(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に示されるものでは、金具と天井根太との間に防振材が介在されているので、一定の防音効果を見込むことができるものの、天井根太の側面や木口面等で金具が直接に接触する箇所があり、振動に音を確実に遮断することが難しい。
【0006】
また、天井根太と金具との間に介在させる防振材の設置箇所を増やしたとしても、施工の精度や振動時の建物の部分的な変形によって直接に接触する箇所が発生し易くなり、そうなると、本来の意図する防振防音効果を発揮できなくなるという問題があり、改良の余地がある。
【0007】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたもので、その目的は、躯体と天井根太との間に介在される金具の構造を改良することで、天井材下側の部屋に対する防振防音効果が確実に発揮できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、金具は、躯体側に取り付けられる部分と、天井根太側に取り付けられる部分とを設けて、両者を主に剪断方向に変形するゴム弾性体のみで連結するようにした。
【0009】
具体的には、第1の発明では、天井根太用防振取付金具は、建物における躯体の側部に取付固定されるベース金具と、このベース金具に水平方向に対向して配置され、野縁を介して天井材を吊り下げ支持するための天井根太が取付固定される根太金具と、上記ベース金具及び根太金具の間に一体的に接着されて固定され、両者を連結するゴム弾性体とを備えてなり、施工状態で上記躯体側と天井根太側との間に上記ゴム弾性体のみが介在され
、かつ上記根太金具と天井根太の端部木口面との間に所定のクリアランスが設けられるように構成されていることを特徴とする。
【0010】
この第1の発明では、天井根太用防振取付金具のベース金具が建物における躯体の側部に取付固定され、その根太金具には天井根太が取付固定される。これらベース金具と根太金具とは水平方向に対向して配置され、かつ両者に一体的に接着固定したゴム弾性体により連結されているので、この天井根太用防振取付金具により天井根太を施工した施工状態では、躯体側と天井根太側との間に上記天井根太用防振取付金具のゴム弾性体のみが介在されることとなる。そのため、それら躯体側と天井根太側とが直接に接触することはなく、振動の伝達が必ずゴム弾性体を通して行われ、そのゴム弾性体の主に剪断方向の変形によって、天井材下側の部屋に対する防振防音効果を確実に発揮させることができる。
【0011】
また、天井根太用防振取付金具の根太金具と天井根太の端部木口面との間に設けられたクリアランスにより、躯体が変形したり天井根太(木材)が伸縮したとしても、防振取付金具のゴム弾性体に余計な圧縮方向又は引張方向の力がかからず、力は剪断方向のみとなって適切な防振防音性能を確実に安定して発生させかつ永続的に維持することができる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明に係る天井根太用防振取付金具において、上記ベース金具と根太金具とのゴム弾性体による連結が解除されたときに根太金具がベース金具に対して落下するのを阻止する落下防止機構を備えていることを特徴とする。
【0013】
この第2の発明では、ベース金具と根太金具とが、それらに一体的に接着固定したゴム弾性体のみによって連結されているので、ゴム弾性体とベース金具又は根太金具との接着固定が外れたりゴム弾性体が破断したりしたときには、天井根太が野縁や天井材と共に落下する虞れがあるが、落下防止機構を設けることで、その落下を防止することができる。
【0014】
請求項3の発明では、天井構造は、建物における躯体の側部と天井根太との間に上記第1又は第2の発明に係る天井根太用防振取付金具が介在されていることを特徴とする。
【0015】
この第3の発明では、建物における躯体の側部と天井根太との間に天井根太用防振取付金具が介在されているので、下側の部屋に対する防振防音効果を確実に発揮できる天井構造が得られる。
【0016】
第4の発明は、
建物における躯体の側部と天井根太との間に天井根太用防振取付金具が介在されている天井構造であって、上記天井根太用防振取付金具は、建物における躯体の側部に取付固定されるベース金具と、このベース金具に水平方向に対向して配置され、野縁を介して天井材を吊り下げ支持するための天井根太が取付固定される根太金具と、上記ベース金具と根太金具との間に一体的に接着されて固定され、両者を連結するゴム弾性体とを備えてなり、施工状態で上記躯体側と天井根太側との間に上記ゴム弾性体のみが介在されるように構成されており、上記天井根太用防振取付金具の根太金具と、天井根太の端部木口面との間に所定のクリアランスが設けられていることを特徴とする。
