特許第5701142号(P5701142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5701142
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】マイクロホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20150326BHJP
   H04R 1/40 20060101ALI20150326BHJP
   H04R 19/04 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
   H04R3/00 320
   H04R1/40 320A
   H04R19/04
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-104014(P2011-104014)
(22)【出願日】2011年5月9日
(65)【公開番号】特開2012-235404(P2012-235404A)
(43)【公開日】2012年11月29日
【審査請求日】2014年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(72)【発明者】
【氏名】秋野 裕
(72)【発明者】
【氏名】沖田 潮人
【審査官】 大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−010046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/20 − 1/40
H04R 3/00 − 3/14
H04R 11/00 − 11/06
H04R 19/00 − 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偶数個のマイクロホンユニットを有し、
上記偶数個のマイクロホンユニットは、第1群のマイクロホンユニットと第2群のマイクロホンユニットに分けられ、
上記第1群に属するマイクロホンユニットのそれぞれと第2群に属するマイクロホンユニットのそれぞれ周方向に交互に配置され、
上記第1群に属するマイクロホンユニットの出力が加算されかつ上記第2群に属するマイクロホンユニットの出力が加算されるように、上記第1群のマイクロホンユニット同士が直列接続されかつ上記第2群のマイクロホンユニット同士が直列接続され、
上記第1群のマイクロホンユニットの加算出力と上記第2群のマイクロホンユニットの加算出力の一方が平衡出力のホット側出力、他方が平衡出力のコールド側出力となっているマイクロホン。
【請求項2】
音波を受けて振動する各マイクロホンユニットの振動板は同一平面上に位置している請求項1記載のマイクロホン。
【請求項3】
4個のマイクロホンユニットを有し、第1群に属するマイクロホンユニットと第2群に属するマイクロホンユニットが、各マイクロホンユニットの収音軸方向から見て対角位置に配置されている請求項1または2記載のマイクロホン。
【請求項4】
偶数個のマイクロホンユニットは、一つの円周に沿って等間隔に配置され、第1群に属するマイクロホンユニットと第2群に属するマイクロホンユニットが円周方向に交互に配置されている請求項1乃至のいずれかに記載のマイクロホン。
【請求項5】
各マイクロホンユニットは、音波を受けて振動する振動板とこの振動板に対向させて配置された固定極を有してなるコンデンサマイクロホンカプセルと、このコンデンサマイクロホンカプセルで電気音響変換されて出力される信号をインピーダンス変換するインピーダンス変換器を備えたコンデンサマイクロホンユニットである請求項1乃至4のいずれかに記載のコンデンサマイクロホン。
【請求項6】
第1群に属するコンデンサマイクロホンユニットと第2群に属するコンデンサマイクロホンユニットは、上記各群に属する一つのコンデンサマイクロホンユニットのインピーダンス変換器の出力で他のコンデンサマイクロホンユニットが有するコンデンサマイクロホンカプセルの接地側を駆動するように、上記各群に属するコンデンサマイクロホンユニットが直列に接続されている請求項5記載のコンデンサマイクロホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感度を高めるために複数のマイクロホンユニットを使用したマイクロホンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
