特許第5700990号(P5700990)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5700990
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】ミシンの被縫製物切断装置
(51)【国際特許分類】
   D05B 37/08 20060101AFI20150326BHJP
   D05B 83/00 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
   D05B37/08
   D05B83/00
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2010-212442(P2010-212442)
(22)【出願日】2010年9月22日
(65)【公開番号】特開2012-65796(P2012-65796A)
(43)【公開日】2012年4月5日
【審査請求日】2013年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】505290829
【氏名又は名称】株式会社ミドリ安全縫技研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】391009372
【氏名又は名称】ミドリ安全株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081363
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 修治
(72)【発明者】
【氏名】麻生 英夫
(72)【発明者】
【氏名】西 修宏
【審査官】 西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−037650(JP,A)
【文献】 特開平06−246086(JP,A)
【文献】 実開平03−068876(JP,U)
【文献】 特開2010−012289(JP,A)
【文献】 特開昭54−121862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 37/00−37/10
D05B 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被縫製物を切断するミシンの被縫製物切断装置であって、
ミシン本体に固定して取り付けられる固定枠と、
固定枠に可動可能に取り付けられた可動枠とを有し、
可動枠には、回転刃が回動可能に設けられ、
固定枠には、動力伝達部を介して前記回転刃を駆動する駆動手段と、回転刃を被縫製物の非切断位置から被縫製物の切断位置に移動させるように可動枠を作動させる作動手段が設けられ、
ミシン本体を固定するベッド部側に設けられた針板には、前記回転刃と協働して被縫製物を切断する固定刃が設けられ
前記固定枠には、前記可動枠に当接して、回転刃の回転中心軸方向の動きを規制し、回転刃の切断位置を支持することができる支持手段が設けられていることを特徴とするミシンの被縫製物切断装置。
【請求項2】
前記ミシン本体には、可動枠の作動に連動して回転刃の切断部を開閉するカバー部材が設けられており、
前記カバー部材は、回転刃が非切断位置の時に回転刃の切断部を閉じ、回転刃が切断位置の時に回転刃の切断部を開くように構成されていることを特徴とする請求項1記載のミシンの被縫製物切断装置。
【請求項3】
前記固定枠には、可動枠の作動に連動して回転刃を駆動する駆動手段をオン・オフする第1のスイッチ手段が設けられており、
第1のスイッチ手段は、回転刃を非切断位置から切断位置に移動させるように可動枠を作動させるとオンとなって駆動手段を駆動して回転刃を回転させ、回転刃を切断位置から非切断位置に移動させるように可動枠を作動させるとオフとなって駆動手段の駆動を停止させ回転刃の回転を停止させるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のミシンの被縫製物切断装置。
【請求項4】
前記固定枠には、前記作動手段を回転刃の非切断位置と切断位置で位置決めする位置決め手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のミシンの被縫製物切断装置。
【請求項5】
前記作動手段には、第2のスイッチ手段が設けられており、
前記第2のスイッチ手段は、オフの時、第1のスイッチ手段がオンとなっても駆動手段が駆動せず、オンの時、第1のスイッチ手段がオンとなると駆動手段が駆動して回転刃を回転させるように構成されていることを特徴とする請求項3又は4記載のミシンの被縫製物切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はミシンに取り付けられる被縫製物の切断装置に係り、特に布、皮革等の被縫製物を縫製に拘わらずに切断することができるミシンの被縫製物切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ミシンによって縫製された布端を切断するために、例えば特許文献1に開示されるように、布端裁断装置を備えたミシンが提案されている。このようなミシンによれば、布端を切断の後にこれに連動して順次縫製することが可能になる。
【0003】
従来の布端裁断装置付き本縫いミシンにおける、ミシン針と回転釜と布端裁断装置との標準的な配置例は、例えば図1に示される。ここでミシン針1は作業者側から見て右側にエグリ部1aを設けてあり、図示を省略した針棒の先端に取付けられて昇降動作を行なう。なおミシンフレーム2に収容された布送り装置による布の送り方向は、図中矢印Aの方向である。そして回転釜3は、作業者側から見て、ミシン針1の針落ち位置を通る布送り方向Lの右側に配置されており、鉛直面内で回転される垂直回転釜である。そしてこの垂直回転釜3は、釜剣先3aを布送り方向Aと同一の向きでミシン針1の右側に侵入させ、ミシン針1の右側で縫い糸4のループ4aを捕捉する。布端裁断装置5は、縫製動作に同期して上下に進退駆動される動メス5aと該動メス5aの下方に固定して取付けられた固定メス5bとの協働により、布端を順次裁断するもので、ミシン針1の針落ち位置の右側で針落ち位置から布送り方向Aと逆方向に沿って適宜距離だけ離れた位置に配され、この位置で裁断された布を順次縫製する。
