(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回動軸は、前記熱処理ヘッドが設置される機器設置プレートの上面より上側の回動軸中間部と、中段プレートの下側に設けられたボスに回転可能に支持され上記回動軸中間部の下端と連結された回動軸下部と、上記回動軸中間部の上端と連結されかつ装置フレームの上部に軸支された回動軸上部と、を有してなる組立体であり、
上記回動軸中間部に、上記複数の回転チャックユニットが備えられる上記揺動板が組み付けられ、
上記回動軸上部には、各機器に繋がるケーブル類が収容された籠が備えられている、請求項1に記載のワーク熱処理装置。
【背景技術】
【0002】
カップ部を有し、且つ該カップ部が熱処理されるワークとしては、具体的には等速ジョイントのアウタレースが挙げられる。アウタレースは、一端が開いたカップ部と、カップ部の奥行側端面より一体に突出するステム軸部(中実軸)又は筒軸部を有する。アウタレースは、機械的強度を増すために、カップ部内面に焼入れ及び焼戻しが施されると共に、ステム軸部の外面又は筒軸部のスプライン孔に焼入れ及び焼戻しが施される。カップ部を上位にして内面を熱処理すると、冷却液がカップ部に溜まるので熱処理することができない。そのためステム軸部又は筒軸部を上位にして保持し、カップ部内面を熱処理する。
【0003】
アウタレースには、
図1に示すように大別して4種類の形態がある。またアウタレースには、種々の大きさのものがある。
【0004】
トリポード型と称されるアウタレースには2種類ある。
図1(a),(b)に示すアウタレースW1及び
図1(c),(d)に示すアウタレースW2は、トリポード型と称され、位相を120°ずつ異ならせた三つの深い溝を有するカップ部W11又はW21を有する。アウタレースW1は、カップ部W11の奥行側端面より突出するステム軸部(中実軸)W12を有する。アウタレースW2は、カップ部W21の奥行側端面より突出する筒軸部内に筒軸部W22を有する。
【0005】
トリポード型のアウタレースW1,W2のカップ部W11又はW21の溝に対する熱処理(焼入れ及び焼戻し)は、加熱コイルとカップ部W11又はW21との軸心を一致させ、且つ位相を高精度に一致させてから、加熱コイルをカップ部の内部に相対的に挿入する。アウタレースを回転させないで三つの溝に三つの柱状の加熱コイルを近接状態に収容し、外面に冷却液を噴射して冷却しながら内面を誘導加熱し、その後、内面に冷却液を噴射して冷却する。
【0006】
ステム軸部W11の熱処理は、半開放鞍型の加熱コイルを近接させるか又は螺旋状に巻かれた加熱コイルを外側に配置し、アウタレースW1を回転させてステム軸部の外面を誘導加熱し、その後、外面に冷却液を噴射して冷却することで行う。
筒軸部W22の熱処理は、マルチターン型の加熱コイルをスプライン孔に収容し、アウタレースW2を回転させ、外面に冷却液を噴射して冷却しながら内面の筒軸部W22を誘導加熱し、その後スプライン孔内面に冷却液を噴射して冷却する。
【0007】
バーフォード型と称されるアウタレースには2種類ある。
図1(e),(f)に示すアウタレースW3及び
図1(g),(h)に示すアウタレースW4は、バーフォード型と称され、例えば6〜12個の浅い溝を有するカップ部W31又はW41を有する。アウタレースW3はカップ部W31の奥行側端面より突出するステム軸部W32を有し、アウタレースW4はカップ部W41の奥行側端面より突出する筒軸部内に筒軸部W42を有する。
【0008】
バーフォード型のアウタレースW3,W4のカップ部W31又はW41の溝に対する熱処理(焼入れ及び焼戻し)は、加熱コイルとカップ部W31又はW41との軸心を一致させてから、加熱コイルをカップ部の内部に相対的に挿入し、アウタレースを回転させて外面に冷却液を噴射し冷却しながら内面を誘導加熱し、その後、内面に冷却液を噴射して冷却する。
【0009】
ステム軸部W32の熱処理は、半開放鞍型の加熱コイルを近接させるか又は螺旋状に巻かれた加熱コイルを外側に配置し、アウタレースW3を回転させてステム軸部の外面を誘導加熱し、その後外面に冷却液を噴射して冷却する。
筒軸部W42の熱処理は、マルチターン型の加熱コイルをスプライン孔に収容し、アウタレースW4を回転させて筒軸部W42を誘導加熱し、その後スプライン孔内面に冷却液を噴射して冷却する。
【0010】
上記のように、アウタレースW1,W2,W3,W4のカップ部の溝に対する熱処理、ステム軸部W12,W32に対する熱処理、筒軸部W22,W42に対する熱処理は、それぞれ形状が同一ではないので共通の加熱コイルを用いることができない。従って、加熱コイル及び冷却ノズルを交換して熱処理している。
