Science 265:2096-2098; Henegariu et al, 2001, BioTechniques 31: 246-250; Kraus et al, 1997, Human Genetics 99:374-380; Michalet et al, 1997, Science 277:1518-1523; Yokota et al, 1997, Nucleic Acids Res. 25(5): 1064-70; Otobe et al, 2001, Nucleic Acids Research 29:109; Zimmerman & Cox, 1994, Nucleic Acids Res. 22(3):492-7、並びに米国特許第6,548,255号、第6,344,319号、第6,303,296号、第6,265,153号、第6,225,055号、第6,054,327号、第5,840,862号(これらの内容は参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0054】
特定の実施形態において、外力は重力である。有利な実施形態において、重力は、例えば流体力と組合せて巨大分子を伸張することができる。特定の実施形態において、外力は、当業者の判断に従って巨大分子を伸張するのに十分強いものとする。重力で巨大分子を伸張する技術の例は、Michalet et al, 1997, Science 277:1518-1523; Yokota et al, 1997, Nucleic Acids Res. 25(5): 1064-70; Kraus et al, 1997, Human Genetics 99:374-380(これらの内容は参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0055】
具体的な実施形態において、外力はメニスカス運動(moving meniscus)を介して適用される。メニスカス運動が、流体力、表面張力、及び/又は当業者に認識される他の任意の力を含む種々の外力を巨大分子に適用することができることを当業者は認識するであろう。メニスカスは、蒸発及び重力を含む当業者に公知の任意の技術により動かすことができる。メニスカス運動により巨大分子を伸張する技術の例は、例えば米国特許第6,548,255号、第6,344,319号、第6,303,296号、第6,265,153号、第6,225,055号、第6,054,327号、第5,840,862号(これらの内容は参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0056】
具体的な実施形態において、巨大分子は、光トラップ又は光ピンセットにより伸張することができる。例えば巨大分子は、適切な光学力源に捕捉されるか又は動かされる粒子を含むか、又はこれに共有結合もしくは非共有結合することができる。光トラップ又は光ピンセットにより粒子を動かす有用な技術の例は、Ashkin et al., 1986, Optics Letters 11 :288-290; Ashkin et al, 1987, Science 235:1517-1520; Ashkin et al, Nature 330:769-771; Perkins et al, 1994, Science 264:822-826; Simmons et al, 1996, Biophysical Journal 70:1813-1822; Block et al, 1990, Nature 348:348-352;及びGrier, 2003, Nature 424: 810-816(これらの内容は参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0057】
特定の実施形態において、巨大分子は、当業者に公知の上記外力の組合せにより伸張することができる。下記の実施例では、特定の巨大分子は電場と流体力の組合せにより伸張される。
【0058】
巨大分子は、巨大分子の伸張に関する標準的な基準に従って当業者により伸張していると認識されるとき、伸張している。特定の実施形態において、巨大分子は、当業者に認識されるその3次構造的特徴のほとんどを失うとき、伸張している。特定の実施形態において、巨大分子は、当業者に認識されるその2次構造的特徴のほとんどを失うとき、伸張している。特定の実施形態において、巨大分子は、標準的技術に従って画像化され、その1次構造的特徴が配列中で検出可能なとき、伸張している。画像化技術の例は下記の実施例に記載される。
【0059】
特定の実施形態において、巨大分子の伸張状態は、その流体力学半径を、希釈溶液中で遊離しているときの平均流体力学半径と比較することにより認識することができる。例えば、特定の実施形態において、巨大分子又はその部分は、その流体力学半径が希釈溶液中のその平均流体力学半径の約2倍より大きいとき、伸張している。より定量的には、Rは巨大分子又はその部分の流体力学半径であり、<R>は希薄溶液中での巨大分子又はその部分の平均流体力学半径である。平均<R>は、巨大分子又はその部分のRが、希薄溶液中で結合していないとき、95%が2<R>未満であるように計算されるものとする。特定の実施形態において、Rが、1.5<R>より大きい、1.6<R>より大きい、1.7<R>より大きい、1.8<R>より大きい、1.9<R>より大きい、2.0<R>より大きい、2.1<R>より大きい、2.2<R>より大きい、2.3<R>より大きい、2.4<R>より大きい、2.5<R>より大きい、又は3.0<R>より大きいとき、巨大分子又はその部分は伸張された状態にある。具体的な実施形態において、Rが2.0<R>より大きいとき、巨大分子又はその部分は伸張された状態である。
【0060】
5.2.4 巨大分子の配向
本発明の特定の方法において、巨大分子は配向した状態である。一般に、巨大分子はいずれも当業者により配向していると認識される場合には、そのような状態である。
【0061】
特定の実施形態において、巨大分子は、巨大分子を配向させるのに適した条件下で巨大分子を配向させることができる外力の領域にあるとき、配向された状態である。かかる外力及び条件は当業者に公知に明らかであるものとする。
【0062】
特定の実施形態において、外力は電磁力である。例えば、巨大分子が荷電しているとき(例えばポリヌクレオチド)、巨大分子は電場又は磁場中で配向させることができる。この領域は、当業者の判断に従って巨大分子を配向させるのに十分強いものとする。電場又は磁場中で巨大分子を配向させる技術の例は上に記載されている。