【0004】
別の構成は図2に示される。図2に示す構成は、布端裁断装置付きミシンの切断機構である。このミシンは、針1のエグリ部1aを作業者側から見て右側に向けて配置する。また上から見て時計方向に回転駆動される水平回転釜6を、針1の針落ち位置を通る布送り方向に沿う線Lの右側に配置することによって、釜剣先6aを布送り方向Aに沿う向きでミシン針1の右側に侵入させ、ミシン針1の右側で縫い糸4の縫い糸ループ4aを捕捉する。そして布端裁断装置5は、針落ち位置の右側で針落ち位置から布送り方向Aと逆方向に沿って適宜距離離れた位置に配置される。
【0005】
図3はさらに別の構成を示す。この布端裁断装置は本縫いミシンに取付けられている。ミシン針1のエグリ部1aを作業者側から見て左側に向けて配置している。また回転釜7は作業者側から見て針1の針落ち位置を通る布送り方向線Lの左側に配置されており、上方から見て時計方向であって図中矢印Bの方向に水平回転する水平回転釜である。そしてこの水平回転釜7は、釜剣先7aを布送り方向Aに逆行する向きで、ミシン針1の左側に侵入させ、ミシン針1の左側で縫い糸4の縫い糸ループ4aを捕捉する。そして布端裁断装置5は、針落ち位置の右側で上記水平回転釜7に接近して配置される。
【0006】
図4に示す構成は、冒頭で引用した特許文献1に開示されている構成であって、ここでは布端切断装置がミシンに取付けられている。ミシン針1のエグリ部1aを作業者側から見て右側に配置している。また上方から見て反時計方向であって図中矢印Eの方向に回転駆動される水平釜8を、ミシン針1の針落ち位置を通る布送り方向線Lの左側に配置し、釜剣先8aを布送り方向Aに沿う向きでミシン針1の右側に侵入させ、ミシン針1の右側で縫い糸4のループ4aを捕捉している。布端裁断装置5は、針落ち位置の右側で、上記水平回転釜8に近接して配置される。
【0007】
このような布端切断装置5は、例えば図5に示すようなメス駆動機構によって駆動される。この駆動機構は、特許文献2に提案されている構成である。ミシンの上軸11の回転運動によって、この上軸11に固定された偏心カム12の偏心量が駆動ロッド13に搖動運動を発生させる。この運動は、リンク14、15を介してメス駆動リンク16に上下の往復運動をさせる。駆動側の裁断メス17は、メス駆動リンク16と一体に上下に往復動し、この上下の往復動によって、噛合わせ位置に固定装備された固定側の裁断メス18との協働によって、この位置に送られる布を裁断する。
【0008】
上述の図1および図2による従来の布端裁断装置付きミシンは、布が、裁断装置5によって端部を裁断されてから針落ち位置まで送られるために、布が布送り方向Aと直行する方向に位置ずれを生じ易い。このような布端の位置ずれは、生地厚が厚い素材や、布端の裁断が曲線になる場合に顕著になり、縫製後の布端から縫い目迄の仕上がり幅が不均一になる縫製不良を招くために、縫製品質を確保するためには、生地厚が制限されたり、布端形状が制限される等の問題を生ずる。
【0009】
このような問題を、図3に示す構成によって解決することが考察されるが、図3に示す構成は、縫い糸4に一般的なZ撚り糸を使用した場合に、釜剣先7aや針1の針穴エッジが糸の撚り方向とは逆向きに糸の表面をしごく結果、縫い糸4に撚り戻りが発生し易く、この撚り戻りに起因して、糸切れや糸目の乱れ等の縫製不良が発生することになる。
【0010】
図4に示す構成は、図1図2、および図3によって発生する課題を解決するものの、回転釜およびその駆動機構が専用の構成になり、コスト的に新たな問題を発生する。一方で図3あるいは図4で示されているような、上方から見て時計方向あるいは反時計方向に水平回転される回転釜が、針落ち位置の左右にそれぞれ配置され、布送り方向と直行する方向に2本の針が配置されて、左右の針と釜とがそれぞれ協働して、2本の平行した縫い目を形成する2本針本縫いミシンにおいては、布端切断装置を配置することが不可能になる。
【0011】
さらに上記の問題に加えて、従来の布端切断装置付きミシンは、その裁断メスの駆動手段をミシンの駆動系からとっているために、ミシン本体のフレーム中に組込まざるを得ない。従って布端切断装置がミシン本体に組込まれる専用ミシンとなって、切断装置を不要とする使用者にとっては経済的な負担が増大する。
【0012】
本願出願人は、上記問題点に鑑み、縫製ラインから所定の均一の幅で被縫製物を切断することができ、回転釜の配置位置に関わらず、釜の近傍に切断装置を設定することが可能であり、回転釜が針落ち位置の左右に配置されている2本針ミシンにおいても、縫製と同時に均一な幅で被縫製物を切断することができ、さらに、布端切断装置をミシン本体と独立のユニットとすることによって、後からこの布端切断装置を着脱可能に取付けることができるようにしたミシンの布端切断装置を提供することを目的として、回転刃を備えたミシンの布端切断装置を提案した(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−181178号公報
【特許文献2】特開2003−181177号公報
【特許文献3】特開2007− 37650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、本願出願人が提案したミシンの布端切断装置は、回転刃と固定刃が切断装置に取り付けられており、布、皮革等の被縫製物の端部から切断するものであるが、端部からではなく被縫製物の真ん中当たりの途中から切断することができないという問題点があった。従って、切断に必要な箇所以外の部分も切断する、あるいは強度が必要な部分も切断することになり、被縫製物を無駄に切り取ってしまったり、強度が保てないという問題点があった。また図1乃至図3の実施例では、動メス5aの突入により途中からの強引な切断は可能であるが、静的な突入力が必要となり、素材によっては突入が困難であった。