【0011】
等速ジョイントのアウタレースをワークとする熱処理装置に関し、カップ部の熱処理機構は、従来はカップ部を固定し、焼入れヘッドを回転自在かつ昇降自在に備えた構成が一般的に採用されている。しかし、この構成は、焼入れヘッドの構造が複雑になっているので、焼入れヘッドを固定し、カップ部を回転自在かつ昇降自在に備えた構成とする方が技術的に有利である。このような構造のカップ部の熱処理機構については、例えば特許文献1〜3がある。
【0012】
特許文献1に記載された高周波焼入装置は、焼入れテーブルに三股状のアームとコレットチャックとセンタ軸と回転手段と加熱コイル及び冷却ジャケットとを備えている。三股状のアームは120°毎に間欠回転自在、かつ昇降自在であり、コレットチャックはアームの各揺動端の貫通孔内に備えられ、センタ軸はコレットチャックの内側に備えられている。そして、アームの各揺動端の上面に備えられた回転手段が、センタ軸を回転させる。加熱コイル及び冷却ジャケットからなるヘッド軸部に対し、コレットチャック及びセンタ軸に銜えられたワークのカップ部が下降時に近接状態に被さる。第1の位置でワークをチャックし、第2の位置でカップ部を加熱コイルに被せ、第3の位置でチャック解除する。
【0013】
特許文献2に記載された高周波焼入装置によれば、カップ部加熱コイルと回転センタ機構とを有してなる。回転センタ機構は、等速ジョイントの軸部をチャックして冷却槽と共に回転させる構成である。バーフォード型の等速ジョイントのカップ部が冷却槽底部の開口を塞ぎ、高周波加熱コイルは冷却槽の下方から冷却槽底部の開口を通してカップ部内に近接状態に位置される。冷却槽に冷却液を貯溜した状態でカップ部を回転させつつ、カップ部の内部に挿入された高周波加熱コイルを固定した状態でカップ部の溝部を加熱し、加熱後、溝部に内側冷却ジャケットから冷却液を噴射しカップ部内面を高周波焼入れする。
【0014】
特許文献3に記載された高周波焼入装置によれば、第2の焼入ステーションで、ワークのカップ部内面の焼入れを行う。バーフォード型のワークを対象とするときは、第2の焼入ステーションは、ワークが加熱部に搬送されると、カップ部内に、加熱コイル及び冷却ジャケットを挿入し、カップセンタ機構等を動作させセンタ軸を下降しセンタ軸でワークを位置決めし回転される。次いで、加熱コイルに高周波電流を流しカップ部内面を誘導加熱すると共に、カップ部外の冷却ジャケットにより冷却液を噴射しワークの外面を冷却する。続いて、外内の冷却ジャケットから冷却液を噴射してカップ部の内外面を冷却する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1,2,3に記載された高周波焼入装置によれば、(1)コレットチャックがワーク上部を芯出しできていない状態にチャックしてしまう場合に、これを修正する構成が含まれていない。(2)コレットチャックがワーク上部をチャックした後に、ワークが芯出しできた状態を確認する手段を備えていない。(3)コレットチャックがワーク上部をチャックした後にチャック力が弛む等によりワークがずれ下がる場合に、これを修正する構成が含まれていない。
【0017】
さらに、特許文献2に記載された高周波焼入装置によれば、(4)冷却槽へ水を供給する時間及び冷却槽から水を排出する時間が多くかかり、タクト(1個当りの処理時間)が長くかかりすぎる。(5)ワークを高速に回転させることはできない。また、特許文献3に記載された高周波焼入装置によれば、カップセンタ機構にチャック機能を有し昇降自在且つ回転自在なセンタ軸を備えているとしているが、具体的な構成が示されていない。
【0018】
ワークの芯出しを行うことの意義は、ワークと加熱コイルとが接触して電気的故障に繋がることを回避すること及びギャップを均一に保つことで、均一な熱処理が行われることを確保することにある。
カップ部をカップ部熱処理ヘッドに対し、真上から下降してカップ部熱処理ヘッドに精密に同心状態且つ近接状態に被せると、熱処理ヘッドの表面とカップ部の内面とのギャップは、周囲のどの位置でも、例えば0.5〜1.5mmに保持される。
これによって均一な熱処理が行われるのであるが、ワークが精密に芯出しされない場合には、ギャップが均一にならないために熱処理が均一に行われず、ワークと加熱コイルとの電気的故障が生じ易くなる。
従って、ワークの芯出しを行うことができる機構や確認手段を有していることが、ワークの熱処理装置においては必要である。
