特許第5701216号(P5701216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5701216
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】加齢黄斑変性における遺伝的多型
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20060101AFI20150326BHJP
【FI】
   C12Q1/68 AZNA
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-534924(P2011-534924)
(86)(22)【出願日】2009年11月5日
(65)【公表番号】特表2012-507988(P2012-507988A)
(43)【公表日】2012年4月5日
(86)【国際出願番号】US2009063434
(87)【国際公開番号】WO2010054110
(87)【国際公開日】20100514
【審査請求日】2012年10月29日
(31)【優先権主張番号】61/111,667
(32)【優先日】2008年11月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/174,856
(32)【優先日】2009年5月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】グレアム, ロバート アール.
(72)【発明者】
【氏名】ベーレンス, ティモシー ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】イアンシュレフ, ツォンチョ
(72)【発明者】
【氏名】シャピロ , ハワード
【審査官】 上條 肇
(56)【参考文献】
【文献】 J.Hepatol.,2008年 9月,Vol.49, No.3,p.339-345
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09 − 15/90
C12Q 1/68
G01N 33/15
G01N 33/48 − 33/50
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
滲出性AMD患者が高親和性の抗VEGF抗体を用いた治療の利益を得る見込みが増加しているかどうかを予測する方法において、rs17611に対応する補体C5因子遺伝子(C5)I802Vアレルにおける前記患者から単離したサンプルの遺伝子多型のスクリーニングを含み、ここで、対応する遺伝子型がAA又はAGを含む場合、該患者は、前記治療の利益を得る見込みが増加している方法。
【請求項2】
前記抗VEGF抗体がハイブリドーマATCC(登録商標)HB10709によって産生されるモノクローナル抗VEGF抗体A4.6.1として同一のエピトープに結合する、請求項1の方法。
【請求項3】
前記抗VEGF抗体が、次の重鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:CDRH1(GYDFTHYGMN;配列番号:1)、CDRH2(WINTYTGEPTYAADFKR;配列番号:2)及びCDRH3(YPYYYGTSHWYFDV;配列番号:3)を含む重鎖可変ドメイン並びに次の軽鎖CDRアミノ酸配列:CDRL1(SASQDISNYLN;配列番号:4)、CDRL2(FTSSLHS;配列番号:5)及びCDRL3(QQYSTVPWT;配列番号:6)を含む軽鎖可変ドメインを有する、請求項2の方法。
【請求項4】
前記抗VEGF抗体がY0317の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを有する請求項3の方法。
【請求項5】
前記抗VEGF抗体がラニビツマブである、請求項1の方法。
【請求項6】
対応する遺伝子型がAAを含む請求項1から5の何れか一項の方法。
【請求項7】
対応する遺伝子型がAGを含む請求項1から5の何れか一項の方法。
【請求項8】
滲出性AMD患者が、rs17611に対応するC5 I802VアレルにおけるA/G遺伝子多型を含む遺伝子多型領域に特異的にハイブリダイズすることができる第一のオリゴヌクレオチド及び第二のオリゴヌクレオチドを含む、抗VEGF抗体を用いた治療の利益を得る見込みが増加しているかどうかを予測するためのキット。
【請求項9】
前記第一のオリゴヌクレオチドが第一のプライマーであって、第二のオリゴヌクレオチドが第二のプライマーである請求項8のキット。
【請求項10】
前記第一のオリゴヌクレオチドが第一のプローブであって、第二のオリゴヌクレオチドが第二のプローブである請求項8のキット。
【請求項11】
前記第一のオリゴヌクレオチド及び前記第二のオリゴヌクレオチドを、I802V C5アレルにおけるA/G遺伝子多型を含むC5遺伝子の一部を増幅するために用いてもよい請求項8または9のキット。
【請求項12】
患者が滲出性AMD又はGAを伴う非滲出性AMDを発症する見込みが増加しているかどうかを予測する方法において、rs17611に対応するC5 I802Vアレルにおける前記患者から単離したサンプルの遺伝子多型のスクリーニングを含み、ここで、対応する遺伝子型がアレルT(ile)含む場合、該患者は、AMDを発症する見込みが増加している方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
この出願は、2008年11月5日に出願された米国仮出願番号第61/111667号及び2009年5月1日に出願された米国仮出願番号第61/174856号に基づく米国特許法第119条の優先権を主張するものであり、出典明示によりその内容がここに取り込まれる。
【0002】
本発明は、ヒトの疾患の治療に関する。より具体的には、本発明は加齢黄斑変性(AMD)に関する。
【背景技術】
【0003】
