(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
粉体の酢酸パラジウム触媒に気体の炭素含有化合物を導入して酢酸パラジウム触媒を飛散させながら、気体の炭素含有化合物と酢酸パラジウム触媒を500℃〜1200℃で接触させ多層カーボンナノチューブを成長させることを特徴とする多層カーボンナノチューブの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
CVD法で合成したカーボンナノチューブは、アーク放電法など他の方法で合成したカーボンナノチューブと比べ、結晶性が劣るという欠点がある。
【0007】
CVD法によるカーボンナノチューブの合成法は大量生産に有効であると前述したが、さらに効率的な生産が求められている。
【0008】
従来のCVD法に使用される触媒は、前記のような理由で金属触媒を担体に担持させる必要があったり、溶媒に溶かした有機金属化合物を基板に塗布して凍結乾燥後還元処理する必要があったため、触媒を作成する工程が煩雑であった。
【0009】
メタンやアセチレンなどを炭素源としてカーボンナノチューブを合成する場合、比較的高温で触媒金属粒子と接触させる必要があった。
【0010】
CVD法においてメタンを炭素源として使用すると、ベンゼンやトルエンなどの有機物が析出し、カーボンナノチューブの成長量が悪くなるという欠点があった。
【0011】
本発明は、触媒を作成する工程が煩雑な従来技術の欠点を解決し、結晶性の高いカーボンナノチューブを、効率的に製造することを課題とする。
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、入手が簡単な酢酸パラジウム等のカルボン酸パラジウムを担体に担持することなくそのまま触媒として使用すれば良いことを見出し、本発明を完成するに到った。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明は、下記の要点のとおりである。
(
1) 気体の炭素含有化合物と気化した酢酸パラジウム触媒を500℃〜1200℃で接触させ多層カーボンナノチューブを成長させることを特徴とす
る多層カーボンナノチューブの製造方法。
(
2) 粉体の酢酸パラジウム触媒に気体の炭素含有化合物を導入して酢酸パラジウム触媒を飛散させながら、気体の炭素含有化合物と酢酸パラジウム触媒を500℃〜1200℃で接触させ多層カーボンナノチューブを成長させることを特徴とす
る多層カーボンナノチューブの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明のカーボンナノチューブの製造方法は、入手が比較的簡単な酢酸パラジウムなどのカルボン酸パラジウムを担体に担持することなくそのまま触媒として使用することができ、結晶性の高いカーボンナノチューブを、効率的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、酢酸パラジウム等の比較的入手が容易なカルボン酸パラジウムを担体に担持することなく触媒として用いることを特徴とする、多層のカーボンナノチューブの製造方法に関するものである。
【0017】
本発明において、触媒として使用されるのはカルボン酸パラジウム、好ましくは炭素数1〜22、さらに好ましくは炭素数1〜8、最も好ましくは炭素数1〜6のカルボン酸パラジウムである。炭素数1〜22のカルボン酸パラジウムとしては、具体的には蟻酸パラジウム、酢酸パラジウム、プロピオン酸パラジウム、酪酸パラジウム、吉草酸パラジウム、カプロン酸パラジウム、エナント酸パラジウム、カプリル酸パラジウム、ペラルゴン酸パラジウム、カプリン酸パラジウム、ラウリン酸パラジウム、ミリスチン酸パラジウム、パルミチン酸パラジウム、マルガリン酸パラジウム、ステアリン酸パラジウム、オレイン酸パラジウム、リノール酸パラジウム、リノレン酸パラジウム、アラキドン酸パラジウム、ドコサヘキサン酸パラジウム、エイコサペンタエン酸パラジウム、シュウ酸パラジウム、マロン酸パラジウム、コハク酸パラジウム、安息香酸パラジウム、フタル酸パラジウム、イソフタル酸パラジウム、テレフタル酸パラジウム、サリチル酸パラジウム、没食子酸パラジウム、メリト酸パラジウム、ケイ皮酸パラジウム、ビルビン酸パラジウム、乳酸パラジウム、リンゴ酸パラジウム、クエン酸パラジウム、フマル酸パラジウム、マレイン酸パラジウム、アコニット酸パラジウム、グルタル酸パラジウム、アジピン酸パラジウム、アミノ酸パラジウム、ニトロカルボン酸パラジウム等を挙げることができる。なかでも入手が容易な点で酢酸パラジウムが好ましい。酢酸パラジウムは、通常市販されているもの(例えば、和光純薬工業(株)、関東化学(株)製など)を使用できる。また、使用済みの廃パラジウム触媒を酢酸に溶かし、乾燥させて酢酸パラジウムの粉体を作成してもよい。
