特許第5701143号(P5701143)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5701143気流拡散解析プログラムおよび気流拡散解析装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5701143
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】気流拡散解析プログラムおよび気流拡散解析装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 19/00 20110101AFI20150326BHJP
【FI】
   G06F19/00 110
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-104283(P2011-104283)
(22)【出願日】2011年5月9日
(65)【公開番号】特開2012-234471(P2012-234471A)
(43)【公開日】2012年11月29日
【審査請求日】2014年2月28日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成22年11月12日九州大学伊都キャンパスにおいて開催された社団法人日本航空宇宙学会西部支部講演会で発表
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】永山 圭憲
(72)【発明者】
【氏名】岡林 一木
(72)【発明者】
【氏名】堀 英一
(72)【発明者】
【氏名】原 智宏
(72)【発明者】
【氏名】大屋 裕二
(72)【発明者】
【氏名】内田 孝紀
【審査官】 宮地 匡人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−122365(JP,A)
【文献】 特開2003−203194(JP,A)
【文献】 COCEAL O.,Mean flow and turbulence statistics over groups of urban-like cubical obstacles,Boundary-Layer Meteorol,2006年12月,Vol.121 No.3,pp.491-519
【文献】 丸山 敬,粗度要素の配列形状による床面抗力の変化に関する風洞実験,京都大学防災研究所年報,1989年 4月 1日,No.32B-1,pp.423-437
【文献】 SINGH K. M.,Numerical Simulation of Flow over a Rough Bed,Journal of Hydraulic Engineering,2007年 4月,Vol.133 No.4,pp.386-398
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 19/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
解析対象空間を模擬した空間モデルを生成するモデル生成ステップと、生成した前記空間モデルにおける気流の拡散を、所定の気流計算コードを用いて解析する気流拡散解析ステップと、を備えたハードウェア上において実行可能な気流拡散解析プログラムであって、
前記モデル生成ステップでは、前記空間モデルの地表面に、前記解析対象空間における地表面の粗度を表現するため凹凸部を形成する一方で、
前記凹凸部が形成される前記空間モデルに対応する前記解析対象空間には、前記凹凸部が形成されないことを特徴とする気流拡散解析プログラム。
【請求項2】
前記地表面の凹凸部は、規則的なパターンで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の気流拡散解析プログラム。
【請求項3】
前記地表面の凹凸部は、水平面内において前記気流の主流方向に直交する水平方向に、前記気流を案内するように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の気流拡散解析プログラム。
【請求項4】
前記地表面の凹凸部は、前記地表面から突出する複数の凸部を有しており、
前記各凸部は、水平面内において前記気流の主流方向に直交する水平方向に延在し、
前記複数の凸部は、前記主流方向に所定の間隔を空けて並べられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の気流拡散解析プログラム。
【請求項5】
前記地表面の凹凸部は、前記地表面から突出する複数の凸部を有しており、
前記複数の凸部は、千鳥配置となっていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の気流拡散解析プログラム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の気流拡散解析プログラムを実行可能であることを特徴とする気流拡散解析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気等の気流の拡散解析を実行するための気流拡散解析プログラムおよび気流拡散解析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発電用原子炉施設の平常運転時および想定事故時における線量評価に際し、放射性物質の拡散状態を推定するために、大気拡散の解析を行うための評価手法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。この評価手法では、大気の拡散モデルとして、ラグランジュ型粒子モデルを採用しており、この拡散モデルを用いて大気の拡散解析を実行している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】佐田幸一、外3名、「安全解析のための数値モデルによる排ガス大気拡散予測および被ばく線量評価」、日本原子力学会和文論文誌、2009年、vol.8、No.2、p.184−196
