特許第5701217号(P5701217)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5701217
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】ゲルマン精製
(51)【国際特許分類】
   C01G 17/00 20060101AFI20150326BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20150326BHJP
   B01D 53/02 20060101ALI20150326BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
   C01G17/00
   B01J20/18 B
   B01D53/02 Z
   B01J20/30
【請求項の数】12
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-536552(P2011-536552)
(86)(22)【出願日】2009年11月16日
(65)【公表番号】特表2012-509236(P2012-509236A)
(43)【公表日】2012年4月19日
(86)【国際出願番号】US2009064537
(87)【国際公開番号】WO2010057073
(87)【国際公開日】20100520
【審査請求日】2012年11月15日
(31)【優先権主張番号】61/115,132
(32)【優先日】2008年11月17日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511117428
【氏名又は名称】ヴォルタイクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ギャリー,ディー
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03785122(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0191854(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 17/00 − 17/04
B01D 53/02
B01J 20/18
B01J 20/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスフィンを含むゲルマンガスを準備すること;
吸収剤を乾燥すること;
ゲルマンが前記吸収剤に吸収されなくなるまで、前記乾燥吸収剤にゲルマンを通過させて前記吸収剤をコンディショニングすること;
前記ホスフィンを含むゲルマンガスを前記吸収剤に通して選択的に含まれるホスフィンを吸収させること;及び
精製されたゲルマンガスを取り出すこと、
を含む精製ゲルマン製品を製造する方法であって、
前記精製ゲルマンガスが、50ppbよりも少ないホスフィンを含む、前記方法。
【請求項2】
前記ホスフィンを含むゲルマンガスが水素中に40%までのゲルマンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ホスフィンを含むゲルマンガスが水素中に20から40%までのゲルマンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
さらに前記精製ゲルマン製品を水素から分離することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記吸収剤がゼオライトである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記吸収剤が、4A、5A、10X、13X及びそれらの組み合わせから選択されるモレキュラーシーブである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記モレキュラーシーブが5Aである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記吸収剤が、有効ポア直径が4オングストローム又はそれ以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記吸収剤が有効ポア直径4オングストロームである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記吸収剤が4から12時間乾燥ガスのパージ下で乾燥される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記吸収剤が200℃から300℃で乾燥される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ゲルマンガス流を、ゲルマンが前記吸収剤に吸収されなくなるまで前記吸収剤に通過させてコンディショニングする、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精製ゲルマンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高純度ガス流の供給は、幅広い産業及び研究に非常に重要である。例えば半導体産業における化学的蒸着技術のように急激に広まりつつある気相プロセス技術は、半導体製造工場でその場で使用される超高純度プロセスガスの供給に全体的に依存する、製造装置及び使用方法を伴うものであった。
【0003】
半導体製造において関与するガス流中に存在する不純物について考慮すると、化学蒸着やその他の技術による高品質の薄膜及び光電子セル産業の成長は、種々の低レベルのプロセス不純物によって抑制される。これらの不純物は、欠陥を発生させ、不合格品が増加し歩留まりが減少し、非常に高価なものとなってしまう。これらの不純物は、微粒子又は化学的不純物であり得る。
