(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記処理部は、前記サンプリング処理によって取得された前記交流信号のゼロクロスの前後における前記瞬時値に基づいてゼロクロス算出用の補間式を特定すると共に、前記ゼロクロスの時点を前記ゼロクロス算出用の補間式から算出する請求項1または2記載の測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記した補間方式には、解決すべき以下の課題がある。すなわち、上記の補間方式では、変数xを含んでいないラグランジュ補間式内の分母部分の値を予め計算してメモリに記憶させることでラグランジュ補間式を特定する処理に要する時間の短縮を図っている。しかしながら、複数の交流信号を入力して各交流信号についての測定を行う多チャンネル構成の測定装置では、ラグランジュ補間式を特定する処理を各交流信号毎に行う必要があるため、上記の補間方式を採用したとしても、ラグランジュ補間式を特定する処理に依然として多くの時間を要しており、さらなる処理時間の短縮が望まれている。
【0006】
本発明は、かかる改善すべき課題に鑑みてなされたものであり、交流信号についてのラグランジュ補間式を特定する処理の処理時間を短縮し得る測定装置および測定方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく請求項1記載の測定装置は、複数の交流信号を入力して当該各交流信号の瞬時値を予め決められたサンプリング周期で取得するサンプリング処理を実行するサンプリング部と、測定対象として規定した前記交流信号における一部の区間の波形を表す補間式であって下記の(1)式で与えられるラグランジュ補間式を、前記測定対象において前記サンプリング処理によって取得された前記瞬時値のうちの時間的に連続するn+1(nは予め決められた1以上の整数)個の瞬時値に基づいて特定すると共に、前記測定対象の時間長をQ(Qは予め決められた2以上の整数)個に分割した各分割区間の先端に相当する全部でQ個の分割時点における前記瞬時値を前記ラグランジュ補間式から求める補間処理を行う処理部と、前記補間処理によって算出された前記瞬時値を用いて前記交流信号についての測定を行う測定部とを備えた測定装置であって、前記処理部は、
前記交流信号のゼロクロスの時点によって区分される当該交流信号の周期の1または複数分の区間を前記測定対象として規定すると共に当該測定対象における前記サンプリング周期の総数m(mは0以上の値)をカウントし、前記Q個の各分割時点に一対一で対応するQ個の前記ラグランジュ補間式を特定し、前記各交流信号のうちのいずれか1つの交流信号についての当該各ラグランジュ補間式を特定する際には、前記各ラグランジュ補間式内の総和記号によって総和される各項
のLj(x)式内のx
jおよびx
iにおける各々の添字の値を当該x
jおよび当該x
iの値として代入し、かつ当該各ラグランジュ補間式にそれぞれ対応する前記各分割時点の前記Q個中における時間的な順位を0から数えた順位値k(kは0以上の整数)と前
記総数
mとの乗算値を前記Qで除算した除算値(k×m/Q)を前記L
j(x)式内のxに代入して算出した当該L
j(x)式の値を係数として記憶部に記憶させ、前記各交流信号のうちの前記1つの交流信号を除く他の交流信号についての前記各ラグランジュ補間式を前記記憶部に記憶されている前記係数を用いて特定する測定装置。
p(x)=Σ[j=0,n]L
j(x)y
j(但し、L
j(x)=Π[i=0(i≠j),n](x-x
i)/(x
j-x
i))…(1)式
【0008】
また、請求項2記載の測定装置は、請求項1記載の測定装置において、前記処理部は、前記総数mの特定に先立って前記L
j(x)式における分母部分の値を算出して前記記憶部に記憶させ、前記総数mを特定した後に前記記憶部に記憶されている前記分母部分の値を用いて前記L
j(x)式の値を算出する。
【0009】
また、請求項3記載の測定装置は、請求項1または2記載の測定装置において、前記処理部は、前記サンプリング処理によって取得された前記交流信号のゼロクロスの前後における前記瞬時値に基づいてゼロクロス算出用の補間式を特定すると共に、前記ゼロクロスの時点を前記ゼロクロス算出用の補間式から算出
する。
【0010】
また、請求項4記載の測定方法は、複数の交流信号を入力して当該各交流信号の瞬時値を予め決められたサンプリング周期で取得するサンプリング処理を実行し、測定対象として規定した前記交流信号における一部の区間の波形を表す補間式であって下記の(1)式で与えられるラグランジュ補間式を、前記測定対象において前記サンプリング処理によって取得された前記瞬時値のうちの時間的に連続するn+1(nは予め決められた1以上の整数)個の瞬時値に基づいて特定すると共に、前記測定対象の時間長をQ(Qは予め決められた2以上の整数)個に分割した各分割区間の先端に相当する全部でQ個の分割時点における前記瞬時値を前記ラグランジュ補間式から求める補間処理を行い、前記補間処理によって算出された前記瞬時値を用いて前記交流信号についての測定を行う測定方法であって、