AMDは、高齢者の深刻で不可逆的な失明の主たる原因である。Bressler (2004) JAMA 291:1900-01。ドルーゼとして知られている淡黄色の染み、網膜色素上皮(RPE)の破壊、脈絡膜新生血管(CNV)、及び円板状黄斑変性を含む、臨床及び病理学的見解の広域なスペクトルによって特徴付けられる。病状は2つの形態:非滲出性(乾燥)及び滲出性(湿性又は血管新生)に分類される。最近、滲出性AMDの治療のための幾つかの治療が承認されている−ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標));VEGF−結合アプタマー、ペガプタニブ(Macugen(登録商標));及び抗VEGF抗体断片、ラニビツマブ(Lucentis(登録商標))。
【0004】
遺伝子の多型は、治療剤に対する疾患の発症又は進行及び応答を含み、特定の遺伝子における異なる遺伝子座が異なる遺伝子型を生ずる際に、集団において発生する。AMDの発症又は進行に関連する複数の多型が同定された(例えば、Despriet等(2007) Arch. Ophthalmol. 125:1270-71; Seddon等(2007) JAMA 297:1793-99, 2585; Boon等(2008) Am. J. Human Genet. 82:516-23)。以前の研究は、補体因子H(CFH)遺伝子のアミノ酸位置402における特定の多型が、ベルテポルフィンを用いたPDT又はAMDに対するラベルなしのベバシツマブ治療に関連することを示した(Brantley等(2008) Eye published online 22 February, pp. 1-6; Brantley等(2007) Ophthalmology 114:2168-73)。特定の治療の効率又は安全性を予測する多型の同定は、それらから最大の利益を得る患者に対するより優れたテーラー治療に使用され得る。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、一部は、AMDのリスク又は高親和性の抗VEGF抗体を用いた治療がAMDを伴う患者に有益である見込みが増加していることを予測する遺伝子多型の同定に基づく。
【0006】
一態様では、本発明は、滲出性AMD患者が高親和性の抗VEGF抗体を用いた治療の利益を得る見込みが増加しているかどうかを予測する方法において、rs1061170に対応する補体H因子遺伝子(CFH)Y402Hアレルにおける前記患者から単離したサンプルの遺伝子多型のスクリーニングを含み、ここで、対応する遺伝子型がCC又はCTを含む場合、該患者は、前記治療の利益を得る見込みが増加している方法を提供する。他の態様では、滲出性AMD患者が抗VEGF抗体を用いた治療の利益を得る見込みが増加しているかどうかを予測する方法において、rs17611に対応する補体C因子遺伝子(C5)I802Vアレルにおける前記患者から単離したサンプルの遺伝子多型のスクリーニングを含み、ここで、対応する遺伝子型がAA又はAGを含む場合、該患者は、前記治療の利益を得る見込みが増加している方法を提供する。更に他の態様では、滲出性AMD患者が抗VEGF抗体を用いた治療の利益を得る見込みが増加しているかどうかを予測する方法において、rs10490924に対応するHTRA1A69Sアレルにおける前記患者から単離したサンプルの遺伝子多型のスクリーニングを含み、ここで、対応する遺伝子型がGTを含む場合、該患者は、前記治療の利益を得る見込みが増加している方法を提供する。幾つかの実施態様では、該方法は更に抗VEGF抗体を用いた患者の治療を含む。
【0007】
幾つかの実施態様では、抗VEGF抗体がハイブリドーマATCC(登録商標)HB10709によって産生されるモノクローナル抗VEGF抗体A4.6.1として同一のエピトープに結合する。幾つかの実施態様では、抗VEGF抗体が、次の重鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:CDRH1(GYDFTHYGMN;配列番号:1)、CDRH2(WINTYTGEPTYAADFKR;配列番号:2)及びCDRH3(YPYYYGTSHWYFDV;配列番号:3)を含む重鎖可変ドメイン並びに次の軽鎖CDRアミノ酸配列:CDRL1(SASQDISNYLN;配列番号:4)、CDRL2(FTSSLHS;配列番号:5)及びCDRL3(QQYSTVPWT;配列番号:6)を含む軽鎖可変ドメインを有する。幾つかの実施態様では、抗VEGF抗体がY0317の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを有する。幾つかの実施態様では、抗VEGF抗体がラニビツマブである。
【0008】
他の態様では、本発明は滲出性AMD患者が、rs1061170に対応するCFH Y402HアレルにおけるC/T遺伝子多型に特異的な第一のオリゴヌクレオチド及び第二のオリゴヌクレオチドを含む、ラニビツマブを用いた治療の利益を得る見込みが増加しているかどうかを予測するためのキットを提供する。幾つかの実施態様では、オリゴヌクレオチドを、CFH Y402HアレルにおけるC/T遺伝子多型を含むCFH遺伝子の一部を増幅するために用いてもよい。
【0009】
他の態様では、本発明は滲出性AMD患者が、rs17216529に対応するC5 I802VアレルにおけるA/G遺伝子多型に特異的な第一のオリゴヌクレオチド及び第二のオリゴヌクレオチドを含む、抗VEGF抗体を用いた治療の利益を得る見込みが増加しているかどうかを予測するためのキットを提供する。幾つかの実施態様では、オリゴヌクレオチドを、I802V C5アレルにおけるA/G遺伝子多型を含むCFH遺伝子の一部を増幅するために用いてもよい。
【0010】
他の態様では、本発明は滲出性AMD患者が、rs10490924に対応するHTRA1 A69SアレルにおけるG/T遺伝子多型に特異的な第一のオリゴヌクレオチド及び第二のオリゴヌクレオチドを含む、抗VEGF抗体を用いた治療の利益を得る見込みが増加しているかどうかを予測するためのキットを提供する。幾つかの実施態様では、オリゴヌクレオチドを、HTRA1 A69SアレルにおけるG/T遺伝子多型を含むCFH遺伝子の一部を増幅するために用いてもよい。