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、大気拡散の解析を行うにあたり、大気の拡散状態を表わすパラメータである大気安定度は、中立状態となる大気安定度と、中立の大気安定度より不安定となる大気安定度との間の大気条件となるように要求される。ここで、中立状態となる大気安定度とは、最も出現頻度の多い大気条件のことである。このとき、従来の評価手法では、非特許文献1のFig.2に示すように、鉛直方向(Z方向)における大気安定度は、大気安定度Dと大気安定度Cとの間に位置する一方で、水平方向(Y方向)における大気安定度は、大気安定度Dと大気安定度Cとの間に位置しておらず、大気が拡散しにくい大気安定度DからFの間となっている。
【0005】
そこで、本発明は、要求された大気条件の範囲内に収まるように、気流の拡散を解析することが可能な気流拡散解析プログラムおよび気流拡散解析装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の気流拡散解析プログラムは、解析対象空間を模擬した空間モデルを生成するモデル生成ステップと、生成した空間モデルにおける気流の拡散を、所定の気流計算コードを用いて解析する気流拡散解析ステップと、を備えたハードウェア上において実行可能な気流拡散解析プログラムであって、モデル生成ステップでは、解析対象空間における地表面の粗度を表現するために、空間モデルの地表面に凹凸部を形成することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、空間モデルにおいて、その地表面に粗度を表現した凹凸部を形成することができる。このため、地表面上を流れる気流は、地表面の粗度によって、その一部が水平方向に拡散される。これにより、気流の拡散解析では、要求された所定の大気条件の範囲内に収めた状態で、気流の拡散解析を好適に行うことができる。
【0008】
この場合、地表面の凹凸部は、規則的なパターンで構成されていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、空間モデルの地表面に形成された凹凸部は、規則的なパターンとなっているため、空間モデルを簡易なモデルとすることができる。これにより、気流拡散解析ステップにおける気流の拡散解析を効率よく行うことができる。
【0010】
この場合、地表面の凹凸部は、水平面内において気流の主流方向に直交する水平方向に、気流を案内するように形成されていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、凹凸部は、気流を積極的に水平方向に拡散させることができる。このため、水平方向に拡散させる有用な凹凸部のみを形成することができるため、無駄な凹凸部を形成することがない分、気流拡散解析ステップにおける気流の拡散解析を効率よく行うことができる。
【0012】
この場合、地表面の凹凸部は、地表面から突出する複数の凸部を有しており、各凸部は、水平面内において気流の主流方向に直交する水平方向に延在し、複数の凸部は、主流方向に所定の間隔を空けて並べられていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、凹凸部は、水平方向に延在する複数の凸部を、主流方向に所定の間隔を空けて並べて形成することができる。これにより、主流方向に流れる気流の一部を、簡易なモデルとなる凹凸部によって、水平方向に好適に拡散させることができる。
【0014】
この場合、地表面の凹凸部は、地表面から突出する複数の凸部を有しており、複数の凸部は、千鳥配置となっていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、凹凸部は、千鳥配置された複数の凸部により形成することができる。これにより、主流方向に流れる気流の一部を、簡易なモデルとなる凹凸部によって、水平方向に好適に拡散させることができる。
【0016】
本発明の気流拡散解析装置は、上記の気流拡散解析プログラムを実行可能であることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、地表面に粗度を表現した凹凸部を有する空間モデルを用いることにより、要求された所定の大気条件の範囲内に収めた状態で、気流の拡散解析を好適に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の気流拡散解析プログラムおよび気流拡散解析装置によれば、地表面上を流れる気流は、地表面の凹凸部によって、その一部が水平方向に拡散されるため、気流の拡散解析では、要求された所定の大気条件の範囲内に収めた状態で、気流の拡散解析を好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施例1の気流拡散解析プログラムを記憶した解析装置を概略的に表した説明図である。
図2図2は、実施例1に係る空間モデルの平面図である。