大口径の振動板を持っているマイクロホンは、感度が高く、低音域まで電気音響変換することができる。これに対して小口径の振動板を持っているマイクロホンは、高音域まで電気音響変換することができるが、出力レベルが低い、すなわち感度が低い難点がある。
【0003】
そこで、本発明者らは、マイクロホンの感度を高めながら信号対雑音比(SN比)を向上させるなど、マイクロホンの性能を高めるために、複数のマイクロホンユニットを使用することを提案した。特許文献1、特許文献2記載の発明がそれである。特許文献1には、口径が20mm以下である複数個の単一指向性コンデンサマイクロホンカプセルと、一つのインピーダンス変換器とを含み、各コンデンサマイクロホンカプセルを、それらの主軸が互いに平行になるように、かつ、各マイクロホンカプセルの振動板が同一平面上に存在するように配置し、各マイクロホンカプセルを一つの上記インピーダンス変換器に接続してなるコンデンサマイクロホンが記載されている。
【0004】
図5は、特許文献1に記載されているコンデンサマイクロホンとほぼ同様の技術思想のもとに構成されたコンデンサマイクロホンの例を示す。図5において、コンデンサマイクロホンは、符号51〜55を付して示す5個のコンデンサマイクロホンユニットを有してなる。各コンデンサマイクロホンユニット51〜55は、音波を受けて振動する振動板とこの振動板に対向させて配置された固定極を有してなるコンデンサマイクロホンカプセル511〜551と、それぞれのマイクロホンカプセルによる電気音響変換出力のインピーダンスを低インピーダンスに変換するインピーダンス変換器512〜552を有してなる。各インピーダンス変換器512〜552は能動素子としてFET(電界効果型トランジスタ)を有してなる自己バイアス型のインピーダンス変換器である。各インピーダンス変換器512〜552を構成するFETのドレインには電圧源から直流電圧VCCが印加され、上記各FETのソースはそれぞれ抵抗513〜553を介してグランドに接続されている。
【0005】
各コンデンサマイクロホンユニット51〜55による電気音響変換信号は、上記各FETのソースから、コンデンサ514〜554および抵抗515〜555を経て出力され、これらの出力は加算器60の反転入力端子に入力されるように回路構成されている。加算器60は、各コンデンサマイクロホンユニット51〜55による変換出力信号を加算し、この加算信号がマイクロホンの出力信号となる。図5において符号Pは音源を示している。各マイクロホンカプセル511〜551の振動板は同一平面上に位置するように、かつ、それぞれの収音軸が平行になるように配置されている。
【0006】
特許文献2には、それぞれの振動板が同一平面上に配置された複数のコンデンサマイクロホンユニットを有し、一つのコンデンサマイクロホンユニットに接続されているインピーダンス変換器の出力が別のコンデンサマイクロホンユニットの接地側を駆動するように、各コンデンサマイクロホンユニットが直列に接続されているコンデンサマイクロホンが記載されている。
【0007】
特許文献1記載のコンデンサマイクロホンによれば、音響端子間距離が短くかつ高い周波数まで指向周波数応答が良好なマイクロホンユニットを複数並列接続することにより、良好な指向周波数応答を保ったまま、有効静電容量を増加することができ、固有雑音を低下させることができる。特許文献2記載のコンデンサマイクロホンによれば、複数のマイクロホンユニットを直列に接続することにより、各コンデンサマイクロホンユニットの出力が加算され、感度が高まるとともにSN比が向上する効果がある。
【0008】
一般的に、マイクロホンは出力レベルが低いため外部から侵入する電気的雑音の影響を受けやすい。そこで、電気的雑音の侵入による影響を受けにくい平衡伝送方式が採用されている。特許文献2には、合計4個のマイクロホンユニットを用い、二つのユニットを直列に接続してその出力を平衡伝送のホット側、他の二つのユニットを逆極性にして直列に接続してその出力を平衡伝送のコールド側としたコンデンサマイクロホンの実施例が記載されている。