【0063】
特定の実施形態において、外力は流体力である。例えば多糖、ポリペプチド、及びポリヌクレオチドを含む多くの巨大分子は、動流体の領域で配向させることができる。流体力は、当業者の判断に従って巨大分子を配向させるのに十分強いものとする。流体力領域で巨大分子を配向させる技術の例は上に記載されている。
【0064】
特定の実施形態において、外力は重力である。有利な実施形態において、重力は、例えば流体力又は表面張力と組合せて巨大分子を配向させることができる。特定の実施形態において、外力は、当業者の判断に従って巨大分子を配向させるのに十分強いものとする。重力で巨大分子を配向させる技術の例は上に記載される。
【0065】
特定の実施形態において、外力は光学力である。例えば巨大分子は、上記の通り、適切な光学力源に捕捉されるか又は動かされる粒子を含むか、又はこれに共有結合若しくは非共有結合することができる。
【0066】
特定の実施形態において、巨大分子は、当業者に公知の上記外力の組合せにより配向させることができる。下記の実施例では、特定の巨大分子は電場と流体力の組合せにより伸張される。
【0067】
巨大分子は、巨大分子の配向に関する標準的な基準に従って当業者により配向していると認識されるとき、配向している。特定の実施形態において、巨大分子は、当業者により認識されるように、巨大分子を配向させることができる外力の領域に沿って配置されるとき、巨大分子は配向した状態である。特定の実施形態において、当業者により認識されるように、巨大分子が平行して配置される複数の巨大分子の1つであるとき、巨大分子は配向している。例えば、巨大分子の第1末端から第2末端までのベクトルが、当業者により認識されるように、その複数中の他の巨大分子の対応する末端間のベクトルと平行であるとき、複数の巨大分子は配向することができる。
【0068】
5.2.5 巨大分子の第2部分の選択的固定化
上記したように、本発明の方法において、巨大分子の第2部分は選択的に固定化される。巨大分子の第2部分は、巨大分子の第1部分とは同一ではない巨大分子の任意の部分であることができる。いくつかの実施形態において、巨大分子の第2部分は、巨大分子の第1部分のどの部分とも重複しない。
【0069】
特定の実施形態において、本発明は、巨大分子が伸張された状態又は配向した状態で、かつ巨大分子の第1部分が固定化された状態で、巨大分子の第2部分を選択的に固定化する単一の工程を含む方法を提供する。巨大分子の第1部分の固定化方法及び巨大分子の伸張又は配向方法は、上記節に詳細に説明されている。
【0070】
特定の実施形態において、本発明は、巨大分子の第1部分が固定化されている状態で巨大分子を伸張する工程と、巨大分子が伸張された状態で巨大分子の第2部分を選択的に固定化する工程とを含む方法を提供する。巨大分子の第1部分の固定化方法および巨大分子の伸張方法の例は、上記節に詳細に説明されている。
【0071】
特定の実施形態において、本発明は、巨大分子の第1部分を固定化する工程と、第1部分が固定化された状態で巨大分子を伸張する工程と、巨大分子が伸張された状態で巨大分子の第2部分を選択的に固定化する工程とを含む方法を提供する。巨大分子の第1部分を固定化する方法、および巨大分子を伸張する方法の例は、上に詳細に説明されている。
【0072】
特定の実施形態において、本発明は、巨大分子の第1部分が固定化された状態で巨大分子を配向させる工程と、巨大分子が配向した状態で巨大分子の第2部分を選択的に固定化する工程とを含む方法を提供する。巨大分子の第1部分の固定化方法および巨大分子の配向方法の例は、上記節に詳細に説明されている。
【0073】
特定の実施形態において、本発明は、巨大分子の第1部分を固定化する工程と、第1部分が固定化された状態で巨大分子を配向させる工程と、巨大分子が配向した状態で巨大分子の第2部分を選択的に固定化する工程とを含む方法を提供する。巨大分子の第1部分を固定化する方法、および巨大分子を配向させる方法の例は、上に詳細に説明されている。
【0074】
巨大分子の第2部分の選択的固定化は、当業者に公知の巨大分子の選択的固定化のための任意の方法に従って行うことができる。本発明の有利な実施形態において、巨大分子の第2部分は非選択的には固定化されないことが重要である。選択的固定化は、完全に伸張された状態又はほとんど完全に伸張された状態で巨大分子を固定化することを可能にする。選択的固定化はまた、巨大分子を配向させた様式で固定化することを可能にする。すなわち、巨大分子の第1部分と第2部分は、巨大分子を伸張させるために使用される領域の方向に沿って、該領域において第1部分、第2部分の順で固定化することができる。複数の巨大分子が固定化されるとき、これらは前記領域に沿って均一に配向させることができる。
【0075】
巨大分子の第2部分は巨大分子中の任意の位置にあることができる。特定の実施形態において、第2部分は巨大分子の末端にある。特定の実施形態において、第2部分は巨大分子の末端には無い。特定の実施形態において、上記節に記載したように、第1部分は巨大分子の一端に有り、第2部分は巨大分子のもう一方の端にある。
【0076】
上記したように、巨大分子の第2部分は選択的に固定化される。固定化は、当業者に公知の支持体との任意の選択的相互作用によることができる。固定化は、静電的、イオン性相互作用、1つ又はそれ以上の共有結合、1つ又はそれ以上の非共有結合、あるいはこれらの組合せを介することができる。特定の実施形態において、固定化は、電極との静電的相互作用を介することができる。さらなる実施形態において、固定化は、電極以外の支持体との静電的相互作用を介する。
【0077】
巨大分子の第1部分及び第2部分が同じ支持体に選択的に固定化される場合、選択的固定化技術はもちろん支持体に適合するものでなければならない。具体的な実施形態において、固定化の技術は同じである。例えば、アビジンで被覆された支持体上に、巨大分子の第1部分と第2部分の両方を、ビオチン−アビジン相互作用を介して選択的に固定化することができる。しかし、当業者に明らかなように、同じ支持体への固定化のために第1部分と第2部分の両方で同じ相互作用を使用する必要はない。例えば、支持体は選択的結合が可能な複数の成分を含有してもよいし、又は第1部分は非選択的にもしくは当業者に公知の他の方法により固定化してもよい。
【0078】