【0019】
しかるに、特許文献1,2,3に記載された高周波焼入装置によれば、芯出しができていないチャック状態やワークがずれ下がる状態が生じたときに、装置が稼動を続行して、電気的故障を生じたり、ときには装置が稼動できなくなる虞がある。
【0020】
本発明は、上述した点に鑑み案出されたもので、ワークの芯出し又は位置確認を容易に行える回転チャック機構のワーク確認装置を提供することを一目的とする。
【0021】
また本発明は、ワークの芯ずれや位置ずれを防止してワークのカップ部の熱処理を行うことができる、ワーク熱処理装置を提供することを他の目的とする。
【0022】
また本発明は、回動時の回転モーメント及び振れ回りを小さく抑えることができ、ワークをチャックして二つの位置間を高速で回動して精密に位置決めすることができ、ワーク1個当りの熱処理時間を大幅に短縮できるワーク熱処理装置を提供することを他の目的とする。
【0023】
また本発明は、電気的故障に繋がる虞や、装置が稼動できなくなる虞が極めて少ないハンドリングを実現するワーク熱処理装置を提供することが他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するため、本発明は、
ワーク確認装置を有し、ワークの外周をチャックして
回転可能な回転チャック機構と、回転チャック機構を対向配置可能な熱処理ヘッドとを備え、カップ部と軸部とを有するワークを軸部が上位となるように回転チャック機構によりチャックして移送し、カップ部を熱処理ヘッドに近接状態に被せてカップ部の内面の熱処理を行うワーク熱処理装置であって、
間欠回動される回動軸と、回動軸周りに配設された複数の籠形ブラケットと、複数の籠形ブラケットをそれぞれ回動軸に対して昇降する複数の昇降手段と、を備え、各籠形ブラケットに、昇降手段の駆動源としてのサーボモータと、回転チャック機構及び回転チャック機構を回転させるチャック回転用モータと、ワーク確認装置とがそれぞれ装着され、籠形ブラケット同士、昇降手段同士、ワーク確認装置同士、回転チャック機構及びチャック回転用モータ同士が、回動軸の軸線に対してそれぞれ対称となるように配置され、
回転チャック機構には、ワークの端部と対向するように中心孔が貫通して設けら
れ、ワーク確認装置は、中心孔内に挿通された
ロッドと、ロッドの先端に回転自在に備えられて回転チャック機構から出没自在に配置された
当接ピースと、ロッドの後端側
に備えられロッドを進退させるエアシリンダと
、を有し、
回転チャック機構でワークをチャックする前には、当接ピースをワークの端部に係合させて押圧することで
ワークの芯出しが可能で、回転チャック機構でワークをチャックした後には、当接ピースでワークの一端部を押圧しロッドを追随させて検知することで
ワークの位置確認及び位置ずれ確認が可能であることを特徴としている。
【0028】
回動軸は、熱処理ヘッドが設置される機器設置プレートの上面より上側の回動軸中間部と、中段プレートの下側に設けられたボスに回転可能に支持され、回動軸中間部の下端と連結された回動軸下部と、回動軸中間部の上端と連結され、且つ装置フレームの上部に軸支された回動軸上部と、を有してなる組立体であり、回動軸中間部に、複数の回転チャックユニットが備えられる揺動板が組み付けられ、回動軸上部には、各機器に繋がるケーブル類が収容された籠が備えられているのがよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明における回転チャック機構のワーク確認装置によれば、回転チャック機構にワークの端部と対向するように回転軸に沿って中心孔が設けられ、中心孔内に回転チャック機構から出没自在な当接ピースが配置され、当接ピースをワークの端部に当接させるように構成されているので、ワークの位置確認又は芯出しを容易に行うことができる。
【0030】
本発明におけるワーク熱処理装置によれば、上記のようなワーク確認装置を有する回転チャック機構を備えていて、回転チャック機構によりチャックして移送し、カップ部を熱処理ヘッドに近接状態に被せてカップ部の内面の熱処理を行うように構成されている。そのため回転チャック機構にチャックされたワークの位置確認又は芯出しを行うことができ、カップ部をカップ部熱処理ヘッドに近接状態に被せる際に、ワークが芯ずれ又は位置ずれして熱処理ヘッドに接触してしまうことを回避できる。よって本発明によれば、電気的故障に繋がる虞や装置が稼動できなくなる虞が極めて少ないハンドリングを実現するワーク熱処理装置を提供することができる。