【0011】
他の態様では、本発明は患者がAMDを発症する見込みが増加しているかどうかを予測する方法において、rs17216529に対応するC5I145Vアレルにおける前記患者から単離したサンプルの遺伝子多型のスクリーニングを含み、ここで、対応する遺伝子型がGG又はAGを含む場合、該患者は、AMDを発症する見込みが増加している方法を提供する。
【0012】
他の態様では、本発明は患者が滲出性又はGA AMDを伴う非滲出性AMDを発症する見込みが増加しているかどうかを予測する方法において、rs17611に対応するC5 I802Vアレルにおける前記患者から単離したサンプルの遺伝子多型のスクリーニングを含み、ここで、対応する遺伝子型がアレルT(ile)含む場合、該患者は、AMDを発症する見込みが増加している方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施は、特に明記しない限り、当業者の技術範囲内の分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学及び免疫学の従来技術を使用して行う。このような技術は、例えば以下のような文献に完全に明記されている。「Molecular Cloning: A Laboratory Manual, second edition」 (Sambrook et al., 1989);「Oligonucleotide Synthesis」(M. J. Gait, ed., 1984);「Animal Cell Culture」(R. I. Freshney, ed., 1987);「Methods in Enzymology」(Academic Press, Inc.);「Current Protocols in Molecular Biology」(F. M. Ausubel et al., eds., 1987, and periodic updates);「PCR: The Polymerase Chain Reaction」(Mullis et al., ed., 1994)。
【0014】
特に定義しない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語は全て、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。Singleton 等, Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2版, J. Wiley &amp; Sons (New York, N.Y. 1994)、及びMarch, Advanced Organic Chemistry Reactions, Mechanisms and Structure 4版, John Wiley &amp; Sons (New York, N.Y. 1992)により当業者は本出願に使用した多くの用語の一般的な理解が得られる。
【0015】
特許出願及び刊行物を含む本明細書において引用されるすべての文献は、出典明記によってその全体が援用される。
【0016】
定義
ここで使用される場合、単数形「a」、「an」、「the」は文脈が明らかに他の意味になっていない限り、複数形を含む。例えば、「細胞("a" cell)」は複数の「細胞」を含む。
【0017】
「含む」なる用語は、組成物及び方法が記載の要素を含むが、他を排除しないことを意図する。
【0018】
「VEGF」及び「VEGF-A」なる用語は交換可能に用いられ、Leung等 Science, 246:1306 (1989)、及びHouck等 Mol. Endocrin., 5:1806 (1991)により記載されているような、165アミノ酸の血管内皮細胞増殖因子及び関連する121、189、及び206アミノ酸の血管内皮細胞増殖因子を、その天然に生じる対立遺伝子及び加工型と共に、意味する。
【0019】
「抗VEGF抗体」は十分な親和性及び特異性でVEGFに結合する抗体である。好ましくは、本発明の抗VEGF抗体はVEGF活性が関与している疾患又は状態をターゲティング及び干渉する場合の治療薬として使用できる。抗VEGF抗体は通常は他のVEGF相同体、例えばVEGF−B又はVEGF−C、又は他の成長因子、例えばPIGF、PDGF又はbFGFには結合しない。好ましい抗VEGF抗体はハイブリドーマATCC(登録商標)HB10709により生産されるモノクローナル抗VEGF抗体A4.6.1と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体である。「高親和性抗VEGF抗体」は、モノクローナル抗VEGF抗体A4.6.1よりVEGFに対して少なくとも10倍高い親和性を有する。好ましくは、抗VEGF抗体は、Y0317のCDR又は可変領域を含む、国際公開第98/45331号に従って産生した組換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体断片である。より好ましくは、抗VEGF抗体は、ラニビツマブ(Ludentis(登録商標))として知られる抗体断片である。
【0020】
「抗体」という用語は最も広義に使用され、モノクローナル抗体(完全長又は無傷モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及びそれらが所望の生物活性を示す限り抗体断片を含む。
【0021】
「治療」とは施療的な治療及び予防的又は防止的な手段の両方を指す。治療が必要なものはすでに障害を有する者並びに障害を防止すべき者を包含する。
【0022】