【0009】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載されているような、複数のマイクロホンユニットを用いるマイクロホンには、以下のような改良すべき点があることが分かった。すなわち、各マイクロホンの振動板は同一平面上に配置されているため、各振動板から音源までの距離が等しければ問題はないが、各振動板から音源までの距離に差があると、音源から出た音波がそれぞれのマイクロホンユニットの音響端子に到達するのに要する時間に差が生じる。例えば、各マイクロホンユニットの収音軸に対し90度方向に存在する音源を想定すると、この音源から音波が出た時点から各マイクロホンユニットの音響端子に到達するまでに要する時間に差を生じる。このようにして、上記収音軸に対し0度方向又は180度方向以外の方向にある音源からの音波については各マイクロホンユニットの音響端子に到達するのに時間差を生じる。時間差が生じている音波を電気信号に変換した各マイクロホンユニットの出力信号を加算して得られる信号波形は、音源の波形と異なったものになり、音源の方向に応じて音質差を生じる。
【0010】
平衡伝送を行うために、ホット側信号を出力するためのマイクロホンユニットとコールド側信号を出力するためのマイクロホンユニットを設けた場合、各マイクロホンユニットの収音軸に対し90度方向からの音波が各マイクロホンユニットの音響端子に同時に到達すれば何ら問題はない。しかし、収音軸外の音源から発せられる音波が上記各マイクロホンユニットの音響端子に到達するのに要する時間には差があり、この時間差に応じて各マイクロホンユニットの振動板に対する音圧傾度が発生し、各マイクロホンユニットの振動板の駆動力に周波数依存性が発生する。この周波数依存性により上記の音質差を生じることになる。
【0011】
図6図7は、上記時間差を生じない場合と時間差を生じる場合の違いを示している。図6図7において、符号61、71はマイクロホンユニットを示している。マイクロホンユニット61の出力信号はインピーダンス変換器62を経て平衡出力のホット側出力信号、マイクロホンユニット71の出力信号はインピーダンス変換器72を経て平衡出力のコールド側信号として伝送されるようになっている。符号Po、Po′は音源を示しており、音源Poはマイクロホンユニット61、71の振動板からの距離が等しい位置にある場合を、音源Po′はマイクロホンユニット61、71の振動板からの距離が異なっている場合を示している。音源Poからの音波がマイクロホンユニット61、71に到達するのに要する時間は等しいため、上記のような音質差は生じない。音源Po′からの音波がマイクロホンユニット61、71に到達するのに要する時間には差が生じるため、ホット側出力信号とコールド側出力信号に、上記のような周波数依存性による音質差が生じる。
【0012】
図8は、複数のマイクロホンユニットを用い、各マイクロホンユニットの出力を加算するように構成した従来のコンデンサマイクロホンの指向周波数応答特性を、図9は周波数特性を示す。図8に示す指向周波数応答特性は、1000Hz、2000Hz、5000Hzの各周波数について測定したものである。図9に示す周波数特性は、音源が収音軸に対して0度、90度、180度、270度の各角度にある場合について測定したものである。
【0013】
音楽などの録音に用いられる楽音収音用マイクロホンは、収音軸上にある音源の収音が重要であるが、音源から発せられた音波は直接マイクロホンに向かうものばかりでなく、壁などで反射されて、収音軸とは異なった角度からマイクロホンに向かうものもある。また、合奏や合唱など、複数の音源が広い範囲に広がっている場合には、収音軸以外から入ってくる音波に対する指向周波数応答特性が良好であることが求められる。かかる観点から図8を参照すると、特に高音域での指向周波数応答特性が乱れており、楽音収音用マイクロホンとして改善の余地がある。また、図9を参照すると、収音軸以外から入ってくる音波に対する周波数特性を改善する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−5710号公報
【特許文献2】特開2011-10046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、以上説明した従来技術の課題を解決すること、すなわち、複数個のマイクロホンユニットを有し、各マイクロホンユニットの出力を加算するマイクロホンであり、かつ、平衡出力するマイクロホンにおいて、各マイクロホンユニットの収音軸以外にある音源から入ってくる音波の各マイクロホンユニットに到達する時間の差を小さくして、ホット側出力信号とコールド側出力信号の音質差を小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、偶数個のマイクロホンユニットを有し、偶数個のマイクロホンユニットは、第1群のマイクロホンユニットと第2群のマイクロホンユニットに分けられ、第1群に属するマイクロホンユニットのそれぞれと第2群に属するマイクロホンユニットのそれぞれ周方向に交互に配置され、第1群に属するマイクロホンユニットの出力が加算されかつ第2群に属するマイクロホンユニットの出力が加算されるように、第1群のマイクロホンユニット同士が直列接続されかつ第2群のマイクロホンユニット同士が直列接続され、第1群のマイクロホンユニットの加算出力と第2群のマイクロホンユニットの加算出力の一方が平衡出力のホット側出力、他方が平衡出力のコールド側出力となっていることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