【0015】
本願発明は、上記問題点に鑑み案出したものであって、縫製の有無に拘わらず、また素材の厚さや硬さに拘わらず、動メスを回転させながら突入することにより、被縫製物の任意の位置から切断することができ可動枠(回転刃)の回転中心軸方向(横方向)の位置を支持し、回転刃(可動枠)の横方向(回転中心軸方向)の動き(ガタツキ)を規制することができ、安定した、効率の良い切断を行うことができるミシンの被縫製物切断装置を提供することを第の目的とする。さらに、本願発明は、上記目的に加え、切断時には回転刃の切断部を開き、非切断時には回転刃の切断部を閉じるカバー部材を設け、安全性を高めたミシンの被縫製物切断装置を提供することを第の目的とする。さらにまた、本願発明は、上記目的に加え、非切断位置では回転刃は回転せず、切断位置に近づくと回転刃は回転して、さらに安全性を高めたミシンの被縫製物切断装置を提供することを第の目的とする。また、本願発明は、上記目的に加え、非切断位置と切断位置で回転刃を安定して位置決めできる被縫製物切断装置を提供することを第の目的とする。さらにまた、本願発明は、上記目的に加え、回転刃を非切断位置から切断位置に移動させる作動手段にオン・オフスイッチを設け、ミシン本体の動作と駆動手段の動作を個別にして、非縫製時でも切断できるようにした被縫製物切断装置を提供することを第の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願請求項1記載のミシンの被縫製物切断装置は、上記第1の目的を達成するため、被縫製物を切断するミシンの被縫製物切断装置であって、ミシン本体に固定して取り付けられる固定枠と、固定枠に可動可能に取り付けられた可動枠とを有し、可動枠には、回転刃が回動可能に設けられ、固定枠には、動力伝達部を介して前記回転刃を駆動する駆動手段と、回転刃を被縫製物の非切断位置から被縫製物の切断位置に移動させるように可動枠を作動させる作動手段が設けられ、ミシン本体を固定するベッド部側に設けられた針板には、前記回転刃と協働して被縫製物を切断する固定刃が設けられ前記固定枠には、前記可動枠に当接して、回転刃の回転中心軸方向の動きを規制し、回転刃の切断位置を支持することができる支持手段が設けられていることを特徴とする。
【0018】
本願請求項記載のミシンの被縫製物切断装置は、上記第の目的を達成するため、前記ミシン本体には、可動枠の作動に連動して回転刃の切断部を開閉するカバー部材が設けられており、前記カバー部材は、回転刃が非切断位置の時に回転刃の切断部を閉じ、回転刃が切断位置の時に回転刃の切断部を開くように構成されていることを特徴とする。
【0019】
本願請求項記載のミシンの被縫製物切断装置は、上記第の目的を達成するため、前記固定枠には、可動枠の作動に連動して回転刃を駆動する駆動手段をオン・オフする第1のスイッチ手段が設けられており、第1のスイッチ手段は、回転刃を非切断位置から切断位置に移動させるように可動枠を作動させるとオンとなって駆動手段を駆動して回転刃を回転させ、回転刃を切断位置から非切断位置に移動させるように可動枠を作動させるとオフとなって駆動手段の駆動を停止させ回転刃の回転を停止させるように構成されていることを特徴とする。
【0020】
本願請求項記載のミシンの被縫製物切断装置は、上記第の目的を達成するため、前記固定枠には、前記作動手段を回転刃の非切断位置と切断位置で位置決めする位置決め手段が設けられていることを特徴とする。
【0021】
本願請求項記載のミシンの被縫製物切断装置は、上記第の目的を達成するため、前記作動手段には、第2のスイッチ手段が設けられており、前記第2のスイッチ手段は、オフの時、第1のスイッチ手段がオンとなっても駆動手段が駆動せず、オンの時、第1のスイッチ手段がオンとなると駆動手段が駆動して回転刃を回転させるように構成されていることを特徴とする。

【発明の効果】
【0022】
本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置は、ミシン本体に固定して取り付けられる固定枠と、固定枠に可動可能に取り付けられた可動枠とを有し、可動枠には、回転刃が回動可能に設けられ、固定枠には、動力伝達部を介して前記回転刃を駆動する駆動手段と、回転刃を被縫製物の非切断位置から被縫製物の切断位置に移動させるように可動枠を作動させる作動手段が設けられ、ミシン本体を固定するベッド部側に設けられた針板には、前記回転刃と協働して被縫製物を切断する固定刃が設けられている。本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置は、駆動手段を駆動すると動力伝達部を介して回転刃が回転し、作動手段により可動枠を作動させて回転刃を非切断位置から切断位置に移動させると、ベッド部に載置された被縫製物を回転刃と固定刃が協働して、ミシン本体の縫製の有無に拘わらず、被縫製物を任意の位置から切断することができ、被縫製物を無駄に切り取ってしまうことがなく、効率よく被縫製物を切断することができるという効果がある。
【0023】
本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置は、前記固定枠に、前記可動枠に当接して、回転刃の回転中心軸方向の位置を支持することができる支持手段が設けられているので、固定枠に対する可動枠(回転刃)の横方向(回転中心軸方向)の動き(ガタツキ)を規制することができ、安定した、効率の良い切断を行うことができるという効果がある。即ち、回転刃が横方向に動いて固定刃から離れると被縫製物を切断することが困難になり、回転刃が固定刃に圧接すると摩擦抵抗が大きくなって駆動手段の負荷が増大するが、支持手段によって回転刃(可動枠)の横方向(回転中心軸方向)の動き(ガタツキ)が規制されるので、回転刃と固定刃の間隔を常に一定にすることができ、スムーズな切断ができるという効果がある。
【0024】
