(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フェロポーチン(配列番号16)の細胞外ドメインに結合し、ヘプシジンの存在下でフェロポーチン活性を持続する単離されたモノクローナル抗体であって、フェロポーチンの細胞外ドメインが、配列番号16のアミノ酸394−449および393−449からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、モノクローナル抗体。
配列番号2または4と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列は、配列番号5〜10を含むCDRを含む、請求項1または2に記載のモノクローナル抗体。
配列番号26または28と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列は、配列番号29〜34を含むCDRを含む、請求項1または2に記載のモノクローナル抗体。
配列番号66または68と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列は、配列番号69〜74を含むCDRを含む、請求項1または2に記載のモノクローナル抗体。
配列番号106または108と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列は、配列番号109〜114を含むCDRを含む、請求項1または2に記載のモノクローナル抗体。
抗体が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域が配列番号4と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号2と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項3に記載のモノクローナル抗体。
抗体が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域が配列番号28と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号26と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項4に記載のモノクローナル抗体。
抗体が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域が配列番号68と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号66と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項5に記載のモノクローナル抗体。
抗体が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域が配列番号108と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号106と90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項6に記載のモノクローナル抗体。
抗体が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域が配列番号4と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号2と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、CDRが配列番号5〜10のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載のモノクローナル抗体。
抗体が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域が配列番号28と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号26と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、CDRが配列番号29〜34のアミノ酸配列を含む、請求項4に記載のモノクローナル抗体。
抗体が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域が配列番号68と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号66と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、CDRが配列番号69〜74のアミノ酸配列を含む、請求項5に記載のモノクローナル抗体。
抗体が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域が配列番号108と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号106と90%同一であるアミノ酸配列を含み、CDRが配列番号109〜114のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載のモノクローナル抗体。
重鎖および軽鎖を含む単離されたモノクローナル抗体であって、前記重鎖が、配列番号14のアミノ酸18〜466を含み、前記軽鎖が、配列番号12のアミノ酸21〜239を含む、抗体。
抗体が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域が配列番号4に記載のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載のモノクローナル抗体。
抗体が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域が配列番号28に記載のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号26に記載のアミノ酸配列を含む、請求項4に記載のモノクローナル抗体。
抗体が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域が配列番号68に記載のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号66に記載のアミノ酸配列を含む、請求項5に記載のモノクローナル抗体。
抗体が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域が配列番号108のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号106に記載のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載のモノクローナル抗体。
配列番号16のアミノ酸393〜449内に位置するヒトフェロポーチンのフラグメントに結合するか、ヒトフェロポーチンのエピトープに結合する、請求項1から19のうちの一項に記載の単離されたモノクローナル抗体。
請求項1から20のうちのいずれか一項に記載の単離されたモノクローナル抗体であって、アミノ酸SITPTKIPEI(配列番号16のアミノ酸417〜426)、アミノ酸ITTEIYMSNGSNS(配列番号16のアミノ酸426〜438)およびアミノ酸TEIYMSNGSNSA(配列番号16のアミノ酸428〜439)からなる群から選択される前記ヒトフェロポーチンのフラグメントに結合する単離されたモノクローナル抗体。
ヒトコンセンサス抗体配列、ヒト生殖細胞系抗体配列、またはヒト生殖細胞系コンセンサス抗体配列である、フレームワークアミノ酸配列を含む、請求項1から21のうちのいずれか一項に記載の単離されたモノクローナル抗体。
請求項1から21のうちのいずれか一項に記載の抗体を産生する方法であって、(a)非ヒト哺乳動物に、フェロポーチン(配列番号16)をコードする核酸を投与するステップ、任意に(b)前記哺乳動物に、フェロポーチン(配列番号16)をコードする同一または異なる核酸を投与するステップ、任意に(c)前記哺乳動物に、フェロポーチンを発現する細胞膜を含む組成物を投与するステップ、および(d)前記哺乳動物から、抗体を発現する細胞を獲得するステップを含む、方法。
モノクローナル抗体が、抗体31A5、37A2,38A4または38G6と同一のエピトープに結合する、または、フェロポーチンへの結合に対して、抗体31A5、37A2,38A4または38G6と75%競合する、請求項40の方法。
抗体が、固体支持体上に固定化され、ならびに請求項1から21のうちのいずれか一項に記載の第2の抗体と、フェロポーチンを接触させるステップをさらに含む、請求項40の方法。
鉄ホメオスタシスの障害が、貧血、敗血症、炎症性貧血、癌性貧血、化学療法誘導貧血、慢性炎症性貧血、うっ血性心不全、末期腎疾患、慢性腎臓病(ステージI、II、III、IVまたはV)、鉄欠乏性貧血、フェロポーチン病、ヘモクロマトーシス、糖尿病、炎症、関節リウマチ、動脈硬化症、腫瘍、血管炎、全身性エリテマトーデス、異常血色素症、および赤血球障害からなる群から選択される、請求項53に記載の医薬組成物。
赤血球生成刺激剤が、エリスロポエチン、エリスロポエチンの変異体およびエリスロポエチンに結合する抗体からなる群から選択される、請求項55に記載の医薬組成物。
対象が、貧血、敗血症、炎症性貧血、癌性貧血、化学療法誘導貧血、慢性炎症性貧血、うっ血性心不全、末期腎疾患、慢性腎臓病(ステージI、II、III、IVまたはV)、鉄欠乏性貧血、フェロポーチン病、ヘモクロマトーシス、糖尿病、炎症、関節リウマチ、動脈硬化症、腫瘍、血管炎、全身性エリテマトーデス、異常血色素症、赤血球障害および腎不全からなる群から選択される病態に罹患している、請求項63に記載の医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(詳細な説明)
フェロポーチン(配列番号16)は、10あるいは12の膜貫通ドメインを有することが予測されるマルチ膜貫通タンパク質である。トポロジー図に基づいて、20%未満の残基が、細胞外であることが予測され、最長細胞外ループは、わずか57残基長さであることが予測される。
図1は、フェロポーチン膜貫通および細胞外ドメインの2つの概略図を示す。
図1Aにおいて、細胞外ドメインは、配列番号16のアミノ酸46〜60(ループ1)、116〜126(ループ2)、204〜205および325〜342(ループ3)、394〜449(ループ4)ならびに513〜517(ループ5)に対応する。
図1Bにおいて、細胞外ドメインは、配列番号16のアミノ酸35〜57(ループ1)、116〜124(ループ2)、332−340(ループ3)、393−449(ループ4)および515−518(ループ5)に対応する。
【0025】
本発明の実施形態は、フェロポーチン、または(
図1Aまたは1Bに示されるような)フェロポーチンのループ1、2、3および4、またはそのフラグメントに、高い親和性で結合する、モノクローナル抗体を提供する。本発明の他の実施形態は、正常な鉄ホメオスタシスを有する対象、あるいは、ヘプシジンレベルの上昇から起こる障害を含む、鉄ホメオスタシスの障害の危険性があるもしくは罹患している対象において、フェロポーチン活性を持続し、かつ血中鉄レベルを増加させることができる、モノクローナル抗体等の抗体を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される抗体は、フェロポーチン表面発現へのヘプシジンの効果を阻害する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される抗体は、フェロポーチンのヘプシジン媒介分解を含むフェロポーチンの内部移行および分解を防ぎ、それによって、鉄ホメオスタシスを維持する。
【0026】
I.抗フェロポーチン抗体および特異的結合剤
「抗体」という用語は、最も広範な意味で使用され、完全に組み立てられた抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、抗原(Fab’、F’(ab)
2、Fv、単鎖抗体、ダイアボディ(diabodies)を含む)に結合することができる抗体フラグメント、ならびにそれらが所望の生物活性を示す限り、前述のものを含む組換えペプチドを含む。化学的に誘導体化された抗体を含む、無傷分子および/またはフラグメントのマルチマーまたは会合体が、企図される。IgG、IgM、IgD、IgA、およびIgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2を含む、任意のアイソタイプクラスもしくはサブクラスの抗体、または任意のアロタイプの抗体が、企図される。異なるアイソタイプは、異なるエフェクター機能を有する、例えば、IgG1およびIgG3アイソタイプは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を有する。
【0027】
いくつかの実施形態において、抗体は、K
D(平衡解離定数)によって測定して、l×10
−6M以下の範囲、または10
−16Mもしくはそれを下回る範囲までに及ぶ(例えば、約10
−7、10
−8、10
−9、10
−10、10
−11、10
−12、10
−13、10
−14、10−
15、10
−16M以下)フェロポーチンに対する結合親和性等の所望の特性を示す。より高いまたはより良好な親和性は、より低いK
Dによって特徴付けられる。平衡解離定数の推定値は、抗体濃度の範囲にわたって、フェロポーチン発現細胞に結合する抗体を監視することによって決定され得る。親和性を結合する抗体を決定するために、ヒトフェロポーチンを誘導可能に発現するように改変されるHEK293細胞株を、96ウェル黒壁の透明底ポリ−D−リシンコートされたプレート(Becton−Dickinson,Franklin Lakes NJ)の1ウェルあたり50,000細胞で播種し、クエン酸酸化鉄の存在下でフェロポーチンを発現するために、Tet誘導システムにおいて、10μg/mLの最終濃度のドキシサイクリンを用いて、誘発する。導入試薬を除去する際、次いで細胞の培地を冷DMEM 10% FBS1×ペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミン中における漸増量の抗体で、交換し、4℃で30分間温置する。この後、200μL/ウェルの冷PBSで、細胞を4回軽く洗浄し、飽和濃度(5μg/mL)の抗マウスH+L AlexaFluor 488複合体(Invitrogen Inc,Carlsbad CA)で温置し、暗闇で、4℃で30分間温置する。これが完了すると、次に200μL/ウェルの冷PBSで細胞を4回洗浄し、100μL/ウェルの冷PBS中に放置し、Perkin−Elmer Envision(Perkin−Elmer,Waltham MA)等の蛍光光度計上の相対的蛍光強度を直ちに読み出す。その後、蛍光強度データから、結合曲線が構築され、これらのEC
50は、次いで、おおよそのK
Dを示す。
【0028】
他の実施形態において、抗体は、フェロポーチンに対して特異性を示す。本明細書で使用する、抗体は、異なるファミリーにおける他の非関連たんぱく質と比較する際、ヒトフェロポーチンに対して有意により高い結合親和性を有し、したがって、識別可能である場合、「ヒトフェロポーチンに対して特異的(specific for)」または「ヒトフェロポーチンに特異的に結合する(specifically binds)」。いくつかの実施形態において、かかる抗体はまた、マウス、ラット、または霊長類のフェロポーチン等の他の種のフェロポーチンと交差反応し得る一方、他の実施形態において、該抗体は、ヒトまたは霊長類のフェロポーチンにのみ結合し、齧歯類のフェロポーチンに対しては有意には結合しない。
【0029】
さらに他の実施形態において、抗体は、フェロポーチン持続を促進することが可能である。本明細書で使用する、「フェロポーチン持続(Ferroportin preservation)」または「フェロポーチン活性の持続(preservation of ferroportin activity)」とは、フェロポーチンによって調節される鉄排出を増加させるまたは維持する能力を指し、抗体の不在下での、鉄排出のレベルと比較して、フェロポーチン持続を促進する抗体の存在下で、鉄排出のレベルの相対的な増加として検出され得る。例えば、フェロポーチン持続を促進する抗体の存在下で、鉄排出は、増加し得、細胞内鉄レベルは、減少し得る、および/または血中鉄レベルは、増加し得る。いくつかの実施形態において、フェロポーチン持続は、正常細胞および正常な対象において生じ得る。他の実施形態において、フェロポーチン持続は、例えば、ヘプシジンのような、フェロポーチン持続がなければ、フェロポーチンによって調節される鉄排出を変化させ得るであろう分子の存在下で、生じ得る。いくつかの実施形態において、フェロポーチン持続は、100%、または約99%、または約98%、または約97%、または約96%、または約95%、または約94%、または約93%、または約92%、または約91%、または約90%、または約85%、または約80%、または約約75%もしくはそれ以下でフェロポーチンを分解するのに有効なヒトヘプシジンの量の存在下で、生じ得る。いくつかの実施形態において、フェロポーチン持続は、鉄ホメオスタシスの障害に罹患している細胞または対象において生じ得る。いくつかの実施形態において、抗体は、約10
−6M以下、または約10
−7M以下、または約10
−8M以下、または約10
−9M以下のEC
50で、細胞内鉄濃度を低下させる、および/または血中鉄濃度を増加させる。フェロポーチン活性を持続するおよび/または鉄排出を維持するための抗体の能力は、実施例3に記述しているもの等のアッセイによって検出することができる。種々の実施形態において、ヘプシジンの存在下で、抗体は、約10
−6M以下、または約10
−7M以下、または約10
−8M以下、または約10
−9M以下のIC
50で、細胞内鉄濃度を低下させる、および/または血中鉄濃度を増加させる。
【0030】
いくつかの実施形態において、体外で、および好ましくは生体内でも、ヘプシジン依存の内部移行および/または分解を含むフェロポーチンの内部移行および/または分解を阻害する(または中和させる)抗体を提供する。フェロポーチンの内部移行および/または分解を阻害するための抗体の能力は、実施例6に記述しているもの等のアッセイによって検出することができる。例示的な態様において、モノクローナル抗体は、高い鉄レベル(および/または炎症)に反応して生じるフェロポーチンの分解を阻害する(または中和させる)。いくつかの実施形態において、フェロポーチンへのヘプシジンの結合は、本明細書に開示されるフェロポーチンを持続する抗体によって阻害されない。
【0031】
フェロポーチン持続が可能な抗フェロポーチン抗体は、鉄ホメオスタシスの障害に治療的に有用であり、1つ以上のマーカー、例えば、フェリチン/鉄レベル、赤血球数、赤血球特性(ヘモグロビン含有量および/もしくは細胞体積)、早期赤血球特性(網状赤血球数、ヘモグロビン含有量もしくは細胞体積)(Clinical Hematology,third edition,Lippincott,Williams and Wilkins;editor Mary L.Turgeon,1999)、または鉄輸送を通して測定されるように、血清鉄レベルを増加させる、ならびに/または赤血球数もしくは特性を改善することが期待される。
【0032】
特定の例示的な実施形態において、本発明は、以下を企図する。
1)抗体31A5、37A2、37B9、37C8、37G8、38A4、38C8、38D2、38E3および38G6の任意の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2もしくはCDRL3を保有し、任意に、かかる単数または複数のCDRにおける、1つまたは2つの変異体を含む、モノクローナル抗体、
2)抗体31A5、37A2、37B9、37C8、37G8、38A4、38C8、38D2、38E3および38G6のすべてのCDRH1、CDRH2、CDRH3、または重鎖可変領域を保有し、任意に、かかる単数または複数のCDRにおける、1つまたは2つの変異体を含む、モノクローナル抗体、
3)抗体31A5、37A2、37B9、37C8、37G8、38A4、38C8、38D2、38E3および38G6のすべてのCDRH1、CDRH2、CDRH3、または軽鎖可変領域を保有し、任意に、かかる単数または複数のCDRにおける、1つまたは2つの変異体を含む、モノクローナル抗体、
4)例えば、X線結晶学または重水素交換質量分析、アラニンスキャニングおよびペプチドフラグメントELISA等の他の生物物理学的もしくは生化学的技法を通して決定される、抗体31A5、37A2、37B9、37C8、37G8、38A4、38C8、38D2、38E3および38G6と同一のフェロポーチンの線状もしくは立体的エピトープに結合するモノクローナル抗体、
5)フェロポーチン(配列番号16)のアミノ酸残基393〜446からなるペプチドに結合し、いくつかの実施形態において、配列番号16のアミノ酸残基75〜96、152〜183、330〜338または542〜571に結合しない、モノクローナル抗体、
6)フェロポーチン(配列番号16)のアミノ酸残基439〜449からなるペプチドに結合するモノクローナル抗体、ならびに
7)約75%以上、約80%以上、または約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、または95%以上でヒトフェロポーチンに結合するために、抗体31A5、37A2、37B9、37C8、37G8、38A4、38C8、38D2、38E3および38G6のうちのいずれか1つと競合するモノクローナル抗体。
【0033】
一実施形態において、抗体は、配列番号5〜10(31A5 CDR)からなる群から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはすべてのアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号29〜34(37A2 CDR)からなる群から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはすべてのアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号39〜44(37B9 CDR)からなる群から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはすべてのアミノ酸配列を含む。さらに別の実施形態において、抗体は、配列番号49〜54(37C8 CDR)からなる群から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはすべてのアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号59〜64(37G8 CDR)からなる群から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはすべてのアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号69〜74(38A4 CDR)からなる群から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはすべてのアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号79〜84(38C8 CDR)からなる群から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはすべてのアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号89〜94(38D2 CDR)からなる群から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはすべてのアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号99〜104(38E3 CDR)からなる群から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはすべてのアミノ酸配列を含む。さらに別の実施形態において、抗体は、配列番号109〜114(38G6 CDR)からなる群から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つもしくはすべてのアミノ酸配列を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、抗体は、3本の軽鎖CDRすべて、3本の重鎖CDRすべて、または6本のCDRすべてを含む。いくつかの例示的な実施形態において、1つの抗体からの2本の軽鎖CDRは、異なる抗体からの第3の軽鎖CDRと組み合わされ得る。代替として、1つの抗体からのCDRL1は、異なる抗体からのCDRL2およびさらに別の抗体からのCDRL3と組み合わされ得、特に、ここで、CDRは、高度の相同性を示す。同様に、1つの抗体からの2本の重鎖CDRは、異なる抗体からの第3の重鎖CDRと組み合わされ得る、または1つの抗体からのCDRH1は、異なる抗体からのCDRH2およびさらに別の抗体からのCDRH3と組み合わされ得、特に、ここで、CDRは、高度の相同性を示す。
図6は、抗体37A2(配列番号32〜34)、37B9(配列番号42〜44)、37C8(配列番号52〜54)、37G8(配列番号62〜64)、38A4(配列番号72〜74)、38C8(配列番号82〜84)、38D2(配列番号92〜94)、38E3(配列番号102〜104)および38G6(配列番号112〜114)に対する重鎖CDRを提供する。
図7は、抗体37A2(配列番号29〜31)、37B9(配列番号39〜41)、37C8(配列番号49〜51)、37G8(配列番号59〜61)、38A4(配列番号69〜71)、38C8(配列番号79〜81)、38D2(配列番号89〜91)、38E3(配列番号99〜101)および38G6(配列番号109〜111)に対する軽鎖CDRを提供する。
【0035】
コンセンサスCDRも使用してもよい。一実施形態において、抗体は、配列番号42(GYYMH、抗体37B9、37C8、37G8、38C8および38E3からの重鎖CDR1)、配列番号115(GYXMH、37A2、37B9、37C8、37G8、38C8、および38E3からの重鎖CDR1コンセンサス)、配列番号116(GYYXH、37B9、37C8、37G8、38C8、38D2および38E3からの重鎖CDR1コンセンサス)、配列番号117(WINPHTGGKNYXQXFQG、抗体37B9、37C8、37G8、38C8および38E3からの重鎖CDR2コンセンサス)、配列番号118(DPSXXVXGPSFYYXGLDV、抗体37B9、37C8、37G8、38C8および38E3からの重鎖CDR3コンセンサス)、配列番号119(KISNRXS、抗体37B9、37C8、37G8、38C8および38E3からの軽鎖CDR2コンセンサス)からなる群から選択される、1つ以上のアミノ酸配列を含み、式中、Xは、いずれかのアミノ酸である。
【0036】
種々の実施形態において、抗体は、WINPHTGGKNYX
1QX
2FQG(配列番号136)を含み、式中、X
1およびX
2は、いずれかのアミノ酸である、またはX
1およびX
2は、A、G、K、もしくはR、これらのいずれかの組み合わせ、またはこれらの同類置換である、またはX
1は、AもしくはG、またはこれらの同類置換であり、かつX
2は、いずれかのアミノ酸である、またはX
1は、いずれかのアミノ酸であり、かつX
2は、KもしくはR、またはこれらの同類置換である、またはX
1は、AもしくはG、またはこれらの同類置換であり、かつX
2は、KもしくはRまたはこれらの同類置換である。
【0037】
種々の他の実施形態において、抗体は、アミノ酸配列WINPHTGGKNYX
1QX
2FQG(配列番号136)(式中、X
1およびX
2は、A、G、K、R、これらのいずれかの組み合わせ、またはこれらの同類置換である)、およびアミノ酸配列DPSX
1X
2VX
3GPSFYYX
4GLDV(配列番号137)(式中、X
1、X
2、X
3およびX
4は、A、F、I、L、V、S、T、Y、これらのいずれかの組み合わせ、またはこれらの同類置換である)を含む。
【0038】
種々の実施形態において、抗体は、アミノ酸配列DPSX
1X
2VX
3GPSFYYX
4GLDV(配列番号137)を含み、式中、X
1、X
2、X
3およびX
4は、いずれかのアミノ酸である;またはX
1、X
2、X
3およびX
4は、A、F、I、L、V、S、T、Y、これらのいずれかの組み合わせ、もしくはこれらの同類置換である;またはX
1は、IもしくはLまたはこれらの同類置換であり、かつX
2、X
3およびX
4は、いずれかのアミノ酸である;またはX
2は、A、V、もしくはS、またはこれらの同類置換であり、かつX
1、X
3およびX
4は、いずれかのアミノ酸である;またはX
3は、AもしくはT、またはこれらの同類置換であり、かつX
1、X
2およびX
4は、いずれかのアミノ酸である;またはX
4は、YもしくはF、またはこれらの同類置換であり、かつX
1、X
2およびX
3は、いずれかのアミノ酸である;またはX
1は、IもしくはL、またはこれらの同類置換であり、X
2は、A、VもしくはS、またはこれらの同類置換であり、かつX
3およびX
4は、いずれかのアミノ酸である;またはX
1は、いずれかのアミノ酸であり、X
2は、A、VもしくはS、またはこれらの同類置換であり、X
3は、AもしくはT、またはこれらの同類置換であり、かつX
4は、いずれかのアミノ酸である;またはX
1およびX
2は、いずれかのアミノ酸であり、X
3は、AもしくはT、またはこれらの同類置換であり、かつX
4は、YもしくはF、またはこれらの同類置換である;またはX
1、X
2およびX
3は、いずれかのアミノ酸であり、かつX
4は、YもしくはF、またはこれらの同類置換である、またはX
1は、IもしくはL、またはこれらの同類置換であり、X
2は、A、V、もしくはS、またはこれらの同類置換であり、X
3は、AもしくはT、またはこれらの同類置換であり、かつX
4は、YもしくはF、またはこれらの同類置換である;X
2およびX
3は、いずれかのアミノ酸であり、X
1は、IもしくはL、またはこれらの同類置換であり、かつX
