(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凝固体形成手段が、前記凝固対象液を供給する凝固対象液供給部と、前記凝固対象液を前記基板の上面に吐出するノズルと、一方端が前記凝固対象液供給部に接続されるとともに他方端が前記ノズルに接続されて前記凝固対象液供給部から供給される前記凝固対象液を前記ノズルに流通させる配管とを有する請求項1ないし14のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記ノズルおよび前記配管内で前記凝固対象液が凝固するのを防止する凝固防止手段をさらに備える基板処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
図1はこの発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。また、
図2は
図1の基板処理装置における窒素ガスおよびDIWの供給態様を示す図である。さらに、
図3は
図1の基板処理装置におけるアームの動作態様を示す図である。この装置は半導体ウエハ等の基板Wの表面Wfに付着しているパーティクル等の汚染物質を除去するための凍結洗浄処理を実行可能な枚葉式の基板処理装置である。より具体的には、微細パターンが形成された基板表面Wfについて、その表面Wfに液膜を形成してそれを凍結させて凝固膜(凝固体)を形成した後、該凝固膜を除去することで凝固膜とともにパーティクル等を基板表面から除去する凍結洗浄処理を実行する基板処理装置である。凍結洗浄技術については上記特許文献1や特許文献2を始めとして多くの公知文献があるので、この明細書では詳しい説明を省略する。
【0020】
この基板処理装置は処理チャンバ1を有している。この処理チャンバ1の内部は常温雰囲気となっており、当該処理チャンバ1内部においてスピンチャック2が基板Wの表面Wfを上方に向けて略水平姿勢に保持した状態で基板Wを回転させるように構成されている。具体的には、このスピンチャック2の中心軸21の上端部には、
図2に示すように、円板状のスピンベース23がネジなどの締結部品によって固定されている。この中心軸21はモータを含むチャック回転機構22の回転軸に連結されている。そして、装置全体を制御する制御ユニット4からの動作指令に応じてチャック回転機構22が駆動されると、中心軸21に固定されたスピンベース23が回転中心軸AOを中心に回転する。
【0021】
また、スピンベース23の周縁部付近には、基板Wの周縁部を把持するための複数個のチャックピン24が立設されている。チャックピン24は、円形の基板Wを確実に保持するために3個以上設けてあればよく、スピンベース23の周縁部に沿って等角度間隔で配置されている。各チャックピン24のそれぞれは、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持部と、基板支持部に支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する基板保持部とを備えている。また、各チャックピン24は、基板保持部が基板Wの外周端面を押圧する押圧状態と、基板保持部が基板Wの外周端面から離れる解放状態との間を切り替え可能に構成されている。
【0022】
そして、スピンベース23に対して基板Wが受渡しされる際には、各チャックピン24を解放状態とし、基板Wに対して洗浄処理を行う際には、各チャックピン24を押圧状態とする。各チャックピン24を押圧状態とすると、各チャックピン24は基板Wの周縁部を把持して、基板Wがスピンベース23から所定間隔を隔てて略水平姿勢に保持されることとなる。これにより、基板Wは、その表面Wfを上方に向け、裏面Wbを下方に向けた状態で保持される。
【0023】
また、上記のように構成されたスピンチャック2の上方には遮断部材9が配置されている。この遮断部材9は、中心部に開口を有する円板状に形成されている。また、遮断部材9の下面は、基板Wの表面Wfと略平行に対向する基板対向面となっており、基板Wの直径と同等以上の大きさに形成されている。この遮断部材9は支持軸91の下端部に略水平に取り付けられている。この支持軸91は、水平方向に延びるアーム92により、基板Wの中心を通る鉛直軸回りに回転可能に保持されている。また、アーム92には、遮断部材回転・昇降機構93が接続されている。
【0024】
遮断部材回転・昇降機構93は、制御ユニット4からの動作指令に応じて、支持軸91を基板Wの中心を通る鉛直軸回りに回転させる。また、制御ユニット4は、遮断部材回転・昇降機構93の動作を制御して、スピンチャック2に保持された基板Wの回転に応じて基板Wと同じ回転方向でかつ略同じ回転速度で遮断部材9を回転させる。また、遮断部材回転・昇降機構93は、制御ユニット4からの動作指令に応じて、遮断部材9をスピンベース23に近接させたり、逆に離間させる。具体的には、制御ユニット4は、遮断部材回転・昇降機構93の動作を制御して、基板処理装置に対して基板Wを搬入出させる際には遮断部材9をスピンチャック2の上方の離間位置(
図1に示す位置)に上昇させる一方、基板Wに対して所定の処理を施す際には遮断部材9をスピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfのごく近傍に設定された対向位置まで下降させる。
【0025】
図2に示すように、遮断部材9の支持軸91は中空になっており、その内部に、遮断部材9の下面(基板対向面)で開口するガス供給管95が挿通されている。このガス供給管95は常温窒素ガス供給ユニット61に接続されている。この常温窒素ガス供給ユニット61は、窒素ガス供給源(図示省略)から供給される常温窒素ガスを基板Wに供給するもので、乾燥用経路と凝固促進用経路との2系統を有している。
【0026】