本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置は、前記ミシン本体には、可動枠の作動に連動して回転刃の切断部を開閉するカバー部材が設けられており、前記カバー部材は、回転刃が非切断位置の時に回転刃の切断部を閉じ、回転刃が切断位置の時に回転刃の切断部を開くように構成されている。このように、本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置は、非切断位置の回転刃の切断部を閉じるカバー部材を設けているので、安全性が高いという効果がある。即ち、ベッド部側に設けられた針板に固定刃が設けられているので、回転刃がベッド部近傍の位置(切断位置)にある時は手が回転刃に触れることがないが、回転刃がベッド部から離れた位置(非切断位置)にある時は手が回転刃に触れることが可能となる。本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置は、非切断位置にある回転刃の切断部をカバー部材が閉じているので、回転刃に触れることがなく、安全性が極めて高いという効果がある。
【0025】
本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置は、前記固定枠には、可動枠の作動に連動して回転刃を駆動する駆動手段をオン・オフする第1のスイッチ手段が設けられており、第1のスイッチ手段は、回転刃を非切断位置から切断位置に移動させるように可動枠を作動させるとオンとなって駆動手段を駆動して回転刃を回転させ、回転刃を切断位置から非切断位置に移動させるように可動枠を作動させるとオフとなって駆動手段の駆動を停止させ回転刃の回転を停止させるように構成されている。このように、本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置は、非切断位置では回転刃は回転しないが、切断位置に近づくと第1のスイッチ手段がオンとなって回転刃が回転するので、さらに安全性が高くなっているという効果がある。
【0026】
本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置は、前記固定枠に、前記作動手段を回転刃の非切断位置と切断位置で位置決めする位置決め手段が設けられているので、位置決め手段により非切断位置と切断位置で回転刃を安定して位置決めすることができるという効果がある。
【0027】
本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置は、前記作動手段には、第2のスイッチ手段が設けられており、前記第2のスイッチ手段は、オフの時、第1のスイッチ手段がオンとなっても駆動手段が駆動せず、オンの時、第1のスイッチ手段がオンとなると駆動手段が駆動して回転刃を回転させるように構成されている。本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置は、ミシン本体の動作と駆動手段の動作を個別にして、非縫製時でも被縫製物を切断できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】従来の布端裁断装置を示す要部斜視図である。
図2】別の従来の布端裁断装置の要部斜視図である。
図3】さらに別の従来の布端裁断装置の要部斜視図である。
図4】さらに別の従来の布端裁断装置の要部斜視図である。
図5】従来の布端裁断装置における裁断メス駆動機構の正面図である。
図6】本願発明に係るミシンの一つの実施の形態を示す全体正面図である。
図7図6のミシンのミシンヘッドの正面図である。
図8図7のミシンヘッドの右側面図である。
図9】同7のミシンヘッドの左側面図である。
図10】本願発明に係る被縫製物切断装置の説明図であって、(a)は回転刃が切断位置にある正面図、(b)は回転刃が非切断位置(上昇位置)にある正面図である。
図11図10の被縫製物切断装置の背面図である。
図12】被縫製物切断装置の制御装置の構成を示すブロック図である。
図13】被縫製物切断装置の要部斜視図である。
図14図13の被縫製物切断装置の非切断時の説明図である。
図15図13の被縫製物切断装置の切断時の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
ミシンの被縫製物切断装置20は、ミシン本体21bに固定して取り付けられる固定枠41と、固定枠41に可動可能に取り付けられた可動枠42とを有する。可動枠42には、回転刃34が回動可能に設けられている。固定枠41には、動力伝達部36を介して前記回転刃34を駆動する駆動手段37と、回転刃34を被縫製物の非切断位置P1から被縫製物の切断位置P2に移動させるように可動枠42を作動させる作動手段43が設けられている。ミシン本体21bを固定するベッド部22側に設けられた針板32には、前記回転刃34と協働して被縫製物を切断する固定刃38が設けられている。ミシンの被縫製物切断装置20は、駆動手段37を駆動すると動力伝達部36を介して回転刃34が回転し、作動手段43により可動枠42を作動させて回転刃34を非切断位置P1から切断位置P2に移動させると、ベッド部22に載置された被縫製物を回転刃34と固定刃38が協働して、ミシン本体21bの縫製の有無に拘わらず、被縫製物を任意の位置から切断することができ、被縫製物を無駄に切り取ってしまうことがなく、効率よく被縫製物を切断することができる。
【0030】
ミシンの被縫製物切断装置20は、前記固定枠41に、前記可動枠42に当接して、回転刃34の回転中心軸35方向の位置を支持することができる支持手段71が設けられているので、固定枠41に対する可動枠42(回転刃34)の横方向(回転中心軸方向)の動き(ガタツキ)を規制することができ、安定した、効率の良い切断を行うことができる。即ち、回転刃34が横方向に動いて固定刃38から離れると被縫製物を切断することが困難になり、回転刃34が固定刃に圧接すると摩擦抵抗が大きくなって駆動手段37の負荷が増大するが、支持手段71によって回転刃34(可動枠42)の横方向(回転中心軸方向)の動き(ガタツキ)が規制されるので、回転刃34と固定刃38の間隔を常に一定にすることができ、スムーズな切断ができる。