【0018】
本発明は、従来のように触媒を調製する工程が不要であり、粉体のカルボン酸パラジウムをそのまま使用することができるので、効率的にカーボンナノチューブを製造することができる。
【0019】
本発明においてカーボンナノチューブの炭素源となる炭素含有化合物としては、メタン、アセチレン、エチレンなどの炭化水素、エタノール、プロパノールなどのアルコール類などが挙げられる。しかし、炭素含有化合物はこれらに限定されるものではなく、カーボンナノチューブを成長させうる炭素含有化合物であればよい。
【0020】
炭素含有化合物は、気体でカルボン酸パラジウム触媒と、所定の温度で接触させる。特にメタン、アセチレン、エチレンを炭素含有化合物として使用した場合、550〜650℃程度の温度でカーボンナノチューブを製造することもできるため好ましい。
【0021】
本発明で得られるカーボンナノチューブは、結晶性が高い。さらに本発明の製法はカーボンナノチューブの成長速度が速いため、他の製法よりも短時間で長いカーボンナノチューブができる。本発明で得られたカーボンナノチューブから作製された自立膜は導電性が高いという特徴を有している。
【0022】
炭素含有化合物とカルボン酸パラジウムの接触は無酸素雰囲気で行なう必要があるので、反応炉内を予め、窒素、ヘリウムまたはアルゴンの不活性ガスで置換し、反応炉内を無酸素雰囲気下とする。
【0023】
本発明は、気体の炭素含有化合物とカルボン酸パラジウムを高温で接触させてカーボンナノチューブを製造することを特徴とするが、気体の炭素含有化合物とカルボン酸パラジウムを接触させる形態により、(1)固定床法、(2)気相成長法、(3)固相流動法が挙げられる。以下に、それぞれのカーボンナノチューブの製造方法を説明する。
【0024】
(1)固定床法
高温の反応炉内に固体のカルボン酸パラジウムを触媒として置き、そこに気体の炭素含有化合物を供給することにより、触媒と炭素含有化合物を接触させ、触媒上にカーボンナノチューブを成長させる方法である。
【0025】
固定床法とは、固定化された(粉体等のまま静置、ボードの上から動かないという意味)触媒(カルボン酸パラジウム)と炭素含有化合物の気体(メタンガス等)の反応からCNTを合成する方法である。
【0026】
一般に固定床法では、石英、SiC、アルミナなどの耐熱性反応管と電気炉からなる常圧CVD装置が用いられる。耐熱性反応管は縦型、横型いずれのものも使用できる。その模式図を
図1に示す。
【0027】
図1中、1は石英等の耐熱性反応官、2は耐熱性反応官を加熱する電気炉である。粉末状のカルボン酸パラジウム5は石英ボート3に置かれる。生成したCNTを4で示した。
【0028】
手順は次のとおりである。
(i)カルボン酸パラジウムを載せた石英ボートを耐熱性反応管後方7に挿入する。
(ii)窒素、ヘリウム等の不活性ガスを供給し、装置内を不活性ガスで置換し無酸素雰囲気にする。
(iii)その後、炭素含有化合物ガスを供給し装置内を炭素含有化合物ガスで置換する。
(iv)装置内を反応温度まで昇温する。
(v)反応温度に到達後、所定の時間反応させることで、カルボン酸パラジウム触媒上にCNTを成長させる。
(vi)CNT成長後、炭素含有化合物ガスの供給を停止し、再び不活性ガスを供給する。その後、室温まで冷却する。
(vii)冷却後、装置内の石英ボートを取り出し、成長したCNTを取り出す。
【0029】
固定床法で用いる固体のカルボン酸パラジウムの形状は、粉体のまま用いてもいいが、溶媒に溶かしたカルボン酸パラジウムを基板上に塗布し膜状にすることもできる。
【0030】
(2)気相成長法
高温の反応路内に、気化させたカルボン酸パラジウム触媒と気体の炭素含有化合物を導入し、触媒と炭素含有化合物を接触させ、カーボンナノチューブを成長させる方法である。