4は、YもしくはF、またはこれらの同類置換である;またはX
1およびX
2は、いずれかのアミノ酸であり、X
3は、AもしくはT、またはこれらの同類置換であり、かつX
4は、YもしくはF、またはこれらの同類置換である;またはX
1およびX
3は、いずれかのアミノ酸であり、X
2は、A、VもしくはS、またはこれらの同類置換であり、かつX
4は、YもしくはF、またはこれらの同類置換である;またはX
1およびX
4は、いずれかのアミノ酸であり、X
2は、A、VもしくはS、またはこれらの同類置換であり、かつX
3は、AもしくはT、またはこれらの同類置換である;またはX
1、X
2、およびX
3は、いずれかのアミノ酸であり、かつX
4は、YもしくはF、またはこれらの同類置換である;またはX
1、X
2、およびX
4は、いずれかのアミノ酸であり、かつX
3は、AもしくはT、またはこれらの同類置換である;またはX
1、X
3、およびX
4は、いずれかのアミノ酸であり、かつX
2は、A、VもしくはS、またはこれらの同類置換であり、あるいはX
2、X
3、およびX
4は、いずれかのアミノ酸であり、かつX
1は、IもしくはL、またはこれらの同類置換である;またはX
1は、IもしくはL、またはこれらの同類置換であり、X
2は、いずれかのアミノ酸であり、X
3は、AもしくはT、またはこれらの同類置換であり、かつX
4は、いずれかのアミノ酸である。
【0039】
本明細書に開示されるコンセンサスCDRのうちのいずれも、いずれの抗体の同一の鎖(例えば、重鎖または軽鎖)からの2つの他のCDRとも組み合わされ、例えば、好適な重鎖または軽鎖可変領域を形成することができる。
【0040】
さらに別の実施形態において、抗体は、抗体31A5の重鎖および/または軽鎖可変領域、例えば、配列番号4(31A5重鎖可変領域)、および/または配列番号2(31A5軽鎖可変領域)を含む。別の実施形態において、抗体は、抗体37A2の重鎖および/または軽鎖可変領域、例えば、配列番号28(37A2重鎖可変領域)および/または配列番号26(37A2軽鎖可変領域)を含む。別の実施形態において、抗体は、抗体37B9の重鎖および/または軽鎖可変領域、例えば、配列番号38(37B9重鎖可変領域)および/または配列番号36(37B9軽鎖可変領域)を含む。別の実施形態において、抗体は、抗体37C8の重鎖および/または軽鎖可変領域、例えば、配列番号48(37C8重鎖可変領域)および/または配列番号46(37C8軽鎖可変領域)を含む。別の実施形態において、抗体は、抗体37G8の重鎖および/または軽鎖可変領域、例えば、配列番号58(37G8重鎖可変領域)および/または配列番号56(37G8軽鎖可変領域)を含む。別の実施形態において、抗体は、抗体38A4の重鎖および/または軽鎖可変領域、例えば、配列番号68(38A4重鎖可変領域)および/または配列番号66(38A4軽鎖可変領域)を含む。別の実施形態において、抗体は、抗体38C8の重鎖および/または軽鎖可変領域、例えば、配列番号78(38C8重鎖可変領域)および/または配列番号76(38C8軽鎖可変領域)を含む。さらに別の実施形態において、抗体は、抗体38D2の重鎖および/または軽鎖可変領域、例えば、配列番号88(38D2重鎖可変領域)および/または配列番号86(38D2軽鎖可変領域)を含む。別の実施形態において、抗体は、抗体38E3の重鎖および/または軽鎖可変領域、例えば、配列番号98(38E3重鎖可変領域)および/または配列番号96(38E3軽鎖可変領域)を含む。別の実施形態において、抗体は、抗体38G6の重鎖および/または軽鎖可変領域、例えば、配列番号108(38G6重鎖可変領域)および/または配列番号106(38G6軽鎖可変領域)を含む。
【0041】
いくつかの実施形態において、配列番号4(31A5重鎖可変領域)、2(31A5軽鎖可変領域、28(37A2重鎖可変領域)、26(37A2軽鎖可変領域)、38(37B9重鎖可変領域)、36(37B9軽鎖可変領域)、48(37C8重鎖可変領域)、46(37C8軽鎖可変領域)、58(37G8重鎖可変領域)、56(37G8軽鎖可変領域)、68(38A4重鎖可変領域)、66(38A4軽鎖可変領域)、78(38C8重鎖可変領域)、76(38C8軽鎖可変領域)、88(38D2重鎖可変領域)、86(38D2軽鎖可変領域)、98(38E3重鎖可変領域)、96(38E3軽鎖可変領域)、108(38G6重鎖可変領域)および106(38G6軽鎖可変領域)からなる群から選択されるアミノ酸配列に少なくとも約65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む抗体を提供し、該ポリペプチドは、配列番号5〜10(31A5CDR)、29〜34(37A2)、39〜44(37B9)、49〜54(37C8)、59〜64(37G8)、69〜74(38A4)、79〜84(38C8)、89〜94(38D2)、99〜104(38E3)、および109〜114(38G6)に記述されている少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上のアミノ酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態において、軽鎖可変領域に対して百分率同一性を有するポリペプチドは、1つ、2つまたは3つの軽鎖CDRを含み得る。他の実施形態において、重鎖可変領域に対して百分率同一性を有するポリペプチドは、1つ、2つまたは3つの重鎖CDRを含み得る。前述の実施形態のいずれにおいても、ポリペプチドは、配列番号5〜10(31A5 CDR)、29〜34(37A2)、39〜44(37B9)、49〜54(37C8)、59〜64(37G8)、69〜74(38A4)、79〜84(38C8)、89〜94(38D2)、99〜104(38E3)、および109〜114(38G6)に記述しているアミノ酸配列のいずれかに1つまたは2つの改変を含む配列を含むことができる。
【0042】
また、34G3、37A2、37B9、37C8、37G8、38A4、38C8、38D2、38D6、38E3および38G6からなる群から選択される抗体の重鎖および軽鎖可変領域に対して少なくとも約65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む抗体も企図され、該ポリペプチドは、31A5 CDR、37A2 CDR、37B9 CDR、37C8 CDR、37G8 CDR、38A4 CDR、38C8 CDR、38D2 CDR、38E3 CDRおよび38G6 CDRからなる群から選択される少なくとも1つ以上のCDRをさらに含む。前述の実施形態のいずれにおいても、ポリペプチドは、31A5 CDR、37A2 CDR、37B9 CDR、37C8 CDR、37G8 CDR、38A4 CDR、38C8 CDR、38D2 CDR、38E3 CDRおよび38G6 CDRからなる群から選択されるCDRに対して1つまたは2つの修飾を含む配列を含む。
【0043】
抗体31A5の全長軽鎖および重鎖に対するcDNAおよびアミノ酸配列も提供する。定常領域を含む、抗体31A5の全長軽鎖をコードするcDNA配列は、配列番号11に記述されている。定常領域を含む、抗体31A5の全長軽鎖をコードするアミノ酸配列は、配列番号12(このうちの残基1〜20は、シグナルペプチドに対応し、残りは、成熟ポリペプチドである)に記述されている。定常領域を含む、抗体31A5の全長重鎖をコードするcDNA配列は、配列番号13に記述されている。定常領域を含む、抗体31A5の全長重鎖のアミノ酸配列は、配列番号14(このうちの残基1〜17は、シグナルペプチドに対応し、残りは、成熟ポリペプチドである)に記述されている。
【0044】
別の実施形態において、抗体は、抗体34G3、37A2、37B9、37C8、37G8、38A4、38C8、38D2、38E3および38G6のいずれかの重鎖可変領域を含み、任意に、ヒトIgG1重鎖定常領域(配列番号120〜121)およびヒトIgG2重鎖定常領域(配列番号122〜123)からなる群から選択される定常領域を含む。別の例示的な実施形態において、抗体は、抗体37B9、37C8、37G8、38A4、38C8、38D2および38E3のいずれかの軽鎖可変領域を含み、任意に、ヒトカッパ軽鎖定常領域(配列番号124〜125)を含む。別の例示的な実施形態において、抗体は、抗体37A2および38G6のいずれかの軽鎖可変領域を含み、任意に、ヒトラムダ軽鎖可変領域C1型(配列番号126〜127)、ヒトラムダ軽鎖可変領域C2型(配列番号128〜129)、ヒトラムダ軽鎖定常領域C3型(配列番号130〜131)、ヒトラムダ軽鎖定常領域C6型(配列番号132〜133)およびヒトラムダ軽鎖定常領域C7型(配列番号134〜135)からなる群から選択される定常領域を含む。
【0045】
本明細書で使用する「モノクローナル抗体」という用語は、その用語が本明細書に定義される、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す、即ち、集団を成す個々の抗体が、ハイブリドーマから産生されるか組換えDNA技法から産生されるかにかかわらず、少量で存在し得る、自然発生する可能な突然変異体または代替的な翻訳後の改変を除いては同一である。モノクローナル抗体の限定されない例には、マウス、ウサギ、ラット、ニワトリ、キメラ化、ヒト化、もしくはヒト抗体、完全に組み立てられた抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、抗原(Fab’、F’(ab)
2、Fv、単鎖抗体、ダイアボディを含む)、マキシボディ(maxibody)またはナノボディ(nanobody)に結合することができる抗体フラグメント、ならびにそれらが所望の生物活性を示す限り、前述のものを含む組換えペプチド、またはその変形体もしくは誘導体が含まれる。さらにヒトのようであるヒト化または改変抗体配列は、例えば、Jones et al.,Nature 321:522 525(1986)、Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.,81:6851 6855(1984)、Morrison and Oi,Adv.Immunol.,44:65 92(1988)、Verhoeyer et al.,Science 239:1534 1536(1988)、Padlan,Molec.Immun.28:489 498(1991)、Padlan,Molec.Immunol.31(3):169 217(1994)、およびKettleborough,C.A.et al.,Protein Eng.4(7):773 83(1991)、Co,M.S.,et al.(1994),J.Immunol.152,2968−2976)、Studnicka et al.Protein Engineering 7:805−814(1994)に記載され、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ヒトモノクローナル抗体を単離するための一方法は、ファージディスプレイの使用である。ファージディスプレイは、例えば、Dower et al.、WO91/17271、McCafferty et al.、WO92/01047、およびCaton and Koprowski,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:6450−6454(1990)に記載され、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ヒトモノクローナル抗体を単離するための別の方法は、内因性免疫グロブリン産生を持たず、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むように改変されたトランスジェニック動物を使用することである。例えば、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551(1993)、Jakobovits et al.,Nature,362:255−258(1993)、Bruggermann et al.,Year in Immuno.,7:33(1993)、WO91/10741、WO96/34096、WO98/24893、または米国特許出願公開第20030194404号、第20030031667号、または第20020199213号を参照されたく、それぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0046】
「単離された」抗体とは、その自然環境の成分から同定されている、および分離されている、抗体(この用語は本名最初で定義されるとおりである)を指す。その自然環境の汚染成分とは、抗体の診断または治療への使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質様または非タンパク質様溶質が含まれ得る。ある実施形態において、抗体は、(1)抗体の95重量%を超える、最も好ましくは99重量%以上まで、(2)N末端あるいは内部アミノ酸配列の少なくとも15の残基を得るのに充分な程度まで、(3)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた還元あるいは非還元条件下で、SDS−PAGEによる均一性が得られるまで、精製され得る。抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、単離された自然発生抗体には、組換え細胞内の原位置抗体が含まれる。しかしながら、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0047】
「免疫グロブリン」または「自然抗体」は、四量体糖タンパク質である。自然発生免疫グロブリンにおいて、各四量体は、同一の2組のポリペプチド鎖からなり、各組は、1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分には、抗原認識に主に関与する約100〜110またはそれ以上のアミノ酸の「可変」(「V」)領域が含まれる。各鎖のカルボキシ末端部分は、定常領域を定義し、重鎖の定常領域は、エフェクター機能に主に関与する。免疫グロブリンは、それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して異なるクラスに割り当てられ得る。重鎖は、ミュー(μ)、デルタ(δ)、ガンマ(γ)、アルファ(α)、およびエプシロン(ε)として分類され、抗体のアイソタイプは、それぞれ、IgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEとして定義される。これらのうちのいくつかは、サブクラスまたはアイソタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2にさらに分けられ得る。異なるアイソタイプは、異なるエフェクター機能を有する、例えば、IgG1およびIgG3アイソタイプは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を有する。ヒト軽鎖は、カッパ(κ)およびラムダ(λ)軽鎖として分類される。軽鎖および重鎖内で、可変および定常領域は、約10またはそれ以上のアミノ酸の「D」領域も含む重鎖とともに、約12またはそれ以上のアミノ酸の「J」領域によって接合される。概論については、Fundamental Immunology,Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989))を参照のこと。
【0048】
アロタイプは、抗体配列における、しばしば、定常領域における、免疫原性であり得、ヒトにおける特異的対立遺伝子によりコードされる変異である。アロタイプは、ヒトIGHC遺伝子の5つである、IGHG1、IGHG2、IGHG3、IGHA2およびIGHE遺伝子について同定されており、それぞれ、G1m、G2m、G3m、A2m、およびEmアロタイプと命名される。少なくとも18のGmアロタイプ:nG1m(1)、nG1m(2)、G1m(1、2、3、17)またはG1m(a、x、f、z)、G2m(23)またはG2m(n)、G3m(5、6、10、11、13、14、15、16、21、24、26、27、28)またはG3m(b1、c3、b5、b0、b3、b4、s、t、g1、c5、u、v、g5)が知られている。2つのA2mアロタイプA2m(1)およびA2m(2)がある。
【0049】
抗体の構造および生成の詳細に関しては、Roth,D.B.,and Craig,N.L.,Cell,94:411−414(1998)を参照されたく、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。簡潔に述べると、重鎖および軽鎖の免疫グロブリン配列をコードするDNAを生成するためのプロセスは、主に、成長するB細胞内で起こる。種々の免疫グロブリン遺伝子セグメントを再編成および接合する前に、V、D、Jおよび定常(C)遺伝子セグメントは、概して、単一の染色体上で相対的に近接近において見出される。B細胞の分化中、V、D、J(または、軽鎖遺伝子の場合、VおよびJのみ)遺伝子セグメントのそれぞれの適切なファミリーメンバーのうちの1つは、重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子の機能的に再編成された可変領域を形成するように再結合される。この遺伝子セグメント再編成プロセスは、順次的であると考えられる。第1に、重鎖D〜J接合が作られ、次いで、重鎖VからDJへの接合と軽鎖VからJへの接合が成される。V、DおよびJセグメントの再編成に加えて、軽鎖内のVおよびJセグメントが接合され、かつ重鎖のDおよびJセグメントが接合される位置で、可変組換え(variable recombination)のために、免疫グロブリン重鎖および軽鎖の一次レパートリーにおいて生成される。軽鎖内のかかる変化は、一般的に、V遺伝子セグメントの最終コドンおよびJセグメントの第1のコドン内で起こる。接合における同様の不正確性は、DセグメントとJHセグメントとの間の重鎖染色体で起こり、10ヌクレオチドほどの大きさにわたって伸張し得る。さらに、ゲノムDNAによってコードされない、いくつかのヌクレオチドは、DとJHとの間およびVHとD遺伝子セグメントの間に挿入され得る。これらのヌクレオチドの付加は、N領域多様性として知られる。かかる接合中、起こり得る、可変領域遺伝子セグメントおよび可変組換えにおけるこのような再編成の最終的な結果は、一次抗体のレパートリーの産生である。
【0050】
「超可変」領域という用語は、相補性決定領域またはCDR(即ち、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)によって記載されるように、軽鎖可変ドメイン中の残基24〜34(L1)、50〜56(L2)および89〜97(L3)および重鎖可変ドメイン中の31〜35(H1)、50〜65(H2)および95〜102(H3))からのアミノ酸残基を指す。単一のCDRでさえ、すべてのCDRを含有する全抗原結合部位よりも低い親和性であるが、抗原を認識し、結合し得る。
【0051】
超可変「ループ」からの残基の代替的な定義は、軽鎖可変ドメイン中の残基26〜32(L1)、50〜52(L2)および91〜96(L3)、ならびに重鎖可変ドメイン中の26〜32(H1)、53〜55(H2)および96〜101(H3)として、Chothia et al.,J.Mol.Biol,196:901−917(1987)によって記載される。
【0052】
「フレームワーク」またはFR残基は、超可変領域残基以外のこれらの可変領域残基である。
【0053】
「抗体フラグメント」は、無傷免疫グロブリンの一部分、好ましくは、無傷抗体の抗原結合または可変領域を含み、抗体フラグメントから形成される多重特異性(二重特異性、三重特異性等)抗体を含む。免疫グロブリンのフラグメントは、組換えDNA技法によって、または無傷抗体の酵素もしくは化学分解によって、産生され得る。
【0054】
抗体フラグメントの限定されない例には、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fv(可変領域)、ドメイン抗体(dAb、VHドメインを含有する)(Ward et al.,Nature 341:544−546,1989)、相補性決定領域(CDR)フラグメント、単鎖抗体(scFv、単一ポリペプチド鎖上のVHおよびVLドメインを含有する)(Bird et al.,Science 242:423−426,1988、およびHuston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883,1988、任意に、ポリペプチドリンカーを含む、および任意に、多特異性、Gruber et al.,J.Immunol.152:5368(1994))、単鎖抗体フラグメント、ダイアボディ(別の鎖の相補的VLおよびVHドメインと組み合わせる単一ポリペプチド鎖上のVHおよびVLドメイン)(EP404,097、WO93/11161、およびHollinger et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993))、トリアボディ(triabodies)、テトラボディ(tetrabodies)、ミニボディ(minibodies)(ペプチドリンカー(ヒンジなし)を介してもしくはIgGヒンジを介してCH3に融合されるscFv)(Olafsen,et al.,Protein Eng Des Sel.2004 Apr;17(4):315−23)、線状抗体(タンデムFdセグメント(VH−CH1−VH −CH1)(Zapata et al.,Protein Eng.,8(10):1057−1062(1995))、キレート組換え抗体(crAb、同一の抗原上の2つの隣接エピトープに結合し得る)(Neri et al.,J Mol Biol.246:367−73,1995)、バイボディ(bibodies)(二重特異性Fab−scFv)またはトリボディ(tribodies)(三重特異性Fab−(scFv)(2))(Schoonjans et al.,J Immunol.165:7050−57,2000、Willems et al., J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci.786:161−76,2003)、細胞内抗体(Biocca,et al., EMBO J. 9:101−108, 1990、Colby et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.101:17616−21,2004)(細胞内に抗体を保持するまたは誘導する細胞シグナル配列も含み得る(Mhashilkar et al,EMBO J 14:1542−51,1995;Wheeler et al.,FASEB J.17:1733−5,2003))、トランスボディ(transbodies)(scFvに融合するタンパク質形質導入ドメイン(PTD)を含有する細胞透過性抗体)(Heng et al.,Med Hypotheses.64:1105−8,2005)、ナノボディ(約15kDaの重鎖可変ドメイン)(Cortez−Retamozo et al.,Cancer Research 64:2853−57,2004)、小モジュール免疫薬剤(SMIP)(WO03/041600、米国特許公開第20030133939号および米国特許公開第20030118592号)、抗原結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化(camelized)抗体(ここで、VHは、ヒンジ、CH1、CH2およびCH3ドメインを含有する定常領域と再結合する)(Desmyter et al., J. Biol. Chem. 276:26285−90,2001、Ewert et al.,Biochemistry 41:3628−36,2002、米国特許公開第20050136049号および第20050037421号)、VHH含有抗体、重鎖抗体(HCAbs、構造H2L2を有する2つの重鎖のホモ二量体)、またはこれらの変異体もしくは誘導体、ならびに抗体が、所望の生物学的活性を保持する限り、CDR配列等のポリペプチドに結合する特異性抗原を与えるのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部分を含有するポリペプチドが含まれる。
【0055】
抗体に関連して使用される、「変異体(variant)」という用語は、変異体が、所望の結合親和性または生物学的活性を保持するという条件で、可変領域および可変領域に相当する部分内の少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失、もしくは挿入を含有する抗体のポリペプチド配列を指す。加えて、本明細書に記載の抗体は、半減期もしくはクリアランス、ADCCおよび/もしくはCDC活性を含む、抗体のエフェクター機能を修飾するために、定常領域内にアミノ酸修飾を有し得る。かかる修飾は、例えば、癌を治療する際に、薬物動態を強化するか、または抗体の有効性を強化することができる。Shields et al.,J.Biol.Chem.,276(9):6591−6604(2001)を参照されたく、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。IgG1の場合、定常領域、特に、ヒンジまたはCH2領域に対する修飾により、ADCCおよび/またはCDC活性を含む、エフェクター機能を増加または低下させ得る。他の実施形態において、IgG2定常領域を修飾して、抗体−抗原凝集体形成を減少させる。IgG4の場合、定常領域、特に、ヒンジ領域に対する修飾により、半抗体の形成を減少させ得る。
【0056】
本明細書に記載の抗体またはポリペプチドに関連して使用される、「修飾(modification)」という用語は、1つ以上のアミノ酸変化(置換、挿入または欠失を含む)、フェロポーチン結合活性を妨害しない化学修飾、治療用または診療用剤に活用することによる共有結合修飾、標識化(例えば、放射性核種または種々の酵素での)、ペグ化等の共有ポリマー結合(ポリエチレングリコールによる誘導体化)、および非天然アミノ酸の化学合成による挿入または置換を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本発明の修飾ポリペプチド(抗体を含む)は、本発明の非修飾分子の結合特性を保持するであろう。
【0057】
本発明抗体またはポリペプチドに関連して使用される、「誘導体(derivative)」という用語は、治療用または診療用剤に活用することによる共有結合修飾、標識化(例えば、放射性核種または種々の酵素での)、ペグ化等の共有ポリマー結合(ポリエチレングリコールによる誘導体化)、および非天然アミノ酸の化学合成による挿入または置換により共有結合的に修飾される抗体またはポリペプチドを指す。いくつかの実施形態において、本発明の誘導体は、本発明の非修飾分子の結合特性を保持するであろう。
【0058】
二重特異性または他の多重特異性抗体を作製するための方法は、当該技術分野において既知であり、これらには、化学的架橋、ロイシンジッパーの使用(Kostelny et al.,J.Immunol.148:1547−1553,1992)、ダイアボディ技術(Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−48,1993)、scFv二量体(Gruber et al.,J.Immunol.152:5368,1994)、線状抗体(Zapata et al.,Protein Eng.8:1057−62,1995)、およびキレート組換え抗体(Neri et al.,J Mol Biol.246:367−73,1995)が含まれる。
【0059】
したがって、抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域の1つ、2つ、および/または3つのCDRを含む、種々の組成物は、当該技術分野において既知の技法によって生成され得る。
【0060】
A.抗体の組換え産生
本明細書に記載のモノクローナル抗体をコードし、任意に、核酸を含む、宿主細胞、ベクターおよび宿主細胞によって認識される配列を制御するように作用可能に連結される、単離された核酸、ならびに抗体の産生のための組換え技法も提供し、これには、核酸を発現するように宿主細胞を培養することと、任意に、宿主細胞培養または培地から抗体を回収することを含み得る。
【0061】
対象の免疫グロブリンからの適切なアミノ酸配列は、直接タンパク質配列によって決定され得、好適なコード化ヌクレオチド配列は、汎用コドン表に従って設計することができる。代替として、モノクローナル抗体をコードするゲノムまたはcDNAは、従来の手順を用いて(例えば、モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)、かかる抗体を産生する細胞から単離され、配列決定され得る。
【0062】
クローニングは、標準技法を用いて実行される(例えば、Sambrook et al.(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Guide,3rd Ed.,Cold Spring Harbor Pressを参照されたく、これは、参照することにより本明細書に組み込まれる)。例えば、cDNAライブラリーは、polyA+mRNA、好ましくは、膜結合mRNA、およびヒト免疫グロブリンポリペプチド遺伝子配列に特異的なプローブを用いてスクリーニングされたライブラリーの逆転写によって構成され得る。しかしながら、一実施形態において、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、対象の免疫グロブリン遺伝子セグメント(例えば、軽鎖または重鎖可変セグメント)をコードするcDNA(または全長cDNAの一部)を増幅する。増幅された配列は、任意の好適なベクター、例えば、発現ベクター、ミニ遺伝子ベクター、またはファージディスプレイベクターに容易にクローン化することができる。対象の免疫グロブリンポリペプチドのある部分の配列を決定することが可能である限り、使用される特定の方法が重要でないことが理解されよう。
【0063】