【0031】
ミシンの被縫製物切断装置20は、前記可動枠42に、可動枠42の作動に連動して回転刃34の切断部を開閉するカバー部材80が設けられている。前記カバー部材80は、回転刃34が非切断位置P1の時に回転刃34の切断部を閉じ、回転刃34が切断位置P2の時に回転刃34の切断部を開くように構成されている。このように、ミシンの被縫製物切断装置20は、非切断位置P1の回転刃34の切断部を閉じるカバー部材80を設けているので、安全性が高い。即ち、ベッド部22側に設けられた針板32に固定刃38が設けられているので、回転刃34がベッド部22近傍の位置(切断位置P2)にある時は手が回転刃34に触れることがないが、回転刃34がベッド部22から離れた位置(非切断位置P1)にある時は手が回転刃34に触れることが可能となる。ミシンの被縫製物切断装置20は、非切断位置P1にある回転刃34の切断部をカバー部材80が閉じてるので、回転刃34に触れることがなく、安全性が極めて高い。
【0032】
ミシンの被縫製物切断装置20は、前記固定枠41に、可動枠42の作動に連動して回転刃34を駆動する駆動手段37をオン・オフする第1のスイッチ手段44が設けられている。第1のスイッチ手段44は、回転刃34を非切断位置P1から切断位置P2に移動させるように可動枠42を作動させるとオンとなって駆動手段37を駆動して回転刃34を回転させ、回転刃34を切断位置P2から非切断位置P1に移動させるように可動枠42を作動させるとオフとなって駆動手段37の駆動を停止させ回転刃34の回転を停止させるように構成されている。このように、ミシンの被縫製物切断装置20は、非切断位置P1では回転刃34は回転しないが、切断位置P2に近づくと第1のスイッチ手段44がオンとなって回転刃34が回転するので、さらに安全性が高くなっている。
【0033】
ミシンの被縫製物切断装置20は、前記固定枠41に、前記作動手段43を回転刃34の非切断位置P1と切断位置P2で位置決めする位置決め手段46が設けられている。このように、ミシンの被縫製物切断装置20は、位置決め手段46が設けられているので、位置決め手段46により非切断位置P1と切断位置P2で回転刃34を安定して位置決めすることができる。
【0034】
ミシンの被縫製物切断装置20は、前記作動手段43に第2のスイッチ手段68が設けられている。前記第2のスイッチ手段68は、オフの時、第1のスイッチ手段44がオンとなっても駆動手段37が駆動せず、オンの時、第1のスイッチ手段44がオンとなると駆動手段37が駆動して回転刃34を回転させるように構成されている。ミシンの被縫製物切断装置20は、ミシン本体21bの動作と駆動手段37の動作を個別にして、非縫製時でも被縫製物を切断することができる。
【0035】
さらに、ミシンの被縫製物切断装置について詳細に説明する。図6は被縫製物切断装置付きミシンの全体の構成を示すものである。ミシン21はベッド部22上に載置されており、このベッド部22の下側に被縫製物切断制御ボックス23が取付けられている。さらにこのミシン21は、駆動用モータコントローラ24と、電源スイッチ25とを備え、さらにベッド部22の下端にはミシン駆動ペダル26が取付けられている。上記被縫製物切断制御ボックス23には、切換えスイッチ27が取付けられるとともに、ミシン21の上部には回転刃用スイッチ28が取付けられる。
【0036】
このようにベッド部22のテーブル面22a上にはミシン21が配置され、下方にミシン駆動モータ・コントローラ24が配置され、そして下部にミシン駆動ペダル26が配置されている。また電源スイッチ25および被縫製物切断制御ボックス23がベッド部22の下部に搭載されており、とくに被縫製物切断制御ボックス23は、ミシン運転中の切断モードと、回転刃研磨モードとに切換え可能な切換えスイッチ27が取付けられており、回転刃研磨モード時に作動可能となる回転刃用スイッチ28がミシン21上に搭載される。
【0037】
図6においてミシン21のヘッド21aの部分には針棒29が昇降可能に取付けられるとともに、その右側に位置するように、切断装置20が配される。この切断装置20によって、ミシン針と回転釜とによる縫製動作に連動又は独立して、布、皮革等の被縫製物を切断するようにしている。
【0038】
図7図9は、上記ミシンヘッドの部分の詳細を示すものであって、ミシンヘッド21aの下部には、針棒29が垂直に取付けられている。この針棒29の下端部に針留29aが固着される。また針棒29の側部には垂直に押え棒30が配置され、この押え棒30の先端部に布押え30aが取付けられている。また押え棒30の側部には上送り棒31が取付けられ、この上送り棒31に上送り31aが固着されている。また被縫製物の移動面に沿ってベッド部22に針板32が配され、その下側には下送り33が取付けられる。
【0039】
次に図6に示す切断装置20の構成を図7図9によって説明すると、この切断装置20は回転刃34と、回転軸35と、駆動ベルト36と、駆動モータ37とを備えている。またこの切断装置20は、ステー39a、39b、39c、および固定ステー40を備えている。上記駆動モータ37はモータ取付け固定枠41に取付けられ、回転刃34は可動枠42に取付けられている。さらにこの回転装置は、上昇レバー43と、第1のスイッチ手段44と、回転刃研磨装置45と、上昇レバーストップカム46とを備えている。
【0040】
針留29aが固着されている針棒29と、上送り31aが固着されている上送り棒31とは、ミシン21のヘッド21aの部分に昇降および搖動可能にそれぞれ配置されている。また布押え30aが固着されている押え棒30が、ミシン21に上下運動可能に配置されている。またモータ取付け固定枠41は、作業者側から見て前後方向、上下方向、左右方向にそれぞれ位置調整可能に構成された、固定ステー39a、39b、39c、および40によって、ミシン21のヘッド21aの部分に固定されている。