これら2系統のうち乾燥用経路には、マスフローコントローラ(MFC)611と、開閉バルブ612とが設けられている。このマスフローコントローラ611は制御ユニット4からの流量指令に応じて常温窒素ガスの流量を高精度に調整可能となっている。また、開閉バルブ612は制御ユニット4からの開閉指令に応じて開閉してマスフローコントローラ611で流量調整された窒素ガスの供給/停止を切り替える。このため、制御ユニット4が常温窒素ガス供給ユニット61を制御することで、流量調整された窒素ガスが基板Wを乾燥させるための乾燥ガスとして適当なタイミングで遮断部材9と基板Wの表面Wfとの間に形成される空間に向けてガス供給管95から供給される。
【0027】
また、凝固促進用経路も、乾燥用経路と同様に、マスフローコントローラ(MFC)613と、開閉バルブ614とが設けられている。そして、制御ユニット4が常温窒素ガス供給ユニット61を制御することで、流量調整された常温窒素ガスが後述するガス吐出ノズル7に圧送され、基板表面Wfに形成された凝固対象液の液膜に凝固促進ガスとして供給される。なお、この実施形態では、常温窒素ガス供給ユニット61からの乾燥ガスおよび凝固促進ガスとして窒素ガスを供給しているが、空気や他の不活性ガスなどの常温ガスを供給するようにしてもよい。
【0028】
ガス供給管95の内部には、液体供給管96が挿通されている。この液体供給管96の下方端部は遮断部材9の下面で開口しており、その先端に上方側液体吐出ノズル97が設けられている。一方、液体供給管96の上方端部はDIW供給ユニット62に接続されている。このDIW供給ユニット62はDIW供給源(図示省略)から供給される常温のDIWをリンス液として基板Wに供給し、また80℃程度まで昇温した高温DIWを融解除去処理用として基板Wに供給するもので、以下のように構成されている。ここでは、DIW供給源に対して2系統の配管経路が設けられている。そのうちの一つである、リンス処理用の配管経路には、流量調整弁621と開閉バルブ622とが介挿されている。この流量調整弁621は制御ユニット4からの流量指令に応じて常温DIWの流量を高精度に調整可能となっている。また、開閉バルブ622は制御ユニット4からの開閉指令に応じて開閉して流量調整弁621で流量調整された常温DIWの供給/停止を切り替える。
【0029】
また、もう一方の融解除去処理用配管経路には、流量調整弁623、加熱器624および開閉バルブ625が介挿されている。この流量調整弁623は制御ユニット4からの流量指令に応じて常温DIWの流量を高精度に調整して加熱器624に送り込む。そして、加熱器624は送り込まれた常温DIWを80℃程度に加熱し、その加熱されたDIW(以下「高温DIW」という)が開閉バルブ625を介して送り出される。なお、開閉バルブ625は制御ユニット4からの開閉指令に応じて開閉して高温DIWの供給/停止を切り替える。こうして、DIW供給ユニット62から送り出される常温DIWや高温DIWは適当なタイミングで基板Wの表面Wfに向けて上方側液体吐出ノズル97から吐出される。
【0030】
また、スピンチャック2の中心軸21は円筒状の空洞を有する中空になっており、中心軸21の内部には、基板Wの裏面Wbにリンス液を供給するための円筒状の液供給管25が挿通されている。液供給管25は、スピンチャック2に保持された基板Wの下面側である裏面Wbに近接する位置まで延びており、その先端に基板Wの下面の中央部に向けてリンス液を吐出する下方側液体吐出ノズル27が設けられている。液供給管25は、上記したDIW供給ユニット62に接続されており、基板Wの裏面Wbに向けて高温DIWを融解除去液として、また常温DIWをリンス液として供給する。
【0031】
また、中心軸21の内壁面と液供給管25の外壁面との隙間は、横断面リング状のガス供給路29になっている。このガス供給路29は常温窒素ガス供給ユニット61に接続されており、常温窒素ガス供給ユニット61からガス供給路29を介してスピンベース23と基板Wの裏面Wbとの間に形成される空間に乾燥用の窒素ガスが供給される。
【0032】
また、
図1に示すように、この実施形態では、スピンチャック2の周囲にスプラッシュガード51が、スピンチャック2に水平姿勢で保持されている基板Wの周囲を包囲するようにスピンチャック2の回転軸に対して昇降自在に設けられている。このスプラッシュガード51は回転軸に対して略回転対称な形状を有している。そして、ガード昇降機構52の駆動によりスプラッシュガード51を段階的に昇降させることで、回転する基板Wから飛散する液膜形成用の凝固対象液、DIW、リンス液やその他の用途のために基板Wに供給される処理液などを分別して処理チャンバ1内から図示を省略する排液処理ユニットへ排出することが可能となっている。
【0033】
また、この処理チャンバ1の底面部には複数の排気口11が設けられ、これらの排気口11を介して処理チャンバ1の内部空間は排気ユニット63に接続されている。この排気ユニット63は排気ダンパーと排気ポンプとを有しており、排気ダンパーの開閉度合いを制御することで排気ユニット63による排気量を調整可能となっている。そして、制御ユニット4は排気ダンパーの開閉量に関する指令を排気ユニット63に与えることで処理チャンバ1からの排気量を調整して内部空間における温度や湿度などを制御する。
【0034】
この基板処理装置では、ガス吐出ノズル7が上記のように構成された常温窒素ガス供給ユニット61の凝固促進用経路(マスフローコントローラ613+開閉バルブ614)と接続されている。そして、ガス吐出ノズル7に常温窒素ガスが圧送されると、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに向けて常温窒素ガスが凝固促進ガスとしてノズル7から吐出される。また、このガス吐出ノズル7は、