前記交流信号のゼロクロスの時点によって区分される当該交流信号の周期の1または複数分の区間を前記測定対象として規定すると共に当該測定対象における前記サンプリング周期の総数m(mは0以上の値)をカウントし、前記Q個の各分割時点に一対一で対応するQ個の前記ラグランジュ補間式を特定し、前記各交流信号のうちのいずれか1つの交流信号についての当該各ラグランジュ補間式を特定する際には、前記各ラグランジュ補間式内の総和記号によって総和される各項
のLj(x)式内のx
jおよびx
iにおける各々の添字の値を当該x
jおよび当該x
iの値として代入し、かつ当該各ラグランジュ補間式にそれぞれ対応する前記各分割時点の前記Q個中における時間的な順位を0から数えた順位値k(kは0以上の整数)と前記測定対象における前
記総数
mとの乗算値を前記Qで除算した除算値(k×m/Q)を前記L
j(x)式内のxに代入して算出した当該L
j(x)式の値を係数として記憶部に記憶させ、前記各交流信号のうちの前記1つの交流信号を除く他の交流信号についての前記各ラグランジュ補間式を前記記憶部に記憶されている前記係数を用いて特定する測定方法。
p(x)=Σ[j=0,n]L
j(x)y
j(但し、L
j(x)=Π[i=0(i≠j),n](x-x
i)/(x
j-x
i))…(1)式
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の測定装置、および請求項4記載の測定方法では、複数の交流信号の1つについてのQ個のラグランジュ補間式P(x)を特定する際に、ラグランジュ補間式P(x)内の総和記号(Σ)によって総和される各項におけるL
j(x)式の値を算出してその値を係数として記憶部に記憶させる。このため、この測定装置および測定方法では、複数の交流信号のうちの、上記した処理を実行した交流信号を除く他の交流信号についてのラグランジュ補間式P(x)を特定する際には、係数として記憶されている各L
j(x)式の値を読み出して、その係数に瞬時値を乗算して各項を算出して総和するだけの簡易な演算でラグランジュ補間式P(x)を特定することができる。したがって、この測定装置および測定方法によれば、ラグランジュ補間式内のL
j(x)式の一部である分母部分の値だけを予め計算して記憶させる従来の構成および方法とは異なり、ラグランジュ補間式P(x)式の特定に際して、ラグランジュ補間式内のL
j(x)式の全体を算出する必要がないため、ラグランジュ補間式P(x)を特定する際の処理時間を十分に短縮させることができる。
【0012】
請求項2記載の測定装置では、測定対象におけるサンプリング周期の総数mの特定に先立ってL
j(x)式における分母部分の値を算出して記憶部に記憶させ、総数mを特定した後に記憶部に記憶されている分母部部分の値を用いてL
j(x)式の値を算出する。このため、この測定装置によれば、例えば、測定装置の起動時から総数mが特定されるまでの間に分母部分の値を算出して記憶部に記憶させておくことで、総数mを特定してその総数mを用いてラグランジュ補間式P(x)を特定するまでの時間をさらに短縮させることができる。
【0013】
請求項3記載の測定装置では、処理部は、サンプリング処理によって取得された交流信号のゼロクロスの前後における瞬時値に基づいてゼロクロス算出用の補間式を特定すると共に、ゼロクロスの時点をゼロクロス算出用の補間式から算出して、そのゼロクロスの時点によって区分される交流信号の周期の1または複数分の区間を測定対象として規定する。このため、測定装置では、ゼロクロスを正確に算出することができ、これによって交流信号の周期を正確に算出することができる。したがって、この測定装置によれば、例えば、交流信号の周期の1または複数分の区間をQ個に均等に分割した各分割区間の先端に相当する各分割時点における瞬時値をラグランジュ補間式P(x)から求めようとした場合において、分割区間が正確な値となるため、瞬時値を正確に求めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、測定装置および測定方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0016】
最初に、測定装置の一例としての測定装置1の構成について説明する。
図1に示す測定装置1は、信号処理部11、サンプリング部12、記憶制御部13、記憶部14、処理部15および測定部16を備え、入力した複数の交流信号S1〜S3(一例として、
図2に示すように、波形が正弦波であって、周波数(周期Ta)が互いに等しくかつ位相が互いに異なる交流電圧信号:以下、区別しないときには「交流信号S」ともいう)についての物理量(例えば、電圧や電力)の実効値、並びに交流信号Sに含まれる高調波の次数および振幅などを測定可能に構成されている。また、測定装置1は、入力した交流信号Sの良否を判定可能に構成されている。
【0017】
信号処理部11は、入力した交流信号Sに含まれているノイズ成分を除去するアンチエリアシングフィルタ処理を実行する。また、信号処理部11は、
図1に示すように、複数の交流信号S(この例では、交流信号S1〜S3の3つ)を入力して上記のアンチエリアシングフィルタ処理を実行可能な複数チャンネル(この例では、Ch1〜Ch3までの3チャンネル)の構成となっている。
【0018】
