特許第5701084号(P5701084)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5701084
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】加温システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/00 20060101AFI20150326BHJP
   F24H 1/10 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
   F24H1/00 611B
   F24H1/10 302L
   F24H1/10 302C
   F24H1/10 301F
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-20299(P2011-20299)
(22)【出願日】2011年2月2日
(65)【公開番号】特開2012-159253(P2012-159253A)
(43)【公開日】2012年8月23日
【審査請求日】2013年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(72)【発明者】
【氏名】片山 馨
【審査官】 鈴木 貴雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−159255(JP,A)
【文献】 特開2008−267722(JP,A)
【文献】 特開2008−175476(JP,A)
【文献】 特開2007−170690(JP,A)
【文献】 特開2005−337626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00
F24H 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水配管によって負荷と複数台のヒートポンプ式熱源機の冷凍サイクル中の水―冷媒熱交換器を直列に接続し、
各ヒートポンプ式熱源機は、前記水―冷媒熱交換器の入口側の水温を検出する入口温度センサと、前記水―冷媒熱交換器の出口側の水温を検出する出口温度センサと、前記入口温度センサによって検出した入口水温と停止温度とを比較して、前記入口温度が前記停止温度を超えると冷凍サイクルの運転を停止させ、前記入口温度が前記停止温度未満に低下するまで停止状態を継続する運転制御手段と、前記出口温度センサによって検出した出口水温と目標温度とを比較して冷凍サイクルによる加熱量を制御する加熱量制御手段とを備え、
前記水―冷媒熱交換器が直列接続された前記ヒートポンプ式熱源機中の上流側の前記ヒートポンプ式熱源機の前記目標温度を、下流側の前記ヒートポンプ式熱源機の前記停止温度以上に設定したことを特徴とする加温システム。
【請求項2】
前記複数台のヒートポンプ式熱源機は、その合計最大加熱能力が、負荷の最大放熱量より大きいことを特徴とする請求項1記載の加温システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、ヒートポンプ式冷凍サイクルを用いて温水を発生させるヒートポンプ式熱源機を複数台用いた加温システムに関する。
【背景技術】
【0002】
床暖房、ファンコイルユニット等の負荷に対して温水を供給して暖房等の加温を行なう加温システムにおいて、水を加熱する手段として外気等の空気を熱源としたヒートポンプ式熱源機を用いることが考えられている。 このようなヒートポンプ式熱源機では、水を加熱するための熱量が負荷の要求する熱量以上である必要がある。したがって、負荷の放熱量に応じて最適能力(加熱熱量)のヒートポンプ式熱源機を選定する必要がある。 加熱熱量は設置先や負荷の種類等によって異なるため、それぞれの負荷に見合った加熱能力を備えたヒートポンプ式熱源機の種類を準備しなければならない。
また、加熱能力を大きくするために複数の冷凍サイクルを備え、各冷凍サイクルの加熱出力となる水熱交換器を直列に接続して大能力化を図ったヒートポンプ式熱源機も考えられている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−175476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、負荷に応じて最適な加熱能力を備えたヒートポンプ式熱源機を準備した場合、機種数が多くなってしまい、製造や流通が非効率的になるという問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、加温システムは、水配管によって負荷に複数台のヒートポンプ式熱源機の冷凍サイクル中の水―冷媒熱交換器を直列に接続する。