【0031】
気相成長法とは、気化した触媒(カルボン酸パラジウム)と炭素源となる気体(メタンガス等)の反応からCNTを合成する方法である。一般に気相成長法では、石英、SiC、アルミナなどの耐熱性反応管と電気炉からなる常圧CVD装置が用いられる。耐熱性反応管は縦型、横型いずれのものも使用できる。
【0032】
図2に気相成長法に用いられる反応装置の概略を示す。
図1と、同一の要素には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0033】
耐熱性反応管はY字型(
図2)や直管(
図5)のものを用いることができる。Y字型反応管を用いた場合、前方の2つに枝分れした反応管の一方には、カルボン酸パラジウムを載せた石英ボートを挿入し、もう一方は炭素含有化合物ガスの供給部となる。
【0034】
手順は以下のとおりである。
(i)装置内に不活性ガスを供給し、装置内を不活性ガスで置換し無酸素雰囲気にする。
(ii)反応管後方7を反応温度まで昇温する。
(iii)Y字型反応管を用いた場合、カルボン酸パラジウムを載せた石英ボートを設置した反応管前方8の一方の枝管をカルボン酸パラジウムが気化する温度に昇温する。その間、不活性ガスを供給し続ける。カルボン酸パラジウムは加熱により気化し、不活性ガス供給により反応温度に加熱された石英反応管後方7に供給される。もう一方の枝管からは炭素含有化合物ガスを供給する。反応温度に加熱された反応管後方でカルボン酸パラジムガスと炭素含有化合物ガスが気相反応を生じ、CNTが生成する。
【0035】
直管の反応管を用いた場合、炭素含有化合物ガスを供給しながらカルボン酸パラジウムを載せた石英ボートを設置した反応管前方8をカルボン酸パラジウムが気化する温度に昇温する。気化したカルボン酸パラジウムは炭素含有化合物ガスと一緒に加熱された反応管後方7へ供給され、CNTが生成する。
(iv)CNT成長後、炭素含有化合物ガスの供給を停止し、再び不活性ガスを供給する。その後、室温まで冷却する。
(v)冷却後、装置内からCNTを取り出す。
【0036】
(3)固相流動法
高温の反応路内に、炭素含有ガスと粉体のカルボン酸パラジウム触媒を飛散させながら導入し、触媒と炭素含有化合物を接触させ、カーボンナノチューブを成長させる方法である。
固相流動法とは、飛散している触媒(カルボン酸パラジウム)と炭素源となる気体(メタンガス等)の反応からCNTを合成する方法である。一般に固相流動法では、石英、SiC、アルミナなどの耐熱性反応管と電気炉からなる常圧CVD装置と固体原料供給器(サイクロン等)が用いられる。耐熱性反応管は縦型、横型いずれのものも使用できる。
図3に固相流動法に用いられる反応装置の概略を示す。
図1、
図2と異なるのは、カルボン酸パラジウム触媒を飛散させて供給するための固体原料供給器6が耐熱性反応管1の上流側に設けられている点である。
固体原料供給器はサイクロンなど、粉体を飛散させることのできる装置であればどのようなものでも使用できる。
【0037】
手順は以下のとおりである。
(i)カルボン酸パラジウムを固体原料供給器に設置する。
(ii)固体原料供給器に不活性ガスを供給し、装置内を不活性ガスで置換する。
(iii)耐熱性反応管を反応温度に昇温する。
(iv)炭素含有化合物ガスを固体原料供給器から供給することで、カルボン酸パラジウム粉体を耐熱性反応管内に飛散させ、CNTを成長させる。
(v)CNT成長後、炭素含有化合物ガスの供給を停止し、不活性ガスを供給する。その後、室温まで冷却する。
(vi)冷却後、装置内CNTを取り出す。
【0038】
反応温度について
反応温度は、いずれの方法を用いた場合(固定床法、気相流動法、固相流動法)においても、500〜1200℃、好ましくは550〜1000℃、さらに好ましくは、600℃〜900℃で行う。500℃未満だと炭素含有化合物ガスが分解しないためCNTが生成せず、1200℃を超えると炭素含有化合物ガスがベンゼンやトルエンに変化し、CNTが生成される効率が下がったり、触媒であるカルボン酸パラジウムのパラジウム金属がシンタリングを起こし粒径が大きくなりCNTが生成されにくくなるなどの不都合が生じる。
【0039】
ガスの流通速度について
ガスの流速は早いほど成長量が増えるので、装置が耐えうる限り流速は早い方がいい。
【0040】
