(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の一般的な油圧閉回路システムは、低圧選択弁(フラッシング弁)のハンチング現象により油圧シリンダ装置の円滑な作動を行いがたいという問題があった。特許文献1記載の油圧閉回路システムでは、2つの油圧ポンプの一方を油圧シリンダ装置のボトム側ポートに接続することで、油圧シリンダ装置のボトム側とロッド側の流量差を吸収し、低圧選択弁(フラッシング弁)を不要としている。したがって、特許文献1記載の油圧閉回路システムでは、低圧選択弁(フラッシング弁)のハンチング現象により油圧シリンダ装置の円滑な作動を行いがたいという問題は生じない。
【0006】
しかし、特許文献1記載の油圧閉回路システムには次のような問題がある。
【0007】
特許文献1記載の油圧閉回路システムでは、油圧シリンダ装置のボトム側とロッド側の面積差を基に1回転当たりの油圧ポンプの吐出流量(ポンプ容量)を設定する。しかし、ポンプ容量の設定誤差や経年変化等による容量誤差、外部へのリーク等による流量の誤差などがあり、油圧シリンダ装置の伸縮時の流量収支が理想的にバランスできない場合も少なくない。油圧シリンダ装置の伸縮時の流量収支がバランスできない場合は、油圧シリンダ装置への流入流量或いは流出流量の過不足が生じてしまい、流量過少によるキャビテーションや、流量過多による圧こもりによる圧力上昇などの不具合が発生する。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の油圧ポンプを用いた油圧閉回路システムにおいて、ポンプ容量の誤差等により油圧シリンダ装置の伸縮時の流量収支がバランスしない場合でも、自動的に流量を調整し、常に流量収支のバランスを良好な状態に保ち得る油圧閉回路システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、油圧シリンダ装置と、この油圧シリンダ装置に油圧閉回路を構成するよう接続された両方向吐出型の第1油圧ポンプと、対となる吐出ポートの一方が前記油圧シリンダ装置のボトム側に接続され、他方がタンクに接続された両方向吐出型で両方向可変容量型の第2油圧ポンプと、前記第1及び第2油圧ポンプを駆動しかつ前記第1及び第2油圧ポンプの動力を回収する原動機と、前記油圧シリンダ装置の動作方向と前記油圧シリンダ装置の低推力側の圧力を検出し、前記第1及び第2油圧ポンプと前記油圧シリンダ装置との間で前記油圧シリンダ装置の伸縮時の流量収支がバランスするよう前記第2油圧ポンプの容量を制御するポンプ容量制御装置とを備えるものとする。
【0010】
これにより複数の油圧ポンプを用いた油圧閉回路システムにおいて、第1油圧ポンプ或いは第2油圧ポンプのポンプ容量の誤差等により油圧シリンダ装置の伸縮時の流量収支がバランスしない場合でも、自動的に流量を調整し、常に流量収支のバランスを良好な状態に保つようになり、その結果、流量過多による圧こもりによる圧力上昇や流量過少によるキャビテーションを効果的に抑制することができる。
【0011】
(2)上記(1)記載の油圧閉回路システムにおいて、より詳しくは、前記ポンプ容量制御装置は、前記油圧シリンダ装置が伸び動作にありかつ前記油圧シリンダ装置の低推力側の圧力が基準圧力値より低いときは、前記第2油圧ポンプの容量を増やし、前記低推力側の圧力が前記基準圧力値より高いときは、前記第2油圧ポンプの容量を減らすよう制御し、かつ前記油圧シリンダ装置が縮み動作にありかつ前記油圧シリンダ装置の低推力側の圧力が基準圧力値より高いときは、前記第2油圧ポンプの容量を増やし、前記低推力側の圧力が前記基準圧力値より低いときは、前記第2油圧ポンプの容量を減らすよう制御する。
【0012】
これにより複数の油圧ポンプを用いた油圧閉回路システムにおいて、第1油圧ポンプ或いは第2油圧ポンプのポンプ容量の誤差等により油圧シリンダ装置の伸縮時の流量収支がバランスしない場合でも、自動的に流量を調整し、常に流量収支のバランスを良好な状態に保つようになり、その結果、流量過多による圧こもりによる圧力上昇や流量過少によるキャビテーションを効果的に抑制することができる。
【0013】
(3)上記(2)記載の油圧閉回路システムにおいて、例えば、前記ポンプ容量制御装置は、前記油圧シリンダ装置の動作方向を検出する動作検出装置と、前記油圧シリンダ装置のボトム側の圧力とロッド側の圧力をそれぞれ検出する第1及び第2圧力検出装置と、前記動作検出装置と前記第1及び第2圧力検出装置の検出値に基づいて、前記油圧シリンダ装置が力行動作か回生動作かと、前記油圧シリンダ装置が伸び動作か縮み動作かを判定し、その判定結果に基づいて、前記第2油圧ポンプの容量の補正量を演算し第2油圧ポンプの容量を制御するポンプ容量補正装置とを有し、前記ポンプ容量補正装置は、前記基準圧力値をP
ref、前記油圧シリンダ装置のボトム側圧力をPb、ロッド側圧力をPrとすると、
(a)前記油圧シリンダ装置が伸びで力行動作のときは、基準圧力値P
refに対してロッド側圧力Prが小さいほど補正量を大きく、ロッド側圧力Prが大きいほど補正量小さくし、
(b)前記油圧シリンダ装置が伸びで回生動作のときは、基準圧力値P
refに対してボトム側圧力Pbが小さいほど補正量を大きく、ボトム側圧力Pbが大きいほど補正量小さくし、
(c)前記油圧シリンダ装置が縮みで力行動作のときは、基準圧力値P
refに対してボトム側圧力Pbが小さいほど補正量を小さく、ボトム側圧力Pbが大きいほど補正量大きくし、
(d)前記油圧シリンダ装置が縮みで回生動作のときは、基準圧力値P
refに対してロッド側圧力Prが小さいほど補正量を小さく、ロッド側圧力Prが大きいほど補正量大きくする。
【0014】
