特許第5701161号(P5701161)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5701161
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】撹拌機構
(51)【国際特許分類】
   F25C 5/00 20060101AFI20150326BHJP
   F25C 5/18 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
   F25C5/00 302Z
   F25C5/18
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-133609(P2011-133609)
(22)【出願日】2011年6月15日
(65)【公開番号】特開2013-2711(P2013-2711A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2014年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(72)【発明者】
【氏名】真田 智之
(72)【発明者】
【氏名】野津 慎次
【審査官】 仲村 靖
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−032469(JP,U)
【文献】 特開2006−118770(JP,A)
【文献】 米国特許第05054654(US,A)
【文献】 特開2005−121277(JP,A)
【文献】 特開昭58−100007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25C 5/18
F25C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯氷庫(20)に設けられ、該貯氷庫(20)の貯氷室(26)に貯留された氷を撹拌する撹拌機構において、
前記貯氷室(26)の一面を画成する壁部(30)に着脱可能に取り付けられ、該貯氷室(26)に配置される設置部材(61,62)と、
前記設置部材(61,62)に取り付けられて、前記貯氷室(26)に配置されるモータ(72)と、
一端が前記モータ(72)に接続支持されて前記貯氷室(26)に配置され、該モータ(72)によって回転されて貯氷室(26)の氷を撹拌する撹拌部材(74)とを備え、
前記設置部材(61,62)、前記モータ(72)および前記撹拌部材(74)を一体的に取り扱い可能なユニットとして構成した
ことを特徴とする撹拌機構。
【請求項2】
前記設置部材(62)は、鉤状に形成された係止部(66)を、前記壁部(30)に設けられた開口部(30a)の開口縁に引っ掛けて取り付けられる請求項1記載の撹拌機構。
【請求項3】
前記撹拌部材(74)は、前記モータ(72)に接続される一端と反対側の他端が、前記設置部材(62)と対向するように該設置部材(62)に支持された支持部(84)で回転可能に支持される請求項1または2記載の撹拌機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貯氷庫に設けられた氷の撹拌機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
貯氷庫に内部画成された貯氷室に多数の氷塊を貯蔵して、必要に応じて取り出しできるよう構成されたアイスディスペンサが、飲食店等で広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のアイスディスペンサは、貯氷室の底部に回転自在に配設され、貯氷室の氷を貯氷室の底部に開口する取出口に向けて押送する送出機構と、貯氷室における氷送出スクリューの上側に回転自在に配設され、貯氷室に貯留された氷を撹拌する撹拌機構(アジテータ)とを備えている。
【0003】