図1に示すように、水平に延設された第1アーム71の先端部に取り付けられている。この第1アーム71は、処理チャンバ1の天井部より垂下する回転軸72により後端部が回転中心軸J1周りに回転自在に支持されている。そして、回転軸72に対して第1アーム昇降・回転機構73が連結されており、制御ユニット4からの動作指令に応じて回転軸72が回転中心軸J1周りに回転駆動され、また上下方向に昇降駆動され、その結果、第1アーム71の先端部に取り付けられたガス吐出ノズル7が
図3に示すように基板表面Wfの上方側で移動する。
【0035】
また本実施形態では、ガス吐出ノズル7と同様にして、凝固対象液吐出ノズル8が基板表面Wfの上方側で移動可能に構成されている。この凝固対象液吐出ノズル8は、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに向けて液膜を構成する凝固対象液を供給するものである。本発明では、凝固対象液として、常温よりも高い凝固点を有するターシャリーブタノール(tert-Butanol)や炭酸エチレン(Ethylene Carbonate)を用いている。例えばターシャリーブタノールの凝固点は常温よりわずかに高い25.69℃であり、炭酸エチレンの凝固点はターシャリーブタノールよりも若干高いものの、36.4℃であり、少し加熱することで液体状態となる一方、常温環境に置かれることで凝固する。そこで、本実施形態では、次のように構成された凝固対象液供給ユニット64を設けるとともに、二重配管構造を有する配管65によって凝固対象液供給ユニット64と凝固対象液吐出ノズル8を接続している。
【0036】
この凝固対象液供給ユニット64は、
図2に示すように、凝固対象液を貯留するタンク641を有している。このタンク641の内部には加熱器642が配置されており、制御ユニット4からの動作指令に応じて作動し、タンク641内に貯留された凝固対象液の温度を凝固点以上、例えば凝固対象液としてターシャリーブタノールを用いる場合には30℃程度、また炭酸エチレンを用いる場合には50℃程度に昇温させて液体状態に維持している。なお、
図2への図示を省略しているが、タンク641には凝固対象液を補給するための開口部が設けられており、オペレータにより適宜補給可能となっている。もちろん、自動補給機構を設けてタンク641内での凝固対象液の貯留量が一定以下となると自動的に補給されるように構成してもよい。
【0037】
また、タンク641の内部には、凝固対象液を取り出すためのパイプ643がタンク底面部に向けて延設されており、当該パイプ643の先端部がタンク641に貯留された凝固対象液に浸漬されている。また、パイプ643の後端部は開閉バルブ644を介して配管65に接続されている。この配管65は、上記したように凝固対象液供給ユニット64と凝固対象液吐出ノズル8とを接続するものであり、外管651の内部に内管652が挿通された二重管構造を有している。そして、内管652の一方端には上記パイプ643が接続されるとともに他方端はノズル8に接続されている。
【0038】
また、タンク641の上面には、タンク内部に窒素ガスを導入して加圧する加圧用パイプ645が挿入されており、開閉バルブ646およびマスフローコントローラ(MFC)647を介して窒素ガス供給源(図示省略)と接続されている。このため、制御ユニット4からの指令に応じて開閉バルブ646が開くと、マスフローコントローラ647により調整された流量の窒素ガスが加圧用パイプ645を介してタンク641内に送り込まれ、これに応じてタンク641内に貯留されている凝固対象液が押し出され、開閉バルブ644および内管652を介して凝固対象液吐出ノズル8に送出される。
【0039】
このように配管65の内管652を介して凝固対象液を凝固対象液吐出ノズル8に送り込んでいる間に凝固対象液の温度が低下すると、凝固対象液の流動性が低下して基板表面Wfへの凝固対象液の供給量が変動し、また内管652やノズル8の内部で凝固対象液が凝固してしまうことがある。そこで、本実施形態では、保温・温調用ガス供給ユニット66を設けている。 この保温・温調用ガス供給ユニット66は、常温窒素ガスを、タンク641に貯留された凝固対象液と同程度の温度に温調し、外管651と内管652との間に形成されるガス供給路に供給するものである。この保温・温調用ガス供給ユニット66では、マスフローコントローラ661が制御ユニット4からの流量指令に応じて常温窒素ガスの流量を高精度に調整し、加熱器662に与える。この加熱器662は開閉バルブ663を介してガス供給路に接続されており、窒素ガスを凝固対象液の設定温度に対応した温度(凝固対象液の種類に応じて30〜50℃)に昇温した後に開閉バルブ663を介してガス供給路に供給する。この昇温窒素ガスの供給による保温および温調作用によって内管652およびノズル8の内部に存在している凝固対象液の温度は凝固点以上で、かつほぼ一定に維持される。
【0040】
このようにして保温・温調された凝固対象液の供給を受けるノズル8を回転中心軸J2周りに回転し、また上下方向に昇降移動させるために、水平に延設された第2アーム81の後端部が回転軸82により回転中心軸J2周りに回転自在に支持されている。一方、第2アーム81の先端部には、凝固対象液吐出ノズル8が下方に吐出口(図示省略)を向けた状態で取り付けられている。さらに、回転軸82に対して第2アーム昇降・回転機構83が連結されており、制御ユニット4からの動作指令に応じて回転軸82が回転中心軸J2周りに回転駆動され、また上下方向に昇降駆動され、その結果、第2アーム81の先端部に取り付けられた凝固対象液吐出ノズル8が以下のように基板表面Wfの上方側で移動する。
【0041】
ガス吐出ノズル7および凝固対象液吐出ノズル8はそれぞれ独立して基板Wに対して相対的に移動することが可能となっている。すなわち、
図3に示すように、制御ユニット4からの動作指令に基づき第1アーム昇降・回転機構73が駆動されて第1アーム71が回転中心軸J1周りに揺動すると、第1アーム71に取り付けられたガス吐出ノズル7は、スピンベース23の回転中心上に相当する回転中心位置Pcと基板Wの対向位置から側方に退避した待機位置Ps1との間を移動軌跡T1に沿って水平移動する。すなわち、第1アーム昇降・回転機構73は、ガス吐出ノズル7を基板Wの表面Wfに沿って基板Wに対して相対移動させる。