図3図3は、実施例1に係る空間モデルの側面図である。
図4図4は、風洞実験の解析結果と、従来の気流拡散解析の解析結果とを比較したグラフである。
図5図5は、風洞実験の解析結果と、実施例1の気流拡散解析の解析結果とを比較したグラフである。
図6図6は、実施例2に係る空間モデルの平面図である。
図7図7は、風洞実験の解析結果と、実施例2の気流拡散解析の解析結果とを比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付した図面を参照して、本発明に係る気流拡散解析プログラムおよび気流拡散解析装置について説明する。なお、以下の実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0021】
実施例1に係る気流拡散解析プログラムは、地形上を流れる大気(気流)の拡散を予測するプログラムである。この気流拡散解析プログラムは、例えば、原子力施設の想定事故時における放射性物質の拡散状態を推定するために用いられている。以下、図1を参照して、気流拡散解析プログラムについて説明する。
【0022】
図1は、実施例1の気流拡散解析プログラムを記憶した解析装置を概略的に表した説明図である。図1に示すように、気流拡散解析プログラム10は、気流拡散解析装置(ハードウェア)20上において実行可能なプログラムであり、気流拡散解析装置20の記憶部21に記憶されている。この気流拡散解析装置20は、複数の演算部22を搭載した大規模な演算装置であり、記憶部21に記憶された気流拡散解析プログラム10を、各演算部22において実行することにより、大気の拡散解析を実行している。
【0023】
気流拡散解析プログラム10では、所定の気流計算コードを用いて、LES(Large Eddy Simulation)による数値解析が行われる。この気流拡散解析プログラム10は、空間モデル30を生成するモデル生成ステップと、気流計算コードを用いて気流の拡散解析を実行する気流拡散解析ステップと、を有している。
【0024】
図2および図3に示すように、モデル生成ステップでは、解析対象となる空間をモデル化して空間モデル30を生成している。生成される空間モデル30は、長方体の箱状に形成された空間領域モデル31と、空間領域モデル31の内部に形成されたスパイヤモデル32と、空間領域モデル31の内部に形成された凹凸モデル(凹凸部)33とを有している。この長方体形状の空間領域モデル31において、その長手方向は、気流の主流方向(X方向)となっており、水平面内において主流方向に直交する方向は、水平方向(Y方向)となっており、主流方向および水平方向に直交する方向は、鉛直方向(Z方向)となっている。
【0025】
スパイヤモデル32は、主流方向の上流側に複数形成されており、複数のスパイヤモデル32は、水平方向に所定の間隔を空けて並べられている。各スパイヤモデル32は、鉛直方向に長い四角柱状に形成されており、Z方向における高さが、例えば520mmとなっており、Y方向における幅が、例えば52mmとなっており、X方向における長さが、例えば55mmとなっている。また、スパイヤモデル32の中心同士の間隔は、例えば150mmとなっている。
【0026】
凹凸モデル33は、スパイヤモデル32に対し主流方向の下流側に設けられた複数の凸部33aによって形成されている。複数の凸部33aは、空間領域モデル31の鉛直方向下方側の面である地表面から突出するように形成されている。各凸部33aは、長方体形状のブロックとなっており、各凸部33aの長手方向(延在方向)は、Y方向となっている。
【0027】
複数の凸部33aは、規則的なパターンで配置されている。つまり、複数の凸部33aは、主流方向に所定の間隔を空けて並べられることで、縞状に配置されている。これにより、凹凸モデル33上を流れる気流は、各凸部33aにより水平方向に案内される。ここで、各凸部33aは、Z方向における高さが、例えば5mmとなっており、Y方向における幅が、空間領域モデル31と同幅となっており、X方向における長さが、例えば55mmとなっている。また、凸部33a同士の間隔は、例えば55mmとなっている。なお、X方向におけるスパイヤモデル32と凹凸モデル33との間の間隔は、例えば55mmとなっている。
【0028】
気流拡散解析ステップでは、モデル生成ステップにおいて生成した空間モデル30における大気の拡散を、気流計算コードを用いて解析する。なお、気流拡散解析ステップにおいて使用される気流計算コードは、例えば、公知となっているRIAM−COMPACT社製の気流計算コードである。
【0029】
次に、図4および図5を参照して、風洞実験によって得られた気流の拡散の解析結果と、風洞実験の解析結果を気流拡散解析プログラムによって再現したときに得られる気流の拡散の解析結果とについて比較する。図4は、風洞実験の解析結果と、従来の気流拡散解析の解析結果とを比較したグラフであり、図5は、風洞実験の解析結果と、本実施例の気流拡散解析の解析結果とを比較したグラフである。図4および図5に示すグラフは、その横軸が、上流側から下流側へ向かうX方向の距離(風下距離)Xであり、その縦軸が、Y方向における拡散幅σyである。また、図4および図5に示すグラフには、大気安定度A,B,C,D,E,F,Gが示されており、これら大気安定度A,B,C,D,E,F,Gは、風下距離の変化に応じた水平方向における気流の拡散幅を表わしている。ここで、大気安定度Dが、最も出現頻度の多い大気条件となる中立状態である。また、大気安定度A,B,Cは、大気安定度Dよりも拡散幅が大きいため、大気安定度が不安定なものとなる一方で、大気安定度E,F,Gは、大気安定度Dよりも拡散幅が小さいため、大気安定度がより安定なものとなっている。ここで、気流の拡散解析を実行するにあたり、大気条件として、大気安定度Cから大気安定度Dの間となるように要求される。