【0004】
化学的不純物は、原料ガスの製造から、続くパッキング、輸送、貯蔵及び取り扱いから発生し得る。製造業者は通常、半導体製造工場へ配送する原料ガス材料の分析値を提供するが、ガスの純度は変化することがある。というのは、交差汚染や、不適切に調製された容器、例えばガスをパッキングしたガスシリンダから汚染が発生するからである。不純物汚染はまた、不適切なガスシリンダ交換、下流プロセス装置へのリーク又はかかる下流装置からの予想外の汚染からも発生する。
【0005】
多くの産業上及び商業上のプロセスにおいて、高純度ゲルマンの供給が望ましい。高純度ゲルマンが通常要求されるひとつの分野は、例えばトランジスタ、ダイオード、集積回路、検出器、太陽電池セルなどの半導体製造分野である。これらの多くの応用において、高純度ゲルマンはしばしば、シリコンーゲルマニウム合金堆積又は基板ドーピングのために使用される。ごく最近、半導体及び太陽電池セル製造業者によるゲルマニウムテトラハイドライドの使用が、ゲルマニウムを活性シリコン構造に導入するという新技術により確実に増加している。かかる新技術は、ゲルマニウムが不純物濃度においてよりばらつきの少ない高純度レベルで製造されることを要求する。
【0006】
ゲルマンは、原料材料中に予想外のばらつき、予想外の製造プロセス条件又は予想外の容器に関連する条件によりホスフィンを含む可能性がある。蒸発性が類似し、相対的に小さい分子量を有するそのようなゲルマン及びホスフィンの2つの分子を分離し、それにより望ましくない物質を50ppbよりも低くすることについては、これまで文献中には報告されていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ホスフィンで汚染されたゲルマンガスの精製方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
当該方法は次の知見に基づく。即ち、ゲルマンと類似の揮発性及び分子量を持つホスフィンは、ホスフィンを含むゲルマンガスから、適切にコンディショニングした、約4オングストローム又はそれ以上の有効ポア直径を持つモレキュラーシーブにより、選択的に除去できるという知見である。ホスフィンとゲルマンは有効直径が3から4オングストロームの間である。ホスフィンはゲルマンよりもかかるモレキュラーシーブ中により留まりやすい。好ましくは、かかるモレキュラーシーブは有効ポア直径が約5オングストローム又はそれ以上である。より好ましくはかかるモレキュラーシーブは、有効ポア直径が約5オングストロームである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、ホスフィンを含まない水素中のゲルマンのサンプルのクロマトグラムを示す。
図2図2は、ホスフィンを4300ppb含む水素中のゲルマンのサンプルのクロマトグラムを示す。
図3図3は、ホスフィンを130ppbスパイクした水素中のゲルマンのサンプルのクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ホスフィンで汚染されたゲルマンガスの精製方法が開発された。当該方法は次の知見に基づく。即ち、ゲルマンと類似の揮発性及び分子量を持つホスフィンは、ホスフィンを含むゲルマンガスから、適切にコンディショニングした、約4オングストローム又はそれ以上の有効ポア直径を持つモレキュラーシーブにより、選択的に除去できるという知見である。ホスフィンとゲルマンは有効直径が3から4オングストロームの間である。ホスフィンはゲルマンよりもかかるモレキュラーシーブ中により留まりやすい。好ましくは、かかるモレキュラーシーブは有効ポア直径が約5オングストローム又はそれ以上である。より好ましくはかかるモレキュラーシーブは、有効ポア直径が約5オングストロームである。
【0011】
方法:
吸収剤の乾燥:
本発明で使用されるモレキュラーシーブ床は、200℃から300℃で、乾燥ヘリウムパージ下で4から12時間加熱し、その後乾燥ヘリウムパージ下で約23℃に冷却した。窒素や水素などの乾燥ガスもまた、加熱及び冷却の際のパージに使用可能である。
【0012】
コンディショニング:
モレキュラーシーブ床はゲルマンで飽和させることでコンディショニングされなければならない。ゲルマンは、新たに乾燥されたモレキュラーシーブに強く吸収される。この吸収プロセスは熱を放出し、この熱放出はインプットガス流からゲルマンガスが完全に消失するまで顕著である。通常、インプットコンディショニングガス流は、水素中に約40%まで、好ましくは約20から40%のゲルマンを含み、モレキュラーシーブ床を通過させるか又はモレキュラーシーブ床との接触を維持される。コンディショニングガスフローは、ゲルマン成分が前記モレキュラーシーブ床にもはや目立っては保持されなくなるまで維持される。前記モレキュラーシーブ床が過熱状態になり、ゲルマンが分解/爆燃する可能性に注意すべきである。かかるモレキュラーシーブ床温度は過熱を避けるためにモニターされる。好ましいモレキュラーシーブ床温度は、約60℃又はそれ以下である。モレキュラーシーブ床温度はゲルマンの分解/爆燃温度よりも低く維持されなければならない。
【0013】
モレキュラーシーブ:
本発明に適切なモレキュラーシーブの典型例は、タイプ4A、5A、10X、13Xが挙げられる。かかるモレキュラーシーブは、いくつかの供給元から入手可能である。これらのモレキュラーシーブは、有効ポア直径が約4オングストローム又はそれ以上である。モレキュラーシーブは合成ゼオライトであり、非常に均一なサイズを持つポア構造と結晶性キャビティで特徴付けられる。タイプ4A(4オングストローム)モレキュラーシーブは、ゼオライトのナトリウム型である。タイプ4Aは、臨界直径が4A(0.4nm)よりも小さい。タイプ5A(5オングストローム)モレキュラーシーブは、ゼオライトのカルシウム型である。タイプ5Aは、臨界直径が5A(0.5nm)よりも小さい。タイプ10Xは、変性されたゼオライトのナトリウム型であり、有効ポア直径が約8オングストロームである。タイプ13Xは、変性されたゼオライトのナトリウム型であり、有効ポア直径が約10オングストローム(1nm)である。
【0014】
好ましいモレキュラーシーブは、タイプ5Aであり、これは、0.8CaO:0.20NaO:Al:2.0±0.1SiO:xHOなる組成を持つ。2価カルシウムイオンがナトリウムカチオンと交換することで約5オングストロームの開口を与える。
【0015】
本発明は、以下の実施例を参照しつつより詳細に説明される。しかし本発明がかかる実施例に限定されるものではないことは理解されるべきである。
【0016】
ゲルマン精製:
実施例1
純ゲルマンを含む一連の12個のガスシリンダを、純ゲルマン中約4500ppbまでのホスフィンで汚染させた。10個のシリンダ中のゲルマンガスが本発明により処理された。該シリンダのそれぞれにつきホスフィン含有量を定量した。処理されるゲルマンを含む10個のシリンダはそれぞれ50ppbよりも少ないホスフィンを含んでいた。この実施例でのホスフィンの検出限界は50ppbであった。ホスフィンを除く処理がされていないゲルマンを含むシリンダ、CS0998及びCS0736はそれぞれ4300ppb及び4500ppbホスフィンを含んでいた。サンプルシリンダはガスクロマトグラフ−誘導結合プラズマ質量スペクトル(Gas Chromatographic inductively coupled plasma mass spectrometry(GC−ICP−MS)により分析された。

サンプルシリンダ ホスフィン、ppb 方法
SS0580 < 50 GC−ICP−MS
LBS0640 < 50 GC−ICP−MS
NP3611 < 50 GC−ICP−MS
CS0976 < 50 GC−ICP−MS
SS1077 < 50 GC−ICP−MS
CS0746 < 50 GC−ICP−MS
CS0577 < 50 GC−ICP−MS
CS0998 4300 GC−ICP−MS
CS0736 4500 GC−ICP−MS
SO986 < 50 GC−ICP−MS
CS1025 < 50 GC−ICP−MS
SS1078 < 50 GC−ICP−MS
方法:
上のサンプルはGC−ICP−MSで分析された。ホスフィンの10ppm保存標準をキャリブレーションに使用し、10ppmから130ppbまでの一連の希釈に用いた。Collision Cell Technology (CCT)をMS調節に使用し、酸素衝突ガスのm/z31からm/z47の干渉シフトを減少させた。
【0017】
クロマトグラフ分析条件:
装置:Thermo Scientific XSeries ICP−MS
カラム:80m X 0.32mm GasPro
キャリア:水素、20psig
オーブン:45℃、一定
サンプルサイズ:250μl
スプリット:2.5mls/分
ICP−MS分析条件:
検出器:ICP−MS、m/z47、ドウェル時間500ms
Extraction:−94v
Lens1:−1130v
Lens2:−80v
Lens3:−189v
ポールバイアス:−3.8v
サンプル深さ:109
Dl:−42.4v
Focus:6.7v
CCT2:0.06mls/分
D2:−121v
DA:−36v
ヘキサポールバイアス:−0.4v
Add.Das1:187mls/分
実施例2
ゲルマンによるモレキュラーシーブのコンディショニング:
16.895kgゲルマンを含む水素中20%ゲルマン(モル分率)のサンプルを、54kgのタイプ5A乾燥モレキュラーシーブで、見かけビーズサイズ4x7メッシュ(1/8”ペレットに等しい)、見かけ有効及びポア直径約5オングストロームのモレキュラーシーブ床を通過させた。モレキュラーシーブは2つのカラムを直列(それぞれが8フィート長さ6インチ内直径)した。プロセス流速は3kgゲルマン/時間であった。ゲルマンガスを冷却して集め、ガス混合物中の水素からゲルマンを分離した。ゲルマンを続いてホスフィン分析に用いた。回収ゲルマンは9.339kgであった。カラム中のモレキュラーシーブは7.556kgゲルマンを保持していた。
【0018】
ゲルマン分析は実施例1で説明した手順で実施した。
【0019】
実施例3
ゲルマン回収:
ゲルマン28.375kgを含む水素中20%(モル分率)ゲルマンサンプルを実施例2でコンディショニングした同じカラム(54kgのタイプ5A乾燥モレキュラーシーブ、見かけ有効ポア直径5オングストローム)に通過させた。この処理には約12時間要した。水素ガス中のゲルマンを回収しゲルマン分析に使用した。回収ゲルマンは28.120kgであり、これは99.10%回収率である。
【0020】
図1は、ホスフィンを含まない水素中のゲルマンサンプルのクロマトグラムを示す。サンプルは250μlループで操作した。ホスフィンはクロマトグラムには検出されていない。
【0021】
図2は、ホスフィンを含む水素中のゲルマンサンプルのクロマトグラムを示す。サンプルは100μlループで操作した。ホスフィンはクロマトグラムに、保持時間36000msで検出される。
図3は、130ppbをスパイクした水素中のゲルマンのサンプルのクロマトグラムである。ホスフィンは3600msの保持時間でクロマトグラム中に検出される。
【0022】
4300ppbホスフィンを含むサンプル図2)は、100μlループで操作されたがリニアリティを維持した。
図1
図2
図3