抗体核酸のための1つの供給源は、対象の抗原の免疫を持つ動物からB細胞を得て、このB細胞を不死化細胞に融合することにより生成されるハイブリドーマである。代替として、核酸は、免疫動物のB細胞(または全膵臓)から単離することができる。抗体をコードする核酸のさらに別の供給源は、例えば、ファージディスプレイを通して、生成されるかかる核酸のライブラリーである。対象のペプチド、例えば、所望の結合特性を有する可変領域ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、パニング等の標準技法により同定することができる。
【0064】
免疫グロブリンポリペプチドの全可変領域をコードする配列が、決定され得るが、時には、可変領域の一部のみ、例えば、CDRコード部分を配列決定することで十分である。配列決定は、標準技法を用いて実行される(例えば、Sambrook et al.(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Guide, 3rd Ed., Cold Spring Harbor Press、およびSanger,F.et al.(1977)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5463−5467を参照されたく、これは、参照することにより本明細書に組み込まれる)。ヒト免疫グロブリン遺伝子およびcDNAの公開された配列とクローン化した核酸の配列を比較することによって、当業者は、配列決定された領域に応じて、(i)ハイブリドーマ免疫グロブリンポリペプチド(重鎖のアイソタイプを含む)の生殖系セグメント使用法および(ii)N領域付加および体細胞変異のプロセスから生じる配列を含む、重鎖および軽鎖の可変領域の配列を容易に決定することができるであろう。免疫グロブリン遺伝子配列情報の1つの供給源は、National Center for Biotechnology Information、National Library of Medicine、National Institutes of Health、Bethesda、Mdである。
【0065】
本明細書で使用する、「単離された」核酸分子または「単離された」核酸配列は、(1)核酸の自然源に通常関連する少なくとも1つの汚染された核酸分子から同定および分離されるか、あるいは(2)対象の核酸の配列を決定することができるように、クローン化、増幅、標識化、または他の方法で、バックグラウンド核酸と区別されるかのいずれかである、核酸分子である。単離された核酸分子は、自然に見出される形態または設定以外のものである。しかしながら、単離された核酸分子には、例えば、核酸分子が、自然細胞のものとは異なる染色体位置にある、抗体を通常発現する細胞内に含有する核酸分子が含まれる。
【0066】
単離されると、DNAは、発現制御配列に作用可能に連結され得るか、または発現ベクターに設置され得、その後、それは、そうでなければ、免疫グロブリンタンパク質を産生しないであろう宿主細胞内に形質転換され、組換え宿主細胞内のモノクローナル抗体の合成を誘導する。抗体の組換え産生は、当該技術分野において公知である。
【0067】
発現制御配列とは、特定の宿主生物における作用可能に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列を指す。原核生物に好適である制御配列は、例えば、プロモータ、任意に、オペレータ配列、およびリボソーム結合部位を含む。真核細胞は、プロモータ、ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサーを利用することが知られている。
【0068】
核酸は、別の核酸配列と機能的な関係に置かれるとき、作用可能に連結される。例えば、プレ配列または分泌リーダーについてのDNAが、それがポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合には、そのポリペプチドについてのDNAに作用可能に連結されており、プロモータまたはエンハンサーがコード配列の転写に影響を及ぼす場合には、その配列に作用可能に連結されており、またはリボソーム結合部位が、それが翻訳を助長するように配置されている場合には、コード配列に作用可能に連結されている。一般に、作用可能に連結されるとは、結合されるDNA配列が隣接しており、分泌リーダーの場合には隣接していると共に読み込み相(reading phase)にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは、隣接している必要がない。連結は、従来の制限酵素認識部位でのライゲーションによって達成される。そうした部位が存在しない場合には、従来の施行に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーを使用する。
【0069】
多くのベクターが、当該技術分野において知られている。ベクター成分は、以下のうちの1つ以上を含み得る。シグナル配列(例えば、抗体の分泌を誘導し得る)、複製起点、1つ以上の選択的マーカー遺伝子(例えば、抗生物質または他の薬物耐性を付与する、補体栄養要求性欠損、または培地からは利用できない重要な栄養素を供給する)、エンヘンサー要素、プロモータ、および転写終結配列。これらのすべては、当該技術分野において公知である。
【0070】
細胞、細胞株、および細胞培養物は、しばしば、交換可能に使用され、本明細書のすべてのかかる意味は、後代を含む。形質転換体および形質転換細胞には、転写の数に関係なくそれらに由来する一次対象細胞および培養物が含まれる。また、故意または偶発的な突然変異により、すべての後代においてDNAの内容が正確に同一であるというわけではないことも理解されよう。当初の形質転換細胞でスクリーニングされたような、同じ機能または生物学的活性を有する変異体後代が含まれる。
【0071】
例示的な宿主細胞には、原核生物、酵母菌、または高等真核細胞(即ち、多細胞生物)が含まれる。原核生物の宿主細胞には、グラム陰性またはグラム陽性生物等の真正細菌、例えば、エシェリキア属(例えば、大腸菌)、エンテロバクター属、エルビニア菌属、クレブシエラ属、プロテウス属、サルモネラ菌(ネズミチフス菌)、セラチア族(例えば、セラチア・マルセッセンス)、およびシゲラ族、ならびにバチルススプティーリス(B.subtilis)およびバチルスリケニホルミス(B.licheniformis)等のバチルス、シュードモナス菌、ならびにストレプトミセスのような腸内細菌科が挙げられる。糸状菌または酵母菌等の真核生物は、組換えポリペプチドまたは抗体の好適なクローニングまたは発現宿主である。サッカロマイセス・セレヴィシエ、すなわち一般のパン酵母が、下等真核宿主微生物の中で最も一般的に使用される。しかしながら、ピチア属(例えば、ピチアパストリス(P.pastoris))、シゾサッカロミセス・ポンベ;クルイベロマイセス(Kluyveromyces)、ヤロウイア属;カンジダ属;トリコデルマリ−ゼイトリコデルマ・リ−ゼイ(Trichoderma reesei);ニューロスポラクラッサ(Neurospora crassa);シュワニオマイセス・オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)等のシュワニオマイセス(Schwanniomyces);および、糸状真菌(例えば、ニューロスポラ、ペニシリウム、トリポタラジウム(Tolypocladium))、ならびにアスペルギルス宿主(アスペルギルス・ニダランス(A.nidulans)およびアスペルギルス・ニガー(A.niger))のような、多くの他の属、種、および型が、一般的に入手可能であり、本明細書に有用である。
【0072】
グリコシル化ポリペプチドまたは抗体の発現のための宿主細胞は、多細胞生物に由来し得る。無脊椎動物細胞の例には、植物および昆虫細胞が含まれる。スポドプレラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(毛虫)、ネッタイシマカAedes aegypti(蚊)、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)(蚊)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)(ミバエ)、およびカイコ(Bombyx mori)のような宿主からの多数のバクテリアウイルス株および変異体および対応する許容昆虫宿主細胞を特定されている。例えば、オートグラファ・カリホルニカ(Autographa californica)NPVのL−1変異体およびカイコ(Bombyx mori)NPVのBm−5変異体のかかる細胞のトランスフェクションに関する種々のウイルス株が、公的に入手可能である。
【0073】
脊椎動物宿主細胞もまた、好適な宿主であり、かかる細胞からのポリペプチドまたは抗体の組換え産生は、常法となっている。有用な哺乳動物宿主細胞系の例は、CHOK1細胞(ATCC CCL61)、DXB−11、DG−44を含むチャイニーズハムスター卵巣細胞、およびチャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO,Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980));SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1系(COS−7,ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓系(293または懸濁培養での増殖用にサブクローンした293細胞、[Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977)];ベビーハムスター腎臓細胞(BHK,ATCC CCL 10);マウスセルトーリ細胞(TM4,Mather,Biol.Reprod.23:243−251(1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76,ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA,ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK,ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A,ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138,ATCC CCL 75);ヒトヘパトーマ細胞(Hep G2,HB 8065);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562,ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y Acad.Sci.383:44−68(1982));MRC 5細胞もしくはFS4細胞;または哺乳動物骨髄腫細胞である。
【0074】
宿主細胞を、抗体産生のために上記の核酸もしくはベクターを形質転換または形質移入し、プロモータを導入するか、形質転換細胞を選択するか、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために必要に応じて修飾された従来の培養液で培養する。加えて、選択マーカーによって分離された転写単位の複数の転写を有する新規ベクターおよび形質移入された細胞株は、抗体の発現に特に有用である。
【0075】
本明細書に記載の抗体を産生するために使用される宿主細胞は、種々の培地中で培養され得る。Ham’s F10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、(Sigma)、RPMI−1640(Sigma)、およびダルベッコ改変イーグル培地((DMEM)、Sigma)等の商業的に入手可能な培地が、宿主細胞を培養するのに好適である。加えて、Ham et al.,Meth.Enz.58:44(1979),Barnes et al.,Anal.Biochem.102:255(1980)、米国特許第4,767,704号、第4,657,866号、第4,927,762号、第4,560,655号、もしくは第5,122,469号、WO90103430、WO87/00195、または米国再発行特許第30,985号に記載される培地のいずれも、宿主細胞の培地として使用され得る。これら培地のいずれをも、ホルモン類および/または他の成長因子(インスリン、トランスフェリン、または上皮増殖因子等)、塩類(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩等)、緩衝液(HEPES等)、ヌクレオシド類(アデノシンおよびチミジン等)、抗生物質(ゲンタマイシン(Gentamycin)(商標)薬物等)、微量元素(ミクロモル範囲の最終濃度で通常存在する有機化合物として定義された)、およびグルコースまたは等価なエネルギー源で必要に応じて補ってもよい。他の必要ないずれの補助物もまた、当業者が知っているであろう適当な濃度で含ませ得る。温度、pH等の培養条件は、発現のために選択される宿主細胞に関して以前に用いたものであり、当業者には明らかであろう。
【0076】
宿主細胞を培養すると、抗体が、ペリプラズムスペースにおいて、細胞内に産生されるか、培地に直接分泌され得る。抗体が細胞内に産生される場合、第1のステップとして、粒状破砕物、即ち、宿主細胞あるいは溶解フラグメントのいずれかを、例えば、遠心分離または超音波処理により除去する。
【0077】
親和性リガンドとして対象の抗原もしくはタンパク質Aもしくはタンパク質を用いて、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ、カチオンもしくはアニオン交換クロマトグラフィ、または好ましくは親和性クロマトグラフィを用いて、抗体を精製することができる。タンパク質Aを用いて、ヒトγ1、γ2、もしくはγ4重鎖に基づく抗体を精製することができる(Lindmark et al.,J.Immunol.Meth.62:1−13(1983))。タンパク質Gは、すべてのマウスアイソタイプ用およびヒトγ3用に推奨される(Guss et al.,EMBO J.5:15671575(1986))。親和性リガンドが付着するマトリクスは、最も頻繁にはアガロースであるが、他のマトリクスも利用可能である。調整穴あきガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンのように機械的に安定なマトリクスは、アガロースを用いて達成し得るよりも速い流速と短い処理時間が可能になる。抗体がCH3ドメインを含む場合は、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker,Phillipsburg,N.J.)が精製に有用である。エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカによるクロマトグラフィ、クロマト分画、SDS−PAGE、および硫酸アンモニウム沈殿のような他の技法も、回収しようとする抗体によっては利用できる。
【0078】
B.キメラ化およびヒト化抗体
キメラ化またはヒト化抗体は、親齧歯類モノクローナル抗体よりもヒトにおいて免疫原性が少ないため、それらは、過敏症の危険性がはるかに少ないヒトの治療のために使用することができる。したがって、これらの抗体は、ヒトへの生体内投与に関与する治療への適用に企図される。
【0079】
例えば、単独あるいは複合体として、ヒトにおいて生体内投与を反復されるマウス抗体は、受容者において免疫応答、いわゆる、HAMA(ヒト抗マウス抗体)応答を生じる。HAMA応答は、反復投与が必要とされる場合、医薬品の有効性を制限し得る。抗体の免疫原性は、ポリエチレングリコール等の親水性ポリマーを用いた抗体の化学修飾によって、または抗体結合構造をよりヒト様にするための遺伝子工学の方法を用いることによって、低下させ得る。
【0080】
本明細書で使用する「キメラ化抗体」という句は、一般的には、異なる種が起源である、2つの異なる抗体に由来する配列を含有する抗体を指す。最も一般的には、キメラ化抗体は、ヒト定常Igドメインに融合される齧歯類モノクローナル抗体の可変Igドメインを含む。かかる抗体は、当該技術分野において既知の標準手順を用いて生成することができる(Morrison,S.L.,et al.(1984)Chimeric Human Antibody Molecules、Mouse Antigen Binding Domains with Human Constant Region Domains,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81,6841−6855、およびBoulianne,G.L.,et al,Nature 312,643−646(1984)を参照のこと)。一部のキメラ化モノクローナル抗体は、ヒトにおいてより低い免疫原性を示すことが立証されているが、歯類可変Igドメインは、依然として、大幅なヒト抗−齧歯類反応を導き得る。
【0081】
「ヒト化抗体」という句は、非ヒト抗体、一般的には、齧歯類モノクローナル抗体に由来する抗体を指す。代替として、ヒト化抗体は、キメラ化抗体に由来し得る。
【0082】
ヒト化抗体は、例えば、(1)非ヒト相補性決定領域(CDR)をヒトフレームワーク及び定常領域に移植すること(当該技術分野で「ヒト化する」と称される工程)、または代替的に、(2)非ヒト可変ドメイン全体を移植するが、表面残基の置換によってそれらをヒト様表面で「偽装」すること(当該技術分野で「ベニアリング」と称される工程)を含む、種々の方法によって達成され得る。これらの方法は、例えば、Jones et al.,Nature 321:522 525(1986)、Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.,81:6851 6855(1984)、Morrison and Oi,Adv.Immunol.,44:65−92(1988)、Verhoeyer et al.,Science 239:1534−1536(1988)、Padlan,Molec.Immun.28:489−498(1991)、Padlan,Molec.Immunol.31(3):169 217(1994)、およびKettleborough,C.A.et al.,Protein Eng.4(7):773−83(1991)に開示され、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0083】
CDR移植は、ヒト可変Igドメインの適切なフレームワーク領域にマウス重鎖および軽鎖可変Igドメインから6つのCDRのうちの1つ以上を導入するステップを含む。この技法(Riechmann,L.,et al.,Nature 332,323(1988))は、抗原との一次的接触であるCDRループを支えるための足場として、保存されたフレームワーク領域(FR1〜FR4)を利用する。CDR移植の重大な難点は、しかしながら、フレームワーク領域のアミノ酸が抗原結合に寄与し得ること、およびCDRループのアミノ酸が2つの可変Igドメインの結合に影響を及ぼし得るということが理由で、元のマウス抗体よりも実質的に低い結合親和性を有するヒト化抗体を生じ得ることである。ヒト化モノクローナル抗体の親和性を維持するために、CDR移植技法は、元のマウス抗体のフレームワーク領域に最も密接に類似するヒトフレームワーク領域を選択することによって、および抗原結合部位のコンピュータモデリングの支援による、フレームワークまたはCDR内の単一アミノ酸部位指定突然変異誘発によって、改善できる(例えば、Co,M.S.,et al.(1994),J.Immunol.152,2968−2976)。
【0084】
抗体をヒト化する1つの方法は、ヒト重鎖および軽鎖配列に対して非ヒト重鎖および軽鎖配列を整列させ、このようなアラインメントに基づいて非ヒトフレームワークを選択し、ヒトフレームワークで置き換え、ヒト化配列の立体配座を予測するために分子モデリングし、親抗体の立体配座と比較することを含む。この工程に続いて、ヒト化配列の予測された立体配座が、親非ヒト抗体の非ヒトCDRの立体配座に密接に近づくまで、CDRの構造を乱すCDR領域内の残基の復帰変異を反復する。かかるヒト化抗体は、アシュウェル受容体(Ashwell receptor)を介して取り込みおよびクリアランスを助長するようにさらに誘導体化され得る(例えば、米国特許第 5,530,101号および第5,585,089号を参照のこと)。
【0085】
合理的設計によるマウスモノクローナル抗体の多くのヒト化が、報告されている(例えば、2002年7月11日に公開された第20020091240号、WO92/11018および米国特許第5,693,762号、米国特許第5,766,866号を参照のこと)。
【0086】
C.ヒト改変(Human Engineered(商標))抗体
「ヒト改変(Human Engineered(商標))抗体」という句は、非ヒト抗体、一般的に、齧歯類モノクローナル抗体またはあるいは、キメラ化抗体に由来する抗体を指す。抗体可変ドメインのヒト改変(Human Engineered(商標))は、抗体分子の結合活性を維持しながら、免疫原性を低下させる方法として、Studnickaによって記載されている(例えば、Studnicka et al.米国特許第5,766,886号、Studnicka et al.Protein Engineering 7:805−814,1994を参照のこと)。該方法によると、各可変領域アミノ酸は、置換の危険度が割り当てられる。アミノ酸置換は、3つの危険度カテゴリーの1つによって識別される:(1)低危険度変化は、免疫原性を低下させる最大の潜在的可能性を有し、抗原結合を妨げる可能性が最も低いものである、(2)中危険度変化は、免疫原性をさらに低下させるが、抗原結合またはタンパク質の折り畳みに影響を及ぼす可能性がより大きいものである、(3)高危険度残基は、抗体構造に結合するまたは抗体構造を維持するために重要であり、抗原結合またはタンパク質の折り畳みが影響を受ける危険度が最も高いものである。プロリンの三次元構造上の役割のゆえに、プロリンにおける修飾は、その位置が一般的には低危険度位置である場合でも、一般に少なくとも中危険度変化とみなされる。
【0087】
齧歯類抗体の軽鎖および重鎖の可変領域は、抗原結合またはタンパク質の折り畳みに有害な作用を及ぼす可能性が低いが、ヒト環境において免疫原性を低下させる可能性が高いと決定された位置で、ヒトアミノ酸を置換するために以下のようにヒト改変(Human Engineered(商標))され得る。個別のVHもしくはVL配列、またはヒトコンセンサスVHもしくはVL配列、または個別の、もしくはコンセンサスヒト生殖細胞系配列を含む、いかなるヒト可変領域も使用できるが、一般に、齧歯類配列に対して最も高い同一性もしくは相同を有するヒト配列を使用して、多数の置換を最小化する。どのような数の低危険度位置、またはすべての低危険度位置のアミノ酸残基も変化させることができる。例えば、整列したネズミとヒトアミノ酸残基が異なる各々の低危険度位置で、齧歯類残基をヒト残基で置換するアミノ酸修飾を導入する。加えて、どのような数の、またはすべての中危険度位置のアミノ酸残基も変化させることができる。例示的な実施形態において、すべての低および中危険度位置は、齧歯類配列からヒト配列に変化する。
【0088】
修飾重鎖および/または軽鎖可変領域を含む合成遺伝子を構築し、ヒトγ重鎖および/またはκ軽鎖定常領域に連結する。任意のクラスまたはサブクラスの任意のヒト重鎖および軽鎖は、ヒト改変(Human Engineered(商標))抗体可変領域と組み合わせて使用し得る。
【0089】
D.ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むように改変されたトランスジェニック動物からの抗体
フェロポーチンに対する抗体はまた、内因性免疫グロブリンを産生せず、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むように改変されたトランスジェニック動物を用いて、産生することもできる。例えば、WO98/24893は、ヒトIg遺伝子座を有するトランスジェニック動物を開示しており、該動物は、内因性重鎖および軽鎖遺伝子座の不活性のために機能性内因性免疫グロブリンを産生しない。WO91/741もまた、免疫原に対する免疫応答を開始させることができるトランスジェニック非霊長類哺乳動物宿主を開示しており、該抗体は、霊長類定常および/または可変領域を有し、内因性免疫グロブリンをコードする遺伝子座は置換または不活性化されている。WO96/30498は、修飾抗体分子を形成するために定常または可変領域の全部または一部を置換することのような、哺乳動物における免疫グロブリン遺伝子座を修飾するためのCre/Lox系の使用を開示する。WO94/02602は、不活性化内因性Ig遺伝子座および機能的ヒトIg遺伝子を有する非ヒト哺乳動物宿主を開示する。米国特許第5,939,598号は、マウスが内因性重鎖を欠き、1つ以上の異種定常領域を含む外来性免疫グロブリン遺伝子座を発現するトランスジェニックマウスを作製する方法を開示する。
【0090】
上述したトランスジェニック動物を用いて、選択抗原分子に対する免疫応答を産生することができ、抗体産生細胞を動物から取り出して、ヒト由来モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを産生するために使用することができる。免疫プロトコール、アジュバント等は当該技術分野において知られており、例えば、WO96/33735に記載されるように、トランスジェニックマウスの免疫において使用される。モノクローナル抗体、対応するタンパク質の生物学的活性または生理的作用を阻害するまたは中和する能力に関して試験することができる。
【0091】
Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551(1993)、Jakobovits et al.,Nature,362:255−258(1993)、Bruggermann et al.,Year in Immuno.,7:33(1993)、および米国特許第5,591,669号、米国特許第5,589,369号、米国特許第5,545,807号、ならびに米国特許出願第20020199213号も参照のこと。米国特許出願第20030092125号は、所望のエピトープに対する動物の免疫応答にバイアスをかけるための方法を記載している。ヒト抗体はまた、体外活性化B細胞によって生成され得る(米国特許第5,567,610号および第5,229,275号を参照のこと)。
【0092】
E.ファージディスプレイによって産生される抗体
組換えヒト抗体遺伝子のレパートリーを作製するための技術の開発、および糸状バクテリオファージの表面上でのコードされる抗体フラグメントの提示は、ヒト由来抗体を生成するための別の手段を提供している。ファージディスプレイは、例えば、Dower et al.、WO91/17271、McCafferty et al.、WO92/01047、およびCaton and Koprowski,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:6450−6454(1990)に記載され、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ファージ技術によって産生される抗体は、通常、細菌において抗原結合フラグメント、例えば、FvまたはFabフラグメントとして産生され、したがって、エフェクター機能を欠く。エフェクター機能は、2つの戦略のいずれかによって導入することができる。すなわち、フラグメントを、哺乳動物細胞における発現のために完全抗体に改変するか、またはエフェクター機能誘発することが可能な第2の結合部位を備えた二重特異性抗体フラグメントに改変することができる。
【0093】
一般的には、抗体のFdフラグメント(VH−CH1)および軽鎖(VL−CL)を、PCRによって別々にクローニングし、コンビナトリアルファージディスプレイライブラリーにおいて無作為に組換えて、次にそれらを特定抗原への結合に関して選択することができる。抗体フラグメントは、ファージ表面上で発現され、抗原結合によるFvまたはFab(したがって、抗体フラグメントをコードするDNAを含むファージ)の選択は、パニングと称される工程である、数回の抗原結合と再増幅によって達成される。抗原に特異的な抗体フラグメントを富化し、最終的に単離する。
【0094】
ファージディスプレイはまた、「ガイド選択(guided selection)」と呼ばれる齧歯類モノクローナル抗体のヒト化のためのアプローチにも使用することができる(Jespers,L.S.,et al.,Bio/Technology 12,899−903(1994)を参照のこと)。このために、マウスモノクローナル抗体のFdフラグメントを、ヒト軽鎖ライブラリーと組み合わせて提示することができ、次いで、得られたハイブリッドFabライブラリーを、抗原で選択してもよい。マウスFdフラグメントは、それによって、選択を導く(ガイドする)ための鋳型を提供する。その後、選択したヒト軽鎖を、ヒトFdフラグメントライブラリーと組み合わせる。得られたライブラリーの選択は、完全なヒトFabを産出する。
【0095】
ファージディスプレイライブラリーからヒト抗体を誘導するための種々の手順が記述されている(例えば、Hoogenboom et al.,J.Mol.Biol.,227:381(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol,222:581−597(1991)、米国特許第5,565,332号および第5,573,905号、Clackson,T.,and Wells,J.A.,TIBTECH 12,173−184(1994)を参照のこと)。特に、ファージディスプレイライブラリーに由来する抗体の体外選択と進化は、強力なツールとなっている(Burton,D.R., and Barbas III,C.F.,Adv.Immunol.57,191−280(1994)、およびWinter,G.,et al.,Annu.Rev.Immunol.12,433−455(1994)、米国特許出願第20020004215号およびWO92/01047、2003年10月9日に公開された米国特許出願第20030190317号、ならびに米国特許第6,054,287号、米国特許第5,877,29号を参照のこと)。
【0096】