「多型」なる用語は、集団において変化する配列の位置を指す。多型は異なる「アレル」から成る。このような多型の位置は、遺伝子中のその位置及びそこで見出される異なるアミノ酸又は塩基によって同定され得る。例えば、Y402H CFHは、CFH遺伝子中のアミノ酸位置402におけるチロシン(Y)及びヒスチジン(H)の間に変異があることを示す。このアミノ酸変化は、2つの異なるアレルである、2つの可能な変異塩基、C及びTの結果である。遺伝子型は、2つの離れたアレルから成るので、幾つかの可能な変異体の何れかは、任意の一つの固体で観察され得る(例えば、この例としては、CC、CT、又はTT)。固体の多型はまた、当業者に知られた固有の識別子(「参照RNP」、「refSNP」又は「rs#」)を割り当てられ、例えば、NCBIウェブサイト上で利用可能なSingle Nucleotide Polymorphism Database (dbSNP) of Nucleotide Sequence Variationにおいて使用される。
【0023】
「遺伝子型」は、細胞又は組織サンプル中の特定の遺伝子の特定のアレルを指す。上の例では、CC、CT、又はTTは、Y402H CFH多型において可能な遺伝子型である。
【0024】
「サンプル」なる用語は、患者の細胞又は組織の使用を含む。例えば、サンプルは、皮膚サンプル、頬細胞サンプル又は血液細胞を含み得る。
【0025】
サンプル中の特定の遺伝子型の同定は、当業者によく知られた幾つかの方法の何れかによって実施され得る。例えば、多型の同定は、アレルのクローニング及び当業者によく知られた技術を用いてシークエンシングによって達成され得る。その代わりに、遺伝子配列は、ゲノムDNAから、例えば、PCR及びシークエンスシングした生成物を用いて増幅され得る。考慮する遺伝子座の変異について、患者のDNAを解析する幾つかの非限定的な方法を下に記載する。
【0026】
DNAマイクロテクノロジー、例えば、DNAチップ装置及びハイスループットスクリーニングアプリケーションのための高密度マイクロアレイ及び低密度マイクロアレイを使用し得る。マイクロアレイの製造方法は、当業者に知られ、種々のインクジェットとマイクロジェット蒸着又はスポッティング技術または方法、インサイツ又はチップ上のフォトリソグラフィーのオリゴヌクレオチド合成方法、及び電気DNAプローブアドレッシングプロセスを含む。DNAマイクロアレイハイブリダイゼーションアプリケーションを、点変異、一塩基多型(SNP)、及び縦列型反復配列(STR)の遺伝子発現解析及び遺伝子型決定の領域に首尾良く適用した。更なる方法は、干渉RNAマイクロアレイとマイクロアレイとレーザーマイクロダイセクション(LCM)、比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)及びクロマチン免疫沈降(Chip)のような他の方法の組み合わせを含む。He等(2007) Adv. Exp. Med. Biol. 593:117-133及びHeller (2002) Annu. Rev. Biomed. Eng. 4:129-153を参照されたい。他の方法は、PCR、xMAP、インベイダーアッセイ、質量分析計、及びパイロシーケンスを含む(Wan等(2007) Microarray Technology and Cancer Gene Profiling Vol 593 of book series Advances in Experimental Medicine and Biology, pub. Springer New York)。
【0027】
別の検出方法は、多型部位と重複し、多型部位の周辺に約5、又は10、又は20、又は25、又は30ヌクレオチドを有する、プローブを用いたアレル特異的ハイブリダイゼーションである。例えば、アレル変異体に特異的にハイブリダイズすることが可能な幾つかのプローブを、例えば「チップ」のような固相の支持体に結合させる。オリゴヌクレオチドは、リソグラフィーを含む種々の方法によって固体の支持体に結合し得る。また「DNAプローブアッセイ」と呼ばれオリゴヌクレオチドを含む、これらのチップを使用する変異体検出法は、例えば、Cronin等(1996) Human Mutation 7:244に記載されている。
【0028】
他の検出方法では、アレル変異体を同定する前に遺伝子の少なくとも一部を最初に増幅する必要がある。増幅は、例えば、PCR及び/又はLCR又は他の当該分野でよく知られた方法によって実施することができる。
【0029】
幾つかの場合、検体のDNAにおける特定のアレルの存在を、制限酵素解析によって示することができる。例えば、特定のヌクレオチド多型は、別のアレル変異体のヌクレオチド配列がない制限部位を含むヌクレオチド配列を生じ得る。
【0030】
更なる実施態様では、切断剤(例えば、ヌクレアーゼ、ヒドロキシルアミン又は四酸化オスミウム及びピペリジン)からの保護を用いて、RNA/RNA、DNA/DNA、又はRNA/DNAヘテロ二重鎖中のミスマッチした塩基を検出するもの(例えば、Myersら, (1985) Science 230:1242)が挙げられる。一般に、「ミスマッチ切断」技術は、遺伝子のアレル変異体のヌクレオチド配列を含む、標識してもよい、例えば、RNAまたはDNAのようなコントロールの核酸を、サンプルの組織から得た例えば、RNA又はDNAのようなサンプルの核酸とハイブリダイズすることによって形成されるヘテロ二重鎖を提供することからはじめる。二本鎖の二重鎖を、対照とサンプル鎖間の塩基対ミスマッチから生じるものなどの二重鎖の一本鎖領域を切断する薬剤で処理する。例えば、RNA/DNA二重鎖をRNアーゼで処理し、DNA/DNAハイブリッドをS1ヌクレアーゼで処理してミスマッチした領域を酵素的に消化してもよい。その代わりに、DNA/DNAまたはRNA/DNA二重鎖のいずれかを、ミスマッチした領域を消化するためにヒドロキシルアミンまたは四酸化オスミウムでおよびピペリジンで処理してもよい。ミスマッチ領域を消化した後、得られた物質を次いで変性ポリアクリルアミドゲルで大きさによって分離してコントロールとサンプルの核酸が同一のヌクレオチド配列を有するか又はそれらのヌクレオチドが異なるかを決定する。例えば、米国特許第6455249号、Cotton等(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:4397; Saleeba等(1992) Meth. Enzymol. 217:286-295を参照されたい。