【0017】
この第4の発明では、
第1の発明と同様に、天井根太用防振取付金具の根太金具と天井根太の端部木口面との間に設けられたクリアランスにより、躯体が変形したり天井根太(木材)が伸縮したとしても、防振取付金具のゴム弾性体に余計な圧縮方向又は引張方向の力がかからず、力は剪断方向のみとなって適切な防振防音性能を確実に安定して発生させかつ永続的に維持することができる。
【0018】
第5の発明は、第3又は第4の発明に係る天井構造において、上記天井根太と野縁との間に防振吊木が介在されていることを特徴とする。
【0019】
この第5の発明では、天井根太と野縁との間に防振吊木が介在されているので、この防振吊木により、階上の床材側で発生した振動を吸収して階下の天井材に伝わり難くし、防振及び防音の各効果をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、
第1、第3及び第4の発明によると、建物における躯体側と、天井材を吊り下げ支持する天井根太との間に、躯体の側部に取付固定されるベース金具と、ベース金具に水平方向に対向して配置され、天井根太が取付固定される根太金具と、ベース金具及び根太金具の間に一体的に接着固定され、両者を連結するゴム弾性体とを備えた天井根太用防振取付金具を設けたことにより、施工状態では、躯体側と天井根太側との間にゴム弾性体のみを介在させ、躯体側と天井根太側とが直接に接触することはなく、ゴム弾性体の剪断変形によって、天井材下側の部屋に対する防振防音効果を確実に発揮させることができる。
また、天井構造における天井根太用防振取付金具の根太金具と、天井根太の端部木口面との間に所定のクリアランスを設けたことにより、躯体が変形したり天井根太(木材)が伸縮したとしても、防振取付金具のゴム弾性体に余計な圧縮方向又は引張方向の力がかからず、適切な防振防音性能を確実に安定して発生させかつ永続的に維持することができる。
【0021】
第2の発明によると、ベース金具と根太金具とのゴム弾性体による連結が解除されたときに根太金具がベース金具に対して落下するのを阻止する落下防止機構を設けたことにより、万一、ゴム弾性体とベース金具又は根太金具との接着固定が外れたりゴム弾性体が破断したりしたときにも、天井根太が野縁や天井材と共に落下するのを防止することができる
。
【0022】
第5の発明によれば、天井根太と野縁との間に防振吊木を介在させることにより、階上の床材側で発生した振動を吸収して階下の天井材に伝わり難くし、防振及び防音の各効果をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0025】
(天井構造)
図4及び
図5は本発明の実施形態に係る天井構造を示し、この天井構造は、枠組壁工法(2×4工法)により建てられる例えば2階建て住宅等の建物の天井構造である。
【0026】
図4及び
図5において、1は建物の1階部分及び2階部分の間に配置される躯体としての上部構造体で、この上部構造体1は、木材を2枚重ねた周囲材2(床梁材)と、その周囲材2に架設された複数の床根太3,3,…とを有する。4は上部構造体1上に支持された階上の床材であり、この床材4は床仕上材5及び床下地材6が上から順に積層されてなるものである。
【0027】
上記床仕上材5は、図では単層構造として表しているが、樹脂化粧シートと、基材と、樹脂マットとが上から順に積層されて構成され、クッション材が用いられた場合に比べて適度な硬さを備えているものが防音性、歩行性の点で好ましい。
【0028】
上記樹脂化粧シートは表面平滑なものであればよく、例えば樹脂含浸紙、オレフィン系樹脂シート、ポリエチレンテレフタレート樹脂シート等、又はこれらのシートを複合したもの、さらには、これらのシートの表面に塗装加工を施したシート状物を使用することができる。また、上記床材に基材として後述する木質繊維板を用いる場合には、基材が湿気の影響を受けないように、防湿性があり、かつ強度に優れたシートを用いることが好ましい。
【0029】
上記基材は、一般に床材に使用される可撓性を有する材料であればよく、例えば、合成樹脂系や木質系の木質基材が使用できる。
【0030】
合成樹脂系の基材としては、塩化ビニル系樹脂、合成ゴム系樹脂、オレフィン系樹脂、これらの樹脂に充填材を混練したもの等が好適に使用される。充填材としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミ等の高比重無機充填剤や木粉が好適である。