サンプリング部12は、1つのサンプリングクロック生成回路と複数(この例では3つ)のサンプリング回路(いずれも図示せず)とを備えた複数チャンネル(この例では、Ch1〜Ch3までの3チャンネル)の構成となっている。サンプリングクロック生成回路は、予め決められたサンプリング周期Ts(
図3参照)のサンプリングクロックを生成する。各サンプリング回路は、サンプリングクロックに同期して各交流信号Sをそれぞれサンプリングして各交流信号S1〜S3の瞬時値Afを取得し、その瞬時値Afを示すデジタルデータ(サンプリングデータ)Df1,Df2,Df3(以下、区別しないときには「デジタルデータDf」ともいう)を出力するサンプリング処理をそれぞれ実行する。この場合、デジタルデータDfは、測定部16の実効値演算処理回路31によって実行される後述する実効値演算処理において交流信号Sについての物理量(例えば、電圧や電力)の実効値の測定に用いられると共に、処理部15の補間処理回路22によって行われる後述するラグランジュ補間式P(x)の特定に用いられる。
【0019】
記憶制御部13は、サンプリング部12の各サンプリング回路からそれぞれ出力されるデジタルデータDfを記憶部14に記憶させる。記憶部14は、記憶制御部13の制御に従ってデジタルデータDfを記憶する。この場合、記憶部14は、瞬時値Afを取得(サンプリング)したサンプリング時点Tz(例えば、
図3に示すサンプリング時点Tz0〜Tz32)を特定可能に(各サンプリング時点Tzと対応付けて)デジタルデータDfを記憶する。
【0020】
処理部15は、ゼロクロス検出回路21および補間処理回路22を備えて構成されている。ゼロクロス検出回路21は、記憶部14に記憶されているデジタルデータDf1,Df2,Df3のうちの1つ(例えば、デジタルデータDf1)を読み出して、そのデジタルデータDf1によって示される瞬時値Afと予め決められた基準値(一例として、0Vの値)とを比較することにより、交流信号S(この例では、交流信号S1)が基準値と交差(ゼロクロス)したか否かを検出する。この場合、ゼロクロス検出回路21は、例えば、立ち上がりのゼロクロスを検出したときに、そのゼロクロスの直前および直後の瞬時値Afを示すデジタルデータDfを特定して補間処理回路22に出力する。また、ゼロクロス検出回路21は、立ち上がりのゼロクロスを検出した直後の瞬時値Af(
図3の例では、瞬時値Af0)を取得したサンプリング時点Tz(同図の例では、サンプリング時点Tz0)から、次に立ち上がりのゼロクロスを検出した直前の瞬時値Af(同図の例では、瞬時値Af32)を取得したサンプリング時点Tz(同図の例では、サンプリング時点Tz32)までにおける各サンプリング時点Tzをそれぞれ開始時刻とし、各開始時刻の次のサンプリング時点Tzを終了時刻とする各サンプリング周期Tsの総数m(mは1以上の整数(0以上の値の一例)であって、同図の例では、33個)、言い換えると、サンプリング時点Tz0からサンプリング時点Tz32までの間の瞬時値Afの数(同図の例では、33個)をカウントして補間処理回路22に出力する。なお、サンプリング時点Tz0を開始時刻とするサンプリング周期Tzの先頭(同図の例では、サンプリング時点Tz0)からサンプリング時点Tz32を開始時刻とするサンプリング周期Tsの末尾(同図の例では、サンプリング時点Tz32の次のサンプリング時点Tz33)までの間が、後述する測定対象Ujとなる。
【0021】
補間処理回路22は、
図3に示すように、交流信号Sの一部の区間を測定対象Ujとして規定する。具体的には、補間処理回路22は、同図に示すように、ゼロクロス検出回路21から出力されたデジタルデータDfによって示される瞬時値Af0,Af33にそれぞれ対応するサンプリング時点Tz0,Tz33によって区分される交流信号Sのほぼ1周期Ta分に相当する区間を測定対象Ujとして規定する。
【0022】
また、補間処理回路22は、記憶部14に記憶されているデジタルデータDfを読み出して、その各デジタルデータDfによって示される瞬時値Af(サンプリング処理によって取得された瞬時値)に基づき、交流信号S(測定対象Uj)の波形を表すラグランジュ補間式P(x)を特定する。また、補間処理回路22は、
図4,5に示すように、測定対象Ujの時間長TcをQ(Qは、予め決められた2以上の整数であって、一例として、2のべき乗数(例えば、16))個に均等に分割した各分割区間Udの先端(開始端)に相当する全部でQ(16)個の分割時点Td0〜Td15(以下、区別しないときには「分割時点Td」ともいう)におけるQ個の瞬時値At0〜At15(以下、区別しないときには「瞬時値At」ともいう)を、ラグランジュ補間式P(x)から求める補間処理を行うと共に、算出した瞬時値Atを示すデジタルデータDtを出力する。この場合、デジタルデータDtは、測定部16によって実行される後述するFFT処理および判定処理において用いられる。
【0023】
また、この測定装置1では、一例として、処理部15のゼロクロス検出回路21がFPGA(Field Programmable Gate Array )で構成され、処理部15の補間処理回路22がCPUで構成されているが、ゼロクロス検出回路21および補間処理回路22を1つのCPUで構成することもできる。
【0024】