これにより複数の油圧ポンプを用いた油圧閉回路システムにおいて、第1油圧ポンプ或いは第2油圧ポンプのポンプ容量の誤差等により油圧シリンダ装置の伸縮時の流量収支がバランスしない場合でも、自動的に流量を調整し、常に流量収支のバランスを良好な状態に保つようになり、その結果、流量過多による圧こもりによる圧力上昇や流量過少によるキャビテーションを効果的に抑制することができる。
【0015】
(4)また,上記(2)記載の油圧閉回路システムにおいて、前記ポンプ容量制御装置は、前記油圧シリンダ装置の動作方向を検出する動作検出装置と、前記油圧シリンダ装置のボトム側油圧室とロッド側油圧室の圧力のうち低推力側の圧力を選択する低推力側圧力選択弁と、前記低推力側圧力選択弁が選択した圧力を検出する圧力検出装置と、前記動作検出装置及び前記圧力検出装置の検出値に基づいて、前記第2油圧ポンプの容量の補正量を演算し第2油圧ポンプ13の容量を制御するポンプ容量補正装置とを有していてもよく、この場合、前記ポンプ容量補正装置は、前記基準圧力値を設定する基準値設定器と、前記圧力検出装置によって検出した圧力と前記基準圧力値との差分値から前記油圧シリンダ装置が伸び動作のときの前記第2油圧ポンプの容量の補正量を算出する第1演算装置と、前記圧力検出装置によって検出した圧力と前記基準圧力値との差分値から前記油圧シリンダ装置が縮み動作のときの前記第2油圧ポンプの容量の補正量を算出する第2演算装置と、前記動作検出装置によって検出した前記油圧シリンダ装置の動作方向に基づいて前記第1及び第2演算装置の一方を選択する選択装置とを有する。
【0016】
これによりポンプ容量制御装置での推力演算及び低推力側の判断処理を省略できるため、ポンプ容量制御装置の演算処理を単純化することができる。また、圧力検出装置の数を削減することができるため、コスト面でより好適となる。
【0017】
(5)上記(3)又は(4)記載の油圧閉回路システムにおいて、前記ポンプ容量補正装置は、前記基準圧力値を含む所定の圧力範囲において前記第2油圧ポンプの容量の補正を行わない不感帯を設けることが好ましい。
【0018】
これにより圧力が不感帯を超えた場合のみポンプ容量の補正量が算出され、必要なときにのみ制御を行うようにすることができる。
【0019】
(6)また、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の油圧閉回路システムにおいて、前記原動機は電動モータと油圧モータのいずれかであってもよい。
【0020】
これにより原動機が電動モータである場合は、油圧シリンダ装置の回生動作時に第1及び第2油圧ポンプが電動モータを回転することで、回生動力が電気エネルギーとして回収され、原動機が油圧モータである場合は、油圧シリンダ装置の回生動作時に第1及び第2油圧ポンプが油圧モータを回転することで、回生動力が油圧エネルギーとして回収される。
(7)また、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の油圧閉回路システムにおいて、前記第1及び第2油圧ポンプは、1ポンプ2ポート流量分配型のポンプであってもよく、この場合、前記ポンプ容量制御装置は、前記1ポンプ2ポート流量分配型のポンプの2ポートにおける流量割合を変更することで前記第2油圧ポンプの容量を制御する。
【0021】
これによりシステムがより単純でコンパクトになり、コスト面で更に有利となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、複数の油圧ポンプを用いた油圧閉回路システムにおいて、ポンプ容量の誤差等により油圧シリンダ装置の伸縮時の流量収支がバランスしない場合でも、自動的に流量を調整し、常に流量収支のバランスを良好な状態に保ち、流量過多による圧こもりによる圧力上昇や流量過少によるキャビテーションを効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態を図を用いて説明する。
<第1の実施の形態>
図1は本発明の第1の実施の形態における油圧閉回路システムの構成を示す図である。
【0025】
図1において、符号11は、本実施の形態にの油圧閉回路システムにより駆動される油圧シリンダ装置であり、油圧シリンダ装置11は、油圧ショベル、ホイールローダ、クレーン、フォークリフト、ダンプトラック等、建設機械や産業機械などの作業機械の各種可動部材を駆動するための油圧アクチュエータである。
【0026】
油圧シリンダ装置11は、シリンダ本体11eと、シリンダ本体11e内を滑動するピストン11cと、このピストン11cに連結され、シリンダ本体11eの外部に伸びるロッド11dとを有し、ロッド11dが一方向に突出する片ロッド型であり、シリンダ本体11eの内部をピストン11cによりボトム側油圧室11aとロッド側油圧室11bに区画している。油圧シリンダ装置11は、シリンダ本体11eの端部を作業機械の可動部材に連結し、油圧シリンダ装置11を伸縮させることにより、負荷Wで示される可動部材を駆動し、所定の作業を行う。
【0027】
本実施の形態の油圧閉回路システムは、油圧シリンダ装置11に油圧閉回路を構成するよう接続された両方向吐出型の第1油圧ポンプ12と、対となる吐出ポートの一方が油圧シリンダ装置11のボトムに接続され、他方がタンク16に接続された両方向吐出型で両方向可変容量型の第2油圧ポンプ13と、第1及び第2油圧ポンプ12,13を駆動しかつ第1及び第2油圧ポンプ12,13の動力を回収する原動機20と、油圧シリンダ装置11の動作方向と油圧シリンダ装置11の低推力側の圧力を検出し、第1及び第2油圧ポンプ12,13と油圧シリンダ装置11との間で油圧シリンダ装置11の伸縮時の流量収支がバランスするよう第2油圧ポンプ13の容量を制御するポンプ容量制御装置100とを備えている。
【0028】
油圧シリンダ装置11の容量が大きい場合は、第1及び第2油圧ポンプ12,13の少なくとも一方は複数の油圧ポンプであってもよい。