音源が各マイクロホンユニットの収音軸からずれた位置にあっても、第1群に属するマイクロホンユニットと第2群に属するマイクロホンユニットが交互に配置されているため、音源から第1群に属する各マイクロホンユニットへの音波の到達時間と、音源から第2群に属する各マイクロホンユニットへの音波の到達時間との差が小さくなり、第1群に属する各マイクロホンユニットの加算出力と第2群に属する各マイクロホンユニットの加算出力との音質差を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係るマイクロホンの一実施例を回路構成とともに概略的に示すモデル図である。
図2】本発明に係るマイクロホンの別の実施例を概略的に示すモデル図である。
図3】本発明に適用可能な複数のマイクロホンユニットの接続例を示す回路図である。
図4】本発明に係るマイクロホンを構成する複数のマイクロホンユニットの配置例を示す平面図である。
図5】複数のマイクロホンユニットを使用する従来のマイクロホンの接続例を示す回路図である。
図6】複数のマイクロホンユニットを使用する従来のマイクロホンの例を収音軸方向から見たモデル図である。
図7】上記従来のマイクロホンの例を収音軸に直交する方向から見たモデル図である。
図8】複数のマイクロホンユニットを使用する従来のマイクロホンによって得られる指向周波数応答特性を示すグラフである。
図9】上記従来のマイクロホンによって得られる周波数特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るマイクロホンの実施例を、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は本発明に係るマイクロホンの第1実施例を示す。この実施例は偶数個である4個のマイクロホンユニット11,21,12,22を有している。図1において、紙面に直交する方向が各マイクロホンユニット11,21,12,22の指向軸方向となっていて、各マイクロホンユニット11,21,12,22は、それらの指向軸が互いに平行になるように配置されている。したがって、各マイクロホンユニット11,21,12,22が有する振動板は紙面と平行であり、かつ、同一平面上に位置するように配置されている。
【0021】
4個のマイクロホンユニット11,21,12,22は、2個のマイクロホンユニット11、12からなる第1群のマイクロホンユニットと、2個のマイクロホンユニット21、22からなる第2群のマイクロホンユニットに分けられている。4個のマイクロホンユニット11,21,12,22は、収音軸方向から見て周方向に上記ユニット11,21,12,22の順に配置されている。したがって、収音軸方向から見た各マイクロホンユニット11,21,12,22の中心位置を結ぶ線は四角形を描いていて、第1群に属するマイクロホンユニット11,12と第2群に属するマイクロホンユニット21,22が、上記四角形の対角位置に配置されている。換言すれば、第1群に属するマイクロホンユニット11,12と第2群に属するマイクロホンユニット21,22が周方向に交互に配置されている。
【0022】
本発明のマイクロホンに使用するマイクロホンユニットの形式は限定されないが、本実施例における各マイクロホンユニット11,21,12,22は、音波を受けて振動する振動板とこの振動板に対向させて配置された固定極を有してなるコンデンサマイクロホンカプセルを有するコンデンサマイクロホンユニットである。第1群に属するマイクロホンユニット11、12は、これらマイクロホンユニットに含まれるコンデンサマイクロホンカプセルで電気音響変換されて出力される信号をインピーダンス変換するインピーダンス変換器13,14を備えている。また、第2群に属するマイクロホンユニット21、22は、これらマイクロホンユニットに含まれるコンデンサマイクロホンカプセルで電気音響変換されて出力される信号をインピーダンス変換するインピーダンス変換器23,24を備えている。
