(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5700914
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】排ガス処理装置およびそれを備えた排ガス処理設備
(51)【国際特許分類】
B01D 53/86 20060101AFI20150326BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20150326BHJP
F23G 7/06 20060101ALI20150326BHJP
F23G 7/07 20060101ALI20150326BHJP
F23G 5/46 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
B01D53/36 EZAB
F27D17/00 104G
F23G7/06 B
F23G7/06 102V
F23G7/06 104
F23G5/46 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2009-91275(P2009-91275)
(22)【出願日】2009年4月3日
(65)【公開番号】特開2010-240559(P2010-240559A)
(43)【公開日】2010年10月28日
【審査請求日】2012年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000167200
【氏名又は名称】光洋サーモシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萬田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】松田 伸
【審査官】
岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−276700(JP,A)
【文献】
特開2000−233117(JP,A)
【文献】
特開2001−280116(JP,A)
【文献】
特開平09−276655(JP,A)
【文献】
特開平03−105194(JP,A)
【文献】
特開2003−230817(JP,A)
【文献】
特開昭58−167405(JP,A)
【文献】
特開昭49−074661(JP,A)
【文献】
特開昭52−130475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/86
F23G 5/46
F23G 7/06
F23G 7/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアガスを含む排ガスを処理する装置であって、
排ガスおよび支燃性ガスを内部に流通し、前記排ガス中のアンモニアガスを分解、燃焼させるレトルト本体と、
前記レトルト本体の内部に設けられ、前記排ガス中のアンモニアガスと接触し、当該アンモニアガスの分解、燃焼を促進するニッケル含有板材からなる第1の触媒層と、
前記レトルト本体が内部に設置されており、このレトルト本体を900〜1000℃に加熱する加熱室本体と、
前記レトルト本体から排出されたガスを内部に流通し、当該ガスにアンモニアガスが残存しているとき、このアンモニアガスと接触して当該アンモニアガスの分解、燃焼を促進する第2の触媒層を有する分解室と
を備え、
前記第1の触媒層は、排ガスおよび支燃性ガスを流通して当該排ガスおよび支燃性ガスに熱を伝達するとともに前記排ガスおよび支燃性ガスの流れに抵抗を与えるために、多数の微小な穴を有するニッケル含有板材による層状構造とし、かつ隣り合う2つのニッケル含有板材の一方のニッケル含有板材の穴と、他方のニッケル含有板材の穴とを互い違いとし、千鳥状に配置され、
前記加熱室本体内にヒータおよび空気を供給する手段が設けられ、レトルト本体の内部の温度が900℃未満であるときには、ヒータによって900〜1000℃の範囲の温度に加熱され、レトルト本体の内部の温度が1000℃を超えているときには、空気の供給により900〜1000℃の範囲の温度に冷却されることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項2】