【0031】
また本発明によれば、回動軸と一体に回動する全ての構成要素が、回動軸に関してバランスよく配置されて全体の重心が回動軸の軸線に一致し、しかも、全ての構成要素が回動軸からの回転半径を小さく抑えられて回転モーメントが小さく抑えられる配置構成を実現できる。このため回動軸を高速で反転を繰り返すことができる。
従って、本発明によれば、回動時の回転モーメント及び振れ回りを小さく抑えることができ、ワークをチャックして二つの位置間を高速で回動して精密に位置決めすることができ、ワーク1個当りの熱処理時間を大幅に短縮できるワーク熱処理装置を提供することができ、従来よりも合計の熱処理サイクル時間(タクト)を大幅に短縮でき、生産性の向上につながる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係るワーク下部の熱処理装置について説明する。ワーク下部の熱処理装置は、
図1に示す4種類のアウタレースについて何れか1種類を処理対象のワークとしている。加熱コイル、ワーク受具等を段取り換えすることで4種類のアウタレースが処理対象となりうる汎用性を備えている。アウタレースは、カップ部を下位にし、上位となるステム軸部又は筒軸部を回転可能にチャックして、カップ部内面の熱処理を行うので、説明の便宜上、カップ部をワーク下部とも称し、またステム軸部又は筒軸部をワーク上部とも称する。なお、カップ部の熱処理を行う装置部分と、ステム軸部又は筒軸部の熱処理を行う装置部分がそれぞれワークの熱処理装置の一部であることから、ワーク下部熱処理部、ワーク上部熱処理部と称するものとする。
【0034】
〔第1実施形態〕
図2に示すように、ワークの熱処理装置1は、往復移動自在な複数のテーブルで搬送ラインを分担してワークWの順送り搬送を行うテーブル式搬送機構10と、テーブル式搬送機構により搬送されたワークWを第1及び第2のガントリで受け取り、ワークを順送りに吊上搬送を行うガントリ式搬送機構20とで、ワークを搬送する手段が構成される。
【0035】
図2〜
図4に示すようにワークの熱処理装置1は、テーブル式搬送機構10を構成する第1テーブル11上に載置されたワークWに対し、仮位相合わせを行う仮位相決め機構30と、仮位相合わせが行われたワークWを第2テーブル12に移載し、且つ本位相決めピン42に被せて本位相決めする本位相決め機構40と、第3ステーションCに対応して備えられ、本位相合わせを終えテーブル式搬送機構で搬送されるワークについて、カップ部内面に対して熱処理を行うワーク下部熱処理部50と、カップ部内面の熱処理を終え第1ガントリ21で搬送されるワークWについてステム軸部の外面又は筒軸部の内面の熱処理を行うワーク上部熱処理部60と、第6ステーションFに対応して備えられたアフタークール部70と、を有してなる。これらは、中段プレート100上で、且つ図示しない中仕切り正面壁(正面壁)の前側に備えられている。
【0036】
テーブル式搬送機構10は、各ステーション区間を同期して往復する第1,第2,第3テーブル11,12,13を有してなり、ワークWを第1〜第4ステーションA〜Dに順送りに搬送する。ガントリ式搬送機構20は、各ステーション区間を同期して往復する第1,第2ガントリ21,22を有してなり、第4〜第6ステーションD〜Fに順送りに吊上げ搬送する。
【0037】
ワーク上部熱処理部60は、第5ステーションEに搬送されたワークWを、間欠回転テーブル61でワンステップ回動させ突き上げて、ワーク上部用加熱ユニット65のワーク上部用加熱コイル(図示しない)で誘電加熱し、間欠回転テーブル61に戻して環状冷却ジャケット62でワーク上部の冷却を行う。
【0038】
ワークの熱処理装置1は、ワーク下部熱処理部50の熱処理ヘッド56、ワーク上部用加熱ユニット65のワーク上部用加熱コイル(図示しない)、ワーク受具等を段取り換えすることで、
図1に示す4種類のアウタレースが処理対象となりうる汎用性を備えている。
【0039】
〔ワーク下部熱処理部50の構成〕
ワーク下部熱処理部50は、
図5〜
図7に示すハンドリング手段51と、
図9に示す熱処理ヘッド56と、を有してなる。ワーク下部熱処理部50は、ハンドリング手段51によって熱処理ヘッド56に近接状態に被せ、且つ必要に応じて回転させるワークWに対し、熱処理ヘッド56でカップ部内面の熱処理を行う。
【0040】
〔ハンドリング手段51の構成〕