【0042】
また、制御ユニット4からの動作指令に基づき第2アーム昇降・回転機構83が駆動されて第2アーム81が回転中心軸J2周りに揺動すると、第2アーム81に取り付けられた凝固対象液吐出ノズル8は第1アーム71の待機位置Ps1と異なる別の待機位置Ps2と、回転中心位置Pcとの間を移動軌跡T2に沿って水平移動する。すなわち、第2アーム昇降・回転機構83は、凝固対象液吐出ノズル8を基板Wの表面Wfに沿って基板Wに対して相対移動させる。
【0043】
次に、上記のように構成された基板処理装置の動作について
図4および
図5を参照しつつ説明する。
図4および
図5は
図1の基板処理装置の動作を模式的に示す図である。この装置では、未処理の基板Wが装置内に搬入されると、制御ユニット4が装置各部を制御して該基板Wに対して一連の洗浄処理が実行される。ここでは、予め基板Wが表面Wfを上方に向けた状態で基板Wが処理チャンバ1内に搬入されてスピンチャック2に保持される一方、
図1に示すように遮断部材9がその下面を対向させたままアーム71、81と干渉しない離間位置まで待避している。また、装置を稼動させている間、保温・温調用ガス供給ユニット66から昇温窒素ガスが外管651と内管652との間に形成されるガス供給路に供給されており、内管652内で凝固対象液が凝固するのを防止しながら凝固対象液の温度を一定に維持している。
【0044】
基板Wの搬入後、制御ユニット4はチャック回転機構22を駆動させてスピンチャック2を回転させるとともに、第2アーム昇降・回転機構83を駆動させて第2アーム81を回転中心位置Pcに移動して位置決めする。これによって、凝固対象液吐出ノズル8は
図4(a)に示すように基板表面Wfの回転中心の上方、つまり回転中心位置Pcに位置する。そして、制御ユニット4は凝固対象液供給ユニット64の各部を制御して凝固対象液供給ユニット64から凝固対象液を配管65の内管652を流通して凝固対象液吐出ノズル8に送り出す。このとき、内管652の外周部は上記したように昇温窒素ガスで充たされているため、凝固対象液は常温より高い所定温度に保たれたままノズル8に圧送される。そして、凝固対象液は凝固対象液吐出ノズル8から基板表面Wfに供給され、基板Wの回転に伴う遠心力によって基板Wの径方向外向きに均一に広げられ、その一部が基板外に振り切られる。これによって、基板表面Wfの全面にわたって凝固対象液の液膜の厚みを均一にコントロールして、基板表面Wfの全体に所定の厚みを有する液膜LFが形成される(液膜形成処理:ステップS1)。また、液膜形成時点では、液膜LFの温度は常温より高い値となっている。なお、液膜形成に際して、上記のように基板表面Wfに供給された凝固対象液の一部を振り切ることは必須の要件ではない。例えば、基板Wの回転を停止させた状態あるいは基板Wを比較的低速で回転させた状態で基板Wから凝固対象液を振り切ることなく基板表面Wfに液膜を形成してもよい。
【0045】
こうして、液膜形成が終了すると、制御ユニット4は第2アーム昇降・回転機構83を駆動させて第2アーム81を待機位置Ps2に移動し、待機させる。また、第2アーム81の移動後または移動に連動して制御ユニット4は第1アーム昇降・回転機構73を駆動させて第1アーム81を基板Wの回転中心の上方位置、つまり回転中心位置Pcに向けて移動させ、ガス吐出ノズル7を基板Wの回転中心の上方位置で位置決めする(
図4(b))。そして、制御ユニット4は常温窒素ガス供給ユニット61を制御することで流量調整した常温窒素ガスをガス吐出ノズル7に圧送し、当該ノズル7から凝固促進ガスとして回転する基板Wの表面Wfに向けて吐出させて凝固対象液で形成された液膜LFが凝固するまでの時間の短縮を図っている(凝固促進処理:ステップS2)。
【0046】
この実施形態では、基板Wの周辺温度は常温付近となっているため、基板Wの周辺雰囲気によって液膜LFの温度は徐々にではあるが、低下していく。また、基板Wの回転に伴う気化熱によっても液膜LFは冷やされて温度低下は進む。しかしながら、凍結洗浄処理に要する時間を短縮してスループットを向上させるという観点からは、液膜LFに対して常温窒素ガスを吹き付けて冷却速度を高めるのが望まれる。そこで、本実施形態では、回転する基板Wの表面Wfに向けてガス吐出ノズル7から常温窒素ガス(凝固促進ガス)を吐出させながら、ガス吐出ノズル7を徐々に基板Wの端縁位置に向けて移動させる。これにより、基板表面Wfの表面領域に形成された液膜LFが部分的に強制冷却されて液膜LFの温度が凝固対象液の凝固点(>常温)を下回り、部分的に凝固する。その結果、凝固体FR(凝固膜FFの一部)が基板表面Wfの中央部に形成される。なお、このように液膜LFを凍結させる際には、制御ユニット4は常温窒素ガス供給ユニット61のマスフローコントローラ613を制御して常温窒素ガスの流量(つまり単位時間当たりの常温窒素ガス量)を液膜LFの凝固に適した値に抑えている。このように常温窒素ガスの流量を抑制することで、基板表面Wfが部分的に乾いて露出してしまうという問題や風圧で膜厚分布が不均一となって処理の均一性が担保されないという問題が発生するのを防止している。
【0047】
そして、方向Dn1へのノズル7のスキャンによって凍結領域、つまり凝固体FRは基板表面Wfの中央部から周縁部へと広げられ、例えば
図4(c)に示すように、スキャン途中に基板表面Wfの液膜全面が凍結して凝固膜FFが短時間で形成される。
【0048】
この凝固完了を受けて、制御ユニット4はノズル7からの常温窒素ガス(凝固促進ガス)の吐出を停止し、第1アーム71を待機位置Ps1に移動させて基板表面Wfからノズル7を待避させる。その後、