【0031】
特定のアレル変異体を同定するために、電気泳動移動度の変化を用いてもよい。例えば、突然変異体と野生型核酸間の電気泳動移動度の相違を検出するために一本鎖コンホメーション多型(SSCP)を用いてもよい(Orita等(1989) Proc Natl. Acad. Sci USA 86:2766; Cotton (1993) Mutat. Res. 285:125-144及びHayashi (1992) Genet. Anal. Tech. Appl. 9:73-79)。サンプルおよび対照核酸の一本鎖DNA断片を変性させ、次いで再生させる。一本鎖核酸の二次構造は配列によって異なり、得られる電気泳動移動度の変化によって単一塩基の変化でさえも検出できる。DNA断片を標識してもよいし、または標識したプローブで検出してもよい。アッセイの感度は、二次構造が配列変化により敏感であるRNA(DNAではなく)を用いることで増強され得る。別の好ましい実施態様では、この方法は二本鎖のヘテロ二重鎖分子を電気泳動移動度の変化を基に分離するためにヘテロ二重鎖解析を用いることもある(Keenら(1991) Trends Genet. 7:5)。
【0032】
アレル変異体の種類を、変性勾配ゲル電気泳動(Myers等(1985) Nature 313:495)を用いてアッセイした、変性剤の勾配を含むポリアクリルアミドゲルの多型領域を含む核酸の移動を解析することによって得てもよい。DGGEを解析の方法として使用する際、DNAを、例えば、PCRによって約40bpの高融点GCリッチDNAのGCクランプを付加することによって完全な変性を妨げるよう修飾する。更なる実施態様では、変性勾配の代わりに温度勾配を用いて、対照およびサンプルDNAの移動度の相違を同定してもよい(Rosenbaum and Reissner (1987) Biophys. Chem. 265:1275)。
【0033】
2つの核酸の間の少なくとも1のヌクレオチドの差異を検出するための技術の例は、限定されるものではないが、選択的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、選択的増幅、または選択的プライマー伸長が挙げられる。例えば、既知の多型ヌクレオチドが中心に位置するオリゴヌクレオチドプライマーを調製し(アレル特異的プローブ)、次いで、完全なマッチが見られる場合にのみハイブリダイズが可能となる条件下で標的DNAとハイブリダイズさせればよい(Saiki等(1986) Nature 324:163); Saiki等(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:6230)。かかるアレル特異的オリゴヌクレオチドを、遺伝子の多型領域のヌクレオチド変化の検出に用いることができる。例えば、特定のアレル変異体のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドをハイブリダイズ膜に結合させ、この膜を次いで標識化したサンプルの核酸とハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーションシグナルの解析は次いでサンプルの核酸のヌクレオチドの種類を示し得る。
【0034】
あるいは、選択的PCR増幅に依存するアレル特異的増幅技術を用いてもよい。特異的増幅用オリゴヌクレオチドプライマーに、(増幅がディファレンシャル・ハイブリダイゼーションに依存するように)分子の中心に注目する突然変異を保持させてもよいし(Gibbs等(1989) Nucl. Acids Res. 17:2437-2448)、または、適当な条件下でミスマッチがポリメラーゼ伸長を妨げ得るか、減少させ得る場合には、一方プライマーの3'末端に保持させてもよい(Prossner (1993) Tibtech 11:238 and Newton等(1989) Nucl. Acids Res. 17:2503)。この技術はまたProbe Oligo Baseの「PROBE」とも呼ばれる。更に、切断塩基検出のために、変異の領域に新しい制限部位を導入することが望ましいであろう(Gasparini 等 (1992) Mol. Cell. Probes 6:1)。
【0035】
別の実施態様では、アレル変異体の同定は、例えば、米国特許第4998617号及びLaridegren, U.等Science 241:1077-1080 (1988)に記載の通り、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)を用いて実施される。OLAプロトコルは、標的の単一鎖の隣接配列にハイブリダイズすることができるように設計された2つのオリゴヌクレオチドを使用する。オリゴヌクレオチドの一つは、例えば、ビオチン化された分別マーカーに結合し、他は検出できるようにラベル化される。正確な相補配列が、標的分子上に見出された場合、オリゴヌクレオチドはその末端隣接にハイブリダイズし、ライゲーション基質をつくる。次いでライゲーションは、ラベル化ヌクレオチドを、アビジン、又は他のビオチンリガンドを使用して回収することを可能にする。Nickerson, D. A.等は、PCRとOLAを組み合わせた核酸検出アッセイについて記載している(Nickerson, D. A.等(1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:8923-8927)。この方法では、PCRを、次にOLAを使用して検出される標的DNAの指数関数的増加に達成するために使用される。
【0036】
本発明は、CFH及びC5における一塩基多型(SNP)を検出するための方法を提供する。一塩基多型は、不変配列の側にあり、その分析は単一の変異体ヌクレオチドの種類の決定にすぎず、各患者の完全な遺伝子を決定する必要はない。幾つかの方法が、SNPの分析を容易にするために開発されている。
【0037】