各ヒートポンプ式熱源機は、水―冷媒熱交換器の入口側の水温を検出する入口温度センサと、水―冷媒熱交換器の出口側の水温を検出する出口温度センサと、入口温度センサによって検出した入口水温と停止温度とを比較して、入口温度が停止温度を超えると冷凍サイクルの運転を停止させ、入口温度が停止温度未満に低下するまで停止状態を継続する運転制御手段と、出口温度センサによって検出した出口水温と目標温度とを比較してヒートポンプ冷凍サイクルによる加熱量を制御する加熱量制御手段とを備える。
加温システムは、直列接続されたヒートポンプ式熱源機中の上流側のヒートポンプ式熱源機の目標温度を、下流側のヒートポンプ式熱源機の冷凍サイクルの停止温度以上に設定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施形態に係る加温システムの構成図。
図2】同加温システムに使用されるヒートポンプ式熱源機の冷凍サイクルと制御ブロック図。
図3】同ヒートポンプ式熱源機の制御フローチャート。
図4】同ヒートポンプ式熱源機の各部の温度変化と冷凍サイクルの運転状態を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施形態について、図1乃至図4を用いて説明する。
【0008】
本発明の実施形態に係るヒートポンプ式熱源機およびこのヒートポンプ式熱源機を用いた加温システム1の構成を図1に示す。
【0009】
加温システム1では、床暖房、ファンコイルユニット等の負荷4に水配管5から供給される温水が流通する。負荷4では、この温水の熱が放熱され所定の暖房や加温が行われる。水配管5は途中にポンプ3が設けられ、このポンプ3が動作することで水配管5内の水が流通するようになっている。水配管5途中には複数のヒートポンプ式熱源機HS(1)〜HS(n)が直列に設けられている。水配管5は負荷4とポンプ3、複数のヒートポンプ式熱源機HS(1)〜HS(n)の各水―冷媒熱交換器(図2中の26)を直列に接続した閉回路を構成している。ポンプ3を運転することで、水配管5内の水が負荷4、直列接続された複数のヒートポンプ式熱源機HS(1)〜HS(n)間を循環する。このように熱を搬送する水は閉回路になっている。
なお、図1では最終段のヒートポンプ式熱源機HS(n)と負荷4との間にポンプ3を配置しているが、ポンプ3の設置位置は水配管5途中のどこに設けても良い。
【0010】
以下、水配管5に対して直列接続されたヒートポンプ式熱源機HS(1)〜HS(n)において任意のヒートポンプ式熱源機をヒートポンプ式熱源機HS(i)とし、このヒートポンプ式熱源機HS(i)に隣接し、水配管5に流れる水の方向を基準として下流側のヒートポンプ式熱源機をヒートポンプ式熱源機HS(i+1)で表す。
ポンプ3の運転によって、負荷4から流出した低温水は、複数のヒートポンプ式熱源機HS(1)〜HS(n)を直列に流れる。ここで、ヒートポンプ式熱源機HS(1)〜HS(n)が運転されれば、水配管5内の水が所望の温度になるまで各ヒートポンプ式熱源機HS(1)〜HS(n)で順次加熱され、この加熱された水(湯)が、再び負荷4に戻る。この結果、負荷4には温水が供給され、その熱を放熱して、暖房または加温が実行される。
【0011】
図2に示す各ヒートポンプ式熱源機HS(1)〜HS(n)は、いずれも同一構成となっており、1つのヒートポンプ式冷凍サイクルとその冷凍サイクルを制御する制御装置とから構成される。ヒートポンプ式冷凍サイクルは、インバータ装置23で可変速駆動される圧縮機24、冷媒の流通方向を変更する四方弁25、水―冷媒熱交換器26、膨張弁27、熱源側熱交換器28、再び四方弁2を通過して圧縮機24へと戻るように順次冷媒配管を接続することで構成された一般的な冷凍サイクルとなっている。
【0012】
熱源側熱交換器28は、例えば、フィンドチューブタイプの空気熱交換器であり、この熱交換器に通風するためのプロペラファン29が設けられている。
なお、四方弁25は熱源側熱交換器28の表面に空気中の水分が凝縮してできる着霜を溶かす除霜運転のために設けられるが、着霜しない高温の雰囲気条件下で熱源側熱交換器28が使用されるのであれば、四方弁25は不要となる。