測定部16は、実効値演算処理回路31、FFT処理回路32および判定処理回路33を備えて構成されている。実効値演算処理回路31は、サンプリング部12から出力されるデジタルデータDf(瞬時値Af)を用いて交流信号Sについての物理量(例えば、電圧や電力)の実効値を測定する実効値演算処理を実行する。FFT処理回路32は、処理部15から出力されるデジタルデータDt(補間処理によって算出される瞬時値At)を用いてFFT処理を実行して交流信号Sに含まれている高調波の次数および振幅を測定する。この場合、FFT処理回路32は、測定対象Uj毎(この例では、1つの周期Ta毎)にFFT処理を実行する。
【0025】
判定処理回路33は、処理部15から出力されるデジタルデータDt(補間処理によって算出される瞬時値At)を用いて交流信号Sにおける測定対象Ujの良否を判定する判定処理を実行する。この判定処理では、判定処理回路33は、測定対象Ujよりも時間的に先(一例として、直前)に入力した、測定対象Ujと同数の周期分(この例では、1つの周期Ta分)の交流信号Sを比較対象として規定し、この比較対象における各デジタルデータDtによって示される各瞬時値Atに予め決められた加算値を加算した上限値、および各瞬時値Atから予め決められた減算値を減算した下限値と、測定対象Ujにおける各瞬時値Atとを比較して、その比較結果に基づいて良否を判定する。
【0026】
また、測定部16は、実効値演算処理によって測定された物理量の実効値、FFT処理によって測定された交流信号Sに含まれる高調波の次数および振幅、並びに判定処理よって判定された交流信号Sの測定対象Ujについての良否判定の結果を図外の表示部に表示させる。
【0027】
次に、測定装置1を用いた測定方法、およびその際の測定装置1の動作について図面を参照して説明する。なお、ラグランジュ補間式P(x)において用いる後述する「n」が、一例として、「3」に規定されているものとする。
【0028】
この測定装置1では、図外の操作部に対して測定開始を指示する操作が行われたときに、信号処理部11のフィルタ回路が、信号ケーブルを介して入力した交流信号S(交流信号S1〜S3)のノイズ成分を除去するアンチエリアシングフィルタ処理を開始し、処理後の交流信号Sをサンプリング部12に出力する。また、サンプリング部12のサンプリングクロック生成回路が、予め決められたサンプリング周期Ts(
図3参照)のサンプリングクロックを生成する。また、サンプリング部12の各サンプリング回路が、サンプリング処理をそれぞれ実行し、サンプリングクロックに同期して交流信号Sをサンプリングして、交流信号Sの瞬時値Afを取得すると共に、その瞬時値Afを示すデジタルデータDfを出力する。
【0029】
次いで、記憶制御部13が、サンプリング部12の各サンプリング回路からそれぞれ出力されるデジタルデータDf1,Df2,Df3を、記憶部14内において各デジタルデータDf1,Df2,Df3に対応付けて設けられている各記憶領域に記憶させる。
【0030】
また、処理部15では、ゼロクロス検出回路21が、記憶部14に記憶されているデジタルデータDf1,Df2,Df3のうちの1つ(例えば、デジタルデータDf1)を読み出して、そのデジタルデータDf1によって示される交流信号S1の瞬時値Afと基準値(0Vの値)とを比較し、交流信号S1が基準値と交差(ゼロクロス)したか否かを検出する。この際に、ゼロクロス検出回路21は、立ち上がりのゼロクロスを検出したときに、ゼロクロスの直前および直後の瞬時値Afを示すデジタルデータDfを特定して補間処理回路22に出力する。また、ゼロクロス検出回路21は、立ち上がりのゼロクロスを検出した直後の瞬時値Af(
図3の例では、瞬時値Af0)を取得したサンプリング時点Tz(同図の例では、サンプリング時点Tz0)から、次に立ち上がりのゼロクロスを検出した直前の瞬時値Af(同図の例では、瞬時値Af32)を取得したサンプリング時点Tz(同図の例では、サンプリング時点Tz32)までにおける各サンプリング時点Tzをそれぞれ開始時刻とし、各開始時刻の次のサンプリング時点Tzを終了時刻とする各サンプリング周期Tsの総数mをカウントして補間処理回路22に出力する。
【0031】
また、補間処理回路22が、
図3に示すように、ゼロクロス検出回路21から出力されたデジタルデータDfによって示される瞬時値Af0,Af33にそれぞれ対応するサンプリング時点Tz0,Tz33よって区分される交流信号Sのほぼ1周期Ta分に相当する区間を測定対象Ujとして規定する。また、補間処理回路22は、各交流信号S1〜S3における測定対象Ujの時間長Tc(この例では、周期Taの1つ分の時間長)をQ(Qは、2のべき乗数であって、一例として、16)個に均等に分割した各分割区間Ud(
図4参照)の先端(開始端)に相当する全部でQ(この例では、16)個の分割時点Td(同図の分割時点Td0〜Td15)におけるQ個の瞬時値At(同図の瞬時値At0〜At15)をラグランジュ補間式P(x)から求める補間処理を行う。
【0032】
補間処理回路22は、この補間処理において、各交流信号S1〜S3について、Q個の分割時点Tdに一対一で対応するQ個(1つの交流信号SについてQ個:つまり、この例では、全部で16×3個)のラグランジュ補間式P(x)を特定し、1個のラグランジュ補間式P(x)から1個の分割時点Tdにおける瞬時値Atを求める。