【0031】
木質基材としては、合板やパーティクルボード等を使用可能であるが、床材の強度及び可撓性を考慮した場合、木質繊維板を用いることが好ましい。木質繊維板は、比重が0.4以上でかつ1.0以下であることが好ましく、さらには、乾式成形された中比重木質繊維板(MDF)がより好ましい。
【0032】
上記樹脂マットは、上記基材として木質基材を使用する場合に特に必要であり、裏担保できるものであればよい。例えば塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、ラテックス系樹脂、ポリエステル系樹脂等、また、これらの樹脂の変性物、あるいは各種再生プラスチック等を使用することができる。この樹脂マットは、使用する施工用接着剤の接着適正を考慮して、その組み合わせにより選択して使用する。接着性と品質安定性の観点からは、塩化ビニル樹脂系樹脂マットが好適に用いられる。なお、上記複層構造の床仕上材5以外にも、一般的に使用される床材を用いることができる。
【0033】
上記床下地材6は、例えばALC(軽量気泡コンクリート)パネル7と、構造用合板8(OSB等)とが上から順に積層されて構成されている。なお、床下地材6は一般的な構造のものを用いてもよい。
【0034】
上記上部構造体1の周囲材2(躯体の側部)には、床根太3,3間の位置に該床根太3と平行に延びる複数の天井根太11,11,…が掛け渡されて支持されており、この天井根太11に野縁受材12及び野縁13を介して天井材14が吊り下げ支持されている。
【0035】
すなわち、天井根太11の端部を除く中間部の側面には、後述する防振吊木43を介して野縁受材12が固定され、この野縁受材12の下面には、互いに平行な複数の野縁13,13,…が固定され、これら野縁13,13,…の下面に2枚の石膏ボードを重ねた階下の天井材14がタッピングネジSにより取付固定されている。
図4及び
図5中、15は野縁13上に載置固定された遮音用のグラスウールである。
【0036】
上記各天井根太11の両端部はそれぞれ上部構造体1の周囲材2に対し、本発明の実施形態に係る天井根太用防振取付金具21を介して支持されている。
【0037】
(天井根太用防振取付金具)
上記防振取付金具21は、
図1〜
図3に拡大して示すように、互いに対向するベース金具22及び根太金具28と、これらベース金具22及び根太金具28間に配置されたゴム弾性体37とを備えてなる。上記ベース金具22は矩形状で鉄板等の金属板材のプレス成形品からなり、その左右側部にはそれぞれ複数(図示例では3つ)のネジ挿通孔22a,22a,…が上下に並んで貫通形成されており、各ネジ挿通孔22aにタッピングネジS(
図5、
図8、
図10参照)を挿通させて、そのタッピングネジSを上部構造体1の周囲材2にねじ込んで締結することにより、ベース金具22を上部構造体1の周囲材2(躯体の側部)に取付固定するようにしている。
【0038】
一方、上記根太金具28は、上記ベース金具22に水平方向に対向して配置される鉄板等の金属板材のプレス成形品からなるもので、矩形平板状の基部29と、この基部29の左右側端に連続し、ベース金具22と反対側に延びるように折り曲げられた左右の側部30,30と、基部29の下側端に連続し、ベース金具22と反対側に延びるように折り曲げられた底壁部31とを備えている。左右側壁部30,30及び底壁部31は基部29からの突出寸法が互いに同じであり、これら基部29、左右側壁部30,30及び底壁部31により上側、及びベース金具22と反対側にそれぞれ開放された箱形状に形成されている。左右側壁部30,30にはそれぞれ例えば2つのネジ挿通孔28a,28a,…が上下に並んで貫通形成され、底壁部31にも例えば1つのネジ挿通孔28aが貫通形成されており、
図10に示すように、基部29、左右側壁部30,30及び底壁部31で囲まれる部分に天井根太11の端部を、該端部下面が底壁部31に載りかつ端部上側が左右側壁部30,30よりも上側に突き出るように嵌挿し、各ネジ挿通孔28aにタッピングネジSを挿通させて、そのタッピングネジSを天井根太11にねじ込んで締結することにより、根太金具28を天井根太11に取付固定するようにしている。尚、上記左右側壁部30,30でのネジ挿通孔28a,28a,…の高さ位置は互いに異なっている。
【0039】