【0013】
冷凍サイクルが運転されると圧縮機24で冷媒が圧縮され、吐出された高温高圧冷媒が四方弁25を経由して水―冷媒熱交換器26に流れる。水―冷媒熱交換器26では水配管5を流れる水と冷凍サイクル中の高温高圧冷媒が熱交換し、水が加熱される。
【0014】
各ヒートポンプ式熱源機HS(1)〜HS(n)の冷凍サイクルの冷媒として、本実施の形態ではHFC冷媒であるR410Aを用いているが、適切な他の冷媒を用いてもよい。
【0015】
ヒートポンプ式熱源機HS(1)〜HS(n)は、負荷4が必要とする最大加熱量すなわち負荷4での最大放熱量に対し、少なくとも各ヒートポンプ式熱源機HS(1)〜HS(n)の最大加熱能力の合計が大きくなるように選定される。 望ましくは、負荷4の予想される最大放熱量が、複数台のヒートポンプ式熱源機HS(1)〜HS(n−1)の最大加熱能力を合計した合計最大加熱能力と略同じとし、最下流にあるヒートポンプ式熱源機HS(n)の加熱能力が余るように設定する。
【0016】
例えば、負荷4が必要とする最大加熱能力が7Kwであれば、最大加熱能力が5Kwのヒートポンプ式熱源機が2台(合計最大加熱能10Kw)を水配管5に対して直列接続して用いられる。
また、各ヒートポンプ式熱源機HS(1)〜HS(n)は全く同一でなくとも、各ヒートポンプ式熱源機HS(1)〜HS(n)の加熱能力を異ならせても良い。例えば、加熱能力が5Kwのヒートポンプ式熱源機と2.5Kwのヒートポンプ式熱源機を組み合わせることも可能である。
負荷4が必要とする最大加熱能力が7Kwの場合の組み合わせとして、水配管5中の水の流れに対して上流側から5Kwのヒートポンプ式熱源機を1台と2.5Kwのヒートポンプ式熱源機2台を直列に接続(合計最大加熱能10Kw)すればよい。この組み合わせであれば、上流側の5Kwのヒートポンプ式熱源機を1台とその下流側の2.5Kwのヒートポンプ式熱源機1台で、負荷4の最大加熱能力である7Kwを超えた7.5Kwとなり、最下流の2.5Kwのヒートポンプ式熱源機HS(n)は余裕分となる。
【0017】
次に、図2に従ってヒートポンプ式熱源機HS(i)の制御装置について説明する。 圧縮機24を駆動するインバータ装置23とプロペラファン29を駆動するファンモータ30は、制御手段である制御器21によって制御される。 制御器21は、マイクロコンピュータおよびその周辺回路から構成される。制御器21には、その入力側に水―冷媒熱交換器26の入口側の水配管5の温度(以下、入口水温Tin(i)という。)を検出する入口温度センサ32と水―冷媒熱交換器26の出口側の水配管5の温度(以下、出口水温Tout(i)という。)を検出する出口温度センサ31が入力される。さらに、制御器21には、使用者が設定操作可能な操作手段である操作器22が接続されている。 制御器21には、これらのセンサ31、32の検出温度および操作器22の設定内容が入力され、これらのデータに基づき圧縮機24やファンモータ30の回転数を決定し、制御する。
【0018】
さらに、熱源側熱交換器28の加熱運転時の冷媒出口配管近傍には熱交温度センサ33が設けられ、冷媒温度(Te)を検出する。また熱源側熱交換器28の熱交換用空気流入側には熱交換用の空気温度(To)を検出する温度センサ34が設けられている。これらのセンサ33,34も制御器21に接続され、制御器21は、検出した各温度Te、Toを読み取る。 これらのセンサ33,34の検出温度は、熱源側熱交換器28の着霜状態の検出に用いられる。制御器21は、各温度Te、Toの差(To−Te)及びその差の時間変化に基づき着霜状態を検出し、その着霜量が除霜に必要な量に到達したか否かを判断し、除霜が必要と判断した場合、除霜運転を行なう。なお、上述したように除霜運転が必要なければ、これらのセンサ33,34は不要となる。
【0019】
操作手段として機能する操作器22は、図2にその外観を示すように、表面に2種類のアップ/ダウン操作ボタン22a、22b及びヒートポンプ熱源機HS(i)の運転/停止を指示する運転/停止釦22cが設けられている。第1アップ/ダウン操作ボタン22aは、ヒートポンプ熱源機HS(i)の停止温度Toff(i)を設定するための操作釦で、入口温度センサ32の検出する入口水温Tin(i)が停止温度Toff(i)を超えると圧縮機24及びファンモータ30を停止する。 この第1アップ/ダウン操作ボタン22aの上部には表示手段である第1液晶表示部22dが設けられており、第1アップ/ダウン操作ボタン22aによって設定された停止温度Toff(i)がデジタル値で表示される。