特定の実施形態において、巨大分子の第2部分は、結合対の第1メンバーを含む。結合対の第2メンバーは巨大分子の第2部分に共有結合できるか、又はこれらは非共有結合することができる。有用な共有結合及び非共有結合は当業者には明らかであろう。有用な実施形態において、巨大分子の第2部分が結合する支持体は、結合対の第2メンバーを含む。支持体は第2メンバーに共有結合できるか、又は非共有結合することができる。
【0079】
特定の実施形態において、巨大分子の第2部分は、1つ又はそれ以上の非共有結合を形成するために、支持体上の結合対のメンバーと結合することができる結合対のメンバーを含むことができる。有用な支持体の例には、上記節に記載したようなリガンド、抗原、炭水化物、核酸、受容体、レクチン、及び抗体よりなる群から選択される結合成分を含むものなどがある。
【0080】
有利な実施形態において、巨大分子の第2部分は、アビジン−ビオチン結合対を介して支持体に固定化することができる。特定の実施形態において、巨大分子は、その第1部分中にビオチン成分を含むことができる。例えば、ポリヌクレオチド巨大分子はビオチン化ヌクレオチド残基を含むことができる。同様に、ポリペプチド巨大分子はビオチン化アミノ酸残基を含むことができる。アビジンを含む有用な支持体は上記節に記載されている。
【0081】
別の実施形態において、巨大分子の第2部分はアビジンを含むことができ、支持体はビオチンを含むことができる。ビオチンを含む有用な支持体は上記節に記載されている。
【0082】
別の実施形態において、巨大分子の第2部分は、1つ又はそれ以上の共有結合を形成するために支持体上の結合対のメンバーと反応することができる結合対のメンバーを含むことができる。反応基を含む有用な支持体の例は上記節に記載されている。
【0083】
特定の実施形態において、巨大分子の第2部分は、光活性化により支持体に結合できる反応成分を含むことができる。支持体が光反応成分を含むことができるか、又は巨大分子の第2部分が光反応成分を含むことができる。光反応成分のいくつかの例には、アリールアジド、例えばN-((2-ピリジルジチオ)エチル)-4-アジドサリチルアミド;フッ化アリールアジド、例えば4-アジド-2,3,5-6-テトラフルオロ安息香酸;ベンゾフェノンベースの試薬、例えば4-ベンゾイル安息香酸のスクシンイミジルエステル;及び5-ブロモ-デオキシウリジンなどがある。
【0084】
別の実施形態において、巨大分子の第2部分は、上記節に記載される他の結合対を介して支持体に固定化することができる。
【0085】
別の好適な実施形態において、巨大分子の第2部分は、1つ又はそれ以上の他の分子と複合体を形成することができ、これは次に、支持体の結合成分に共有結合又は非共有結合することができる。例えば、巨大分子の第2部分は、例えば支持体のアビジン成分に選択的に結合することができるビオチン成分を含む別の分子に選択的に結合することができる。図1Bは、F3(これは次に支持体上の成分に選択的に結合することができる)を含む第2の分子に選択的に結合する巨大分子を例示する。巨大分子の第2部分とF3を含む分子との相互作用は、例えば抗原−抗体相互作用により仲介することができる。
【0086】
図3Aと3Bは、本発明の方法による巨大分子の選択的固定化を例示する。図3Aでは、巨大分子の第1部分は、図示される支持体S上の成分に選択的に結合することができる結合成分F1を含む。結合成分F1は、例えばビオチンであることができ、支持体Sは例えばアビジンで被覆することができる。図3Aの巨大分子は、上記節に記載した外力により伸張される。図3Bでは、外力は電位である。伸張しているとき、巨大分子は、図示される支持体S上の成分に選択的に結合することができる結合成分F2を含む分子に接触される。結合成分F2は例えばビオチンであることができ、支持体Sは例えばアビジンで被覆することができる。F2を含む最大3つの分子が巨大分子の第2部分に選択的に結合することができて、巨大分子を伸張した状態で選択的に固定化できることが重要である。例示されたように、前記分子は巨大分子の反復した結合成分に選択的に結合する第2の結合成分を含む。結合成分は、例えば図3Bに例示されるように相補的核酸配列であることができる。生じる巨大分子は、伸張された状態で選択的に固定化され、外力が除去された時でさえ伸張されたままであるはずである。選択的に固定化され伸張された巨大分子は、当業者に公知の任意の目的に使用することができる。
【0087】
5.2.6 伸張された又は配向した巨大分子の2つの部分の固定化
特定の実施形態において、本発明は、伸張された状態又は配向した状態で巨大分子の第1部分と第2部分とを選択的に固定化する方法を提供する。重要なことは、本発明のこれらの方法では、巨大分子を伸張又は配向することができる外力を適用する前に、巨大分子を固定化する必要は無いことである。
【0088】
これらの方法において、巨大分子は、巨大分子を伸張又は配向することができる外力により伸張又は配向されるか、又は伸張かつ配向される。具体的な実施形態において、外力は、巨大分子をある位置に維持しながら、巨大分子を伸張又は配向することができる外力、すなわち巨大分子を実質的に動かすことなく伸張又は配向することができる外力である。外力の例は、振動電磁場及び振動する流体力領域などである。特定の実施形態において、外力は振動電場である。振動電場中で巨大分子を伸張又は配向するための技術の例は、Asbury et al, 2002, Electrophoresis 23(16):2658-66; Kabata et at, 1993, Science 262(5139): 1561-3; 及びAsbury and van den Engh, 1998, Biophys J. 74:1024- 30(これらの内容は参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0089】
この方法において、巨大分子は、伸張又は配向されたまま第1部分及び第2部分で固定化される。第1部分と第2部分の両方とも非選択的に固定化することができ、両方を選択的に固定化することができ、又は1つを選択的にもう一方を非選択的に固定化することができる。第1部分及び第2部分の固定化技術は、上記節に詳細に記載されている。
【0090】
5.2.7 固定化用支持体