【0029】
油圧シリンダ装置11と第1及び第2油圧ポンプ12,13の接続関係をより詳細に説明すると、第1油圧ポンプ12の対となる吐出ポートの一方は第1管路14を介して油圧シリンダ装置11のボトム側油圧室11aのポート(ボトム側ポート)Bpに接続され、第1油圧ポンプ12の対となる吐出ポートの他方は第2管路15を介して油圧シリンダ装置11のロッド側油圧室11bのポート(ロッド側ポート)Rpに接続され、第1油圧ポンプ12と第1管路14と第2管路15と油圧シリンダ装置11とで油圧閉回路を構成している。第2油圧ポンプ13の対となる吐出ポートの一方は、第1管路14に接続された第3管路17と第1管路14を介して油圧シリンダ装置11のボトム側ポートBpに接続され、第2油圧ポンプ13の対となる吐出ポートの他方は第4管路18を介してタンク16に接続されている。
【0030】
第1及び第2油圧ポンプ12,13は共通の駆動軸21により連結されており、駆動軸21は原動機20の駆動軸22に連結され、油圧シリンダ装置11の力行動作時は、原動機20を回転することで原動機20から第1及び第2油圧ポンプ12,13に動力が供給され、油圧シリンダ装置11の回生動作時は、第1及び第2油圧ポンプ12,13が原動機20を回転することで動力が回収される。ここで、油圧シリンダ装置11の力行動作とは、第1及び第2油圧ポンプ12,13から油圧シリンダ装置11に供給される作動油によって油圧シリンダ装置11が駆動される場合をいい、油圧シリンダ装置11の回生動作とは、油圧シリンダ装置11に作用する負荷Wによって油圧シリンダ装置11が駆動される場合をいう。
【0031】
また、原動機20の回転数を制御することで第1及び第2油圧ポンプ12,13が吐出する作動油の流量(以下吐出流量という)が制御され、油圧シリンダ装置11の動作速度が制御される。原動機20の回転方向を切り換えることで第1及び第2油圧ポンプ12,13の吐出方向が切り換わり、油圧シリンダ装置11の動作方向(伸び動作か縮み動作か)が切り換わる。第2油圧ポンプ13はレギュレータ23を有し、レギュレータ23により第2油圧ポンプ13の容量が調整される。
【0032】
原動機20は本実施の形態では電動モータであり、油圧閉回路システムは電動モータ20を駆動するためのバッテリ25と、インバータ26と、操作装置31と、コントローラ35とを備えている。コントローラ35は電動モータ制御部41を有し、電動モータ制御部41は、操作装置31の操作信号を入力して操作装置31の操作レバーの操作方向と操作量に応じた制御信号を生成し、インバータ26にその制御信号を出力する。インバータ26は、その制御信号に基づいて、電動モータ20の回転方向と回転数が操作装置31の操作レバーの操作方向と操作量に応じた回転方向と回転数となるよう制御する。電動モータ20の回転方向と回転数が制御されることにより、第1及び第2油圧ポンプ12,13の吐出方向と吐出流量が制御され、油圧シリンダ装置11の駆動方向と駆動速度が制御される。また、油圧シリンダ装置11の回生動作時は電動モータ20は発電機として機能し、生成された電力が電気エネルギーとしてバッテリ25に蓄えられる。
【0033】
また、油圧閉回路システムは、油圧シリンダ装置11のボトム側の圧力を検出する圧力センサ(第1圧力検出装置)32と、油圧シリンダ装置11のロッド側の圧力を検出する圧力センサ(第2圧力検出装置)33と、油圧シリンダ装置11の動作方向を検出する位置センサ(動作検出装置)34とを備え、コントローラ35はポンプ制御部42を有している。
【0034】
ポンプ制御部42は、圧力センサ32,33及び位置センサ34の検出信号を入力し、それらの検出値に基づいて油圧シリンダ装置11が力行動作か回生動作かと、油圧シリンダ装置11が伸び動作か縮み動作かを判定し、その判定結果に基づいて、第2油圧ポンプ13の容量の補正量を演算し、第2油圧ポンプ13のレギュレータ23に制御信号を出力する。レギュレータ23はその制御信号により動作し、第2油圧ポンプ13の容量(傾転)を微調整することで第2油圧ポンプ13の容量を調整する。これにより第1及び第2油圧ポンプ12,13と油圧シリンダ装置11との間で油圧シリンダ装置11の伸縮時の流量収支がバランスするよう第2油圧ポンプ13の容量が制御される。
【0035】
ポンプ制御部42の制御内容の詳細を説明する。
【0037】
図1において、ボトム側油圧室11a内のピストン11cの受圧面積(ボトム側受圧面積)をA1、ロッド側油圧室11b内のピストン11cの受圧面積(ロッド側受圧面積)をA2、ロッド11dの断面積をA3とした場合、第1油圧ポンプ12の容量と第2油圧ポンプ13の容量は、第1油圧ポンプ12の吐出流量Q1と第2油圧ポンプ13の吐出流量Q2が、
Q2=(A3/A2)×Q1 ・・・(1)
となるように設定される。理論的には、このようなポンプ容量の設定により第1及び第2油圧ポンプ12,13と油圧シリンダ装置11との間で油圧シリンダ装置11の伸縮時の流量収支がバランスし、油圧シリンダ装置11への流入流量或いは流出流量の過不足は生じない。しかし、現実には第1及び第2油圧ポンプ12,13の容量の設定誤差や経年変化等による容量誤差、外部へのリーク等による流量の誤差、温度影響などがあり、油圧シリンダ装置11の伸縮時の流量収支が理想的にバランスできない場合も少なくない。油圧シリンダ装置11の伸縮時の流量収支がバランスできない場合は、油圧シリンダ装置11への流入流量或いは流出流量の過不足が生じ、流量過少によるキャビテーションや、流量過多による圧こもりによる圧力上昇などの不具合が発生する。
【0038】
図2A及び
図2Bは上述した油圧シリンダ装置11の伸縮時の流量収支を具体的に示す図である。