さらに、上記ゴム弾性体37は直方体形状の中実ゴムからなり、一端がベース金具22において根太金具28の基部29への対向面に、また他端が該根太金具28の基部29においてベース金具22への対向面にそれぞれ加硫により一体的に接着固定されており、このゴム弾性体37によりベース金具22と根太金具28とが一体的にかつ相対移動可能に連結されている。
【0040】
そして、このような天井根太用防振取付金具21を用いて上部構造体1の周囲材2(躯体の側部)に天井根太11を支持することで、その施工状態では上部構造体1の周囲材2側と天井根太11側との間に天井根太用防振取付金具21のゴム弾性体37のみが介在されるように構成されている。また、その天井根太用防振取付金具21の根太金具28の基部29と、天井根太28の端部木口面との間には例えば3〜7mm程度、好ましくは5mm程度の所定のクリアランスが設けられている(
図10参照)。
【0041】
上記天井根太用防振取付金具21には、ベース金具22と根太金具28とのゴム弾性体37による連結が解除されたときに根太金具28がベース金具22に対して落下するのを阻止する落下防止機構40が設けられている。
【0042】
すなわち、上記ベース金具22の上端部には、根太金具28側に水平方向に向かって延びるように折り曲げられた折曲げ部24と、この折曲げ部24の根太金具28側に位置する先端の左右中央部から上側に向かって延びるように折り曲げられ、折曲げ部24よりも幅が狭い係止部25とが連続して形成されている。
【0043】
一方、根太金具28の基部29上端には、上側に向かって延びる立ち上がり部33と、この立ち上がり部33の上端からベース金具22側に向かって水平方向に延びるように折り曲げられた折曲げ部34とが連続して形成されている。この折曲げ部34の中央には矩形状の係止部挿通孔35が貫通形成され、この係止部挿通孔35には上記係止部25が係止部挿通孔35の周縁と間隔をあけた状態、つまり係止部25が折曲げ部34に接触しない状態で挿通されている。
【0044】
そして、このような落下防止機構40においては、通常時には、係止部25が折曲げ部34に接触しないので、ゴム弾性体37の変形による根太金具28とベース金具22との相対移動に影響がないが、ゴム弾性体37が火災時等で焼けて破断したり、そのベース金具22及び根太金具28との接着状態が剥がれたりして、ベース金具22と根太金具28とのゴム弾性体37による連結が解除され、そのことで根太金具28がベース金具22に対して落下しようとしたとき、根太金具28の折曲げ部34が、その係止部挿通孔35内に位置しているベース金具22の係止部25に引っ掛かることにより、根太金具28がベース金具22に対して落下するのを阻止するようにしている。
【0045】
さらに、上記天井根太11と野縁13を支持する野縁受材12との間に防振吊木43が介在され、野縁受材12、野縁13及び天井材14は防振吊木43を介して天井根太11に支持されている。
【0046】
(防振吊木)
図6及び
図7に示すように、上記防振吊木43は、天井根太11に取り付けられる第1取付プレート44と、野縁受材12に取り付けられる第2取付プレート50とを備えている。
【0047】
上記第1取付プレート44は、2つの鉛直プレート部45,46を上下に配置して上側の鉛直プレート部45の下端と、下側の鉛直プレート部46の上端とを水平プレート部47で一体に連結して形成され、上記上側の鉛直プレート部45の上端側には複数のネジ挿通孔44a,44a,…が形成されており、このネジ挿通孔44aにタッピングネジS(
図4参照)を挿通させて天井根太11の側面にねじ込むことで、防振吊木43が第1取付プレート44で天井根太11に取付固定されるようになっている。
【0048】
上記下側の鉛直プレート部46は、第2取付プレート50の後述するプレート本体部51前側でその上端部分を除く下側部分と対向している。また、上記水平プレート部47には例えば矩形状の長孔48が形成されている。第1取付プレート44は矩形金属板材のプレス成形品である。
【0049】
一方、上記第2取付プレート50は、略L形状のプレート本体部51と、該プレート本体部51上端から第1取付プレート44側に折れ曲がった後に上方に延び、軸部52aの上端両側に係止片部52bが張り出し形成されたT字形状のフック部52とが一体に形成されてなる。上記プレート本体部51の下部には複数のネジ挿通孔50a,50a,…が形成されており、このネジ挿通孔50aにタッピングネジS(
図4参照)を挿通させて野縁受材12の側面にねじ込むことで、防振吊木43が第2取付プレート50で野縁受材12に取付固定されるようになっている。この第1取付プレート2も矩形金属板材のプレス成形品である。