【0020】
一方、第2アップ/ダウン操作ボタン22bは、ヒートポンプ熱源機HS(i)の出湯温度を設定するための釦で、ヒートポンプ熱源機HS(i)から出力される温水(出口水温)の目標温度Ts(i)を設定するためのものである。 第2アップ/ダウン操作ボタン22bの上部にも表示手段である第2液晶表示部22eが設けられており、第2アップ/ダウン操作ボタン22bによって設定された目標温度Ts(i)がデジタル値で表示される。このように、操作器22は、使用者が、ヒートポンプ熱源機HS(i)の停止温度Toff(i)と温水の目標温度Ts(i)を独立して設定可能になっている。
【0021】
制御器21は、操作器22により設定された停止温度Toff(i)と目標温度Ts(i)を読み込むとともに入口温度センサ32の検出する入口水温Tin(i)と出口温度センサ31が検出する出口水温Tout(i)、冷媒温度Te、空気温度Toを読み込む。 制御器21は、これらのデータ等を用いてヒートポンプ熱源機HS(i)を制御するための以下の手段を有している。
(1) 入口水温Tin(i)と停止温度Toff(i)を比較し、その結果に応じてヒートポンプ熱源機HS(i)の冷凍サイクルの運転/停止を制御する運転制御手段。
(2) ヒートポンプ熱源機HS(i)の運転中、目標温度Ts(i)と出口水温Tout(i)との差ΔT(i)に応じてインバータ装置23の出力周波数f(i)を変化させ、圧縮機24の回転数を制御してヒートポンプ熱源機HS(i)の加熱量を制御する加熱量制御手段。
(3) 熱源側熱交換器28の冷媒温度Teと熱交換用の空気温度Toの差(To−Te)及びその差の時間変化に基づき着霜状態を検出し、その着霜量が除霜に必要な量に到達したか否かを判断し、除霜が必要と判断した場合、除霜運転を行う除霜運転手段。
【0022】
操作器22での設定内容に基づくヒートポンプ熱源機HS(i)の運転動作を、図3の制御器21の制御フローチャートに基づき説明する。
制御器21は、運転/停止釦22cにおいて運転が設定されている間は、ヒートポンプ熱源機HS(i)を運転するために操作器22に設定された停止温度Toff(i)、目標温度Ts(i)を読み込むと共に各種温度センサの検出値である入口水温Tin(i)、出口水温Tout(i)、冷媒温度Teと熱交換用の空気温度Toを読み込む(ステップST0)。なお、運転/停止釦22cにおいて停止が設定されていれば、ヒートポンプ熱源機HS(i)の運転を停止する。
【0023】
ステップST0に続いて、入口水温Tin(i)と停止温度Toff(i)を比較し(ステップST1)、Tin(i)>Toff(i)となった場合(ステップST1のYes)は、負荷4での放熱が少なく、加熱の必要がないと判断されるため、ヒートポンプ熱源機HS(i)の冷凍サイクルの運転を停止、すなわち、圧縮機24、ファンモータ30を停止させる(ステップST2)。ステップST2で冷凍サイクルを停止させた後は、再び最初のステップST1に戻り、入口水温Tin(i)が停止温度Toff(i)未満に低下するまでは停止状態を継続する。
【0024】
一方、ステップST1において、入口水温Tin(i)が停止温度Toff(i)未満に低下している場合(ステップST1のNo)には、負荷4に供給する水の温度が低下しているため、加熱が必要と判断されるため、ヒートポンプ熱源機HS(i)の冷凍サイクルを運転する。すなわち、圧縮機24、ファンモータ30を運転させる(ステップST3〜5)。
【0025】
具体的には、圧縮機24を運転するインバータ装置23の出力周波数f(i)をステップST3、4で決定して、この周波数出力f(i)をインバータ装置23から圧縮機24に対して出力させるとともにファンモータ30が所定の回転数となるように運転する。 まず、ステップST3では、温度差ΔT(i)を操作器22により設定された目標温度Ts(i)から出口水温Tout(i)を減算して算出する。続いてステップST4にてこの温度差ΔT(i)とその時間変化割合に基づきインバータ装置23の出力周波数f(i)を算出する。この出力周波数f(i)の算出は、例えばPI制御等により、温度差ΔT(i)に比例して出力周波数f(i)を制御することで、加熱量を制御するために行なわれる。そして、算出された出力周波数f(i)となるように次のステップST5でインバータ装置23を制御する。