図1と同一部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0039】
図2Aは油圧シリンダ装置11が伸びる場合であり、
図2Bは油圧シリンダ装置11が縮む場合である。いずれも計算が容易なように、ボトム側受圧面積A1とロッド側受圧面積A2との比を2:1とし、第1油圧ポンプ12及び第2油圧ポンプ13の吐出流量をそれぞれ50、油圧シリンダ装置11のボトム側油圧室11aへの流入流量或いはボトム側油圧室11aからの流出流量(ボトム側流量)を100、油圧シリンダ装置11のロッド側油圧室11bからの流出流量或いはロッド側油圧室11bへの流入流量(ロッド側流量)を50として示してある。
【0040】
図2Aの油圧シリンダ装置11が伸びる場合及び
図2Bの油圧シリンダ装置11が縮む場合のいずれも、第1油圧ポンプ12及び第2油圧ポンプ13の吐出流量がそれぞれ50であれば、油圧シリンダ装置11の伸縮時の流量収支がバランスし、油圧シリンダ装置11への流入流量或いは流出流量の過不足は生じない。
【0041】
次に、何らかの影響にて第2油圧ポンプ13の吐出流量が増えてしまう状況(図示Aの流量)と第2油圧ポンプ13の吐出流量が減ってしまう状況(図示Bの流量)を想定する。この場合、
図2Aの油圧シリンダ装置11が伸びる場合と
図2Bの油圧シリンダ装置11が縮む場合のそれぞれにおいて、油圧シリンダ装置11の力行動作と回生動作おける流量収支はそれぞれ次のようになる。
【0042】
1.油圧シリンダ装置11が伸びる
図2Aの場合
1−1.何らかの影響にて第2油圧ポンプ13の吐出流量が増えてしまう状況(図示Aの流量)
<力行動作>(図示APの流量)
第2油圧ポンプ13の吐出流量が54に増えており、その結果、第1及び第2油圧ポンプ12,13から油圧シリンダ装置11のボトム側に供給される流量は104に増える。これに伴って、油圧シリンダ装置11が力行動作をするとき、油圧シリンダ装置11のロッド側の流量が52と増える。一方、第1油圧ポンプ12の吐出流量は50であるため、第1油圧ポンプ12の吸い込み流量も50である。その結果、油圧シリンダ装置11のロッド側が流量過多となり、油圧シリンダ装置11の低推力側であるロッド側油圧室11b及び管路15に圧こもりによる圧力上昇が生じる。
<回生動作>(図示ANの流量)
第2油圧ポンプ13の吐出流量が54に増えており、その結果、第1及び第2油圧ポンプ12,13から油圧シリンダ装置11のボトム側に供給される流量は104に増える。一方、第1油圧ポンプ12の吐出流量は50であるため、第1油圧ポンプ12の吸い込み流量も50である。これに伴って、油圧シリンダ装置11が回生動作をするとき、油圧シリンダ装置11は負荷Wによってロッド側の流量が50となるよう駆動されるため、油圧シリンダ装置11のボトム側の流量は100となる。その結果、油圧シリンダ装置11のボトム側が流量過多となり、油圧シリンダ装置11の低推力側であるボトム側油圧室11a及び管路14に圧こもりによる圧力上昇が生じる。
【0043】
1−2.何らかの影響にて第2油圧ポンプ13の吐出流量が減ってしまう状況(図示Bの流量)
<力行動作>(図示APの流量)
第2油圧ポンプ13の吐出流量が46に減っており、その結果、第1及び第2油圧ポンプ12,13から油圧シリンダ装置11のボトム側に供給される流量は96に減る。これに伴って、油圧シリンダ装置11が力行動作をするとき、油圧シリンダ装置11のロッド側の流量が48と減る。一方、第1油圧ポンプ12の吐出流量は50であるため、油圧シリンダ装置11の吸い込み流量も50である。その結果、油圧シリンダ装置11のロッド側が流量過少となり、油圧シリンダ装置11の低推力側であるロッド側油圧室11b及び管路15にキャビテーションが生じる。
<回生動作>(図示ANの流量)
第2油圧ポンプ13の吐出流量が46に減っており、その結果、第1及び第2油圧ポンプ12,13から油圧シリンダ装置11のボトム側に供給される流量は96に減る。一方、第1油圧ポンプ12の吐出流量は50であるため、第1油圧ポンプ12の吸い込み流量も50である。これに伴って、油圧シリンダ装置11が回生動作をするとき、油圧シリンダ装置11は負荷Wによってロッド側の流量が50となるよう駆動されるため、油圧シリンダ装置11のボトム側の流量は100となる。その結果、油圧シリンダ装置11のボトム側が流量過少となり、油圧シリンダ装置11の低推力側であるボトム側油圧室11a及び管路14にキャビテーションが生じる。
【0044】
2.油圧シリンダ装置11が縮む
図2Bの場合
2−1.何らかの影響にて第2油圧ポンプ13の吐出流量が増えてしまう状況(図示Aの流量)
<力行動作>(図示APの流量)
第2油圧ポンプ13の吐出流量が54に増えているため、第2油圧ポンプ13の吸い込み流量も54に増えている。また、第1油圧ポンプ12の吐出流量は50であるため、第1油圧ポンプ12の吸い込み流量も50である。その結果、第1及び第2油圧ポンプ12,13による油圧シリンダ装置11のボトム側からの吸い込み流量は104に増える。また、油圧シリンダ装置11が力行動作をするとき、第1油圧ポンプ12の吐出流量は50であるため、油圧シリンダ装置11のボトム側の流量は100となる。その結果、油圧シリンダ装置11のボトム側が流量過少となり、油圧シリンダ装置11の低推力側であるボトム側油圧室11a及び管路14にキャビテーションが生じる。
<回生動作>(図示ANの流量)
第2油圧ポンプ13の吐出流量が54に増えているため、第2油圧ポンプ13の吸い込み流量も54に増えている。また、第1油圧ポンプ12の吐出流量は50であるため、第1油圧ポンプ12の吸い込み流量も50である。その結果、第1及び第2油圧ポンプ12,13による油圧シリンダ装置11のボトム側からの吸い込み流量は104に増える。これに伴って、油圧シリンダ装置11が回生動作をするとき、油圧シリンダ装置11は負荷Wによってボトム側の流量が104となるように駆動されるため、油圧シリンダ装置11のロッド側の流量は52と増える。その結果、油圧シリンダ装置11のロッド側が流量過少となり、油圧シリンダ装置11の低推力側であるロッド側油圧室11b及び管路15キャビテーションが生じる。