【0023】
インピーダンス変換器13でインピーダンス変換されるマイクロホンユニット11の出力信号は、マイクロホンユニット12が有するコンデンサマイクロホンカプセルの接地側を駆動するように、第1群に属する2個のコンデンサマイクロホンユニット11,12が直列に接続されている。そして、マイクロホンユニット12に含まれるインピーダンス変換器14から平衡出力のホット側信号が出力されるように回路構成されている。同様に、インピーダンス変換器23でインピーダンス変換されるマイクロホンユニット22の出力信号は、マイクロホンユニット21が有するコンデンサマイクロホンカプセルの接地側を駆動するように、第2群に属する2個のコンデンサマイクロホンユニット22,21が直列に接続されている。ただし、第2群に属する2個のコンデンサマイクロホンユニット22,21の出力は、第1群に属する2個のコンデンサマイクロホンユニット11,12の出力に対して逆極性になるように接続されている。そして、マイクロホンユニット21に含まれるインピーダンス変換器24から平衡出力のコールド側信号が出力されるように回路構成されている。
【0024】
図1において、符号Po、Po′、Po″は音源を示している。これらの音源Po、Po′、Po″が第1群と第2群のマイクロホンユニットに対し音波が時間差を生じて到達する位置にあっても、第1群に属するマイクロホンユニットと第2群に属するマイクロホンユニットが交互に配置されているため、第1群に属するマイクロホンユニットに対して音波が到達する平均時間と、第2群のマイクロホンユニットに属するマイクロホンユニットに対して音波が到達する平均時間とでは差が小さくなる。したがって、第1群に属する2個のマイクロホンユニット11,12の加算出力であるホット側信号と、第2群に属するマイクロホンユニット21,22の加算出力であるコールド側信号との音質差を小さくすることができる。
【実施例2】
【0025】
次に、図2に示す第2実施例について説明する。図2において、符号31,32,33,34,35は第1群に属する5個のマイクロホンユニットを、符号41.42.43,44,45は第2群に属する5個のマイクロホンユニットを示している。図2において、紙面に直交する方向が各マイクロホンユニットの指向軸方向で、各マイクロホンユニットは、それらの指向軸が互いに平行になるように、かつ、一つの円周に沿って等間隔に配置されている。各マイクロホンユニットが有する振動板は紙面と平行であり、かつ、同一平面上に位置するように配置されている。この実施例におけるマイクロホンユニットもコンデンサマイクロホンユニットである。第1群に属するマイクロホンユニット31〜35と、第2群に属するマイクロホンユニット41〜45が周方向に交互に配置されている。
【0026】
図示されていないが、各マイクロホンユニットは図示されないインピーダンス変換器を有していて、各マイクロホンユニットにより電気音響変換される音声信号は上記インピーダンス変換器でインピーダンス変換されて出力されるようなっている。第1群に属するマイクロホンユニット31〜35は直列的に接続されて各マイクロホンユニット31〜35の出力信号が加算されて出力されるようになっている。より具体的には、例えば、一つのマイクロホンユニットのインピーダンス変換器出力が次のマイクロホンユニットが有するコンデンサマイクロホンカプセルの接地側を駆動するように、5個のマイクロホンユニットがチェーン状に接続されている。そして、5個目のマイクロホンユニットのインピーダンス変換器から、平衡出力のホット側信号が出力される。
【0027】
同様に、第2群に属するマイクロホンユニット41〜45も直列的に接続されて各マイクロホンユニット41〜45の出力信号が加算されて出力されるようになっている。ただし、第2群に属するマイクロホンユニット41〜45の出力は、第1群に属するマイクロホンユニット31〜35の出力と逆相になるように、5個のマイクロホンユニットがインピーダンス変換器を介してチェーン状に接続されている。そして、5個目のマイクロホンユニットのインピーダンス変換器から、平衡出力のコールド側信号が出力される。
【0028】
図2において、符号Po、Po′、Po″は音源を示している。図1に示す実施例で説明したように、第1群に属するマイクロホンユニット31〜35と第2群に属するマイクロホンユニット41〜45が交互に配置されているため、第1群に属するマイクロホンユニットに対して音波が到達する平均時間と、第2群のマイクロホンユニットに属するマイクロホンユニットに対して音波が到達する平均時間とでは差が小さくなる。よって、第1群に属する5個のマイクロホンユニット31〜35の加算出力であるホット側信号と、第2群に属するマイクロホンユニット41〜45の加算出力であるコールド側信号との音質差を小さくすることができる。