図5(a)に示すように、遮断部材9を基板表面Wfに近接配置し、さらに遮断部材9に設けられたノズル97から基板表面Wfの凍結した液膜、つまり凝固膜(凝固体)FFに向けて80℃程度に昇温された高温DIWを供給して凝固膜(凝固体)FFを融解除去する(融解除去処理:ステップS3)。それに続いて、同図(b)に示すように、リンス液として常温のDIWを基板表面Wfに供給し、基板Wのリンス処理を行う(ステップS4)。
【0049】
ここまでの処理が実行された時点では、基板Wが遮断部材9とスピンベース23との間に挟まれながら回転する状態で、基板Wの表面にDIWが供給されている。ここで、基板表面Wfへの高温DIWおよび常温DIWの供給と並行して、ノズル27からも高温DIWおよび常温DIWを供給してもよい(
図5(a)、(b))。続いて基板WへのDIWの供給を停止し、
図5(c)に示すように、基板Wを高速回転により乾燥させるスピン乾燥処理を行う(ステップS5)。すなわち、遮断部材9に設けられたノズル97およびスピンベース23に設けられたガス供給路29から常温窒素ガス供給ユニット61により供給される乾燥用の窒素ガスを吐出させながら基板Wを高速度で回転させることにより、基板Wに残留するDIWを振り切り基板Wを乾燥させる。こうして乾燥処理が終了すると、処理済みの基板Wを搬出することによって1枚の基板に対する処理が完了する。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば、基板Wの表面Wfに常温よりも高い凝固点を有する凝固対象液を供給して液膜LFを形成し、その液膜LFを凝固させて基板表面Wfに凝固体FFを形成しているので、従来技術において凝固のために必須となっていた極低温ガスを使用する必要がなくなった。このため、ランニングコストを抑制することができる。また、供給ラインの断熱が不要となるため、装置や周辺設備の大規模化を防止することができ、プットプリントの低減を図ることができるとともに、装置や周辺設備のコストも抑制することができる。
【0051】
また、上記第1実施形態では、液膜LFを凝固させる際に常温窒素ガスを凝固促進ガスとして供給している。この常温窒素ガスは、凝固対象液の凝固点よりも低い温度を有しているため、液膜LFの凝固に要する時間を短縮することができ、スループットを向上させることができる。
【0052】
このように、第1実施形態では、スピンチャック2が本発明の「基板保持手段」に相当している。また、基板Wの表面Wfが本発明の「基板の上面」に相当する。また、凝固対象液供給ユニット64が本発明の「凝固対象液供給部」に相当し、この凝固対象液供給ユニット64、凝固対象液吐出ノズル8および配管65により本発明の「凝固体形成手段」が構成されている。また、高温DIWが本発明の「高温除去液」に相当し、DIW供給ユニット62および上方側液体吐出ノズル97により本発明の「除去手段」が構成されている。また、常温窒素ガス供給ユニット61から供給される常温窒素ガスが本発明の「凝固対象液の凝固点より低い温度の冷却流体」に相当し、常温窒素ガス供給ユニット61およびガス吐出ノズル7が本発明の「凝固促進手段」および「第1凝固促進部」として機能している。さらに、保温・温調用ガス供給ユニット66が本発明の「凝固防止手段」として機能している。
【0053】
<第2実施形態>
図6はこの発明にかかる基板処理装置の第2実施形態の動作を示す図である。この第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は凝固促進処理の内容であり、その他の構成は基本的に第1実施形態と同一である。すなわち、第2実施形態では、常温窒素ガス供給ユニット61の凝固促進用経路(マスフローコントローラ613+開閉バルブ614)はガス吐出ノズル7のみならず、ガス供給路29にも接続されている。そして、制御ユニット4が常温窒素ガス供給ユニット61を制御することで、流量調整された常温窒素ガスがガス吐出ノズル7とともにガス供給路29に圧送され、常温窒素ガスが基板Wの表面Wfのみならず裏面Wbにも凝固促進ガスとして供給される(ステップS2A)。これによって、液膜LFの凝固に要する時間をさらに短縮することができる。このように、第2実施形態では、基板Wの裏面Wbが本発明の「基板の下面」に相当する。また、常温窒素ガス供給ユニット61およびガス供給路29が本発明の「凝固促進手段」および「第2凝固促進部」として機能している。
【0054】
<第3実施形態>
図7はこの発明にかかる基板処理装置の第3実施形態の動作を示す図である。この第3実施形態が第1実施形態や第2実施形態と大きく相違する点は、凝固対象液を基板Wの表面Wfに供給して液膜LFを形成した後、所定時間だけ放置することで凝固膜FFを形成しており(ステップS1A)、凝固促進処理(ステップS2、S2A)を省略している点である。なお、その他の構成は基本的に第1実施形態や第2実施形態と同一である。すなわち、本発明では、従来の凍結洗浄技術で用いられていたDIWに代えて、ターシャリーブタノールや炭酸エチレンなどの常温よりも高い凝固点を有する凝固対象液を用いているため、基板Wの表面Wfに供給された凝固対象液は処理チャンバ1の常温雰囲気に放置されることで徐冷されて凝固する。また、基板Wを回転させた際に発生する気化熱が凝固対象液を凝固させる方向に作用する。そこで、第3実施形態では、ガス吐出ノズル7および凝固促進用経路(マスフローコントローラ613+開閉バルブ614)を設けず、装置構成の簡素化を図っている。
【0055】
<第4実施形態>