【0045】
2−2.何らかの影響にて第2油圧ポンプ13の吐出流量が減ってしまう状況(図示Bの流量)
<力行動作>(図示APの流量)
第2油圧ポンプ13の吐出流量が46に減っているため、第2油圧ポンプ13の吸い込み流量も46に減っている。また、第1油圧ポンプ12の吐出流量は50であるため、第1油圧ポンプ12の吸い込み流量も50である。その結果、第1及び第2油圧ポンプ12,13による油圧シリンダ装置11のボトム側からの吸い込み流量は96に減る。また、油圧シリンダ装置11が力行動作をするとき、第1油圧ポンプ12の吐出流量は50であるため、油圧シリンダ装置11のボトム側の流量は100となる。その結果、油圧シリンダ装置11のボトム側が流量過多となり、油圧シリンダ装置11の低推力側であるボトム側油圧室11a及び管路14に圧こもりによる圧力上昇が生じる。
<回生動作>(図示ANの流量)
第2油圧ポンプ13の吐出流量が46に減っているため、第2油圧ポンプ13の吸い込み流量も46に減っている。また、第1油圧ポンプ12の吐出流量は50であるため、第1油圧ポンプ12の吸い込み流量も50である。その結果、第1及び第2油圧ポンプ12,13による油圧シリンダ装置11のボトム側からの吸い込み流量は96に減る。これに伴って、油圧シリンダ装置11が回生動作をするとき、油圧シリンダ装置11は負荷Wによってボトム側の流量が96となるように駆動されるため、油圧シリンダ装置11のロッド側の流量は48に減る。その結果、油圧シリンダ装置11のロッド側が流量過多となり、油圧シリンダ装置11の低推力側であるロッド側油圧室11b及び管路15に圧こもりによる圧力上昇が生じる。
【0046】
このように第1油圧ポンプ12及び第2油圧ポンプ13の吐出流量がそれぞれ50であれば、油圧シリンダ装置11への流入流量或いは流出流量の過不足は生じないが、実際には、ポンプ容量の設定誤差や経年変化等による容量誤差、外部へのリーク等による流量の誤差、温度影響などから流量収支がバランスできない場合は、油圧シリンダ装置11への流入流量或いは流出流量の過不足が生じ、油圧シリンダ装置11の低推力側であるボトム側及びロッド側のいずれかに流量過少によるキャビテーションや、流量過多による圧こもりによる圧力上昇などの不具合が発生することになる。
【0047】
このような課題のもと、本発明は、第2油圧ポンプ13の押し除け容積(容量)を自動的に制御し、上記不具合を生じさせない構成とするものである。
【0048】
図3Aは、第2油圧ポンプ13の制御方法の一例を示す図である。第2油圧ポンプ13の制御方法は、
図3Aに示すように、油圧シリンダ装置11が伸び/縮みの動作状態と、力行/回生の動作状態のいずれにあるかによって制御(補正演算テーブル)を使い分け、第2油圧ポンプ13の予め設定されたポンプ容量に対して補正量を演算する。すなわち、油圧シリンダ装置11の低推力側の流量の過少・過多を判定するための基準圧力値を
Pref、ボトム側圧力をPb、ロッド側圧力をPrとすると、本発明は次のように第2油圧ポンプ13の予め設定されたポンプ容量に対して補正量を演算し、第2油圧ポンプ13の容量を補正する。
【0049】
(a)油圧シリンダ装置11が伸びで力行動作のとき
基準圧力値P
refに対してロッド側圧力Prが小さいほど(Pr−Prefの値が小さくなるほど)補正量を大きく、ロッド側圧力Prが大きいほど(Pr−Prefの値が大きくなるほど)補正量小さくする(負の傾き)。
【0050】
(b)油圧シリンダ装置11が伸びで回生動作のとき
基準圧力値P
refに対してボトム側圧力Pbが小さいほど(Pb−Prefの値が小さくなるほど)補正量を大きく、ボトム側圧力Pbが大きいほど(Pb−Prefの値が大きくなるほど)補正量小さくする(負の傾き)。
【0051】
(c)油圧シリンダ装置11が縮みで力行動作のとき
基準圧力値P
refに対してボトム側圧力Pbが小さいほど(Pb−Prefの値が小さくなるほど)補正量を小さく、ボトム側圧力Pbが大きいほど(Pb−Prefの値が大きくなるほど)補正量大きくする(正の傾き)。
【0052】
(d)油圧シリンダ装置11が縮みで回生動作のとき
基準圧力値
Prefに対してロッド側圧力Prが小さいほど(Pr−Prefの値が小さくなるほど)補正量を小さく、ロッド側圧力Prが大きいほど(Pr−Prefの値が大きくなるほど)補正量大きくする(正の傾き)。
【0053】
ここで、油圧シリンダ装置11の低推力側の流量の過少・過多を判定するための基準圧力
値Prefはキャビテーションや圧力上昇による不具合を起こさない圧力であり、好ましくはタンク圧よりやや高めの圧力に設定される。この圧力は、例えばタンク圧を0.1MPaとすると、0.2MPa程度の値とすることができる。
【0054】
図3Bは第2油圧ポンプ13の制御方法の他の一例を示す図である。この制御方法では、油圧シリンダ装置11が伸び/縮みの動作状態と、力行/回生の動作状態のいずれにあるかによって使い分ける補正演算テーブルのそれぞれにおいて、基準圧力値Prefを含む所定の圧力範囲に不感帯を設け、その所定の圧力範囲では第2油圧ポンプの容量の補正を行わないようにしたものである。これにより圧力が不感帯を超えた場合のみポンプ容量の補正量が算出され、必要なときにのみ制御を行うようにすることができる。
【0055】
図4は、
図3A及び
図3Bに示した制御方法により第2油圧ポンプ13の容量補正を行うポンプ制御部42の処理フローを示す図である。ポンプ制御部42には、