【0026】
この結果、目標温度Ts(i)と出口水温Tout(i)との差ΔT(i)が大きければ出力周波数f(i)が大きくなって圧縮機24の回転数が増加し、ヒートポンプ熱源機HS(i)の加熱能力を増大させ、差ΔT(i)が小さければ出力周波数f(i)が小さくなって圧縮機24の回転数が低下し、ヒートポンプ熱源機HS(i)の加熱能力を減少させる。
【0027】
ステップST5に続き、除霜運転の要否の判定が行われる。まず、冷媒温度Teと空気温度Toとの差(To−Te)及びその時間変化が算出される(ステップST6)。算出されたデータが、予め定められた除霜必要条件に合致するか否かが判定される(ステップST7)。ここで、除霜が必要と判断されると冷凍サイクルの除霜運転が実行される(ステップST8)。除霜運転中は除霜運転が完了したか否かが判断され(ステップST9)、完了するまで(ステップST9のNO)除霜運転が継続され、完了すれば(ステップST9のYES)、再びステップST1に戻り、加熱運転に復帰する。なお、除霜完了の判断は、例えば、除霜運転の時間(7分間)や冷媒温度Teの上昇等が用いられる。
一方、ステップST7において除霜が不要と判断された場合(ステップST7のNo)は、ステップST0に戻り、再び各ステップを繰り返す。
【0028】
ここで、図2に戻り、冷凍サイクルの動作を説明する。 加熱運転中は、図2に示す冷凍サイクルの配管の横に記載された実線矢印の方向に冷媒が流れる。 まず圧縮機24が運転されると、圧縮され高温・高圧となった冷媒は、四方弁25を通過して水―冷媒熱交換器26へと流入する。水―冷媒熱交換器26は、凝縮器として機能し、冷媒の熱を水配管5中を流れる水に供給し、水を加熱し、冷媒自身は凝縮して液冷媒となる。この液冷媒は、膨張弁27を通過する際に膨張して低圧・低温となり、蒸発器として機能する熱源側熱交換器28へと流入する。熱源側熱交換器28内で、冷媒は、プロペラファン29によって送風される空気と熱交換し、空気中の熱を奪い、ガス冷媒へと蒸発し、四方弁25を通って圧縮機24へと戻り、これを繰り返す。
【0029】
熱源側熱交換器28を室外に設置している場合、冬季には、吸熱する熱源側熱交換器28の表面に結露した水が凍結し、霜に成長することがある。この着霜を放置すると熱源側熱交換器28が空気と熱交換できなくなるため、適宜、除霜運転が必要となる。冷媒温度Teと熱交換用の空気温度Toの差(To−Te)及びその差の時間変化に基づき除霜運転が必要と判断された場合、制御器21は、四方弁25を反転させ、冷媒の流れを逆方向へ移行させるとともにインバータ装置23の出力周波数f(i)を制御して圧縮機24を除霜用の回転数に固定し、ファンモータ30の運転を停止させる。
【0030】
この結果、除霜運転中は、圧縮機24から吐出された冷媒は、図2中破線矢印の方向に流れ、四方弁25を通過し、熱源側熱交換器28へと流れ、ここで放熱する。熱源側熱交換器28の表面に付着した霜は、内部を流れる高温の冷媒によって溶かされる。その後、冷媒は膨張弁27、水―冷媒熱交換器26を経て四方弁を経由して圧縮機24へと戻る。この際、水―冷媒熱交換器26では、加熱運転ができず、逆に吸熱が行なわれるため、水配管5を流れる水の温度を低下させてしまうことになる。このため、除霜運転は極力短時間で完了することが望ましい。除霜運転が完了すると制御器21は、四方弁25を元の位置に戻し、再び上述した加熱運転が再開される。
【0031】
本実施の形態は、使用者がヒートポンプ式熱源機HS(i)の操作器22を操作して停止温度Toff(i)及び温水の目標温度Ts(i)のそれぞれを独立して設定することができるようにしているため、きわめて容易にヒートポンプ式熱源機HS(i)の複数台の直列接続設置が可能となる。
【0032】
図1に示すように加温システム1では、複数台の独立した、すなわち、統合的に制御する制御装置を備えない、ヒートポンプ式熱源機HS(i)が水配管5を通じて負荷4に対して直列接続される。ここで、複数台のヒートポンプ式熱源機HS(1)〜HS(n)は、その合計最大加熱能力が、負荷4の予想される最大放熱量を超えるものが選定されている。すなわち、複数台のヒートポンプ式熱源機HS(1)〜HS(n)の各最大加熱能力を合計した合計最大加熱能力が、負荷4の最大放熱量より大きい。
【0033】