前記加熱室本体内には、一定の空間を隔ててレトルトを囲むようにヒータが配置され、前記レトルトとヒータとの間の空間に空気が供給される請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項3】
前記レトルト本体から排出されたガスの排熱により、前記レトルト本体に導入する前の支燃性ガスを加熱する加熱手段をさらに備えている請求項1もしくは2に記載の排ガス処理装置。
【請求項4】
窒化炉から排出されたアンモニアガスを含む排ガスを処理する排ガス処理設備であって、
前記窒化炉の下流側に接続されており、前記排ガスを搬送する排ガス搬送流路と、
前記排ガス搬送流路により搬送された排ガス中のアンモニアガスを処理する排ガス処理装置と、
前記排ガス処理装置で処理されたガスを排出する処理ガス流路と
を備え、
前記排ガス処理装置が請求項1〜3のいずれかに記載の排ガス処理装置であることを特徴とする排ガス処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス処理装置およびそれを備えた排ガス処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
金属性のワークの耐磨耗性、疲労強度、耐焼付性などを向上させるために、ワークに対して、窒化処理を施すことがある。前記窒化処理は、例えば、窒化炉において、アンモニアガスを主体とした雰囲気中でワークを加熱するガス窒化法や、アンモニアガスと浸炭性ガスとの混合ガス雰囲気中でワークを加熱するガス軟窒化法などにより行なわれる。
【0003】
ガス窒化法やガス軟窒化法では、アンモニアガスが用いられている。そのため、窒化炉から排出される排ガスには、このアンモニアガスが残存している。前記アンモニアガスは、刺激臭があるため、そのまま、前記排ガスを外部環境に排出した場合には、環境負荷が大きくなることがある。したがって、アンモニアガスを含む排ガスは、外部環境に排出する前に処理されている。
前記排ガスの処理は、燃料ガスの燃焼炎によって排ガス中のアンモニアガスを燃焼するバーナを備えた排ガス処理装置などが用いられている(例えば、特許文献1および2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62−93361号公報、第1図
【特許文献2】特開平3−105194号公報、第1頁右欄下から7行〜2行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記バーナを備えた排ガス処理装置では、排ガス中のアンモニアガス濃度が低い場合、排ガス中のアンモニアガスが燃焼しにくくなり、排ガスの処理効率が低下するため、排ガスを安定して処理することができないことがある。
また、バーナを備えた排ガス処理装置では、排ガスの処理後のガスを排気口から外部環境に排出するに際して、燃焼炎が、排気口から噴き出すことがあるため、前記排ガス処理装置の運転時における安全性を確保する観点から、十分な監視を要する。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、アンモニアガスを含む排ガスを、排ガスのアンモニアガス濃度に影響されずに安定して処理することができるとともに、排ガスの処理ガスの排出に際して燃焼炎の発生を無くすことができる排ガス処理装置およびそれを備えた排ガス処理設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の排ガス処理装置は、アンモニアガスを含む排ガスを処理する装置であって、排ガスおよび支燃性ガスを内部に流通し、前記排ガス中のアンモニアガスを分解、燃焼させるレトルト本体と、前記レトルト本体の内部に設けられ、前記排ガス中のアンモニアガスと接触し、当該アンモニアガスの分解、燃焼を促進するニッケル含有板材からなる第1の触媒層と、前記レトルト本体が内部に設置されており、このレトルト本体を900〜1000℃に加熱する加熱室本体と、前記レトルト本体から排出されたガスを内部に流通し、当該ガスにアンモニアガスが残存しているとき、このアンモニアガスと接触して当該アンモニアガスの分解、燃焼を促進する第2の触媒層を有する分解室とを備え、前記第1の触媒層は、排ガスおよび支燃性ガスを流通して当該排ガスおよび支燃性ガスに熱を伝達するとともに前記排ガスおよび支燃性ガスの流れに抵抗を与えるために、多数の微小な穴を有するニッケル含有板材による層状構造とし、かつ隣り合う2つのニッケル含有板材の一方のニッケル含有板材の穴と、他方のニッケル含有板材の穴とを互い違いとし、千鳥状に配置