図8はこの発明にかかる基板処理装置の第4実施形態の動作を示す図である。この第4実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、凝固膜(凝固体)FFの除去態様であり、それに使用するDIWの温度であり、その他の構成は基本的に第1実施形態と同一である。すなわち、第1実施形態では凝固膜(凝固体)FFの除去に凝固対象液の凝固点よりも高い高温DIWを用いているのに対し、第4実施形態では常温DIWを用いている。これは、常温DIWへのターシャリーブタノールや炭酸エチレンの溶解度が比較的高いことを利用したものであり、常温DIWの供給によって凝固膜FFを溶解除去している(ステップS3A)。このように高温DIWを用いない第4実施形態では、融解除去処理用配管経路(流量調整弁623+加熱器624+開閉バルブ622)を設ける必要がなく、装置構成の簡素化を図ることができるとともに、DIW加熱が不要になったことでランニングコストの低減を図ることができる。また、除去処理とリンス処理を連続的、および一体的に行うことができ、処理の効率化を図ることができる。
【0056】
<第5実施形態>
凍結洗浄は上記したように基板Wの表面Wfに供給された凝固対象液を凝固させた後、その凝固体を基板表面から除去することで基板表面に付着するパーティクルなどを除去するものであるが、除去効率は凝固体の到達温度と密接に関連する。これは、本願発明者らによる、DIWを凝固対象液として用いた実験に基づき得られた知見であり、その知見内容は、単にDIWの液膜を凍結させるだけではなく、凍結後の液膜の到達温度が低くなるほどパーティクル除去効率が高まるというものである。この知見をターシャリーブタノールや炭酸エチレンなどを凝固対象液とする場合に適用することで同様の作用効果が得られることは容易に推測される。そこで、以下のおいては、上記実験内容および知見内容を詳しく説明した後、その知見を適用した実施形態について説明する。
【0057】
図9は、いわゆる凍結洗浄技術における液膜の温度とパーティクル除去効率との関係を示すグラフであり、具体的には、次の実験により得られたものである。この実験では、基板の代表例としてベア状態(全くパターンが形成されていない状態)のSiウエハ(ウエハ径:300mm)を選択している。また、パーティクルとしてSi屑(粒径;0.08μm以上)によって基板表面が汚染されている場合について評価を行っている。
【0058】
まず最初に、枚葉式の基板処理装置(大日本スクリーン製造社製、スピンプロセッサSS−3000)を用いてウエハ(基板)を強制的に汚染させる。具体的には、ウエハを回転させながら、ウエハと対向配置されたノズルよりパーティクル(Si屑)を分散させた分散液をウエハに供給する。ここでは、ウエハ表面に付着するパーティクルの数が約10000個となるように、分散液の液量、ウエハ回転数および処理時間を適宜調整する。その後、ウエハ表面に付着しているパーティクルの数(初期値)を測定する。なお、パーティクル数の測定はKLA−Tencor社製のウエハ検査装置SP1を用いて、ウエハの外周から3mmまでの周縁領域を除去(エッジカット)として残余の領域にて評価を行っている。
【0059】
次に、各ウエハに対して以下の洗浄処理を行う。まず、150rpmで回転するウエハに、0.5℃に温度調整されたDIWを6秒間吐出してウエハを冷却する。その後、DIWの吐出を停止して2秒間その回転数を維持し、余剰のDIWを振りきって液膜を形成する。液膜形成後、ウエハ回転数を50rpmに減速し、その回転数を維持しながらスキャンノズルにより温度−190℃の窒素ガスを流量90[L/min]でウエハ表面に対し吐出する。ノズルのスキャンはウエハの中心とウエハの端を20秒で往復させて行う。
図9の黒四角はスキャン回数に対応し、
図9中左からスキャン1回、2回の順でスキャン5回までの結果が表示されている。このように、スキャン回数を変更することで液膜の凍結後の温度を変更している。
【0060】
上記の冷却が終了した後、ウエハの回転数を2000rpmとし、80℃に温度調整されたDIWを4.0[L/min]の流量で2秒間吐出した後、ウエハの回転数を500rpmとし、リンス液として常温のDIWを1.5[L/min]の流量で30秒間供給し、ウエハのリンス処理を行う。その後ウエハを高速回転してスピンドライする。
【0061】
こうして、一連の洗浄処理を施したウエハの表面に付着しているパーティクル数を測定する。それから、凍結洗浄後のパーティクル数と先に測定した初期(凍結洗浄処理前)のパーティクル数とを対比することで除去率を算出している。こうして得られたデータをプロットしたものが
図9に示すグラフである。
【0062】
同図から明らかなように、単に液膜を凍結させるだけではなく、凍結後の液膜の到達温度が低くなるほどパーティクル除去効率が高まり、洗浄効果を高めることが可能である。そこで、次に説明する第5実施形態では、常温窒素ガスを用いた冷却処理を凝固体FFに与えてパーティクル除去効率の向上を図っている。
【0063】
図10はこの発明にかかる基板処理装置の第5実施形態の動作を示す図である。この第5実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、凝固促進処理(ステップS2)を経て凝固膜(凝固体)FFが形成された後でかつ凝固膜FFの除去(ステップS3)前に、冷却処理(ステップS6)を実行している点であり、その他の構成は第1実施形態と基本的に同一である。この冷却処理では、ガス吐出ノズル7は、凝固促進処理から継続して常温窒素ガスを基板表面Wfに向けて吐出し続け、その吐出状態のまま基板表面Wfの上方でスキャン移動されて凝固膜FFを冷却する。これによって、凝固膜FFの到達温度が確実に常温まで低下しているため、パーティクル除去効率を高めることができる。
【0064】
なお、凝固促進処理(ステップS2)を行わずに凝固膜FFを形成する場合(例えば
図7に示す第3実施形態)には、凝固対象液が凝固したタイミングで常温窒素ガス供給ユニット61から供給される常温窒素ガスをガス吐出ノズル7から吐出させたまま当該ノズル7を基板表面Wfの上方でスキャン移動させて凝固膜FFを冷却するように構成してもよい。このように第5実施形態およびその変形例においては、常温窒素ガス供給ユニット61およびガス吐出ノズル7が本発明の「冷却手段」および「第1冷却部」として機能している。