前記送出機構は、回転軸の周りに螺旋状に巻き掛けられたフィンを有する氷送出スクリューと、貯氷室の前側を画成する前面パネルを貫通するように回転自在に設けられて、氷送出スクリューの回転軸前端を支持する第1カップリングと、この第1カップリングの前端に設けられた第1スプロケットに第1チェーンを介して連結され、貯氷室の外側に設置されたモータとから構成されている。撹拌機構は、回転軸の径方向に突出する撹拌棒を有する撹拌部材と、前記前面パネルを貫通するように回転自在に設けられて、撹拌部材の回転軸前端を支持する第2カップリングと、この第2カップリングの前端に設けられた第2スプロケットに第2チェーンを介して連結された前記モータとから構成されている。このように、アイスディスペンサは、1つのモータを駆動することで、氷送出スクリューおよび撹拌部材が連動して回転し、氷送出スクリューの回転により取出口から氷が送出されると共に、撹拌部材の回転により貯氷室の氷を撹拌することで氷のアーチングを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−242457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のアイスディスペンサは、撹拌機構を構成する撹拌部材が貯氷室に設置されるのに対し、この撹拌部材を回転するモータが貯氷室の外側に設置され、撹拌部材およびモータが前面パネルを貫通する第2カップリングで連繋されている。このため、撹拌機構を取り付けたりまたは取り外したりする際には、貯氷室の内側で撹拌部材を着脱する作業を行い、貯氷室の外側でモータや第2チェーン等を着脱する作業を行う必要があり、特に故障に際しての現場での交換作業に手間がかかる難点が指摘される。また、撹拌機構は、断熱構造の前面パネルを貫通して配設された第2カップリングを介して貯氷庫の内外に構成部材を振り分けて配置しているので、例えば第2カップリングを前面パネルに対して回転可能に支持する軸受け構造や前面パネルを貫通する第2カップリングの隙間を埋めるシール部材等が必要となり、構成部材が多くなると共に複雑になってしまう。
【0006】
すなわち本発明は、従来の技術に係る貯氷庫に内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、貯氷庫に対して着脱が容易な撹拌機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明の撹拌機構は、
貯氷庫に設けられ、該貯氷庫の貯氷室に貯留された氷を撹拌する撹拌機構において、
前記貯氷室の一面を画成する壁部に着脱可能に取り付けられ、該貯氷室に配置される設置部材と、
前記設置部材に取り付けられて、前記貯氷室に配置されるモータと、
一端が前記モータに接続支持されて前記貯氷室に配置され、該モータによって回転されて貯氷室の氷を撹拌する撹拌部材とを備え、
前記設置部材、前記モータおよび前記撹拌部材を一体的に取り扱い可能なユニットとして構成したことを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、撹拌機構が設置部材、モータおよび撹拌部材を一体的に取り扱い可能なユニットとして構成されているので、撹拌機構の取り付けおよび取り外し作業が容易である。また、撹拌機構は、設置部材、モータおよび撹拌部材が貯氷室に配置される構成であるので、貯氷室を画成する壁を挟んで貯氷室の外側と内側とに構成部材を分けて設置する場合と比べて、壁を貫通するための部材や貫通した壁を塞ぐ部材等を省略することができ、構成を簡素化することができる。
【0008】
請求項2に係る発明では、前記設置部材は、鉤状に形成された係止部を、前記壁部に設けられた開口部の開口縁に引っ掛けて取り付けられることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、撹拌機構は、設置部材の係止部を開口部の開口縁に引っ掛けることで設置することができ、撹拌機構の着脱をより容易にすることができる。
【0009】