反応時間について
いずれの方法を用いた場合(固定床法、気相流動法、固相流動法)においても、反応時間が長ければCNTの長さや量が増えるが、生成されたCNTによって反応管内の気流が阻まれる前に反応を止める必要がある。
【0041】
固相流動法において触媒として用いるカルボン酸パラジウムは、飛散させて反応する必要があるため平均粒子径で0.001〜30μm、好ましくは0.01〜3μmの粉体がよい。
【0042】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0043】
実施例1(固定床法)
CNTの合成には、
図4に示すような常圧CVD(Chemical Vapor Deposition)装置を用いた。装置は、原料ガス供給系、石英反応管1、電気炉2、排気系から構成されている。石英反応管の直径:50mm、長さ:900mmである。電気炉は炉心部分が直径:50mm、長さ:600mmの抵抗加熱炉であり、2箇所で温度制御が可能である。石英ボート3中に粉末の酢酸パラジウム1gをのせ、石英反応管の後方(原料供給部側から450mmの位置)に設置した(あらかじめ、石英ボートの重量と石英ボートと酢酸パラジウム合計の重量をそれぞれ測定しておく。)。酢酸パラジウムを含む石英ボートを石英反応管中に設置後、窒素ガスを300sccm(Standard Cubic Centimeter per Minutes)で供給し、10分間置換(酸素フリーの状態)を行なった。引き続き、電気炉により石英反応管全体を800℃に昇温した。石英反応管が800℃に到達した後、メタンガスを流量2000sccmで供給し、酢酸パラジウム上に30分間成長を行なった。30分後、石英反応管へのメタンガスの供給を停止し、窒素ガスを300sccm供給した。電気炉を開放し、室温まで冷却したした後、石英ボートを取り出し、触媒を含むCNTを回収した。電子天秤により回収したCNTの重量を測定した。酢酸パラジウムはCNT成長直前までに56%重量減、すなわち0.44gまで減少することがわかっている。この酢酸パラジウムの重量減を含めたCNTの成長量を算出すると、約25g/30分でCNTが成長していた。
図5に成長したCNTのSEM像を示す。成長したCNTの径は100−300nm、長さは平均10μmであった。実施例1で得られたCNTのラマンスペクトルを測定し、
図7に示した。
図7から明らかなように、単層CNTに特有の200〜600cm
−1にはピークがなかったので、得られたCNTは単層ではないと推定された。
【0044】
実施例2(気相成長法)
CNTの合成には、実施例1と同様な装置を用いた。
図6に装置の概略図を示す。石英ボート中に粉末の酢酸パラジウム1gをのせ、石英反応管の前方(原料供給部側から150mmの位置)に設置した。酢酸パラジウムを含む石英ボートを石英反応管中に設置後、窒素ガスを300sccmで供給し、10分間置換を行なった。その後、CNT原料となるメタンガスを供給した。石英反応管内にメタンガスを300sccmで10分間供給し置換を行なった。引き続き、電気炉を昇温した。まず、石英反応管後方を800℃まで昇温し、その後石英反応管前方を400℃まで昇温した(昇温速度25℃/1分。酢酸パラジウムは248℃で気化し始める。)。石英反応管前方が400℃に到達後、メタンガスの流量を2000sccmに増加させ、30分間成長を行なった。気化した酢酸パラジウムとメタンガスが石英反応管後部で反応し、CNTが成長した。30分後、石英反応管へのメタンガスの供給を停止し、窒素ガスを300sccm供給した。石英反応管の温度が650℃まで降温した後、電気炉を開放し、室温まで冷却した。石英反応管が室温まで冷却した後、石英ボートを取り出し、触媒を含むCNTを回収した。電子天秤により回収したCNTの重量を測定した。CNTの成長量を算出すると、約1g以上/30分でCNTが成長していた。成長したCNTの径は50〜100nm、長さは100μm以上であった。
【0045】
実施例3(固相流動法)
