(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記ブロックコポリマーの流動温度がポリメタクリレートブロックのガラス遷移温度で、80〜150℃である請求項1〜9のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【背景技術】
【0002】
再生可能な汚染の無いエネルギーが得られるソーラーモジュールに高い関心が寄せられている。ソーラーモジュールは光が当たると電圧を発生するオプトエレクトロニクス部品(通常は結晶シリコンベース)から成る太陽電池を含んでいる。太陽電池はガラスまたはプラスチックプレートの透明被覆材料と、大抵はプラスチックフィルムである裏側保護材料との間に配置される。ソーラーモジュールの製造で封止(encapsulation)をする目的は電池を直列または並列に一体化して、実用的な電圧、電流で使用できるようにすると同時に、電池を電気絶縁し、外部要因(湿気、酸素、温度変化)から保護することにある。
【0003】
さらに、封止材料は太陽から電池へ向かう光波を透過させてソーラーモジュールの出力を低下させないようにする必要がある。また、出力を下げないために封止材料は光線をほとんど回折しないこと(すなわち肉眼で透明であること)が望ましい。透明度は「ヘイズ」または光透過率で定量化され、ヘイズは低くなければならず、光透過率はできるだけ高くなければならない。モジュール内での短絡(ショート)を避けるために封止材料は優れた電気絶縁特性を有することも必要である。
【0004】
従って、封止材料は太陽光に対して最適で、長期間持続する透明性と、20年以上にわたるソーラーモジュールの使用寿命中での太陽電池の各層の優れた接着性とを有していなければならない。
【0005】
現在最も広く使用されている解決策は例えば特許文献(日本国特許出願JP 1987/0174967号公報)に記載のエチレン/酢酸ビニルコポリマー(EVA)をベースにした封止材料をソーラーモジュールで使用することである。しかし、EVAは優れた透明性を有するが、保護層との接着が十分ではなく、一般に「カップリング剤」として知られる接着促進剤を添加しなければならない。この接着促進剤は一般に有機チタン酸塩またはシランの中から選択される。さらに、EVAは太陽光および温度の影響で分解する。すなわち、酢酸の放出が観察され、この放出によって太陽電池が腐食する。さらに、時間の経過とともに封止材料の老化が見られ、この老化は特に著しい黄変となって現れる。この老化によってソーラーモジュールの出力が低下する。
【0006】
さらに、ソーラーモジュールの使用条件下ではEVAの耐クリープ性は十分でない。従って、このコポリマーを架橋する必要があるが、架橋すると熱可塑性でなくなり、封止材料の架橋段階後にモジュールを再利用することが難しくなる。さらに、架橋にはソーラーモジュールの製造プロセスに追加の段階を必要とし、生産性が低下する。
【0007】
特許文献2(国際特許出願第WO 95/22843号公報)では架橋操作を避け、封止材料の熱機械特性、特に耐クリープ性の問題を解決するためにソーラーモジュールの封止材料としてのアイオノマーを使用する。このアイオノマーは、周期表のI、IIまたはIII族元素のカチオン(例えば亜鉛またはカルシウムカチオン)で部分的に中和されたエチレンと、(メタ)アクリル酸との非架橋の熱可塑性コポリマーである。この封止材料と太陽電池および保護層との接着は良く、また、アイオノマーは肉眼では良好な透明度を有し、熱機械特性は非架橋EVAより良い。しかし、耐クリープ性が十分ではない。すなわち、アイオノマーはイオン網の形成によってその融点を超えて一定の凝集力を保持できるが、耐クリープ性が完全に十分ではない。アイオノマーの別の問題点はソーラーモジュールの製造時の一般的温度(一般に120℃〜160℃)で粘度が高いことにある。粘度が高いと、生産速度が制限され、連続フィルム製造法、例えば押出製造法では粘度が高いと押出機出口でのフィルムの吐出速度が低下する。
【0008】