【0050】
上記第1取付プレート44の下側鉛直プレート部46と、第2取付プレート50のプレート本体部51の上下中間部との間には、両者を一体に連結する直方体形状のゴム弾性体54が介在されている。
【0051】
そして、上記第2取付プレート50のフック部52の軸部52aが上記第1取付プレート44の長孔48に挿通されている。この長孔48の長径寸法は、上記フック部52の係止片部52bの長さよりも短く設定されており、例えば火災でゴム弾性体54が焼けて破損した場合には、天井材14が落下しないように第2取付プレート50のフック部52の係止片部52bが長孔48の周囲部に係止するようになっている。
【0052】
尚、上記説明では、防振吊木43の第1取付プレート44を天井根太11に、また第2取付プレート50を野縁受材12にそれぞれ取り付けるようにしているが、防振吊木43の上下位置を逆にし、その第2取付プレート50を天井根太11に、また第1取付プレート44を野縁受材12にそれぞれ取り付けるようにしてもよく、同様の機能が得られる。
【0053】
(天井根太及び天井材の施工手順)
次に、上記上部構造体1に天井根太11及び天井材14を施工する手順について説明する。最初に各天井根太11を2つの天井根太用防振取付金具21,21によって上部構造体1の周囲材2(躯体の側部)に取付固定する。
【0054】
具体的には、まず、
図8に示すように、上部構造体1の周囲材2(躯体の側部)における側面の所定の高さ位置に各天井根太用防振取付金具21の取付位置を墨出しする。そして、その一方の取付位置に、天井根太11の一方の端部に取り付けようとする天井根太用防振取付金具21を落下防止機構40が上側に位置するようにベース金具22で当接させて配置し、タッピングネジSをベース金具22の各ネジ挿通孔22aに挿通させて周囲材2にねじ込んで締結することにより、天井根太用防振取付金具21をベース金具22にて上部構造体1の周囲材2側面に取付固定する。
【0055】
次いで、天井根太11を所定の長さ(周囲材2の内々寸法から所定寸法だけ短い長さ)に切断した後、
図9に示すように、その天井根太11の一方の端部を押し上げて天井根太11を傾斜させ、その押し上げた上側の端部を、上記取り付けた天井根太用防振取付金具21における根太金具28の基部29、左右側壁部30,30及び底壁部31で囲まれる部分内に下面が底壁部31上に載るように嵌挿する。その状態で、天井根太11の下側に位置する他方の端部に残りの天井根太用防振取付金具21を配置し、その根太金具28の基部29、左右側壁部30,30及び底壁部31で囲まれる部分内に天井根太11の端部を嵌挿する。その後、その天井根太11の他端部を押し上げて、天井根太用防振取付金具21を取付位置にベース金具22で当接させて配置し、タッピングネジSをベース金具22の各ネジ挿通孔22aに挿通させて周囲材2にねじ込んで締結することにより、ベース金具22を上部構造体1の周囲材2に取付固定する。
【0056】
この状態では、天井根太11は未だ固定されていない。その後、
図10に示すように、天井根太11の端部木口面と天井根太用防振取付金具21(その基部29)との間のクリアランスを天井根太11の両側で均等に例えば3〜7mm程度、好ましくは5mm程度に調整した後、各天井根太用防振取付金具21の根太金具28における左右側壁部30,30及び底壁部31のネジ挿通孔28aにタッピングネジSを挿通して天井根太11にねじ込むことで、天井根太用防振取付金具21と天井根太11とを固定する。
【0057】
このようにして天井根太11が施工されると、その後、天井根太11に防振吊木43を介して野縁受材12、その下面に固定された野縁13、野縁13下面に取付固定された天井材14、及び野縁13上面に載置固定されたグラスウール15を吊り下げ支持すればよい。
【0058】
したがって、上記実施形態においては、天井根太11の両端部がそれぞれ上部構造体1の周囲材2(床梁材)に対し天井根太用防振取付金具21,21を介して支持されている。この各天井根太用防振取付金具21は、ベース金具22が建物における上部構造体1の周囲材2に、また根太金具28が天井根太11の端部にそれぞれ取付固定され、ベース金具22と根太金具28とは、両者に一体的に接着固定したゴム弾性体37により連結されているものであるので、この両天井根太用防振取付金具21,21により天井根太11を上部構造体1の周囲材2に施工した施工状態では、周囲材2側と天井根太11側との間に天井根太用防振取付金具21のゴム弾性体37のみが介在されることとなる。そのため、それら周囲材2側と天井根太11側とが直接に接触することはなく、振動の伝達が必ずゴム弾性体37を通して行われ、ゴム弾性体37の主として剪断方向の変形によって、天井材14下側の部屋に対する防振防音効果を確実に発揮させることができる。