【0065】
<第6実施形態>
図11はこの発明にかかる基板処理装置の第6実施形態の動作を示す図である。この第6実施形態が第2実施形態(
図6)と大きく相違する点は、凝固促進処理(ステップS2A)を経て凝固膜(凝固体)FFが形成された後でかつ凝固膜FFの除去(ステップS3)前に、冷却処理(ステップS6A)を実行している点であり、その他の構成は第2実施形態と基本的に同一である。この冷却処理では、ガス供給路29から常温窒素ガスを基板Wの裏面Wbに供給するとともに、ガス吐出ノズル7については上記した第5実施形態と同様に常温窒素ガスを基板表面Wfに向けて吐出しながら基板表面Wfの上方でスキャン移動される。このように基板Wの表面Wfおよび裏面Wbの両方から常温窒素ガスが供給されて凝固膜(凝固体)FFが冷却されているため、パーティクル除去効率を高めることができる。しかも、第5実施形態よりも短時間で、凝固膜FFの到達温度を常温まで低下させることができるため、処理時間の短縮を図ることができる。
【0066】
なお、凝固促進処理(ステップS2A)を行わずに凝固膜FFを形成する場合(例えば
図7に示す第3実施形態)には、凝固対象液が凝固したタイミングで常温窒素ガス供給ユニット61から供給される常温窒素ガスをガス吐出ノズル7から吐出させたまま当該ノズル7を基板表面Wfの上方でスキャン移動させるとともに、ガス供給路29から常温窒素ガスを基板Wの裏面Wbに供給してもよい。このように第6実施形態およびその変形例においては、常温窒素ガス供給ユニット61、ガス吐出ノズル7およびガス供給路29が本発明の「冷却手段」として機能し、それらのうち常温窒素ガス供給ユニット61およびガス吐出ノズル7の組み合わせが本発明の「第1冷却部」に相当し、常温窒素ガス供給ユニット61およびガス供給路29の組み合わせが本発明の「第2冷却部」に相当している。
【0067】
<第7実施形態>
上記第5実施形態(
図10)および第6実施形態(
図11)では、凝固膜(凝固体)FFを冷却して到達温度を低下させるための冷却流体として常温窒素ガスを用いているが、常温窒素ガスの代わりに常温DIWを利用してもよい。
【0068】
図12はこの発明にかかる基板処理装置の第7実施形態の動作を示す図である。この第7実施形態では、凝固促進処理(ステップS2)を経て凝固膜(凝固体)FFが形成されると、ノズル7からの常温窒素ガス(凝固促進ガス)の吐出を停止し、第1アーム71を待機位置Ps1に移動させて基板表面Wfからノズル7待避させる。その後で、遮断部材9を基板表面Wfに近接配置し、さらに遮断部材9に設けられたノズル97から凝固膜(凝固体)FFに向けて常温DIWを供給する(ステップS6B)。なお、本実施形態では、冷却処理の目的は凝固膜FFの到達温度を常温付近まで低下させる点にあるため、常温DIWにより凝固膜FFが溶解除去される前に常温DIWの供給を停止させる。そして、こうして凝固膜FFの温度を低下させた後、高温DIWによる融解除去処理(ステップS3)、常温DIWによるリンス処理(ステップS4)および常温窒素ガスによる乾燥処理(ステップS5)を行う。
【0069】
このように第7実施形態では、常温DIWを用いてパーティクル除去効率を高めることができ、DIW供給ユニット62および上方側液体吐出ノズル97が本発明の「冷却手段」および「第1冷却部」として機能している。
【0070】
<第8実施形態>
図13はこの発明にかかる基板処理装置の第8実施形態の動作を示す図である。この第8実施形態では、凝固促進処理(ステップS2A)を経て凝固膜(凝固体)FFが形成されると、ノズル7、27からの常温窒素ガス(凝固促進ガス)の吐出を停止し、第1アーム71を待機位置Ps1に移動させて基板表面Wfからノズル7を待避させる。その後で、遮断部材9を基板表面Wfに近接配置し、さらに遮断部材9に設けられたノズル97から凝固膜(凝固体)FFに向けて常温DIWを供給するとともに、ノズル27から基板Wの裏面Wbに常温DIWを供給する(ステップS6C)。なお、本実施形態においても、第7実施形態と同様に、常温DIWにより凝固膜FFが溶解除去される前にノズル7からの常温DIWの供給を停止させる。そして、こうして凝固膜FFの温度を低下させた後、高温DIWによる融解除去処理(ステップS3)、常温DIWによるリンス処理(ステップS4)および常温窒素ガスによる乾燥処理(ステップS5)を行う。
【0071】
このように第8実施形態では、常温DIWを用いてパーティクル除去効率を高めることができ、DIW供給ユニット62、上方側液体吐出ノズル97および下方側液体吐出ノズル27が本発明の「冷却手段」として機能し、それらのうちDIW供給ユニット62および上方側液体吐出ノズル97の組み合わせが本発明の「第1冷却部」に相当し、DIW供給ユニット62および下方側液体吐出ノズル27の組み合わせが本発明の「第2冷却部」に相当している。
【0072】
<第9実施形態>
上記第7実施形態および第8実施形態では、常温DIWにより凝固膜FFが溶解除去されない程度でノズル7から常温DIWを凝固膜(凝固体)FFに供給しているが、上記したように常温DIWを基板Wの表面Wfに継続して供給することで凝固膜FFを溶解除去することができる。また、凝固膜FFの除去後においても常温DIWをさらに継続して供給することで基板Wに対するリンス処理を行うことができる。そこで、第9実施形態では、
図14に示すように、冷却処理(ステップS6B)、除去処理(ステップS3A)およびリンス処理(ステップS4)を常温DIWで行っている。このように高温DIWを用いない第9実施形態では、融解除去処理用配管経路(流量調整弁623+加熱器624+開閉バルブ622)を設ける必要がなく、装置構成の簡素化を図ることができるとともに、DIW加熱が不要になったことでランニングコストの低減を図ることができる。また、冷却処理、除去処理およびリンス処理を連続的、および一体的に行うことができ、処理の効率化を図ることができる。