【0033】
ここで、ラグランジュ補間式P(x)は、時間をxとし、瞬時値Afをyとして、xとyとの関係をxの高次多項式で表した高次補間式であって、次に示す式(1)で与えられる。
p(x)=Σ[j=0,n]L
j(x)y
j
ただし、L
j(x)=Π[i=0(i≠j),n](x-x
i)/(x
j-x
i)・・・式(1)
なお、Π[i=0(i≠j),n](x-x
i)/(x
j-x
i)は、(x-x
i)の各列の総乗を(x
j-x
i)の各列の総乗で除した値、つまり、
(x-x
0)…(x-x
i−1)(x-x
i+1)…(x-x
n)/(x
j-x
0)…(x
j-x
i−1)(x
j-x
i+1)…(x
j-x
n)
で与えられる値である。
【0034】
この場合、この例では、nが「3」に規定されているため、ラグランジュ補間式P(x)は次に示す式(2)で与えられる。
p(x)=Σ[j=0,3]L
j(x)y
j
=((x-x
1)(x-x
2)(x-x
3)/(x
0-x
1)(x
0-x
2)(x
0-x
3))y
0
+((x-x
0)(x-x
2)(x-x
3)/(x
1-x
0)(x
1-x
2)(x
1-x
3))y
1
+((x-x
0)(x-x
1)(x-x
3)/(x
2-x
0)(x
2-x
1)(x
2-x
3))y
2
+((x-x
0)(x-x
1)(x-x
2)/(x
3-x
0)(x
3-x
1)(x
3-x
2))y
3・・・式(2)
【0035】
具体的には、補間処理回路22は、次のようにして各ラグランジュ補間式P(x)を特定する。最初に、各交流信号S1〜S3のうちのいずれか1つの交流信号S(例えば、交流信号S1)についての各ラグランジュ補間式P(x)を特定する。さらに、交流信号S1についての各ラグランジュ補間式P(x)の中で、まず、上記したQ個(16個)の分割時点Tdのうちの時間的に最も早い1番目の分割時点Td0(
図4,5参照)に対応するラグランジュ補間式P(x)を特定する。この際に、補間処理回路22は、
図5に示すように、測定対象Ujにおける各サンプリング時点Tzの中で、分割時点Td0に近いn+1個(この例では、nが「3」に規定されているため、4個)のサンプリング時点Tz0〜Tz3を記憶部14に記憶されているデジタルデータDfに基づいて特定する。
【0036】
次いで、補間処理回路22は、上記した式(1)で与えられるラグランジュ補間式P(x)内の総和記号(Σ)によって総和される各項(L
j(x)y
j)におけるL
j(x)式内のx
jおよびx
iにサンプリング時点Tz0〜Tz3を代入する。より具体的には、上記した式(2)内のx
0〜x
3にサンプリング時点Tz0〜Tz3をそれぞれ代入する。ここで、隣接するサンプリング時点Tz間の時間長はサンプリング周期Tsに相当して一定であるため、サンプリング時点Tz0を原点として、サンプリング周期Tsを「1」と仮定すると、サンプリング時点Tz0〜Tz3は、それぞれ0、1、2、3にそれぞれ相当する。このように仮定して、上記した式(2)内のx
0〜x
3に0、1、2、3をそれぞれ代入する、つまり、上記したL
j(x)式内のx
jおよびx
iにおける各々の添字(
jおよび
i)の値をx
jおよびx
iの値として代入すると、ラグランジュ補間式P(x)は次に示す式(3)で与えられる。
p(x)=Σ[j=0,3]L
j(x)y
j
=((x-1)(x-2)(x-3)/(0-1)(0-2)(0-3))y
0
+((x-0)(x-2)(x-3)/(1-0)(1-2)(1-3))y
1
+((x-0)(x-1)(x-3)/(2-0)(2-1)(2-3))y
2
+((x-0)(x-1)(x-2)/(3-0)(3-1)(3-2))y
3
=((x-1)(x-2)(x-3)/-6)y
0
+((x-0)(x-2)(x-3)/2)y
1
+((x-0)(x-1)(x-3)/-2)y
2
+((x-0)(x-1)(x-2)/6)y
3・・・式(3)
【0037】
一方、上記した式(2)および式(3)におけるxには、このラグランジュ補間式P(x)に対応する分割時点Td0を代入する。ここで、この例では、測定対象Ujにおけるサンプリング周期Tsの総数mが33であるため、上記したようにサンプリング周期Tsを「1」と仮定すると、測定対象Ujの時間長Tcはm=33となる。また、測定対象UjにQ=16個の分割時点Tdが存在するため、隣接する分割時点Tdの時間長(つまり、分割区間Ud)は、m/Q=33/16=2.0625となる。また、このラグランジュ補間式P(x)に対応する分割時点TdのQ個中における時間的な順位(順番)を0から数えた順位値をkとして(kは0以上の整数)、分割時点Td0をサンプリング時点Tz0と同じ原点とすると、1番目の分割時点Td0は、k×m/Q=0となる。このように仮定して、上記した式(3)内の各xに0をそれぞれ代入する、つまり、上記したL
j(x)内のxに、ラグランジュ補間式P(x)に対応する分割時点TdのQ個中における時間的な順位を示す順位値kと測定対象Ujにおけるサンプリング周期Tsの総数mとの乗算値をQで除算した除算値(k×m/Q)を代入すると、ラグランジュ補間式P(x)は次に示す式(4)で与えられる。