【0041】
モータ取付け固定枠41には、可動枠42が可動可能に取り付けられている。可動枠42には、回転刃34が固着された回転軸35が回転可能に設けられている。図9に示すように、固定枠41は、側壁41a,41bによって構成され、一方の側壁41bに駆動モータ37が固定されている。また、可動枠42は、前記側壁41a,41b間に設けられ、側板42a,42bによって構成されている。なお、固定枠41及び可動枠42には、それぞれを覆うカバー体を設けても構わないのは勿論である。図10(a),(b)に示すように、モータ取付け固定枠41及び可動枠42には、モータ取付け固定枠41に取付けられている駆動モータ37によって回転刃34を駆動する巻掛け伝動機構が設けられている。
【0042】
巻掛け伝動機構は、駆動モータ37の出力軸に取付けられているドライブプーリ53と、回転刃34の回転軸35に取付けられているドリブンプーリ61と、ガイドプーリ57と、ガイドプーリ54と、ドライブプーリ53、ガイドプーリ57、ガイドプーリ54及びドリブンプーリ61に掛渡された上記駆動ベルト36とからなる。このように駆動ベルト36は、中間に位置するガイドプーリ57、54によって案内され、これによって所定の伝動経路が形成されている。そしてこのような駆動ベルト36は、弛まないようにするために、テンションプーリ58が中間に配されるとともに、テンションレバー59上のロール59aによって駆動ベルト36を側方から押圧し、これによって駆動ベルト36の弛みを防止している。
【0043】
可動枠42は、上部に第1の支軸55が設けられ、中間部に第2の支軸56が配置され、下部に回転軸35が取り付けられている。前記ガイドプーリ57は、第1の支軸55に回動可能に取り付けられている。前記ガイドプーリ54は、第2の支軸56に回動可能に取り付けられている。前記ドリブンプーリ61は、回転軸35に固定して設けられている。図10,11に示すように、第1の支軸55の両端は、可動枠42の側板42a,42bから突出し、固定枠41に形成された上部案内溝41c,41cに案内されている。第2の支軸56の両端も、可動枠42の側板42a,42bから突出し、固定枠41に形成された下部案内溝41d,41dに案内されている。従って、可動枠42は、図11に示すように、回転刃34の部分が作業者側から見て上下方向と前後方向に移動可能となるように、モータ取付け固定枠41に取付けられている。
【0044】
図7に示すように、第2の支軸56の両端は、固定枠41の側壁41a,41bに上部が回動可能に取り付けられたリンク部材62,62の下部に回動可能に設けられている。第1の支軸55の一端は、固定枠41の一方の側壁41aに中間部が支軸60によって回動可能に取り付けられた上昇レバー43の下部に形成された略U字状の凹部43aに係合されている。上昇レバー43の上部には、図10に示すように、係止爪66を備えた位置決めレバー65と、係止爪66を係止方向に付勢するコイルスプリング等の弾性部材67が設けられている。固定枠41の側壁41bには、上昇レバーストップカム46がネジ等により固定されている。この上昇レバーストップカム46には、前記位置決めレバー65の係止爪66を係止させる係止凹部46aが形成されている。さらに上昇レバー43には、位置決めレバー65によってON−OFFされる第2のスイッチ手段68が配置される。
【0045】
切断装置20は、図10(b)に示すように、前記位置決めレバー65の係止爪66が上昇レバーストップカム46の一側に係止されている時には、回転刃34が非切断位置P1で位置決めされ、図10(a)に示すように、前記位置決めレバー65の係止爪66が上昇レバーストップカム46の係止凹部46aに係止されている時には、回転刃34が切断位置P2で位置決めされる。
【0046】
図13,14に示すように、固定枠41の側壁41aの下部には、ネジ等により支持板70が固定されている。支持板70には、支持ネジ71が設けられている。支持ネジ71は、先端72に図示しない接触ボールが設けられ、ナット73によって先端72の突出量が調節される。支持ネジ71は、先端72、即ち接触ボールが可動枠42の側板42aと接触し、可動枠42の回転軸35の軸方向の動きを規制し、回転刃34の切断位置を支持することができる。可動枠42の側板42bには、回転刃34の上部を覆う回転刃上カバー75が連結部材76によって固定されている。回転刃上カバー75の上部は、案内縁77を形成する。ミシンヘッド21aの下部には、カバー部材80が回動可能に取り付けられている。
【0047】
カバー部材80は、略コの字状に形成され、略水平に伸びる上部材81と、上部材81の一端に上端が連設された上下方向に伸びる中間部材82と、中間部材82の下端に一端が連接された略水平方向に伸びる下部材83とを有する。下部材83には、回転刃34の下部を覆う回転刃下カバー85が一体に形成されている。上部材81には、軸受け板86が形成されている。軸受け板86は、ミシンヘッド21aの下部に固定された軸受け片87に支軸89を介して回動可能に連結されている。従って、カバー部材80は、支軸89を中心として傾動することができる。また、軸受け板86には、前記回転刃上カバー75の案内縁77に摺接して案内される案内軸91が設けられている。案内軸91は、支軸89に取り付けられたコイルスプリング等の弾性部材92によって付勢され、回転刃上カバー75の案内縁77に常時摺接する。
【0048】
回転軸35へは駆動ベルト36によって、駆動モータ37の駆動を伝達するように構成されている。なお回転刃34との協働によって縫製素材を切断する固定刃38が針板32に形成されており、固定刃38と回転刃34によって構成される切断点は、作業者側から見て上送り31aの右側で、針留29aに固定されている図示しないミシン針の針落ち点より一定距離となる位置に配置できるように構成される。また上昇レバー43に設けられた係止爪66が、上昇レバーストップカム46と噛合う状態となり、この作動に連動して可動枠42が作業者側から見て上下および前後に動くように構成される。さらには固定枠41には、図11に示すように、第1の支軸55によってON−OFFされる第1のスイッチ手段44が配置される。一方回転刃研磨装置45は、退避位置から作業者方向に回転可能であって、研ぎ時に砥石が回転刃34に接触可能な位置にあり、図示しないばねによって退避位置に退避している。