請求項3に係る発明では、前記撹拌部材は、前記モータに接続される一端と反対側の他端が、前記設置部材と対向するように該設置部材に支持された支持部で回転可能に支持されることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、撹拌部材の両端がモータと支持部とによって支持されるので、モータにかかる負荷を軽減することができ、撹拌部材を大きく設定することが可能となる。すなわち、撹拌部材を大きく設定することで、貯氷室の広い範囲に撹拌部材の撹拌作用を及ぼすことができ、貯氷室においてアーチングの発生を好適に防止できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る撹拌機構によれば、貯氷庫に容易に着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の好適な実施例に係る撹拌機構を備えたアイスディスペンサを示す側断面図である。
図2】実施例の撹拌機構を一部破断して示す側面図である。
図3】実施例の撹拌機構を示す概略斜視図である。
図4】実施例の撹拌機構について、シャフトカバーおよび撹拌部材を分解した状態を示す概略斜視図である。
図5】実施例の撹拌モータと撹拌部材とを分解して示す概略斜視図である。
図6】変更例の撹拌機構を一部破断して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係る撹拌機構につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。以下の説明では、貯氷庫において貯氷室から氷を取り出す側を前側として、各構成の方向を指称する。
【実施例】
【0013】
図1に示すように、アイスディスペンサ10は、圧縮機CM、凝縮器CDおよびこの凝縮器CDを空冷するファンFM等からなる冷凍機構16および電装箱18等が設置される機械室14が内部画成された筐体部12と、この筐体部12の上側に設けられた断熱構造の貯氷庫20とを備えている。実施例の貯氷庫20は、平面視矩形状の箱状体であって、氷を製造する製氷機構24が配設される製氷機構室22が内側上部に設けられると共に、製氷機構室22の下側に連通して、製氷機構24で製造された氷を貯留する貯氷室26が内側下部に設けられている。アイスディスペンサ10は、冷凍機構16を作動して製氷機構24の製氷部24aを冷却したもとで製氷部24aへ給水して所要形状の氷を生成する製氷工程と、この生成された氷を製氷機構24から放出する除氷工程とからなる製氷サイクルを繰り返すよう構成されている。そして、アイスディスペンサ10は、除氷工程で製氷機構24から放出された氷が貯氷室26に貯留され、貯氷室26の上部に設けられた貯氷スイッチ28が、氷を検知することで製氷サイクルを停止するようになっている。また、貯氷庫20は、貯氷室26から氷を外部に送り出す送出機構50と、貯氷室26に貯留された氷を撹拌する撹拌機構(アジテータ)60とを備えている。
【0014】
前記貯氷庫20は、前後左右および上下の各面が、ウレタン等の断熱材が充填された断熱構造のパネルで構成されている。貯氷庫20には、該貯氷庫20の前部を構成する前壁部30に保守開口部(開口部)30aが設けられ、前壁部30と同様の断熱構造の蓋パネル(パネル)32で保守開口部30aが開閉可能に塞がれるようになっている(図1参照)。蓋パネル32は、保守開口部30aに設けられたブラケット31に対して、後面周縁部に配設されたスポンジ等の弾性体からなるシール材32aを弾力的に当接させて、ネジ等の締結手段で取り付けるようになっている。実施例の貯氷庫20では、該貯氷庫20における製氷機構室22の前側を開放するように保守開口部30aが前壁部30の上部に設けられ、蓋パネル32を取り外して保守開口部30aを開放することで製氷機構室22および該製氷機構室22を介して貯氷室26に外部からアクセス可能になっている。なお、保守開口部30aは、撹拌機構60が通過可能な大きさに設定されている。
【0015】