され、前記加熱室本体内にヒータおよび空気を供給する手段が設けられ、レトルト本体の内部の温度が900℃未満であるときには、ヒータによって900〜1000℃の範囲の温度に加熱され、レトルト本体の内部の温度が1000℃を超えているときには、空気の供給により900〜1000℃の範囲の温度に冷却されることを特徴としている。
【0008】
本発明の排ガス処理装置では、アンモニアガスを含む排ガスは、加熱室本体の内部で900〜1000℃に加熱されたレトルト本体に流通して、第1の触媒層に接触し、かつこのレトルト本体から排出されたガスは、分解室に搬送され、第2の触媒層に接触する。これにより、排ガス中のアンモニアガスの一部は、レトルト本体の内部で分解、燃焼する。また、他の一部のアンモニアガスは、前記第1の触媒層を構成するニッケル含有板材による触媒作用によって、分解、燃焼して窒素ガスと水蒸気とになる。さらに、レトルト本体から排出されたガス中にアンモニアガスが残存しているときには、前記アンモニアガスは、分解室の第2の触媒層の触媒作用によって、分解、燃焼して窒素ガスと水蒸気とになる。
そのため、本発明の排ガス処理装置によれば、排ガス中のアンモニアガス濃度が高い場合(例えば、21〜100体積%のとき)には、レトルト本体の内部でアンモニアガスを分解、燃焼することにより、排ガスの処理を行なうことができ、一方、排ガス中のアンモニアガス濃度が低く(例えば、21体積%未満のとき)、アンモニアガスが十分に分解、燃焼しない場合であっても、第1の触媒層および第2の触媒層の触媒作用でアンモニアガスを分解、燃焼することにより、排ガスの処理を行なうことができる。
したがって、本発明の排ガス処理装置によれば、排ガス中のアンモニア濃度の変動に影響されずに、排ガスを安定して処理することができる。
また、本発明の排ガス処理装置によれば、レトルト本体内でアンモニアガスを分解、燃焼して窒素ガスと水蒸気とを生成し、さらに、レトルト本体から排出されたガス中にアンモニアガスが残存しているときには分解室内で当該アンモニアガスを分解、燃焼して窒素ガスと水蒸気とを生成するため、アンモニアガスの燃焼炎が排気口から噴き出すことをより確実に無くすことができ、従来のバーナを備えた排ガス処理装置に比べて、より安全に排ガスの処理を行なうことができる。
更にまた、本発明の排ガス処理装置において、前記加熱室本体内にヒータおよび空気を供給する手段が設けられ、レトルト本体の内部の温度が900℃未満であるときには、ヒータによって900〜1000℃の範囲の温度に加熱され、レトルト本体の内部の温度が1000℃を超えているときには、空気の供給により900〜1000℃の範囲の温度に維持されることが好ましい。
これにより、レトルト本体の内部の温度を容易にかつ安価に900〜1000℃の範囲の温度に維持することができる。
【0009】
本発明の排ガス処理装置では、前記レトルト本体から排出されたガスの排熱により、前記レトルト本体に導入する前の支燃性ガスを加熱する加熱手段をさらに備えていることが好ましい。
これにより、レトルト本体の内部において、排ガスおよび支燃性ガスを所定温度に加熱するのに要する熱量を低減することができ、排ガスの処理の省エネルギー化を図ることができる。
【0010】
本発明の排ガス処理装置では、前記第1の触媒層は、排ガスおよび支燃性ガスを流通して当該排ガスおよび支燃性ガスに熱を伝達するとともに前記排ガスおよび支燃性ガスの流れに抵抗を与える流路を形成した内部構造を有している
。
これにより、排ガスおよび支燃性ガスを効率よく加熱することができるとともに、アンモニアガスを含む排ガスが前記第1の触媒層内を流通する時間を長くすることができる。
したがって、前記レトルト本体において、アンモニアガスを十分に分解、燃焼することができる。
【0011】
本発明の排ガス処理設備は、窒化炉から排出されたアンモニアガスを含む排ガスを処理する排ガス処理設備であって、前記窒化炉の下流側に接続されており、前記排ガスを搬送する排ガス搬送流路と、前記排ガス搬送流路により搬送された排ガス中のアンモニアガスを処理する排ガス処理装置と、前記排ガス処理装置で処理されたガスを排出する処理ガス流路とを備え、前記排ガス処理装置が本発明の排ガス処理装置であることを特徴としている。