【0049】
次に被縫製物切断制御ボックス23の構成について説明する。この装置は図12に示すようにブレーカ47、アダプタ48、リレー49をそれぞれ備え、リレー49に接続される切換えスイッチ27が、ミシン駆動信号ライン50と常時出力信号ライン51とに切換えて接続されるようになっている。
【0050】
図12に示すブロック図において、ミシン駆動用モータコントローラ24に電源を供給している電源スイッチ25から、ブレーカ47を介してアダプタ48に元電源を供給する。さらにアダプタ48によって電圧変換された電源が、リレー49に供給される。一方でミシン駆動用モータ・コントローラ24から出力される、ミシン駆動時出力信号(例えばエアブロー信号)50および常時出力信号51の何れかを選択可能なように、これらを切換えスイッチ27の固定接点に接続し、このスイッチ27の可動接点はリレー49の信号側に接続される。また常時出力信号ライン51の切換えスイッチ27とミシン駆動モータ・コントローラ24との間には、メイン回転スイッチ28が介されている。一方両信号で共通使用されるプラス信号ライン52側において、ミシン駆動モータ・コントローラ24とリレー49の中間に第1のスイッチ手段44が接続される。さらにミシン駆動信号ライン50と、常時出力信号ライン51のミシン駆動用モータコントローラ24とメイン回転スイッチ28の間に第2のスイッチ手段68が接続される。そしてアダプタ48によって供給される電源を、各信号によってリレー49を介してタイミング制御して、駆動モータ37に供給するようになっている。
【0051】
以上の構成において以下のように使用することができる。図10(b)に示すように、回転刃34がベッド部22のテーブル面22aの上方位置(非切断位置P1)にある時が非切断状態である。この時、上昇レバー43は、可動枠42を上方で支持しており、位置決めレバー65の係止爪66が上昇レバーストップカム46の一側と係合している。従って、回転刃34は、係止爪66と上昇レバーストップカム46によって、非切断位置P1で位置決めされている。回転刃34が非切断位置P1で位置決めされている時には、図11に示すように、第1の支軸55が第1のスイッチ手段44から離れており、第1のスイッチ手段44がオフとなっている。また、図14に示すように、可動枠42に固定されている回転刃上カバー75の案内縁77がカバー部材80の案内軸91を押し上げており、カバー部材80の回転刃下カバー85が下方(時計方向)に回転して、回転刃34の切断部を覆って(閉じて)いる。従って、回転刃34が上方に位置している時には、回転刃34を回転刃下カバー85が覆っているので、不用意に回転刃34に接触すること防いでいる。
【0052】
位置決めレバー65を弾性部材67の弾性に抗して閉じると、第2のスイッチ手段68がオンとなり、係止爪66が上昇レバーストップカム46の一側から外れ、上昇レバー43が支軸60を中心として回動可能となる。図10(a)に示すように、上昇レバー43を反時計方向に回動すると、第1の支軸55を介して可動枠42が押し下げられ、可動枠42に固定されている回転刃上カバー75が下方に移動し、回転刃上カバー75の案内縁77に弾性部材92によって圧接しているカバー部材80の案内軸91も下方に移動し、図15に示すように、カバー部材80の回転刃下カバー85が上方(反時計方向)に回転して、回転刃34の切断部を開放する(開く)。
【0053】
また、上昇レバー43を反時計方向に回動すると、第1の支軸55を介して可動枠42が押し下げられ、回転刃下カバー85が開いているので、回転刃34がベッド部22のテーブル面22aに設けられた針板32の固定刃38と接触する。即ち、回転刃34が切断位置P2に移動し、切断可能状態となる。この時、回転刃34は、位置決めレバー65の係止爪66が上昇レバーストップカム46の係止凹部46aに係止され、切断位置P2で位置決めされている。回転刃34が切断位置P2で位置決めされている時には、図15に示すように、第1の支軸55が第1のスイッチ手段44に接触し、第1のスイッチ手段44がオンとなっている。なお、位置決めレバー65を閉じると、第2のスイッチ手段68がオンとなり、位置決めレバー65を開くと、第2のスイッチ手段68がオフとなる。また、固定枠41には、可動枠42に当接して、回転刃34の回転中心軸35方向(左右方向)の位置を支持することができる支持ネジ71が設けられている。支持ネジ71は、ナット73により先端72の突出量が調節され、先端72、即ち接触ボールが可動枠42の側板42aに当接して、固定枠41に対する可動枠42(回転刃34)の回転軸35の軸方向(左右方向)の動き(ガタツキ)が規制され、回転刃34の切断位置P2が支持される。
【0054】
図10(b)に示すように、回転刃34が非切断位置P1で位置決めされている状態で、図6のミシン駆動ペダル26を操作すると、ミシン駆動モータ・コントローラ24によって、ミシン21が駆動され、図示しない被縫製物に切断作業を伴わない縫製作業を行うことができる。回転刃34が非切断位置P1で位置決めされている状態の時には、第1のスイッチ手段44がオフとなっているので、これによってリレー49に伝わる信号が切断され、駆動モータ37に電流が流れることがなく、回転刃34が回転することがない。
【0055】