図3に示すようなシリンダ伸びと力行の補正演算テーブル、シリンダ伸びと回生の補正演算テーブル、シリンダ縮みと力行の補正演算テーブル、シリンダ縮みと回生の補正演算テーブルが記憶してあり、ポンプ制御部42は、圧力センサ32,33及び位置センサ34の検出信号を入力して油圧シリンダ装置11のボトム側圧力Pb、ロッド側圧力Pr、シリンダ速度Vを算出し、それらのテーブルを用いて第2油圧ポンプ13の容量補正量を算出し制御する。制御の詳細は以下のようである。
【0056】
ステップS1
圧力センサ32,33及び位置センサ34の検出信号を入力して油圧シリンダ装置11のボトム側圧力Pb、ロッド側圧力Pr、シリンダ速度Vを算出する。
【0057】
ステップS2
油圧シリンダ装置11が力行動作か回生動作かを判定する。力行/回生の動作の判定方法は、シリンダ推力×速度の計算値の符号にて判定でき、+は力行動作、−は回生動作を表す。具体的にはシリンダ伸び方向を+方向と定義すると、
(A1・Pb−A2・Pr)×V
+:力行
−:回生
力行動作であればステップS3へ進み、回生動作であればステップS4へ進む。
【0058】
ステップS3,S4
シリンダ速度Vに基づいて油圧シリンダ装置11がシリンダ伸びであるかをどうかをそれぞれ判定し、シリンダ伸びであればステップS5,S7及びステップS9,S11に進み、シリンダ縮みであればステップS6及びステップS10に進む。
【0059】
ステップS5及びステップS9
ロッド側圧力Prと基準圧力値
Prefから両者の偏差であるPr−Prefの値を計算し、この値を
図3A又は
図3Bに示すシリンダ伸びと力行の補正演算テーブル参照し、第2油圧ポンプ13の容量の補正量を算出する。
【0060】
ステップS7及びステップS11
ボトム側圧力Pbと基準圧力値
Prefから両者の偏差であるPb−Prefの値を計算し、この値を
図3A又は
図3Bに示すシリンダ伸びと回生の補正演算テーブル参照し、第2油圧ポンプ13の容量の補正量を算出する。
【0061】
ステップS6及びステップS10
ボトム側圧力Pbと基準圧力値
Prefから両者の偏差であるPb−Prefの値を計算し、この値を
図3A又は
図3Bに示すシリンダ縮みと力行の補正演算テーブル参照し、第2油圧ポンプ13の容量の補正量を算出する。
【0062】
ステップS8及びステップS12
ロッド側圧力Prと基準圧力値
Prefから両者の偏差であるPr−Prefの値を計算し、この値を
図3A又は
図3Bに示すシリンダ縮みと回生の補正演算テーブル参照し、第2油圧ポンプ13の容量の補正量を算出する。
【0063】
ステップS13
ステップS9〜S12で求めた容量の補正量を基準となる目標容量Qrefに加算し、第2油圧ポンプ13の補正容量QCORを算出する。目標容量Qrefは前述した(1)式に示す流量Q2であり、第2油圧ポンプ13に予め設定した容量で得られる流量である。
【0064】
ステップS14
補正容量QCORをレギュレータの23の制御量に変換し、制御信号として出力する。
【0065】
次に、本実施の形態の動作を説明する。
【0066】
本実施の形態においては、第2油圧ポンプ13の容量を前述した(1)式のQ2が得られる容量に設定する。理論的には、このような設定により油圧シリンダ装置11の伸び/縮み、力行/回生のどの動作においても、油圧シリンダ装置11への流入流量或いは流出流量の過不足は生じず良好である。
【0067】
次に、何らかの影響にて第2油圧ポンプ13の容量が変わり、流量過多による圧こもりの動作状況になった場合について考える。
【0068】
本実施の形態では、そのような場合、次のように動作する。
【0069】
<流量過多による圧こもり時>
図4を参照して説明する。
【0070】
(a)油圧シリンダ装置11の伸びで力行動作のとき
ステップS2→S3→S5の順序で処理が進み、Pr−Prefの値が大きくなるほど補正量を減らす。その結果、第2油圧ポンプ13の容量(傾転量)が減り、油圧シリンダ装置11のロッド側(ロッド側油圧室11b及び管路15)での流量過多による圧こもりが低減する。
【0071】
(b)油圧シリンダ装置11の縮みで力行動作のとき
ステップS2→S3→S6の順序で処理が進み、Pb−Prefの値が大きくなるほど補正量を増やす。その結果、第2油圧ポンプ13の容量(傾転量)が増え、油圧シリンダ装置11のボトム側(ボトム側油圧室11a及び管路14)での流量過多による圧こもりが低減する。
【0072】
(c)油圧シリンダ装置11の伸びで回生動作のとき
ステップS2→S4→S7の順序で処理が進み、Pb−Prefの値が大きくなるほど補正量を減らす。その結果、第2油圧ポンプ13の容量(傾転量)が減り、油圧シリンダ装置11のボトム側(ボトム側油圧室11a及び管路14)での流量過多による圧こもりが低減する。
【0073】
(d)油圧シリンダ装置11の縮みで回生動作のとき
ステップS2→S4→S8の順序で処理が進み、Pr−Prefの値が大きくなるほど補正量を増やす。その結果、第2油圧ポンプ13の容量(傾転量)が増え、油圧シリンダ装置11のロッド側(ロッド側油圧室11b及び管路15)での流量過多による圧こもりが低減する。
【0074】
以上のように全ての動作状況において、流量過多による圧こもりによる圧力上昇が抑制される。
【0075】
次に、何らかの影響にて第2油圧ポンプ13の容量が変わり、流量過少によるキャビテーションが生じる動作状況になった場合について考える。
【0076】
本実施の形態では、そのような場合、次のように動作する。
【0077】
<流量過少によるキャビテーション時>
図4を参照して説明する。
【0078】
(a)油圧シリンダ装置11の伸びで力行動作のとき
ステップS2→S3→S5の順序で処理が進み、圧Pr−Prefの値が小さくなるほど補正量を増やす。その結果、第2油圧ポンプ13の容量(傾転量)が増え、油圧シリンダ装置11のロッド側(ロッド側油圧室11b及び管路15)での流量過少によるキャビテーションが低減する。