本発明の方法では、固定化用支持体は、当業者に公知の巨大分子に選択的に結合することができる任意の支持体であることができる。さらに、特定の態様において、本発明は、伸張された状態で選択的に固定化された巨大分子を含む組成物を提供する。前記組成物は、本明細書に記載のように、伸張された状態でそこに結合されている巨大分子を有する支持体を含む。巨大分子はもちろん本発明の方法に従って固定化することができる。
【0091】
支持体の唯一の要件は、上記したように、巨大分子の第2部分に選択的に結合することができることである。すなわち、支持体はフィルター又は膜、例えばニトロセルロースもしくはナイロン、ガラス、ポリアクリルアミドのようなポリマー、アガロースのようなゲル、デキストラン、セルロース、ポリスチレン。ラテックス、又は捕捉化合物が固定化できる当業者に公知の他の任意の物質であることができる。支持体は、多孔性物質、例えばアクリル、スチレンメチルメタクリレートコポリマーおよびエチレン/アクリル酸からなることができる。
【0092】
支持体は、その形態が巨大分子の第2部分の選択的固定化を妨害しない限り、どのような形態をも採ることができる。例えば支持体は、円板、平板、小板、ビーズ、サブミクロン粒子、被覆磁性ビーズ、ゲルパッド、マイクロタイターウェル、スライド、膜、フリット、又は当業者に公知の他の形態を有することができる。支持体は、場合により、支持体上又は支持体中の液体の流れを助ける収納容器、例えばクロマトグラフィーカラム、スピンカラム、シリンジバレル、ピペット、ピペットチップ、96もしくは384ウェルプレート、マイクロチャネル、毛細管などの中に配置される。
【0093】
巨大分子は1つの支持体又は複数の支持体上に固定化することができる。例えば、特定の実施形態において、当業者により認識されるように、巨大分子の第1部分と第2部分は同じ支持体上に固定化される。特定の実施形態において、巨大分子の第1部分は第1支持体上に固定化することができ、巨大分子の第2部分は第1支持体とは異なる第2支持体上に固定化することができる。
【0094】
支持体は、当業者に公知の任意の方法に従って調製することができる。十分な密度の反応基を有する本発明の例示的な支持体を活性化するのに使用できる多くの方法の総説については、Wiley Encyclopedia of Packaging Technology, 第2版, Brody & Marsh 編, 「Surface Treatment」 pp. 867 874, John Wiley & Sons (1997)、およびそこに引用された文献を参照されたい。酸化ケイ素支持体上でアミノ基を生成するのに適した化学的方法は、Atkinson & Smith, 「Solid Phase Synthesis of Oligodeoxyribonucleotides by the Phosphite Triester Method」: Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, M J Gait, Ed., 1984, IRL Press, Oxford, 特にpp. 45 49(及びそこに引用された文献)に記載され;酸化ケイ素支持体上でヒドロキシル基を生成するのに適した化学的方法は、Pease et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 5022 5026(及びそこに引用された文献)に記載され;ポリスチレン、ポリアミド、およびグラフト化ポリスチレンのようなポリマー上で官能基を生成するのに適した化学的方法は、Lloyd Williams et al., 1997, Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins, Chapter 2, CRC Press, Boca Raton, FL(及びそこに引用された文献)に記載されている。
【0095】
有用な支持体の例には、ストレプトアビジン(例えばAccelr8 TB0200)で被覆された表面などがある。別の有用な支持体には、アミンを含む巨大分子の一部と反応することができるN−ヒドロキシスクシンアミドで被覆された表面などがある。そのような表面の1つは、OptArray-DNA (Accelr8)である。さらなる有用な表面は、アルデヒドで被覆された表面(例えば、Nexterion Slide AL, Schott)、およびエポキシで被覆された表面(例えば、Nexterion Slide E, Schott)である。別の有用な表面は、アビジン又はストレプトアビジンを含む巨大分子の一部の選択的固定化に有用なビオチン化BSA被覆表面である。
【0096】
5.3 選択的に固定化され伸張又は配向された巨大分子の使用方法
選択的に固定化され伸張及び/又は配向された巨大分子は、当業者に公知の任意の目的に使用することができる。例えば、選択的に固定化され、伸張及び/又は配向された巨大分子は、マッピング、ナノアセンブリー、および表面プラズモン共鳴に有用である。
【0097】
特定の実施形態において、選択的に固定化され伸張及び/又は配向された巨大分子は、種々の技術(例えば、原子間力顕微鏡又は電子顕微鏡)を用いて巨大分子に使用することができる。
【0098】
特定の実施形態において、選択的に固定化され伸張及び/又は配向された巨大分子は、巨大分子マッピングに使用することができる。例えばこれらは、例えば蛍光分子又はDNA結合タンパク質により、巨大分子に沿った結合又はハイブリダイゼーションの位置を決定するのに使用することができる。
【0099】
特定の実施形態において、選択的に固定化され伸張及び/又は配向された巨大分子は、ナノアセンブリーに使用することができる。例えばこれらは、伸張及び/又は配向された巨大分子上の結晶成長、又は伸張及び/又は配向された巨大分子に連結もしくは結合したポリペプチド上の結晶成長を容易にするのに使用することができる。特定の実施形態において、選択的に固定化され伸張及び/又は配向された巨大分子は、ナノパスの構築に使用することができる。特定の実施形態において、選択的に固定化され伸張及び/又は配向された巨大分子は、分子モーター(例えばキネシン又はミオシン)を使用する指令された輸送に使用することができる。特定の実施形態において、選択的に固定化され伸張及び/又は配向された巨大分子は、分子コンピューティングに、又は巨大分子を含む回路のアセンブリー(すなわちDNAコンピューティング)に使用することができる。特定の実施形態において、選択的に固定化され伸張及び/又は配向された巨大分子は、カーボンナノチューブを操作するのに使用することができる。
【0100】