【0059】
しかも、天井根太11に対し野縁13や天井材14が防振吊木43を介して吊り下げ支持されているので、この防振吊木43により、階上の床部分で発生した振動が吸収されて階下の天井材14に伝わり難くなり、防振及び防音の各効果をさらに向上させることができる。
【0060】
さらに、上記天井構造では、天井根太用防振取付金具21における根太金具28の基部29と、天井根太11の端部木口面との間に所定のクリアランスが設けられているので、仮に、上部構造体1(躯体)が変形したり或いは木材からなる天井根太11が伸縮したとしても、上記クリアランスにより、防振取付金具21のゴム弾性体37に余計な圧縮方向又は引張方向の力がかからなくなり、加わる力は剪断方向のみとなる。その結果、防振取付金具21による適切な防振防音性能を確実に安定して発生させかつ永続的に維持することができる。
【0061】
尚、施工手順は、天井根太11の両端に防振取付金具21を取り付けてから周囲材2に固定する方法でもよいが、上記施工手順のように、防振取付金具21の一方を周囲材2に固定してから天井根太11を取り付ける手順であれば、ゴム弾性体37に圧縮方向又は引張方向の力がかかり難い状態で施工できるので望ましい。
【0062】
上記のように、周囲材2側と天井根太11側との間に天井根太用防振取付金具21のゴム弾性体37のみが介在されている構造では、ゴム弾性体37が火災時等で焼けて破断したり、そのベース金具22及び根太金具28との接着状態が剥がれたりして、ベース金具22と根太金具28とのゴム弾性体37による連結が解除されたとき、根太金具28側の天井根太11が野縁13や天井材14と共に落下する虞れがある。しかし、この実施形態では、ベース金具22と根太金具28とのゴム弾性体37による連結が解除されたときに根太金具28がベース金具22に対して落下するのを阻止する落下防止機構40が設けられているので、根太金具28がベース金具22に対して落下しようとしても、根太金具28の折曲げ部34が、その係止部挿通孔35内に位置しているベース金具22の係止部25に引っ掛かる。このことにより、根太金具28側の天井根太11、野縁13や天井材14がベース金具22側の周囲材2に対して落下するのを確実に阻止することができる。
【0063】
(その他の実施形態)
尚、上記実施形態では、枠組壁工法(2×4工法)により建てられる建物の天井構造について説明しているが、本発明は、軸組工法(木造在来工法)や軽量鉄骨等により建てられる建物の天井構造に対しても適用することができる。
【実施例】
【0064】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。
【0065】
(実施例)
実施例として、上記
図4及び
図5に示す実施形態の天井構造を施工した。床仕上材5は厚み17mmのNEO高遮音フローリング材、床下地材6は、厚み35mmのALCパネル7と、厚み15mmのOSBとが上から順に積層されたものである。周囲材2は38×235mmの木材を2枚重ねたものとし、床根太3は38×235mmのものを用いた。天井根太11は38×140mmのものを、また野縁受材12は30×40mmのものを、さらに野縁13は30×40mmのものをそれぞれ用いた。天井材14は厚み12.5mmの石膏ボードを2枚重ねたものである。グラスウール15は密度が24kg/m
3で厚み50mmのものを用いた。
【0066】
(比較例)
天井根太11を用いず、床根太3に防振吊木43を介して野縁受材12、野縁13、天井材14及びグラスウール15を吊り下げ支持した。天井材14は厚み15.0mmの1枚の石膏ボードからなる。その他は実施例と同じである。
【0067】
(遮音性能)
上記実施例及び比較例に関して、オクターブ帯域中心周波数の軽量床衝撃音及び重量床衝撃音のレベルについて測定した。その結果を
図11及び
図12に示す。
【0068】
この結果を見ると、軽量床衝撃音については、実施例は比較例と同等である。一方、重量床衝撃音については、比較例のL値が60であるのに対し、実施例のL値は55であり、実施例の特に重量床衝撃音の遮断性能が向上している。このことにより、本願発明のように、天井根太用防振取付金具21を天井構造に用い、施工状態で躯体側と天井根太11側との間に天井根太用防振取付金具21のゴム弾性体37のみが介在されていると、床衝撃音の遮断性能を向上できることが判る。