特許文献3(米国特許出願第4 692 557号)および特許文献4(国際特許出願第WO 2006/093936号)では、上記の特許文献と同じ理由で、SEBSタイプ(ここでSはポリスチレン熱可塑性ブロックを表し、EBは部分的に水素化されたブタジエンエラストマーブロック(例えばKraton 社の製品Kraton G(登録商標)シリーズ))のビニルおよびジエンブロックコポリマーを封止材料として使用する。しかし、これらの材料の耐久性は酸化防止剤、紫外線吸収剤および安定剤を添加しても20年にわたってソーラーモジュールの完全性を確保するには十分ではない。これらの材料を加速老化テスト(10 000時間以上)または自然老化テスト(10年以上)すると封止材料の層が変色、脆化し、光学特性が失なわれる。
【0009】
特許文献5(米国特許第6414236号明細書)の封止材料はオレフィンブロックコポリマー(例えば、Dow Chemical社の製品Engage(登録商標)またはAffinity(登録商標)シリーズ)である。この封止材料はソーラーモジュールの耐老化性は改良されるが、耐クリープ性が普通であるため封止材料を架橋する必要がある。そのため封止材料が熱可塑性ではなくなり、光学特性、特にその光透過率に影響がでる。
【0010】
上記の欠点および課題の全てまたは一部はソーラーモジュールだけでなく、シリコン半導体を用いた全てのタイプの太陽電池および集積回路に当てはまる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のブロックコポリマーはポリ(ブチルアクリレート)ブロックと、少なくとも一種のポリ(メチルメタクリレート)ブロックとを含むのが好ましい。
この組成物が透明性、紫外線(UV)照射下の耐老化性および電気絶縁、水および酸素に対するバリヤ特性という優れた特性と、弾性と、約70℃以上の運転温度での接着力とを併せ持つということは驚くべきことである。これらの特性によって本発明組成物はソーラーモジュールで有利に使用できる。
【0016】
本発明組成物はナノ構造化(nanostructuree)されているということは当業者には公知である。この点に関しては非特許文献1を参照されたい。
【非特許文献1】A.V.Ruzette and L.Leibler, Natural Materials, vol.4, Jan.2005,pp 19-31、「明日のプラスチックのブロックコポリマー」
【0017】
本発明で「ナノ構造化組成物」とは、少なくとも2つの非混和性相を含み、これらの相の少なくとも一つの相の寸法が780nm以下である組成物を意味する。この寸法は380nm以下、例えば60〜380nm、さらには60〜300nmであるのが有利である。相の寸法は透過電子顕微鏡および標準的な画像処理ソフトウェアを用いて当業者が容易に測定できる。
【0018】
組成物をナノ構造化することで可視光を透過させ、および/または、本発明の定義での可視光に対して透明で、70℃またはそれ以上の温度で接着性があり、優れた耐クリープ性を有する組成物が得られる。この熱可塑性組成物はその水バリヤ特性、ガスバリヤ特性および電気特性によってソーラーモジュール分野で封止材料として用いることができ、しかも、組成物を架橋させる必要がない点で非常に有利である。
【0019】
本発明の太陽電池モジュールでは、上記の組成物を封止材料として用いる。この組成物は上側保護層または下側保護層あるいは太陽電池で形成された支持体上に塗布される。この支持体はガラス、ポリマー、特にPMMA、金属または任意タイプの太陽電池受光部で構成できる。支持体上に塗布された本発明組成物で形成された構造物は厚さが5μm〜2mmである。
【0020】
本発明は、経時的かつ広範囲の温度(室温から80℃)で一定な優れた透明性を有すると同時に、優れた電気絶縁特性、水および酸素に対するバリヤ特性、弾性特性および接着特性を維持することができるアクリル材料を含む太陽電池モジュールを提供する。本発明のこの材料は少なくとも一種のポリアクリレートまたはポリメタクリレートブロックコポリマーを含む組成物の形をしている。この組成物はソーラーモジュール内の封止材料として用いるのが有利である。
【0021】
本発明組成物を構成するブロックコポリマーは一般式:B−(A)nに対応する。この式で、
nは1以上の自然整数、好ましくは1〜8で、