【0030】
先ず、風洞実験により得られた解析結果について説明する。風洞実験において、実験対象となる実験空間は、長方体形状の空間領域と、主流方向の上流側に設けた複数のスパイヤと、を有している。なお、実験空間は、気流拡散解析プログラム10において生成される空間モデル30に相当するものであり、空間領域およびスパイヤは、空間領域モデル31およびスパイヤモデル32に相当する。一方で、実験空間は、実施例1の気流拡散解析プログラム10において生成される凹凸モデル33に相当する部分を有していない。上記した実験空間によって風洞実験が行われると、図4および図5の白抜きの四角(□)で示すように、風洞実験により得られる解析結果は、大気安定度Cから大気安定度Dの範囲内に収まる。
【0031】
一方で、従来の気流拡散解析プログラムでは、上記の風洞実験を再現する場合、生成する空間モデル30は、風洞実験での実験空間と同様となる空間モデル30であって、凹凸モデル33が形成されていない。このため、図4の黒塗りのひし形で示すように、従来の気流拡散解析プログラムにより得られる解析結果は、大気安定度Cから大気安定度Dの範囲内に収まっておらず、大気安定度Dから大気安定度Fの範囲内となっている。これにより、従来の気流拡散解析プログラムでは、上記の風洞実験を好適に再現しているとは言えないことが確認された。
【0032】
これに対し、実施例1の気流拡散解析プログラム10では、上記の風洞実験を再現する場合、生成する空間モデル30は、風洞実験での実験空間に相当する空間モデル30に、凹凸モデル33を追加して形成している。このため、図5の黒塗りの三角で示すように、実施例1の気流拡散解析プログラムにより得られる解析結果は、大気安定度Cから大気安定度Dの範囲内に収まり、上記の風洞実験を好適に再現していることが確認された。
【0033】
以上により、実施例1の構成によれば、空間モデル30において、その地表面に粗度を表現した凹凸モデル33を形成することができる。このため、地表面上を流れる気流は、地表面の粗度によって、その一部が水平方向に拡散される。これにより、気流の拡散解析では、要求された所定の大気条件の範囲内に収めた状態で、気流の拡散解析を好適に行うことができる。
【0034】
また、実施例1の構成によれば、凹凸モデル33を規則的な縞状のパターンで構成することができるため、気流を積極的に水平方向に拡散させることができる。このため、空間モデルを簡易なモデルとすることができ、また、水平方向に拡散させる有用な凹凸モデル33のみを形成することができるため、気流の拡散解析を効率よく行うことができ、計算時間の増大を抑制することができる。
【実施例2】
【0035】
次に、図6および図7を参照して、実施例2の気流拡散解析プログラムおよび気流拡散解析装置について説明する。図6は、実施例2に係る空間モデルの平面図であり、図7は、風洞実験の解析結果と、実施例2の気流拡散解析の解析結果とを比較したグラフである。なお、重複した記載を避けるべく、異なる部分についてのみ説明する。実施例1における空間モデル30において、凹凸モデル33は、複数の凸部33aを縞状に配置したが、実施例2における空間モデル50において、凹凸モデル53は、複数の凸部53aを千鳥状に配置している。以下、図6を参照して、凹凸モデル53について説明する。
【0036】
実施例2の凹凸モデル53は、スパイヤモデル32に対し主流方向の下流側に設けられた複数の凸部53aによって形成されている。複数の凸部53aは、空間領域モデル31の鉛直方向下方側の面である地表面から突出するように形成されている。複数の凸部53aは、Y方向に所定の間隔を並べて一列に配置され、一列となる複数の凸部53aは、所定の間隔を空けて複数列に並べられている。このとき、隣接する一方の列の複数の凸部53aは、他方の列の複数の凸部53aの間に位置するように、Y方向に位置ズレして配置されることで、複数の凸部53aは千鳥配置となっている。
【0037】
このとき、図7に示すように、実施例2の気流拡散解析プログラムにより得られる解析結果は、黒塗りの四角であり、大気安定度Cから大気安定度Dの範囲内に収まることが確認された。
【0038】
以上により、実施例2の構成においても、空間モデル50において、その地表面に粗度を表現した凹凸モデル53を形成することができる。このため、地表面上を流れる気流は、地表面の粗度によって、その一部が水平方向に拡散される。これにより、気流の拡散解析では、要求された所定の大気条件の範囲内に収めた状態で、気流の拡散解析を好適に行うことができる。
【0039】
なお、実施例1および実施例2において、凹凸モデル33,35の凸部33a,53aを、縞状に配置あるいは千鳥配置としたが、この構成に限らず、地表面に粗度を表現し、大気安定度を所定の範囲内とすることが可能な凹凸モデルであればよい。このとき、凹凸モデルは、気流の拡散解析の計算効率のよいモデルがより好ましい。
【符号の説明】
【0040】
10 気流拡散解析プログラム
20 気流拡散解析装置
21 記憶部
22 演算部
30 空間モデル
31 空間領域モデル
32 スパイヤモデル
33 凹凸モデル
33a 凸部
53 凹凸モデル(実施例2)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7