Watkins,“Screening of Phage−Expressed Antibody Libraries by Capture Lift,” Methods in Molecular Biology,Antibody Phage Display:Methods and Protocols 178:187−193、および2003年3月6日に公開された米国特許出願公開第20030044772号は、固体支持体への候補結合分子の固定化を含む方法である捕捉リフト(capture lift)によって、ファージ発現された抗体ライブラリーまたは他の結合分子をスクリーニングするための方法を記載する。
【0097】
F.抗体フラグメント
上記のように、抗体フラグメントは、無傷全長抗体の一部分、好ましくは、無傷抗体の抗原結合もしくは可変領域を含み、抗体フラグメントから形成される線状抗体および多重特異性抗体を含む。抗体フラグメントの限定されない例には、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fv、Fd、ドメイン抗体(dAb)、相補的決定領域(CDR)フラグメント、単鎖抗体(scFv)、単鎖抗体フラグメント、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、線状抗体、キメラ化組換え抗体、トリボディもしくはバイボディ、細胞内抗体、ナノボディ、小モジュール免疫薬剤(SMIP)、抗原結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、VHH含有抗体、またはこれらの変異タンパク質もしくは誘導体、ならびに抗体が、所望の生物学的活性を保持する限り、CDR配列等のポリペプチドに結合する特異性抗原を与えるのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部分を含有するポリペプチドが含まれる。かかる抗原フラグメントは、全抗体の修正によって産生され得るか、または組換えDNA技法またはペプチド合成を用いて新たに合成され得る。
【0098】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を持つ小さい抗体フラグメントを指し、そのフラグメントは、同一のポリペプチド鎖(VH VL)内で軽鎖可変ドメイン(VL)に接続する重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同一の鎖上で2つのドメイン間の対を形成させるには非常に短すぎるリンカーを用いることによって、ドメインは、別の鎖の相補的ドメインと強制的に対形成させ、2つの抗原結合部位を創製する。ダイアボディは、例えば、EP404,097、WO93/11161、およびHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)に更に詳細に記載されている。
【0099】
「単鎖Fv」または「scFv」抗体フラグメントは、抗体のVHおよびVLドメインを含み、ここで、これらのドメインは、単一ポリペプチド鎖に存在し、および任意に、Fvが、抗原結合に対して所望の構造を形成することが可能な、VHおよびVLドメインの間のポリペプチドリンカーを含む(Bird et al.,Science,242:423−426,1988、およびHuston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:5879−5883,1988)。Fdフラグメントは、VHおよびCH1ドメインからなる。
【0100】
追加の抗体フラグメントには、VHドメインからなるドメイン抗体(dAb)フラグメント(Ward et al.,Nature,341:544−546,1989)を含む。
【0101】
「線状抗体」は、一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFdセグメント(VH−CH1−VH−CH1)を含む。線状抗体は、二重特異性または単一特異性であり得る(Zapata et al.Protein Eng.8:1057−62(1995))。
【0102】
ペプチドリンカー(ヒンジなし)を介してまたはIgGヒンジを介してCH3に融合されるscFvからなる「ミニボディ」は、Olafsen,et al.,Protein Eng Des Sel.2004 Apr;17(4):315−23に記載されている。
【0103】
「マキシボディ(maxibody)」という用語は、免疫グロブリンのFc領域に共有結合している二価のscFvを指し、例えば、Fredericks et al,Protein Engineering,Design & Selection,17:95−106(2004)およびPowers et al.,Journal of Immunological Methods,251:123−135(2001)を参照のこと。
【0104】
軽鎖を欠いている機能的重鎖抗体は、ある種の動物(テンジクザメ、アラフラオオセ(wobbegong shark)、ならびにラクダ科(ラクダ、ヒトコブラクダ、アルパカおよびラマ等))において、自然発生する。抗原結合部位は、これらの動物において、単一ドメインである、VHHドメインのみとなる。これらの抗体は、重鎖可変領域のみを用いて、抗原結合部位を形成する、即ち、これらの機能的抗体は、構造H2L2のみを有する重鎖のホモ二量体である(「重鎖抗体」または「HCAbs」と称する)。ラクダ化VHHは、報告によれば、ヒンジ、CH2、およびCH3ドメインを含み、CH1ドメインを欠くIgG2およびIgG3定常領域と再結合する。古典的なVHのみのフラグメントは、可溶性形態で産生することが難しいが、フレームワーク残基をよりVHH様に変化させると、溶解度の改善と特異的結合が得られ得る(例えば、Reichman,et al.,J.Immunol.Methods,1999,231:25−38を参照のこと)。ラクダ化VHHドメインは、高親和性で抗原に結合し(Desmyter et al.,J.Biol.Chem.276:26285−90,2001)、溶液中で高い安定性を有する(Ewert et al.,Biochemistry 41:3628−36,2002)ことが見出されている。ラクダ化重鎖を有する抗体を作製するための方法は、例えば、米国特許公開第20050136049号および第20050037421号に記載されている。代替的な足場は、サメV−NAR足場にさらに厳密に適合するヒト可変様ドメインから作製され得、長い貫通ループ構造のためにフレームワークを提供し得る。
【0105】
重鎖抗体の可変ドメインは、15kDaのみの分子量を有する最小の完全に機能する抗原結合フラグメントであるため、この実体は、ナノボディと称される(Cortez−Retamozo et al.,Cancer Research,64:2853−57,2004)。ナノボディライブラリーは、Conrath et al.,(Antimicrob Agents Chemother 45:2807−12,2001)に記載されているように免疫ヒトコブラクダから作製し得る(Antimicrob Agents Chemother,45:2807−12,2001)。
【0106】
細胞内抗体は、細胞内発現を示し、細胞内タンパク質機能を操作することができる単鎖抗体である(Biocca,et al.,EMBO J.,9:101−108,1990、Colby et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.,101:17616−21,2004)。細胞領域内に抗体構築物を保持する細胞シグナル配列を含む、細胞内抗体は、Mhashilkar et al.(EMBO J 14:1542−51,1995)およびWheeler et al.(FASEB J.17:1733−5.2003)に記載されているように産生され得る。トランスボディは、タンパク質導入ドメイン(PTD)が単鎖可変フラグメント(scFv)と融合している細胞透過性抗体である(Heng et al.,Med Hypotheses.,64:1105−8,2005)。
【0107】
さらに、SMIPまたは標的タンパク質に特異的な結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質である抗体が企図される。これらの構築物は、抗体のエフェクター機能を実行するために必要な免疫グロブリンドメインに融合した抗原結合ドメインを含む単鎖ポリペプチドである。例えば、WO03/041600、米国特許公開第20030133939号および米国特許公開第20030118592号を参照のこと。
【0108】
G.多価抗体
いくつかの実施形態において、多価またはさらに多重特異性(例えば、二重特異性、三重特異性等)モノクローナル抗体を生成することが望ましいとされ得る。かかる抗体は、標的抗原の少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有し得る、または代替として、2つの異なる分子、例えば、標的抗原および細胞表面タンパク質もしくは受容体に結合し得る。例えば、二重特異性抗体は、細胞防御機構を標的発現細胞に集中させるために、標的に結合する腕と、T細胞受容体分子(例えば、CD2またはCD3)等の白血球上の引き金分子、またはFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)およびFcγRIII(CD16)等のIgG(FcγR)についてのFc受容体に結合する別の腕を含み得る。別の例として、二重特異性抗体は、細胞傷害性薬を、標的抗原を発現する細胞に局在化させるために使用し得る。これらの抗体は、標的結合腕と、細胞傷害性薬(例えば、サポリン、抗インターフェロン60、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキサートまたは放射性同位体ハプテン)に結合する腕を有する。多重特異性抗体は、完全長抗体または抗体フラグメントとして調製され得る。
【0109】
さらに、本明細書に開示される抗フェロポーチン抗体はまた、多価形態に折り畳むように構築され得、それらは、結合親和性、特異性および/または血液中の半減期の増加を改善し得る。抗フェロポーチン抗体の多価形態は、当該技術分野において既知の技法によって調製することができる。
【0110】
二重特異性または多重特異性抗体には、架橋された抗体または「ヘテロ複合」抗体が含まれる。例えば、ヘテロ複合体中の抗体の1つをアビジンに結合し、他方をビオチンに結合することができる。ヘテロ複合体は、何らかの好都合な架橋法を用いて作製し得る。好適な架橋剤は、当該技術分野において公知であり、米国特許第4,676,980号の中で数多くの架橋手法と共に開示されている。別の方法は、scFvのC末端でストレプトアビジンをコードする配列を加えることによって、四量体を作製するように設計される。ストレプトアビジンは、4つのサブユニットからなり、scFvストレプトアビジンが折り畳まれた際、4つのサブユニットは、四量体を形成するように会合する(Kipriyanov et al.,Hum Antibodies Hybridomas 6(3):93−101(1995)、これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0111】
二重特異性抗体を作製するための別のアプローチに従うと、1組の抗体分子の間の界面を、改変して、組換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体のパーセンテージを最大化することができる。1つの界面は、抗体定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1の抗体分子の界面からの1つ以上の小さなアミノ酸側鎖をより大きな側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置換する。第2の抗体分子の界面では、大きなアミノ酸側鎖をより小さなアミノ酸側鎖(例えば、アラニンまたはトレオニン)で置換することにより、大きな側鎖と同一または類似の大きさの補償的な「腔」が創製される。これは、ホモ二量体等の他の望ましくない最終産物を上回って、テロ二量体の収率を上昇させるための機構を提供する。1996年9月6日に公開されたWO96/27011を参照のこと。
【0112】
抗体フラグメントからの二重特異性または多重特異性抗体を生成するための技法も、文献に記載されている。例えば、二重特異性または多重特異性抗体は、化学結合を用いて調製することができる。Brennan et al.,Science 229:81(1985)は、F(ab’)
2フラグメントを生成するために無傷抗体をタンパク質分解によって切断する手順を記載している。これらのフラグメントを、近接ジチオールを安定化し、分子間ジスルフィド形成を防ぐためにジチオール錯化剤、亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元する。生成されたFab’フラグメントを、次いで、チオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換する。次いで、Fab’−TNB誘導体の1つを、メルカプトエチルアミンで還元してFab’チオールに再変換し、等モル量の他のFab’−TNB誘導体と混合して二重特異性抗体を形成する。産生された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化のための試薬として使用することができる。Better et al.,Science 240:1041−1043(1988)は、細菌からの機能的抗体フラグメントの分泌を開示する(例えば、Better et al.,Skerra et al.Science 240:1038−1041(1988)を参照のこと)。例えば、Fab’−SHフラグメントを、大腸菌から直接回収することができ、それを化学的に結合して、二重特異性抗体を形成することができる(Carter et al.,Bio/Technology 10:163−167(1992)、Shalaby et al.,J.Exp.Med.175:217−225(1992))。
【0113】
Shalaby et al.,J.Exp.Med.175:217−225(1992)は、完全ヒト化二重特異性抗体F(ab’)
2分子の産生を記載している。各々のFab’フラグメントを、大腸菌から別々に分泌させ、体外で指向性化学結合に供して、二重特異性抗体を形成した。そのようにして形成された二重特異性抗体は、HER2受容体を過剰発現する細胞および正常ヒトT細胞に結合することができ、ならびにヒト乳癌標的に対するヒト細胞傷害性リンパ球の溶解活性を誘起することができた。
【0114】
組換え細胞培養物から直接二重特異性または多重特異性抗体フラグメントを作製し、単離するための種々の技法も記載されている。例えば、GCN4等のロイシンジッパーを用いて二重特異性抗体が産生されている(一般に、Kostelny et al.,J.Immunol.148(5):1547−1553,1992を参照のこと)。FosおよびJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを、遺伝子融合によって2つの異なる抗体のFab’部分に連結した。抗体ホモ二量体を、ヒンジ領域で還元して単量体を形成し、その後、再酸化して抗体へテロ二量体を形成した。この方法はまた、抗体ホモ二量体の産生のためにも利用することができる。
【0115】
上記のダイアボディは、二重特異性抗体の一例である。例えば、Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)を参照のこと。二価ダイアボディは、ジスルフィド連結によって安定化され得る。
【0116】
安定な単一特異性または二重特異性Fv四量体はまた、(scFv2)
2配置で、またはビス−テトラボディとして、非共有結合性会合によって生成され得る。代替として、2つの異なるscFvを、縦列に接合して、ビス−scFvを形成することができる。
【0117】
単鎖Fv(sFv)二量体の使用によって二重特異性抗体フラグメントを作製するための別の戦略も報告されている。Gruber et al.,J.Immunol.152:5368(1994)を参照のこと。1つのアプローチは、リンカーまたはジスルフィド結合で2つのscFv抗体を連結させている(Mallender and Voss,J.Biol.Chem.269:199−2061994、WO94/13806および米国特許第5,989,830号、これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0118】
代替として、二重特異性抗体は、Zapata et al.Protein Eng.8(10):1057−1062(1995)に記載されるように生成される、「線状抗体」であり得る。簡潔に述べると、これらの抗体は、一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFdセグメント(VH−CH1−VH−CH1)を含む。線状抗体は、二重特異性または単一特異性であり得る。
【0119】
2つ以上の価数を有する抗体はまた、企図される。例えば、三重特異性抗体を調製することができる(Tutt et al.,J.Immunol.147:60(1991))。
【0120】
「キレート組換え抗体」は、標的抗原の近接および非重複エピトープを認識する二重特異性抗体であり、両方のエピトープに同時に結合するのに十分なだけ柔軟である(Neri et al.,J Mol Biol.246:367−73,1995)。
【0121】
二重特異性Fab−scFv(「バイボディ」)および三重特異性Fab−(scFv)(2)(「トリボディ」)の産生は、Schoonjansら(J Immunol.,165:7050−57,2000)およびWillemsら(J.Chromatogr.B.Analyt.Technol.Biomed.Life Sci.,786:161−76,2003)に記載されている。バイボディまたはトリボディに関しては、scFv分子をVL−CL(L)およびVH−CH1(Fd)鎖の片方または両方に融合するが、例えば、バイボディにおいては、1つのscFvをFabのC末端に融合する一方、トリボディを産生するためには、2つのscFvをFabのC末端に融合する。
【0122】
さらに別の方法において、二量体、三量体、および四量体は、遊離システインが、親タンパク質に導入された後、産生される。様々な数(2〜4)のマレイミド基を有するペプチド系架橋を使用して、該当するタンパク質を遊離システインに架橋させた(Cochran et al.,Immunity 12(3):241−50(2000)、これらの開示は、その全体が本明細書に組み込まれる)。
【0123】
II.特異的結合剤
他のフェロポーチン特異的結合剤は、例えば、抗体からのCDRに基づいて、またはヒトフェロポーチンについて所望の結合特性を示すペプチドもしくは化合物のために、種々のペプチドもしくは有機化学化合物のライブラリーをスクリーニングすることによって、調製することができる。フェロポーチン特異的結合剤には、ヒト抗体31A5(配列番号5〜10)、ヒト抗体37A2(配列番号29〜34)、ヒト抗体37B9(配列番号39〜44)、ヒト抗体37C8(配列番号49〜54)、ヒト抗体37G8(配列番号59〜64)、ヒト抗体38A4(配列番号69〜74)、ヒト抗体38C8(配列番号79〜84)、ヒト抗体38D2(配列番号89〜94)、ヒト抗体38E3(配列番号99〜104)、またはヒト抗体38G6(配列番号109〜114)のうちの1つ以上のCDRに、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上同一である、ペプチド含有アミノ酸配列が含まれる。
【0124】
また、フェロポーチン特異性結合剤には、ペプチボディも含まれる。「ペプチボディ(peptibody)」という用語は、少なくとも1つのペプチドに付着された抗体Fcドメインを含む分子を指す。ペプチボディの産生は、2000年5月4日に公開されたPCT公開WO00/24782に概説されている。これらのペプチドのいずれも、リンカーによるか、またはリンカーによらずに、縦列に(即ち、連続的に)連結され得る。システイニル残基を含有するペプチドは、別のCys含有ペプチドと架橋され得、これらのいずれか、またはその両方は、ビヒクルに連結され得る。1つ以上のCys残基を有するいかなるペプチドも、ペプチド内ジスルフィド結合も形成し得る。これらのペプチドのいずれも、誘導体化され得る、例えば、カルボキシル末端は、アミノ基でキャップされ得るか、システインは、アミノ酸残基以外の部分によって、キャップされ得るか、またはアミノ酸残基は、アミノ酸残基以外の部分によって、置換され得る(例えば、Bhatnagar et al.,J.Med.Chem.39:3814−9(1996)、およびCuthbertson et al.,J.Med.Chem.40:2876−82(1997)を参照されたく、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。抗体のための親和性成熟に類似する手法でペプチド配列を、最適化し得る、またはそうでなければ、アラニンスキャニング(alanine scanning)もしくはランダムもしくは定方向突然変異誘発によって変更し、次いで、最良の結合剤を特定するためにスクリーニングすることができる(Lowman,Ann.Rev.Biophys.Biomol.Struct.,26:401−24,1997)。種々の分子は、特異的結合剤の所望の活性を保持しながら、特異的結合剤構造、例えば、それ自体のペプチド部分内、または特異的結合剤のペプチドとビヒクル部分の間に挿入され得る。例えば、Fcドメインもしくはそのフラグメント等の分子、ポリエチレングリコール、またはデキストラン、脂肪酸、脂質、コレステロール基、小炭水化物、ペプチド、本明細書に記載されるような検出可能な部分(蛍光剤、放射性同位体等の放射標識を含む)、オリゴ糖、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、干渉(もしくは他の)RNA、酵素、ホルモン、もしくは相当物等の他の関連した分子を容易に挿入することができる。このような方法において挿入のために好適な他の分子は、当業者により理解され、本発明の範囲内に包含される。これには、例えば、2つの連続したアミノ酸の間にある、任意に、好適なリンカーによって接合される、所望の分子の挿入が含まれる。
【0125】
フェロポーチンペプチボディの開発も企図される。タンパク質リガンドのその受容体との相互作用は、しばしば、相対的に大きな界面において起こる。しかしながら、ヒト成長ホルモンとその受容体で示されるように、界面におけるほんの少数の重要な残基が結合エネルギーの大部分に寄与している。(Clackson et al.,Science,267:383−6,1995)。タンパク質リガンドの大半は、単に正しいトポロジーで結合エピトープを提示するか、もしくは結合には関係しない機能として働く。したがって、「ペプチド」の長さ(一般に、2〜40個のアミノ酸)の分子だけが所与の大きなタンパク質リガンドの受容体タンパク質に結合することができる。かかるペプチドは、大タンパク質リガンドの生物活性を擬似するか(「ペプチド作動薬」)、または競合的結合を通して、大タンパク質リガンドの生物活性を阻害することができる(「ペプチド拮抗薬」)。
【0126】
ファージディスプレイ技術は、そのようなペプチド作動薬と拮抗薬を同定する強力な方法として出現している。例えば、Scott et al.Science 249:386(1990)、Devlin et al.,Science 249:404(1990)、1993年6月29日に発行された米国特許第5,223,409号、1998年3月31日に発行された米国特許第5,733,731号、1996年3月12日に発行された米国特許第5,498,530号、1995年7月11日に発行された米国特許第5,432,018号、1994年8月16日に発行された米国特許第5,338,665号、1999年7月13日に発行された米国特許第5,922,545号、1996年12月19日に公開されたWO96/40987、および1998年4月16日に公開されたWO98/15833を参照のこと(これらのそれぞれは、参照によりその全体が組み込まれる)。ペプチドファージディスプレイライブラリーにおいて、ランダムペプチド配列は、糸状ファージのコートタンパク質との融合によって提示され得る。提示されたペプチドを、必要に応じて、受容体の抗体固定化された細胞外ドメインに対して親和性溶出することができる。残留したファージは、親和性精製および再増殖を連続的に繰り返すことによって富化され得る。最良の結合ペプチドを配列決定して、ペプチドの1つ以上の構造的に関連するファミリー内の重要な残基を同定することができる。例えば、Cwirla et al.,Science 276:1696−9(1997)を参照のこと。、ここでは、2つの異なるファミリーが同定された。ペプチド配列はまた、どの残基がアラニンスキャニングによって、またはDNAレベルでの変異誘発によって安全に置換できるかを示唆し得る。突然変異誘発ライブラリーを創造し、スクリーニングして、最良の結合剤の配列をさらに最適化してもよい。(Lowman,Ann.Rev.Biophys.Biomol.Struct.,26:401−24,1997)。
【0127】
タンパク質−タンパク質相互作用の構造分析も、大タンパク質リガンドの結合活性を擬似するペプチドを示唆するために使用し得る。このような分析において、結晶構造は、ペプチドが設計され得る大タンパク質リガンドの決定的残基が何であるかの確認と相対的方向性を示唆し得る。例えば、Takasaki et al.,Nature Biotech 15:1266−70(1997)を参照のこと。これらの分析法は、結合親和性を高めるためのペプチドのさらなる修飾を示唆し得る、受容体タンパク質とファージディスプレイによって選択されたペプチド間の相互作用を検討するためにも使用してもよい。
【0128】
他の方法は、ペプチド研究においてファージディスプレイと競合する。ペプチドライブラリーを、lacリプレッサーのカルボキシル末端に融合し、大腸菌において発現することができる。別の大腸菌に基づく方法は、ペプチドグリカン結合リポタンパク質(PAL)との融合により細胞の外膜に発現させる。本文中以下では、これらおよび関連する方法を、集合的に「大腸菌ディスプレイ」と称する。別の方法において、ランダムRNAの翻訳をリボソーム放出の前に停止させ、それらの関連RNAがまだ付着しているポリペプチドのライブラリーを生じさせる。本文中以下では、これおよび関連する方法を、集合的に「リボソームディスプレイ」と称する。他の方法は、RNAへのペプチドの化学結合を採用する。例えば、Roberts and Szostak,Proc Natl Acad Sci USA,94:12297−303(1997)を参照のこと。本文中以下では、これおよび関連する方法を、集合的に「RNA−ぺプチドスクリーニング」と称する。ペプチドがポリエチレンロッドまたは溶媒透過性樹脂のような安定な非生物学的物質上に固定されている、化学的に誘導されたペプチドライブラリーが開発されている。別の化学的に誘導されたペプチドライブラリーは、写真平板印刷を用いてガラススライド上に固定されたペプチドを走査する。本文中以下では、これらおよび関連する方法を、集合的に「化学物質−ぺプチドスクリーニング」と称する。化学物質−ぺプチドスクリーニングは、Dアミノ酸および他の非天然類似体、ならびに非ペプチド要素を使用できるという点で有利であると考えられる。生物学的方法と化学的方法の両方が、Wells and Lowman,Curr.Opin.Biotechnol.,3:355−62(1992)の中で考察されている。
【0129】
ペプチドライブラリーに対する他の細胞ディスプレイ技法は、サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)等の酵母菌上の表面ディスプレイを含む(Boder and Wittrup,Nat.Biotechnol.15:553−557,1997)。したがって、例えば、抗体は、α−凝集素酵母接着受容体への融合を介して、サッカロマイセス・セレヴィシエの表面上に提示することができ、それは、酵母細胞壁上に位置する。この方法は、フリーサイトメトリーによってレパートリーを選択する可能性を提供する。蛍光標識された抗原および抗エピトープタグ試薬によって細胞を染色することによって、酵母細胞を、細胞表面上で抗原結合のレベルに従って分類することができる。酵母ディスプレイプラットフォームはまた、ファージと組み合わせることができる(例えば、Van den Beucken et al.,FEBS Lett.546:288−294,2003を参照のこと)。
【0130】
概念的には、ファージディスプレイおよび上述した他の方法を用いて、いかなるタンパク質のペプチド擬似も発見し得る。これらの方法は、エピトープマッピングのため、タンパク質−タンパク質相互作用における決定的アミノ酸の同定のため、そして新しい治療剤発見のための先導役(lead)として使用されている。例えば、Cortese et al.,Curr.Opin.Biotech.7:616−21(1996)を参照のこと。現在、ペプチドライブラリーは、エピトープマッピングのような免疫学的試験においてはペプチドライブラリーが最も多く用いられている。例えば、Kreeger,The Scientist 10(13):19−20(1996)を参照のこと。
【0131】
フェロポーチンに結合する、またはフェロポーチンの活性を調整する(即ち、増加もしくは低下させる)ための能力についてスクリーニングされ得る化合物のための供給源には、(1)無機および有機化学ライブラリー、(2)天然産物ライブラリー、ならびに(3)ランダムペプチドあるいは擬似ペプチドのいずれか、オリゴヌクレオチド、もしくは有機分子からなるコンビナトリアルライブラリーが含まれる。
【0132】
化学ライブラリーは、容易に合成されるか、または多くの商業的供給源から購入され得、公知の化合物、または天然産物スクリーニングを介して「ヒット(hit)」または「先導(lead)」として同定される化合物の構造的類自体を含み得る。
【0133】
天然産物ライブラリーの供給源は、微生物(細菌および菌類を含む)、動物、植物または他の植生、または海洋生物、ならびにスクリーニングのための混合物のライブラリーは、以下により創製され得る。(1)土壌、植物または海洋微生物からの培養液の発酵および抽出、または(2)それら自体の生物の抽出。天然産物ライブラリーには、ポリケチド、非リボソームペプチド、およびそれらの(非自然発生型)変異体が含まれる。概略に関しては、Science,282:63−68(1998)を参照のこと。