Bはラジカル重合可能なモノマー単位の結合から成るポリマーのブロックを表し、そのTg全体は0℃以下である。Bブロックの平均モル質量は1000g/モル以上、好ましくは5000g/モル以上、さらに好ましくは10 000g/モル以上であり、
Aはラジカル重合可能なモノマー単位の結合から成るポリマーのブロックであり、そのTg全体は0℃以上である。
【0022】
AブロックとBブロックとの相対長さは下記の比が0.5〜0.95、好ましくは0.6〜0.8になるように選択される:
【数1】
【0023】
(ここで、Mnはポリマーの数平均分子量を意味し、記号「×」は乗法演算子を意味する)
【0024】
ブロックコポリマーは多分散性指数PIが1.1〜3、有利には1.3〜2.5、好ましくは1.5〜2である。BブロックのPIは1.5以下である。
Bブロックはブロックコポリマーの全重量の50重量%以上、好ましくは50〜70%を占める。
【0025】
Bは少なくとも60重量%のアクリルモノマー(b
1)を含むモノマーの混合物(B
0)の重合で得られるポリマーブロックである。モノマー混合物B
0は少なくとも2個の炭素原子、好ましくは少なくとも4個の炭素原子を含むアルキル鎖を有するアルキルアクリレート、例えばブチルアクリレート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレートまたは2−エチルヘキシルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレートまたはアクリロニトリルの中から選択される60〜100重量%の少なくとも一種のアクリルモノマー(b
1)を含む。
【0026】
Bブロックを構成する他のモノマー(b
2)はラジカル重合可能なモノマー、例えばエチレンモノマー、ビニルモノマー等の中から選択される。Bは特にTgが0℃以下のポリアクリレートまたはポリメタクリレートである。Bはブチルアクリレート単位を含むのが好ましい。TgはASTM E1356規格に従ってDSC(示差走査熱量測定)で例えば毎分20℃の温度勾配で測定したポリマーのガラス遷移温度を示す。
【0027】
Aブロックは下記(a
1)と(a
2)のモノマーを含むモノマーの混合物A
0の重合で得られる:
(1)60〜100重量%のアルキルメタクリレート、例えばメチル、ブチル、オクチル、ノニルまたは2−エチルヘキシルメタクリレートまたは官能性メタクリレート、例えばメタクリル酸、グリシジルメタクリレート、メタクリロニトリルまたはアルコール、アミドまたはアミン官能基を含む任意のメタクリレートの中から選択される少なくとも一種のメタクリルモノマー(a
1)、
(2)0〜40重量%の無水物、例えば無水マレイン酸またはビニル芳香族モノマー、例えばスチレンまたはその誘導体、特にα−メチルスチレンおよびb
1に対応するモノマーの中から選択される少なくとも一種のモノマー(a
2)。
【0028】
Bブロックで用いるモノマーの比率を混合物中で維持することもできる。この比率はAブロックで用いるモノマーの混合物の20%以下である。
【0029】
AブロックはTgが0℃以上のメタクリレートから選択されるのが好ましい。Aはメチルメタクリレート単位を含むのが好ましい。
【0030】
本発明の組成物を構成するブロックコポリマーは下記(a)および/または(b)から制御されたラジカル重合による公知の方法で調製する:
(a)下記式(I)の少なくとも一種の一官能性アルコキシアミン:
【0032】
(ここで、
R
1とR
3は炭素原子数が1〜3の直鎖または分岐鎖のアルキル基を表し、互いに同一でも異なっていてもよく、
R
2は水素原子、炭素原子数が1〜8の直鎖または分岐鎖のアルキル基、フェニル基、Li、NaまたはKのようなアルカリ金属またはNH
4+またはNHBu
3+のようなアンモニウムイオンを表し、R
1はCH
3であるのが好ましく、R
2はHであるのが好ましい)
(b)下記式(III)の少なくとも一種の多官能性アルコキシアミン:
【0034】
[ここで、
R
1、R
2、R
3は上記定義のものであり、
Zはアリール基または式:Z
1−[X−C(O)]
n(ここで、Z
1は例えばポリオール型化合物から得られる多官能性構造を表し、Xは酸素原子、炭素を含む基または水素原子を有する窒素原子または硫黄原子)を表し、
nは2以上の整数である〕