固体原料供給器としてサイクロンを用いた。サイクロン容器内の酢酸パラジウム粉体にメタンガスを供給することで飛散させ、実施例1と同様の装置(固定床法)に供給することでCNT成長を行なった。まず、サイクロン容器内に酢酸パラジウム粉体(アルドリッチ社製 酢酸パラジウム(II)98%)3gを設置した。サイクロン容器および石英反応管中に窒素ガスを300sccmで供給し、10分間置換(酸素フリーの状態)を行なった。引き続き、電気炉により石英反応管全体を650℃に昇温した(昇温速度25℃/1分)。その後、メタンガス650sccmをサイクロン容器に供給した。飛散された酢酸パラジウム粉体を650℃に加熱された石英反応管に供給した。30分間成長を行ない、成長終了後石英反応管へのメタンガスの供給を停止し、窒素ガスを300sccm供給した。石英反応管の温度が650℃まで降温した後、電気炉を開放し、室温まで冷却した。石英反応管が室温まで冷却した後、石英反応管内の触媒を含むCNTを回収した。CNTの成長量は5g、CNT径は10〜20nm、長さ5μm以上であった。
【0046】
比較例1
実施例1と同様の装置を用いて、酢酸コバルトを触媒とするCNT成長を行なった。まず、酢酸コバルト4水和物を120℃・1時間乾燥し脱水を行なった。脱水処理された酢酸コバルトを石英ボート中に1gをのせ、石英反応管の後方に設置した。酢酸コバルトを含む石英ボートを石英反応管中に設置後、窒素ガスを300sccmで供給し、10分間置換(酸素フリーの状態)を行なった。その後、CNT原料となるメタンガスを供給した。石英反応管内にメタンガスを500sccmで10分間供給し置換を行なった。引き続き、電気炉により石英反応管全体を650℃に昇温した(昇温速度25℃/1分)。石英反応管が650℃に到達した後、30分間成長を行なった。30分後、石英反応管へのメタンガスの供給を停止し、窒素ガスを300sccm供給した。石英反応管の温度が650℃まで降温した後、電気炉を開放し、室温まで冷却した。石英反応管が室温まで冷却した後、石英ボートを取り出し、触媒を含むCNTを回収した。電子天秤により回収したCNTの重量を測定した。重量増加は確認されず、SEM観察においてもCNTは確認されなかった。酢酸コバルト4水和物上でもCNT成長は確認されなかった。以上の結果より、酢酸コバルト上でのCNT成長は不可能であることがわった(CNTが成長しないのは、酢酸コバルトが200〜300℃で分解し、コバルトの凝集が著しく促進されることによるものと思われる。)。
【0047】
比較例2
実施例1と同様の装置を用いて、酢酸鉄を触媒とするCNT成長を行なった。酢酸鉄を石英ボート中に1gをのせ、石英反応管の後方に設置した。酢酸鉄を含む石英ボートを石英反応管中に設置後、窒素ガスを300sccmで供給し、10分間置換(酸素フリーの状態)を行なった。その後、CNT原料となるメタンガスを供給した。石英反応管内にメタンガスを300sccmで10分間供給し置換を行なった。引き続き、電気炉により石英反応管全体を750℃に昇温した(昇温速度25℃/1分)。石英反応管が750℃に到達した後、30分間成長を行なった。30分後、石英反応管へのメタンガスの供給を停止し、窒素ガスを300sccm供給した。石英反応管の温度が650℃まで降温した後、電気炉を開放し、室温まで冷却した。石英反応管が室温まで冷却した後、石英ボートを取り出し、触媒を含むCNTを回収した。電子天秤により回収したCNTの重量を測定した。重量増加は確認されず、SEM観察においてもCNTは確認されなかった。以上の結果より、酢酸鉄上でのCNT成長は不可能であることがわった(CNTが成長しないのは、酢酸鉄が200〜300℃で分解し、鉄の凝集が著しく促進されることによるものと思われる。)。
【0048】
比較例3
実施例1と同様の装置を用いて、酢酸銅を触媒とするCNT成長を行なった。まず、酢酸銅1水和物を120℃・1時間乾燥し脱水を行なった。脱水処理された酢酸銅を石英ボート中に1gをのせ、石英反応管の後方に設置した。酢酸銅を含む石英ボートを石英反応管中に設置後、窒素ガスを300sccmで供給し、10分間置換(酸素フリーの状態)を行なった。その後、CNT原料となるメタンガスを供給した。石英反応管内にメタンガスを500sccmで10分間供給し置換を行なった。引き続き、電気炉により石英反応管全体を800℃に昇温した(昇温速度25℃/1分)。石英反応管が800℃に到達した後、30分間成長を行なった。30分後、石英反応管へのメタンガスの供給を停止し、窒素ガスを300sccm供給した。石英反応管の温度が550℃まで降温した後、電気炉を開放し、室温まで冷却した。石英反応管が室温まで冷却した後、石英ボートを取り出し、触媒を含むCNTを回収した。電子天秤により回収したCNTの重量を測定した。重量増加は確認されず、SEM観察においてもCNTは観察されなかった(CNTが成長しないのは、酢酸銅が200〜300℃で分解し、銅の凝集が著しく促進されることによるものと思われる。)。