前記貯氷庫20は、該貯氷庫20の前後左右および下部をなす部分30,33,34,34,35が、前壁部30の蓋パネル32を除いて一体形成され、該貯氷庫20の上部をなす天板部36が、前後左右の壁部30,33,34,34と別体に構成されている。そして、天板部36は、前後左右の壁部30,33,34,34の上端面に対して着脱可能に取り付け、製氷機構室22の上側を塞いでいる。アイスディスペンサ10には、貯氷庫20の前側を覆って前面カバー38が着脱自在に設置され、前壁部30の前側に設けられた送出機構50の後述する連繋手段57,58,59を前面カバー38が隠すようになっている(図1参照)。貯氷庫20には、該貯氷庫20(貯氷室26)の底部をなす底板部35の前部分に取出口40が形成されると共に、取出口40から氷を案内するシュート42が取出口40に連通接続されている。アイスディスペンサ10は、貯氷庫20の下側に設けられた受台部44に載置された容器Uに、取出口40から垂下するシュート42によって取出口40から送り出された氷を案内するよう構成されている。
【0016】
前記送出機構50は、前後方向に回転軸52aが延在するように貯氷室26の底部に配設された氷送出スクリュー52と、連繋手段55,57,58,59を介して氷送出スクリュー52を回転する送出モータ(モータ)54とから基本的に構成されている(図1参照)。氷送出スクリュー52は、回転軸52aの周りに螺旋状に巻き掛けられたフィン52bを有し、回転軸52aの前端部が前壁部30に回転自在に設けられたカップリング55の貯氷室26に臨む後部に接続されると共に、回転軸52aの後端部が後壁部33に設けられた軸受部56に回転自在に支持されるようになっている。送出モータ54は、貯氷庫20の下部に出力軸を前側に向けた姿勢で設置され、この出力軸に固定された駆動側スプロケット57とカップリング55の貯氷庫20の外側に臨む前部に設けられた従動側スプロケット58との間にチェーン59が巻き掛けられている。送出機構50は、送出モータ54を駆動することで、駆動側スプロケット57、チェーン59、従動側スプロケット58およびカップリング55からなる連繋手段を介して氷送出スクリュー52が回転され、回転する氷送出スクリュー52のフィン52bによって氷を取出口40に向けて押送するよう構成されている。
【0017】
前記撹拌機構60は、貯氷室26において送出機構50の上側に位置して、貯氷室26を画成する壁部30の一つ(実施例では前壁部30)に設置されている(図1参照)。撹拌機構60は、前壁部30に片持ち支持されて、貯氷室26に収納されている。撹拌機構60は、貯氷室26を画成する前壁部30に着脱可能に取り付けられて、貯氷室26に臨む設置部材62と、この設置部材62に取り付けられて、貯氷室26に配置される撹拌モータ(モータ)72と、一端が撹拌モータ72に接続支持されて、貯氷室26に配置される撹拌部材74とを備えている(図2または図3参照)。そして、撹拌機構60は、設置部材62、撹拌モータ72および撹拌部材74を一体的に取り扱い可能な1つのユニットとして構成されている。
【0018】
前記設置部材62は、撹拌機構60を構成する構成部材72,80,82の設置基盤となると共に貯氷庫20への取り付け部分となる部材であって、撹拌機構60において設置部材62以外の撹拌モータ72や撹拌部材74は、貯氷庫20に直接取り付けられない。設置部材62は、前壁部30への取り付け部分が形成されたベース部64と、このベース部64に取り付けられ、撹拌モータ72が取り付けられるカバー部68とから構成されている(図2参照)。ベース部64には、板状のベース本体65の上端に、カバー部68が設置される側(貯氷室26に臨む後面側)と反対側(実施例では前方)に折り返された鉤状の係止部66が形成されている。また、ベース部64には、ベース本体65の後面(貯氷室26側)に後方へ突出する規制片67が、左右の側縁および下縁に延在する枠状に形成されている(図2または図4参照)。設置部材62(ベース部64)は、係止部66を保守開口部30aにおける下側の開口縁に引っ掛けると共に、前壁部30の内面に後方に向けて延出形成された保持部46に載置されて、前壁部30に着脱可能に設置される(図1参照)。係止部66は、前壁部30の内面に沿って立てた姿勢で延在するベース本体65の上端から前方に延出する横片66aとこの横片66aの前端から垂下するように形成された縦片66bとから構成され、縦片66bとベース本体65とが前後の関係で対向するようになっている。また、ベース部64は、ベース本体65と係止部66の縦片66bとの間隔が、前壁部30の厚みと同一または該厚みより僅かに大きくなるよう形成されている。係止部66は、保守開口部30aにおける下側の開口縁に横片66aを載置すると共に前壁部30を縦片66bとベース本体65との間に挟むように構成され、保守開口部30aを蓋パネル32で塞ぐことで横片66aが蓋パネル32の下面と保守開口部30aにおける下側の開口縁に挟まれて移動規制されるようになっている。前壁部30には、保守開口部30aにおける下側の開口縁に係止部66の横片66aに合わせた左右幅で位置決め凹部30bが設けられ(図4参照)、位置決め凹部30bに横片66aを嵌め合わせて係止部66(設置部材62)が位置決めされる。