【0035】
重合は60〜250℃、好ましくは90〜160℃の温度、0.1〜80バール、好ましくは0.5〜10バールの圧力下で行う。重合は制御されなければならず、モノマー(一種以上)の変換率が99%になる前、好ましくは90%になる前に停止する。こうして得られたBブロックは残留モノマーと一緒に用いるか、用いるモノマーとは混和可能でBとは非混和性の溶剤を用いて蒸留または洗浄および乾燥によってモノマーから精製する。モノマーの重量変換率は10〜100%であり、得られたブロックコポリマーは、250℃以下、好ましくは250℃以下の温度で減圧蒸発によって残留モノマーから分離する。
【0036】
本発明の一実施例では、本発明組成物を構成することになるブロックコポリマーをメタクリレートまたはアクリレートモノマーと共重合して、組成物の接着力を高める。ブロックコポリマーは10モル%以下、例えば0.01〜5モル%、好ましくは0.1〜1%のこれらのモノマーを含むのが有利である。一つの変形例ではこのモノマーはシラン官能基を含む。
【0037】
本発明組成物は接着促進剤の役目をする酸、無水物またはイミダゾリドン官能基を含むメタクリレートモノマーを含むのが好ましい。ブロックコポリマーは50モル%以下、例えば0.1〜20モル%、好ましくは1〜10%のこれらのモノマーを含むのが有利である。一例としてはアルケマ社の製品Norsocryl(登録商標)シリーズ、特に、50重量%のメチルメタクリレートと50重量%の2−(2−オキソイミダゾリジニル)エチルメタクリレートとを含む混合物、商品名Norsocryl 104(登録商標)が挙げられる。
【0038】
上記ブロックコポリマーの流動温度はISO 11359−2規格に従って熱機械分析で測定したポリメタクリレートブロック(一種以上)のガラス遷移温度であるのが有利である。本発明ではブロックコポリマーの流動温度は80〜150℃である。本発明組成物はこの流動温度範囲でソーラーモジュールの使用温度での良好な耐クリープ性を示す本発明組成物をソーラーモジュールのような構造物の製造に用いた場合、この構造物を製造する温度範囲は通常の使用範囲と同じである。
【0039】
封止材料の役目をする組成物はソーラーモジュールの製造中およびその使用中にソーラーモジュールの出力を悪くする空気が太陽電池と保護層との間の空間中に存在しないように上記空間を完全に占めていなければならない。従って、封止材料は優れた可撓性を有する。これは1000MPa以下、例えば1〜700MPa、好ましくは10〜500MPaの引張弾性率(またはヤング率)に対応する。
【0040】
本発明組成物は粘着付与樹脂、可塑剤または補完ポリマーとして知られる別のポリマーをさらに含むことができる。この補完ポリマーはブロックコポリマーと混和性であるか、部分的に混和性であるのが好ましい。この補完ポリマーは組成物の全重量の50%以下、好ましくは組成物の20%以下を占める。
【0041】
この本発明組成物はコストを下げることができる。上記補完ポリマーが混和性であるか、部分的に混和性である場合、本発明組成物はコスト/可視光の透過率/および/または可視光に対する透明度のバランスに優れている。この補完ポリマーはポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)である。
【0042】
本発明組成物は少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも65質量%、さらに好ましくは少なくとも75質量%のアクリルブロックコポリマーを含むのが有利である。
【0043】
本発明組成物は架橋剤、紫外線吸収剤、無機充填剤、可塑剤、難燃剤、着色化合物または増白化合物の中から選択される少なくとも一種の追加成分をさらに含むことができる。
【0044】
本発明組成物をソーラーモジュールの封止材料として使用する場合、これらの成分の種類および/または濃度は最終組成物が透明度を維持し、および/または、可視光を透過させるように選択する。例えば、これらの化合物は組成物の全重量の0〜20%、例えば0.01〜10%を占めることができる。
【0045】