【0049】
比較例4
実施例1と同様の装置を用いて、塩基性酢酸アルミニウム粉体に酢酸パラジウムを担持させた触媒(Al/Pd=0.25/1)を用いてCNT成長を行なった。酢酸パラジウム/塩基性酢酸アルミニウムを石英ボート中に1gをのせ、石英反応管の後方に設置した。酢酸パラジウム/塩基性酢酸アルミニウムを含む石英ボートを石英反応管中に設置後、窒素ガスを300sccmで供給し、10分間置換(酸素フリーの状態)を行なった。その後、CNT原料となるメタンガスを供給した。石英反応管内にメタンガスを300sccmで10分間供給し置換を行なった。引き続き、電気炉により石英反応管全体を650℃に昇温した(昇温速度25℃/1分)。石英反応管が650℃に到達した後、30分間成長を行なった。30分後、石英反応管へのメタンガスの供給を停止し、窒素ガスを300sccm供給した。石英反応管の温度が550℃まで降温した後、電気炉を開放し、室温まで冷却した。石英反応管が室温まで冷却した後、石英ボートを取り出し、触媒を含むCNTを回収した。電子天秤により回収したCNTの重量を測定した。0.4gの重量増加が確認され、SEM観察においてCNTが観察された。観察されたCNTの径は70〜100nm、長さ3μmであった(これまでの実験より担持した場合、還元操作が必要であると思われる。しなしながら、還元すると酢酸パラジウム自身も分解が促進し、CNTは成長しないものと思われる。)。
【0050】
比較例5
実施例1と同様の装置で、水素キャリアガスを用いてフェロセン(2.5wt%)/トルエン溶液をスプレーで供給しCNT成長を行なった。まず、スプレー気化器および石英反応管中に窒素ガスを300sccmで供給し、10分間置換(酸素フリーの状態)を行なった。引き続き、電気炉により石英反応管全体を650℃に昇温した(昇温速度25℃/1分)。その後、水素キャリアガス1000sccm(200〜1500sccm)をスプレー気化器に供給した。スプレー気化器により液滴化したフェロセン(2.5wt%)/トルエン溶液を800℃に加熱された反応管に供給した。30分間成長を行ない、成長終了後石英反応管へのフェロセン(2.5wt%)/トルエン溶液の供給を停止し、窒素ガスを300sccm供給した。石英反応管の温度が650℃まで降温した後、電気炉を開放し、室温まで冷却した。石英反応管が室温まで冷却後、反応管内の触媒を含むCNTを回収した。電子天秤により回収したCNTの重量を測定した。石英反応管内外でのCNT成長は確認されなかった(この実験を1050℃〜1100℃で行なうとCNTが成長する。CNT原料となるトルエンをベンゼン等の他の溶媒に変更したり、生成促進剤であるチオフェンの添加等を試みたが成長温度の低温化は出来なかった。)。
【0051】
比較例6
サイクロン容器内の酢酸ニッケル粉体にメタンガスを供給することで飛散させ、実施例1と同様の装置に供給することでCNT成長を行なった。まず、サイクロン容器内に酢酸ニッケル粉体(平均粒子径:3μm)を3g設置した。サイクロン容器および石英反応管中に窒素ガスを300sccmで供給し、10分間置換(酸素フリーの状態)を行なった。引き続き、電気炉により石英反応管全体を850℃(550℃〜800℃)に昇温した(昇温速度25℃/1分)。その後、メタンガス1000sccm(300〜2000sccm)をサイクロン容器に供給した。飛散された酢酸ニッケル粉体を850℃に加熱された石英反応管に供給した。30分間成長を行ない、成長終了後石英反応管へのメタンガスの供給を停止し、窒素ガスを300sccm供給した。石英反応管の温度が650℃まで降温した後、電気炉を開放し、室温まで冷却した。石英反応管が室温まで冷却した後、石英反応管内の触媒を含むCNTを回収した。石英反応管内外での黒色堆積物が確認された。SEM観察からこの黒色堆積物はCNTであることを確認した。CNTの成長量は0.5g、CNT径は20nm、長さ3μm以下であった(酢酸パラジウムを用いた実施例3の固相流動法に比較して、CNT生成量は少なく、CNT長も短い。)。