特定の実施形態において、選択的に固定化され伸張及び/又は配向された巨大分子は、ポリヌクレオチド結合性タンパク質の研究に使用することができる。これらは例えば、ポリヌクレオチドに結合したタンパク質の存在又は位置を決定するのに使用することができる。有用な技術には表面プラズモン共鳴などがある。
【0101】
特定の実施形態において、選択的に固定化され伸張及び/又は配向された巨大分子は、タンパク質繊維、例えばアミロイド、チチン(titin)、及びフィブロネクチンの研究に使用することができる。
【0102】
特定の実施形態において、選択的に固定化され伸張及び/又は配向された巨大分子は、標識の分離と連続的検出のための巨大分子バーコードを作製するのに使用することができる。分子に沿って間隔を空けて配置されたこれらの標識は、巨大分子が固定化されかつ伸張及び/又は配向しているときに読むことができるユニークなコードを提供する。選択的固定化による伸張及び/又は配向は、巨大分子バーコードの解読を容易にする。
【0103】
選択的に固定化され伸張及び/又は配向された巨大分子はさらに、巨大分子の検出又は画像化が有用な可能性のある状況で使用することができる。これらは、診断、予後、治療、及びスクリーニング目的に使用することができる。例えばこれらは、疾患の細胞種がサンプル中に存在するかどうかを決定するために及び/又は疾患をステージ分類するために、患者から得られた又は患者に由来する生物学的分子サンプルの分析に応用することができる。これらは、サンプル中のそれぞれ細菌又はウイルスのマーカーの存在及び/又は量を測定することにより、病原体の感染、例えば細胞内細菌及びウイルスによる感染症を診断するために使用することができる。本発明の組成物及び方法は、その豊富な存在量が生物学的状態又は疾患の症状を示す標的分子(例えば疾患の状態の結果としてアップレギュレート又はダウンレギュレートされる血液マーカー)を定量するのに使用することができる。さらに、本発明の組成物及び方法は、患者の治療経過を測定する上で助けとなる予後情報を提供するのに使用することができる。
【0104】
5.4 選択的に固定化され伸張又は配向された巨大分子を含むキット
本発明はさらに、本発明の1つ又はそれ以上の成分を含むキットを提供する。前記キットは、例えば本発明の支持体、および該支持体上に選択的に固定化された1つ又はそれ以上の伸張及び/又は配向された巨大分子、或いはその両方の巨大分子を含むことができる。前記キットは上記を含む当業者に公知の任意の目的に使用することができる。
【0105】
特定の実施形態において、本発明はまた、巨大分子の伸張及び/又は配向、並びに選択的固定化に有用なキットを提供する。前記キットは、固定化のための支持体と、巨大分子の伸張及び/又は配向、或いは固定化を容易にする1つ又はそれ以上の結合パートナーとを含むことができる。特定の実施形態において、結合パートナーは、適切な外力下で巨大分子の伸張及び/又は配向に有用な成分を含む。特定の実施形態において、結合パートナーは、支持体への巨大分子の固定化又は選択的固定化を容易にすることができる。別の実施形態において、前記キットは、伸張及び/又は配向及び固定化のための巨大分子を含むことができる。別の実施形態において、前記キットは、巨大分子を伸張することができる素子を含むことができる。
【0106】
特定の実施形態において、本発明は、容器と上記のキットの1つ又はそれ以上の成分とを含むキットを提供する。
【0107】
以下の実施例は本発明を例示するために提示され、決して本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0108】
6.実施例
6.1 実施例1:伸張されたDNAの選択的固定化
7.2Kbの長さの2本鎖RNA-DNAハイブリッドの一端をビオチンで官能化する。もう一方の端で、このDNAは15塩基が4回繰り返された1本鎖配列を含む(5'-GTC TAT CAT CAC AGC GTC TAT CAT CAC AGC GTC TAT CAT CAC AGC GTC TAT CAT CAC AGC-3';配列番号1)。すなわち、DNAは一端に、選択的固定化のための4つの結合部位を含む。このハイブリッドはまた、RNAに取り込まれたCy3蛍光物質を含む4つの領域を有する。
【0109】
DNAの小サンプル(3μl、1X TAE、又は40mM トリス酢酸、1mM EDTA、pH8.0中0.01 fmol/μl)を、ストレプトアビジンを被覆したカバーガラス(Accelr8, TB0200)に受動的に接着させた、ポリジメチルシロキサン中に成形されたチャネルを含むマイクロ流体素子に移す。チャネルの寸法は、50μmx1mmx10mmである。図4Aを参照。サンプルを室温で15分間カバーガラスに接触させて、DNAの端のビオチンを介してDNAをストレプトアビジン表面に選択的に結合させる。結合しないDNAは流体流で洗い流す。ウェル中の1X TAEバッファーを新鮮なバッファーと交換し、ウェル当たり30μlで流体レベルを等しくする。図4Aを参照。
【0110】
200V/cmの電場を適用して、長い陰性荷電DNA(図4B参照)を陽極に向けて伸張させる。
【0111】
DNAの第2の末端に相補的な、固定化物質であるビオチン化オリゴヌクレオチド(5'-/5ビオチン/GCTGTGATGATAGAC-3'(配列番号2)、50μl@100nM、1X TAE)を陰極ウェルに加える。追加の容量はウェルの流体レベルを上昇させ、静水流を引き起こして固定化試薬をチャネルに導入する(図4C参照)。この流れはまた、電場に加えてDNAをさらに延伸させる。
【0112】
ビオチン化オリゴヌクレオチドは、伸張されかつカバーガラスのストレプトアビジンに選択的に結合しながら、DNAの第2の末端とハイブリダイズする。サンプルは、5分未満で伸張された状態で有効に固定化することができる。
【0113】
6.2 実施例2:選択的に固定化され伸張された巨大分子の画像化
フルオロフォア標識とビオチン親和性タグとを含む巨大分子を調製し、実施例3に従って精製する。巨大分子は、ビオチンを含むカバーガラス表面に結合し、実施例3に従って電場によって延伸される。最後にアークランプを使用して巨大分子を照射し、カメラで画像を撮る。画像の例を図5に示す。個々の色素および、重要なことには、個々の巨大分子上の色素の順序を画像で検出することができる。
【0114】
6.3 実施例3:選択的に固定化され伸張された巨大分子の調製と画像化