本発明の排ガス処理設備は、本発明の排ガス処理装置を備えているため、排ガスを安定して処理することができ、処理後のガスの排出に際して燃焼炎の発生を無くすことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の排ガス処理装置およびそれを備えた排ガス処理設備によれば、アンモニアガスを含む排ガスを、アンモニアガス濃度に影響されずに安定して処理することができるとともに、処理後のガスの排出に際して燃焼炎の発生を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る排ガス処理装置を備えた排ガス処理設備の要部構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示される排ガス処理装置へのガス導入部を示す要部拡大断面図である。
【
図3】
図1に示される排ガス処理装置のレトルト本体の要部構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る排ガス処理設備および排ガス処理装置を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る排ガス処理装置を備えた排ガス処理設備の要部構成を示すブロック図である。なお、本実施形態では、ワークにガス窒化処理またはガス軟窒化処理を施すための窒化炉から排出されたアンモニアガスを含む排ガスを処理する排ガス処理設備を例として挙げて説明する。
【0015】
図1に示すように、排ガス処理設備1は、窒化炉から排出された排ガスを搬送する排ガス搬送流路2と、排ガスを分解、燃焼させることにより処理する排ガス処理装置3と、排ガス燃焼装置3で処理されたガスを排出する処理ガス流路8とを備えている。
【0016】
排ガス搬送流路2の上流側には、図示しない窒化炉が接続されており、前記排ガス処理装置3は、排ガス搬送流路2の下流側に接続されている。これにより、窒化炉において、ワークにガス窒化処理またはガス軟窒化処理が施された後のアンモニアガスを含む排ガスが、排ガス搬送流路2を通って、排ガス処理装置3に搬送される。
【0017】
排ガス搬送流路2は、排ガス搬送流路2内の圧力を管理する微差圧計11と、排ガスの流通時に開放されている電磁弁12と、電磁弁12の下流に接続され、排ガス搬送流路2を流れる排ガスを排ガス処理装置3に送り込むルーツブロワ13と、排ガス搬送流路2内の圧力が予め設定された圧力以上であるときに開放された状態となる電磁弁14とを備えている。
この排ガス搬送流路2では、微差圧計11で、当該排ガス搬送流路2を流れる排ガスの圧力を測定することにより、圧力の変動が管理されている。排ガス搬送流路2を流れる排ガスの圧力が予め設定された圧力未満であるときには、圧力の変動に応じて、ルーツブロワ13の出力が調整され、排ガス処理装置3に供給される排ガスの量が調整される。一方、窒化炉から排出される排ガスの量が増加し、排ガス搬送流路2を流れる排ガスの圧力が予め設定された圧力以上であるときには、電磁弁14が開放され、ルーツブロワ13の異常が防止される。
これにより、窒化炉から排出される排ガスの量の変動による排ガス処理設備1の損傷を防ぐことができる。
【0018】
排ガス処理装置3は、アンモニアガスの分解、燃焼を促進する第1の触媒層21と、排ガス中のアンモニアガスを分解、燃焼する円筒状のレトルト本体22と、当該レトルト本体22を加熱する円筒状の加熱室本体23と、アンモニアガスの分解、燃焼を促進する第2の触媒層を有する分解室31とを備えている。
【0019】
加熱室本体23の内部には、レトルト本体22が設置されており、このレトルト本体22の内部には、第1の触媒層21が設けられている。
加熱室本体23の内部には、レトルト本体22の外周面と、加熱室本体23を構成する壁部の内周面との間に空間24が形成されている。そして、この加熱室本体23の内側にはヒータ25が設けられている。
また、前記空間24の上流側には、冷却用ブロワ51から冷却媒体としての空気を供給する冷却媒体流路6が接続されており、前記空間24の下流側には、前記空気を排出する加熱室排気流路7が接続されている。