【0134】
コンビナトリアルライブラリーは、多数のペプチド、オリゴヌクレオチドまたは有機化合物からなり、伝統的自動合成法、PCR、クローニングまたは独自の合成方法により、容易に調製され得る。特に興味深いのは、ペプチドコンビナトリアルライブラリーおよびオリゴヌクレオチドコンビナトリアルライブラリーである。対象となるさらなる他のライブラリーには、ペプチドライブラリー、タンパク質ライブラリー、ペプチド模倣物ライブラリー、多重並列合成コレクションライブラリー、リコンビナトリアルライブラリー、およびポリペプチドライブラリーが含まれる。コンビナトリアル化学およびそれから作製されるライブラリーの概略に関しては、Myers,Curr.Opin.Biotechnol.,8:701−707(1997)を参照のこと。ペプチド模倣物ライブラリーの概略および例に関しては、Al−Obeidi et al.,Mol. Biotechnol.,9(3):205−23(1998)、Hruby et al.,Curr Opin Chem Biol.,1(1):114−19(1997)、Dorner et al.,Bioorg Med Chem.,4(5):709−15(1996)(アルキル化ジペプチド)を参照のこと。
【0135】
フェロポーチン特異的結合剤はまた、Hays et al.,Trends In Biotechnology,23(10):514−522(2005)(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)によって記載される、足場タンパク質、ならびに、米国公開第2006−0286603号および第2006−0223114号(双方は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載される、アビマー(Avimer)タンパク質技術も含まれる。
【0136】
III.抗体変異体および誘導体の産生
本発明の抗フェロポーチン抗体は、当業者には公知の技法によって容易に修飾することができる。可能な変異には、1つ以上の残基の挿入、欠失、または置換が含まれる。挿入または欠失は、好ましくは、約1〜5個のアミノ酸の範囲、さらに好ましくは1〜3個、および最も好ましくは1〜2個のアミノ酸である。
【0137】
欠失変異体は、ポリペプチドであり、ここで、任意のアミノ酸配列のうちの少なくとも1個のアミノ酸残基が除去される。欠失は、タンパク質の一方もしくは双方の末端で、またはポリペプチド内(即ち、内部)で1つ以上の残基の除去を伴い、もたらされ得る。欠失変異体の調製のための方法は、当該技術分野において通例である。例えば、Sambrook et al.(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Guide,3rd ed.,Cold Spring Harbor Pressを参照されたく、この開示は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0138】
アミノ酸配列挿入は、1個の残基から100個またはそれ以上の残基を含有するポリペプチドまでの長さの範囲のアミノおよび/またはカルボキシル末端融合、ならびに1個以上のアミノ酸の内部配列挿入を含む。本明細書に記載の異なる変異体形のいずれもと同様に、挿入変異体は、得られたポリペプチドが、同一の生物学的特性を保持するか、または、それが由来する親ポリペプチドに伴わない、新しい物理的、化学的および/もしくは生物学的特性を示すように、設計することができる。挿入変異体の調製のための方法はまた、当該技術分野において通例、かつ公知である(Sambrook et al.、上記を参照)。
【0139】
本明細書に開示される抗体(または本明細書に開示される抗体の1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはすべてのCDR)を含む融合タンパク質、および異種ポリペプチドは、本発明によって企図される特定の挿入変異体である。該当するポリペプチドに融合され得る異種ポリペプチドの限定されない例には、例えば、免疫グロブリン定常領域(例えば、Fc領域)、該当するポリペプチドの同定を可能にするマーカー配列、該当するポリペプチドの精製を助長する配列、および多重結合タンパク質の形成を促進する配列等に限定されない、長い循環半減期を有するタンパク質が含まれる。
【0140】
抗体融合タンパク質を作製する方法は、当該技術分野において公知である。例えば、米国特許第6,306,393号を参照されたく、この開示は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。本発明のある実施形態において、可動性リンカー(flexible linker)を含み得る、融合タンパク質を産生し、その可動性リンカーは、異種タンパク質部分にキメラ化scFv抗体を接続する。適切なリンカー配列は、得られた融合タンパク質の認識される能力、およびタンパク質のVドメインによって特異的に結合されるエピトープを結合する能力に影響を及ぼさないものである(例えば、国際公開第WO98/25965号を参照されたく、この開示は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0141】
置換変異体は、ポリペプチドアミノ酸配列中の少なくとも1つの残基が除去され、異なる残基がその位置に挿入されるものである。 ポリペプチドまたは抗体の生物学的特性の修正は、(a)置換の領域におけるポリペプチド骨格の構造、例えば、シートまたは螺旋の立体配座、(b)標的部位における分子の電荷または疎水性、または(c)側鎖のバルク、を維持するその作用が有意に異なる置換を選択することによって、達成される。本発明のある実施形態において、置換変異体は、設計される、即ち、1つ以上の特異(ランダムとは対照的に)アミノ酸残基が、特異アミノ酸残基で置換される。これらの型の典型的な変化には、同類置換および/または天然および置換残基の類似の特性に基づいて別の残基に対する1つの残基の置換が含まれる。
【0142】
同類置換を表1に示す。最も同類の置換は、「好ましい置換」の項目名下に見出される。かかる置換が生物学的活性において変化を生じない場合、さらに大きな変化が導入され、産物がスクリーニングされる。
【0144】
共通側鎖特性を共有するアミノ酸残基は、しばしば、以下のように分類される。
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性の親水性:cys、ser、thr;
(3)酸性:asp、glu;
(4)塩基性:asn、gln、his、lys、arg;
(5)鎖配向に影響する残基:gly、pro;および
(6)芳香族:trp、tyr、phe。
【0145】
A.抗体変異体
ある例において、抗体変異体は、エピトープ結合に直接関与するアミノ酸残基を修飾する目的で、調製される。他の実施形態において、本明細書で論じられる目的のために、エピトープ結合に直接関与しない残基、またはいずれの方法でもエピトープ結合に関与しない残基の修飾が、望ましい。CDR領域および/またはフレームワーク領域のいずれの内の突然変異も、企図される。
【0146】
どの抗体アミノ酸残基が、エピトープ認識および結合に重要であるかを決定するために、アラニンスキャニング突然変異誘発(alanine scanning mutagenesis)を行い、置換変異体を産生することができる。例えば、Cunningham et al.,Science,244:1081−1085(1989)を参照されたく、この開示は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。この方法において、個々のアミノ酸残基は、一つずつ、アラニン残基と置換され、得られた抗フェロポーチン抗体は、未修飾抗体と比較してその特異的エピトープを結合するその能力に対してスクリーニングされる。結合能力を低下した修飾された抗体は、どの残基が変化するか決定するために配列決定され、結合または生物学的特性におけるその有意性を示す。
【0147】
抗体の置換変異体は、親和性成熟によって調製され得、ここでランダムアミノ酸変化が、親抗体配列に導入される。例えば、Ouwehand et al.,Vox Sang 74(Suppl 2):223−232,1998、Rader et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:8910−8915,1998、Dall’Acqua et al.,Curr.Opin.Struct.Biol.8:443−450,1998を参照されたく、これらの開示は、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。親和性成熟は、抗フェロポーチン抗体またはその変異体を調製し、スクリーニングすること、ならびに得られた変異体から親抗フェロポーチン抗体と比較して増加した結合親和性のような生物学的特性を変更しているものを選択することを含む。置換変異体を生成するための便利な方法は、ファージディスプレイを用いた親和性成熟である。簡潔には、いくつかの超可変領域部位を突然変異させて、それぞれの部位で、すべての可能なアミノ置換を生成する。そのようにして生成された変異体は、それぞれの粒子内にパッケージされたM13の遺伝子III産物への融合体として糸状ファージ粒子の表面上で一価の形で表示される。次に、ファージディスプレイされた変異体が、それらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。例えば、WO92/01047、WO93/112366、WO95/15388、およびWO93/19172を参照のこと。
【0148】
現在の抗体親和性成熟法は、以下の2つの突然変異誘発カテゴリー、すなわち推計論的方法および非推計論的方法に属する。エラープローン(Error prone)PCR、突然変異誘発細菌株(Low et al.,J.Mol.Biol.,260,359−68,1996)、および飽和突然変異誘発(Nishimiya et al.,J.Biol.Chem.,275:12813−20,2000、Chowdhury,P.S.Methods Mol.Biol.,178,269−85,2002)は、推計論的突然変異誘発法である(Rajpal et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.,102:8466−71,2005)。非推計論的技法は、しばしば、アラニンスキャニングまたは部位特異的突然変異誘発法を使用し、特異的な突然変異タンパク質の限定された回収を生じる。いくつかの方法をさらに詳細に下記に記載する。
【0149】
パニング法による親和性成熟−組換え抗体の親和性成熟は、一般に、漸減する抗原量の存在下で、候補抗体の数回のパニングを通して行われる。ラウンドごとの抗原量の低下により、抗原への最高の親和性を有する抗体を選択し、それによって、出発物質の大きなプールから高親和性の抗体をもたらす。パニングによる親和性成熟は、当該技術分野において公知であり、例えば、(Huls et al.Cancer Immunol Immunother.,50:163−71,2001)に記載されている。ファージディスプレイ法を用いた親和性成熟の方法は、本明細書の他の場所に説明されており、当該技術分野において既知である(例えば、Daugherty et al., Proc Natl Acad Sci U S A.,97:2029−34,2000を参照のこと)。
【0150】
ルックスルー型(Look−through)変異誘発−ルックスルー型(Look−through)変異誘発(LTM)(Rajpal et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.,102:8466−71,2005)は、抗体結合部位を急速にマッピングするための方法を提供する。LTMのために、20個の天然アミノ酸によって提供される主要な側鎖化学を代表する、9個のアミノ酸が、抗体のすべての6つのCDRにおけるすべての位置で、結合に寄与する機能的側鎖を分析するために選択される。LTMは、それぞれの「野生型」残基が、9個の選択されたアミノ酸のうちの1個により系統的に置換されるCDR内で一連の単一の位置変異を生成する。あらゆる変異タンパク質を定量的表示することが非常に大掛かりとなることなく、変異CDRを組み合わせて、複雑性および大きさを増加するコンビナトリアル単鎖可変フラグメント(scFv)ライブラリーを生成する。正の選択後、改善された結合を有するクローンは、配列決定され、良性変異は、マッピングされる。
【0151】
エラープローン(Error−prone)PCR−エラープローン(Error−prone)PCRは、異なる選択ラウンド間の核酸のランダム化を含む。ランダム化は、使用されたポリメラーゼの固有のエラー速度による低速で生じるが、転写中、高い固有のエラー速度を有するポリメラーゼ(Hawkins et al.,J Mol Biol.226:889−96,1992)を用いて、エラープローンPCRによって強化され得る(Zaccolo et al.,.J.Mol.Biol.285:775−783,1999)。突然変異サイクル後、抗原に対して改善された親和性を有するクローンは、当該技術分野における通例の方法を用いて選択される。
【0152】
また、遺伝子シャフリングおよび指向進化(directed evolution)を利用する技法を用いて、所望の活性に対する、抗フェロポーチン抗体またはその変異体を調製し、かつスクリーニングし得る。例えば、Jermutus et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.,98(1):75−80(2001)は、リポソームディスプレイに基づいて場合に応じた体外選択戦略が、DNAシャフリングによって体外多様化と組み合わせて、scFvのオフ率あるいは熱力学的安定性のいずれかへを発展させることを示し、Fermer et al.,Tumour Biol.2004 Jan−Apr;25(1−2):7−13は、DNAシャフリングと組み合わせたファージディスプレイの使用が、親和性を1000倍近くまで上昇することが報告された。Dougherty et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.2000 Feb.29;97(5):2029−2034は、(i)機能的クローニングは、超変異ライブラリーにおいて予想外に高い頻度で起こる、(ii)機能獲得変異は、かかるライブラリーによく表される、および(iii)より高い親和性をもたらす大部分のscFv突然変異は、結合部位から離れた残基に対応することを報告した。
【0153】
代替として、または加えて、それは、抗原−抗体複合体の結晶構造を分析して、抗体と抗原との間の接点を同定する、またはコンピュータソフトウェアを使用して、かかる接点をモデル化することが有益であり得る。このような接触残基および隣接残基は、本明細書に詳細に述べられた技法に従う置換の候補である。このような変異体が発生すると、これらを本明細書に記載のスクリーニングに供し、そして1つ以上の関連のあるアッセイにおいて優れた性質を有する抗体を選択してさらに発展させ得る。
【0154】
B.修飾された炭水化物を有する抗体
親抗体と比較して修飾されたグリコシル化パターンを有する抗体変異体を産生することもでき、例えば、特異的結合剤もしくは抗体に結合する1つ以上の炭水化物部分を付加もしくは欠失させる、および/または特異的結合剤もしくは抗体における1つ以上のグリコシル化を付加もしくは欠失させることにより行われる。
【0155】
抗体を含むポリペプチドのグリコシル化は、典型的には、N結合型あるいはO結合型のいずれかである。N結合型とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の付着を指す。トリペプチド配列である、アスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−トレオニン(Xが、プロリンを除いた任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素付着に対する認識配列である。ポリペプチドにこれらのトリペプチド配列のいずれかが存在することで、潜在的なグリコシル化部位が生成される。したがって、N結合型グリコシル化部位を、これらのトリペプチド配列の1つ以上を含有するように、アミノ酸配列を変更することによって、特異的結合剤もしくは抗体に加えることができる。O結合型グリコシル化とは、糖N−アセチルガラクトサミン、ガラクトースまたはキシロースのうちの1つの、ヒドロキシアミノ酸(最も一般的にはセリンまたはトレオニン)への付着を指すが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリジンもまた、使用され得る。O結合型グリコシル化部位を、元の特異的結合剤もしくは抗体の配列への、1つ以上のセリンもしくはトレオニン残基の挿入または置換によって特異的結合剤もしくは抗体に加えてもよい。
【0156】
C.変化したエフェクター機能
システイン残基は、抗体またはFc含有ポリペプチドのFc領域において除去または導入され得、それによって、この領域における鎖間ジスルフィド結合を排除するか、または増加させる。そのようにして生成されたホモ二量体型特異的結合剤または抗体は、改善された内在化能力および/またはより高い補体媒介性細胞致死作用および抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)を有し得る。Caron et al.,J.Exp Med.176:1191−1195(1992)およびShopes,B.J.Immunol.148:2918−2922(1992)を参照のこと。ホモ二量体型特異的結合剤または抗体はまた、Wolff et al.,Cancer Research 53:2560−2565(1993)に記載されるように、ヘテロ二官能性架橋剤を用いて調製され得る。代替として、2つのFc領域を有し、それゆえ高い補体融解およびADCC能力を有し得る特異的結合剤または抗体を作り出すことができる。Stevenson et al.,Anti−CancerDrug Design,3:219−230(1989)を参照のこと。
【0157】
CDR内の配列は、抗体をMHCクラスIIに結合させ、望ましくないヘルパーT細胞応答を誘起し得ることが示されている。同類置換は、特異的結合剤または抗体に、結合活性は保持するが、望ましくないT細胞応答を誘起する能力を喪失させることができる。また、重鎖または軽鎖の1つ以上のN末端の20個のアミノ酸が除去されることも企図される。
【0158】
いくつかの実施形態において、本発明はまた、抗体分子の産生を企図し、変化した炭水化物構造は、変化したエフェクター活性をもたらし、改善されたADCC活性を示す不在または低下したフコシル化を有する抗体を含む。種々の方法が、これを達成するために当該技術分野において既知である。例えば、ADCCエフェクター活性は、FcγRIII受容体に抗体分子を結合することによって、媒介され、これは、CH2ドメインのAsn−297でN結合型グリコシル化の炭水化物構造に依存することが示されている。非フコシル化抗体は、増加した親和性で、この受容体に結合し、かつ天然のフコシル化抗体よりもさらに効果的にFcγRIII媒介のエフェクター機能を誘起する。例えば、α−1,6−フルシルトランスフェラーゼ酵素がノックアウトされているCHO細胞中の非フコシル化抗体の組換え産生は、100倍増加したADCC活性を有する抗体をもたらす(Yamane−Ohnuki et al.,Biotechnol Bioeng.2004 Sep 5;87(5):614−22)。類似の効果は、例えばsiRNAまたはアンチセンスRNA処理を通して、フコシル化経路内のこの酵素または他の酵素の活性を低下させること、細胞株を改変して該酵素をノックアウトすること、または選択的グリコシル化阻害剤と共に培養することを通して達成できる(Rothman et al.,Mol Immunol.1989 Dec;26(12):1113−23)。一部の宿主細胞株、例えば、Lec13またはラットハイブリドーマYB2/0細胞株は、より低いフコシル化レベルを有する抗体を自然に産生する。Shields et al.,J Biol Chem.2002 Jul 26;277(30):26733−40、Shinkawa et al.,J Biol Chem.2003 Jan 31;278(5):3466−73。例えば、GnTIII酵素を過剰発現する細胞において抗体を組換え産生することを通して、二分岐炭水化物のレベルの上昇もADCC活性を上昇させることが判定された。Umana et al.,Nat Biotechnol.1999 Feb;17(2):176−80。2個のフコース残基の1個だけの欠如が、ADCC活性を上昇させるのに十分であり得ると予測されている(Ferrara et al.,J Biol Chem.2005 Dec 5)。
【0159】
D.他の共有結合修飾
抗体の共有結合修飾もまた、本発明の範囲内に含まれる。それらは、該当する場合、ポリペプチドもしくは抗体の化学合成によってまたは酵素もしくは化学分解によってなされ得る。共有結合修飾の他のタイプは、標的とされたアミノ酸残基を、選択された側鎖またはNもしくはC末端残基と反応させることが可能な有機誘導体化剤と反応させることによって導入され得る。
【0160】
システイン残基は、最も一般的には、クロロ酢酸またはクロロアセトアミド等のα−ハロアセテート(および対応するアミン)と反応させて、カルボキシメチルまたはカルボキシアミドメチル誘導体を得る。またシステイン残基は、ブロモトリフルオロアセトン、α−ブロモ−β−(5−イミドゾイル)プロピオン酸、リン酸クロロアセチル、N−アルキルマレイミド、3−ニトロ−2−ピリジルジスルフィド、メチル2−ピリジルジスルフィド、p−クロロメルクリベンゾエート、2−クロロメルクリ−4−ニトロフェノール、またはクロロ−7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾールとの反応によっても誘導体化される。
【0161】
ヒスチジル残基は、本薬剤が、比較的ヒスチジル側鎖に特異的であるため、pH5.5〜7.0で、ジエチルピロカーボネートとの反応によって誘導体化される。臭化パラ−ブロモフェナシルも有用であり、この反応は、好ましくはpH6.0で、0.1M カコジル酸ナトリウム中で行われる。
【0162】
リジニル残基およびアミノ末端残基は、コハク酸または他のカルボン酸無水物と反応させる。これらの薬剤との誘導体化は、リジニル残基の電荷を逆にする効果を有する。α−アミノ含有残基を誘導体化するための他の好適な試薬は、ピコリンイミド酸メチル等のイミドエステル、ピリドキサールリン酸、ピリドキサール、クロロホウ水素化物、トリニトロベンゼンスルホン酸、O−メチルイソ尿素、2,4−ペンタンジオン、およびトランスアミナーゼが触媒するグリオキシレートとの反応が含まれる。
【0163】
アルギニル残基は、1または数種の従来の試薬との反応によって修飾され、それらにはフェニルグリオキサール、2,3−ブタンジオン、1,2−クロロヘキサンジオン、およびニンヒドリンが含まれる。アルギニン残基の誘導体化は、グアニジン官能基が高いpKaであるため、反応がアルカリ条件下で行なわれることを必要とする。さらに、これらの試薬は、アルギニンのイプシロン−アミノ基と共にリジンの基とも反応し得る。
【0164】
チロシル残基の特異的な修飾は、芳香族ジアゾニウム化合物またはテトラニトロメタンとの反応によってチロシル残基に分光標識を導入するという特別な興味を持ってなされ得る。最も一般的には、N−アセチルイミジゾールおよびテトラニトロメタンを使用して、それぞれO−アセチルチロシル種および3−ニトロ誘導体を形成させる。
125Iまたは
131Iを用いて、チロシル残基をヨウ素化してラジオイモノアッセイで用いるために標識されたタンパク質を調製する。
【0165】
カルボキシル側鎖(アスパルチルまたはグルタミル)は、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−4−エチル)カルボジイミドまたは1−エチル−3−(4−アゾニア−4,4−ジメチルペンチル)カルボジイミド等のカルボジイミド(R’−N=C=N−R’(ここにRとR’は異なるアルキル基を表す)との反応によって選択的に修飾される。さらにアスパルチル残基およびグルタミル残基は、アンモニウムイオンとの反応によってアスパラギニル残基とグルタミニル残基に変換される。
【0166】
グルタミニル残基およびアスパラギニル残基は、しばしば脱アミド化されてそれぞれ対応するグルタミル残基およびアスパルチル残基になる。中性または塩基性条件下で、これらの残基を脱アミド化する。これらの残基の脱アミド化の形態は、本発明の範囲に包含される。
【0167】
他の修飾には、プロリンおよびリジンのヒドロキシル化、セリル残基またはスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニンおよびヒスチジン側鎖のα−アミノ基のメチル化(T.E.Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties,W.H.Freeman & Co.,San Francisco,pp.79−86(1983))、N末端アミンのアセチル化、ならびにC末端カルボキシル基のアミド化が含まれる。
【0168】
共有結合修飾の別のタイプは、グリコシドを特異的結合剤または抗体へ化学的にまたは酵素的にカップリングすることを含む。これらの手順は、それらが、NもしくはO連結型グリコシル化のためにグリコシル化能力を有する宿主細胞におけるポリペプチドもしくは抗体の産生を必要としないという点において、有利である。使用する結合様式に依存して、糖を、(a)アルギニンおよびヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)システインのもののような遊離スルフヒドリル基、(d)セリン、トレオニン、もしくはヒドロキシプロリンのもののような遊離ヒドロキシル基、(e)フェニルアラニン、チロシン、もしくはトリプトファンのもののような芳香族残基、または(f)グルタミンのアミド基に結合し得る。これらの方法は、1987年9月11日に公開されたWO87/05330、およびAplin and Wriston,CRC Crit.Rev.Biochem.,pp.259−306(1981)に記載される。
【0169】
特異的結合剤または抗体上に存在する何らかの炭水化物部分の除去は、化学的または酵素的に実施され得る。化学的脱グリコシル化は、トリフルオロメタンスルホン酸化合物、または等価化合物への特異的結合剤または抗体の暴露を必要とする。この処理は、特異的結合剤または抗体を無傷のまま残しながら、連結糖(N−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミン)以外の大部分または全部の糖の切断を生じさせる。化学的脱グリコシル化は、Hakimuddin,et al.Arch.Biochem.Biophys.259:52(1987)およびEdge et al.Anal.Biochem.,118:131(1981)によって記載されている。特異的結合剤または抗体上の炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakura et al.Meth.Enzymol.138:350(1987)によって記載されているように、種々のエンドおよびエキソグリコシダーゼの使用によって達成することができる。
【0170】
本明細書に開示される、抗体または特異的結合剤の別のタイプの共有結合修飾は、特異的結合剤または抗体を種々の非タンパク質性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリオキシエチル化ソルビトール、ポリオキシエチル化グルコース、ポリオキシエチル化グリセロール、ポリオキシアルキレン、またはデキストラン等の多糖ポリマーの1つに連結することを含む。かかる方法は、当該技術分野において既知であり、例えば、米国特許第4,640,835号、第4,496,689号、第4,301,144号、第4,670,417号、第4,791,192号、第4,179,337号、第4,766,106号、第4,179,337号、第4,495,285号、第4,609,546号またはEP315 456を参照のこと。
【0171】
IV.抗体または特異的結合剤のためのスクリーニング方法
本明細書の例示的な抗体を交差遮断する、および/またはフェロポーチン活性を阻害する、フェロポーチンを結合する抗体を同定する方法も提供する。
【0172】
抗体は、当該技術分野において知られる方法によって、結合親和性に関してスクリーニングをし得る。例えば、ゲルシフトアッセイ、ウェスタンブロット法、放射標識競合アッセイ、クロマトグラフィによる共分画、共沈、架橋、ELISA等を使用してもよく、これらは、例えば、Molecular Biology(1999)John Wiley & Sons,NYに記載され、当該文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0173】
最初に、標的抗原上で所望のエピトープに結合する抗体に関してスクリーニングするために、Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Ed Harlow and David Lane(1988)およびHarlow,Edward,and David Lane Using Antibodies: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor, N.Y.: Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999に記載されるような常套的なクロスブロッキングアッセイを実施することができる。未知の抗体を、本発明の標的特異性抗体への標的の結合を阻害する能力によって特徴付けられる、常套的な競合結合アッセイも使用され得る。無傷抗原、細胞外ドメイン、または線状エピトープ等のそのフラグメントを使用することができる。エピトープマッピングは、Champe et al.,J.Biol.Chem.270:1388−1394(1995)に記載されている。