これは、種々の成分からのナノレポーターの構築の工程毎の例である。種々の成分を同時に、他の成分の前又は後に加えることができることを理解されたい。例えば足場(scaffold)へのパッチユニット又はフラップのアニーリングを同時に又は順に行うことができる。
【0115】
6.3.1 足場製造
1本鎖環状M13mp18 DNA(USB)をBamHI認識部位に相補的な5倍モル過剰のオリゴヌクレオチド(Bam Cutterオリゴ)にアニーリングさせ、BamHI制限酵素で切断して線状1本鎖DNA骨格を得る。次にBamHI Cutterオリゴヌクレオチドに相補的なオリゴヌクレオチド(抗Bamオリゴヌクレオチド)を50倍過剰で加えて、遊離BamHI Cutterオリゴヌクレオチドを隔離することにより、M13が以後の工程で再環状化することを防止する。
【0116】
線状M13分子は、フルオロフォアが導入されたRNAパッチ又はRNAセグメントがアニーリングできる足場として役立つ。
【0117】
6.3.2 M13足場上で2本鎖位置を形成するためのPCR
M13足場に沿って10種の異なる領域を作製するために、10セットのオリゴヌクレオチドプライマー対を設計した。各対は、5'末端にT7 RNAポリメラーゼプロモーターを有する1つのプライマーを含有する。領域2〜7は、900塩基(約300nm)(これは回折限界スポット(標準的光学系で達成できる最小のスポット)の適切なサイズであるため)の長さであるように設計する。領域1と8は長いバージョンと短いバージョンとを有する:長いバージョンは全900塩基領域をカバーし、短いバージョンは900塩基領域の一部のみをカバーして標的特異的配列を結合させることができる。すなわち、いずれかの末端に標的特異的配列を結合させることができる。末端はまた、アンカー又はタグの結合に使用することができる。
【0118】
Taqポリメラーゼと0.5ngの2本鎖M13mp18(USB)を鋳型として使用してPCRを行う。反応物をQiagen製のQiaquick精製キットを使用して浄化する。各PCR反応物は、後述の1つの特異的セグメントに対応する2本鎖断片を与える。これらの断片を、RNAセグメントのin vitro転写の鋳型として使用する。
【0119】
6.3.3 暗(dark)RNAセグメントを産生するためのin vitro転写
2本鎖鋳型として上記PCR産物を使用して、Ambion製のin vitro転写キット(Megascript T7キット)を使用してRNAセグメントを作製する。転写反応の生成物をQiagen製のRNeasyキットを使用して精製する(鋳型を除去するためのDNAseIによる処理を含む)。
【0120】
6.3.4 アミノアリル基で改変したRNAセグメントを産生するためのin vitro転写
2本鎖鋳型として上記PCR産物を使用して、Ambion製のin vitro転写キット(MessageAmp aRNAキット)を使用して後の色素結合のためのRNAセグメントを作製する。アミノアリル改変型UTPヌクレオチドは、転写中にRNAセグメントに取り込まれる。転写反応の生成物をQiagen製のRNeasyキットを使用して精製する(鋳型を除去するためのDNAseIによる処理を含む)。
【0121】
6.3.5 着色Rnaセグメントを産生するためのアミノアリルRNAセグメントの色素結合
Ambion Aminoallyl Labelingキットを使用して、20〜100μgのアミノアリル改変型RNAセグメントをNHS-エステル色素と結合させる。使用される色素には、Alexa 488、Alexa 594及びAlexa 647(Invitrogen/Molecular Probes)ならびにCy3(Amersham)がある。
【0122】
各セグメントを別々に4つの色で作製して、足場上の各位置を4つの色のいずれかのセグメントで埋める。すなわち、異なる色を異なる位置に加えて、多くのユニークな色の組合せを作製することができる。
【0123】
この具体的な実施形態において、隣接するセグメントは異なる色である必要があるか、又は各セグメントが個々の「スポット」として検出されるように散在する暗(dark)セグメントでもよい。暗セグメントはナノレポーターコードの一部として使用することができる。
【0124】
6.3.6 標識分子のアセンブリー
各位置のセグメントを、1X SSPEバッファー中、2:1のセグメント対M13足場の比で、70℃で2時間アニーリングする。
【0125】
標識RNAセグメントを有するアセンブルされたナノレポーターを図6A〜6Bに記載する。図6Aは、交互の「スポット」(1、3、5、及び7)のみを標識したナノレポーターを示し、図6Bは、全てのスポットを標識したナノレポーターを示す。
【0126】
6.3.7 プローブと標的オリゴヌクレオチドの合成
S2 DNA標的オリゴヌクレオチドを合成し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(Integrated DNA Technologies)により精製した。Ambion MegascriptTMキットを製造業者の説明書に従って使用して、クローン化SARSコロナウイルス遺伝子(Invitrogen)の領域に対応するPCR産物のin vitro転写により、S2 RNA標的分子を作製した。S2ゴーストプローブ(図8A(i))はS2標的配列の特異的50塩基領域(S2-a)に相補的であり、5'末端のビオチン−TEGモノマーを用いて合成し、高速液体クロマトグラフィー(Integrated DNA Technologies)により精製した。S2標的(S2-b)と相補的な50bpと、M13足場への結合のために使用される追加の配列の9bp(全部で59塩基)とを含む第2のオリゴヌクレオチドを合成し、HPLC(Integrated DNA Technologies)により精製した。S2-aとS2-b標的領域は重複していなかったことに注意されたい。
【0127】
6.3.8 ナノレポーター合成