一塩基多型は、例えば、米国特許第4656127号に開示の通り、特定のエキソヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドを使用して検出され得る。該方法に従って、多型部位の直ぐ3’側のアレル配列に相補的なプライマーは、特定の動物又はヒトから得た標的分子にハイブリダイズし得る。標的分子上の多型部位が存在する特定のエキソヌクレアーゼ耐性ヌクレオチド誘導体に相補的であるヌクレオチドを含む場合、該誘導体は、ハイブリダイズしたプライマーの末端に取り込まれ得る。このような導入は、プライマーをエキソヌクレアーゼ耐性にし、よってその検出を可能にする。サンプルのエキソヌクレアーゼ耐性誘導体の種類は知られているので、プライマーがエキソヌクレアーゼに耐性であるという見解は、標的分子の多型部位に存在するヌクレオチドが、反応に使用されるヌクレオチド誘導体に相補的であることを示す。この方法は、大量の抽出配列データを決定する必要が無いという利点を有する。
【0038】
溶液ベースの方法を、多型部位のヌクレオチドの種類の決定に使用してもよい(国際公開第91/02087号)。上記の通り、多型部位の直ぐ3’側のアレル配列に相補的なプライマーが使用される。該方法は、多型部位のヌクレオチドに相補的な場合、プライマーの末端に挿入され得る、ラベル化したジデオキシヌクレオチド誘導体を使用して、その部位におけるヌクレオチドの種類を決定する。
【0039】
代替の方法は、国際特許第92/15712号に記載される。この方法は、多型部位の3’配列に相補的なラベル化したターミネーターとプライマーの混合物を使用する。取り込まれるラベル化ターミネーターは、したがって評価する標的分子の多型部位に存在するヌクレオチドによって決定され、相補的である。該方法は、通常、プライマー又は標的分子が固相に固定化される、異種相アッセイである。
【0040】
DNAにおける多型部位をアッセイするための、多くの他のプライマー誘導ヌクレオチド導入方法が記載されている(Komher, J. S.等(1989) Nucl. Acids. Res. 17:7779-7784; Sokolov, B. P. (1990) Nucl. Acids Res. 18:3671; Syvanen, A.-C.,等(1990) Genomics 8:684-692; Kuppuswamy, M. N.等(1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:1143-1147; Prezant, T. R.等(1992) Hum. Mutat. 1: 159-164; Ugozzoli, L.等(1992) GATA 9:107-112; Nyren, P.等(1993) Anal. Biochem. 208:171-175)。これらの方法は、全て多型部位の塩基の区別をするためにラベル化したデオキシヌクレオチドを導入することに依存している。
【0041】
また、遺伝子又は遺伝子産物又は多型誘導体における変化を検出するための上記の方法の何れかを、治療又は療法の過程を監視するために使用し得る。
【0042】
ここに記載の方法は、例えば、患者がAMDを発症する見込みが増加しているか、又は滲出性AMDの患者が、抗VEGF抗体を用いた治療の利益を得る見込みが増加してるかどうかを決定するために、便宜上使用され得る、少なくとも一のプローブ又はプライマー核酸を含む、例えば、下記に記載したような、プレパックした診断キットを用いて、実施し得る。
【0043】
上記の診断及び予測法に使用するためのサンプルの核酸は、検体の任意の細胞型又は組織から得たサンプルから得ることができる。例えば、検体の体液(例えば、血液)は、知られている技術によって得ることができる。その代わりに、核酸試験は、乾燥サンプル(例えば、髪又は肌)において実施し得る。
【0044】
ここに記載の発明は、Y402H CFH、I145V C5、及びI802V C5アレルを含む幾つかのアレルに存在するアレルを決定し、同定するための方法と組成物に関連する。プローブは、サンプルの遺伝子型を直接決定するために使用し得るか又は同時に若しくは増幅に続いて使用し得る。「プローブ」なる用語は、天然又は組み替えの一本鎖又は二本鎖核酸又は化学的に合成した核酸を含む。それらは、ニックトランスレーション、クレノーフィルイン反応、PCR又は他の当該分野で知られた方法でラベル化し得る。本発明のプローブ、その調製及び/又はラベル化は、上掲のSambrook等(1989) に記載されている。プローブは、本発明の多型領域を含む核酸に選択的にハイブリダイズするために適切な任意の長さのポリヌクレオチドであり得る。プローブの長さは、部分的には、使用するアッセイの性質及び用いたハイブリダイゼーションの条件に依存し得る。
【0045】
ラベル化したプローブはまた多型の増幅と組み合わせて使用し得る(Holland等(1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:7276-7280)。米国特許第5210015号は、PCR中の増幅産物のリアルタイムの測定を提供するための蛍光ベースのアプローチを記載する。このようなアプローチは、存在する二重鎖DNAの量を示ための、インターカレートする色素(例えばエチジウムブロマイド)を用いるか、又は濃度が存在する二重鎖DNAの量に比例する蛍光分子を放出するための増幅の過程でプローブが切断される、蛍光−クエンチャーペア(「TaqMan(登録商標)」アプローチとも呼ばれる)を含むプローブを用いる。増幅の過程で、蛍光分子のクエンチャー分子からの分離を引き起こすための標的配列にハイブリダイズした際、ポリメラーゼのヌクレアーゼ活性によって、プローブは消化され、レポーター分子からの蛍光が引き起こされる。TaqMan(登録商標)アプローチは、多型を含む標的ポリヌクレオチド領域に特異的にアニールするレポーター分子−クエンチャー分子を含むプローブを用いる。
【0046】