使用者はヒートポンプ式熱源機HS(i)及び、その下流に設置されたヒートポンプ式熱源機HS(i+1)の各々の操作器22を操作して、水配管5内の水の流れ方向を基準に上流側のヒートポンプ式熱源機HS(i)の水―冷媒熱交換器26出口の温水の目標温度Ts(i)をその下流側のヒートポンプ式熱源機HS(i+1)の停止温度Toff(i+1)以上に設定する。すなわち、Toff(i+1)≦Ts(i)とする。このような温度設定を行なうことで両方のヒートポンプ式熱源機HS(i)を効率よく運転させることが可能となる。例えば、各温度の設定値をTs(i)=47℃>Toff(i)=45℃、Ts(i+1)=47℃>Toff(i+1)=46℃とする。なお、この実施の形態においては、Ts(i)=Ts(i+1)としたが、Ts(i)≦Ts(i+1)であれば、良い。
【0034】
ヒートポンプ式熱源機HS(i)及びヒートポンプ式熱源機HS(i+1)に対して、上記設定を行なった場合の加温システム1の動作を図4に基づき説明する。なお、図4の各部の温度変化を示す上段のグラフにおいて、太い実線がヒートポンプ式熱源機HS(i)の出口水温Tout(i)(=Tin(i))を、一点鎖線が、ヒートポンプ式熱源機HS(i+1)の出口水温Tout(i+1)を、細い実線がヒートポンプ式熱源機HS(i)の入口水温Tin(i)を表している。
ここで、図4中、t0〜t1の区間のようにヒートポンプ式熱源機HS(1)〜(n)の合計加熱能力よりも負荷4の放熱量が少ない状態では、上流側のヒートポンプ式熱源機HS(1)〜HS(i)によって水が十分な温度にまで昇温できるため、ヒートポンプ式熱源機HS(i)の出口水温Tout(i)は、目標温度Ts(i)の47℃近くに維持されている。このため、下流側のヒートポンプ式熱源機HS(i+1)は、入口水温Tin(i+1)が停止温度Toff(i+1)=46℃を超えているため、冷凍サイクルの運転を停止している。
【0035】
ここで、負荷4の放熱量が増加し、ヒートポンプ式熱源機HS(i)の入口水温Tin(i)が低下すると、ヒートポンプ式熱源機HS(i)の加熱量が不足し出口水温Tout(i) も低下してくる。ヒートポンプ式熱源機HS(i)では、温度差ΔT(i)(Ts(i)−Tout(i))が大きくなることでインバータ装置23の出力周波数f(i)を増加させ、加熱能力を増加させ、出口水温Tout(i)を上昇させようとするが、それでも加熱能力が不足し、出口水温Tout(i)が下流側のヒートポンプ式熱源機HS(i+1)の入口水温Tin(i+1)が停止温度Toff(i+1)=46℃よりも低下する図4中t1時点でヒートポンプ式熱源機HS(i+1)の冷凍サイクルが運転を開始する。
【0036】
すなわち、負荷4の放熱量が大きい状態においては、上流側のヒートポンプ式熱源機HS(i)及び下流側のヒートポンプ式熱源機HS(i+1)の両方の加熱運転が行われる。結果的に、複数のヒートポンプ式熱源機HS(i)〜HS(i+1)が分散して加熱運転を行うことになる。このため、ヒートポンプ式熱源機HS(i+1)の出口水温Tuot(i+1)は、負荷4の放熱量の変動に伴って大きく低下することなく47℃近くを維持できる。
なお、図4に示すようにヒートポンプ式熱源機HS(i)の出口配管とヒートポンプ式熱源機HS(i+1)の入口配管は水配管5によって直接接続されているため、ヒートポンプ式熱源機HS(i)の出口水温Tout(i)とヒートポンプ式熱源機HS(i+1)の入口水温Tin(i+1)はほぼ同じとなる。
【0037】
再び、負荷4の放熱量が減少すると、上流側のヒートポンプ式熱源機HS(i)の入口水温Tin(i)が上昇し、これに伴って上流側のヒートポンプ式熱源機HS(i)の加熱能力で十分に水を加熱できるようになり、図4中t2時点で出口水温Tout(i)が46℃を超えると、Tin(i+1)が46℃を超え、Toff(i+1)=46℃以上となる。この時点で、下流側のヒートポンプ式熱源機HS(i+1)が加熱運転を停止(OFF)し、上流側のヒートポンプ式熱源機HS(i)のみが加熱運転を継続する。 なお、ヒートポンプ式熱源機HS(i+1)が加熱運転を停止(OFF)に伴い、加温システム1全体の加熱能力が減少するため、水配管5中を循環する水の温度が若干低下する。この水温低下がヒートポンプ式熱源機HS(i)の出口水温Tout(i)の低下に至れば、ヒートポンプ式熱源機HS(i)では、目標温度Ts(i)と出口水温Tout(i)との差ΔT(i)が大きくなり、出力周波数f(i)を大きくしてヒートポンプ熱源機HS(i)の加熱能力を増大させ、自動的に水温低下を補う運転が実行される。
【0038】