【0020】
レトルト本体22の内部の温度が900℃未満であるときには、ヒータ25により前記空間24が加熱されることにより、間接的に、レトルト本体22の内部が900〜1000℃の範囲の温度に加熱される。また、レトルト本体22の内部の温度が1000℃を超えているときには、前記空間24への空気の供給により前記空間24が冷却されることにより、間接的に、レトルト本体22の内部が900〜1000℃の範囲の温度に冷却される。これにより、レトルト本体22の内部の温度は、一定温度に維持される。
【0021】
なお、排ガス中のアンモニアガス濃度が高いとき(例えば、21〜100体積%のとき)には、排ガス中のアンモニアガスの燃焼時に生じる燃焼熱により、レトルト本体22の内部の温度が上昇するため、ヒータ25による加熱が不要となる。この場合において、レトルト本体22の内部の温度が1000℃を超えないように、前記空間24への空気の供給により当該空間24を冷却し、レトルト本体22の内部を冷却することができる。
【0022】
レトルト本体22の上流側には、ガス導入部15を介して、排ガス搬送流路2と、支燃性ガスである空気をレトルト本体22の内部に供給する支燃性ガス流路5とが接続されている。
ガス導入部15は、二重管構造を形成している(
図2を参照)。前記ガス導入部15を構成する外側の流路2aは、排ガス搬送流路2に接続されており、排ガスが流通するようにされている。また、前記ガス導入部15を構成する内側の流路5aは、空気供給流路5に接続されており、支燃性ガスである空気が流通するようにされている。
これにより、排ガスと空気とを、アンモニアガスを効率よく燃焼させるのに適した状態で排ガス処理装置3のレトルト本体22内に導入することができる。
【0023】
第1の触媒層21は、レトルト本体22の内部に設けられている。この第1の触媒層21は、アンモニアガスの分解、燃焼を促進する複数のニッケル含有板材21aを、所定隙間を設けて多段に設けた層状構造のものである(
図3を参照)。前記ニッケル含有板材21aは、レトルト本体22の内径とほぼ同じ大きさの外径を有する円板状の鋼板であり、このニッケル含有板材21aには、パンチング加工により形成した多数の微小な穴21bが設けられている。また、第1の触媒層21では、隣り合う2つのニッケル含有板材21a同士が、一方のニッケル含有板材21aの穴21bと、他方のニッケル含有板材21aの穴21bとが互い違いとなって千鳥状に配置されるように、配置されている。
このように、第1の触媒層21を、多数の微小な穴21bを有するニッケル含有板材21aによる層状構造とし、かつ隣り合う2つのニッケル含有板材21aの一方のニッケル含有板材21aの穴21bと、他方のニッケル含有板材21aの穴21bとを互い違いとし、千鳥状に配置したことにより、排ガスおよび支燃性ガスの流路を確保し、かつ第1の触媒層21を通る排ガスおよび支燃性ガスの流れに流路抵抗を与えるとともに、第1の触媒層21を構成するニッケル含有板材21aと排ガスとが接触する部分の面積を十分に確保している。
したがって、前記第1の触媒層21では、ヒータ25により加熱された第1の触媒層21と排ガスおよび支燃性ガスとの熱交換を十分に行なうことができるため、排ガスおよび支燃性ガスを効率よく所定温度に加熱することができる。また、前記第1の触媒層21によれば、排ガスおよび支燃性ガスに流路抵抗を与えることができるため、排ガスおよび支燃性ガスがレトルト本体22内を通過する時間を十分に確保して、排ガス中のアンモニアガスを十分に処理することができる。
前記ニッケル含有板材としては、例えば、ステンレス鋼板材、ニッケル板材、ニッケル合金(商品名:インコネル)からなる板材、ニッケル粒またはニッケルを担持した多孔体からなるアンモニア分解触媒層が表面にコーティングされている板材などが挙げられる。
【0024】
レトルト本体22では、排ガス中のアンモニアガス自体を燃料ガスとして燃焼し、第1の触媒層21の触媒作用によりアンモニアガスを分解、燃焼して窒素ガスおよび水蒸気を生成することができる。
【0025】