図5に示すように、ハンドリング手段51は、第1のサーボモータ53cによって往復して間欠回動される回動軸53aと、回動軸53a周りに固定された揺動板53bと、揺動板53bに備えられた複数の回転チャックユニット(符号なし)と、を有してなる。回転チャックユニットには、回転チャック機構52と、第2のサーボモータ54fを含み回転チャック機構52を昇降させる昇降手段54と、が含まれている。回動軸53aと揺動板53bは、複数の回転チャックユニットを水平面内に往復間欠回動する手段である。この実施形態では、2個の回転チャックユニットを備えている。すなわち、ハンドリング手段51は、回動軸53aの軸線に関して対称に二つの回転チャックユニットを備えている。
【0041】
図3〜
図5に示すように、ハンドリング手段51は、回転チャック機構52によってワーク上部をチャックし必要に応じて回転させることができ、これに加えて、2個の回動軸53aを、第3ステーションCとカップ部熱処理位置Gとの二位置間を交互に往復間欠回動を行う動作と、第3ステーションCとカップ部熱処理位置Gの各位置で昇降手段54によって回転チャック機構52を昇降させる動作と、を行わせることができる。
これによって、ハンドリング手段51は、第3ステーションCでは回転チャック機構52がワークWを着脱し、カップ部熱処理位置Gでは回転チャック機構52がワークWのカップ部を熱処理ヘッド56に近接状態に被せ、且つ必要に応じて回転させることができる。
さらに、回転チャック機構52にはワーク確認装置であるワーク確認手段55を備えているから、ハンドリング手段51は、エアシリンダ55dで昇降されるロッド55aの下端に備えた当接ピース55bによってワークWの位置確認と芯出しと位置ずれ確認を行う機能を備えている。
【0042】
図5,
図7に示すように、昇降手段54は、回転チャック機構52を取り囲み回転チャック機構52のハウジング52aを支持する籠形ブラケット54aと、籠形ブラケット54aを支持し揺動板53bに対向している昇降基板54bと、第2のサーボモータ54fを含み昇降基板54bを揺動板53bに対して昇降させる駆動手段と、を有してなる。
昇降基板54bを揺動板53bに対し昇降させる駆動手段は、昇降基板54bと揺動板53bとに備えられた係合ガイド手段(直動ガイドとスライダ)54cと、揺動板53bの上端に設置され揺動板53bに回転可能、且つ軸方向移動不能に固定されたボールねじ54dと、昇降基板54bに固定されかつボールねじ54dに螺合したボールナットランナ54eと、揺動板53bの上端に設置されボールねじ54dを回転する第2のサーボモータ54fと、を有してなる。昇降手段54は、第2のサーボモータ54fが、ボールねじ54dを回転することでボールナットランナ54eを昇降し、昇降基板54bを昇降する。
さらに、回転チャックユニットには回転チャック機構52のチャック部分を回転させるチャック回転用モータ52cを備えている。
【0043】
〔回転チャックユニットの構成〕
図5〜
図7に示すように、一つの回転チャックユニット(符号なし)は、1個の回転チャック機構52が主体であり、該回転チャック機構52に対し、籠形ブラケット54aと、回動軸53a周りに配設された揺動板53bに、籠形ブラケット54aを係合して回動軸53aに対して昇降させる第2のサーボモータ54fを含む昇降手段54と、エアシリンダ55dで回転チャック機構52の回転軸に沿う中心孔に通したロッド55aを下降させて、当接ピース55bをワーク上端に当接して該ワークWの位置確認と芯出しと位置ずれ確認を行うワーク確認手段55と、が付設されてなる組立体である。ハンドリング手段51は、複数の回転チャックユニットを揺動板53bに備えている。
【0044】
〔回動軸53aの構成〕
図5に示すように、回動軸53aは、回動軸下部53a
1と、回動軸中間部53a
2と、回動軸上部53a
3と、を継ぎ足して構成されている。回動軸中間部53a
2は、上下端にフランジを有し、下端のフランジが回動軸下部53a
1の上端に載置され、且つボルトで固定されている。回動軸中間部53a
2上端のフランジに回動軸上部53a
3の下端のフランジが載置されかつボルトで固定されている。回動軸上部53a
3は装置フレームの上部梁部によって回転可能に支持されている。回動軸上部53a
3には、各機器に繋がるケーブル類が収容された籠57が備えられている。この構成により、組立性が向上する。
【0045】
揺動板53bは回動軸中間部53a
2の中途の角筒部を挟んで、該回動軸中間部53a2に固定されている。揺動板53bは複数の回転チャックユニットを回動軸53aに装着するために設けられている。揺動板53bは複数の回転チャックユニットを回動軸53aの軸線に対して対称的に組み付けられる形状に形成されている。ここではハンドリング手段51の重心が略軸線に一致するように、回転チャックユニット53aの数に応じて、周方向に均等に配置することで、対称的に組み付けられている。