【0073】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、保温・温調用ガス供給ユニット66の加熱器662を用いて常温窒素ガスを昇温して保温・温調用の窒素ガスを得ているが、保温・温調用窒素ガスの生成手段はこれに限定されるものではなく、例えば
図15に示すようにボルテックスチューブ(Vortex Tube)を用いてもよい。また、ボルテックスチューブを用いることで高温の窒素ガスのみならず、低温の窒素ガスも同時に生成することができ、これを冷却ガスとして用いることができる。以下、
図15を参照しつつ本発明の第10実施形態について説明する。
【0074】
図15はこの発明にかかる基板処理装置の第10実施形態を示す図である。この第10実施形態では、高温・低温窒素ガス供給ユニット67が設けられている。この高温・低温窒素ガス供給ユニット67は、マスフローコントローラ(MFC)671と、ボルテックスチューブ672と、2つの開閉バルブ673、674とを有している。このマスフローコントローラ671は制御ユニット4からの流量指令に応じて常温窒素ガスの流量を高精度に調整可能となっている。また、ボルテックスチューブ672は供給口、暖気吐出口および冷気吐出口を有しており、供給口を介してマスフローコントローラ671で調整された窒素ガスがチューブ内に流入すると、暖気吐出口と冷気吐出口の間で熱分離され、暖気吐出口から常温よりも高い高温窒素ガスが吐出されるとともに、冷気吐出口から常温よりも低い低温窒素ガスが吐出される。なお、ボルテックスチューブ672自体については周知であるため、ここでは詳しい説明を省略する。
【0075】
ボルテックスチューブ672の冷気吐出口は開閉バルブ673を介してガス吐出ノズル7と接続されており、制御ユニット4からの開閉指令に応じて開閉バルブ673が開くことで低温窒素ガスが凝固促進ガスとしてガス吐出ノズル7に供給される。また、ボルテックスチューブ672の暖気吐出口は開閉バルブ674を介して配管65のガス供給路に接続されており、制御ユニット4からの開閉指令に応じて開閉バルブ674が開くことで高温窒素ガスが保温・温調用窒素ガスとして配管65に供給される。
【0076】
このように本実施形態では、常温窒素ガスから高温窒素ガスおよび低温窒素ガスを生成し、それらを用いることで凝固促進および凝固対象液の保温などを行うことができ、優れた効率で凍結洗浄を行うことができる。このように第10実施形態では、高温・低温窒素ガス供給ユニット67が本発明の「凝固促進手段」および「凝固防止手段」として機能する。
【0077】
また、上記実施形態では、配管65およびノズル7内での凝固対象液の温度を一定に保つとともに凝固を防止するために、配管65を二重管構造とするとともに配管65のガス供給路に保温・温調用窒素ガスを供給しているが、保温・温調用窒素ガスを用いる代わりに、配管に沿ってワイヤー状のヒーターを設け、配管およびノズル内の凝固対象液を温調してもよい。この場合、ヒーターが本発明の「凝固防止手段」として機能する。
【0078】
また、配管およびノズル内の凝固対象液を温調する代わりに、ノズル7からの凝固対象液の吐出完了後に配管およびノズルに残留する凝固対象液を取り除くように構成してもよい。例えば
図16に示すように単管構造の配管を用いるとともにパージ用ガス供給ユニット68を設けてもよい。なお、パージ用ガス供給ユニット68の基本構成は、保温・温調用ガス供給ユニット66と同様であり、マスフローコントローラ(MFC)681と、加熱器682と、開閉バルブ683とを有している。
【0079】
そして、ノズル7からの凝固対象液の吐出が完了した後の制御ユニット4から動作指令に応じて開閉バルブ683が開いて加熱器682により凝固対象液の凝固点より高い温度に昇温された高温窒素ガスを配管に圧送して配管およびノズル7に残留する凝固対象液をノズル7の吐出口(図示省略)からパージ可能に構成されている。このように、
図16に示す第11実施形態では、適当なタイミングで配管およびノズル7に残留する凝固対象液をパージしているため、配管およびノズル7で凝固対象液が凝固するのを確実に防止することができる。このように、第11実施形態では、パージ用ガス供給ユニット68が本発明の「凝固防止手段」および「パージ部」として機能している。
【0080】
また、残留凝固対象液をノズル7の吐出口からパージする代わりに、例えば
図17に示すように、「コンバム(登録商標)」などの真空発生部69を設けてもよい。この真空発生部69は開閉バルブ648を介して配管と接続されている。そして、ノズル7からの凝固対象液の吐出が完了した後の制御ユニット4から動作指令に応じて開閉バルブ644が閉じるとともに開閉バルブ648が開くことで、真空発生部69が配管およびノズル7内に残留する凝固対象液を吸引して排出する。このように、
図17に示す第12実施形態では、適当なタイミングで配管およびノズル7に残留する凝固対象液を吸引排出しているため、配管およびノズル7で凝固対象液が凝固するのを確実に防止することができる。このように、第12実施形態では、真空発生部69が本発明の「凝固防止手段」および「吸引排出部」として機能している。
【0081】
また、上記実施形態の基板処理装置は、窒素ガス供給源およびDIW供給源をいずれも装置内部に内蔵しているが、これらの供給源については装置の外部に設けられてもよく、例えば工場内に既設の供給源を利用するようにしてもよい。
【0082】
さらに、上記実施形態の基板処理装置は、基板Wの上方に近接配置される遮断部材9を有するものであるが、本発明は遮断部材を有しない装置にも適用可能である。また、この実施形態の装置は基板Wをその周縁部に当接するチャックピン24によって保持するものであるが、基板の保持方法はこれに限定されるものではなく、他の方法で基板を保持する装置にも、本発明を適用することが可能である。