オリゴヌクレオチドS2-bを線状化M13(図8A(iii))の5'末端に連結し、生じた生成物を、製造業者の説明書に従うYM100フィルター(Millipore)を介したサイズ排除ろ過により、残存する連結していないオリゴヌクレオチドから精製した。2、4、6、及び8位(図7A)のM13に相補的なアミノ−アリル−改変型RNAセグメントを、製造業者の説明書に従うAmbion MegascriptTMキットにより、DNA鋳型(PCR産物)のin vitro転写から作製した。次にこのセグメントを、Ambionの説明書(アミンアリルMessageAmpTMII aRNAキット)に従って、NHS-エステル改変型Alexa647色素(Invitrogen)に結合させた。M13足場(図7C)の1、3、5、および7位に対応するRNAセグメントを、上記のDNA鋳型から非改変型のin vitro転写RNAとして作製した。10fmol/μlの8つの各セグメントを5fmol/μlのM13-S1-b足場に1X SSPEバッファー(150mM 塩化ナトリウム、10mM リン酸ナトリウム、1mM EDTA)中70℃で2時間アニーリングして、ナノレポーターのアセンブリーを行った。最終生成物は、暗セグメントが散在しているA647(赤)で標識された4つのセグメントを有するナノレポーターであった。
【0128】
6.3.9 ハイブリダイゼーション条件
以下の条件下でナノレポーターとゴーストプローブの標的へのハイブリダイゼーションを行った:5X SSPE(750mM 塩化ナトリウム、50mM リン酸ナトリウム、5mM EDTA 二ナトリウム)、40pMゴーストプローブ(結合オリゴヌクレオチドS2-a)、40pM ナノレポーターS2-b、100ng/μl 剪断したサケ精子DNA、5Xデンハルツ溶液、および0.1% Tween。最終標的濃度は、20pM S2 DNA標的(図8B)と1pM S2 RNA標的(図8C)であった。陰性対照には標的は加えなかった(図8D)。ハイブリダイゼーション反応物は65℃で少なくとも16時間インキュベートした。
【0129】
ハイブリダイゼーション反応物を100mMホウ酸バッファー溶液(pH9.8)で1:2希釈し、フローセルチャネルに導入し、チャネルの底を構成するストレプトアビジン被覆カバーガラス(Accelr8製のストレプトアビジン−OptiChemカバーガラス)に結合させた。ビオチン化ゴーストプローブとストレプトアビジン表面との相互作用を介して、ナノレポーター/標的/ゴーストプローブ複合体の1端によるスライドへの結合を行った。追加のホウ酸バッファーでチャネルを洗い、表面に結合していない過剰のレポーターを除去した後、バッファーを1X TAE(40mM トリス酢酸、1mM EDTA)で交換し、200Vの電流を印加して、画像キャプチャの間、ナノレポーター/標的複合体を延伸させた。
【0130】
6.3.10 表面結合
ナノレポーターが標的分子と対応する標識核酸(すなわち標識モノマーに結合した核酸)とに結合した時点で、これらを表面に結合させ、延伸して、標識モノマーにより放射されるシグナルの順序を解明することにより、標的分子を同定する。この実施例では、ナノレポーターが延伸されて、特定の標的分子に対応するその蛍光色素コードを空間的に解明する。ナノレポーターは一端を表面(この実施例ではカバーガラス、下記調製物を参照)に結合させることにより延伸される。表面結合のために以下の2つの方法が使用される:A)ビオチン化されているナノレポーターを含むAccelr8 Corporation製のストレプトアビジン被覆スライド、及びB)ストレプトアビジンを有するナノレポーターを含むビオチン被覆スライド。バッファー中で、ナノレポーターは活性表面と接触され、ある期間インキュベートされる。反応は、チャネルを作製するためにエッチングしたシリコンウエハーに成形したPDMSから作製されたフローセル中で行う。バッファーとサンプルの挿入用に、メタルチュービングを使用してチャネルの端でウェルを抜き取る。チャネルの寸法は、幅0.5mm又は1mmで高さ54μmである。サンプルをフローセルのレーンに充填した時点で、ナノレポーターが結合するはずである。電圧を印加するか、又はストリングスを延伸させる後退したメニスカスと共に液体を除去して乾燥することにより、ナノレポーターを延伸させることができる。
【0131】
6.3.11 表面の準備と素子のアセンブリー
結合表面(Accelr8ブランドのストレプトアビジン−OptiChem、被覆カバーガラス)をスライド容器当たり5つの表面の単位で入れ、各容器をホイルポーチ中にシリカ乾燥剤のパッケージと共に封入する。ポーチを、使用するまで-20℃で保存する。
【0132】
結合用表面を準備するために、まずフリーザーからポーチを取り出し、数分かけて室温まで戻す。まだ未開封であれば、ポーチの一端に沿って切り取ることでスリットを入れ、表面の容器を取り出す。必要な表面を取り出した後、容器をポーチ中で乾燥剤と交換し、パッケージングテープのストリップでスリットを閉じて密封し、ポーチをフリーザーに戻す。
【0133】
次に表面をNanopure水(Barnsted Nanopure Diamond)の水流で軽く洗い、清潔なスロットのあるコプリンジャー中、0.2μmろ過済み1X PBSに10分間浸す。浸した後、表面をNanopure水に浸し、表面の端にわたって濾過済み窒素を吹き付けて乾燥させる。
【0134】
表面体と結合させ、サンプルを局在化させるのに使用されるPDMS素子を、使用直前に、PDMS表面にセロファンテープを貼り、次に剥がして、保存中に付着しているかもしれないホコリや他の粒子を除去することによりきれいにする。Accelr8表面の結合側を上にして置いて、表面上に清潔なPDMS構造を中心に、チャネル側を下にして置く。PDMSは容易に被覆ガラスに接着し、その他の接着機構は必要ない。
【0135】
6.3.12 サンプル結合と洗浄
最初に、選択したレーンの1つのウェルにサンプル(現在100mM ホウ酸ナトリウムバッファー、pH9.8、で希釈されている)の5μl液滴を適用して、サンプルを表面体に結合させる。液滴は、チャネルがウェルに結合する場所に接触するはずである(この場所でサンプルの一部はチャネルに入る)。チャネルを充填し、非常に弱い吸引機(<2kPa)を使用して小滴をチャネルを介して反対のウェルに引き込むことにより、結合をチャネルにわたって平衡化させる。この処理を、各レーンの他のサンプルについて繰り返す。次にウェルから過剰の流体を除去し、ウェルにテープを貼って蒸発を減少させ、素子を室温、暗所で20分間インキュベートする。
【0136】
結合後テープを除去し、各レーンの上部のウェルに上記のホウ酸バッファー100μlを満たす。吸引機を使用して約20μlのバッファーをチャネルを通じて他のウェルに引き込み、この処理を1回繰り返す。次にすべてのホウ酸バッファーをすべてのウェルから取り出し、上部のウェルに1X TAE(pH8.3)を満たす。約50μlのTAEをチャネルから引き出し、次にすべてのTAEを除去し、ウェルを再度満たす。この処理を3回繰り返して、全部で約150μlのTAEの洗浄とする。最後にすべてのウェルに100μlの1X TAEを満たす。