【0046】
図5に示すように、回動軸53aの回動軸下部53a
1は、下端がボス53gより突き出していて、この下端が巻掛機構を介して機器設置プレート(中段プレート)100の下側に設置された第1のサーボモータ53cの出力軸と連結されている。従って、回動軸53aは、第1のサーボモータ53cによって駆動される。回動軸下部53a
1は、ボス53gで回転可能、且つ軸方向移動不能に支持されている。ボス53gは、機器設置プレート(中段プレート)100に開けられた孔に上から通されフランジ部が機器設置プレート(中段プレート)100にボルトで固定されている。回動軸53aは、第1のサーボモータ53cによる駆動制御によって、180°回動したら停止し、所定時間経過したら反対方向に180°回動し所定時間停止することを1サイクルとして反復回転する。
【0047】
図2に示すように、ハンドリング手段51は、第3ステーションCに位置されるワークWのワーク上部の外周を回転チャック機構52でチャックする。回転チャック機構52は、ワークWの種類がバーフォード型であるときは、該ワークWを毎秒3回転以上で回転する。
【0048】
図8は、回転チャック機構52の一設計例に係る断面図を示している。回転チャック機構52は、籠形ブラケット54aに支持されるハウジング52aと、ハウジング52aに回転可能に支持された筒軸52bと、筒軸52bを回転するチャック回転用モータ52c(
図5,6)と、ハウジング52aより下側に位置する筒軸52bの下端に備えられたシリンダ組立体52dと、複動式のピストン52eと、三つのチャック爪52fと、揺動リンク52gと、を有してなる。
チャック回転用モータ52c(
図5,
図6参照)は、籠形ブラケット54aの側面に備えられ、出力軸がタイミングベルト巻掛機構(回転伝達手段)52kを介して筒軸52bの上端と連結され筒軸52bを回転する。
三つのチャック爪52fは、シリンダ組立体52dの下端面に突出し、120°ずつ異なる水平放射方向に摺動自在に備えられている。
ピストン52eと揺動リンク52gはシリンダ組立体52d内に備えられ、揺動リンク52gは、ピストン52eと各チャック爪52fとの間に備えられ、二つの揺動端をピストン52eと各チャック爪52fに係合され、ピストン52eの往復動を揺動運動に変え、各チャック爪52fの開閉動となるように伝達する。
【0049】
従って、回転チャック機構52は、チャック回転用モータ52cにより筒軸52bを回転し、シリンダ組立体52d及びその内部の一切の構造を筒軸52bと一体に回転する。下側のシリンダ室52hに高圧空気が流入するときは、三つのチャック爪52fを閉動しワーク上部をチャックすることができ、上側のシリンダ室52iに高圧空気が流入するときは、三つのチャック爪52fが開動しチャック解除することができる。
【0050】
〔ワーク確認手段〕
図8に示すように、回転チャック機構52はワーク確認手段55を備えている。ワーク確認手段55は、回転チャック機構52にワークWの端部と対向するように、回転チャック機構52の回転軸に沿って貫通して設けられた中心孔に、ロッド55aを挿通して該ロッド55aの先端に備えられ、上記回転チャック機構から出没自在である当接ピース55bをワーク上端に当接して、該ワークWの位置確認と芯出しと位置ずれ確認を行う。
【0051】
ワーク確認手段55は、回転チャック機構52の中心孔に挿通されたロッド55aと、ロッド55aの下端に回転自在、且つ交換可能に備えられた当接ピース55bと、回転チャック機構52の中心孔に備えられロッド55aを昇降可能に案内するスライドロータリーブッシュ55cと、ロッド55aを進退させるエアシリンダ55dと、を有してなる。エアシリンダ55dは、シリンダ本体を回転チャック機構52のハウジング52aに支持されピストンロッドの上端に備えた連結具55eを介して、ロッド55aの上端の回転継手部55fを回転可能に支持する。
エアシリンダ55dは、回転チャック機構52によるワークWのチャックに先行してピストンロッドを縮小してロッド55aを下降させ、ロッド55aの下端に備えられた当接ピース55bをワーク上端の凹部又は孔周縁に係合し押圧させる。これによって、ワークの芯出しが行われる。さらに、エアシリンダ55dは、チャック動作工程に入る前にピストンを動作フリーとし、三つのチャック爪52fが閉動しワーク上端がチャックされると、再びピストンロッドを縮小する方向に動作し、当接ピース55bをワーク上端の凹部又は孔周縁に係合し押圧させる。