本発明の組成物は可視光を透過させ、および/または、可視光に対して透明であることを特徴とする。本発明組成物の透過率が90%以上の場合、組成物は可視光を透過させる。組成物のヘイズが5%以下である場合、組成物は可視光に対して透明である。組成物の透過率およびヘイズはASTM規格D1003に従ってこの組成物の厚さ400μmのフィルムで可視光の少なくとも一つの波長(380〜780nm)で評価する。
この組成物は、上記定義のアクリルブロックコポリマーの混合物を含んでいる場合は、同様に本発明によるものである。
【0046】
添加物の量は下記添加物リストから組成物の所望の特性が得られるように当業者が容易に選択できる。
【0047】
組成物の接着力を特に高くしなければならない場合には、接着性を改良するためにカップリング剤を添加するのが有利である。本発明のカップリング剤は非ポリマー成分であり、有機、結晶、特に半結晶半有機にすることができる。これらの中では有機チタン酸塩または有機シラン、例えばモノアルキルチタネート、トリクロロシランおよびトリアルコキシシランが挙げられる。組成物は組成物の全質量の0〜20質量%、例えば0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%のカップリング剤を含むのが有利である。
【0048】
架橋は必須ではないが、特に温度が非常に高い場合に、封止材料の熱機械的特性をさらに改良できる。従って、架橋剤を添加しても本発明の範囲を逸脱するものではない。例としては有機過酸化物またはイソシアネートが挙げられる。この架橋剤はまた周知な照射技術によって実施できる。
【0049】
紫外線照射は封止材料の黄変を引き起こすので、封止材料寿命期間中の透明度を保証するために紫外線安定剤を添加できる。紫外線安定剤は例えばベンゾフェノンまたはベンゾトリアゾ−ルをベースにすることができる。これらは組成物の全重量の10%以下、好ましくは0.1〜5%の量で添加できる。
【0050】
本発明組成物の熱機械強度を改良するために、充填剤、特に無機充填剤を添加できる。例としてはシリカ、アルミナまたは炭酸カルシウムまたはカーボンナノチューブが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ナノスケールで混合した改質または非改質クレーを用いるのが有利であり、これによってより透明な組成物を得ることができる。
【0051】
加工を容易にして組成物および構造物の製造プロセスの生産性を高めるために、可塑剤を添加できる。その一例としてはパラフィン油、芳香油またはナフタレン鉱物油が挙げられる。これらは本発明組成物の接着力をさらに改良できる。可塑剤としてはさらにフタル酸塩、アゼライン酸塩、アジピン酸塩およびリン酸トリクレジルも挙げられる。
難燃剤を添加することもできる。
着色または増白化合物を添加することもできる。
【0052】
本発明の太陽電池モジュールでは、上記組成物は封止材料として使用できるのが有利である。この組成物は上側保護層または下側保護層あるいは太陽電池で形成された支持体上に塗布される。この支持体はガラス、ポリマー、特にPMMA、金属または任意タイプの太陽電池受光部で構成できる。支持体上に塗布された上記組成物で形成された構造物は厚さが5μm〜2mmである。
【0053】
構造物の厚さは5μm〜2mm、好ましくは100μm〜1mm、さらに好ましくは300〜500μmであるのが好ましい。これらの構造物は特にフィルムの形をしている。このフィルムは太陽電池の封止化に使用できるのが有利である。この構造物は単層構造物または多層構造物にすることができる。後者の場合は、例えば支持体(この支持体はポリマーを含んでいてもよい)と本発明組成物の層とを組み合わせることができる。ポリマーの例としてはポリオレフィン、例えばEVAが挙げられ、これらのポリオレフィンは不飽和モノマー、アイオノマー、ポリアミド、フルオロポリマー(例えばポリフッ化ビニルPVFまたはポリフッ化ビニリデンPVDF)またはポリメチルメタクリレート(PMMA)を含むことができる。別の支持体としては金属または任意タイプの太陽電池から成る支持体が挙げられる。
【0054】
これらの構造物は一般的な技術すなわちプレス成形、射出成形、押出ブロー成形、押出積層、押出コーティング、フラット押出成形(押出キャストともよばれる)またはシート押出カレンダー仕上げによって上記化合物から得られる。これらの構造物は全て必要に応じて後で熱成形できる。