プローブは、「遺伝子チップ」として使用するために表面に取り付けることができる。このような遺伝子チップは、当業者に知られている幾つかの技術によって遺伝子変異を検出するために使用し得る。一つの技術では、米国特許第6025136号及び第6018041号に概説されるように、ハイブリダイゼーションアプローチによるシークエンシングによって、オリゴヌクレオチドをDNA配列を決定するための遺伝子チップ上に配置する。本発明のプローブはまた遺伝子配列の蛍光検出のために使用し得る。このような技術は、例えば、米国特許第5968740号及び5858659号に記載されている。プローブはまた、米国特許第5952172号及びKelley, S. O.等(1999) Nucl. Acids Res. 27:4830-4837に記載されるように、核酸配列の電気化学的検出のために電極表面に配置し得る。
【0047】
更に、プローブ又はプライマーとして使用する単離した核酸は、より安定にするために改変し得る。改変された例示的な核酸分子は、DNAのホスホロアミデート、ホスホロチオエート及びメチルホスホネートアナログを含む(米国特許第5176996号;5264564号及び5256775号をまた参照されたい)。
【0048】
ここで記載される通り、本発明は、CFH又はC5中に存在する多型領域のアレル変異体の型を決定するための診断方法をまた提供する。幾つかの実施態様では、該方法は、CFH又はC5の多型領域に相補的なヌクレオチド配列を含むプローブ又はプライマーを使用する。
【0049】
幾つかの実施態様では、本発明は、高親和性抗VEGF抗体を含む、滲出性AMD患者が、抗VEGF抗体を用いた治療の利益を得る見込みが増加しているかどうかを決定するためのキットを提供する。このようなキットは、ここに記載の一又は複数の組成物及び使用のための説明書を含む。例としてのみ、本発明は、滲出性AMD患者が、第一のヌクレオチド及びY402H CFHアレル中のC/T多型に特異的な第二のオリゴヌクレオチドを含む、ラニビツマブを用いた治療の利益を得る見込みが増加しているかどうかを決定するためのキットをまた提供する。遺伝子座に「特異的な」オリゴヌクレオチドは、遺伝子座の多型領域又は遺伝子座の多型領域の周辺に結合する。増幅のためにプライマーとして使用し得るオリゴヌクレオチドについて、多型領域を含むポリヌクレオチドを産生するために使用するために十分に近接している場合、プライマーは隣接している。一実施態様では、例えば、多型より1kb未満のような、約1−2kb以内に結合する場合、オリゴヌクレオチドは隣接している。特定のオリゴヌクレオチドは、配列にハイブリダイズすることができ、適切な条件下で、単一のヌクレオチドによって区別される配列に結合し得ない。
【0050】
キットはCFH又はC5の多型領域に特異的にハイブリダイズすることができる少なくとも1のプローブ又はプライマー及び使用のための説明書を含み得る。キットは通常、上記の核酸の少なくとも一を含む。少なくともCFH又はC5を増幅するためのキットは、2個のプライマーを含み、そのうちの少なくとも一つは、アレル変異体配列にハイブリダイズすることができる。このようなキットは、例えば、蛍光検出、電気化学的検出、又は他の検出によって遺伝子型を検出するために適切である。
【0051】
プローブ又はプライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドは、キット中で検出できるようにラベル化され得る。ラベルは、例えば、蛍光ラベルを直接検出するか、又は間接的に検出し得る。間接的な検出は、ビオチン−アビジン相互作用、抗体結合などを含む、当業者に知られている任意の検出方法を含み得る。蛍光でラベル化したオリゴヌクレオチドはまたクエンチする分子を含み得る。オリゴヌクレオチドは、表面に結合し得る。幾つかの実施態様では、表面はシリカ又はガラスである。幾つかの実施態様では、表面は金属電極である。
【0052】
本発明の更に別のキットは、アッセイを実施するために必要な少なくとも一の試薬を含む。例えば、キットは酵素を含み得る。その代わりに、キットは、バッファー又は任意の他の必要な試薬を含み得る。
【0053】
キットは、CFH又はC5の多型領域における検体の遺伝子型を決定するための、ここに記載のポジティブコントロール、ネガティブコントロール、試薬、プライマー、シークエンシングマーカー、プローブ及び抗体の全て又は幾つかを含み得る。
【0054】
以下の実施例は、本発明の実施を例証することだけを意図しており、限定を意図するものではない。
【実施例】
【0055】
実施例1.CFH、HTRA1及びC5における遺伝子多型及びAMD発症との関係及び治療の結果
多型
我々は、ラニビツマブを用いた抗VEGF治療の好ましい結果に関連する変化について、種々の多型を試験した。AMD感受性に関連することが以前に報告されている5つの遺伝子座からの8つのアレルであるため、これらの多型を選択し、調べた(表1)。具体的には、補体因子H(CFH)、HTRaセリンペプチダーゼ/加齢黄斑変性感受性2(HTRA1/ARMS2)、補体因子2/補体因子Bプレタンパク質(C2/BF)、補体因子3(C3)からの単一アレル、及びケモカイン(C−X3−Cモチーフ)レセプター(CXCR1)をTaqMan(登録商標)システムを介した定量PCRを用いたDAWN試験からの352AMDサンプルにおいて遺伝子型を同定した。更に、我々は補体因子5(C5)の2つのアレルを調べた(表2)。表1の全てのアッセイの遺伝子型を調べるために、ABIに提供される標準的な実験プロトコルを使用した。簡潔には、アッセイは、次のサイクル条件:50℃で2分、95℃で10分、次いで92℃で15秒及び60℃で1分の40サイクルを用いて、ABI7500装置で行った。
【0056】
サンプル