【0052】
図8に示すように、ワークWが回転チャック機構52の真下位置に搬送されてくると、エアシリンダ55dがピストンロッドを縮小させ回転チャック機構52の中心孔に通されたロッド55aを下降し、当接ピース55bがワーク上端の凹部又は孔周縁に係合し押圧することでワークWを芯出しする。
次いで、回転チャック機構52が昇降手段54(
図5)により下降されていく。このとき、回転チャック機構52がワーク上部をチャックする動作工程に入る前に、エアシリンダ55dがピストンを動作フリーとするので、回転チャック機構52は無理なく下降されていく。回転チャック機構52がワーク上端のチャック位置に対応され下降停止されると、当接ピース55bで芯出しされたワークWを回転チャック機構52の三つのチャック爪52fがチャックする。このため、三つのチャック爪52fがワークWを確実に芯出し状態にチャックでき、チャック爪52f間にワークWを挟むことはない。
【0053】
ワーク確認手段55は、エアシリンダ55dが位置確認及び位置ずれ確認機能を備えていることで、ワークWの位置確認及び位置ずれ確認を行う。ワークの自重作用と当接ピースのワークへの押圧が常に作用していることに加え、供給路破損等による高圧空気の供給停止、チャック爪の磨耗、チャック機構内部の高圧空気封止部材の損傷、潤滑剤の付着による滑りなどが生じることに起因して、ワークWの位置ずれを起こすことがある。回転チャック機構52が位置ずれを起こした場合、例えば、1.0mmを超えて位置ずれを起こすとカップ部とコイルとが接触するなどにより電気的故障を生じる虞がある。
そのため、エアシリンダ55dには、ピストンロッドが例えば、0.5mm移動する毎に1パルスを出力し得る構成のものが採用されており、ワークWの位置確認及び位置ずれ確認が可能となっている。このエアシリンダ55dは、回転チャック機構がワーク上部をチャックした後に再度縮小作動し、当接ピース55bをワーク上端の凹部に引き続き押圧させるようになっている。チャック後に位置ずれがあると、ロッド55aが追随し、ピストンロッドが縮小してずれ寸法が0.5mmに達すると1パルスを出力する。コントローラは、このときのパルスを位置ずれ検知信号として入力し、1パルス入力すると、装置の稼動を停止し、ワークWが加熱コイルに接触しない小さな位置ずれの段階で、装置の稼動を中断することができ、停止原因(位置ずれ)を知らせる。
【0054】
〔チャック確認手段〕
図8に示すように、回転チャック機構52には、突起52nと近接センサ52mとを有してなるチャック確認手段が付設されている。突起52nは各チャック爪52fの外端より外方へ張り出して付設されている。近接センサ52mは、回転チャック機構52の回転時に突起52nが近接するようにハウジング52aと一体的に備えられている。
【0055】
チャック確認手段は、回転チャック機構52でワーク上部をチャックしたときに、近接センサ52mで突起52nとのギャップを検出してチャック動作したことの確認を行い、そして、回転チャック機構52が回転動作をしたときに、近接センサ52mで突起52nとのギャップを検出しパルスを得ることでチャックが回転したことの確認を行い、さらに、パルスをカウントして回転速度の検出を行う。なお、チャック確認手段は、少なくとも何れか一つの働きをすればよい。
【0056】
〔カップ部熱処理ヘッド56の構成〕
図9に示すように、カップ部熱処理ヘッド56は、熱処理ヘッド本体561と、外面用冷却ジャケット562と、を有して構成される。熱処理ヘッド本体561は、熱処理ヘッド固定手段57及び給電クランプ58によって支持され、外面用冷却ジャケット562は熱処理ヘッド固定手段57より立ち上げる支柱に支持される。熱処理ヘッド本体561は、
図1(a),(b)に示すアウタレースW1に適用するものを示している。熱処理ヘッド本体561は、基板561aが熱処理ヘッド固定手段57のコイルベース57aに載置され、且つコイルベース57aに備えた一対のトグルクランプ機構57bによりコイルベース57aに固定される。熱処理ヘッド本体561は、基板561aと、給電クランプ58を介して誘導電流を給電されるカップ部加熱コイル561bと、内面用冷却ジャケット561cと、逆噴射ジャケット561dと、を含んで構成されている。熱処理ヘッド本体561を熱処理ヘッド固定手段57に載置固定するだけで内面用冷却ジャケット561cの入口及び逆噴射ジャケット561dへの給水通路が接続される。