【0019】
前記カバー部68は、前方(前壁部30側)が開放した箱状に形成され、左右方向の幅がベース部64における対向する規制片67間の幅に合わせて設定されている。カバー部68は、前端部に内側に折り返すように設けられた当接部68aをベース本体65に当接させると共に、規制片67の内側に嵌め合わせて規制片67で位置決めしたもとで該ベース部64に対してネジ等により固定される。設置部材62には、ベース部64のベース本体65とカバー部68との間に撹拌モータ72を収納可能な収納空間62aが画成され、ベース本体65と対向するカバー部68の設置板部70に撹拌モータ72の後述する出力軸73が挿通される軸通口70aが貫通形成されている(図2参照)。設置部材62は、軸通口70aを除いて密閉されて、外部から収納空間62aに水が入らないようになっている。
【0020】
前記撹拌モータ72は、出力軸73を軸通口70aに挿通させた状態でカバー部68における設置板部70の前面に取り付けられ、ベース本体65とカバー部68との間の収納空間62aに収納されている(図2参照)。撹拌モータ72は、該撹拌モータ72の本体部分から突出する出力軸73を後方へ向けて略水平に延在させた姿勢で設置部材62に取り付けられており、軸通口70aを介して設置板部70の後側に出力軸73の先端が突出するようになっている(図4参照)。出力軸73の先端は、断面略矩形状に形成されており、スプリングピン79が挿入される駆動側ピン孔73aが出力軸73の径方向に貫通形成されている(図5参照)。カバー部68の側面に開設された配線開口(図示せず)を介して収納空間62aから引き出された撹拌モータ72の配線は、シール材32aを変形させることで生じる蓋パネル32とブラケット31との隙間を介して貯氷庫20の外部に引き出されて、機械室14の電装箱18に接続される。
【0021】
実施例の撹拌部材74は、丸棒形状のシャフト76と、このシャフト76の周面に該シャフト76の径方向に突出するよう設けられた棒状の撹拌片78とから構成されている(図2または図3参照)。撹拌部材74は、シャフト76の周面において該シャフト76の軸方向を挟んで対称な位置関係で配置された一対の撹拌片78,78の組が複数組設けられ、隣り合う一対の撹拌片78,78の組同士がシャフト76の周方向に90°ずらして配設されている。撹拌部材74は、シャフト76の前端面に接続孔部76aが穿設されており、この接続孔部76aの開口形状が撹拌モータ72の出力軸73の先端形状と一致するようになっている(図5参照)。また、シャフト76の前端(一端)には、該シャフト76の径方向に貫通する従動側ピン孔76bが設けられて、この従動側ピン孔76bが接続孔部76aに連通するようになっている。撹拌部材74は、設置部材62の軸通口70aから後方へ突出する撹拌モータ72の出力軸73を接続孔部76aに嵌め合わせて、互いに整合させた従動側ピン孔76bおよび駆動側ピン孔73aにスプリングピン79を挿入することで出力軸73に接続される。そして、撹拌部材74は、出力軸73に支持されて、シャフト76が貯氷室26を前後方向に横切って延在するように配置される。
【0022】