p(x)=Σ[j=0,3]L
j(x)y
j
=((0-1)(0-2)(0-3)/-6)y
0
+((0-0)(0-2)(0-3)/2)y
1
+((0-0)(0-1)(0-3)/-2)y
2
+((0-0)(0-1)(0-2)/6)y
3
=(-6/-6)y
0+(0/2)y
1+(0/-2)y
2+(0/6)y
3
=y
0・・・式(4)
なお、y
0は、サンプリング時点Tz0における瞬時値Af0である。
【0038】
このように、補間処理回路22は、交流信号S1についての1番目の分割時点Td0に対応するラグランジュ補間式P(x)として上記した式(4)を特定する。また、補間処理回路22は、ラグランジュ補間式P(x)を特定する過程で算出したL
j(x)の値、具体的には、上記したように、L
j(x)式内のx
jおよびx
iにおける各々の添字の値をx
jおよびx
iの値として代入し、かつ分割時点Td0のQ個中における時間的な順位を示す順位値kと測定対象Ujにおけるサンプリング周期Tsの総数mとの乗算値をQで除算した除算値をL
j(x)式内のxに代入して算出した値(L
0(x)=(-6/-6)、L
1(x)=(0/2)、L
2(x)=(0/-2)、L
3(x)=(0/6):上記式(4)参照)を係数eとして記憶部14に記憶させる。
【0039】
次いで、補間処理回路22は、交流信号S1についての2番目の分割時点Td1(
図4,5参照)に対応するラグランジュ補間式P(x)を特定する。この際に、補間処理回路22は、
図5に示すように、測定対象Ujにおける各サンプリング時点Tzの中で、分割時点Td0に近いn+1個(この例では、nが「3」に規定されているため、4個)のサンプリング時点Tz1〜Tz4を記憶部14に記憶されているデジタルデータDfに基づいて特定する。続いて、補間処理回路22は、上記した分割時点Td0に対応するラグランジュ補間式P(x)を特定する際の処理と同様にして、L
j(x)式内のx
jおよびx
iにサンプリング時点Tz1〜Tz4を代入する。
【0040】
この場合、上記したように、サンプリング時点Tz0を原点として、サンプリング周期Tsを「1」と仮定すると、サンプリング時点Tz1〜Tz4は、それぞれ1、2、3、4にそれぞれ相当するため、上記した式(2)内のx
0〜x
3に1、2、3、4をそれぞれ代入する、つまり、上記したL
j(x)式内のx
jおよびx
iにおける各々の添字(
jおよび
i)の値をx
jおよびx
iの値として代入すると、ラグランジュ補間式P(x)は次に示す式(5)で与えられる。
p(x)=Σ[j=0,3]L
j(x)y
j
=((x-2)(x-3)(x-4)/(1-2)(1-3)(1-4))y
0
+((x-1)(x-3)(x-4)/(2-1)(2-3)(2-4))y
1
+((x-1)(x-2)(x-4)/(3-1)(3-2)(3-4))y
2
+((x-1)(x-2)(x-3)/(4-1)(4-2)(4-3))y
3
=((x-2)(x-3)(x-4)/-6)y
0
+((x-1)(x-3)(x-4)/2)y
1
+((x-1)(x-2)(x-4)/-2)y
2
+((x-1)(x-2)(x-3)/6)y
3・・・式(5)
【0041】
この場合、上記した式(2)および式(5)から明かなように、両式におけるL
j(x)内の分母部分の値(以下、分母部分の値を「値g」ともいう)が同じ値となる。つまり、m個のうちのどのn個のサンプリング時点Tzを選択したとしても、x
jおよびx
iにおける各々の添字の値をx
jおよびx
iの値として代入したときには、n個のサンプリング時点Tzが連続するサンプリング時点Tzである限り、L
j(x)内の分母部分の値gは同じ値となる。
【0042】
また、上記したように、サンプリング周期Tsを「1」と仮定し、分割時点Td0をサンプリング時点Tz0と同じ原点とすると、2番目の分割時点Td1は、k×m/Q=1×33/16=2.0625となるため、上記した式(5)内の各xに2をそれぞれ代入すると、ラグランジュ補間式P(x)は次に示す式(6)で与えられる。
p(x)=Σ[j=0,3]L
j(x)y
j
=((2.0625-2)(2.0625-3)(2.0625-4)/-6)y
0
+((2.0625-1)(2.0625-3)(2.0625-4)/2)y
1
+((2.0625-1)(2.0625-2)(2.0625-4)/-2)y
2
+((2.0625-1)(2.0625-2)(2.0625-3)/6)y
3・・・式(6)
なお、y
1は、サンプリング時点Tz2における瞬時値Af2である。
【0043】
このように、補間処理回路22は、交流信号S1についての2番目の分割時点Td1に対応するラグランジュ補間式P(x)として上記した式(6)を特定する。また、補間処理回路22は、ラグランジュ補間式P(x)を特定する過程で算出したL
j(x)の値(L
0(x)=(0/-6)、L
1(x)=(2/2)、L
2(x)=(0/-2)、L
3(x)=(0/6):上記式(6)参照)を係数eとして処理部15に記憶させる。
【0044】
以下、補間処理回路22は、上記した手順と同様の手順で、交流信号S1についての3番目の分割時点Td1から16番目の分割時点Td16にそれぞれ対応するラグランジュ補間式P(x)を特定する。ラグランジュ補間式P(x)を特定する過程で算出したL