このように負荷4の放熱量が小さい場合に、複数台のヒートポンプ式熱源機HS(1)〜(n)によって分散して加熱すると個々のヒートポンプ式熱源機HS(1)〜(n)における加熱量が小さくなりすぎて個々の熱源機の効率が低下する。そこで、負荷4の放熱量が減少した場合は、一部のヒートポンプ式熱源機HS(i+1)を停止させ、少ない台数のヒートポンプ式熱源機HS(i)の加熱能力を制御して運転することで1台当たりの加熱量を大きくすることができ、加温システム1の総合効率を向上させることができる。
【0039】
ここで、図4中t3時点で、上流側のヒートポンプ式熱源機HS(i)では、その長時間の運転に伴い除霜運転が開始されている。除霜運転中は、ヒートポンプ式熱源機HS(i)の水−冷媒熱交換器26が低温となる。このため、出口水温Tout(i)が急激に低下し、その入口水温Tin(i)以下まで低下していく。すなわち、本来加熱すべき水配管5中の水から熱を奪う。この出口水温Tout(i)の低下に伴い、下流側のヒートポンプ式熱源機HS(i+1)の入水温度Tin(i+1)が、その停止温度Toff(i+1)=46℃よりも低下した時点で、ヒートポンプ式熱源機HS(i+1)の冷凍サイクル運転が開始される(図4中のt4点)。
【0040】
ヒートポンプ式熱源機HS(i+1)の冷凍サイクル運転開始に伴い、出口水温Tout(i+1)は、上昇を始める。この結果、出口水温Tout(i+1)は極端に低下することなく、高い温度を維持できる。このように、上流側のヒートポンプ式熱源機HS(i)が除霜運転を行なうと停止していた下流側のヒートポンプ式熱源機HS(i+1)がバックアップ運転を行い、出口水温Tout(i+1)の低下が防止できる(図4中のt4〜t5区間)。
ここで、最下流のヒートポンプ式熱源機HS(n)が除霜運転に入った場合、低い出口水温Tout(n)の水が負荷4に流れることになってしまうが、本実施の形態の加温システム1では上流側のヒートポンプ式熱源機ほど運転頻度(時間)が多く、下流側に行くほど運転頻度(時間)が少なくなる。このため、最下流のヒートポンプ式熱源機HS(n)が除霜運転に入る状況は、極めて稀であり、その可能性は極めて低い。したがって、ほぼ常に最終段のヒートポンプ式熱源機HS(n)の出口水温Tout(n)である負荷4への供給水の温度は、負荷4の要求する温度を維持することができる。
【0041】
また、負荷4の予想される最大放熱量が、複数台のヒートポンプ式熱源機HS(1)〜HS(n−1)の最大加熱能力を合計した合計最大加熱能力と略同じとし、最下流にあるヒートポンプ式熱源機HS(n)の加熱能力が余るように設定しておけば、最下流のヒートポンプ式熱源機HS(n)は、通常状態では運転することがなく、負荷4の放熱量が大きい状態において上流側のいずれかのヒートポンプ式熱源機HS(1)〜HS(n−1)が除霜運転に入った場合のみ加熱運転をすることになり、完全なバックアップ運転用となる。接続されているヒートポンプ式熱源機HS(1)〜HS(n−1)のうちの複数のヒートポンプ式熱源機が同時に除霜運転に入る可能性は極めて少ない。この結果、最下流にあるヒートポンプ式熱源機HS(n)の加熱能力が余る設定であれば、負荷4への供給水の温度は、常に負荷4の要求する温度を維持することができる。
【0042】
さらに、万が一いずれかのヒートポンプ式熱源機HS(1)〜HS(n)が故障し、冷凍サイクル運転ができなくなった場合にも、上述したようにヒートポンプ式熱源機HS(1)〜HS(n)のいずれかが除霜運転に入った場合と同様に、残りのヒートポンプ式熱源機でバックアップ運転して、供給水の温度は、負荷4の要求する温度を維持することができ、信頼性の高い加温システム1を構築できる。
【0043】
再び、図4の戻り説明する。図中、t5時点にてヒートポンプ式熱源機HS(i)の除霜運転が終了し、加熱運転に復帰する。この復帰に伴い、出口水温Tout(i)(=入口水温Tin(i+1))は急激に上昇し、t6時点において入口水温Tin(i+1)が、停止温度Toff(i+1)を超えるため、ヒートポンプ式熱源機HS(i+1)の加熱運転は終了し、冷凍サイクルが停止する。ヒートポンプ式熱源機HS(i+1)の加熱運転が停止すると出口水温Tout(i+1)は出口水温Tout(i)及び入口水温Tin(i+1)と略同じになる。この時点では、すでにヒートポンプ式熱源機HS(i)の加熱運転により十分に高温の46℃の温水が供給されている。
【0044】