実施例の撹拌機構60は、カバー部68における設置板部70の後面に取り付けられて、軸通口70aを覆うシャフトカバー80を備えている(図2または図4参照)。シャフトカバー80は、前方に開放する箱状のカバー本体81と、このカバー本体81の上部および下部に延出形成されたフランジ部82,82とを備えている。カバー本体81は、上下の幅が軸通口70aより大きく設定されると共に、左右の幅がカバー部68における設置板部70の左右幅に合わせて設定されており、軸通口70aと同軸的にシャフト開口81aが設けられている。シャフト開口81aは、シャフト76の外形寸法に合わせて形成され、シャフト開口81aに挿通したシャフト76の周りを隙間なく囲うようになっている。シャフトカバー80は、シャフト76をシャフト開口81aに挿通して、上下のフランジ部82,82を設置板部70に当接させて該設置板部70の後面に取り付けられ、設置板部70とシャフトカバー80のカバー本体81との間に、撹拌部材74のシャフト76と撹拌モータ72の出力軸73との接続部位が収納される。ここで、シャフトカバー80は、上下のフランジ部82,82における左右の隅部に設けられた通孔82aが、撹拌モータ72の4隅に設けられたネジ孔72aに整合するよう構成されている。シャフトカバー80は、フランジ部82の通孔82aおよび設置板部70の通孔70bを介してネジ孔72aにネジNを螺合することで、シャフトカバー80だけでなく撹拌モータ72も設置板部70に取り付けられる。
【0023】
前記撹拌機構60は、撹拌部材74におけるシャフト76の後端(他端)を回転可能に支持する支持部84を備えている(図2または図3参照)。すなわち、撹拌機構60は、シャフト76の前端が撹拌モータ72で支持されると共に、シャフト76の後端が支持部84で支持されて、撹拌部材74が両持ち構造となっている。支持部84は、設置板部70の四隅から後方へ延出するように設けられた4本の梁部85によって設置板部70の後面に対向するように支持された架台部86に設けられている。各梁部85は、断面円形の棒形状であって、氷の通過が可能な間隔をあけて4本の梁部85が配置されている。このように、撹拌機構60は、シャフトカバー80および支持部84についても設置部材62に設けられている。
【0024】
前記撹拌機構60の取り外しに際して、先ず蓋パネル32を取り外して保守開口部30aを開放することで、蓋パネル32で挟まれて固定されていた設置部材62の係止部66が取り外し可能となる。そして、撹拌機構60は、保持部46の上に載置されているだけなので、設置部材62を上方へ引き上げれば、係止部66が保守開口部30aの開口縁から外れて、保守開口部30aから撹拌機構60を外部に取り出すことができる。撹拌機構60は、設置部材62に撹拌モータ72が直接取り付けられ、設置部材62に直接取り付けられた梁部85を介して架台部86および支持部84が支持されると共に撹拌モータ72および支持部84に撹拌部材74が支持されており、全ての構成部材72,74,84,85,86が直接または間接的に設置部材62に支持されている。すなわち、撹拌機構60の貯氷庫20からの取り外しに際して、撹拌モータ72や撹拌部材74等の構成部材を分解する手間がかからず、撹拌モータ72や撹拌部材74等の構成部材を取り外すことなく、設置部材62を貯氷庫20から取り外すだけで、撹拌機構60全体を簡単に取り外すことができる。撹拌機構60を取り付ける際には、貯氷庫20の外側で撹拌モータ72や撹拌部材74等の構成部材を組み立ててユニットとした状態で保守開口部30aを介して貯氷室26に挿入し、設置部材62の係止部66を保守開口部30aの開口縁に引っ掛けると共に保持部46に載置する。そして、保守開口部30aに蓋パネル32を取り付けることで、係止部66が位置決め凹部30bに嵌合した状態で蓋パネル32に挟まれて固定され、撹拌機構60が貯氷室26に設置される。このように、撹拌機構60は、設置部材62、撹拌モータ72および撹拌部材74等の構成部材を一体的に取り扱い可能なユニットとして構成することで、貯氷庫20に対する着脱作業性を向上させることができる。また、撹拌機構60は、設置部材62を貯氷庫20に対して着脱する作業だけで全体の取り付けまたは取り外しを行うことができ、従来例のように貯氷庫20の内外の両方で構成部材の着脱作業が発生せず、撹拌機構60に係るメンテナンス作業の手間をより軽減することができる。しかも、撹拌機構60は、設置部材62の係止部66を保守開口部30aの開口縁に引っ掛けることで設置することができ、撹拌機構60の着脱をより容易にすることができる。
【0025】