j(x)の値を係数eとして処理部15に記憶させる。
【0045】
以上により、交流信号S1についての各分割時点Tdに対応するラグランジュ補間式P(x)の特定が終了する。次いで、補間処理回路22は、交流信号S2,S3についての各分割時点Tdに対応するラグランジュ補間式P(x)を特定する。この際に、補間処理回路22は、記憶部14に記憶されている係数eを読み出して用いる。このような処理を行うことにより、交流信号S2,S3についてのラグランジュ補間式P(x)を特定する際にL
j(x)式を算出する必要がないため、その分のラグランジュ補間式P(x)を特定する際の処理時間が十分に短縮される。
【0046】
一方、上記したように、L
j(x)式内のx
jおよびx
iにおける各々の添字(
jおよび
i)の値は、瞬時値Afや総数mに拘わらず、予め決められたnによって決まる。このため、補間処理回路22は、x
jおよびx
iだけによって算出されるL
j(x)式内における分母部分の値gを、測定装置1の起動時から総数mが特定されるまでの間に算出して記憶部14に記憶させる。このような処理を行うことで、総数mを特定してその総数mを用いてラグランジュ補間式P(x)を特定するまでに要する時間がさらに短縮される。
【0047】
次いで、補間処理回路22は、上記のように特定した各ラグランジュ補間式P(x)内のy
jに瞬時値Afを代入して各分割時点Tdにおける瞬時値Atを求めると共に、瞬時値Atを示すデジタルデータDtを出力する。
【0048】
一方、測定部16では、実効値演算処理回路31が実効値演算処理を実行する。この実効値演算処理では、実効値演算処理回路31は、サンプリング部12から出力されるデジタルデータDf(瞬時値Af)を用いて交流信号Sについての物理量(例えば、電圧や電力)の実効値を測定する。
【0049】
また、FFT処理回路32が、処理部15から出力されるデジタルデータDt(瞬時値At)を用いて測定対象Uj毎にFFT処理を実行し交流信号Sに含まれる高調波の次数および振幅を測定する。この測定装置1では、測定対象Ujにおいて2のべき乗数の瞬時値Atが算出されるため、FFT処理を効率的に行うことが可能となっている。また、この測定装置1では、上記したように各瞬時値Atが正確に算出されるため、交流信号Sに含まれる高調波の次数および振幅がFFT処理によって正確に測定される。
【0050】
また、判定処理回路33が、判定処理を実行する。この判定処理では、判定処理回路33は、処理部15から出力されるデジタルデータDt(補間処理によって算出される瞬時値At)を用いて交流信号Sにおける測定対象Ujの良否を判定する。具体的には、判定処理回路33は、測定対象Ujの直前に入力した、測定対象Ujと同数の周期Ta分(この例では、1つの周期Ta分)の交流信号Sを比較対象として規定し、この比較対象における各デジタルデータDtについて設定した上限値および下限値と、測定対象Ujにおける各瞬時値Atとを比較し、その比較結果に基づいて良否を判定する。この場合、判定処理回路33は、測定対象Ujにおける瞬時値Atの全てが下限値から上限値までの間に含まれているときには、その測定対象Ujを良好と判定し、測定対象Ujにおいて下限値から上限値までの間に含まれていない瞬時値Atが1つでも存在するときには、その測定対象Ujを不良と判定する。
【0051】
この測定装置1では、補間処理を行うことにより、測定対象Ujとして規定した1つの周期Ta分の交流信号Sにおいて算出した瞬時値Atの数と、比較対象として規定した1つの周期Ta分の交流信号Sにおいて算出した瞬時値Atの数が同数となる。このため、この測定装置1では、交流信号Sの周波数が変動している場合であっても、測定対象Ujにおける全ての瞬時値Atと、各瞬時値Atにそれぞれ対応する比較対象における各瞬時値Atについて設定された上限値および下限値とを比較することができる。この結果、この測定装置1では、瞬時値Atと上限値および下限値との比較結果に基づいて測定対象Ujの良否を判定する際の判定精度を十分に高めることが可能となっている。
【0052】
以後、処理部15は、上記した補間処理を繰り返して実行して、瞬時値Atを示すデジタルデータDtを出力し、測定部16は、上記した実効値演算処理、FFT処理および判定処理を繰り返して実行する。また、測定部16は、測定された物理量の実効値、交流信号Sに含まれる高調波の次数および振幅、並びに測定対象Ujについての良否判定の結果を図外の表示部に表示させる。
【0053】
このように、この測定装置1および測定方法では、各交流信号Sの1つについてのQ個のラグランジュ補間式P(x)を特定する際に、ラグランジュ補間式P(x)内の総和記号(Σ)によって総和される各項におけるL
j(x)式の値を算出してその値を係数eとして記憶部に記憶させる。このため、この測定装置1および測定方法では、複数の交流信号Sのうちの、上記した処理を実行した交流信号Sを除く他の交流信号Sについてのラグランジュ補間式P(x)を特定する際には、係数として記憶されている各L
j(x)式の値を読み出して、その係数に瞬時値Afを乗算して各項を算出して総和するだけの簡易な演算でラグランジュ補間式P(x)を特定することができる。したがって、この測定装置1および測定方法によれば、ラグランジュ補間式内のL