HORIZON伸長試験のDAWN遺伝子サブ試験に参加したLucentis(登録商標)ピボタル試験(MARINA、ANCHOR、及びFOCUS)からの352個の未同定検体からの末梢血サンプルを回収し、ゲノムDNAを単離した。全てのサンプルは血管新生AMDを診断で確認し60%は女性の患者からのものであり、基底における平均年齢は、シャム/PDTについて75.0歳であり、処置したラニビツマブについて75.6歳であった。試験における全ての患者から書面でインフォームド・コンセントを得、試験プロトコルは、治験審査委員会によって承認を得た。DNAをDNeasyTissueキット(Qiagen, Valencia, CA)を用いて抽出した。SNPをTaqMan(登録商標)−ベースのリアルタイム−PCRを用いて遺伝子型同定した。SNPの2つについては、カスタムプライマーを使用し(表4)、他の6つについては、ABI所有権のプライマーを使用した(表3)。2C5SNP(表5に示すオリゴヌクレオチド)をIllumina(登録商標)GoldenGateプラットフォームを用いたカスタム96SNPアッセイパネルの一部として同定した。
【0057】
臨床情報
MARINA、ANCHOR及びFOCUS Lucentis試験からの臨床情報を調べた。具体的には、自己同定された人種、性別、初期試験ベースラインにおける年齢に関する情報、初期試験治療グループ、Lucentis投与、2年目における治療選択肢に対する交差、投与エラーの存在、試験眼の文字におけるベースライン(BL)の最良の矯正視力(VA)スコア、他眼のBLのVAスコア(文字)、12ヶ月目における試験眼VAスコア(文字)、12ヶ月目における他眼のVAスコア(文字)、BLの他眼における血管新生AMDの存在、及び試験眼のBLのCNV分類。
【0058】
感受性分析に対する関係
公共で利用可能な資源から得たコントロールのサンプルに対するDAWNケースのアレルの頻度を比較することにより、8個のアレルの疾患感受性への関係を調べた。コントロールのアレルの頻度のrs10490924、rs1410996、rs9332739、及びrs3732378情報について、アレル頻度は、Wellcome Trust Case Control consortium (WTCCC (2007) Nature 447:661-78)から無料で利用可能な要約統計から得た。コントロールのアレル頻度と残りのSNPに対する遺伝子型のカウントを、rs112006383、rs22301996、rs5471541の関係を報告した論文から得た。関係統計は、標準の2x2の結果表を使用して計算した。
【0059】
ベースラインの臨床特徴に対する遺伝子型の関係
ベースラインの視力(VA)に対する8個のアレルの関係づけは、共変量としてベースラインに付加した年齢の存在下又は非存在下、定量特性として、ベースラインにおける試験眼のVA(文字)を用いて実施した。3つの遺伝子型分類を、平均のベースラインVAにおける重大な差異について調べた。分析は、PLINKソフトウェア (Purcell等 (2007) Am. J. Hum. Genet. 81:559-75)を用いて行った。他眼における血管新生AMDの存在に対する8個のアレルの関係と、ベースラインにおける試験眼の血管新生分類(minimally型、predominantly型、occultなし型)を調べた。臨床特性の頻度は、遺伝子型とt検定で決定した優位性で階層化した。
【0060】
DAWNにおけるAMDリスクアレルの強化
以前に公表された見解を確認すると、全ての8遺伝子座からのアレルが、P<0.05で血管新生AMDのリスクに関係した。しかし、CX3CR1遺伝子座からのアレルだけが、当所の報告に一致した関係を示さなかった。DAWNサンプルのうち、CX3CR1遺伝子座が1.12のオッズ比を有し、当所の報告の3より大きいオッズ比に反する。有意な関係がrs17216529(C5 I145V)とAMDを伴う個体の他眼における脈絡膜新生血管(CNV)の発生の間で観察された。更に、rs17611(C5 I802V)と滲出性AMD、GA AMDを伴う非滲出性、又は両者の発生との間で関係が観察された(表7)。その関係はGA AMDの場合よりもAMDの場合(p=0.0014)によりも強固であった。
【0061】
ベースラインの臨床特性に対するアレルの関係
ベースラインにおける視力に対する8アレルの有意な関係性は見出されなかった。CFH Y402HアレルとHTRA1 A69Sアレルのリスクアレルの数は、サンプルの他眼の血管新生AMDの有病率に関連し、これらの遺伝子座の遺伝子型と疾患の重大さの関係を示唆した。CFH Y402Hアレルは、ベースラインの試験眼の血管新生AMDの「predminantly型」サブタイプに関係した。rs1410996のイントロンCFHアレルは、CNVと古典的CNVにおける損傷の領域に関係し、C5 I802Vアレルは古典的CNVの損傷の領域に関連した。
【0062】
遺伝子型のラニビツマブ治療に対する応答との関係
DAWNサンプルをMARINA、ANCHOR及びFOCUS試験の間の治療状況に基づき3つのグループに分類した。ラニビツマブで処理したグループは、0.3mg、0.5mg又は0.5mg+PDTの投与を受ける患者を含んだ。SHAM/PDTグループは、モック注射(SHAM)又は光線力学療法(PDT)のみを受ける個体から構成された。12ヶ月の治療後の視力(VA、文字で測定した)の変化の関係を8個のアレルのそれぞれの遺伝子型に対する関係について試験した。治療応答における有意な差がCFH Y402H、C5 I802V、及びHTRA1 A69S遺伝子座における遺伝子型と関係した(表8、9及び10)。これらの変化は、毎月ラニビツマブで処理した患者のVAの変化に関連した。12ヶ月目のVAの平均の変化は、Y402H CC、CT及びTTの遺伝子型についてそれぞれ、+14.5、+10.8及び+7.0文字;I802V AA、AG及びGGの遺伝子型についてそれぞれ、+15.6、+12.2及び+8.8;A69S GG、GT及びTTの遺伝子型についてそれぞれ+9.3、+14.1及び+10.5であった。CFH Y402Hアレルについて、12ヶ月目におけるY402H CC、CT、及びTTについてのそれぞれ−4.8、−10.2及び−11.5のBCVAの平均変化を伴うコントロールグループ(SHAM/PDT)における、逆対応する傾向が観察された。コントロールとラニビツマブ治療グループの間の平均BCVA12ヶ月の結果における差異は、Y402Hリスク遺伝子型の全てで同じであった。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]