【0055】
一般に、ソーラーモジュールを作るにはバックシート上に封止材料の第1下側層、太陽電池、封止材料の第2上側層、次いで上側保護層をこの順番で載せる。追加層、特に結合層または接着層をさらに加えることもできる。これらの各層を組み立ててモジュールを形成する。本発明の太陽電池モジュールは本発明組成物の層を含む任意の太陽光電池構造物から構成できる。本発明の太陽電池モジュールは本明細書に挙げたものに制限されないことも明らかである。
【0056】
本発明の太陽電池を形成するためには、任意タイプの太陽電池受光部(capteurs photovoltaiquees)を使用することができる。例えば単結晶または多結晶ドープシリコンをベースにした「従来型」として知られる太陽電池を使用できる。例えばアモルファスシリコン、テルル化カドミウム、二セレン化銅インジウムまたは有機材料から形成される薄膜受光部(capteurs)も使用できる。
【0057】
ソーラーモジュールで使用可能なバックシートの例としてはフルオロポリマー(PVFまたはPVDF)をベースにしたフィルム、例えば多層フルオロポリマー/ポリエチレンテレフタレート/フルオロポリマーまたはフルオロポリマー/ポリエチレンテレフタレート/EVAフィルムが挙げられるが、これらが全てではない。
【0058】
保護シートは耐摩耗性および耐衝撃性を有し、透明で、太陽電池受光部を外部の湿気から保護する。保護シートはこれらの特徴を併せ持つガラス、PMMA、またはその他のポリマー組成物で形成できる。
【0059】
太陽電池モジュールの各層を組み立てるためには、任意タイプのプレス成形技術、例えばホットプレス、真空プレスまたは貼り合せ、特に加熱貼り合わせを用いることができる。当業者は温度および圧力を組成物の流動温度に合わせることによって製造条件を容易に決定できる。
本発明のソーラーモジュールを製造するのに当業者は例えば下記文献を参照できる。
【非特許文献2】太陽電池科学および工学、Wiley,2003
【0060】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0061】
実施例の説明における略語は下記の意味を有する:
BuA:ブチルアクリレート
MMA:メチルメタクリレート
MEIO:2−(2−オキソイミダゾリジニル)エチルメタクリレート
EVA:エチレン−酢酸ビニルコポリマー
PI:多分散性指数
Mw:重量平均分子量
Mp:分布ピークでの分子量
Mn:数平均分子量。
【0062】
材料の特徴は標準的な分析方法で決定する。分子量はサイズ排除クロマトグラフィで求め、ポリスチレン当量で表記する。ブロックコポリマーのモノマー組成は核磁気共鳴によって測定する。さらに、組成物のブロックコポリマー含有率は液体吸収クロマトグラフィとして知られる技術によって測定する。
【0063】
ジブロックの調製(実施例1)
制御されたラジカル重合(CRP)を用いてポリ(ブチルアクリレート)−ポリ(メチルメタクリレート)(PBuA−PMMA)ジブロックコポリマーを合成した。
(1)
PBuA第1ブロックの合成
PBuAを20lの反応器で、開始剤として商業的にBlocBuilder(登録商標)として公知の上記式(I)に対応するアルコキシアミンを用いて溶剤の非存在下で合成した。目標とする分子量Mnは25 000である。目標とする変換率は90%である。重合温度は115℃である。重合時間は115分である。ブロックコポリマーのPBuAを揮散する必要があるときは、80℃の温度で、180分間、20lの反応器で揮散した。
(2)
PMMA第2ブロックの合成
PMMAブロックは、MMAモノマーおよびトルエンを添加して、第1段階で合成したPBuAから、(1)と同じ20l反応器で合成した。重合時間は2つの連続した段階、すなわち105℃で120分と120℃で120分とに分ける。
【0064】
トリブロックの調製(実施例2)