【0174】
体外結合アッセイの1つの変法において、(a)固定化したフェロポーチンを候補抗体と接触させるステップ、および(b)フェロポーチンへの候補抗体の結合を検出するステップ、を含む方法を提供する。代替的な実施形態において、候補抗体は、固定化し、フェロポーチンの結合を検出する。固定化は、支持体、ビーズまたはクロマトグラフィ樹脂への共有結合、ならびに抗体結合等の非共有結合の高親和性相互作用、または固定化化合物がビオチン部分を含む、ストレプトアビジン/ビオチン結合の使用を含む、当該技術分野において公知の方法のいずれかを用いて達成される。結合の検出は、(i)固定化されていない化合物上の放射性標識を使用して、(ii)非固定化化合物の蛍光標識を使用して、(iii)非固定化化合物に免疫特異的な抗体を使用して、(iv)固定化化合物が結合している蛍光支持体を励起する非固定化化合物上の標識を使用して、ならびに当該技術分野において公知であり、常套的に実施される他の技法を用いて達成することができる。
【0175】
ヒトフェロポーチン活性を阻害するまたは中和する抗体は、フェロポーチンを抗体と接触させる、試験抗体の存在および不在下でフェロポーチン活性を比較する、ならびに抗体の存在が、フェロポーチンの活性を低下させるかどうかを決定することによって、同定され得る。特定の抗体、抗体の組み合わせの生物学的活性は、本明細書に記載されるもののいずれかを含む、好適な動物モデルを用いて、生体内で評価され得る。
【0176】
例示的な実施形態において、本発明は、標的抗原の生物学的活性と相互作用するまたは生物学的活性を阻害する(即ち、リン酸化、二量化、リガンドによる受容体活性化、または細胞内シグナル伝達等を阻害する)抗体を同定するためのハイスループット・スクリーニング(HTS)アッセイを含む。HTSアッセイは、多数の化合物を効率的な方法で、スクリーニングすることを可能にする。細胞ベースのHTSシステムは、標的抗原とその結合パートナーの間の相互作用を検討するために企図される。HTSアッセイは、それらから所望の特性を改善するための修飾を設計することができる、所望の特性を有する「ヒット」または「先導化合物」を同定するように設計される。
【0177】
本発明の別の実施形態において、標的抗原ポリペプチドへの好適な結合親和性を有するCDR内のアミノ酸への1つ、2つ、3つまたはそれ以上の修飾を有する抗体フラグメントまたはCDRに関してハイスループット・スクリーニングを採用する。
【0178】
V.フェロポーチンの検出
フェロポーチンを検出するための方法も提供する。試料における、フェロポーチンの存在または不在を決定するために、患者からの生体試料は、免疫複合体を形成させるのに十分な条件下および時間で、本明細書に開示される1つ以上の抗フェロポーチン抗体と接触させる。その後、生体試料内の抗フェロポーチン抗体とフェロポーチンとの間に形成された免疫複合体を検出する。試料内のフェロポーチンの量は、抗体とフェロポーチンとの間に形成された免疫複合体の量を測定することによって定量化される。
【0179】
放射免疫測定、ELISA(酵素免疫測定法)、「サンドイッチ」免疫測定法、免疫放射定量測定法、ゲル内沈降反応、免疫拡散法、(例えば、コロイド金、酵素または放射性同位元素標識を用いた)原位置免疫測定法、ウェスタンブロット解析、沈降反応法、凝集アッセイ法(例えば、ゲル凝集アッセイ法、赤血球凝集アッセイ法)、補体結合アッセイ法、免疫蛍光アッセイ法、タンパク質Aアッセイ法、および免疫電気泳動アッセイ法等の技法を用いた、競合および非競合アッセイシステムが挙げられるが、これらに限定されない、当該技術分野に既知の種々の免疫測定法を使用することができる。一実施形態において、抗体結合は、一次抗体上の標識を検出することによって検出される。別の実施形態において、該一次抗体は、一次抗体への二次抗体または試薬の結合を検出することによって検出される。さらなる実施形態において、二次抗体を標識する。免疫測定法において結合を検出するための多くの手段が当該技術分野において既知であり、これらは、本発明の範囲内である。Antibodies:A Laboratory Manual(1988)by Harlow & Lane or and Harlow,Edward,and David Lane。Using Antibodies:A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor,N.Y.:Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999、さらに最新版;Immunoassays:A Practical Approach,Oxford University Press,Gosling,J.P.(ed.)(2001)もしくはさらに最新版;および/またはCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.)は、定期的に更新される。このようなアッセイの例には、通常、表面またはマトリクスに付着される抗体、上記のフェロポーチンを含有することが予想される生体試料を加え、複合体を形成するようにある時間放置し、非結合複合体を除去するための好適な洗浄手順、次いで、複合体の検出を可能にするための第2の抗体の付加(サンドイッチELISA)、あるいは抗体表面上の遊離フェロポーチン結合部位を検出するためのフェロポーチンの検出可能なバージョン(競合ELISA)を含む。
【0180】
他の方法において、患者から得られた生体試料は、フェロポーチンのレベルの検査を受ける。生体試料は、免疫複合体を形成させるのに十分な条件下および時間で、本明細書に開示される1つ以上の抗フェロポーチンの抗体で温置される。その後、フェロポーチンに特異的に結合する生体試料において、フェロポーチンと抗体との間に形成される免疫複合体を検出する。このような方法で用いる生体試料は、フェロポーチンを含有することが予想される患者から得られた任意の試料であり得る。好適な生体試料には、血球、他の細胞、生検組織試料、例えば、肝臓、脾臓または十二指腸が含まれる。好適な抗体には、ヒト細胞、齧歯類、ウサギ、ヤギ、ラクダ、または任意の他の種からの抗体が挙げられる。
【0181】
フェロポーチンと、フェロポーチンに対して免疫特異的である抗体との間で免疫複合体の形成を可能にするのに十分な条件下および時間で、反応混合物中の抗体とともに、生体試料を温置する。例えば、4℃で24〜48時間、生体試料および1つ以上の抗フェロポーチン抗体を温置し得る。
【0182】
温置後、反応混合物を、免疫複合体の存在について試験する。抗フェロポーチン抗体と、生体試料中に存在するフェロポーチンとの間に形成された免疫複合体の検出は、放射免疫測定法(RIA)および酵素免疫測定法(ELISA)等の種々の既知の技法によって達成され得る。好適なアッセイは、当該技術分野において公知であり、科学および特許文献に十分に記載されている(Harlow and Lane, 1988)。使用され得るアッセイとしては、二重モノクローナル抗体サンドイッチ免疫測定法(米国特許第4,376,110号)、モノクローナル−ポリクローナル抗体サンドイッチアッセイ(Wide et al.,1970)、「ウェスタンブロット」法(米国特許第4,452,901号)、標識リガンドの免疫沈降(Brown et al.,1980);酵素免疫測定法(Raines and Ross,1982)、蛍光色素(Brooks et al.,1980)の使用を含む、免疫細胞化学法、および活性の中和法(Bowen−Pope et al.,1984)が挙げられるが、これらに限定されない。他の免疫測定法としては、米国特許第3,817,827号、第3,850,752号、第3,901,654号、第3,935,074号、第3,984,533号、第3,996,345号、第4,034,074号、および第4,098,876号に記載のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0183】
検出のために、抗フェロポーチン抗体は、標識あるいは非標識のいずれかであり得る。非標識抗体は、凝集アッセイ法において、または免疫複合体に結合する標識化された検出試薬(例えば、抗免疫グロブリン、タンパク質G、タンパク質Aもしくはレクチンおよび二次抗体、またはその抗原結合フラグメント、フェロポーチンに特異的に結合する抗体に結合可能)と組み合わせて、使用され得る。抗フェロポーチン抗体が標識化される場合、レポーター基は、放射性同位元素、蛍光基(例えば、フルオレセインまたはローダミン)、発光基、酵素、ビオチンおよび染料粒子を含む、当該技術分野において既知の任意の好適なレポーター基であり得る。それら自体直接検出可能な標識には、蛍光もしくは発光染料、金属もしくは金属器レート、電気化学的標識、放射性核種(例えば、32P、14C、125I、3H、または131I)、磁気標識もしくはビーズ(例えば、DYNABEADS)、常磁性標識、または比色標識(例えば、コロイド金、色ガラスまたはプラスチック製ビーズ)が含まれる。このような検出可能な標識は、抗フェロポーチン抗体または検出試薬に直接接合し得るか、または抗フェロポーチン抗体または検出試薬に付着されるビーズまたは粒子と会合し得る。標識化特異的結合パートナーの結合を通して検出可能な標識には、ビオチン、ジオキシゲニン、マルトース、オリゴヒスチジン、2,4−ジニトロベンゼン、フェニルアルセネート、ssDNA、またはdsDNAが含まれる。検出可能な反応産物のそれらの産生によって間接的に検出することができる間接標識には、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、キサンチン酸化酵素、ブドウ糖酸化酵素もしくは他のサッカリドオキシダーゼ、またはルシフェラーゼ等の当該技術分野において公知の種々の酵素が含まれ、これらは、着色もしくは蛍光反応産物を形成するのに適切な基質を切断する。
【0184】
あるアッセイにおいて、非標識化抗フェロポーチン抗体は、生体試料内でフェロポーチンを捕捉する「捕捉剤」(または試薬)として用いるために、固体支持体上で固定化される。固体支持体は、抗体が付着され得る当業者には既知の任意の材料であり得る。例えば、固体支持体は、マイクロタイタープレートにおけるテストウェルまたはニトロセルロースまたは他の好適な細胞膜であり得る。代替として、支持体は、ガラス、ファイバーガラス、ラテックス、またはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンあるいはポリ塩化ビニル等のプラスチック材料、もしくは多孔質マトリクスのような管、ビーズ、粒子またはディスクであり得る。他の材料には、アガロース、デキストラン、ポリアクリルアミド、ナイロン、セファデックス、セルロースまたは多糖類が含まれる。支持体はまた、例えば、米国特許第5,359,681号に開示されるもの等の磁性粒子または光ファイバーセンサーであり得る。固定化抗フェロポーチン抗体は、ポリクローナル抗体、または本明細書に記載されるもの等の1つ以上のモノクローナル抗体、またはポリクローナルと1つ以上のモノクローナル抗体の組み合わせであり得る。該抗体は、当業者に既知の種々の技法を用いて、固体支持体上に固定化され得、これらは、特許および科学文献に十分に記載されている。本発明の文脈において、「固定化(immobilization)」という用語は、吸着等の非共有会合と、共有結合(支持体上の抗原と官能基の間の直接連結であり得るか、または架橋剤を介しての連結であり得る)の両方を指す。マイクロタイタープレートのウェルまたは細胞膜への吸着による固定化が、企図される。このような場合には、吸着は、好適な緩衝液において、好適な時間、固体支持体と抗フェロポーチン抗体を接触させることによって達成され得る。接触時間は、温度によって異なるが、一般には、約1時間から約1日までである。一般に、約10ng〜約10μg、好ましくは約100ng〜約1μgの範囲のペプチド量に、プラスチック製のマイクロタイタープレート(ポリスチレンまたはポリ塩化ビニルを含む)のウェルを接触させれば、ペプチドの十分な量を固定化するのに十分である。
【0185】
固定化した後、支持体上の残りのタンパク質結合部位は、一般的にはブロックされる。ウシ血清アルブミン、Tween(商標)20(商標)(Sigma Chemical Co.,St.Louis,Mo.)、加熱不活性化したヤギ血清(NGS)、またはBLOTTO(保存料、塩、および消泡剤も含有する無脂肪粉ミルクの緩衝液)を含む、当業者には既知の任意の好適なブロッキング剤を使用することができる。その後、フェロポーチンを含有すると考えられる生体試料とともに、支持体を温置する。試料を無希釈で適用することができ、またはさらに多くの場合、通常BSA,NGS、またはBLOTTOのような、少量(0.1重量%〜5.0重量%)のタンパク質を含有する緩衝液中で、希釈することができる。一般に、適切な接触時間(即ち、温置時間)は、試料を含有するフェロポーチン内でフェロポーチンに免疫特異的である抗体または抗原結合フラグメントの存在を検出するのに十分な時間である。好ましくは、接触時間は、結合抗体もしくは抗体フラグメントと非結合抗体もしくは抗体フラグメントの間の平衡を達成したもののうちの少なくとも約95%であるという結合のレベルを達成するのに十分なものである。当業者は、平衡を達成するのに必要な時間が、ある期間にわたって生じる結合のレベルをアッセイすることによって容易に決定され得ることを認識するであろう。室温で、約30分間の温置時間が、通常、十分である。
【0186】
非結合試料は、その後、0.1% Tween(商標)20を含有するPBS等の適切な緩衝液で固体支持体を洗浄することによって除去され得る。その後、免疫複合体中にフェロポーチンに結合する検出試薬(試料からの捕捉剤およびフェロポーチンの結合によって形成された)を、添加することができる。このような検出試薬は、ポリクローナル抗体、または本明細書に記載のもの等の1つ以上のモノクローナル抗体、またはポリクローナルと、本明細書に記載のもの等の1つ以上のモノクローナル抗体もしくは任意の抗体の抗原結合フラグメントとの組み合わせであってもよい。検出試薬は、直接標識化され得、即ち、その際、少なくとも第1の検出可能な標識または「レポーター」分子を含む。代替として、検出試薬は、標識されていない抗フェロポーチン抗体であり得る。この非標識抗フェロポーチン(一次)抗体は、その後、一次抗体への標識化二次抗体または試薬の結合によって検出される。例えば、一次抗体が、ネズミ免疫グロブリンである場合、二次抗体は、標識された抗ネズミ免疫グロブリン抗体であり得る。同様に、一次抗体が、ウサギ免疫グロブリンである場合、二次抗体は、標識された抗ウサギ免疫グロブリン抗体であり得る。
【0187】
結合抗体またはその抗原結合フラグメントを検出するのに十分な時間、免疫複合体とともに、検出試薬を温置する。適切な時間は、概して、ある期間にわたって生じる結合のレベルをアッセイすることによって決定され得る。その後、非結合標識または検出試薬を除去し、好適なアッセイまたは分析機器を用いて、結合標識または検出試薬を検出する。レポーター基を検出するために採用される方法は、レポーター基の性質に依存する。放射性標識に関しては、シンチレーション測定またはオートラジオグラフィー法が、概して、適切である。分光法を使用して、染料、発光または化学発光部分および種々の色原体、蛍光標識等を検出してもよい。ビオチンは、異なるレポーター基(一般には、放射性基もしくは蛍光基または酵素)に結合したアビジンを用いて検出され得る。酵素レポーター基(西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼおよびブドウ糖酸化酵素を含む)は、概して、基質の添加(概して、特定の期間)、次いで、その反応産物の分光光度学的分析または他の分析によって検出され得る。採用される特定の方法にかかわらず、バックグラウンド(即ち、正常レベルのフェロポーチンを有する個人から得られた生体試料に対して観察されたレベル)よりも少なくとも2倍大きい結合検出試薬のレベルは、フェロポーチンの発現に関連した障害の存在を示す。
【0188】
代替的な実施形態において、試料および検出試薬は、逐次的に添加されるのではなく、捕捉剤と同時に接触され得る。さらに別の代替において、試料および検出試薬は、ともにあらかじめ温置され、次いで、捕捉剤に添加され得る。他の変法は、当業者には容易に明らかである。
【0189】
別の実施形態において、試料中に存在するフェロポーチンの量は、競合結合アッセイによって決定される。競合結合アッセイは、標識化標準物質(例えば、フェロポーチンポリペプチド、またはその免疫学的に反応部分)の、限定された量の抗フェロポーチン抗体との結合において、試験試料検体(フェロポーチンポリペプチド)と競合する能力に依存する。遊離フェロポーチンと結合フェロポーチンを分離した後、フェロポーチンは、既知の標準物質に対する結合/非結合フェロポーチンの比を関連させることによって、定量化される。試験試料中のフェロポーチンポリペプチドの量は、抗体に結合される標準物質の量に反比例する。結合される標準物質の量を決定するのを助長するために、一般的に、抗体は、抗体に結合される標準物質および検体が、非結合のままの標準物質および検体から適宜分離され得るように、固体支持体上で固定化される。したがって、このような実施形態において、本発明は、標識化フェロポーチン(またはフェロポーチンの抗原性を保持するその標識化フラグメント)およびフェロポーチンに結合する抗体と、生体試料を接触させるステップと、形成された抗体標識化フェロポーチン複合体の量を検出するステップと、を企図する。
【0190】
固体支持体または検出可能な標識に接合する調製は、しばしば、化学架橋剤の使用を含む。架橋試薬は、少なくとも2つの反応基を含み、概して、同種官能性架橋剤(同一の反応基を含む)および異種官能性架橋剤(非同一の反応基を含む)に分けられる。アミン、スルフヒドリルを通して連結するか、または非特異的に反応する同種二官能性架橋剤は、多くの商業的供給源から入手可能である。マレイミド、アルキルおよびハロゲン化アリール、αハロアシルならびにピリジルジスルフィドは、チオール反応基である。マレイミド、アルキルおよびハロゲン化アリール、ならびにαハロアシルは、スルフヒドリルと反応し、チオールエーテル結合を形成する一方、ピリジルジスルフィドは、スルフヒドリルと反応し、混合したジスルフィドを産生する。ピリジルジスルフィド産物は、開裂可能である。イミドエステルはまた、タンパク質−タンパク質架橋に非常に有用である。
【0191】
異種二官能性架橋剤は、タンパク質の特定の基との逐次接合を可能にする2つ以上の異なる反応基を所有し、望ましくない重合または自己接合を最小化する。異種二官能性試薬はまた、アミンの修飾が問題である場合、使用される。アミンは、時折、高分子の活性部位で見いだされ得、これらの修飾は、活性の欠失をもたらし得る。スルフヒドリル、カルボキシル、フェノールおよび炭水化物のような他の部分は、さらに適切な標的であり得る。2ステップの戦略は、他の入手しやすい基を有するタンパク質にそのアミンの修飾を許容することができるタンパク質の連結を可能にする。種々の異種二官能性架橋剤(それぞれは、成功した接合に対して異なる特性を組み合わせる)は、商業的に入手可能である。一端でアミン反応があり、他端でスルフヒドリル反応がある架橋剤は、多く用いられる。異種二官能性架橋剤試薬を使用する場合、ほとんどの不安定の基を、まず、一般的には、反応させ、効果的な架橋を確保し、望ましくない重合を回避する。
【0192】
検出または監視方法が有用であり得る鉄ホメオスタシスの障害には、アフリカ型鉄過剰、αサラセミア、アルツハイマー病、貧血、癌性貧血、慢性疾患に伴う貧血、炎症性貧血、動脈硬化症またはアテローム性動脈硬化症(冠動脈疾患、脳血管疾患、または末梢閉塞性動脈疾患を含む)、失調症、鉄に関連した失調症、無トランスフェリン血症、癌、セルロプラスミン欠損症、化学療法誘導貧血、末期腎不全もしくは慢性腎疾患/腎不全を含む慢性腎疾患/腎臓病(ステージI、II、III、IVまたはV)、肝臓の肝硬変、典型的なヘモクロマトーシス、コラーゲン誘導関節炎(CIA)、ヘプシジン過剰(ヘプシジンの上昇)を伴う状態、先天性赤血球異形成貧血、うっ血性心不全、クローン病、糖尿病、鉄の生体内分布の障害、鉄ホメオスタシスの障害、鉄代謝の障害、フェロポーチン病、フェロポーチン突然変異ヘモクロマトーシス、葉酸欠乏症、フリードライヒ失調症、索性脊髄症、gracile症候群、ヘリコバクター・ピロリ感染もしくは他の細菌感染、ハレルフォルデン・スパッツ病、ヘモクロマトーシス、トランスフェリン受容体2において突然変異から生じるヘモクロマトーシス、異常血色素症、肝炎、肝炎(Brock)、C型肝炎、肝細胞癌、遺伝性ヘモクロマトーシス、HIVもしくは他のウイルス性疾患、ハンチントン病、高フェリチン血症、低色素性小球性貧血、低鉄血症、インスリン抵抗性、鉄欠乏性貧血、鉄欠乏障害、鉄過剰障害、ヘプシジン過剰を伴う鉄欠乏状態、若年性ヘモクロマトーシス(HFE2)、多発性硬化症、トランスフェリン受容体2、HFE、ヘモジュベリン、フェロポーチンもしくは鉄代謝の他の遺伝子の突然変異、新生児ヘモクロマトーシス、鉄に関連した神経変性疾患、骨減少症、骨粗鬆症膵炎、パントテン酸キナーゼ関連神経変性症、パーキンソン病、ペラグラ、異食症、ポルフィリン症、晩発性皮膚ポルフィリン症、偽脳炎、肺血鉄症、赤血球障害、関節リウマチ、変形性関節症、敗血症、鉄芽球性貧血、全身性エリテマトーデス、サラセミア、中間型サラセミア、輸血後鉄過剰症、腫瘍、血管炎、ビタミンB6欠乏症、ビタミンB12欠乏症、ウィルソン病ならびに/または鉄過剰に関連した心疾患が含まれる。
【0193】
抗フェロポーチン抗体による治療中、例えば、血球もしくは他の細胞の試料中、または生検組織試料中の対象からの細胞上のフェロポーチンのレベルは、監視され得る。任意に、試料は、療法前、治療の開始後、および/または定期的に治療中、採取され得る。
【0194】
VI.抗フェロポーチン抗体の治療的使用
フェロポーチンに結合する本明細書に記載の抗体を、それを必要とする対象を治療するために使用することも提供する。例示的な実施形態において、該対象は、鉄ホメオスタシスの障害、ヘプシジンレベルの上昇、ヘプシジン関連障害、アテローム性動脈硬化症または貧血を起こす危険性がある、または罹患している場合がある。
【0195】
本明細書で使用する「治療(treatment)」または「治療する(treat)」という用語は、疾患または障害の危険性がある、または疾患または障害になりやすい傾向を有する対象の予防的治療、および疾患または障害に罹患している対象の治療的使用の両方を指す。
【0196】
予防方法における治療剤の投与は、疾患または障害を予防するか、代替として、その進行において遅延するように、望ましくない疾患または障害の症状の兆候の前に行うことができる。したがって、予防方法と併せて使用する場合、「治療上有効な(therapeutically effective)」という用語は、治療後、(平均して)より少数の対象が、望ましくない疾患もしくは障害を発症する、または重度の症状が進行することを意味する。
【0197】
疾患または障害の症状が対象に現れた後、治療剤の投与を含む治療方法と併せて使用する場合、「治療上有効な(therapeutically effective)」という用語は、治療後、疾患または障害の1つ以上の兆候または症状が、改善されるか、または解消されることを意味する。
【0198】
治療のための「哺乳動物」とは、ヒト、家畜用および農場用動物、およびイヌ、ウマ、ネコ、ウシ等の動物園、スポーツ、またはペット動物を含む、哺乳動物として分類される、任意の動物を指す。好ましくは、哺乳動物は、ヒトである。
【0199】
本明細書で使用する「ヘプシジン関連障害」とは、鉄ホメオスタシスを崩壊させるヘプシジンの異常レベル(例えば、貯蔵された鉄の程度に関連してヘプシジン過剰またはヘプシジン欠乏)によって生じるか、または関連する病態を指す。鉄ホメオスタシスの崩壊は、貧血またはアテローム性動脈硬化症等の第2の疾患をもたらす場合がある。
【0200】
本明細書で使用する「鉄ホメオスタシスの疾患(または障害)」という句は、対象の鉄レベルを調節する必要がある病態を指す。それには、フェロポーチン病および遺伝性ヘモクロマトーシスIV型等のフェロポーチン関連障害;フェロポーチン持続からの恩恵をそれでもなお受けるフェロポーチンレベルの低下に関連しない病態であるヘプシジン関連障害;ヘプシジン活性の阻害またはフェロポーチン活性の持続からの恩恵をそれでもなお受けるヘプシジンレベルの上昇に関連しない病態である、ヘプシジンによって引き起こされない鉄ホメオスタシスの崩壊等;異常な鉄吸収、鉄循環、鉄代謝あるいは鉄排出が、正常な鉄血液レベルもしくは組織分布の崩壊を引き起こす疾患;鉄異常調節が、炎症、癌もしくは化学療法等の別の疾患または病態の結果である疾患;異常鉄血液レベルもしくは組織分布から生じる疾患または障害;ならびに鉄レベルもしくは分布を調節することによって治療され得る疾患または障害が含まれる。検出または監視方法が有用であり得る鉄ホメオスタシスのこのような疾患または障害、ヘプシジンをもたらし得るヘプシジン関連障害および炎症病態の限定されない例には、アフリカ型鉄過剰、αサラセミア、アルツハイマー病、貧血、癌性貧血、慢性疾患に伴う貧血、炎症性貧血、動脈硬化症またはアテローム性動脈硬化症(冠動脈疾患、脳血管疾患、または末梢閉塞性動脈疾患を含む)、失調症、鉄に関連した失調症、無トランスフェリン血症、癌、セルロプラスミン欠損症、化学療法誘導貧血、末期腎不全もしくは慢性腎疾患/腎不全を含む慢性腎疾患/腎臓病(ステージI、II、III、IVまたはV)、肝臓の肝硬変、典型的なヘモクロマトーシス、コラーゲン誘導関節炎(CIA)、ヘプシジン過剰(ヘプシジンの上昇)を伴う状態、先天性赤血球異形成貧血、うっ血性心不全、クローン病、糖尿病、鉄の生体内分布の障害、鉄ホメオスタシスの障害、鉄代謝の障害、フェロポーチン病、フェロポーチン突然変異ヘモクロマトーシス、葉酸欠乏症、フリードライヒ失調症、索性脊髄症、gracile症候群、ヘリコバクター・ピロリ感染もしくは他の細菌感染、ハレルフォルデン・スパッツ病、ヘモクロマトーシス、トランスフェリン受容体2において突然変異から生じるヘモクロマトーシス、異常血色素症、肝炎、肝炎(Brock)、C型肝炎、肝細胞癌、遺伝性ヘモクロマトーシス、HIVもしくは他のウイルス性疾患、ハンチントン病、高フェリチン血症、低色素性小球性貧血、低鉄血症、インスリン抵抗性、鉄欠乏性貧血、鉄欠乏障害、鉄過剰障害、ヘプシジン過剰を伴う鉄欠乏状態、若年性ヘモクロマトーシス(HFE2)、多発性硬化症、トランスフェリン受容体2、HFE、ヘモジュベリン、フェロポーチンもしくは鉄代謝の他の遺伝子の突然変異、新生児ヘモクロマトーシス、鉄に関連した神経変性疾患、骨減少症、骨粗鬆症膵炎、パントテン酸キナーゼ関連神経変性症、パーキンソン病、ペラグラ、異食症、ポルフィリン症、晩発性皮膚ポルフィリン症、偽脳炎、肺血鉄症、赤血球障害、関節リウマチ、変形性関節症、敗血症、鉄芽球性貧血、全身性エリテマトーデス、サラセミア、中間型サラセミア、輸血後鉄過剰症、腫瘍、血管炎、ビタミンB6欠乏症、ビタミンB12欠乏症、ウィルソン病ならびに/または鉄過剰に関連した心疾患が含まれる。
【0201】
鉄調節の崩壊に関与する非炎症病態としては、ビタミンB6欠乏症、ビタミンB12欠乏症、葉酸欠乏症、ペラグラ、索性脊髄症、偽脳炎、パーキンソン病(Fasano et al.,J.Neurochem.,96:909(2006)およびKaur et al.,Ageing Res.Rev.,3:327(2004))、アルツハイマー病、冠状動脈性心臓病、骨減少症および骨粗鬆症(Guggenbuhl et al.,Osteoporos.Int.,16:1809(2005))、異常血色素症および赤血球代謝の他の障害(Papanikolaou et al.,Blood,105:4103(2005))、ならびに末梢閉塞性動脈疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0202】
種々の他の鉄指数およびそれらの濃度の正常範囲を表2に列挙する。
【0204】
表2に列挙された正常範囲外の患者の鉄指数レベルは、患者が、抗フェロポーチン抗体による治療から恩恵を受け得ることを示す。フェロポーチンは、鉄ホメオスタシスで重要な役割を果たすヘプシジンに対する受容体であるため、本発明のいくつかの実施形態において、ヘプシジンレベルおよび活性は、鉄ホメオスタシスの崩壊および/または鉄指数と相関するであろう。いくつかの実施形態において、ヘプシジンレベルの上昇は、表2に示される正常範囲を下回る血清鉄レベル、低ヘモグロビン、およびヘマトクリット、低下したもしくは正常Tsat、ならびに高いもしくは正常フェリチン値、ならびにC反応性タンパク質(CRP)の上昇または炎症の他のマーカーによって測定される、炎症病態の上昇と相関する。
【0205】
本明細書で使用する抗フェロポーチン抗体の「治療有効量」という句は、所望の治療効果をもたらす(即ち、「治療効力(therapeutic efficacy)」を提供する)量を指す。例示的な治療効果には、血中鉄レベルの増加もしくは鉄有効性の増加、赤血球数の増加、赤血球平均細胞体積の増加、赤血球ヘモグロビン含有量の増加、ヘモグロビンの増加(例えば、≧0.5g/dLまで増加)、ヘマトクリットの増加、Tsatの増加、網状赤血球数の増加、網状赤血球平均細胞体積の増加もしくは正常化、網状赤血球ヘモグロビン含有量の増加、または上記のパラメータのいずれかの正常化が含まれる。その正常範囲へのこのようなパラメータの再生は、治療効力には必要とされない、例えば、正常な方向における測定可能な変化(上昇または低下)は、臨床医によって所望の治療効果であると考えられ得る。単独投与される個別の有効成分に適用される際、該用語(治療有効量)は、その成分のみに言及する。組み合わせに適用される場合、その用語は、組み合わせて投与されようと、逐次もしくは同時に投与されようと、有効成分の組み合わせた量に言及する。例えば、抗フェロポーチン抗体が赤血球生成刺激剤と併せて投与される態様において、治療有効量は、上記のパラメータのいずれかを増加または正常化する組み合わせた量を指すことを意味する。
【0206】
本明細書に記載される治療のための組成物または本明細書に記載される治療方法は、単独で、または他の治療剤と組み合わせて使用される1つ以上の抗フェロポーチン抗体を利用し、所望の効果を達成し得る。
【0207】