【0079】
(b)油圧シリンダ装置11の縮みで力行動作のとき
ステップS2→S3→S6の順序で処理が進み、Pb−Prefの値が小さくなるほど補正量を減らす。その結果、第2油圧ポンプ13の容量(傾転量)が減り、油圧シリンダ装置11のボトム側(ボトム側油圧室11a及び管路14)での流量過少によるキャビテーションが低減する。
【0080】
(c)油圧シリンダ装置11の伸びで回生動作のとき
ステップS2→S4→S7の順序で処理が進み、Pb−Prefの値が小さくなるほど補正量を増やす。その結果、第2油圧ポンプ13の容量(傾転量)が増え、油圧シリンダ装置11のボトム側(ボトム側油圧室11a及び管路14)での流量過少によるキャビテーションが低減する。
【0081】
(d)油圧シリンダ装置11の縮みで回生動作のとき
ステップS2→S4→S8の順序で処理が進み、Pr‐Prefの値が小さくなるほど補正量を減らす。その結果、第2油圧ポンプ13の容量(傾転量)が減り、油圧シリンダ装置11のロッド側(ロッド側油圧室11b及び管路15)での流量過少によるキャビテーションが低減する。
【0082】
以上のように全ての動作状況において、流量過少によるキャビテーションが抑制される。
【0083】
第1油圧ポンプ12の容量が(1)式のQ1が得られる容量から何らかの影響にて変わった場合についても同様の制御が行われ、流量過多による圧こもりによる圧力上昇や流量過少によるキャビテーションが抑制される。
【0084】
以上説明したように、本実施の形態によれば、複数の油圧ポンプを用いた油圧閉回路システムにおいて、第1油圧ポンプ12或いは第2油圧ポンプ13のポンプ容量の誤差等により油圧シリンダ装置11の伸縮時の流量収支がバランスしない場合でも、自動的に流量を調整し、常に流量収支のバランスを良好な状態に保ち、流量過多による圧こもりによる圧力上昇や流量過少によるキャビテーションを効果的に抑制することができる。
【0085】
また、油圧閉回路システムに従来一般的に設けられていた作動油循環のための低圧選択弁(フラッシング弁)を必要とせず、システムが単純でコンパクトになる。更に、キャビテーション防止のためのチャージ回路を必要とせず、この点でもシステムが単純でコンパクトになる。その結果、性能のみならずコスト面においても好適である。
<第2の実施の形態>
図5は本発明の第2の実施の形態における油圧閉回路システムの構成を示す図である。
【0086】
図5において、本実施の形態に係わる油圧閉回路システムは、
図1に示す第1の実施の形態の油圧回路システムにあった圧力センサ32,33に代えて、油圧シリンダ装置11のボトム側油圧室11a及びロッド側油圧室11bの圧力(油圧力)のうち、油圧シリンダ装置11の推力の低い側の圧力を選択して出力する低推力側圧力選択弁51と、低推力側圧力選択弁51が選択した圧力を検出する圧力センサ(圧力検出装置)52を備えている。また、コントローラ35はポンプ制御装置42に代えポンプ制御装置42Aを備えている。ポンプ制御装置42Aは、位置センサ34(動作検出装置)及び圧力センサ(圧力検出装置)52の検出値に基づいて、第2油圧ポンプ13の容量の補正量を演算し第2油圧ポンプ13の容量を制御する。
【0087】
低推力側圧力選択弁51は3位置のスプール51aの両端に油圧シリンダ装置11のボトム側油圧室11a及びロッド側油圧室11bの圧力が導かれるとともに、スプール51aの両端をバネ51b,51cにて中立保持する構成となっている。バネ51b,51cのバネ荷重(バネ常数)は、前述したようなボトム側油圧室11aにおける受圧面積A1とロッド側油圧室11bにおける受圧面積A2との比が2:1の場合、バネ51b,51cのバネ荷重の比は1:2となっている。これは、油圧シリンダ装置11のボトム側油圧室11a及びロッド側油圧室11bの圧力のうち、ピストン11cの推力(シリンダ推力)の低い側の圧力を選択するためである。なお、油圧アクチュエータが油圧モータ等の両ポートにおける受圧面積が同一である場合においては、バネ51b,51cのバネ荷重の比は1:1となり、単純に低圧側を選択する低圧選択弁であればよい。油圧アクチュエータが油圧シリンダ装置11等、両ポートの受圧面積が異なる場合においては、このように受圧面積比に応じてバネ特性を設定しておくことで、低推力側の圧力を選択して検出することができる。
【0088】
ポンプ制御装置42Aは、基準圧力値Prefを設定する基準値設定器53と、圧力センサ52によって検出した圧力と基準圧力値Prefとの差分を演算する差分器54と、この差分器54で演算した差分値から油圧シリンダ装置11が伸び動作のときの第2油圧ポンプ13の容量の補正量を算出する第1演算装置55Aと、差分器54で演算した差分値から油圧シリンダ装置11が縮み動作のときの第2油圧ポンプ13の容量の補正量を算出する第2演算装置55Bと、位置センサ34によって検出した油圧シリンダ装置11の動作速度Vに基づく油圧シリンダ装置11の動作方向が伸び動作であるときは第1演算装置55Aを選択し、油圧シリンダ装置11の動作方向が縮み動作であるときは第2演算装置55Bを選択する選択装置56と、基準となる目標容量Qrefを設定する目標容量設定器57と、選択装置56で選択された第1演算装置55A又は第2演算装置55Bが演算したポンプ容量の補正量を基準となる目標容量Qrefに加算して油圧ポンプ13の補正容量QCORを算出する補正器(加算器)58と、補正容量QCORをレギュレータの23の制御量に変換し、制御信号として出力する出力器59とを有している。
【0089】
第1演算装置55Aは、第1の実施の形態における