【0029】
図3は、本発明に適用可能な複数のマイクロホンユニットの接続例であって、図2に示す第2実施例中の第1群に属するマイクロホンユニット31〜35の接続例を示している。各マイクロホンユニット31〜35は、振動板とこれに対向する固定極を有してなるコンデンサマイクロホンカプセル311〜351、およびインピーダンス変換器312〜352を有している。各インピーダンス変換器312〜352は能動素子としてFETを有する自己バイアス型のインピーダンス変換器である。各インピーダンス変換器を構成するFETのドレインには直流電源から電圧VCCが印加される。上記各FETのソースは、抵抗315〜355を経てグランドに接続され、各FETのソースから各マイクロホンユニットの出力信号が出力されるようになっている。
【0030】
マイクロホンカプセル311〜351を構成する振動板と固定極の片方は接地側となっている。マイクロホンカプセル311の接地側は直接グランドに接続されているのに対し、マイクロホンカプセル321〜351の接地側はそれぞれ抵抗324〜354を介してグランドに接続されている。マイクロホンユニット31の出力信号はコンデンサ313を経てマイクロホンユニット32のマイクロホンカプセル321の接地側に、マイクロホンユニット32の出力信号はコンデンサ323を経てマイクロホンユニット33のマイクロホンカプセル331の接地側に、マイクロホンユニット33の出力信号はコンデンサ333を経てマイクロホンユニット34のマイクロホンカプセル341の接地側に、マイクロホンユニット34の出力信号はコンデンサ343を経てマイクロホンユニット35のマイクロホンカプセル351の接地側に接続されている。このようにして各マイクロホンユニットはチェーン状に直列接続され、マイクロホンユニット35のインピーダンス変換器352を構成するFETのソースから、上記5個のマイクロホンユニットの出力信号が加算されて出力されるようになっている。この加算出力信号が平衡出力の一方、例えばホット側信号となる。
【0031】
図3では、一つの群に属する5個のマイクロホンユニットの接続例しか描かれていないが、他方の群に属する5個のマイクロホンユニットも同様にしてチェーン状に直列に接続される。ただし、他方の群に属する5個のマイクロホンユニットからの出力信号は平衡出力のコールド側信号とするため、ホット側信号と逆相になるように接続される。図3において符号Pは音源を示している。
【0032】
図3に示す回路例は、1群を構成するマイクロホンユニットの数が5の場合であるが、図1に示す実施例のように1群を構成するマイクロホンユニットの数が2の場合も同様であり、一つのマイクロホンユニットの出力で他の一つのマイクロホンユニットが有するコンデンサマイクロホンカプセルの接地側を駆動するように接続するとよい。
【0033】
図4は、上記5個のマイクロホンユニット31〜35相互の配置関係を示している。各マイクロホンユニット31〜35が有している振動板は、図4に2点鎖線で示す一平面であって紙面に直交する方向の面上にある。したがって、各マイクロホンユニット31〜35の収音軸は図4において上下方向にありかつそれぞれの収音軸は平行である。各マイクロホンユニット31〜35の相互間隔は70mmの等間隔に配置されている。各マイクロホンユニット31〜35の相互間隔内に別の群に属するマイクロホンユニットが一つずつ配置される。
【0034】
図4に示す例では、複数のマイクロホンユニットが直線状に配置されているが、この配置例は一例であって、図1に示す実施例のように4個のマイクロホンユニットを四角形状になるように配置してもよいし、図2に示す実施例のように一つの円弧上に配置してもよい。
そのほか、特許請求の範囲に記載した技術思想を逸脱しない範囲内であれば、自由に設計変更して差し支えない。
【符号の説明】
【0035】
11、12 1群に属するマイクロホンユニット
21、22 他の1群に属するマイクロホンユニット
13、14、23、24 インピーダンス変換器
31〜35 1群に属するマイクロホンユニット
41〜45 他の1群に属するマイクロホンユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9