いくつかの実施形態において、鉄ホメオスタシスの障害の治療のための潜在的な患者集団は、まず、生体試料中のヘプシジンレベルを評価することによって特定される。ヘプシジンレベルの上昇を有するとして特定される患者は、本明細書に開示される抗フェロポーチン抗体による治療のための候補者として考えられ得る。例示的な実施形態において、生体試料は、患者から単離され、1つ以上の抗ヘプシジン抗体とともに温置される。標準集団に対する一般的な閾値を超える抗体−ヘプシジン複合体のレベルは、ヘプシジンレベルの上昇と見なされる。この方法で用いるのに好適なヘプシジン抗体は、共同米国暫定特許出願第60/888,059号および第61/015,138号に開示され、これらの開示は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。他の例示的な実施形態において、ヘプシジンレベルは、共同米国暫定特許出願第11/880,313号および国際特許出願第PCT/US2007/016477号に記載される質量分析法によって決定され、これらの開示は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。このような質量分析法を使用する際、生体試料中のヘプシジンレベルの増加は、概して、10ng/mlよりも多いが、アッセイに依存して、かつ試験された集団のサブセットに依存して異なり得る。
【0208】
いくつかの実施形態において、抗フェロポーチン抗体による療法は、ヒト患者等の対象におけるヘプシジンレベルの変化を監視することを含み得る。ヘプシジンレベルを監視する方法は、(a)1つ以上の抗ヘプシジン抗体またはその抗原結合フラグメントによる抗フェロポーチン抗体療法の前に、患者から得られる、第1の生体試料を温置するステップであって、温置は、免疫複合体を形成させるのに十分な条件下および時間で、実施される、ステップと、(b)生体試料中のヘプシジンと、抗体またはその抗体結合フラグメントとの間に形成される免疫複合体を検出するステップと、任意に、(c)後で、例えば、1つ以上の抗フェロポーチン抗体による療法の後に、患者から採取される第2の生体試料を用いてステップ(a)および(b)を繰り返すステップと、(d)第1および第2の生体試料中に検出された免疫複合体数を比較するステップと、を含み得る。第1の試料と比較して第2の試料における免疫複合体数の増加は、ヘプシジンレベルの増加を示す。このような監視方法で用いる生体試料は、ヘプシジンを含有することが予想される患者から得られた任意の試料であり得る。例示的な生体試料としては、血液、血漿、血清、尿および骨髄が挙げられる。第1の生体試料は、治療レジメンを通して、療法または方法の一部を開始する前に得られ得る。第2の生体試料は、類似の手段で得られるが、追加の療法後、得られるべきである。第2の生体試料は、少なくとも一部の療法が、第1と第2の生体試料の単離の間で行われるという条件で、療法の完了時、または療法の途中で得られ得る。双方の試料のための温置および検出手順は、共同米国暫定特許出願第60/888,059号および第61/015,138号に開示され、これらの開示は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0209】
VII.併用療法
(同一または異なる標的抗原に結合する)2つ以上の抗体とともに混合する、または第2の治療剤と本明細書に記載される抗体と併用して、さらに改善された効力を提供し得ことは、さらに有利である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法は、2つ以上の抗フェロポーチン抗体の投与を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法は、1つ以上の抗フェロポーチン抗体の投与、および任意に、1つ以上の抗ヘプシジン抗体の投与を含む。抗ヘプシジンモノクローナル抗体は、2007年2月2日に出願された米国暫定公開第60/888,059号および2007年12月19日に出願された第61/015,138号にそれぞれ記載されており、これらの開示は、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0210】
2つの治療剤の同時投与は、薬剤がそれらの治療効果に影響を及ぼす期間中、重複する限り、同時または同一の経路によって、薬剤を投与することを必要としない。同時または逐次投与が企図され、同様に異なる日または週での投与も企図される。
【0211】
例示的な実施形態において、本発明の方法は、単一抗体、ならびに異なる抗体の組み合わせ、または「カクテル」の投与を含む。かかる抗体カクテルは、異なるエフェクター機序に影響を及ぼす抗体を含有するためにある利点を有し得る。組み合わせにおけるかかる抗体は、相乗的治療効果を示し得る。
【0212】
抗フェロポーチン抗体および赤血球生成刺激剤を用いた併用療法が、特に企図される。種々の実施形態において、抗フェロポーチン抗体および赤血球生成刺激剤を使用して、貧血に罹患している患者の治療を改善することができる。特に、エリスロポエチンまたはその類似体(エポエチンアルファ、エポエチンベータ、ダーベポエチンアルファ)のような赤血球生成刺激剤療法に対して低応答性である(応答しないものを含む)患者は、とりわけ、抗フェロポーチン抗体による同時治療から恩恵を受けるであろう。一実施形態において、併用療法は、ヒトフェロポーチンに結合する少なくとも1つの抗体および少なくとも1つの赤血球生成刺激剤による治療を含む。別の実施形態において、併用療法は、ヒトフェロポーチンに結合する少なくとも1つの抗体、ヒトヘプシジンに結合する少なくとも1つの抗体、および少なくとも1つの赤血球生成刺激剤による治療を含む。
【0213】
体内に貯蔵する鉄を再配分または低下させるために、抗フェロポーチン抗体および鉄キレート剤を用いた併用療法も、企図される。鉄キレート剤は、鉄と結合し、かつ組織からもしくは循環から鉄を除去することが可能な薬剤である。例には、デフェロキサミン(Desferal(登録商標))およびデフェラシロクス(Exjade(登録商標))、およびデフェリプロン(1,2−ジメチル−3−ヒドロキシピリジン−4−オン)が含まれる。いくつかの実施形態において、フェロポーチン抗体および赤血球生成刺激剤を使用して、輸血依存性鉄過剰症に続発する鉄負荷障害に罹患している、またはフリードライヒ失調症等の鉄不均衡配分障害に罹患している、患者の治療を改善することができる。
【0214】
また、抗フェロポーチン抗体を用いた併用療法および静脈切開術も、企図される。かかる併用療法を使用して、ヘモクロマトーシス等の鉄過剰障害に罹患している患者の治療を改善することができる。
【0215】
本明細書で使用する「赤血球生成刺激剤」とは、例えば、受容体に結合し、かつ受容体の立体配座の変化を引き起こすことによって、または内因性エリスロポエチン発現を刺激することによって、エリスロポエチン受容体の活性化を直接的または間接的に引き起こす化合物を意味する。赤血球生成刺激剤には、エリスロポエチンおよび変異体、類似体、あるいはエリスロポエチン受容体に結合し、かつ活性化するその誘導体;エリスロポエチン受容体に結合し、かつ活性化する抗体;またはエリスロポエチン受容体に結合し、かつ活性化するペプチド;またはエリスロポエチン受容体に結合し、かつ活性化する、有機小化合物(任意に、約1000ダルトン未満の分子量)が含まれる。赤血球生成刺激剤としては、エポエチンアルファ、エポエチンベータ、エポエチンデルタ、エポエチンオメガ、エポエチンイオタ、エポエチンゼータ、およびこれらの類似体、ペグ化されたエリスロポチエン、カルバミル化されたエリスロポチエン、擬似ペプチド(EMP1/ヘマチドを含む)、擬似抗体およびHIF阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない(米国特許公開第2005/0020487号を参照されたく、この開示は、参照によりその全体が組み込まれる)。例示的な赤血球生成刺激剤には、エリスロポエチン、ダーベポエチン、エリスロポエチンアゴニスト変異体、およびエリスロポエチン受容体を結合し、かつ活性化するペプチドまたは抗体(および米国特許出願公開第2003/0215444号および第2006/0040858号が含まれ、これらの開示は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)、ならびに以下の特許もしくは特許公開に開示される、エリスロポエチン分子もしくはその変異体あるいは類似体が含まれ、これらは、それぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。米国特許第4,703,008号、第5,441,868号、第5,547,933号、第5,618,698号、第5,621,080号、第5,756,349号、第5,767,078号、第5,773,569号、第5,955,422号、第5,830,851号、第5,856,298号、第5,986,047号、第6,030,086号、第6,310,078号、第6,391,633号、第6,583,272号、第6,586,398号、第6,900,292号、第6,750,369号、第7,030,226号、第7,084,245号、第7,217,689号、PCT公開WO91/05867、WO95/05465、WO99/66054、WO00/24893、WO01/81405、WO00/61637、WO01/36489、WO02/014356、WO02/19963、WO02/20034、WO02/49673、WO02/085940、WO03/029291、WO2003/055526、WO2003/084477、WO2003/094858、WO2004/002417、WO2004/002424、WO2004/009627、WO2004/024761、WO2004/033651、WO2004/035603、WO2004/043382、WO2004/101600、WO2004/101606、WO2004/101611、WO2004/106373、WO2004/018667、WO2005/001025、WO2005/001136、WO2005/021579、WO2005/025606、WO2005/032460、WO2005/051327、WO2005/063808、WO2005/063809、WO2005/070451、WO2005/081687、WO2005/084711、WO2005/103076、WO2005/100403、WO2005/092369、WO2006/50959、WO2006/02646、WO2006/29094号、および米国公開番号第US2002/0155998、US2003/0077753、US2003/0082749、US2003/0143202、US2004/0009902、US2004/0071694、US2004/0091961、US2004/0143857、US2004/0157293、US2004/0175379、US2004/0175824、US2004/0229318、US2004/0248815、US2004/0266690、US2005/0019914、US2005/0026834、US2005/0096461、US2005/0107297、US2005/0107591、US2005/0124045、US2005/0124564、US2005/0137329、US2005/0142642、US2005/0143292、US2005/0153879、US2005/0158822、US2005/0158832、US2005/0170457、US2005/0181359、US2005/0181482、US2005/0192211、US2005/0202538、US2005/0227289、US2005/0244409、US2006/0088906号、および第US2006/0111279号。
【0216】
エリスロポエチンとしては、配列番号21に記載されるアミノ酸配列を含むポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。配列番号21のアミノ酸1〜165は、エポエチン、例えば、エポエチンアルファ、エポエチンベータ、エポエチンデルタ、エポエチンオメガ、エポエチンイオタ、エポエチンガンマ、エポエチンゼータ等とする任意の分子の成熟タンパク質を構成する。さらに、エポエチンにはまた、例えば、1つ以上の水溶性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG−EPO−ベータを含む)等)で化学的に修飾される前述のエポエチンのいずれかが含まれる。また、赤血球生成活性をさらに保有する配列番号21と65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である、エリスロポエチンの類似体も企図される。
【0217】
組換えヒトエリスロポエチンの例示的な配列、製造、精製および使用は、Linの米国特許第4,703,008号およびLaiらの米国特許第4,667,016号が含まれるが、これらに限定されない、多くの特許公開に記載されており、これらのそれぞれは、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。ダーベポエチンは、2つのさらなる炭水化物鎖を提供するrHuEPOのアミノ酸配列における5つの変化を有する高度にグリコシル化されたエリスロポエチン類似体である。さらに具体的には、ダーベポエチンアルファは、配列番号21のアミノ酸残基30および88で、2つのさらなるN連結型炭水化物鎖を含有する。ダーベポエチンアルファおよび他のエリスロポエチン類似体の例示的な配列、製造、精製および使用は、Stricklandらの91/05867、ElliottらのWO95/05465、EgrieらのWO00/24893、およびEgrieらのWO01/81405を含む、多くの特許公開に記載されており、これらのそれぞれは、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。自然発生的な誘導体または類似ポリペプチドには、水溶性ポリマー(例えば、ペグ化)、放射性核種、または他の診断もしくは標的もしくは治療部分に付着するために、化学的に修飾されているものが含まれる。
【0218】
「赤血球生成活性(erythropoietic activity)」とは、例えば、低酸素症でない赤血球増加症マウス(exhypoxic polycythemic mouse)アッセイ等の生体内アッセイに示される、赤血球生成を刺激する活性を意味する(例えば、Cotes and Bangham,Nature 191:1065,1961を参照のこと)。
【0219】
VIII.医薬製剤の投与および調製
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法の施行に使用されるフェロポーチン抗体は、所望の送達方法に好適な担体を含む医薬組成物に製剤化され得る。好適な担体には、フェロポーチン抗体と組み合わせる際、フェロポーチンの高親和性結合を保持し、対象の免疫系と反応しない、任意の材料が含まれる。例には、滅菌リン酸緩衝生理食塩水、静菌水等の多くの標準医薬担体のいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。種々の水溶性担体は、例えば、水、緩衝用水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシン等が使用され得、かつ低刺激の化学修飾等に供されるアルブミン、リポタンパク質、グロブリン等の強化された安定性のために他のタンパク質を含み得る。
【0220】
製剤における例示的な抗体濃度は、約0.1mg/ml〜約180mg/ml、または約0.1mg/mL〜約50mg/mL、または約0.5mg/mL〜約25mg/mL、または代替として、約2mg/mL〜約10mg/mLの範囲であり得る。抗体の水性製剤は、例えば、約4.5〜約6.5、または約4.8〜約5.5、または代替として、約5.0の範囲に及ぶpHで、pH緩衝溶液中で調製され得る。この範囲内でpHが好適な緩衝液の例には、酢酸塩(例えば、酢酸ナトリウム)、コハク酸エステル(コハク酸ナトリウム等)、グルコン酸塩、ヒスチジン、クエン酸塩および他の有機酸緩衝液が含まれる。緩衝濃度は、例えば、緩衝液および製剤の所望の等張性に依存して、約1mM〜約200mM、または約10mM〜約60mMであり得る。
【0221】
抗体を安定化し得る等張化剤も、製剤中に含まれ得る。例示的な等張化剤には、マンニトール、スクロースまたはトレハロース等のポリオールが含まれる。高張液または低張液が好適であり得るが、好ましくは、水性製剤は、等張である。製剤中の例示的なポリオールの濃度は、約1%〜約15% w/vの範囲であり得る。
【0222】
また、界面活性剤を抗体製剤に添加し、製剤化された抗体の凝集を低下させる、および/または製剤中の微粒子の形成を最小化する、および/または吸収を低下させ得る。例示的な界面活性剤には、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、あるいはポリソルベート80)またはポロキサマー(例えば、ポロキサマー188)等の非イオン系界面活性剤が含まれる。例示的な界面活性剤の濃度は、約0.001%〜約0.5%、または約0.005%〜約0.2%、または代替として、約0.004%〜約0.01% w/vの範囲であり得る。
【0223】
一実施形態において、製剤は、上記の特定された薬剤(即ち、抗体、緩衝液、ポリオールおよび界面活性剤)を含有し、ベンジルアルコール、フェノール、m−クレゾール、クロロブタノールおよびベンゼトニウムCl等の1つ以上の保存料を本質的に含まない。別の実施形態において、保存料は、例えば、約0.1%〜約2%、または代替として、約0.5%〜約1%の範囲に及ぶ濃度で、製剤中に含まれ得る。Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に記載されるもの等の1つ以上の他の薬学的に許容可能な担体、賦形剤または安定剤を、それらが製剤の所望の特性に悪影響を及ぼさないという条件で、製剤中に含めることができる。許容可能な担体、賦形剤または安定剤は、採用される用量および濃度で受容者に対して非毒性であり、追加の緩衝剤;共溶媒;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;EDTA等のキレート剤;金属複合体(例えば、Zn−タンパク質複合体);ポリエステル等の生分解性ポリマー;および/またはナトリウム等の塩形成対イオンを含む。
【0224】
フェロポーチン抗体の治療製剤は、凍結乾燥された製剤または水性溶液の形態において、所望の純度を有する抗体を、任意の生理学的に許容可能な担体、賦形剤または安定剤と混合することによって保存のために調製される(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))。許容可能な担体、賦形剤または安定剤は、採用される用量および濃度で受容者に対して非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸等の緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;保存料(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;ベンズアルコニウムクロライド;ベンズエトニウムクロライド;フェノール;ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール等);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む単糖類、二糖類、および他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール等の糖;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属複合体(例えば、Zn−タンパク質複合体);および/またはTWEEN(商標)、プルロニクス(PLURONICS)(商標)もしくはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤等が含まれる。
【0225】
一実施形態において、好適な製剤は、等張化および安定化させるポリオール、ソルビトール、スクロースまたは塩化ナトリウム等の等張化剤と組み合わせて、リン酸塩、酢酸塩、またはTRIS緩衝剤等の等張緩衝剤を含有する。このような等張化剤の一例は、5%ソルビトールまたはスクロースである。加えて、製剤は、任意に、0.01〜0.02重量%/volで、凝集を防ぐため、および安定化のために界面活性剤を含み得る。製剤のpHは、4.5〜6.5または4.5〜5.5の範囲であり得る。他の例示的な抗体についての医薬製剤の詳細は、US2003/0113316および米国特許第6,171,586号に見出され得、それぞれは、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0226】
本明細書の製剤はまた、治療される特定の兆候に対する必要に応じて、1つ以上の活性化合物、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的な活性を有するものも含有し得る。例えば、免疫抑制剤をさらに提供することが望ましい場合がある。このような分子は、意図される目的に有効である量と併せて好適に存在する。
【0227】
有効成分はまた、コアセルベーション法または界面重合(例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセルのそれぞれ)、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミン小球体、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)、またはマクロエマルジョンで調製されたマイクロカプセルに封入されてよい。このような技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示される。
【0228】
抗体の懸濁および結晶形態も企図される。懸濁および結晶形態を作製するための方法は、当業者には既知である。
【0229】
生体内投与に使用される製剤は、滅菌されていなければならない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、従来の公知の滅菌技法によって滅菌され得る。例えば、滅菌は、滅菌濾過膜を通して濾過によって容易に達成される。得られた溶液は、使用のためにパッケージ化されるか、または無機条件下で濾過され、かつ凍結乾燥され得、凍結乾燥され調製物は、投与前に、滅菌溶液と組み合わせる。
【0230】
特に、ポリペプチドが、液体組成物中で比較的に不安定である場合、凍結乾燥の工程を、しばしば、採用して、長期貯蔵用のポリペプチドを安定化させる。凍結乾燥サイクルは、通常、3つのステップ、すなわち凍結、1次乾燥、および2次乾燥からなる(Williams and Polli,Journal of Parenteral Science and Technology,Volume 38,Number 2,pages 48−59(1984))。凍結ステップにおいて、溶液が十分に凍結するまで、溶液を冷却する。溶液中のバルク水は、この段階で氷を形成する。氷は、1次乾燥段階において昇華し、それは、真空機を用いて、チャンバ内の圧力を氷の蒸気圧を下回るまで減圧することによって実行される。最後に、吸着または結合水は、減圧されたチャンバ内の圧力下および上昇した棚温度で、2次乾燥段階で除去される。該工程により、凍結乾燥ケーキとして知られる材料を生産する。その後、ケーキは、使用前に再構成することができる。
【0231】
凍結乾燥材料のための標準的な再構成の方法は、純水の体積(一般的には、凍結乾燥中、除去された体積に相当する)を再追加するが、抗菌剤の希釈液が、時々、非経口投与用の医薬品の製造に使用される。Chen,Drug Development and Industrial Pharmacy,Volume 18,Numbers 11 and 12,pages 1311−1354(1992)。
【0232】
賦形剤は、場合によっては、凍結乾燥された産物のための安定剤としての役割を果たすことが示されている。Carpenter et al.,Developments in Biological Standardization,Volume 74,pages 225−239(1991)。例えば、既知の賦形剤には、ポリオール(マンニトール、ソリビトールおよびグリセロールを含む)、糖(グルコースおよびスクロースを含む)、およびアミノ酸(アラニン、グリシンおよびグルタミン酸を含む)が含まれる。
【0233】
加えて、ポリオールおよび糖も、しばしば、使用して、乾燥状態で貯蔵中、凍結および乾燥によって引き起こされる損傷からポリペプチドを保護し、安定性を強化する。一般に、糖、特に二糖類は、凍結乾燥工程と貯蔵中の両方において、効果的である。PVP等の単糖類および二糖類およびポリマーを含む、他のクラスの分子もまた、凍結乾燥された産物の安定剤として報告されている。
【0234】
注射用としては、医薬製剤および/または薬剤は、上に記載されるように、適切な溶液を用いた再構成に好適な粉末であり得る。これらの例としては、凍結乾燥、回転乾燥もしくはスプレー乾燥した粉末、非晶質粉末、顆粒、沈殿、または微粒子が挙げられるが、これらに限定されない。注射用としては、製剤は、任意に、安定剤、pH調製剤、界面活性剤、生体利用度調節剤、およびこれらの組み合わせを含み得る。
【0235】
持続放出調製物が、調製され得る。持続放出調製物の好適な例には、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスが含まれ、これらのマトリクスには、成形品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形体である。持続放出マトリクスの例には、ポリエステル類、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド類(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸とyエチル−L−グルタミン酸塩との共重合体、非分解性エチレン酢酸ビニル、Lupron Depot(商標)等の分解性乳酸−グリコール酸共重合体(乳酸−グリコール酸共重合体および酢酸ロイプロリドからなる注射可能なマイクロスフェア)、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が含まれる。エチレン酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸等のポリマーが、100日を超えて、分子の放出を可能する一方、あるヒドロゲルは、より短期間、タンパク質を放出する。カプセル化された抗体は、長期間体内に残存すると、37℃で湿度に晒される結果として、変性する、または凝集し、その結果、生物学的活性が失われ、免疫原性が変化する可能性がある。合理的戦略が、関連する機序に応じて、安定化のために考案できる。例えば、凝集機序がチオ−ジスルフィド交換を通した分子間S−S結合形成であることが見いだされた場合、安定化は、スルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、水分含有量の制御、適当な添加剤の使用、および特定のポリマーマトリクス組成物の開発によって達成され得る。
【0236】
いくつかの実施形態において、本発明の製剤は、本明細書に記載されるように、短時間作用性、急速放出性、長時間作用性、または持続放出性になるように設計され得る。したがって、医薬製剤はまた、制御放出または徐放用に製剤化され得る。
【0237】
組成物の治療有効量は、治療される対象の疾患の重症度および体重および全般的な健康状態に応じて異なるが、概して、約1.0μg/kg〜約100mg/kg体重、または1適用あたり約10μg/kg〜約30mg/kg、あるいは約0.1mg/kg〜約10mg/kgまたは約1mg/kg〜約10mg/kgの範囲である。投与は、疾患または病態に対する応答および対象の療法の耐性に応じて必要な場合、毎日、隔日、毎週、1ヶ月に2回、毎月またはそれ以上もしくはそれ以下の頻度であり得る。4、5、6、7、8、10または12週間もしくはそれ以上のようなより長時間にわたる維持用量は、疾患の症状の所望の鎮静が生じるまで必要とされ得、用量は、必要に応じて調整され得る。この療法の経過は、従来の技法およびアッセイによって容易に監視される。
【0238】
具体的な用量は、対象の疾患の病態、年齢、体重、健康状態全般、性別あるいは食習慣、投与間隔、投与経路、排泄速度、および薬物の組み合わせに依存して調整され得る。有効量を含有する上記の用量形態のいずれも、十分に日常実験の範囲内であり、したがって、十分に本発明の範囲内である。
【0239】
抗フェロポーチン抗体または特異的結合剤は、任意の好適な手段によって、例えば、非経口、皮下、腹腔内、肺内、および鼻腔内を介して、ならびに局所治療が望ましい場合、病巣内投与を含む、全身的あるいは局所的のいずれかによって投与される。非経口経路には、静脈内、腹腔内、硬膜外、髄腔内投与が含まれる。加えて、特異的結合剤または抗体は、パルス注入によって、特に、特異的結合剤または抗体の用量を漸減しながら、好適に投与される。好ましくは、投薬は、注射によって、最も好ましくは、投与が短時間のものか、慢性的なものかに幾分依存して、静脈または皮下注射によって行われる。局所、特に、経皮、経粘膜、直腸、経口または、例えば、所望部位の近くに設置されたカテーテルを通しての、局所投与を含む、他の投与方法も企図される。いくつかの実施形態において、毎日から毎週、毎月の範囲に及ぶ頻度で(例えば、毎日、隔日、3日ごと、または1週間に2、3、4、5、もしくは6回)、0.01mg/kg〜100mg/kgの範囲に及ぶ用量で、好ましくは、1週間に2もしくは3回の頻度で、0.1〜45mg/kg、0.1〜15mg/kgあるいは0.1〜10mg/kgの範囲に及ぶ用量で、または1ヶ月に1回、最高45mg/kgまで、生理溶液中の本発明の特異的結合剤または抗体を、静脈内に投与する。
【0240】
IX.検出キットおよび治療キット
便宜上、本明細書に開示される抗体または特異的結合剤は、キット、即ち、診断または検出圧制を実施するための説明書とともに、パッケージ化された既定の量の試薬の組み合わせに提供される。抗体が酵素で標識化される場合、キットは、酵素によって必要とされる基質および補因子(例えば、検出可能な発色団またはフルオロフォアを提供する、基質の前駆物質)を含む。さらに、安定剤、緩衝剤(例えば、ブロック緩衝剤または溶解緩衝剤)等の、他の添加剤も含まれ得る。種々の試薬の相対量は、アッセイの感度を実質的に最適化する試薬の溶液中の濃度を提供するように、広範に変動し得る。特に、試薬は、溶解の際、適切な濃度を有する試薬溶液を提供する賦形剤を含む、通常、凍結乾燥された、乾燥粉末として提供され得る。