図4中、t6〜t7の区間ではt0〜t1区間と同様にヒートポンプ式熱源機HS(i)の加熱運転だけが行われ、ヒートポンプ式熱源機HS(i+1)の加熱運転は停止した状態である。ここで、負荷4の放熱量が減少し、水配管5からヒートポンプ式熱源機HS(i)に流入する水温が上昇して、入口水温Tin(i)が停止温度Ts(i)=45℃を超える値まで上昇すると、ヒートポンプ式熱源機HS(i)も停止する(区間t7〜)。
【0045】
以上の通り、本実施の形態によれば、温水を供給する負荷4の放熱量が大きい時には、複数台のヒートポンプ式熱源機HS(i)が同時に加熱運転を行なう分散加熱運転が実行され、負荷4の放熱量が小さい時には複数台のヒートポンプ式熱源機HS(i)のうち下流側のヒートポンプ式熱源機HS(i)から停止し、上流側のヒートポンプ式熱源機HS(i)のみで加熱運転が行なわれることになり、負荷の状況に合致した総合効率の高い運転が可能な加温システム1を得ることができる。 また、上流側のヒートポンプ式熱源機HS(i)が除霜運転に入った場合には、下流側のヒートポンプ式熱源機HS(i)の加熱運転を行うことで所定の出湯温度を維持できる。そして、下流側のヒートポンプ式熱源機HS(i)の運転頻度は、上流側のヒートポンプ式熱源機HS(i)よりも少なくなるため、下流側のヒートポンプ式熱源機HS(i)が除霜運転に入る頻度を少なくすることができ、下流側のヒートポンプ式熱源機HS(i)が除霜運転に入り、出湯温度を低下させる頻度を少なくできる。
【0046】
さらに、このような加温システム1を構築するにあたり、各ヒートポンプ式熱源機HS(1)〜HS(n)で検出される情報のすべてを統合して制御する集中管理装置を設けることなく、独立した個々のヒートポンプ式熱源機HS(1)〜HS(n)の操作器22を用いて設置場所(順序)に基づき各温度設定を行なうだけでよい。このため、標準的となるヒートポンプ式熱源機HSを準備するだけで放熱量の異なる負荷4に対しても良好な加熱運転が可能となる。
【0047】
なお、本実施の形態の加温システム1では、複数台のヒートポンプ式熱源機HS(1)〜(n)において、ヒートポンプ式熱源機HS(i)の温水の目標温度Ts(i)をその下流に設置されたヒートポンプ式熱源機HS(i+1)の停止温度Toff(i+1)以上に設定(Ts(i)≧Toff(i+1))したが、負荷4の放熱量が大きく、水配管5に直列接続されるヒートポンプ式熱源機HS(1)〜HS(n)の台数が多数に上る場合には、これを水配管5に対する上流と下流で複数の群(グループ)に分け、上流群内のヒートポンプ式熱源機の温水の目標温度Tsを同じ値にするとともに、この目標温度Tsを下流群のヒートポンプ式熱源機の停止温度Toff以上に設定するようにしてもよい。
【0048】
また、本実施の形態においては、ヒートポンプ式熱源機HS(i)とその下流に設置されたヒートポンプ式熱源機HS(i+1)の各温度の設定値をTs(i)=47℃>Toff(i)=45℃、Ts(i+1)=47℃>Toff(i+1)=46℃としている。ここで、Toff(i)=45℃<Toff(i+1)=46℃に設定しているため、ヒートポンプ式熱源機HS(i)の入口水温Tin(i)が45℃と46℃の間にある場合、ヒートポンプ式熱源機HS(i)が停止し、ヒートポンプ式熱源機HS(i+1)のみが運転することになる。このような状態はそれほど発生頻度は多くないと思われるが、ヒートポンプ式熱源機HS(i+1)を完全にヒートポンプ式熱源機HS(i)のバックアップ用、すなわち、ヒートポンプ式熱源機HS(i)が除霜運転や故障で運転を停止している時以外は、ヒートポンプ式熱源機HS(i)が運転している期間内でしかヒートポンプ式熱源機HS(i+1)運転しないようにするには、Toff(i)≧Toff(i+1)、例えば、両方とも45℃等に設定すれば良い。
【0049】
本発明は、上記実施形態に限定されない。さらに、本発明の実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。例えば、本発明の実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…加温システム、HS(1)〜HS(n)…ヒートポンプ熱源機、3…ポンプ、4…負荷、5…水配管、22…操作器、21…制御器、23…インバータ装置、24…圧縮機、26…水―冷媒熱交換器、28…熱源側熱交換器、29…プロペラファン、30…ファンモータ、31…出口温度センサ、32…入口温度センサ
図1
図2
図3
図4