図4のステップS9,S11の演算処理を1つのシリンダ伸びの補正演算テーブルで行うものであり、差分器54で演算した差分値をシリンダ伸びの補正演算テーブルに参照し第2油圧ポンプ13の容量の補正量を算出する。第2演算装置55Bは、第1の実施の形態における
図4のステップS10,12の演算処理を1つのシリンダ縮みの補正演算テーブルで行うものであり、差分器54で演算した差分値をシリンダ縮みの補正演算テーブルに参照し第2油圧ポンプ13の容量の補正量を算出する。
【0090】
以上のように構成した本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0091】
また、本実施の形態によれば、コントローラ35での推力演算及び低推力側の判断処理を省略できるため、コントローラ35の演算処理を単純化することができる。また、圧力センサの数を削減することができるため、コスト面でより好適となる。
<第3の実施の形態>
図6は本発明の第3の実施の形態における油圧閉回路システムの構成を示す図である。
【0092】
本発明において、第1及び第2油圧ポンプを駆動する原動機は動力の入力/出力ができるものなら何でもよく、電動モータ以外の例えば油圧モータでもよい。本実施の形態は原動機を油圧モータとした場合のものである。
【0093】
図6において、本実施の形態の油圧閉回路システムは、
図1に示す原動機としての電動モータ20に代え、両方向可変容量型の油圧モータ61を備えている。油圧モータ61は、アキュムレータ62と安全リリーフ弁63を備えた低圧力源システム64に接続されている。低圧力源システム64は、公知の如く、油圧モータ61が第1及び第2油圧ポンプ12,13を駆動するとき(力行動作時)はアキュムレータ62に畜圧された油圧エネルギーで駆動され、油圧モータ61が第1及び第2油圧ポンプ12,13により駆動されるとき(回生動作時)は、その回転エネルギーを油圧エネルギーとしてアキュムレータ62に畜圧する。低圧力源システム64は、アキュムレータ62の畜圧された油圧エネルギーの不足時のため、エンジン等で駆動される図示しない油圧ポンプが接続されていてもよい。
【0094】
また、油圧モータ61はレギュレータ
65を有し、コントローラ35は、電動モータ制御部41に代え油圧モータ制御部41Bを有している。油圧モータ制御部41Bは、操作装置31の操作信号を入力して操作装置31の操作レバーの操作方向と操作量に応じた制御信号を生成し、レギュレータ65にその制御信号を出力する。レギュレータ65は、その制御信号に基づいて、油圧モータ61の回転方向と回転数が操作装置31の操作レバーの操作方向と操作量に応じた回転方向と回転数となるように油圧モータ61の傾転方向と傾転量を制御する。油圧モータ61の回転方向と回転数が制御されることにより、第1及び第2油圧ポンプ12,13の吐出方向と吐出流量が制御され、油圧シリンダ装置11の駆動方向と駆動速度が制御される。
【0095】
以上のように構成した本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0096】
また、本実施の形態においては、油圧シリンダ装置11の回生動作時に第1及び第2油圧ポンプ12,13が油圧モータ61を回転することで、回生動力を油圧エネルギーとしてアキュムレータ62に回収することができる。
<第4の実施の形態>
図7は本発明の第4の実施の形態における油圧閉回路システムの構成を示す図である。
【0097】
本発明は、第1及び第2油圧ポンプを1ポンプ2ポート流量分配型のポンプで構成した場合のものである。
【0098】
図7において、本実施の形態に係わる油圧閉回路システムは、
図1に示す共通の駆動軸21により連結された別体の第1及び第2の油圧ポンプ12,13に代え、1ポンプ2ポート流量分配型のポンプとして知られているスプリットフローポンプ71を備えている。スプリットフローポンプ71は、1つの吐出/吸い込みポート71aと、2つの吸い込み/吐出ポート71b,71cを有し、吐出/吸い込みポート71aは管路14を介して油圧シリンダ装置11のボトム側に接続され、2つの吸い込み/吐出ポート71b,71cの一方のポート71bが管路15を介して油圧シリンダ装置11のロッド側に接続され、他方のポート71cがタンクに接続されている。スプリットフローポンプ71の1つの吐出/吸い込みポート71aと2つの吸い込み/吐出ポート71b,71cの一方のポート71bで第1油圧ポンプとして機能し、1つの吐出/吸い込みポート71aと2つの吸い込み/吐出ポート71b,71cの他方のポート71cで第2油圧ポンプとして機能する。
【0099】
また、スプリットフローポンプ71は2つの吸い込み/吐出ポート71b,71cにおける流量割合を変更するレギュレータ72を有し、コントローラ35は、ポンプ制御部42に代え、ポンプ制御部42Cを有している。、ポンプ制御部42C圧力センサ32,33及び位置センサ34(動作検出装置)の検出値に基づいて、スプリットフローポンプ71の2つの吸い込み/吐出ポート71b,71cにおける流量割合の補正量を演算し、レギュレータ72にその制御信号を出力する。レギュレータ72は、その制御信号に基づいて2つの吸い込み/吐出ポート71b,71cにおける流量割合を制御する。
【0100】
以上のように構成した本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0101】
また、本実施の形態においては、1つのポンプに2つのポンプ機能を持たせたので、システムがより単純でコンパクトになり、コスト面で更に有利となる。
【0102】
なお、本実施の形態では第1及び第2油圧ポンプとして1ポンプ2ポート流量分配型のポンプを用いたが、1ポンプで2つの吐出/吸い込みポートと2つの吸い込み/吐出ポートを有するダブルポンプ一体型のポンプを用いてもよく、これによっても同様の効果を得ることができる。