レトルト本体22の下流側には、レトルト本体22から排出されたガスを分解室31に搬送するレトルト排ガス流路4が接続されている。このレトルト排ガス流路4の途中には、支燃性ガス流路5を流れる空気に対して、レトルト本体22から排出されたガスの排熱を伝達することにより前記空気を加熱する加熱手段としての熱交換器41が設けられている。この熱交換器41には、支燃性ガス流路5が接触している。熱交換器41では、レトルト本体22から排出されたガスの排熱を支燃性ガス流路5内の空気に伝導させることにより、前記空気を加熱する。加熱された空気は、加熱用ブロワ42によって、前記ガス導入部15を介して、レトルト本体22に供給されるようにされている。
このように、排ガス処理装置3によれば、レトルト本体22から排出されたガスの排熱を利用してレトルト本体22に導入する前の空気を加熱することができるため、レトルト本体22の内部において、排ガスおよび支燃性ガスを所定温度に加熱するのに要する熱量を低減することができ、排ガスの処理の省エネルギー化を図ることができる。
【0026】
分解室31は、アンモニアガスの分解、燃焼を促進する第2の触媒層からなる。第2の触媒層は、レトルト本体22から排出され、レトルト排ガス流路4を通ることによりレトルト本体22からの排出時よりも低い温度となったガスの温度(例えば、300℃程度)で、アンモニアガスの分解、燃焼を促進する触媒から構成されている。第2の触媒層を構成する触媒としては、例えば、白金、パラジウムなどの貴金属を含む貴金属系触媒、銅、ニッケルなどの卑金属の酸化物を含む卑金属系触媒、ゼオライト、二酸化チタンなどが挙げられる。
分解室31の第2の触媒層には、レトルト排ガス流路4を介して、レトルト本体22から排出された排ガスが導入される。そして、レトルト本体22から排出されたガス中にアンモニアガスが残存しているときには、分解室31において、レトルト本体22から排出されたガスの排熱を利用して、第2の触媒層を構成する触媒の作用により、アンモニアガスを分解、燃焼して窒素ガスおよび水蒸気を生成することができる。その後、分解室31から排出された処理ガスは、処理ガス流路8を介して排気口9に搬送され、外部環境に排出される。
したがって、排ガス処理装置3によれば、例えば、排気口9に搬送された処理ガスにおけるアンモニアガス濃度は、排気口9の近傍部位Aにおいて、通常、0〜200ppm程度とすることができ、従来のバーナを備えた排ガス処理装置に比べて、外部環境に排出される処理ガス中のアンモニアガスの量をより一層低減することができる。
【0027】
排ガス処理装置3では、排ガス中のアンモニアガス濃度が高いとき(例えば、21〜100体積%のとき)には、レトルト本体22において、排ガス中のアンモニアガス自体を燃料ガスとして燃焼し、第1の触媒層21の触媒作用により当該アンモニアガスを分解、燃焼することにより、排ガスを処理する。一方、排ガス中のアンモニアガス濃度が低いとき(例えば、21体積%未満のとき)には、レトルト本体22において、第1の触媒層21の触媒作用により当該アンモニアガスを分解、燃焼することにより、排ガスを処理することができる。さらに、排ガス中のアンモニアガスを十分に処理することができなかったときには、分解室31の第2の触媒層の触媒作用により当該アンモニアガスを分解、燃焼することにより、排ガスを処理することができる。
したがって、前記排ガス処理装置3を備えた排ガス処理設備1によれば、アンモニアガスを燃焼させるための燃料ガスを使用することなく、アンモニアガスを含む排ガスを処理することができる。そのため、排ガス処理設備1によれば、安定して処理することができる。また、排ガス処理設備1では、排ガス中のアンモニアガス濃度に影響されることがないので、例えば、アンモニア濃度が0体積%を超え、100体積%以下の排ガスを安定して処理することができる。さらに、排ガス処理設備1によれば、排ガス処理装置3のレトルト本体22内で排ガス中のアンモニアガスを分解、燃焼して窒素ガスおよび水蒸気を生成し、アンモニアガスが残存しているときには分解室31内でアンモニアガスを分解、燃焼して窒素ガスおよび水蒸気を生成することにより、燃焼炎を発生する燃料ガスとしてのアンモニアガスを十分に処理するため、アンモニアガスの燃焼炎が排気口9から噴き出すことをより確実に無くすことができる。
【符号の説明】
【0028】
1 排ガス処理設備
2 排ガス搬送流路
3 排ガス処理装置
8 処理ガス流路
21 第1の触媒層
22 レトルト本体
23 加熱室本体
31 分解室
41 熱交換器