図10(a)に示すように、回転刃34が切断位置P2で位置決めされている状態で、ミシン駆動ペダル26を操作することによって、前述したように、ミシン駆動モータ・コントローラ24によって、ミシン21が駆動され、図示しない被縫製物に縫製作業を開始する。第1のスイッチ手段44がオンとなっているので、これと同時にミシン駆動モータ・コントローラ24からは、図12に示すミシン駆動出力信号ライン50に出力が出る。このときに切換えスイッチ27が図12に示すように、信号ライン50側に切換えられている場合には、リレー49にミシン21の駆動に同期した制御信号が供給される。そして電源スイッチ25からはブレーカ47を介してアダプタ48に供給された駆動電圧が変換されてリレー49に流れる。そして上記ミシン21の駆動に同期したミシン駆動信号ライン50によって、アダプタ48から供給される電力が駆動モータ37に流れ、この結果ミシン21の駆動に同期して駆動モータ37が回転駆動される。
【0056】
この駆動モータ37の回転力が、図10(a)に示すように、駆動ベルト36を介して回転軸35に固定された回転刃34に伝達され、これによってミシン21の駆動に同期して回転刃34が回転運動し、固定刃38と協働して切断点において被縫製物を縫製と同時に切断することになる。
【0057】
前述したように、図10(b)に示すように、回転刃34が非切断位置P1で位置決めされている状態から、位置決めレバー65を閉じると係止爪66の係止が解除され、第2のスイッチ手段68がオンとなる。この状態で、上昇レバー43を操作して可動枠42を下方に移動させ回転刃34を切断位置P2に移動させると、第1の支軸55が第1のスイッチ手段44をオンすることになり、駆動モータ37が回転駆動される。この駆動モータ37の回転力が、図10(a)に示すように、駆動ベルト36を介して回転軸35に固定された回転刃34に伝達され、回転刃34が被縫製物を下降しながら切断することになる。回転刃34は、上昇レバー43の操作により上昇させると、第1のスイッチ手段44がオフとなって回転を中止する。このように、切断装置20は、回転刃34の下降に伴って回転刃34を回転駆動させることができるので、被縫製物の任意の位置から切断することができる。
【0058】
一方図12に示す切換えスイッチ27を常時出力信号ライン51側に切換えた場合には、ミシン21の駆動に関係なく、回転刃用スイッチ28をONさせたときに、リレー49へ回転指令信号が流れ、この結果駆動モータ37へのブレーカ47およびアダプタ48を介しての電力の供給によって、該駆動モータ37が駆動される。この結果回転刃34が回転される。このとき回転刃研磨装置45をばねの戻し力によって砥石を回転刃34に接触させることによって、回転刃34を研ぐことができる。
【0059】
以上本願発明を図示の実施の形態によって説明したが、本願発明は上記実施の形態によって限定されることなく、本願発明の技術的思想の範囲内において各種の変更が可能である。例えば上記実施の形態においては、回転刃34の駆動のための伝導手段として、ベルト36を用いているが、ベルト36に代えて歯車列を用いて駆動してもよい。また図12に示すリレー49に代えて、シーケンサを用いて駆動モータ37の制御を行なうことも可能である。
【0060】
被縫製物切断装置20は、ミシン針1の近傍に回転刃34の切断位置を設定配置できるので、縫い品質を維持したまま、いかなる被縫製物の形状においても、縫製と略同時に又は独立して縫製ラインから均一の幅で任意の位置から被縫製物を切断でき、被縫製物の品質及び生産性を向上させることが可能になる。また被縫製物切断機構を設けた専用ミシンを準備することなく、既存のミシンに後から被縫製物切断装置20を追加することによって、被縫製物切断機能付きミシンを提供できるので、ミシン本体のコストを削減することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本願発明は、ミシンに装着でき、縫製と略同時又は縫製と独立して被縫製物を切断する被縫製物切断装置として広く利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
P1 非切断位置
P2 切断位置
1 針
1a エグリ部
2 ミシンフレーム
3 垂直回転釜
3a 釜剣先
4 縫い糸
4a ループ
5 布端裁断装置
5a 動メス
5b 固定メス
6 水平回転釜
6a 釜剣先
7 水平回転釜
7a 釜剣先
8 水平回転釜
8a 釜剣先
11 上軸
12 偏心カム
13 駆動ロッド
14、15 リンク
16 メス駆動リンク
17 裁断メス
18 裁断メス(固定側)
20 被縫製物切断装置
21 ミシン
21a ミシンヘッド
21b ミシン本体
22 ベッド部
22a テーブル面
23 被縫製物切断制御ボックス
24 ミシン駆動モータ・コントローラ
25 電源スイッチ
26 ミシン駆動ペダル
27 切換えスイッチ
28 回転刃用スイッチ
29 針棒
29a 針留
30 押え棒
30a 布押え
31 上送り棒
31a 上送り
32 針板
33 下送り
34 回転刃
35 回転軸
36 駆動ベルト(動力伝達部)
37 駆動モータ(駆動手段)
38 固定刃
39a、39b、39c 固定ステー
40 固定ステー
41 モータ取付け固定枠
41a 側壁
41b 側壁
41c 上部案内溝
41d 下部案内溝
42 可動枠
42a 側板
42b 側板
43 上昇レバー(作動手段)
43a 凹部
44 第1のスイッチ手段
45 回転刃研磨装置
46 上昇レバーストップカム(位置決め手段)
46a 係止凹部
47 ブレーカ
48 アダプタ
49 リレー
50 ミシン駆動信号ライン
51 常時出力信号ライン
52 プラス信号ライン
53 ドライブプーリ
54 ガイドプーリ
55 第1の支軸
56 第2の支軸
57 ガイドプーリ
58 テンションプーリ
59 テンションレバー
59a ロール
60 支軸
61 ドリブンプーリ
62 リンク部材
65 位置決めレバー
66 係止爪
67 弾性部材
68 第2のスイッチ手段
70 支持板
71 支持ネジ(支持手段)
72 先端
73 ナット
75 回転刃上カバー
76 連結部材
77 案内縁
80 カバー部材
81 上部材
82 中間部材
83 下部材
85 回転刃下カバー
86 軸受け板
87 軸受け片
89 支軸
91 案内軸
92 弾性部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15