j(x)式の一部である分母部分の値gだけを予め計算して記憶させる従来の構成および方法とは異なり、ラグランジュ補間式P(x)式の特定に際して、ラグランジュ補間式内のL
j(x)式の全体を算出する必要がないため、ラグランジュ補間式P(x)を特定する際の処理時間を十分に短縮させることができる。
【0054】
また、この測定装置1および測定方法では、総数mの特定に先立ってL
j(x)式における分母部分の値gを算出して記憶部14に記憶させ、総数mを特定した後に記憶部14に記憶されている分母部部分の値gを用いてL
j(x)式の値を算出する。このため、この測定装置1および測定方法によれば、例えば、測定装置1の起動時から総数mが特定されるまでの間に分母部分の値gを算出して記憶部14に記憶させておくことで、総数mを特定してその総数mを用いてラグランジュ補間式P(x)を特定するまでの時間をさらに短縮させることができる。
【0055】
なお、本発明に係る測定装置および測定方法は、上記の構成および方法に限定されない。例えば、立ち上がりのゼロクロスの直後のサンプリング時点Tz(上記の例では、
図3に示すサンプリング時点Tz0)から、次の立ち上がりのゼロクロスを検出した直後のサンプリング時点Tz(上記の例では、同図に示すサンプリング時点Tz33)までの区間(以下、この区間を「第1の区間」ともいう)を測定対象Ujとして規定する例について上記したが、次のようにして測定対象Ujを規定する構成および方法を採用することもできる。
【0056】
この構成および方法では、処理部15が、サンプリング処理によって取得された交流信号Sの立ち上がりのゼロクロス(以下、「1つ目のゼロクロス」ともいう)の前後における瞬時値Af(例えば、
図3に示す瞬時値Af0、および瞬時値Af0の1つ前に取得された瞬時値Af)に基づいてゼロクロス算出用の補間式(例えば、直線補間式)を特定し、そのゼロクロス算出用の補間式から1つ目のゼロクロスの時点を算出する。また、処理部15は、次の立ち上がりのゼロクロス(以下、「2つ目のゼロクロス」ともいう)の前後における瞬時値Af(例えば、
図5に示す瞬時値Af32,33)に基づいてゼロクロス算出用の補間式(例えば、直線補間式)を特定し、そのゼロクロス算出用の補間式から2つ目のゼロクロスの時点を算出する。また、処理部15は、算出した2つのゼロクロス(1つ目および2つ目のゼロクロス)の時点によって区分される交流信号Sの周期Taの1または複数分の区間を測定対象Ujとして規定する。
【0057】
また、この構成および方法では、処理部15は、上記のようにして算出した交流信号Sの1周期Taと、上記した第1の区間の長さとが異なるときには、これら双方の値に基づいてラグランジュ補間式P(x)内における上記したmの値を特定する。具体的には、処理部15は、例えば、上記のようにして算出した交流信号Sの1周期Taが、第1の区間の長さよりも1%長い場合において(つまり、1.01倍のとき)、第1の区間において33回のサンプリング周期Tsがカウントされたときには、上記した補間処理において、カウントされた33に1.01を乗じた33.33を上記したmとしてラグランジュ補間式P(x)を特定する。
【0058】
ここで、2つのゼロクロスの直後の各サンプリング時点Tzの間の区間を測定対象Ujとして規定する上記の構成および方法では、ゼロクロスの時点からその直後のサンプリング時点Tzまでの時間が変動することがあり、これにより、測定対象Ujの長さが交流信号Sの1周期Ta分よりも長くなったり、短くなったりすることがある。この結果、この構成および方法では、例えば、交流信号Sの1周期Ta分の区間をQ個に均等に分割した各分割区間Udの先端に相当する各分割時点Tdにおける瞬時値Atをラグランジュ補間式P(x)から求めようとした場合において、測定対象Ujの長さが交流信号Sの1周期Ta分とは異なる長さとなることに起因して、求めた各瞬時値Atが不正確な値となるおそれがある。これに対してこの構成および方法によれば、交流信号Sの1周期Ta分を正確に算出することができる結果、その1周期Ta分を測定対象Ujとして規定することができるため、このような瞬時値Atを正確に求めることができる。
【0059】
また、「n」を3に規定し、ラグランジュ補間式P(x)に用いる瞬時値Afの数を(n+1)個(つまり、4個)に規定した構成および方法について上記したが、「n」は1以上の任意の整数に規定することができる。
【0060】
また、立ち上がりのゼロクロスを検出した直後のサンプリング時点Tzから、次にゼロクロスを検出した直前のサンプリング時点Tzまでのほぼ1周期Ta分に相当する区間を測定対象Ujとして規定する構成および方法について上記したが、測定対象Ujは、任意の2つのサンプリング時点Tz間によって区分される任意の長さに規定することができる。
【0061】
また、L
j(x)式内における分母部分の値gを、測定装置1の起動時から総数mを特定するまでの間に算出して記憶部14に記憶させる構成および方法について上記したが、総数mを特定した時点でこの分母部分の値gを含むL
j(x)式全体の値を算出して記憶部14に記憶させる構成および方法を採用することもできる。