前記撹拌機構60は、設置部材62、撹拌モータ72、撹拌部材74、梁部85、架台部86および支持部84等の構成部材が貯氷室26側だけに配置される構成であるので、従来例で説明したような前壁部30を挟んで貯氷室26の外側と内側とに構成部材を分けて設置する撹拌機構と比べて、壁部を貫通するためのカップリングや貫通した壁を塞ぐシール部材等を省略することができ、構成を簡素化することができる。しかも、撹拌機構60は、送出機構50の送出モータ54と独立した専用の撹拌モータ72を備えているので、送出モータ54と撹拌部材74とを連繋させる連繋手段を設ける必要がなく、より構成を簡素化することができる。また、撹拌機構60は、構成が簡素なので故障の発生を抑えることができる。そして、撹拌機構60と送出機構50とを独立して動作させることができるので、氷が送出機構50によって長期間取り出されなくても、撹拌機構60を適宜のタイミングで別個に動作させることで、貯氷室26においてアーチングの発生を好適に防止できる。
【0026】
前述の如く撹拌機構60は、構成部材72,74,84,85,86が貯氷室26側にだけに配置されるユニット構造であるので、前壁部30に部材を通す貫通孔や貯氷庫の外側に撹拌モータを設置するためのスペース等を必要としない。すなわち、撹拌機構60の設置が特に予定されてなかった既存の貯氷庫20であっても、実施例の撹拌機構60を後付けすることができる。貯氷室26での氷のアーチングは、必ず起こるものではなく、機種毎に異なる氷の大きさや外気温等の設置環境などの種々の要因の影響を受けて、アーチングが起きたり起きなかったりする。実施例の撹拌機構60によれば、貯氷庫20に後付けすることができるので、撹拌機構60を備えていないアイスディスペンサを設置した後に、アーチングが発生することが分かった場合や設置環境の変化によってアーチングが発生した場合に、撹拌機構60を貯氷庫20に後付けすることができる。すなわち、撹拌機構60を備えていないアイスディスペンサを標準品とすることで、標準品のコストを下げることができ、必要に応じてオプション品である撹拌機構60を取り付けることで最小限のコストでアーチングを好適に解消し得る。
【0027】
前記撹拌機構60は、撹拌部材74の両端が撹拌モータ72と支持部84とによって支持されるので、撹拌モータ72にかかる負荷を軽減することができ、撹拌部材74を大きく設定することが可能となる。すなわち、撹拌部材74を貯氷室26の前後に亘るように大きく設定することで、貯氷室26の広い範囲に撹拌部材74の撹拌作用を及ぼすことができ、貯氷室26においてアーチングの発生を好適に防止できる。しかも、撹拌モータ72への負荷が軽減することで、撹拌モータ72の寿命を伸ばすことができる。
【0028】
(変更例)
前述した実施例に限定されず、例えば以下のように変更してもよい。
(1)貯氷庫は、製氷機構室と貯氷室とが一体的な構成に限られず、製氷機構室が別体であってもよい。また、製氷機構室と貯氷室とを組み合わせ可能なスタックオンタイプであってもよい。
(2)撹拌機構は、氷を送り出す送出機構を備えたアイスディスペンサに適用するものではなく、氷を使用者がスコップ等で取り出す単なる氷のストッカであってもよい。
(3)撹拌モータを設置部材に収納するよう構成したが、防水型のモータであれば露出させてもよい。
(4)撹拌部材は、撹拌部の配置および形状は実施例の構成に限定されず、例えば棒材が螺旋状に巻き掛けられる構成であってもよい。
(5)図6に示す変更例の撹拌機構90のように、梁部、架台部および支持部を省略して、撹拌部材74を撹拌モータ72だけで支持する構成であってもよい。また、図6に示す設置部材61のように、前壁部30にネジNで着脱可能に取り付けてもよい。更に、設置部材61の上面を前壁部30から離れるにつれて下方傾斜するように構成し、設置部材61の上に氷が滞留しないようにしてもよい。なお、図6において実施例と同様の部材には、実施例と同じ符号を付してある。
【符号の説明】
【0029】
20 貯氷庫,26 貯氷室,30 前壁部(壁部),30a 保守開口部(開口部),
61,62 設置部材,66 係止部,72 撹拌モータ(モータ),74 撹拌部材,
84 支持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6