【0241】
また、診断または検出試薬、および例えば、ELISA(サンドイッチ型、または競合形式)等の免疫測定法を含む、種々の検出アッセイにおいて使用するための、1つ以上のかかる試薬を含むキットも提供する。キットの構成要素は、固体支持体に予め取り付けられてもよく、または、キットを使用する際に、固体支持体の表面に適用されてもよい。いくつかの実施形態において、シグナル生成手段が、本発明の抗体に予め伴っていてもよく、または使用前に、1つ以上の構成要素、例えば、緩衝剤、抗体/酵素共役体、酵素基質等の組み合わせを必要とし得る。キットはまた、追加の試薬、例えば、固相表面への非特異的結合を低減するためのブロッキング試薬、洗浄試薬、酵素基質等も含み得る。固相表面は、管、ビーズ、マイクロタイタープレート、ミクロスフェア、またはタンパク質、ペプチド、もしくはポリペプチドを固定化するのに好適な他の材料の形態であり得る。好ましくは、化学発光もしくは発色性生成物の形成、または化学発光もしくは発色性基質の低減を触媒する酵素が、シグナル生成手段の構成要素である。かかる酵素は、当該技術分野で公知である。キットは、本明細書に記載の捕捉剤および検出試薬のうちのいずれをも含み得る。任意に、キットはまた、本発明の方法を実施するための説明書も含み得る。
【0242】
バイアルまたは瓶等の容器にパッケージ化された抗フェロポーチン抗体および赤血球生成刺激剤を含み、該容器に添付されるか、またはパッケージ化されるラベルをさらに含むキットもまた提供され、該ラベルは、容器の内容物を説明し、本明細書に説明する、1つ以上の疾患状態を治療するための、該容器の内容物の使用に関する、表示および/または説明を提供する。
【0243】
一態様において、キットは、鉄ホメオスタシスの障害を治療するためのものであり、抗フェロポーチン抗体および赤血球生成刺激剤を含む。キットは、任意に、経口または非経口、例えば、静脈内投与のための鉄をさらに含み得る。別の態様において、キットは、抗フェロポーチン抗体と、赤血球生成刺激剤との抗フェロポーチン抗体の使用を説明する、容器に添付されるか、またはパッケージ化されるラベルとを含む。さらに別の態様において、キットは、赤血球生成刺激剤と、抗フェロポーチン抗体との赤血球生成刺激剤の使用を説明する、容器に添付されるか、またはパッケージ化されるラベルとを含む。ある実施形態において、抗フェロポーチン抗体および赤血球生成刺激剤、ならびに任意に鉄は、別個のバイアルにあるか、または同一の医薬組成物に一緒に組み合わされる。さらに別の態様において、抗フェロポーチン抗体は、単一の医薬組成物において、鉄と組み合わされる。さらに別の実施形態において、赤血球生成刺激剤は、単一の医薬組成物において、鉄と組み合わされる。
【0244】
併用療法の項で上述したとおり、2つの治療剤の併用投与は、薬剤がそれらの治療効果を与える期間において重複がある限り、薬剤を同時に、または同一の経路で投与することは必要ではない。異なる日または週の投与のように、同時または連続投与が企図される。
【0245】
本明細書に開示される抗体、ペプチド、抗原結合フラグメント、またはポリヌクレオチド、ならびに検出試薬もしくは治療剤として組成物を使用するための説明書のうちの少なくとも1つを含む、本明細書に開示される治療および検出キットもまた調製され得る。かかるキットで使用するための容器は、典型的に、検出および/または治療組成物(複数を含む)のうちの1つ以上が、定置され、好ましくは好適に等分され得る、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、瓶、注射器、または他の好適な容器を含み得る。第2の治療剤も提供される場合、キットはまた、この第2の検出および/または治療組成物が定置され得る、第2の異なる容器を含有し得る。代替として、複数の化合物が、単一の医薬組成物において調製され得、バイアル、フラスコ、注射器、瓶、または他の好適な単一容器等の、単一の容器手段にパッケージ化され得る。本発明のキットはまた、典型的に、所望のバイアル(複数を含む)が保持される、例えば、射出もしくはブロー成形されたプラスチック容器等の、市販のために厳重に管理されたバイアル(複数を含む)を含有するための手段を含む。放射性標識、発色、蛍光発生的、もしくは他の種類の検出可能なラベルまたは検出手段がキット内に含まれる場合、標識剤は、検出または治療組成物自体と同一の容器に提供され得るか、または代替として、第2の組成物が定置され、好適に等分され得る、この第2の異なる容器手段に定置され得る。代替として、検出試薬およびラベルは、単一の容器手段内に調製され得、ほとんどの場合、キットは、典型的に、市販および/または好都合なパッケージおよび配送のために厳重に管理されたバイアル(複数を含む)を含有するための手段も含む。
【0246】
本明細書に記載の検出または監視方法を実施するためのデバイスまたは装置も提供する。かかる装置は、試料を入れることができるチャンバまたは管と、デバイスを通る試料の流れを方向付けるための弁もしくはポンプ、任意に血液からの血漿もしくは血清を分離するためのフィルタ、捕捉剤もしくは検出試薬の添加のための混合チャンバ、および任意に捕捉剤免疫複合体に結合した検出可能な標識の量を検出するための検出デバイスを任意に含む、流体処理システムと、を含み得る。試料の流れは、受動的(例えば、一度試料が適用されたら、デバイスのさらなる操作を必要としない、毛細血管、静水学的、もしくは他の力によって)、または能動的(例えば、機械的ポンプ、電気ポンプ、遠心力、または空気圧の増加を介して生成される力の印加によって)であり得る。
【0247】
関連した実施形態において、プロセッサ、コンピュータ可読メモリ、および該コンピュータ可読メモリに格納され、本明細書に記載の方法のいずれをも実施するように、該プロセッサ上で実行されるように適合されるルーチンもまた提供する。好適なコンピューティングシステム、環境、および/または構成の例としては、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、ハンドヘルドまたはラップトップデバイス、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサに基づくシステム、セットトップボックス、プログラム可能な消費家電製品、ネットワークPC、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、上記のシステムもしくはデバイスのいずれかを含む分散コンピューティング環境、または当該技術分野で既知の任意の他のシステムが挙げられる。
【0248】
X.フェロポーチン抗体の非治療的使用
本明細書に開示される抗体は、標的抗原のための親和性精製剤として、または、例えば、特定の細胞(例えば、血球)もしくは組織において、その発現を検出する、標的抗原のための診断アッセイにおいて使用され得る。該抗体は、生体内診断アッセイのためも使用され得る。一般的に、これらの目的上、該抗体は、免疫シンチオグラフィーを使用して、部位を局所化することができるように、放射性核種(
111In、
99Tc、
14C、
131I、
125I、
3H、
32Pまたは
35S等)で標識化される。
【0249】
本明細書に開示される抗体は、競合的結合アッセイ、ELISA等の直接および間接的サンドイッチアッセイ、ならびに免疫沈降アッセイ等の、任意の既知のアッセイ方法において採用され得る。Zola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,pp.147−158(CRC Press,Inc.1987)、Zola,Heddy.Monoclonal Antibodies The Second Generation. Oxford:BIOS Scientific Publishers,1995、およびZola,Heddy.Monoclonal Antibodies Preparation and Use of Monoclonal Antibodies and Engineered Antibody Derivatives.Oxford:BIOS,2000。該抗体はまた、当該技術分野で既知の方法を使用して、細胞試料を標識するための、免疫組織化学に対しても使用され得る。
【実施例】
【0250】
XI.実施例
実施例1−遺伝子免疫法による抗フェロポーチンモノクローナル抗体の産生
ヒトフェロポーチン(hFpn)の発現のためのウイルスベクターを、その終止コドンを欠失した後、ヒトフェロポーチンcDNA(配列番号15)の3’末端までのフレームで、PADREペプチドであるAKFVAAWTLKAAA(配列番号24)をコードするDNAを融合することによって、構築した。hFpn−PADRE融合をコードする得られたDNAを、LR再結合反応によって、pAd/CMV/V5−DESTゲートウェイアデノウイルスベクター(Invitrogen V493−20,Carlsbad,CA)に挿入した。アデノウイルスベクターは、293T細胞中で増幅され、CsCl勾配遠心分離によって精製され、Adeno−X Rapid Titer Kit(Cat No 631028,BD Biosciences,CA)によって力価測定された。
【0251】
hFpn−PADRE融合をコードするDNAフラグメントも、phCMV1(P003100,Gene Therapy Systems,San Diego,CA)に挿入し、得られたプラスミドDNAを、エレクトロポレーションを介したDNAブースティングのために使用した。マウス免疫付与のためのプラスミドDNAは、QIAGEN EndoFree Plasmid Megaキット(QIAGEN,Valencia,CA)を用いることによって、精製した。
【0252】
ヒトフェロポーチン−PADREを発現する293E6細胞からの膜調製物は、標準的なトランスフェクション技法を用いて、ヒトフェロポーチン−PADRE DNAを、1.1×107 293E6細胞に導入することによって生成した。細胞を48時間後にペレットし、低張緩衝液(10mM HEPES pH7.4、1mM MgCl2)にプロテアーゼ阻害剤の存在下、再懸濁した。細胞を機械的に溶解し、膜を、ショ糖勾配を使用して、残存する細胞残屑から分離した。
【0253】
5〜6週齢のC57Bl/6マウスを、Charles Liver Laboratoryより購入した。組換えアデノウイルスrAd/CMV−hFpn−PADRE注入に関して、マウスにIsoflurane(Abbott,IL)で麻酔し、50μlの2×109i.f.u.(感染単位)で単一部位に皮内注射した。マウスを、プラスミドDNAエレクトロポレーションで、3回追加免疫した。DNAエレクトロポレーションに関して、マウスにIsofluraneで麻酔し、保護し、50μlの50μgの食塩水中のphCMV−hFpn−PADREを注射し、その後、エレクトロポレーションを行った。エレクトロポレーションは、BTX830(BTX Inc.,San Diego,CA)およびツイーザートロード(tweezertrode)を使用することによって行った。4つの不連続パルス(各200ミリ秒)を受け、ツイーザートロードを反対にし、もう1組パルスを与えた。各免疫付与は、3週間ごとに行った。融合の5日前、マウスに、200μgのhFpn−PADRE膜調製物で最後の追加免疫を行った。
【0254】
2匹のマウスからの脾臓を採取し、得られたハイブリドーマ上清を、最初にフェロポーチン発現細胞(実施例3)を使用してフェロポーチン結合に関し、次に、鉄反応アッセイ(実施例5)を使用して機能(フェロポーチン鉄排出活性の持続)に関してスクリーニングした。約4000の上清をスクリーニングし、これらのうちの33の抗体のみが、フェロポーチンに結合し、これらのうちの31A5、1つのみが、ヘプシジンの存在下で、フェロポーチン持続を提供することが分かった。
【0255】
実施例2−他の抗フェロポーチン抗体の産生
追加の抗フェロポーチン抗体は、以下のように生成した。Xenomouse(商標)IgG2κλおよびIgG4κλマウスを、フェロポーチン発現細胞、またはフェロポーチン発現細胞からの膜のいずれかで免疫付与した。簡潔に述べると、IgG4κλおよびIgG2κλマウスは、フェロポーチンを一時的に発現する293T細胞、またはフェロポーチンを発現する293E6細胞からの膜調製物で免疫付与した。抗原を、皮下または腹腔を介して送達した。マウスは、抗フェロポーチン抗体が血清において検出可能となるまで、一定分量の初期抗原を使用して、追加免疫した。最高の抗フェロポーチン力価を有するマウスから細胞採取し、ハイブリドーマを、最初にフェロポーチン発現細胞(実施例4)を使用して、フェロポーチン結合に関し、次いで、鉄反応アッセイ(実施例5)を使用して、機能(フェロポーチン鉄排出活性の持続)に関してスクリーニングした。
【0256】
種々の抗体キャンペーンのまとめを、表3に記載する。フェロポーチン保護を提供する抗体の生成は、すべてのフェロポーチン抗体によって共有される特性ではないことが明らかである。Xenomouseの従来の免疫付与によって産生された抗体には、37A2(
図8Eおよび配列番号25〜34)、37B9(
図8Dおよび配列番号35〜44)、37C8(
図8Dおよび配列番号45〜54)、37G8(
図8Cおよび配列番号55〜64)、38A4(
図8Cおよび配列番号65〜74)、38C8(
図8Bおよび配列番号75〜84)、38D2(
図8Bおよび配列番号85〜94)、38E3(
図8Aおよび配列番号95〜104)、ならびに38G6(
図8Aおよび配列番号105〜114)が含まれた。
【0257】
【表3】
【0258】
実施例3−抗フェロポーチンモノクローナル抗体の特性分析
フェロポーチンに対する31A5の特異性を確認するために、フェロポーチン発現細胞からの膜調製物を使用して、ウェスタン分析を実施した。
【0259】
フェロポーチン発現293Tまたは野生型293T細胞のいずれかからの約5μgの粗膜調製物を、ゲル電気泳動に供し、ニトロセルロース膜に移し、500ng/mLの31A5、または2μg/mLのウサギ抗フェロポーチンペプチドポリクローナル抗体のいずれかで、その後、それぞれ抗マウスもしくは抗ウサギ2次抗体でプローブした。ポリクローナル抗血清は、配列番号16の残基247〜265にまたがるフェロポーチンペプチドで免疫付与することによって生成され、同一のペプチドで精製された。
【0260】
31A5は、約63kDaの予想された分子量のフェロポーチンで移動し、フェロポーチンペプチドに対して上昇された陽性対照の抗血清によって検出されるものに類似する、帯を認識した。31A5によって認識される両方の顕著な帯は、フェロポーチンであると予想され、これは、しばしば、二重項として現れる(de Domenico et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,102:8955−8960,2005)。確認された他の31の抗フェロポーチン抗体のうち、10未満が、ウェスタン部ロット分析によってフェロポーチンを認識し、それらの10のうち、ヘプシジンの存在下、フェロポーチン鉄排出活性を持続したものはなかった。
【0261】
次いで、31A5を、ペプチド部分がフェロポーチン配列の異なる、非重複領域に由来する、フェロポーチンペプチドFc共役体のパネルを認識するその能力について、ウェスタン分析によって試験した。500ngのフェロポーチンペプチドFc共役体1〜5(ペプチド1:LGAIIGDWVDKNARLKVAQTSL、配列番号16のアミノ酸75〜96、ペプチド2:ITIQRDWIVVVAGEDRSKLANMNATIRRIDQL、配列番号16のアミノ酸152〜183、ペプチド3:GYAYTQGLS、配列番号16のアミノ酸330〜338、ペプチド4:MPGSPLDLSVSPFEDIRSRFIQGESITPTKIPEITTEIYMSNGSNSANIVPETS、配列番号16のアミノ酸393〜446、およびペプチド5:AQNTLGNKLFACGPDAKEVRKENQANTSVV、アミノ酸:配列番号16の542〜571)を、NuPAGE 4〜12%ゲルに流し、ニトロセルロース膜に移し、200mg/mL 31A5、その後、抗マウス二次抗体を使用して、プローブした。
【0262】
31A5は、試験された5つのペプチドのうちの1つ、配列番号16のフェロポーチン残基393〜446を含むペプチド4のみに有意な結合を示した。他のフェロポーチン結合抗体で、このペプチドにはっきりと結合したものはなかった。31A5エピトープの位置を、セルロースに固定化された7から10のアミノ酸の範囲のフェロポーチンペプチドへの結合を検出することによってさらに狭めた。これらの結合試験から、31A5エピトープは、ペプチド配列:ANIVPETPES(配列番号16のフェロポーチン残基439〜449)(
図2)内であると判断された。残基システイン326は、最近、ヘプシジン結合部位の構成要素であることが示されている(Nemeth et al.,International BioIron Society Program Book and Abstracts,2007:p.28 and de Domenico et al.Cell Metab.,8:146−156,2008)。配列番号16のシステイン残基326は、31A5エピトープを含有するループ(即ち、
図1Aのループ3)とは異なる細胞外ループに位置する。
【0263】
実施例4−ヒト抗フェロポーチン抗体の特性分析
以下の実施例は、ヒト抗体37A2、37B9、37C8、37G8、38A4、38C8、38D2、38E3および38G6についての、エピトープマッピングを説明する。
【0264】
PepSpot技術(Heiskanen et al.,Virology,262:321−332,1999)を使用して、ヒト抗体37A2、37B9、37C8、37G8、38A4、38C8、38D2、38E3および38G6に対する、フェロポーチンの結合エピトープを特定した。簡潔に述べると、重複する10−merペプチドのアレイを、固相ペプチド合成スポッティング法によって、セルロース膜上で合成した。これらのペプチド配列は、配列番号16のアミノ酸1〜571に由来した。次いでアレイを、0.05% Tween−20/PBS(PBS−T)に浸漬し、PBS−T中の5% BSAで3時間、室温で遮断し、その後、PBS−Tで3回洗浄した。次いで、調製されたアレイを、90分間、室温で、5%無脂肪粉乳中の抗体37A2、37B9、37C8、37G8、38A4、38C8、38D2、38E3または38G6の1μg/mL溶液とともに温置した。結合後、膜をPBS−Tで3回洗浄し、その後、1時間、室温で、5%無脂肪粉乳中、1:50,000に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼに共役したヤギ抗ヒト軽鎖抗体とともに温置した。次いで、膜をPBS−Tで3回洗浄し、いずれの結合も、X線フィルム上の化学蛍光検出を使用して測定した。
【0265】
抗体37A2、37B9、37C8、37G8、38A4、38C8、38D2、38E3および38G6は、
図1Aに記載のフェロポーチン配列のループ1、2、3および4内、それらに重複した、またはそれらの近傍のエピトープに結合した。特に、37A2は、アミノ酸SITPTKIPEI(配列番号16のアミノ酸417〜426)を含むフェロポーチンのフラグメントを認識し、37B9、37C8、37G8、38C8および38E3のすべてが、アミノ酸AFLYMTVLGF(配列番号16のアミノ酸315〜324)を含むフェロポーチンのフラグメントを認識し、38A4は、アミノ酸ITTEIYMSNGSNS(配列番号16のアミノ酸426〜438)を含むフェロポーチンのフラグメントを認識し、38G6は、アミノ酸TEIYMSNGSNSA(配列番号16のアミノ酸428〜439)を含むフェロポーチンのフラグメントを認識し、38D2は、アミノ酸YHGWVLTSCY(配列番号16のアミノ酸124〜133)、およびアミノ酸RDGWVSYYNQ(配列番号16のアミノ酸296〜305)を含むフェロポーチンのフラグメントを認識した。配列番号16の残基システイン326は、最近、ヘプシジン結合部位の構成要素であることが示されている(Nemeth et al.,International BioIron Society Program Book and Abstracts,2007:p.28、de Domenico et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,102:8955−8960,2005)。配列番号16のシステイン残基326は、37A2、37B9、37C8、37G8、38A4、38C8、38D2、38E3および38G6エピトープを含有するループと比較して、異なる細胞外ループである、ループ3に位置する。
【0266】
図9は、本明細書に開示される種々の抗フェロポーチン抗体によって認識されるエピトープを示す。
【0267】
実施例5−抗フェロポーチン抗体は、生体外鉄反応アッセイにおいて、フェロポーチン鉄排出活性を持続する
このアッセイは、フェリチン鉄反応要素に融合したベータラクタマーゼレポータ遺伝子の活性を監視することにより、細胞内鉄レベルの検出を可能にする。フェロポーチン発現細胞における低レベルの細胞内鉄は、活性フェロポーチンを示す一方、高レベルの細胞内鉄は、フェロポーチン活性の低減を示す。ヘプシジンは、フェロポーチンを内在化させ、細胞表面から除去し、したがって、鉄の放出を阻害し、細胞内鉄濃度を上昇させる。この鉄隔離に対する抗ヒトフェロポーチン抗体の効果は、生体外で評価した。
【0268】
ドキシサイクリン誘導性フェロポーチン(Fpn)発現構築物、ならびにmRNA翻訳を調節する、以下のヌクレオチド配列(tcggccccgcctcctgccaccgcagattggccgctagccctccccgagcgccctgcctccgagggccggcgcaccataaaagaagccgccctagccacgtcccctcgcagttcggcggtcccgcgggtctgtctcttgcttcaacagtgtttggacggaacagatccggggactctcttccagcctccgaccgccctccgatttcctctccgcttgcaacctccgggaccatcttctcggccatctcctgcttctgggacctgccagcaccgtttttgtggttagctccttcttgccaacc)(配列番号23)を有するフェリチンからの5’鉄反応要素(IRE)の1つのコピーを含有するベータラクタマーゼ(BLA)発現構築物を含有する293細胞株を構築した。70〜80%コンフルエントな培養物から採ったこれらの293/Fpn/BLA細胞を、BioCoat ポリ−Dリジン被覆プレート(Becton−Dickinson Cat#35−6640)の90μL/ウェル(25,000細胞/ウェル)に、DMEM(Invitrogen Cat#11965)、5% FBS(Invitrogen Cat#10099−141)、およびPSQ((ペニシリン、ストレプトマイシン、グルタミン溶液、Invitrogen Cat#10378−016)中2.8×05細胞/mLで定置し、5% CO2とともに37℃で温置した。同日の最後に、100μg/mLのドキシサイクリンを含む、アッセイ媒体の溶液(DMEM、5%FBS、PSQ)を作製し、そのうちの10μL/ウェルをプレートに添加し、プレートを終夜、もしくは少なくとも20時間温置した。翌日、媒体をウェルから除去し、DMEM 5% FBS PSQ、2.5μg/mLクエン酸酸化鉄、36nM合成ヒトヘプシジン、および抗体の段階希釈物(2.7:マウス抗ヒトヘプシジン抗体、31A5:マウス抗ヒトフェロポーチン抗体)およびマウスIgG2対照抗体)(すべて、アッセイプレートへの添加直前に、96ウェルポリプロピレンディープウェルブロックプレートで調製)の予め作製された混合物で置き換えた。混合物を100μL/ウェルで添加し、細胞培養物インキュベータで37℃、5% CO2で終夜温置した。次いで、プレートをインキュベータから取出し、20μL/ウェルの調製されたInvitrogen GeneBlazer CCF4 A/M現像試薬(Invitrogen Kit#K1085)の添加、および暗所での90分間の温置の前に、10分間室温で平衡化した。現像試薬は、100μLのアッセイ媒体(DMEM 5%FBS PSQ)を含む細胞を含まない対照アッセイプレートの16のウェルにも添加し、同じ時間温置した。次いで、青および緑の蛍光シグナルを、409nmで励起し、447nm(青)および520nm(緑)で発光を読み取ることによって、Envision Multilabel Reader(Perkin−Elmer Inc.)上で読み取った。結果を
図3に示す。2.7および31A5は、それぞれ14nMおよび30nMのIC
50で細胞内鉄濃度を減少させたことが判定された。抗体37A2、37B9、37C8、37G8、38A4、38C8、38D2、38E3および38G6は、それぞれ4.5nM、3.6nM、0.8nM、1.6nM、0.4nM、0.9nM、10nM、15nMおよび4.3nMのIC
50で、細胞内鉄濃度を減少させた。
【0269】
実施例6−抗フェロポーチン抗体は、フェロポーチンを、ヘプシジンによる内部移行および分解から保護する
V5エピトープタグをコードするC末端配列を有する、ドキシサイクリン誘導性フェロポーチン(Fpn)発現構築物を含有する293細胞株を構築した。70〜80%コンフルエントな培養物から採ったこれらの293/Fpn−V5細胞を、Poly−Dリジン被覆プレート(Becton−Dickinson Cat#35−6640)内の、DMEM(Invitrogen Cat#11965)、10% FBS(Invitrogen Cat#10099−141)、PSQ(Invitrogen Cat#10378−016)、100μg/mLドキシサイクリン、2.5μg/mLクエン酸酸化鉄、100μL/ウェル(50,000細胞)に、5.0×105細胞/mLでプレートし、終夜もしくは少なくとも20時間、37℃で5% CO2とともに温置した。翌日、媒体をウェルから除去し、DMEM、10% FBS、PSQ、2.5μg/mLクエン酸酸化鉄、37nM組換えヒトヘプシジン、ならびに抗体(2.7、31A5、37A2、37B9、37C8、37G8、38A4、38C8、38D2、および38G6、ならびにmIgG2対照抗体)の段階希釈物(すべて、アッセイプレートへの添加直前に、96ウェルポリプロピレンディープウェルブロックプレートで調製)の予め作製された混合物で置き換えた。混合物を100μL/ウェルで添加し、細胞培養物インキュベータで37℃、5% CO2で終夜温置した。
【0270】
フェロポーチンV5発現細胞を、37nMヘプシジンならびに抗体(マウス抗体2.7(抗ヘプシジン抗体)、ヒト抗体31A5およびmIgG2対照抗体)の段階希釈物で終夜試験した。細胞を固定し、透過処理し、フェロポーチンV5をFITC共役抗V5抗体を使用して検出した。フェロポーチン表面発現は、共焦点蛍光顕微鏡を使用して検出され、結果は
図4Aに記載する。全蛍光は、蛍光光度計を使用して検出され、結果は、
図4Bに記載する。結果は、モノクローナル31A5が、フェロポーチンの内部移行および分解を阻止することにより、フェロポーチン活性を持続したことを確認した。抗体37A2、37B9、37C8、37G8、38A4、38C8、38D2、および38G6は、それぞれ2.5nM、0.2nM、0.2nM、0.8nM、2.8nM、0.3nM、5.4nM、および1.9nMのIC
50でフェロポーチン活性を持続した。
【0271】
実施例7−免疫組織化学による、フェロポーチンの検出
哺乳類フェロポーチン発現は、十二指腸細胞の側底膜上、および細網内皮系のマクロファージ内で検出されている(Canonne−Hergaux,et al.,Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol.,290(1):p.G156−63,2006、Donovan,A.,et al.,Cell Metab,1(3):p.191−200,2005)。31A5を使用して、この発現プロファイルは、IHCによってヒト組織内で確認された(
図5Aおよび5B)。
【0272】
フェロポーチンに対する免疫組織化学(IHC)は、ビオチンを含まない免疫ペルオキシダーゼ染色法(Immunohistochemical Staining Methods,4th ed,DAKO,2006.)を使用して実施され、3,3’−ジアミノベンジジン四塩酸塩(DAB)をクロマゲンとして使用した。簡潔に述べると、スライドをキシレン中で脱パラフィンし、アルコールから水への上り勾配において水和し、抗原回収緩衝液中で過熱した。一連の遮断ステップを使用して、内因性FC受容体および内因性ペルオキシダーゼを排除した。次いで、スライドをマウス一次抗体とともに温置した。次いで、HRP共役二次抗体ポリマーを添加し、茶色のクロマゲンであるDAB中で呈色させた。スライドをHematoxlinで対比染色し、青に染色し、脱水し、きれいにし、カバースリップを載せた。
【0273】
フェロポーチンが、哺乳類の胎盤およびCNSの領域で発現することを示唆する、追加データが公開されている(Donavan et al.,上記参照、Bastin et al.,Br.J.Haematol.,134:532−543,2006)が、モノクローナル抗体を使用したヒトにおけるフェロポーチン発現の完全な特性分析は、まだ報告されていない。31A5およびAsterandヒト多組織アレイを使用した予備研究は、フェロポーチンが、いくつかの異なる組織で発現することを示唆する(表3)。
【0274】
表3:31A5およびAsterand多組織アレイを使用したIHCにより評価されたフェロポーチン発現
【0275】
【表4】
*間質単核細胞は、単球、マクロファージ、または樹枝状細胞であり得る。
【0276】
本実施例は、モノクローナル抗体を使用して、フェロポーチンに対して実施された、第1の発現分析を提示する。
【0277】
開示の完全性のため、本明細書に引用されるすべての特許文書および文献は、参照することにより、その全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0278】
前述の説明および実施例は、本発明を説明するために記載されているに過ぎず、制限することを意図しない。本発明の精神および本質を組み込む、説明される実施形態の修正が、当業者によって行われ得るため、本発明は、添付の請求項の範囲およびその同等物内ですべての変形例を含むように、広義に解釈するべきである。