ポリ(メチルメタクリレート)−b−ポリ(ブチルアクリレート)−b−ポリ(メチルメタクリレート)トリブロックコポリマーを制御されたラジカル重合法で得た。この方法はジブロックコポリマーの合成で説明した手順と同じ手順に従うが、BlocBuilderの代わりに以下に説明するDIAMINSのような二官能性アルコキシアミンを用い、メタクリレートブロックの合成中に、90重量%のメチルメタクリレートと10重量%のNorsocryl 104とを含む混合物を反応器に導入した。Norsocryl 104は50重量%のメチルメタクリレートと50重量%の2−(2−オキソイミダゾリジニル)エチルメタクリレート(MEIO)とを含む混合物である。
【0065】
単にポリマーを当業者に周知な手段で乾燥することによって生成物を回収する。この段階で太陽電池封止用途に要求される紫外線および熱保護に必要な各種添加物を添加する。
【0066】
【化3】
【0067】
合成条件および得られたコポリマーの特性は[表1]に示す。
【表1】
【0068】
本発明組成物の有利な特性およびソーラーモジュールでのその有利な使用を示すために、下記の比較例組成物(CP)も用いた:
CP1:アイオノマーベースの組成物、
CP2:33重量%の酢酸ビニルを含む、MFI(ASTM D 1238、190℃/2.16kg)が45g/10分のEVAコポリマーと、有機過酸化物とをベースにした組成物。
【0069】
Rheocord型実験室用熱可塑性スクリュー押出機でシートダイを通してフィルムを製造した。次いで、このフィルムを温度によって調節された3ロールカレンダに通し、次いで水浴中に冷却する。
サンプルは押出前に80℃で減圧下に最低3時間加熱(stove)処理する。
押出機帯域1、2、3の温度:175℃、
ダイ帯域4の温度:190℃
スクリュー速度:33回転/分
ダイとカレンダロール軸との間の距離:接触
ダイギャップ:0.1mm
フィルム厚さ:400μm。
スクリューは、抜き出し前に1ホッパをパージするか、分解して掃除する。
続いて、組成物CP2のフィルムを150℃で20分間プレス下で熱処理して架橋する。
【0070】
こうして得られたフィルムの機械的および光学的特性は下記の規格に従っ評価した:
ASTM D882規格:フィルムの引張特性の測定
ASTM D1003規格:全光透過率およびヘイズの測定。
原子間力顕微鏡(デジタル計器、Dimension 3100)を用いた分析によってTgの低い領域のサイズが実際に100nm以下であることを確認した。電気体積抵抗はNovocontrol Concept 40誘電分光計を用いて23℃で測定した。温度毎に周波数掃引を0.1Hz〜10
6Hzで実施した。サンプルの低周波数(0.1Hz)が周波数の影響を受けない場合、その抵抗値を記録した。
【0071】
耐クリープ性を100℃で測定した。この耐クリープ性はフィルムから切出したIFC(フランスゴム協会)型試験片で求めた。所定温度で0.5MPaの応力を15分間加え、室温に戻した後の残留伸びを測定した。
【0072】
実施例2のフィルムを寸法が200(長さ)×50(幅)×3(厚さ)mm
3のガラスシートに、150℃、3バールの圧力下で20分間押圧した。接着性はISO 8510−1規格に従って、Zwick 1445引張試験機で90°剥離試験によって100mm/分で評価した。剥離アームの幅は15mmである。試験中では剥離強度をガラス支持体と実施例2の組成物との間でのみで測定した。
得られた結果を[表2]に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
これらの結果から以下のことが分かる:
(1)本発明組成物(EX1およびEX2)は光透過率が同じ熱可塑性材料であるアイオノマー(CP1)および架橋EVA(CP2)よりはるかに高く、ソーラーモジュールの生産収率が高くなる。
(2)本発明組成物(EX1およびEX2)はソーラーモジュールの製造時およびその使用時に必要な可撓性を有し、100℃での耐クリープ性がアイオノマー(CP1)より高い。この試験ではアイオノマーは過度(>300%)にクリープし、伸び率は測定できなかった。
(3)本発明サンプルの抵抗は架橋EVAをベースにした比較例組成物で見られる抵抗と同様である。
(4)本発明サンプルのガラスへの接着性も架橋EVAをベースにした比較例組成物で見られる接着性と同様である。
従って、本発明組成物はソーラーモジュールの結合剤または封止材料として極めて有利に使用できる基準を満たす。