カップ部熱処理ヘッド56は、カップ部外面冷却手段(冷却ジャケット)56dがワークWのカップ部外面を冷却しながら、カップ部加熱コイル561bがカップ部の内面を誘導加熱し、次いでワークWのカップ部外面を冷却しながら、内面用冷却ジャケット561cがカップ部の内面を冷却できる。加熱が終了し、且つ内面用冷却ジャケット561cによる冷却が終了する。次いで、逆噴射ジャケット561dが冷却水を噴射しカップ部の全内面を冷却し、外面用冷却ジャケット562及び逆噴射ジャケット561dによる冷却が終了する。
【0057】
〔複数の回転チャックユニットの構成要素の配置〕
【0058】
複数の回転チャックユニットを構成している、各籠形ブラケット54a同士、各回転チャック機構52同士、チャック回転用モータ同士、各第2のサーボモータ54d同士、各エアシリンダ55d同士が、回動軸53aに関してそれぞれ対称となるように配設されている。
この構成により、回動軸に抱かれ該回動軸と一体に回動する全ての構成要素が、回動軸に関してバランスよく配置され全体の重心が回動軸の軸線に一致し、しかも、全ての構成要素が回動軸からの回転半径を小さく抑えられて回転モーメントが小さく抑えられる配置構成を実現できる。
このため、第1のサーボモータ53cが回動軸を高速で反転を繰り返すことができる。
【0059】
上記構成のワークの熱処理装置1によれば、ワーク確認手段55を備えているので、ワークWを下降してカップ部をカップ部熱処理ヘッド56に近接状態に被せる際に、ワークWが芯ずれ又は位置ずれしてカップ部熱処理ヘッド56に接触してしまうことを回避できる。従って、電気的故障に繋がる虞、装置が稼動できなくなる虞が極めて少ないハンドリングを実現することができる。
【0060】
また上記構成のワークの熱処理装置1によれば、チャック回転用モータ52cに抱かれ該チャック回転用モータ52cと一体に回動する全ての構成要素が、チャック回転用モータ52cに関してバランスよく配置され全体の重心が回動軸の軸線に一致し、しかも、全ての構成要素がチャック回転用モータ52cからの回転半径を小さく抑えられて回転モーメントが小さく抑えられる配置構成を実現できる。このため、第1のサーボモータ53cがチャック回転用モータ52cを高速で反転を繰り返すことができる。
従って、ワークの熱処理装置1は、回動時の回転モーメント及び振れ回りを小さく抑えることができて、ワークをチャックして二つの位置間を高速で回動して精密に位置決めすることができ、ワーク1個当りの熱処理時間を大幅に短縮でき、ワークのハンドリングが従来よりも大幅に短縮され、合計の熱処理サイクル時間(タクト)の短縮、生産性の向上につながる。
【0061】
〔その他の実施形態〕
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲には、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々、設計変更した形態が含まれる。この実施形態に記載している構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0062】
(1)上記の実施形態では、両側で一対の回転チャックユニットを備えている構成を示したが、四つの回転チャックユニットが回動軸53aの軸線に関して対称に備えられ、複数の回転チャックユニットを構成している、各籠形ブラケット同士、各回転チャック機構52同士、チャック回転用モータ52c同士、各第2のサーボモータ54d同士、各エアシリンダ55d同士が、上記回動軸53aの軸線に関してそれぞれ対称となるように配設された構成であってもよい。
【0063】
(2)本発明は、ハンドリング手段が、搬送ラインの一方の位置に複数の回転チャック機構を備えると共に、カップ部内面の熱処理を行う位置に同数の回転チャック機構を備えていて、両位置で回転チャック機構を昇降自在であり、且つ両位置間を往復間欠回動自在であり、そして、回転チャック機構が、搬送ラインの一方の位置に搬送されてくる複数のワークを把持し他方の位置へハンドリングし、他方の位置で把持した複数のワークのカップ部をそれぞれ熱処理ヘッドに近接状態に被せ、カップ部内面の熱処理を終えたら、搬送ラインの一方の位置にワークを戻す構成を含むものである。
【0064】
(3)籠形ブラケット54aは、回転チャック機構52を囲んで支持すると共に、他の構成要素を支持するために籠形に形成されている。ここでいう籠形とは、回転チャック機構52を囲んで支持し、両側面が他の構成要素を支持する面になっていれば足りる。