【0137】
6.3.13 電気的延伸
カバーガラス/PDMS素子の下部に浸漬油をスポットし、顕微鏡上に置く。第1のPDMSチャネルの反対の端のウェルに電極をさし込む(上部のウェルに陰極、下部のウェルに陽極)。チャネルの最初の画像は下部のウェルの近くで撮る。目的の領域に焦点が当たるように顕微鏡のステージを調整する。
【0138】
次にチャネルにわたって電圧(200V)を印加する。電圧はDC電源(Agilent E3630A)から供給し、高圧増幅器(Matsusada Precision Inc.)により100Xに増幅する。電流を印加後、焦点を再度調整し、画像化処理を開始する。
【0139】
残りのチャネルについて電気的延伸と画像化処理を繰り返す。ナノレポーターを画像化する。
【0140】
6.3.14 ナノレポーター上の蛍光色素の光源
アークランプを光源として使用する際、最適なフルオロフォア選択は、蛍光の重複を生じない最も明るいタイプであり、例えばAlexa 488、Cy3、およびAlexa 594である。より弱い蛍光色素(例えば、Alexa 647及びCy5.5)も使用できる。
【0141】
6.3.15 ナノレポーター上の蛍光色素を画像化するためのフィルター
選択されたフルオロフォアAlexa 488、Cy3、Alexa 594、及びAlexa 647について、Cy3とAlexa 594間で重複があるかもしれない。しかし、バンド幅572〜600nmの発光フィルターを特注することにより重複が最小化される。
【0142】
6.3.16 顕微鏡とナノレポーターを画像化するための対物レンズ
使用される顕微鏡モデルは、倒立型蛍光画像化ステーションを使用するNikon Incorporation製のNikon Eclipse TE2000Eであり、これは複数の蛍光色素候補から蛍光発光の選択を可能にする6つのフィルターカセットを有する。選択された色素について、必要な光学分割はすべての波長(500〜700nm)について約400nmである。選択される対物レンズはNikon Plan Apo TIRFレンズであり、これはNAが1.45で倍率が60である。光学分割は、様々な波長について約210〜300nmである。
【0143】
顕微鏡(Nikon Eclipse TE2000E)を使用する5分前に、光源の電源を入れ(X-cite 120、Exfo Corporation)、強度が最大であることを確認する。CCDカメラのドライバー(Hamamatsu、Orca Ag)とシャーターコントローラーの電源を入れる。60x1.45NA(Plan Apo TIRF, Nikon)の油浸対物レンズ(oil objective)を使用して、ナノレポーターを評価する。すべてのナノレポーター評価について、オプティバー(optiar)を1xにセットする。Metamorphソフトウェア(Universal Imaging Corporation)を開く。対応するフィルターセット、例えばcy3、A647(Chroma Technologies)を使用して、画像を取得する。
【0144】
本明細書で引用されたすべての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物および特許出願が具体的かつ個別に参照により本明細書に組み込まれているように、参照より本明細書に組み込まれる。前記発明は、理解を容易にするために図解及び実施例によりある程度詳細に説明したが、本発明の上記教示から、添付の特許請求の範囲の精神又は範囲を逸脱することなく、特定の変更及び改変が可能であることは当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0145】
図1図1Aは、固定化された第1部分F1を含む巨大分子の説明図である。図1Bは、電場中で伸張され、かつ第1部分F1と第2部分F2とを含む巨大分子(ここでF2は分子F3との複合体を介して固定化されている)の説明図である。
図2図2Aは、伸張された巨大分子の固定化のための3メンバー複合体の説明図である。図2Bは、伸張された巨大分子の固定化のための2メンバー複合体の説明図である。図2Cは、伸張された巨大分子の固定化のための不完全複合体の説明図である。
図3図3Aは、固定化された第1部分F1を含む巨大分子の説明図である。図3Bは、第1部分F1で、及びF2との複合体を介して第2部分で固定化された伸張された巨大分子の説明図である。図3Cは、ビオチンを介してアビジン表面に固定化された第1部分を含む巨大分子の説明図である。図3Dは、アビジン表面へのビオチンの選択的結合を介して第1部分及び第2部分で固定化された伸張された巨大分子の説明図である。
図4-1】図4Aは、マイクロ流体素子中でのDNA分子の一端の固定化を例示する。図4Bは、電場中でのDNAの伸張を例示する。
図4-2】図4Cは、伸張されたDNA分子の第2末端の選択的固定化を例示する。
図5図5は、本発明の方法により選択的に固定化された、伸張された巨大分子の画像である。
図6図6Aは、スポットが交互に標識されているナノレポーターである。図6Bは、すべてのスポットが標識されているナノレポーターを示す。
図7図7Aは、2つの8箇所のナノレポーター成分を使用する、16箇所のナノレポーターコードを有するデュアルナノレポーターを例示する。図7Bは、9箇所のナノレポーターコードを有するデュアルナノレポーターを例示する。図7Cは、1つのゴーストプローブと1つの8箇所ナノレポーター成分とを使用する、8箇所のナノレポーターコードを有するデュアルナノレポーターを例示する。
図8図8Aは、図6Bと6Cに示す実験の略図であり、星印は、延伸する前に複合体を一端で表面に接着させるのに使用したビオチンを表す。図8Bと8Cは、S2-Aゴーストプローブ、S2-B標識ナノレポーター、及びS2標的DNA(図8B)又はS2標的RNA(図8C)がハイブリダイズされた実験からの画像である。図8Dは、S2-Aゴーストプローブ、S2-B標識ナノレポーター、及びS2標的RNAがハイブリダイズされた陰性対照実験の画像である。図8Eは、図8Bからのナノレポーター複合体の近接撮影である。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6
図7
図8
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]